説明

アンテナ装置および電子機器

【課題】電子時計にも組み込み可能であり、組み込みスペースを最小限にできるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナ装置2は、支持基板3dと支持基板3dの面上に形成された発電部とを有し、光発電により電力を発生させる太陽電池部3と、電波受信部として機能する第1アンテナ電極と、第2アンテナ電極と、第1アンテナ電極と第2アンテナ電極との間に配置された誘電体層4aと、を有し、GPS衛星100からの電波を受信するためのアンテナ部4と、を備え、アンテナ部4では、第1アンテナ電極として支持基板3dを用い支持基板3dを電波受信部として機能させている、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池を有する構成のアンテナ装置、および、このアンテナ装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信の電波を受信するための受信装置の一例として、太陽電池アンテナが知られており、太陽電池アンテナは、衛星通信の受信端末として機能するアンテナ部と、太陽光を受けて電力に変換しアンテナ部等に給電するための太陽電池部と、を一体化した形態で有している。この太陽電池アンテナによれば、アンテナ部と太陽電池部とをそれぞれ別々に製作することや、それらの配置およびメンテナンスを個別にすること等が不要になるため、製作、配置、メンテナンスの簡便性において、従来よりも優れた構成となっている(例えば特許文献1)。
【0003】
また、電子機器として、太陽電池アンテナを有し衛星通信を受信するためのGPS(Global Positioning System)機能付の電子時計も開示されていて、この電子時計は、太陽光および電波が透過する文字板の裏面側に、ソーラーセル(太陽電池部)およびアンテナ部を配置する構成である。これにより、電子時計は、GPS電波の確実な受信を維持しながらも、時計として、従来とほぼ同等の装飾性や装着性を有することが可能である(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−165128号公報
【特許文献2】特開2010−96707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1における技術では、アンテナ部と太陽電池部とが一体化され、簡便性の観点で太陽電池アンテナとして扱いやすくなっているが、単に一体化しただけのため、例えば電子時計等の小型の電子機器に内蔵できるように、小型化するための配慮がなされていない、という課題があった。一方、特許文献2における技術では、電子時計に組み込み可能な太陽電池アンテナが開示されているが、この太陽電池アンテナは、時計内部の専用スペースに、アンテナ部および太陽電池部を設ける構成であり、そのため、電子時計のさらなる小型薄型化の推進が困難である、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るアンテナ装置は、光発電により電力を発生させる太陽電池部と、位置情報衛星からの電波を受信するためのアンテナ部と、を有し、前記太陽電池部は、前記アンテナ部の一部を構成し前記アンテナ部の電波受信部として機能する、ことを特徴とする。
【0008】
このアンテナ装置によれば、太陽電池部とアンテナ部とを有していて、アンテナ部は、太陽光を利用して太陽電池部で発生した電力により、位置情報衛星からの電波を受信する機能を備えている。また、アンテナ部は、該電波を受信するための電波受信部として、太陽電池部を兼用して用いる構成である。つまり、アンテナ装置は、太陽電池部とアンテナ部とを一体化して有するだけではなく、太陽電池部をアンテナ部の一部としても用いている。このような構成のアンテナ部は、太陽電池部とアンテナ部とを単に一体化した場合に比べ、構成部品数を削減することができ、アンテナ装置そのものの小型薄型化を図ることが可能である。また、アンテナ装置を組み込んだ電子機器等の小型薄型化を図ることも可能となる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るアンテナ装置において、前記太陽電池部は、電気導体を材質とする支持基板と、前記支持基板の面上に形成された発電部と、を有し、前記アンテナ部は、前記電波受信部として機能する第1アンテナ電極と、第2アンテナ電極と、前記第1アンテナ電極と前記第2アンテナ電極との間に配置された誘電体層と、を有し、前記アンテナ部では、前記第1アンテナ電極として前記支持基板を用い前記電波受信部として機能させている、ことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、アンテナ装置の太陽電池部は、支持基板と発電部とを有しており、アンテナ部は、アンテナ部を構成する第1アンテナ電極が電波受信部として機能する構成である。ここで、アンテナ装置は、太陽電池部の支持基板が電気導体であって、アンテナ部の第1アンテナ電極の機能を兼用するように構成されており、従来の技術では必要であった支持基板および第1アンテナ電極の2部品を、支持基板の1部品のみとしたことが特徴である。これにより、アンテナ部では、第1アンテナ電極として支持基板を用い、この支持基板を電波受信部として機能させている、ことになり、構成部品数を削減してアンテナ装置の小型薄型化を確実に図ることが可能である。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るアンテナ装置において、前記太陽電池部は、第1電池電極と、第2電池電極と、前記第1電池電極と前記第2電池電極との間に配置された太陽電池層と、を含む発電部を有し、前記アンテナ部は、前記電波受信部として機能する第1アンテナ電極と、第2アンテナ電極と、前記第1アンテナ電極と前記第2アンテナ電極との間に配置された誘電体層と、を有し、前記アンテナ部では、前記第1アンテナ電極として前記第1電池電極および前記第2電池電極を用い前記電波受信部として機能させている、ことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、アンテナ装置の太陽電池部は、第1電池電極と、第2電池電極と、太陽電池層を含む発電部を有しており、アンテナ部は、アンテナ部を構成する第1アンテナ電極が電波受信部として機能する構成である。