説明

アンテナ装置および携帯端末機器

【課題】アンテナ素子が基板に非常に近接して低姿勢でも、独立した2共振特性をもち、それぞれの周波数で特性が劣化しないようにする。
【解決手段】本発明のアンテナ装置は、基板の外周辺の第一の部分に沿って配置される第1の線状素子と、一端が前記第1の線状素子に接続され、他端が前記基板上の給電点に接続される給電素子と、一端が前記第1の線状素子の一端に接続され、他端が前記基板に接続される接地素子と、前記基板の前記外周辺の第二の部分に沿って互いに並行して配置された第2および第3の線状素子と、前記第2の線状素子の一端を、前記給電素子の一端および他端間に接続する第4の線状素子と、前記第2の線状素子の前記一端と同じ側の前記第3の線状素子の一端を、前記接地素子の一端および他端間に接続する第5の線状素子と、前記第2の線状素子の他端と前記第3の線状素子の他端同士を接続する第6の線状素子と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アンテナ装置および携帯端末機器に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等の無線通信を行う端末機器におけるアンテナは、様々なアプリケーションに対応するため、複数の周波数で動作することが求められている。一方、アンテナを機器外に配置することは、機器のデザイン性、小型形状を損なわせることになるため、機器に内蔵させ、できるだけ占有体積を小さくすることが求められている。しかしながらアンテナを機器に内蔵すると、アンテナが基板に近づき、特性が劣化してしまうという問題がある。その問題を解決するために、特許文献1では、以下のようにしている。
【0003】
特許文献1に開示されたアンテナは、給電点に接続されて動作する第1の素子と、接地点に接続し、前記第1の素子と近接させて結合給電により動作させられる第2の素子とを備え、周波数f1またはf1より高い周波数f2の何れか一方または双方で動作する。第2の素子による周波数f1における共振、第1および第2の素子による周波数f2における共振の2共振動作が得られる。周波数f2における共振はアンテナ素子に電流が集中するため、アンテナを携帯電話機等の無線通信装置に搭載しても、人体の影響を受けにくい特性が得られ、よって筐体内にアンテナを完全に内蔵化することが可能となる。
【特許文献1】特開2007−181046号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来のアンテナにおいては、第1の素子は給電点、第2の素子は接地点にそれぞれの端部が接続されたモノポール構造となっているため、筐体内部に低姿勢に配置すると、素子が基板に近接することにより給電点に電流が集中して低インピーダンスとなってしまい、インピーダンス整合が不可能となるという問題があった。また、周波数f1の共振は第2の素子に流れる電流よるもの、周波数f2の共振は第1および第2の素子に流れる電流によるものであるため、f1とf2の共振周波数は独立に制御できず、複数の任意の周波数で動作できないという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、アンテナ素子が基板に非常に近接して低姿勢でも、独立した2共振特性をもち、それぞれの周波数で特性が劣化しないようにしたアンテナ装置および携帯無線機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としてのアンテナ装置は、
基板に取り付けられるアンテナ装置であって、
前記基板の外周辺の第一の部分に沿って配置される第1の線状素子と、
一端が前記第1の線状素子に接続され、他端が前記基板上の給電点に接続される給電素子と、
一端が前記第1の線状素子の一端に接続され、他端が前記基板に接続される接地素子と、
前記基板の前記外周辺の第二の部分に沿って互いに並行して配置された第2および第3の線状素子と、
前記第2の線状素子の一端を、前記給電素子の一端および他端間に接続する第4の線状素子と、
前記第2の線状素子の前記一端と同じ側の前記第3の線状素子の一端を、前記接地素子の一端および他端間に接続する第5の線状素子と、
前記第2の線状素子の他端と前記第3の線状素子の他端同士を接続する第6の線状素子と、を備え、
前記第1の線状素子と前記給電素子とは第1の放射素子を形成し、
前記給電素子において前記給電素子の前記他端から前記第4の線状素子の一端との接続部までの部分と、前記接地素子において前記接地素子の前記他端から前記第5の線状素子の一端との接続部までの部分と、前記第2、第3、第4、第5、第6の線状素子とは第2の放射素子を形成し、
