説明

アンテナ装置およびアレイアンテナ

【課題】簡単な構造で、セクタ間干渉を抑制することが可能なアンテナ装置を提供する。
【解決手段】反射板と、前記反射板上に配置される少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナとを備え、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナから放射される電波の偏波方向が大地に対して垂直方向であるアンテナ装置であって、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの両側に前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの延長方向に沿って配置される第1の導電体と第2の導電体を有し、前記反射板の反射面と平行で、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナが配置される面を第1の面、前記反射板の反射面と平行で、前記第1の導電体と前記第2の導電体が配置される面を第2の面とするとき、前記第2の面は、前記反射板の反射面から見て前記第1の面よりも外側に位置し、前記第1の導電体と前記第2の導電体とは、それぞれ、延長方向の両端から中心領域に向かって延びる第1のスリットと第2のスリットを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信の基地局アンテナとして使用されるアンテナ装置およびアレイアンテナに係り、特に、360°全方位を網羅する水平面内指向性を得るために使用される複数の扇形セクタに最適なアンテナ装置およびアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信の基地局アンテナにおいて、例えば、加入者容量を増加しようとする場合などに、アンテナ装置の水平面内放射ビームの半値幅を変更する必要がある。
アンテナ装置の水平面内放射ビームの半値幅を変更する手法の一つとして、水平面内放射ビームの半値幅をおよそ120゜とする多周波数共用アンテナおいて、既存アンテナの両サイドに最も高い周波数の半波長程度の長さを有する金属導体を立設することにより最も高い周波数の水平面内放射ビームの半値幅を減少させることが知られている。(下記、特許文献1参照)
【0003】
なお、本願発明に関連する先行技術文献としては以下のものがある。
【特許文献1】特開2006−217104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
移動通信の基地局において3セクタ構成とするとき、それぞれのセクタを構成するアンテナは120°離角で同一基地局に配置される。そのときに、各セクタを構成するアンテナの水平面内ビーム幅は120°の扇形が望ましい。
しかしながら、例えば、前述の特許文献1に記載の多周波数共用アンテナのように、実際には120°方向以外の方向においてもアンテナ利得が存在するために、主にセクタ間において、2つのアンテナの指向特性が重複する。この重複する領域が大きいほどセクタ間の干渉も大きくなり、通信品質の劣化をもたらす。
前述の問題点を解決するための手法として、アンテナのカバーを厚くする方法、あるいは、反射板の形状を大きくする方法が知られているが、これらの方法は、アンテナ全体の形状が複雑になりコストが高くなるという問題点があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で、セクタ間干渉を抑制することが可能となるアンテナ装置を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、前述のアンテナ装置を垂直偏波用のアンテナ装置として使用するアレイアンテナを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)反射板と、前記反射板上に配置される少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナとを備え、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナから放射される電波の偏波方向が大地に対して垂直方向であるアンテナ装置であって、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの両側に前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの延長方向に沿って配置される第1の導電体と第2の導電体を有し、前記反射板の反射面と平行で、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナが配置される面を第1の面、前記反射板の反射面と平行で、前記第1の導電体と前記第2の導電体が配置される面を第2の面とするとき、前記第2の面は、前記反射板の反射面から見て前記第1の面よりも外側に位置し、前記第1の導電体と前記第2の導電体とは、それぞれ、延長方向の両端から中心領域に向かって延びる第1のスリットと第2のスリットを有する。
(2)(1)において、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナ上に配置される導波器を有し、前記反射板の反射面と平行で、前記導波器が配置される面を第3の面とするとき、前記第3面は、前記反射板の反射面から見て前記第1の面よりも外側に位置する。
【0006】
(3)(1)において、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナは、前記反射板上に所定の間隔をおいて配置される一対の半波長ダイポールアンテナである。
(4)(3)において、前記反射板の反射面に直交し、前記一対の半波長ダイポールアンテナの中心を通る面上で、前記反射板の反射面上に配置される導波器を有し、前記反射板の反射面と平行で、前記導波器が配置される面を第3の面とするとき、前記第3面は、前記反射板の反射面から見て前記第2の面よりも外側に位置する。
(5)電波の偏波方向が大地に対して水平方向である第1アンテナ装置と、電波の偏波方向が大地に対して垂直方向である第2アンテナ装置とを備えるアレイアンテナであって、前記第2アンテナ装置は、前述の(1)ないし(4)の何れか1項に記載のアンテナ装置である。
【発明の効果】
【0007】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、簡単な構造で、セクタ間干渉を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置を正面から見た正面図である。
【図3】本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の断面構造を示す要部断面図であり、図1に示すA−A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