ここで、アンテナ装置は、太陽電池部の第1電池電極および第2電池電極がアンテナ部の第1アンテナ電極の機能を兼用するように構成されており、従来の技術では必要であった第1電池電極、第2電池電極、および第1アンテナ電極の構成部品を、第1電池電極および第2電池電極のみとしたことが特徴である。これにより、アンテナ部では、第1アンテナ電極として第1電池電極および第2電池電極を用い、これら第1電池電極および第2電池電極を電波受信部として機能させている、ことになり、構成部品数を削減してアンテナ装置の小型薄型化をより一層図ることが可能である。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るアンテナ装置において、前記太陽電池部は、第1電池電極と、第2電池電極と、前記第1電池電極と前記第2電池電極との間に配置された太陽電池層と、を含む発電部を複数有し、前記発電部は、前記第1電池電極と前記第2電池電極とを隣り合った前記発電部同士が交互に共有するように配置されて、直列に接続され、前記第1電池電極と隣り合った前記発電部の前記第2電池電極とは、相互間に構成される容量により高周波的に一体の導体となり、前記電波受信部として機能する、ことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、アンテナ装置は、太陽電池部の有する複数の発電部をそれぞれ直列に接続した構成である。つまり、太陽電池部において、発電電圧による2次電池の充電等のために、単一の発電部の発電電圧では足りず、発電部を直列にして発電電圧を高くしなければならない場合がある。このような場合、複数の発電部は、それぞれ直列に接続され、この直列接続において、隣り合った発電部同士で交互に第1電池電極と第2電池電極を共有し、同時に、隣り合った発電部の+、−の電極、いわゆる等価ダイオードの極性、が交互に反転し、すべての発電部が直列接続されていることが必要である。このように、発電部の直列接続により、太陽電池部は、より高圧の電力を出力することが可能である。さらに、太陽電池層を挟んで対向する第1電池電極と第2電池電極とは、これら電極の間の静電容量により、高周波的には第1電池電極および第2電池電極の全体が1枚の導体と等価な状態となる。これにより、各発電部の平面視形状を小さくしても、第1電池電極および第2電池電極は、トータルで電波受信部として必要な大きさを確保することが可能となり、アンテナ装置は、小型化を図りつつ電波受信部としての機能を十分に果たすことが可能である。
【0015】
[適用例5]本適用例に係るアンテナ装置において、リング形状の複数の発電部を中心から外周へ順に並べ、最内周の発電部と最外周の発電部とから発電電力を取り出す、ことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、発電部における発電電力取り出し部分の設定において、例えば発電部に絶縁層を設ける等の必要がなく、簡便な形態とすることが可能である。
【0017】
[適用例6]本適用例に係るアンテナ装置において、前記最内周の発電部の発電電力取り出し電極と前記アンテナ部の給電電極とを共有する構造である、ことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、太陽電池部では、発電部の発電電力取り出し電極とアンテナ部の給電電極とを兼用している。この場合、兼用する電極には、例えばローパスフィルタ等が設けられていて、衛星信号と発電電力とを分離している。これにより、太陽電池部は、配線をほぼ最小限にしつつ、電波の受信も円滑に行なうことが可能である。
【0019】
[適用例7]本適用例に係る電子機器は、上記適用例のいずれかに記載のアンテナ装置を備えている、ことを特徴とする。
【0020】
この電子機器によれば、太陽電池部がアンテナ部の一部を構成し電波受信部として機能するアンテナ装置を備えていることにより、電子機器におけるアンテナ装置の占める領域を極小に近づけることが可能となる。これにより、電子機器は、アンテナ装置を組み込まれても、小型薄型化が図れ、且つ、電波受信の機能も果たすことが可能である。
【0021】
[適用例8]上記適用例に係る電子機器は、前記太陽電池部が文字板の機能を兼ね備えている構成の前記アンテナ装置を有する、ことが好ましい。
【0022】
この電子機器によれば、電子機器としての電子時計の備えるアンテナ装置は、太陽電池部がアンテナ部の一部を構成すると共に文字板としても機能する構成である、このアンテナ装置を備えていることにより、電子時計は、時計内部におけるアンテナ装置の占める領域を極小に近づけることが可能となる。これにより、電子時計は、アンテナ装置を組み込まれても、デザイン等の制約を受けることを抑制でき、小型薄型化が図れ、且つ、電波受信の機能も果たすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】GPSシステムの概要を示す模式図。
【図2】GPS受信機能を備えた腕時計の構成を示す断面図。
【図3】腕時計の回路構成を示すブロック図。
【図4】(a)実施形態1に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)アンテナ装置の構成を示す断面図。
【図5】(a)アンテナ装置の詳細な構成を示す断面図、(b)支持基板における励振モードを示す平面図。
【図6】(a)実施形態2に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図、(b)アンテナ装置の構成を示す断面図。
【図7】実施形態3に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す斜視図。
【図8】(a)アンテナ装置の太陽電池部の構成を示す断面図、(b)太陽電池部の太陽電池出力点における構成を示す断面。
【図9】(a)実施形態4に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す平面図、(b)アンテナ装置の構成を示す断面図。
【図10】実施形態5に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す斜視図。
【図11】(a)アンテナ装置の太陽電池部の構成を示す断面、(b)太陽電池部の太陽電池出力点における構成を示す断面。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のアンテナ装置および電子機器について、添付図面を参照して説明する。まず、位置情報衛星からの電波を受信して利用する通信システムの一例として、GPSシステムを取り上げ、その概要について説明する。