前記第1の放射素子は、第1の周波数で共振する長さを有し、前記第2の放射素子は、前記第1の周波数と異なる第2の周波数で共振する長さを有する
ことを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様としての携帯端末機器は、上記アンテナ装置を備え、前記アンテナ装置を介して通信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以下、図面を参照しながら本実施の形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。図2および図3は図1のアンテナ装置を2つの部分に分解して示した図である。
【0010】
図1のアンテナ装置は、導電性材料により形成された基板1に取り付けられている。基板1は機器に内蔵される基板であり、例えば基板1上には回路素子や配線が配置されることができる。
【0011】
図1のアンテナ装置は、特に図2に示すように、基板1の外周辺の第一の部分に沿って配置される第1の素子(第1の線状素子)6と、一端が第1の素子6に接続され、他端が基板1上の給電部(給電点)2に接続された給電素子4と、一端が第1の素子6の一端に接続され、他端が基板1上の接地部3に接続された接地素子5とを備える。第1の素子6の他端は開放端である。第1の素子6と給電素子4とは第1の放射素子を形成する。
【0012】
また図1のアンテナ装置は、特に図3に示すように、基板1の外周辺の第二の部分に沿って互いに並行(並走)して配置された第2の素子(第2の線状素子)7および第3の素子(第3の線状素子)8と、第2の素子7の一端を、給電素子4の一端および他端間に接続する第4の素子(第4の線状素子)9と、第2の素子7の一端と同じ側の第3の素子8の一端を、接地素子5の一端および他端間に接続する第5の素子(第5の線状素子)10と、第2の素子7の他端と第3の素子8の他端同士を接続する第6の素子11と、を備える。給電素子4における他端から第4の素子9との接続部までの部分と、接地素子5における他端から第5の素子10との接続部までの部分と、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10、第6の素子11とは第2の放射素子を形成する。
【0013】
第1の放射素子は、第1の周波数f1で共振する長さを有し、第2の放射素子は、第1の周波数と異なる第2の周波数f2で共振する長さを有する。本例では、第1の放射素子は、第1の周波数f1において略4分の1波長の長さを有し、第2の放射素子は、第2の周波数f2において略2分の1波長の長さを有する。
【0014】
給電素子4、接地素子5、第1の素子6、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10および第6の素子11は、金属性のワイヤまたはストリップ線路等として構成され、例えば銅、アルミ、銀または金等からなっている。
【0015】
このような図1のアンテナ装置は2つの周波数f1およびf2で独立して動作し、かつそれぞれの周波数で容易にインピーダンス整合をとることが可能である。以下、図1のアンテナ装置の動作について説明する。
【0016】
図4、図5は図2、図3の給電部2付近を拡大した図であり、図中の矢印は電流の流れを表している。
【0017】
図2において、第1の素子6が基板1に近接している場合、仮に接地部3および接地素子5が存在しないとすると、給電部2付近に電流が集中してアンテナ装置の入力インピーダンスが低下してしまい、整合をとることができない。これに対し、本実施形態のように、接地部3および接地素子5が配置されていると、図4のように接地素子5に迂回電流が流れ、その電流が給電素子4に流れ込んで給電部2付近の電流が打ち消される(迂回電流のうち給電素子4に流れ込んだ電流が破線で示されている)。このため、給電部2における電流の集中が緩和され、インピーダンスが増加して整合をとることができる。図2に示した形状のアンテナは一般的に逆Fアンテナと呼ばれている。
【0018】
