アンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置
【課題】 ヘリカルアンテナ素子を用いて近傍電磁界による無線伝送を行うことを可能にする。
【解決手段】 アンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12と、ヘリカルアンテナ素子12の外周を覆う円筒状のシールド導体13とを備えている。二つのアンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12の開放端同士が向かい合わせになるように近接配置されている。ヘリカルアンテナ素子12の電気長は、使用周波数の波長λに対してλ/4の長さを有している。シールド導体13はヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電点14側の端面を導体面で覆い、かつヘリカルアンテナ素子12の開放端側に開口13aを有している。シールド導体13の中心軸はヘリカルアンテナ素子12の中心軸と一致している。
【解決手段】 アンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12と、ヘリカルアンテナ素子12の外周を覆う円筒状のシールド導体13とを備えている。二つのアンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12の開放端同士が向かい合わせになるように近接配置されている。ヘリカルアンテナ素子12の電気長は、使用周波数の波長λに対してλ/4の長さを有している。シールド導体13はヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電点14側の端面を導体面で覆い、かつヘリカルアンテナ素子12の開放端側に開口13aを有している。シールド導体13の中心軸はヘリカルアンテナ素子12の中心軸と一致している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び高周波結合装置に関し、特に、数ミリメートルから数十センチメートルまでの至近距離通信に好適なアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線伝送技術としては多種多様なものが存在しているが、中でも、数センチメートルから数十メートル程度の近距離で無線によりデータ伝送する技術としては無線LANがよく知られている。また、数センチメートルよりも近い距離または間隙程度の距離を無線によりデータ伝送する技術として、「無線タグ」や「RFID」等の無線カードも普及している。無線カード通信の場合、主として誘導界である近傍電磁界による無線伝送を利用している。近傍電磁界による無線伝送では、アンテナコイル等の閉回路を誘導電磁界内に置き、これによって誘起される電圧を閉回路の開放端、すなわち出力端子から取り出すことで受信信号を検出している。
【0003】
他にも、電磁誘導結合による双方向データ通信を良好に行うことが可能な非接触近距離通信装置が知られている(特許文献1,2参照)。この装置は、例えばワンボックスカーのスライドドア内部に設けられたパワーウィンドウモータやドアロックユニットを車体側のワイヤハーネスに接続するための手段として使用されるものであり、電磁結合を利用して非接触で電力及びデータを伝送する技術である。
【特許文献1】特開2004−42879号公報
【特許文献2】特開2004−135245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線通信に用いられるアンテナのひとつとしてヘリカルアンテナが知られている。このヘリカルアンテナは、使用周波数の波長λに対してλ/2又はλ/4の長さを有する導線をらせん状に形成したものであり、非常に小型でありながら特性の良好なアンテナとして携帯無線機器等で広く使用されている。
【0005】
しかしながら、このような従来のヘリカルアンテナを近傍電磁界による無線伝送にそのまま適用しようとすると、入力インピーダンスの低下を生じるという問題がある。また、一般にアンテナはその形状を問わず周囲の物体や構造物の影響を受けやすく、これにより伝送特性等の電気特性が変動しやすい。そのため図11のように、近傍電子界の無線伝送に適用すべくヘリカルアンテナ21同士を近接させた場合には、素子間の相互結合の影響によりアンテナ特性が劣化するという問題がある。図12はヘリカルアンテナの通過特性を示すグラフである。特性の良好なヘリカルアンテナ単体の特性は、図12(a)に示すようにアンテナの使用周波数である500MHzから600MHzまでの通過帯域内において唯一の共振点を有し、伝送損失も非常に少ないが、そのようなヘリカルアンテナ同士を近づけた場合の特性は、図12(b)に示すように、副共振が生じることによって通過特性が双峰性となり、通過帯域内において伝送損失が急激に落ち込んでいることが分かる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ヘリカルアンテナ素子を用いて近傍電磁界による無線伝送を行うことを可能にするアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、ヘリカルアンテナ素子と、前記ヘリカルアンテナ素子の外周を覆う筒状のシールド導体とを備え、前記シールド導体は、前記ヘリカルアンテナ素子の開放端側に開口を有しかつ給電側に導体面を有し、その中心軸が前記ヘリカルアンテナ素子の中心軸と一致していることを特徴とするアンテナ装置によって達成される。
【0008】