【0025】
図1は、GPSシステムの概要を示す模式図である。この場合、GPSシステムは、位置情報衛星であるGPS衛星100と、GPS衛星100からの電波を受信する機能を備えた電子機器である腕時計(電子時計)1と、を含んでいる。図1に示すように、GPS衛星100は、地球の上空の所定の軌道上を周回しており、例えば1.57542GHzのマイクロ波に航法メッセージ等を重畳させた、衛星信号を地上に送信している。このGPS衛星100は原子時計を搭載しており、衛星信号には原子時計で計時された極めて正確な時刻情報であるGPS時刻情報が含まれている。そのため、GPS受信機としての機能を備えた腕時計1は、衛星信号を受信して、内部時刻の進みまたは遅れを修正することにより、正確な時刻を表示することができる。この修正は、測時モードとして行なわれる。
【0026】
また、衛星信号にはGPS衛星100の軌道上の位置を示す軌道情報も含まれている。つまり、腕時計1は、測位計算を行うこともでき、通常、4つ以上のGPS衛星からそれぞれ送信された衛星信号を受信することによって、それら中に含まれる軌道情報およびGPS時刻情報を使用して測位計算を行うようになっている。測位計算により、腕時計1は、現在位置に合わせて時差を修正することが容易にでき、この修正は、測位モードとして行なわれる。衛星信号を利用すれば、現在位置表示、移動距離測定、移動速度計測を行うなどの各種応用も可能であるが、腕時計1では、測時モードおよび測位モードによる、時刻および時差の修正機能を有する場合を例にして説明する。
【0027】
このような、GPS受信機能を備えた腕時計1について、その構成の一例を説明する。図2は、GPS受信機能を備えた腕時計の構成を示す断面図である。この図2そして図1に示すように、GPS受信機能付きの腕時計1は、ステンレス鋼、チタン等の金属やプラスティック等の樹脂で構成された外装ケース17を備えている。外装ケース17は、この場合、略円筒状に形成され、時刻を視認する側である表面側の開口にガラス19が取り付けられ、裏面側の開口に裏蓋26が取り付けられている。外装ケース17の内部には、時刻を刻むための機構であるムーブメント13と、ムーブメント13の表面側に設けられ衛星信号を受信するためのアンテナ装置2と、アンテナ装置2を構成し表面側に時刻を示すための時表示が形成されて文字板としても機能する太陽電池部3と、アンテナ装置2を構成し太陽電池部3の裏面側に設けられたアンテナ部4と、文字板の時表示を指し示す指針12と、ムーブメント13に内蔵され太陽電池部3による光発電で充電可能な二次電池24等が配置されている。
【0028】
ムーブメント13は、モーターコイル、ステータ、ローター等で構成されているステップモーター22と、ステップモーター22の駆動を指針12へ伝達する輪列23と、を含んで構成されている。このムーブメント13の裏蓋26の側には、回路基板25が配置され、回路基板25は、図3を参照して後述する受信モジュール70および制御部81を有し、コネクターを介してアンテナ装置2や二次電池24と接続されている。即ち、受信モジュール70や制御部81は、二次電池24から供給される電力で駆動されている。また、アンテナ装置2へも、衛星信号を受信するために、二次電池24から受信モジュール70の給電部75(図3)を介して給電されている。
【0029】
そして、腕時計1は、外装ケース17の3時側に、リューズ14や、ボタンA15およびボタンB16を有している。ボタンA15およびボタンB16は、これらを手動操作することにより、測時モードと測位モードとに設定できるように構成されている。例えば、ボタンA15が押されると、腕時計1は時刻の進み遅れを修正するための測時モードになり、ボタンB16が押されると、腕時計1は時差を修正するための測位モードになる。なお、腕時計1は、測時モードや測位モードを定期的に、そして自動的に実行するように設定することもできる。
【0030】
次に、GPS受信機能を備えた腕時計1の回路構成について説明する。図3は、腕時計の回路構成を示すブロック図である。腕時計1は、少なくとも1つのGPS衛星100からの衛星信号を受信してGPS時刻情報に基づいて内部時刻情報の修正を行う測時モードと、複数のGPS衛星100からの衛星信号を受信して測位計算を行って現在地を求め、現在地から特定される時差及びGPS時刻情報に基づいて、時差情報の修正を行う測位モードと、を備えている。腕時計1は、アンテナ部4を含むアンテナ装置2と、受信モジュール70と、制御部81を含む計時部80と、二次電池24を含む電源部90と、を有して構成されている。
【0031】
受信モジュール70は、アンテナ部4が接続されており、SAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)フィルター71と、RF(Radio Frequency:無線周波数)部50と、ベースバンド部60と、を含んで構成されている。SAWフィルター71は、アンテナ装置2が受信した信号から衛星信号を抽出する処理を行う。RF部50は、LNA(Low Noise Amplifier)51と、ミキサー52と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)53と、PLL(Phase Locked Loop)回路54と、IF(Intermediate Frequency:中間周波数)アンプ55と、IFフィルター56と、ADC(A/D変換器)57と、を含んで構成されている。
【0032】
SAWフィルター71が抽出した衛星信号は、LNA51で増幅され、ミキサー52でVCO53が出力するクロック信号とミキシングされて中間周波数帯の信号にダウンコンバートされる。PLL回路54は、VCO53の出力クロック信号を分周したクロック信号と基準クロック信号とを位相比較してVCO53の出力クロック信号を基準クロック信号に同期させる。ミキサー52でミキシングされた信号は、IFアンプ55で増幅され、IFフィルター56で高周波信号が除去される。IFフィルター56を通過した信号は、ADC(A/D変換器)57でデジタル信号に変換される。ベースバンド部60は、DSP(Digital Signal Processor)61と、CPU(Central Processing Unit)62と、SRAM(Static Random Access Memory)63と、RTC(リアルタイムクロック)64と、を含んで構成されている。また、ベースバンド部60には、温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)65やフラッシュメモリー66等が接続されている。