【図4】本発明の実施例1の第1の導電体と第2の導電体の構成を説明するための図である。
【図5】参考例の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内指向特性を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内指向特性を示すグラフである。
【図7】参考例の垂直偏波用アンテナ装置と本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内放射ビーム幅を示すグラフである。
【図8】参考例の垂直偏波用アンテナを、基地局アンテナに使用した水平面内指向特性の一例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナを、基地局アンテナに使用した水平面内指向特性の一例を示すグラフである。
【図10】本発明の実施例2のアレイアンテナの概略構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施例3の偏波共用アレイアンテナの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
[実施例1]
図1は、本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の概略構成を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置を正面から見た正面図である。なお、図2では、反射板の図示は省略している。
図3は、本発明の実施例1のアンテナ装置の断面構造を示す要部断面図であり、図1に示すA−A’切断線に沿った断面構造を示す断面図である。
図1ないし図3において、1は反射板、10は反射面を構成する底面反射板、11は側面反射板、21、22は、垂直偏波用の一対のダイポールアンテナ、31は第1の導電体、32は第2の導電体、4は導波器である。
図3に示すように、反射板1の側面反射板11は、底面反射板10の裏側に折り曲げられ、側面反射板11と底面反射板10との成す角(図3のθ)は、90°以下とされる。
ここで、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)、第1の導電体31、第2の導電体32、および、導波器4は、例えば、誘電体基板上にプリント配線板で用いるエッチング手法等により形成される。
第1の導電体31および第2の導電体32は、図2に示すように、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)の延長方向に沿って、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)の両側に配置される。
第1の導電体31および第2の導電体32は、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)から放射される垂直偏波の電波の水平面内放射ビームの半値幅を制限する。
【0010】
ここで、図2に示すように、導波器4の長さ(L1)と、第1の導電体31および第2の導電体32の長さ(L2)は、下記(1)式の値とされる。
[数1]
0.25×λo≦L1≦0.35×λo
0.5×λo≦L2≦0.65×λo
・・・・・・・・・・・・・・ (1)
また、図3に示すように、反射板1の底面反射板10と平行で、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)が配置される面を第1の面(図3のFA1)、反射板1の底面反射板10と平行で、第1の導電体31および第2の導電体32が配置される面を第2の面(図3のFA2)、および、反射板1の底面反射板10と平行で、導波器4が配置される面を第3の面(図3のFA3)とするとき、反射板1の底面反射板10と第1の面との間隔(L3)、および、第1の面と第3の面との間隔(L4)は、下記(2)式の値とされる。
[数2]
0.15×λo≦L3≦0.30×λo
0.20×λo≦L4≦0.30×λo
・・・・・・・・・・・・・・ (2)
さらに、第1の導電体31と第2の導電体32との間隔(L5)、反射板1の幅(L6)は、下記(3)式の値とされる。
[数3]
0.45×λo≦L5≦0.60×λo
0.30×λo≦L6≦0.50×λo
・・・・・・・・・・・・・・ (3)
なお、第2の面(図3のFA2)は、反射板1の底面反射板10から見て第1の面(図3のFA1)より外側(図3において、第1の面(図3のFA1)より上側)で、反射板1の底面反射板10から見て第3の面(図3のFA3)よりも内側(図3において、第3の面(図3のFA3)より下側)の位置で、第1の導電体31および第2の導電体32により、所定の水平面内指向特性が得られる位置に設定される。
【0011】
図4は、本発明の実施例1の第1の導電体31と第2の導電体32の構成を説明するための図である。
図4に示すように、本発明の実施例1の第1の導電体31(または、第2の導電体32)は、延長方向の両端から中心領域に向かって延びる第1のスリット30aと第2のスリット30bを有する。
ここで、第1の導電体31(または、第2の導電体32)の幅(図4のL8)と、第1の導電体31(または、第2の導電体32)のスリット(30a,30b)の長さ(図4のL7)と幅(図4のL9)は、下記(4)式の値とされる。
[数4]
0.20×λo≦L7≦0.30×λo
0.02×λo≦L8≦0.03×λo
0.01×λo≦L9≦0.02×λo
・・・・・・・・・・・・・・ (4)
【0012】
図5は、参考例の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内指向特性を示すグラフであり、図6は、本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内指向特性を示すグラフである。
図7は、参考例の垂直偏波用アンテナ装置と本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内放射ビーム幅を示すグラフである。なお、図7において、Aは本発明の実施例1の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内放射ビーム幅を、Bは参考例の垂直偏波用アンテナ装置の水平面内放射ビーム幅を示す。
図5〜図7から分かるように、本実施例の垂直偏波用アンテナ装置では、水平面内指向特性の半幅値(利得量が、−3dBとなるビーム幅)は80°と、参考例の垂直偏波用アンテナ装置と同じであるが、利得量が、−10dB以下となるビーム幅は、約140°と、参考例の垂直偏波用アンテナ装置よりも狭くなっている。