また、図3において、第2の素子7および第3の素子8が基板1に近接している場合、仮に接地部3および接地素子5が存在しないとすると、給電部2付近に電流が集中してアンテナ装置の入力インピーダンスが低下してしまい、整合をとることができない。これに対し、本実施形態のように、接地部3および接地素子5が配置されていると、図5のように接地素子5に迂回電流が流れ、その電流が給電素子4に流れ込んで給電部2付近の電流が打ち消される(迂回電流のうち給電素子4に流れ込んだ電流が破線で示されている)。このため給電部2における電流の集中が緩和され、インピーダンスが増加して整合をとることができる。さらに、接地素子5が第5の素子10によって分岐させられて第3の素子8と接続されていることにより、第3の素子8から接地素子5に流れこむ電流が迂回電流にプラスされ、より大きな迂回電流が得られる。したがって、給電部2付近の電流を打ち消す効果が強まり、よりインピーダンスを増加させることができる。よって第2の素子7および第3の素子8を基板1に近接させ、低姿勢化させることができる。
【0019】
このように、接地部3および接地素子5は2つの動作周波数f1およびf2における整合素子として動作し、接地素子5が分岐して、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10、第6の素子11から成る折り返し部分に接続されていることにより、アンテナ素子を基板に非常に近接させても整合をとることが可能となる。すなわち、第1および第2の放射素子が基板に非常に近接した低姿勢な構造であっても、接地素子が第1および第2の周波数における整合素子となり、給電部に集中した電流を打ち消すため、接地素子の形状や接地部の位置を調節することにより、第1および第2の周波数において容易に整合をとることができる。
【0020】
したがって、機器の筐体内部に狭い空間しかない場合でも、インピーダンス特性が劣化しない独立2共振特性をもち、同時に任意の2つの周波数で動作するアンテナ装置を提供することが可能となる。すなわち、第1の周波数と第2の周波数でそれぞれ共振が生じ、それぞれの共振周波数は独立に制御できる。
【0021】
また第1の放射素子が第1の周波数において略4分の1波長の長さ、第2の放射素子が第2の周波数において略2分の1波長の長さであることにより、効率よく電流が分布する。
【0022】
図6は、図1のアンテナ装置における基板のサイズを110mm×65mm、基板1と第1の素子6との距離(最短距離)を略9mm、基板1と第3の素子8との距離(最短距離)を略3mmとした際のVSWR(電圧定在波比)の電磁界シミュレーション結果を示す。
【0023】
図7および図8は、図2および図3のアンテナ構造において図6と同様の値としたときのVSWRの電磁界シミュレーション結果をそれぞれ示す。
【0024】
図6においてVSWRが低減されている周波数(f1、f2)が、図7においてVSWRが低減されている周波数(f1)と図8においてVSWRが低減されている周波数(f2)とほぼ同じである。したがって図1のアンテナ装置は、図2の部分と図3の部分が互いに影響を及ぼさず、独立に動作することが確認できる。また第1の素子6、第3の素子8が基板1にそれぞれ略50分の1波長(略9mm)、略140分の1波長(略3mm)の距離で近接していても、f1およびf2の周波数においてVSWRが低減されていることが確認できる。
【0025】
図1のアンテナ装置において、第2の素子7および第3の素子8は、折り曲げ形状を有していたが、図9に示すように第2の素子7および第3の素子8が、直線状の形状を有していてもよい。
【0026】
また、第1の素子6、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10および第6の素子11は、メアンダ、ヘリカルもしくはコイル形状を有していてもよい。
【0027】
(第2の実施形態)
図10は本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。
【0028】
図1のアンテナ装置に対し第7の素子12、第8の素子13および第9の素子14が追加されている。
【0029】
より詳細には、このアンテナ装置は、第1の素子6に並行して配置された第7の素子12と、第1の素子6の一端と同じ側の第7の素子の一端を基板1の接地部15に接続する第8の素子13と、第1の素子6の他端と、第7の素子12の他端同士を接続する第9の14素子とを追加的に備えている。
【0030】
第7の素子12、第8の素子13および第9の素子14は、金属性のワイヤまたはストリップ線路等として構成され、例えば銅、アルミ、銀または金等からなっている。
【0031】
このアンテナ装置においては、給電素子4と、第1の素子6と、第7の素子12と、第8の素子13と、第9の素子14とが第1の放射素子を形成する。本実施形態における第1の放射素子は、第1の周波数の略2分の1波長の長さを有する。第2の放射素子は、第1の実施形態と同様の要素から構成され、第2の周波数の略2分の1波長の長さを有する。
【0032】