【0033】
温度補償回路付き水晶発振回路(TCXO)65は、温度に関係なくほぼ一定の周波数の基準クロック信号を生成する。そして、フラッシュメモリー66には時差情報が記憶されている。この時差情報は、地理情報が分割された複数の領域の各々の時差が定義された情報である。ベースバンド部60は、測時モード又は測位モードに設定されると、RF部50のADC57が変換したデジタル信号からベースバンド信号を復調する処理を行う。また、ベースバンド部60は、捕捉したGPS衛星100の航法メッセージに含まれる軌道情報やGPS時刻情報等の衛星情報を取得してSRAM63に記憶する。
【0034】
そして、計時部80は、制御部81及び水晶振動子84を含んで構成されている。制御部81は、記憶部82と、発振回路83と、駆動回路85とを備え、各種制御を行う。制御部81は、受信モジュール70を制御し、制御信号を受信モジュール70に送り、受信モジュール70の受信動作を制御すると共に、制御部81内の駆動回路85を介して指針12の駆動を制御する。記憶部82には内部時刻情報が記憶されていて、この内部時刻情報は、腕時計1の内部で計時される時刻の情報である。内部時刻情報は、水晶振動子84および発振回路83によって生成される基準クロック信号によって更新されるため、受信モジュール70への電力供給が停止されていても、内部時刻情報を更新して指針12の運針を継続することができるようになっている。
【0035】
さらに、制御部81は、測時モードに設定されると、受信モジュール70の動作を制御し、GPS時刻情報に基づいて内部時刻情報の進みまたは遅れを修正して記憶部82に記憶し、測位モードに設定されると、受信モジュール70の動作を制御し、GPS時刻情報及び現在地から求められる時差情報に基づいて、内部時刻情報を修正して記憶部82に記憶する。これにより、腕時計1は、表示している時刻の進みまたは遅れを把握することにより、水晶振動子84による計時をさらに高精度に修正して、常に正確な時刻を表示することができる。また、腕時計1は、時差情報を把握することにより、時差のある地域間を移動等した場合でも、常に現在地域の時刻を正確に表示することができる。
【0036】
そして、電源部90は、充電制御回路28、二次電池24およびレギュレータ29に加え、計時部80に組み込まれている太陽電池部3を含んで構成されている。二次電池24は、レギュレータ29を介して、受信モジュール70および計時部80等に駆動電力を供給する。また、太陽電池部3による光発電により発生した電力は、充電制御回路28を通じて二次電池24に供給され、二次電池24が充電される。充電制御回路28は、太陽電池部3と二次電池24との間に接続され、制御部81の制御信号86に基づいて、太陽電池部3と二次電池24との間を電気的に接続又は切断する。
以上、GPSシステムの概要について説明した。以下では、電子機器としての腕時計(電子時計)1に搭載されたアンテナ装置2の詳細な構成について説明する。
(実施形態1)
【0037】
図4(a)は、実施形態1に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図であり、図4(b)は、アンテナ装置の構成を示す断面図である。また、図5(a)は、アンテナ装置の詳細な構成を示す断面図であり、図5(b)は、支持基板における励振モードを示す平面図である。腕時計1に内装されているアンテナ装置2は、複数のGPS衛星100からの衛星信号を受信する必要がある。GPS衛星100から送信される衛星信号の電波は、いわゆる円偏波であるため、アンテナ装置2は、この円偏波を受信するのに適したいわゆるパッチアンテナであることが望ましく、さらに、腕時計に組み込めるように、コンパクトな形態であることが好ましい。そこで、アンテナ装置2は、腕時計1の文字板も構成する太陽電池部3および太陽電池部3と一体化しパッチアンテナとして機能するアンテナ部4、を有する形態となっている。
【0038】
図4および図5(a)に示すように、アンテナ装置2の太陽電池部3は、第1電池電極である透明電極3aと、透明電極3aを透過した太陽光により光発電を行う太陽電池層3bと、第2電池電極である下地電極3cとを有する発電部と、この発電部を支持している、金属製の電気導体を材質とする支持基板3dと、を腕時計1のガラス19(図2)の側から順に有している。そして、透明電極3aおよび下地電極3cは、電気的導体材で形成され、太陽電池層3bは、例えばアモルファスや単結晶または多結晶の半導体で形成されている。太陽電池部3で光発電された電力は、透明電極3aおよび下地電極3cを介して充電制御回路28(図3)へ出力される。
【0039】
透明電極3aのガラス19側には、指針12が指し示すための時刻を表示する時表示部11が形成されていて、この時表示部11は、プラスティック塗料等で形成されている。つまり、透明電極3aは、腕時計1の文字板としての機能を兼ね備えている。なお、文字板の機能は、透明電極3aの表面に装着された透明な保護板に形成される形態であっても好ましい。
【0040】
また、アンテナ装置2のアンテナ部4は、パッチアンテナであり、パッチアンテナのパッチ金属板即ち電波受信部である第1アンテナ電極として機能する、太陽電池部3の支持基板3dと、第2アンテナ電極としての機能を果たすムーブ電極部4bと、支持基板3dおよびムーブ電極部4bとの間に配置された誘電体層4aと、を有している。
【0041】
支持基板3dは、銅・アルミニウム・鉄・金・銀・パラジウム等の導体またはこれらの合金であることが好ましく、この場合、銅合金である黄銅を用いて円形に形成されている。下地電極3cも支持基板3dと同様、黄銅を用いて円形に形成されている。そして、支持基板3dは、円偏波をより効果的に受信するために、外周から円中心へ向かって所定の切り込み量で形成された切り込み部6を有している。切り込み部6は、この場合、矩形状であって、円中心を通る仮想直線上に対向するように位置して、2つ形成されている。切り込み部6の作用については、図5(b)を参照して後述する。
【0042】