これは、本実施例の第1の導電体31と第2の導電体32とで、一対の半波長ダイポールアンテナ(21,22)から放射される垂直偏波の電波の水平面内放射ビームの半値幅を制限するとともに、導波器4により、垂直偏波の電波の図6に示す0°方向の利得を向上させた結果に基づくものであると想定される。
なお、前述の特許文献1に記載の多周波共用アンテナでも、半波長ダイポールアンテナの両側に金属導体を配置し、最も高い周波数の水平面内放射ビームの半値幅を減少させているが、この特許文献1では、半波長ダイポールアンテナの両側に配置される金属導体は、反射板の反射面から見て、半波長ダイポールアンテナより内側の位置に配置されている。さらに、特許文献1には、半波長ダイポールアンテナ上に導波器を配置することは記載されていない。
さらに、本実施例の垂直偏波用アンテナ装置では、反射板1の裏面側の利得も大幅に減少している。これは、本実施例の反射板1の側面反射板11によるものと想定される。
【0013】
前述したように、一般に、携帯電話システムの基地局では3セクタ構成とするとき、それぞれのセクタを構成するアンテナを120°離角で同一基地局に配置するようにしている。
本実施例の垂直偏波用アンテナ3個を、基地局アンテナに使用し、120°間隔で配置した時の水平面内指向特性を図9に示す。また、参考例の垂直偏波用アンテナ3個を、基地局アンテナに使用し、120°間隔で配置した時の水平面内指向特性を図8に示す。
なお、図5、図7、図8に示す参考例の垂直偏波用アンテナ装置とは、図1に示す本実施例の垂直偏波用アンテナ装置において、第1の導電体31と第2の導電体32、および、導波器4を取り除いたアンテナ装置である。
図8、図9のグラフから分かるように、図1に示す本実施例の垂直偏波用アンテナ装置を使用することにより、参考例の垂直偏波用アンテナ装置に比して、3個の水平面内指向特性が互いに干渉する領域(図8、図9で灰色の部分)が少なくなる。
【0014】
[実施例2]
図10は、本発明の実施例2のアレイアンテナの概略構成を示す斜視図である。
図10に示すように、本実施例のアレイアンテナは、反射板1上に、前述の実施例1の垂直偏波用アンテナ3個を所定の間隔をおいて配置したものである。このような構成でも、前述の実施例1と同様の効果を得ることが可能である。
[実施例3]
図11は、本発明の実施例3の偏波共用アレイアンテナの概略構成を示す斜視図である。
図11に示すように、本実施例の偏波共用アレイアンテナは、反射板1上に、前述の実施例1の垂直偏波用アンテナ3個と、2個の水平偏波用のダイポールアンテナ5を所定の間隔をおいて配置したものである。このような構成でも、前述の実施例1と同様の効果を得ることが可能である。
なお、前述の各実施例では、水平面内指向特性の半幅値を80°にするために、21と22の一対の半波長ダイポールアンテナを使用する場合について説明したが、ダイポールアンテナは1個でも、水平面内指向特性を可変することが可能である。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0015】
1 反射板
4 導波器
5 水平偏波用の半波長ダイポールアンテナ
10 底面反射板
11 側面反射板
21,22 垂直偏波用の一対のダイポールアンテナ
30a 第1のスリット
30b 第2のスリット
31 第1の導電体
32 第2の導電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射板と、
前記反射板上に配置される少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナとを備え、
前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナから放射される電波の偏波方向が大地に対して垂直方向であるアンテナ装置であって、
前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの両側に前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナの延長方向に沿って配置される第1の導電体と第2の導電体を有し、
前記反射板の反射面と平行で、前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナが配置される面を第1の面、前記反射板の反射面と平行で、前記第1の導電体と前記第2の導電体が配置される面を第2の面とするとき、前記第2の面は、前記反射板の反射面から見て前記第1の面よりも外側に位置し、
前記第1の導電体と前記第2の導電体とは、それぞれ、延長方向の両端から中心領域に向かって延びる第1のスリットと第2のスリットを有することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナ上に配置される導波器を有し、
前記反射板の反射面と平行で、前記導波器が配置される面を第3の面とするとき、前記第3面は、前記反射板の反射面から見て前記第2の面よりも外側に位置することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記少なくとも1個の半波長ダイポールアンテナは、前記反射板上に所定の間隔をおいて配置される一対の半波長ダイポールアンテナであることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記反射板の反射面に直交し、前記一対の半波長ダイポールアンテナの中心を通る面上で、前記反射板の反射面上に配置される導波器を有し、
前記反射板の反射面と平行で、前記導波器が配置される面を第3の面とするとき、前記第3面は、前記反射板の反射面から見て前記第2の面よりも外側に位置することを特徴とする請求項3に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
電波の偏波方向が大地に対して水平方向である第1アンテナ装置と、
電波の偏波方向が大地に対して垂直方向である第2アンテナ装置とを備えるアレイアンテナであって、
前記第2アンテナ装置は、前記請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のアンテナ装置であることを特徴とするアレイアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−54653(P2012−54653A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−193554(P2010−193554)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(000232287)日本電業工作株式会社 (71)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】