第1の放射素子(第1の素子6、第7の素子12、第8の素子13、第9の素子14、給電素子4)は折り返し構造を有して第8の素子13の端部を介して接地部15に接続され、全体として第1の周波数f1において略2分の1波長の長さを有することにより、給電素子4に流れる電流が接地部15から第8の素子13に流れる電流と分離される。このため、第1の周波数f1における入力インピーダンスが図1のアンテナ装置よりも増加し、第1の放射素子を基板1に近接させた場合、図1のアンテナ装置よりもVSWRの劣化が少ない。なお、図10のアンテナ装置の動作は図1のアンテナ装置の動作と同様であるので省略する。
【0033】
第1の実施形態と同様に、第2の素子7および第3の素子8は、折り曲げ形状でなく、直線状の形状を有していてもよい。
【0034】
また、第1の素子6、第7の素子12、第8の素子13および第9の素子14、ならびに、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10および第6の素子11は、メアンダ、ヘリカルもしくはコイル形状を有していてもよい。
【0035】
本実施形態によれば、第1の放射素子が折り返し構造となっていることにより、構造は第1の実施形態よりも複雑になるものの、第1の周波数における入力インピーダンスが増加し、より第1の放射素子を基板に近接可能となる。また第1および第2の放射素子がそれぞれ、第1の周波数において略2分の1波長の長さ、第2の周波数において略2分の1波長の長さであることにより、効率よく電流が分布する。
【0036】
(第3の実施形態)
図11は本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。
【0037】
図11のアンテナ装置は、第1の素子6および第6の素子11に一端が接続され、他端が基板1に接続(接地)された可変容量素子21および22を備えている。また可変容量素子21および22は、基板1上に配置された制御回路23および24に接続され、制御回路23および24からの制御により、容量が可変になっている。
【0038】
図11のアンテナ装置では、可変容量素子21および22の容量値によって、動作周波数が変化する。第6の素子11に容量が付加されることにより、第2の素子7、第3の素子8、第4の素子9、第5の素子10、および第6の素子11から成る折り返し部分の電気的長さが長くなり、付加されない場合と比較して動作周波数は低下する。また第1の素子6に容量が付加されることにより、第6の素子11の電気的長さが長くなり、付加されない場合と比較して動作周波数は低下する。さらに可変容量素子21および22の容量値が増加すると、動作周波数は低下する。このように可変容量素子21および22の容量値を制御回路23および24で制御し、変化させることで、同時に2つの共振を、所望の周波数に移動させて使用することができる。
【0039】
ここでアンテナ素子に付加する容量値を大きくして、容量値が最小値の場合の動作周波数fよりも十分に低い周波数f’でアンテナを動作させると、周波数fにおける波長よりもf’における波長の方が十分長く、周波数f’において共振するアンテナの大きさよりも十分小さい大きさで動作させることになる。このような場合、周波数f’においてアンテナ素子の大きさが十分ではないため電流がのりにくく、効率が劣化してしまう。
【0040】
そこで、図11のアンテナ装置において、2つの周波数f1とf2の動作する帯域を低周波側、高周波側と分けて動作させることにより、可変容量素子21および22の容量値を大きくせずとも、広い周波数帯域において効率を劣化させずに動作させることができる。
【0041】
以上のように本実施形態によれば、容量制御によりf1、f2の周波数の片方もしくは両方を可変とすることで、アンテナ形状を変化させることなく、所望の周波数でアンテナを動作させることができる。また、周波数f1とf2の動作する帯域を低周波側、高周波側と分けて動作させることにより、可変容量素子およびの容量値を大きくせずとも、広い周波数帯域において効率を劣化させず、アンテナを動作させることができる。
【0042】
(第4の実施形態)
図12は本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図である。
【0043】
第3の実施形態では、可変容量素子21および22がそれぞれ個別の制御回路23、24に接続されていたが、本実施の形態では、共通の制御回路25に接続され、同時に制御されるようになっている。
【0044】