そして、誘電体層4aは、支持基板3dとほぼ同じ大きさの円形形状であって、使用可能な材質としては、アルミナ(Al23)、ムライト(3Al23・2SiO2)、ステアライト(MgO/SiO2)、フォルステライト(2Mg2O/SiO2)、ジルコニア(PSZ)、チタン酸マグネシア(MgTiCO3)等が挙げられる。この誘電体層4aの特性としては、誘電率が18以上30以下が望ましく、誘電正接が0.001以下が望ましい。そこで、これらの特性を得るために、電子時計における誘電体層4aのサイズは、円形の場合には直径が2.5cm〜3.5cm、長方形の場合には一辺が2cm〜4cmであることが望ましく、共に厚さが0.05mm〜1.5mmであることが望ましい。ここでは、電子時計である腕時計1において、アンテナ装置2の誘電体層4aは、直径3cm、厚さ0.5mmのチタン酸マグネシア(MgTiCO3)を用い、誘電率が17および誘電正接が0.001の特性を有している。
【0043】
このような構成のアンテナ装置2において、アンテナ装置2へ給電部75から電力供給をするために、給電体5が設けられている。給電体5は、支持基板3dに対する所定位置である、給電点5aに設けられている。給電体5は、金属製の電気的導体であり、支持基板3dと接続された状態で誘電体層4aに挿通され、挿通された先端が絶縁体を介してムーブメント13(ムーブ電極部4b)と非接触となるようにして、ムーブメント13へ装着されている。支持基板3dへは、給電体5を介して、給電部75から電力が供給され、同時に、ムーブ電極部4bへも給電部75から電力が供給される。この場合、ムーブ電極部4bは、アース側であり、いわゆる接地電極として機能する。
【0044】
次に、アンテナ装置2による、GPS衛星100からの電波の受信について説明する。GPS衛星100からの電波は、受信する対象が、移動体のように任意の方向を向いていても受信可能となるように、円偏波が用いられている。円偏波は、時間の経過と共に電界の方向が回転する形態のものである。一般に、アンテナは、電波の電界方向と同じ方向に電流が流れることにより、該電波を受信することができる。従って、円偏波を受信するためには、アンテナに流れる電流を時間の経過と共に、回転させることが肝要である。アンテナに流れる電流が回転するためには、直交する方向に高周波電流を流し90度の位相差を持った励振を発生させれば良い。アンテナ装置2では、支持基板3dにおいて、以下に説明するようにして、互いに直交し90度の位相差を持った、2つの励振モードを発生させることにより、円偏波の受信を可能にしている。
【0045】
図5(b)に示すように、アンテナ装置2は、一箇所の給電点5aにおいて、給電体5から給電するピン給電方式である。この方式は、給電系に特別な回路素子等を用いることなく励振モードを発生させることができ、円偏波の受信が容易に行える簡便なものである。そのために、アンテナ装置2は、より確実に円偏波を受信するために、支持基板3dに切り込み部6を有している。切り込み部6は、この場合、時表示部11の3時および9時の位置に該当する支持基板3dの箇所に、それぞれ設けられ、給電点5aは、支持基板3dの中心から10時方向へ寄った位置に設けられている。
【0046】
このような配置のアンテナ装置2において、給電部75(図5(a))から給電体5へ高周波の給電がなされると、支持基板3dの2つの切り込み部6の間には、9時方向から3時方向へ電流が流れ励振モードF1が発生し、励振モードF1と直交する方向には、12時方向から6時方向へ電流が流れ励振モードF2が発生する。逆に言えば、アンテナ装置2の構成によれば、上記のような励振モードF1,F2が発生するように、給電点5aを設定することが可能である。この時、励振モードF1と励振モードF2とが励振する間の長さは、切り込み部6の有無により異なっており、切り込み部6の切込み長さを調整すれば、励振モードF1を励振モードF2と異なる位相とする等の制御が容易に行なえる。
【0047】
即ち、アンテナ装置2は、パッチ金属板における切り込み部6の形状、および、給電点5aと切り込み部6との相対位置を調整することにより、支持基板3dに発生する2つの励振モードF1,F2を制御でき、励振モードF1と励振モードF2とが、90度ずれた位相となるようにすれば、効果的に円偏波を受信することができる。
このように、アンテナ装置2は、太陽電池部3の支持基板3dがアンテナ部4の電波受信部の機能を兼用することにより、構成部品数の削減を可能にした構成である。このアンテナ装置2を搭載した腕時計1は、小型薄型化を確実に図ることができる。
(実施形態2)
【0048】
次に、アンテナ装置の他の形態について説明する。図6(a)は、実施形態2に係るアンテナ装置の構成を示す斜視図であり、図6(b)は、アンテナ装置の構成を示す断面図である。実施形態2におけるアンテナ装置20と、実施形態1におけるアンテナ装置2とは、パッチ金属板として機能する部品構成が異なっていることである。以下では、異なる部分の説明を主に行う。
【0049】
図6(a)および(b)に示すように、アンテナ装置20の太陽電池部30は、第1電池電極である透明電極3aと、透明電極3aを透過した太陽光により光発電を行う太陽電池層3bと、第2電池電極である下地電極3cとを有する発電部と、を腕時計1のガラス19(図2)の側から順に有している。この場合、太陽電池部30は、実施形態1における太陽電池部3とは異なる構成であり、つまり支持基板3dを有していない。そして、太陽電池部30で光発電された電力は、透明電極3aおよび下地電極3cを介して充電制御回路28(図3)へ出力される。
【0050】
また、アンテナ装置20のアンテナ部40は、パッチアンテナであり、その構成は、パッチアンテナのパッチ金属板即ち電波受信部である第1アンテナ電極として機能する、太陽電池部30の下地電極3cと、第2アンテナ電極としての機能を果たすムーブ電極部4bと、下地電極3cおよびムーブ電極部4bとの間に配置された誘電体層4aと、を有している。
【0051】
下地電極3cは、銅・アルミニウム・鉄・金・銀・パラジウム等の導体またはこれらの合金が挙げられ、この場合、銅合金である黄銅を用いて円形に形成されている。そして、下地電極3cは、円偏波をより効果的に受信するために、外周から円中心へ向かって所定の切り込み量で形成された切り込み部6を有している。切り込み部6は、この場合、矩形状であって、円中心を通る仮想直線上に対向するように位置して、2つ形成されている。切り込み部6の作用については、実施形態1における支持基板3dの場合と同様である。
【0052】
このアンテナ装置20は、太陽電池部30の下地電極3cがアンテナ部40の電波受信部の機能を兼用することにより、構成部品数の削減を可能にした構成である。このアンテナ装置20を搭載した腕時計1は、小型薄型化を確実に図ることができる。