本発明においては、使用周波数の波長λに対して、前記ヘリカルアンテナ素子の電気長がλ/4であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)と前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.8<(b/d)<1.5であることを特徴とする0001又は2に記載のアンテナ装置。
【0010】
本発明においては、前記シールド導体の長さ(H)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、1.1<(H/d)<1.7であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記シールド導体の外径(D)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.5<(d/D)<0.65であることが好ましい。
【0012】
本発明の上記目的は、前記アンテナ装置を用いて構成され、前記ヘリカルアンテナ素子の前記開放端同士が互いに向かい合わせになるように一対の前記アンテナ装置を非接触状態で配置したことを特徴とする高周波結合装置によっても達成される。
【0013】
前記ヘリカルアンテナ素子間の距離が10cm以内であることが好ましく、また前記一対のアンテナ装置のヘリカルアンテナ素子の中心軸が互いにほぼ一致していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘリカルアンテナ素子を用いて近傍電磁界による無線伝送を行うことを可能にするアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る高周波結合装置の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、この高周波結合装置10は、一対のアンテナ装置11,11からなり、無線通信機器1,1間の至近距離通信に使用されるものである。これらのアンテナ装置11間の距離は、近傍電磁界を利用した通信である限りにおいて特に限定されないが、10cm以内であることが好ましく、1cm以内であることがより好ましい。「一対の」アンテナ装置11,11としたのは、別のアンテナ装置と組み合わせで使用するよりも、同一のアンテナ装置11同士を組み合わせて使用したほうが特性上より好ましいことによるものである。本実施形態のアンテナ装置11は、無線通信機器1,1の筐体面からわずかに突出した状態で設けられており、高周波導波路2,2を通じて筐体内部の電子回路(図示せず)に接続される。
【0018】
図2は、一対のアンテナ装置11の構成を透過的に示す略斜視図である。
【0019】
図2に示すように、各アンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12と、ヘリカルアンテナ素子12の外周を覆う円筒状のシールド導体13とを備えている。二つのアンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12の開放端同士が向かい合わせになるように近接配置されている。ここで、上述した一対のアンテナ装置11間の距離とは、厳密には、ヘリカルアンテナ素子12間の距離(g)を意味している。両者の中心軸は一致していることが好ましいが、完全に一致していなくてもよく、僅かなずれや傾きであれば伝送特性にそれほど大きな影響はない。すなわち、二つのヘリカルアンテナ素子12,12の中心軸はほぼ一致していればよい。
【0020】
アンテナ装置11の基本的な電気特性はヘリカルアンテナ素子12の構成に依存する。本実施形態においては、ヘリカルアンテナ素子12の電気長が使用周波数(すなわち、アンテナ素子の共振周波数)の波長λに対してλ/4の長さを有している。本発明でいう電気長は、ヘリカルアンテナ素子12を構成する導線の全長(物理長)ではなく、ヘリカルアンテナ素子の物理長にそのアンテナ素子が持つ「速度係数(短縮率)」を乗じた値として求められるものである。すなわち、電気長はアンテナ素子のインダクタンスを考慮した計算上の長さであって、らせん状の導線固有のインダクタンスが増すに連れ、実際の長さよりも長くなる。また、給電部付近には給電部との接続のための直線状の導線部分も存在している。本実施形態において、給電部付近の導線は、らせん形状の終端から中心軸に引き込まれた後、中心軸を通って給電点14に接続される形状となっている。なお、らせん形状の終端から中心軸に引き込むことなく直ちに中心軸に沿った方向に折り曲げて給電点14に接続することも可能である。
【0021】
シールド導体13は、ヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電点14側の端面を導体面で覆い、かつヘリカルアンテナ素子12の開放端側に開口13aを有している。シールド導体13の中心軸はヘリカルアンテナ素子12の中心軸と一致している。シールド導体13とヘリカルアンテナ素子12との間では絶縁状態が確保されており、シールド導体13は接地されている。シールド導体13の寸法はヘリカルアンテナ素子12に基づいて定められる。すなわち、まずはヘリカルアンテナ素子12自身が使用周波数において良好な共振特性を有する必要があるため、ヘリカルアンテナ素子の寸法が最初に決定され、次いでシールド導体の寸法が決定される。
【0022】
ヘリカルアンテナ素子12及びシールド導体13の寸法については以下のように定めることができる。
【0023】
図3は、シールド導体の開口13a側から見たアンテナ装置11の平面図であり、図4はアンテナ装置11の側面断面図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、シールド導体13の長さを(H)、シールド導体13の外径を(D)、ヘリカルアンテナ素子12の長さを(b)、ヘリカルアンテナ素子12の外径を(d)とそれぞれ定義し、さらに図2に示したとおり、ヘリカルアンテナ素子12,12間の間隔を(g)とする。そして、アンテナ装置11の特性が最も良くなる以下の寸法を標準パラメータとして定義する。
ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)=5mm(0.0092λ)
ヘリカルアンテナ素子の外径(d)=5mm
ヘリカルアンテナ素子のリード端子の長さ(L1)=2.5mm(0.0046λ)
シールド導体の長さ(H)=7.5mm
シールド導体の外径(D)=9mm(0.0165λ)
ヘリカルアンテナ素子間の間隔(g)=2mm(0.00366λ)
【0025】
そして、本実施形態のアンテナ装置においては、ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、0.8<(b/d)<1.5の関係を有することが好ましい。一般に、アンテナの伝送帯域(使用周波数帯域)は、伝送損失が最小となる値から3dBだけ増加する周波数範囲として定義されるが、ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、伝送損失を3dB以下に抑えることができる。すなわち、アンテナ装置の伝送特性を使用周波数帯域内に収めることができる。
【0026】
また、本実施形態のアンテナ装置においては、シールド導体の長さ(H)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、1.1<(H/d)<1.7の関係を有することが好ましい。シールド導体の長さ(H)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、やはり伝送損失を3dB以下に抑えることができ、良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態のアンテナ装置においては、シールド導体の外径(D)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、0.5<(d/D)<0.65の関係を有することが好ましい。シールド導体の外径(D)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、やはり伝送損失を3dB以下に抑えることができ、良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0028】
以上のように、アンテナ素子をヘリカル構造とした場合には、使用周波数の波長に比べてアンテナ装置11全体の大きさを十分に小型化することが可能である。例えば、使用周波数が500〜600MHz(波長は600〜500ミリメートル)である場合、ヘリカルアンテナ素子12の長さは、その直径やピッチにもよるが、通常は数ミリメートル程度となるので、波長の1/20程度の大きさにすることが可能である。
【0029】
このようにアンテナ素子の寸法が共振周波数の波長λに比べて十分に小さい場合には、アンテナ素子の入力インピーダンスが小さくなり、さらに小型化していくと入力インピーダンスは短絡状態に近づくことが知られている。しかし、図2に示したように二つのヘリカルアンテナ素子を対向させることにより、両者は近傍電磁界で電磁的に結合され、全体として高周波の伝送路が形成される。この場合、アンテナ素子全体の電気長はλ/2程度となり、アンテナ素子の両端が開放端となるので、いずれか一方のアンテナ装置11の入(出)力端から見た当該アンテナ装置11の入力インピーダンスは、アンテナ素子が孤立して置かれる場合に比べてより高くなる。図5はアンテナ装置11同士を近接配置した場合における当該アンテナ装置11の入力インピーダンスの周波数特性を示すスミスチャートであるが、図5から明らかなように、アンテナ素子の共振周波数付近における入力インピーダンスは50オームに近い値となる。これは、電気回路の特性インピーダンスである50オームに近いことから、実用上好ましい特性であるといえる。
【0030】
また本実施形態によれば、ヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電側の端面を覆うシールド導体13を設けているので、相手側のアンテナ装置を含め、ヘリカルアンテナ素子12の周囲に存在する物体等の影響を受けにくく、アンテナ素子同士を近接させても通過帯域近傍の周波数において副共振等が現れにくい。したがって、特性の良好なアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を実現することができる。
【0031】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0032】
たとえば、上記実施形態においては、シールド導体13として円筒状のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、角筒状のシールド導体15で構成してもよい。この場合にも円筒状のものとほぼ同等の特性を得ることができる。
【実施例】
【0033】
上述したアンテナ装置について、各種パラメータを変更しながら、アンテナ装置間の伝送損失の周波数特性を測定した。図7乃至10は、各種パラメータを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフであり、横軸は周波数(MHz)、伝送損失(dB)を示している。伝送損失は、一方のアンテナ装置に所定の周波数の信号を印加したときに他方のアンテナ装置で受信される信号のレベルの低下の程度を示すものであり、アンテナ装置間の信号の通過特性を示すものである。また横軸の周波数については使用周波数を基準にして正規化したものを示している。