ここで可変容量素子21および22の容量のみならず、これらを配置する位置を変化させることによっても動作周波数が変化し、容量値の変化量に対する周波数の変化量も変化する。また可変容量素子21および22を電位差のより高い部分に配置することで、容量値を付加する効果が高くなり、より低い周波数において動作し、容量値の変化量に配する周波数の変化量が増加する。
【0045】
上記を踏まえ、図12のアンテナ装置において、2つの周波数f1とf2の動作する帯域を低周波側、高周波側と分け、さらに周波数f1とf2の差と、可変容量素子21および22の位置を調節することにより、可変容量素子21および22の容量値および容量の可変単位(一度に変更する容量値)を同じ値とした場合、動作周波数の変化量を同じにすることができる。こうすることにより、可変容量素子21および22を個別に制御する必要がなくなり、制御回路25で同時に制御して、広い周波数帯域において効率を劣化させず、動作させることができる。以下これについてより詳細に説明する。
【0046】
図13は、可変容量素子21を第1の素子6の略中点に、可変容量素子22を第6の素子11に接続し、可変容量素子21、22の容量値が最小値の場合の2つの動作周波数f1とf2の関係をf2≒f1+(動作させたい周波数帯域幅)/2とし、可変容量素子21および22の最小容量値を0.1pF、容量の可変単位を0.1pFで0.5pFまで変化させた際のVSWR(電圧定在波比)の電磁界シミュレーション結果を示す。また、マッチングおよびアンテナ放射効率を含めた総効率の電磁界シミュレーション結果を図14に示す。なお、図12のアンテナ装置において、電圧の高い部分は、第1の放射素子では第1の素子6の開放端部分、第2の放射素子では第6の素子11の部分である。
【0047】
図13および図14より、可変容量素子21および22の容量値を0.1pF〜0.5pFの範囲で変化させることで、520MHz〜700MHz(比帯域30%)の広い周波数範囲での動作が確認できる。可変容量素子21および22の容量値をだんだん大きくして動作周波数を低下させると、VSWRがだんだん上昇し、総効率がだんだん減少してアンテナ特性が劣化するが、2つの共振を高周波側と低周波側に分けて動作させているため、低周波側での総効率の劣化が少ないことが確認できる。
【0048】
図13および図14のシミュレーションでは、可変容量素子21および22の容量の可変単位を0.1pFとしたため、隣り合う動作周波数の間の特性が多少劣化しているが、可変単位をより小さくすることで、所望の全周波数帯域で特性を劣化させず動作させることができる。
【0049】
(第5の実施形態)
図15は本発明の第5の実施形態に係る携帯無線機器の概略構成を示す図である。図15の携帯無線機器は、データや画像、映像、音声をやりとりする機器であり、図12のアンテナ装置を内蔵している。
【0050】
図15の機器の筐体26には画像等を表示する表示部27が備えられており、筐体26内に配置された図12のアンテナ装置を介して無線通信を行う。例えば、図12のアンテナ装置を介して地上波デジタルテレビ放送の信号を受信し、表示部27に映像を表示する。
【0051】
図12のアンテナ装置は、アンテナ素子が基板に非常に近接して低姿勢でも、独立した2共振特性をもち、それぞれの周波数で特性が劣化せず、可変容量素子21および22の容量値を変化させることにより、広い周波数帯域での動作が可能となる。
【0052】
よって、図15の機器に図12のアンテナ装置を内蔵することによって、アンテナ特性を劣化させることなく、内蔵される他の部品の配置のためのスペースを大きくして設計の自由度を増すことができ、また外部にアンテナ装置を備える必要がないので、外観のデザイン性を損なわない。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図。
【図2】図1のアンテナ装置において周波数f1で動作する部分を示す図。
【図3】図1のアンテナ装置において周波数f2で動作する部分を示す図。
【図4】図2の給電部2付近を拡大した図。
【図5】図3の給電部2付近を拡大した図。
【図6】図1のアンテナ装置のVSWRの電磁界シミュレーション結果を示す図。
【図7】図2のアンテナ構造のVSWRの電磁界シミュレーション結果を示す図。
【図8】図3のアンテナ構造のVSWRの電磁界シミュレーション結果を示す図。
【図9】本発明の第1の実施形態に係るアンテナ装置の他の例を示す図。
【図10】本発明の第2の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図。
【図11】本発明の第3の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図。