(実施形態3)
【0053】
次に、アンテナ装置のさらなる他の形態について説明する。図7は、実施形態3に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す斜視図である。図8(a)は、アンテナ装置の太陽電池部の構成を示す断面であり、図8(b)は、太陽電池部の太陽電池出力点における構成を示す断面である。実施形態3のアンテナ装置は、太陽電池部31が実施形態2におけるアンテナ装置20の太陽電池部30と同様にパッチ金属板としての機能を有するが、この太陽電池部31の構成が太陽電池部30(透明電極3a、太陽電池層3b、下地電極3c)とは異なっている。以下では、太陽電池部31の構成について、主に説明する。
【0054】
図7および図8に示すように、太陽電池部31は、太陽電池部30の太陽電池層3b(図6)に該当する部分が4つの太陽電池層3b1,3b2,3b3,3b4に分かれている。これら太陽電池層3b1,3b2,3b3,3b4は、隣り合うものの極性Pおよび極性Nが異なる方向となるように配置されている。つまり、太陽電池層3b1は腕時計1のガラス19(図2)の側を極性Pとし、太陽電池層3b2はガラス19の側を極性Nとし、太陽電池層3b3はガラス19の側を極性Pとし、太陽電池層3b4はガラス19の側を極性Nとした配置である。
【0055】
また、太陽電池部31は、太陽電池部30の下地電極3c(図6)に該当する部分が2つの下地電極3c1,3c2に分かれている。このうち、一方の下地電極3c1は、太陽電池層3b1および3b2に重なるように配置され、太陽電池層3b1の極性N側と太陽電池層3b2の極性P側とを電気的に接続している。そして、他方の下地電極3c2は、太陽電池層3b3および3b4に重なるように配置され、太陽電池層3b3の極性N側と太陽電池層3b4の極性P側とを電気的に接続している。
【0056】
さらに、太陽電池部31は、太陽電池部30の透明電極3a(図6)に該当する部分が2つの透明電極3a1と透明電極3a2とに分かれている。このうち、一方の透明電極3a1は、太陽電池層3b1および太陽電池層3b4に重なるように配置され、他方の透明電極3a2は、太陽電池層3b2および太陽電池層3b3に重なるように配置されている。ここで、透明電極3a2は、太陽電池層3b2の極性N側と太陽電池層3b3の極性P側とを電気的に接続していて、太陽電池層3b2と太陽電池層3b3とを直列に接続する構成である(図8(a))。なお、透明電極3a1,3a2には、時表示部11(図6)が形成されていて、腕時計1の文字板としての機能を兼ね備えている。
【0057】
また、透明電極3a1は、透明電極3a2より厚さが薄く設定されていて、太陽電池層3b1と対向する部分には透明電極3a3が設けられている。透明電極3a1と透明電極3a3の合計厚さは、透明電極3a2と同じであり、透明電極3a1は、透明電極3a3を介して太陽電池層3b1の極性P側に接続している。これに対し、透明電極3a1の太陽電池層3b4と対向する部分には、透明電極3a1の側から順に、絶縁層10と透明電極3a4とが設けられている。透明電極3a1は、絶縁層10により太陽電池層3b4とは接続されていない状態であり、透明電極3a4は、太陽電池層3b4の極性N側に接続している(図8(b))。
【0058】
このような構成の太陽電池部31は、透明電極3a1および透明電極3a3と太陽電池層3b1と下地電極3c1とが1つの発電部として機能し、同様に、下地電極3c1と太陽電池層3b2と透明電極3a2の組合せ、および透明電極3a2と太陽電池層3b3と下地電極3c2の組合せ、および下地電極3c2と太陽電池層3b4と透明電極3a4の組合せ、がそれぞれ発電部として機能する。これら各発電部は、透明電極3a1,3a2,3a3,3a4および下地電極3c1,3c2により、直列に接続されており、透明電極3a1に設けた太陽電池出力点35aと透明電極3a4に設けた太陽電池出力点35bとを介して、発生した電力を充電制御回路28(図3)へ送っている。このように、太陽電池部31は、複数の発電部をそれぞれ直列に接続した構成であるため、太陽電池部31は、より高圧の電力を出力することができ、受信モジュール70や計時部80を確実に駆動させることができる。
【0059】
さらに、太陽電池部31は、下地電極3c2に給電点5aが設けられている。そして、太陽電池層3b1,3b2,3b3,3b4を挟んで対向する、下地電極3c1,3c2と透明電極3a1,3a2,3a3,3a4とは、各電極の間の静電容量により、高周波的にはこれら電極の全体が1枚の導体と等価な状態となっている。ここで、下地電極3c1,3c2および透明電極3a1,3a2,3a3,3a4は、それぞれ分割されており、この分割された形状は、切り込み部6(図6)を設けた場合とほぼ同様な励振モードの発生が可能であり、円偏波を受信することができる。即ち、これら電極全体は、支持基板3d(図5(b))がパッチ金属板として機能するのと同様に、パッチ金属板として機能することができる。これにより、太陽電池部31の平面視形状が小さくても、太陽電池部31は、下地電極3c1,3c2および透明電極3a1,3a2,3a3,3a4を電波受信部とすることができ、電波の受信を確実に行なうことができる。
(実施形態4)
【0060】
次に、アンテナ装置の第4の形態について説明する。図9(a)は、実施形態4に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す平面図であり、図9(b)は、アンテナ装置の構成を示す断面図である。実施形態4のアンテナ装置は、太陽電池部32において、実施形態3の太陽電池部31と同様に透明電極、太陽電池層および下地電極で構成された各発電部を、直列に接続する形態であるが、太陽電池出力点35bにおける構成がより簡便な形態となっている。
【0061】
図9に示すように、太陽電池部32は、最外形の形状が円形であって、この場合5つの発電部321,322,323,324,325を有している。詳細には、略円形の発電部321をほぼ中央にして、発電部321を取り巻くようにリング状の発電部322が配置され、同様にリング状の発電部323,324,325が順に配置されている。これら発電部321,322,323,324,325の太陽電池層は、隣り合うものの極性PおよびNが異なる方向となるように配置されている。
【0062】