【0034】
図7は二つのアンテナ装置の間隔gを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、一対のアンテナ装置の間隔gについて、g=1.0mm,1.5mm,2.0mm,4.0mm,4.5mm及び6.0mmの6通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、D=9mm,H=7.5mm,d=5mm,b=5mmとした。さらに、ヘリカルアンテナ素子の先端部(開放端)の端面とシールド導体の開口面とを一致させるようにした。
【0035】
図7から明らかなとおり、アンテナ装置の間隔gが1.0mmときには通過特性が双峰性を有し、1.0mmから大きくなると双峰性は徐々に改善され、g=2.0mmのときに通過特性は最も良好となるが、間隔gがさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定から、g=2.0mmのときに通過特性が最も良好であることが分かった。
【0036】
図8は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するその長さbの比(b/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、アンテナ直径dと長さbとの比(b/d)について、(b/d)=0.5,0.7,0.8,0.9,1.0,1.5,2.0及び3.0の8通りを測定対象とした。また、シールド導体の長さ(H)についてはH=bとした。すなわち、ヘリカルアンテナ素子の長さbに応じてシールド導体の長さHを伸縮させ、ヘリカルアンテナ素子の先端部(開放端)の端面とシールド導体の開口面とを一致させるようにした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,D=9mmとした。
【0037】
図8から明らかなとおり、(b/d)が0.5のときには通過特性が双峰性を有し、0.5から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(b/d)が1.0のときに通過特性が最も良好となるが(b/d)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、(b/d)が1.0mmのときの伝送損失のピーク値を基準とし、そこから+3dBの範囲(すなわちアンテナの使用周波数帯域)をカバーできる(b/d)の値は、0.8<(b/d)<1.5の場合であることが分かった。
【0038】
図9は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するシールド導体の長さHの比(H/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、アンテナ直径dとシールド導体の長さHとの比(H/d)について、(H/d)=0(シールド導体なし),0.9,1.1,1.3,1.4,1.5,1.6及び1.7の8通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,D=9mm,b=5.0mmとした。なお、ヘリカルアンテナ素子の直径dを変化させつつその長さbを一定にするため、巻き線のピッチは可変としている。
【0039】
図9から明らかなとおり、(H/d)が0ときには通過特性が極端な双峰性を有し、0から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(H/d)が1.7のときに通過特性が最も良好となるが、(H/d)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、アンテナの使用周波数帯域をカバーできる値は、1.1<(H/d)<1.7の場合であることが分かった。ただし、シールド導体の長さ(H)が十分に長くなる場合には、対向する二つのヘリカルアンテナ素子間の距離が遠くなること、シールド導体によるシールド効果が大きくなること、アンテナ装置の外形寸法が大きくなること等の理由から、シールド導体の長さ(H)をあまり長くすると実用上の効果が得られないものと考えられる。
【0040】
図10は、シールド導体の直径Dに対するヘリカルアンテナ素子の直径dの比(d/D)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、シールド導体の直径Dとアンテナ直径dとの比(d/D)について、(d/D)=0.455,0.505,0.510,0.555,0.649及び0.694の6通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,H=7.5mm,b=5.0mmとした。
【0041】
図10から明らかなとおり、(d/D)が0.455ときには通過特性が双峰性を有し、0.455から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(d/D)が0.555のときに通過特性が最も良好となるが、(d/D)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、アンテナの使用周波数帯域をカバーできる値は、0.505<(d/D)<0.649の場合であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に係る高周波結合装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、一対のアンテナ装置11の構成を透過的に示す略斜視図である。