【図12】本発明の第4の実施形態に係るアンテナ装置の概略構成を示す図。
【図13】図12のアンテナ装置のVSWRの電磁界シミュレーション結果を示す図。
【図14】図12のアンテナ装置の総効率の電磁界シミュレーション結果を示す図。
【図15】本発明の第5の実施形態に係る無線装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0055】
1:基板
2:給電部(給電点)
3:接地部
4:給電素子
5:接地素子
6:第1の素子(第1の線状素子)
7:第2の素子(第2の線状素子)
8:第3の素子(第3の線状素子)
9:第4の素子(第4の線状素子)
10:第5の素子(第5の線状素子)
11:第6の素子(第6の線状素子)
12:第7の素子(第7の線状素子)
13:第8の素子(第8の線状素子)
14:第9の素子(第9の線状素子)
21、22:可変容量素子
23、24、25:制御回路
26:筐体
27:表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に取り付けられるアンテナ装置であって、
前記基板の外周辺の第一の部分に沿って配置される第1の線状素子と、
一端が前記第1の線状素子に接続され、他端が前記基板上の給電点に接続される給電素子と、
一端が前記第1の線状素子の一端に接続され、他端が前記基板に接続される接地素子と、
前記基板の前記外周辺の第二の部分に沿って互いに並行して配置された第2および第3の線状素子と、
前記第2の線状素子の一端を、前記給電素子の一端および他端間に接続する第4の線状素子と、
前記第2の線状素子の前記一端と同じ側の前記第3の線状素子の一端を、前記接地素子の一端および他端間に接続する第5の線状素子と、
前記第2の線状素子の他端と前記第3の線状素子の他端同士を接続する第6の線状素子と、を備え、
前記第1の線状素子と前記給電素子とは第1の放射素子を形成し、
前記給電素子において前記給電素子の前記他端から前記第4の線状素子の一端との接続部までの部分と、前記接地素子において前記接地素子の前記他端から前記第5の線状素子の一端との接続部までの部分と、前記第2、第3、第4、第5、第6の線状素子とは第2の放射素子を形成し、
前記第1の放射素子は、第1の周波数で共振する長さを有し、前記第2の放射素子は、前記第1の周波数と異なる第2の周波数で共振する長さを有する
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1の放射素子は、前記第1の周波数の略4分の1波長の長さを有し、
前記第2の放射素子は、前記第2の周波数の略2分の1波長の長さを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1の線状素子に並行して配置された第7の線状素子と、
前記第1の線状素子の前記一端と同じ側の前記第7の線状素子の一端を前記基板に接続する第8の線状素子と、
前記第1の線状素子の他端と、前記第7の線状素子の他端同士を接続する第9の線状素子と、備え、
前記給電素子と、前記第1の線状素子と、前記第7、第8、第9の線状素子とが前記第1の放射素子を形成し、
前記第1の放射素子は、前記第1の周波数の略2分の1波長の長さを有し、
前記第2の放射素子は、前記第2の周波数の略2分の1波長の長さを有する
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記第1の線状素子〜第9の線状素子のうちのいずれか1つに一端が接続され、他端が前記基板に接続される少なくとも1つの可変容量素子をさらに備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記基板と、
前記可変容量素子の容量を制御する制御手段と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項4に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項に記載のアンテナ装置を備え、前記アンテナ装置を介して通信を行うことを特徴とする携帯端末機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−278535(P2009−278535A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−129786(P2008−129786)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】