太陽電池部32の発電部321は、腕時計1のガラス19(図2)の側から順に、透明電極321aと、太陽電池層321bと、下地電極321cと、を有していて、他の発電部も同様の構成となっている。そして、下地電極321cは、隣り合う発電部322まで伸びて発電部322へ接続されている。このようにして、発電部321と発電部322とが直列に接続され、各発電部も透明電極および下地電極により、順に直列に接続されている。
【0063】
このような構成の太陽電池部32では、例えば発電部321の透明電極321aに太陽電池出力点(発電電力取り出し電極)35aを設け、発電部325の下地電極に太陽電池出力点35bを設けて、発生した電力を充電制御回路28(図3)へ送ることができる。この場合、太陽電池出力点35の設定において、絶縁層等を設ける必要がなく、簡便な形態となっている。さらに、太陽電池部32では、透明電極321aの太陽電池出力点35aを給電点(給電電極)として兼用している。この場合、給電点を兼用する太陽電池出力点35aには、ローパスフィルタ(不図示)が設けられていて、円偏波の衛星信号と直流の発電電力と、を分離している。これにより、発電部321,322,323,324,325の透明電極および下地電極をパッチ金属板として機能させることができ、実施形態3の場合等と同等に電波の受信を円滑に行なうことができる。
(実施形態5)
【0064】
次に、アンテナ装置の第5の形態について説明する。図10は、実施形態5に係るアンテナ装置における太陽電池部の構成を示す斜視図である。また、図11(a)は、アンテナ装置の太陽電池部の構成を示す断面であり、図11(b)は、太陽電池部の太陽電池出力点における構成を示す断面である。実施形態5のアンテナ装置は、太陽電池部33において、実施形態3および4の太陽電池部31,32と同様に透明電極、太陽電池層および下地電極で構成された各発電部を、直列に接続する形態であるが、その接続形態が異なっている。
【0065】
図10および図11に示すように、太陽電池部33は、太陽電池部32における配置のような、4つの太陽電池層3b11,3b12,3b13,3b14を有している。これら太陽電池層3b11,3b12,3b13,3b14は、極性PおよびNが同じ方向となるように配置されている。つまり、太陽電池層3b11,3b12,3b13,3b14は、この場合、腕時計1のガラス19(図2)の側を極性Pとし、ムーブメント13(図2)の側を極性Nとした配置となっている。
【0066】
また、太陽電池部33は、4つの下地電極3c11,3c12,3c13,3c14を有している。そして、下地電極3c11は、太陽電池層3b11と対向して配置され、さらに、隣り合う太陽電池層3b12の端部に重なるように延長して配置されている。下地電極3c11の太陽電池層3b12の端部と重なった領域には、下地電極接点部7aが設けられている。下地電極3c12は、太陽電池層3b12と対向して配置され、さらに、隣り合う太陽電池層3b13の端部に重なるように延長して配置されている。下地電極3c12の太陽電池層3b13の端部と重なった領域には、下地電極接点部7bが設けられている。下地電極3c13は、太陽電池層3b13と対向して配置され、さらに、隣り合う太陽電池層3b14の端部に重なるように延長して配置されている。下地電極3c13の太陽電池層3b14の端部と重なった領域には、下地電極接点部7cが設けられている。そして、下地電極3c14は、太陽電池層3b14と対向して配置され、さらに、隣り合う太陽電池層3b11の端部に重なるように延長して配置されている。下地電極3c14の太陽電池層3b11の端部と重なった領域には、絶縁層10が設けられている。
【0067】
さらに、太陽電池部33は、4つの透明電極3a11,3a12,3a13,3a14を有している。透明電極3a11は、太陽電池層3b11に重なるように配置され、透明電極3a12は、太陽電池層3b12に重なるように配置され、透明電極3a13は、太陽電池層3b13に重なるように配置され、透明電極3a14は、太陽電池層3b14に重なるように配置されている。なお、透明電極3a11,3a12,3a13,3a14には、時表示部11(図6)が形成されていて、腕時計1の文字板としての機能を兼ね備えている。
【0068】
そして、太陽電池層3b12には、下地電極接点部7aに対応する位置に貫通孔8aが形成されていて、この貫通孔8aを介して、下地電極接点部7aと透明電極3a12の透明電極接点部9aとが電気的に導通可能になっている。太陽電池層3b13には、下地電極接点部7bに対応する位置に貫通孔8bが形成されていて、この貫通孔8bを介して、下地電極接点部7bと透明電極3a13の透明電極接点部9bとが電気的に導通可能になっている。そして、太陽電池層3b14には、下地電極接点部7cに対応する位置に貫通孔8cが形成されていて、この貫通孔8cを介して、下地電極接点部7cと透明電極3a14の透明電極接点部9cとが電気的に導通可能になっている(図11(a))。
【0069】
このような構成の太陽電池部33は、透明電極3a11と太陽電池層3b11と下地電極3c11とが1つの発電部として機能し、同様に、透明電極3a12と太陽電池層3b12と下地電極3c12の組合せ、および透明電極3a13と太陽電池層3b13と下地電極3c13の組合せ、および透明電極3a14と太陽電池層3b14と下地電極3c14の組合せ、がそれぞれ発電部として機能する。これら各発電部は、下地電極接点部7a,7b,7c、貫通孔8a,8b,8cおよび透明電極接点部9a,9b,9cにより、直列に接続されている。
【0070】
また、下地電極3c14は、絶縁層10により、太陽電池層3b11および透明電極3a11とは電気的な接続が遮断されている(図11(b))。即ち、透明電極3a11に太陽電池出力点35aを設け、下地電極3c14に太陽電池出力点35bを設けることにより、発生した電力を充電制御回路28(図3)へ送ることができる。
【0071】
このような構成の太陽電池部33は、複数の発電部をそれぞれ直列に接続した構成であるため、太陽電池部33は、より高圧の電力を出力することができ、受信モジュール70や計時部80を確実に駆動させることができる。
【0072】