【図3】図3は、シールド導体の開口13a側から見たアンテナ装置11の平面図であり、
【図4】図4は、アンテナ装置11の側面断面図である。
【図5】図5はアンテナ装置11同士を近接配置した場合における当該アンテナ装置11の入力インピーダンスの周波数特性を示すスミスチャートである
【図6】図6は、シールド導体13の他の形状を示す斜視図である。
【図7】図7は二つのアンテナ装置の間隔gを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図8】図8は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するその長さbの比(b/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図9】図9は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するシールド導体の長さHの比(H/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図10】図10は、シールド導体の直径Dに対するヘリカルアンテナ素子の直径dの比(d/D)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図11】図11は、ヘリカルアンテナ同士を近接させた状態を示す模式図である。
【図12】図12は、ヘリカルアンテナの通過特性を示すグラフであり、図12(a)は特性の良好なヘリカルアンテナ単体の特性、また図12(b)はそのようなヘリカルアンテナ同士を近づけた場合の特性を示すものである。
【符号の説明】
【0043】
1 無線通信機器
2 高周波導波路
10 高周波結合装置
11 アンテナ装置
12 ヘリカルアンテナ素子
13 シールド導体
13a 開口
14 給電点
15 シールド導体
21 ヘリカルアンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置及び高周波結合装置に関し、特に、数ミリメートルから数十センチメートルまでの至近距離通信に好適なアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線伝送技術としては多種多様なものが存在しているが、中でも、数センチメートルから数十メートル程度の近距離で無線によりデータ伝送する技術としては無線LANがよく知られている。また、数センチメートルよりも近い距離または間隙程度の距離を無線によりデータ伝送する技術として、「無線タグ」や「RFID」等の無線カードも普及している。無線カード通信の場合、主として誘導界である近傍電磁界による無線伝送を利用している。近傍電磁界による無線伝送では、アンテナコイル等の閉回路を誘導電磁界内に置き、これによって誘起される電圧を閉回路の開放端、すなわち出力端子から取り出すことで受信信号を検出している。
【0003】
他にも、電磁誘導結合による双方向データ通信を良好に行うことが可能な非接触近距離通信装置が知られている(特許文献1,2参照)。この装置は、例えばワンボックスカーのスライドドア内部に設けられたパワーウィンドウモータやドアロックユニットを車体側のワイヤハーネスに接続するための手段として使用されるものであり、電磁結合を利用して非接触で電力及びデータを伝送する技術である。
【特許文献1】特開2004−42879号公報
【特許文献2】特開2004−135245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線通信に用いられるアンテナのひとつとしてヘリカルアンテナが知られている。このヘリカルアンテナは、使用周波数の波長λに対してλ/2又はλ/4の長さを有する導線をらせん状に形成したものであり、非常に小型でありながら特性の良好なアンテナとして携帯無線機器等で広く使用されている。
【0005】
しかしながら、このような従来のヘリカルアンテナを近傍電磁界による無線伝送にそのまま適用しようとすると、入力インピーダンスの低下を生じるという問題がある。また、一般にアンテナはその形状を問わず周囲の物体や構造物の影響を受けやすく、これにより伝送特性等の電気特性が変動しやすい。そのため図11のように、近傍電子界の無線伝送に適用すべくヘリカルアンテナ21同士を近接させた場合には、素子間の相互結合の影響によりアンテナ特性が劣化するという問題がある。図12はヘリカルアンテナの通過特性を示すグラフである。特性の良好なヘリカルアンテナ単体の特性は、図12(a)に示すようにアンテナの使用周波数である500MHzから600MHzまでの通過帯域内において唯一の共振点を有し、伝送損失も非常に少ないが、そのようなヘリカルアンテナ同士を近づけた場合の特性は、図12(b)に示すように、副共振が生じることによって通過特性が双峰性となり、通過帯域内において伝送損失が急激に落ち込んでいることが分かる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、ヘリカルアンテナ素子を用いて近傍電磁界による無線伝送を行うことを可能にするアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、ヘリカルアンテナ素子と、前記ヘリカルアンテナ素子の外周を覆う筒状のシールド導体とを備え、前記シールド導体は、前記ヘリカルアンテナ素子の開放端側に開口を有しかつ給電側に導体面を有し、その中心軸が前記ヘリカルアンテナ素子の中心軸と一致していることを特徴とするアンテナ装置によって達成される。
【0008】
本発明においては、使用周波数の波長λに対して、前記ヘリカルアンテナ素子の電気長がλ/4であることが好ましい。
【0009】