さらに、太陽電池部33は、下地電極3c13に給電点5aが設けられている。そして、太陽電池層3b11,3b12,3b13,3b14を挟んで対向する、下地電極3c11,3c12,3c13,3c14と透明電極3a11,3a12,3a13,3a14とは、各電極の間の静電容量により、高周波的にはこれら電極の全体が1枚の導体と等価な状態となっている。また、下地電極3c11,3c12,3c13,3c14および透明電極3a11,3a12,3a13,3a14は、それぞれ分割されており、この分割された形状は、切り込み部6(図6)を設けた場合とほぼ同様な励振モードの発生が可能であり、円偏波を受信することができる。即ち、これら電極全体は、パッチ金属板として機能することができる。これにより、太陽電池部33の平面視形状が小さくても、太陽電池部33は、下地電極3c11,3c12,3c13,3c14および透明電極3a11,3a12,3a13,3a14を電波受信部とすることができ、電波の受信を確実に行なうことができる。
【0073】
以上説明したアンテナ装置2,20および腕時計1は、上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0074】
(変形例1)実施形態2(図6)において、下地電極3cをパッチ金属板としているが、これに限定されず、透明電極3aをパッチ金属板とする構成であっても良い。
【0075】
(変形例2)実施形態5(図10,11)における絶縁層10は、下地電極3c14の側でなく、太陽電池層3b11の側に設ける構成であっても良い。
【0076】
(変形例3)実施形態3(図7)および5において、4つの発電部を直列に接続する設定であるが、2つまたは5つ以上の発電部を接続する構成であっても良い。同様に、実施形態4(図9)における発電部も5つに限定されるものではなく、5つ以外の発電部を直列に接続する構成であっても良い。
【0077】
(変形例4)アンテナ装置2,20では、第2アンテナ電極として、ムーブメント13の一部を兼用したムーブ電極部4bを用いているが、ムーブメント13と誘電体層4aとの間に別途の電極を設けて第2アンテナ電極とする設定であっても良い。
【0078】
(変形例5)腕時計1は、GPS衛星100からの衛星信号を受信して、時刻および時差の修正を行なう機能を備えているが、これらに加え、現在位置、移動距離、移動速度等の表示をする機能を備えることも可能である。また、電子時計には、腕時計1に限らず、トラベルクロックや、懐中時計等も該当し、携帯型電子機器に付属する時計類も該当する。
【符号の説明】
【0079】
1…電子機器および電子時計としての腕時計、2…アンテナ装置、3…太陽電池部、3a…第1アンテナ電極および電波受信部としての透明電極、3b…太陽電池層、3c…下地電極、3d…第1アンテナ電極および電波受信部としての支持基板、4…アンテナ部、4a…誘電体層、4b…第2アンテナ電極としてのムーブ電極部、5…給電体、6…切り込み部、7…下地電極接点部、8…貫通孔、9…透明電極接点部、10…絶縁層、12…指針、13…ムーブメント、20…アンテナ装置、24…二次電池、30…太陽電池部、35…太陽電池出力部、40…アンテナ部、70…受信モジュール、75…給電部、80…計時部、90…電源部、100…位置情報衛星としてのGPS衛星。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光発電により電力を発生させる太陽電池部と、
位置情報衛星からの電波を受信するためのアンテナ部と、を有し、
前記太陽電池部は、前記アンテナ部の一部を構成し前記アンテナ部の電波受信部として機能する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記太陽電池部は、
電気導体を材質とする支持基板と、
前記支持基板の面上に形成された発電部と、を有し、
前記アンテナ部は、
前記電波受信部として機能する第1アンテナ電極と、
第2アンテナ電極と、
前記第1アンテナ電極と前記第2アンテナ電極との間に配置された誘電体層と、を有し、
前記アンテナ部では、前記第1アンテナ電極として前記支持基板を用い前記電波受信部として機能させている、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記太陽電池部は、
第1電池電極と、
第2電池電極と、
前記第1電池電極と前記第2電池電極との間に配置された太陽電池層と、を含む発電部を有し、
前記アンテナ部は、
前記電波受信部として機能する第1アンテナ電極と、
第2アンテナ電極と、
前記第1アンテナ電極と前記第2アンテナ電極との間に配置された誘電体層と、を有し、
前記アンテナ部では、前記第1アンテナ電極として前記第1電池電極および前記第2電池電極を用い前記電波受信部として機能させている、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記太陽電池部は、
第1電池電極と、
第2電池電極と、
前記第1電池電極と前記第2電池電極との間に配置された太陽電池層と、を含む発電部を複数有し、
前記発電部は、前記第1電池電極と前記第2電池電極とを隣り合った前記発電部同士が交互に共有するように配置されて、直列に接続され、
前記第1電池電極と隣り合った前記発電部の前記第2電池電極とは、相互間に構成される容量により高周波的に一体の導体となり、前記電波受信部として機能する、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項5】
請求項4に記載のアンテナ装置において、
リング形状の複数の発電部を中心から外周へ順に並べ、最内周の発電部と最外周の発電部とから発電電力を取り出す、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のアンテナ装置において、
前記最内周の発電部の発電電力取り出し電極と前記アンテナ部の給電電極とを共有する構造である、ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のアンテナ装置を備えている、ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器において、
前記太陽電池部が文字板の機能を兼ね備えている構成の前記アンテナ装置を有する電子時計である、ことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−198176(P2012−198176A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64007(P2011−64007)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】