本発明においては、前記ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)と前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.8<(b/d)<1.5であることを特徴とする0001又は2に記載のアンテナ装置。
【0010】
本発明においては、前記シールド導体の長さ(H)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、1.1<(H/d)<1.7であることが好ましい。
【0011】
本発明においては、前記シールド導体の外径(D)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.5<(d/D)<0.65であることが好ましい。
【0012】
本発明の上記目的は、前記アンテナ装置を用いて構成され、前記ヘリカルアンテナ素子の前記開放端同士が互いに向かい合わせになるように一対の前記アンテナ装置を非接触状態で配置したことを特徴とする高周波結合装置によっても達成される。
【0013】
前記ヘリカルアンテナ素子間の距離が10cm以内であることが好ましく、また前記一対のアンテナ装置のヘリカルアンテナ素子の中心軸が互いにほぼ一致していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ヘリカルアンテナ素子を用いて近傍電磁界による無線伝送を行うことを可能にするアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の好ましい実施形態に係る高周波結合装置の構成を示す斜視図である。
【0017】
図1に示すように、この高周波結合装置10は、一対のアンテナ装置11,11からなり、無線通信機器1,1間の至近距離通信に使用されるものである。これらのアンテナ装置11間の距離は、近傍電磁界を利用した通信である限りにおいて特に限定されないが、10cm以内であることが好ましく、1cm以内であることがより好ましい。「一対の」アンテナ装置11,11としたのは、別のアンテナ装置と組み合わせで使用するよりも、同一のアンテナ装置11同士を組み合わせて使用したほうが特性上より好ましいことによるものである。本実施形態のアンテナ装置11は、無線通信機器1,1の筐体面からわずかに突出した状態で設けられており、高周波導波路2,2を通じて筐体内部の電子回路(図示せず)に接続される。
【0018】
図2は、一対のアンテナ装置11の構成を透過的に示す略斜視図である。
【0019】
図2に示すように、各アンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12と、ヘリカルアンテナ素子12の外周を覆う円筒状のシールド導体13とを備えている。二つのアンテナ装置11は、ヘリカルアンテナ素子12の開放端同士が向かい合わせになるように近接配置されている。ここで、上述した一対のアンテナ装置11間の距離とは、厳密には、ヘリカルアンテナ素子12間の距離(g)を意味している。両者の中心軸は一致していることが好ましいが、完全に一致していなくてもよく、僅かなずれや傾きであれば伝送特性にそれほど大きな影響はない。すなわち、二つのヘリカルアンテナ素子12,12の中心軸はほぼ一致していればよい。
【0020】
アンテナ装置11の基本的な電気特性はヘリカルアンテナ素子12の構成に依存する。本実施形態においては、ヘリカルアンテナ素子12の電気長が使用周波数(すなわち、アンテナ素子の共振周波数)の波長λに対してλ/4の長さを有している。本発明でいう電気長は、ヘリカルアンテナ素子12を構成する導線の全長(物理長)ではなく、ヘリカルアンテナ素子の物理長にそのアンテナ素子が持つ「速度係数(短縮率)」を乗じた値として求められるものである。すなわち、電気長はアンテナ素子のインダクタンスを考慮した計算上の長さであって、らせん状の導線固有のインダクタンスが増すに連れ、実際の長さよりも長くなる。また、給電部付近には給電部との接続のための直線状の導線部分も存在している。本実施形態において、給電部付近の導線は、らせん形状の終端から中心軸に引き込まれた後、中心軸を通って給電点14に接続される形状となっている。なお、らせん形状の終端から中心軸に引き込むことなく直ちに中心軸に沿った方向に折り曲げて給電点14に接続することも可能である。
【0021】
シールド導体13は、ヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電点14側の端面を導体面で覆い、かつヘリカルアンテナ素子12の開放端側に開口13aを有している。シールド導体13の中心軸はヘリカルアンテナ素子12の中心軸と一致している。シールド導体13とヘリカルアンテナ素子12との間では絶縁状態が確保されており、シールド導体13は接地されている。シールド導体13の寸法はヘリカルアンテナ素子12に基づいて定められる。すなわち、まずはヘリカルアンテナ素子12自身が使用周波数において良好な共振特性を有する必要があるため、ヘリカルアンテナ素子の寸法が最初に決定され、次いでシールド導体の寸法が決定される。
【0022】
ヘリカルアンテナ素子12及びシールド導体13の寸法については以下のように定めることができる。
【0023】
図3は、シールド導体の開口13a側から見たアンテナ装置11の平面図であり、図4はアンテナ装置11の側面断面図である。
【0024】
図3及び図4に示すように、シールド導体13の長さを(H)、シールド導体13の外径を(D)、ヘリカルアンテナ素子12の長さを(b)、ヘリカルアンテナ素子12の外径を(d)とそれぞれ定義し、さらに図2に示したとおり、ヘリカルアンテナ素子12,12間の間隔を(g)とする。そして、アンテナ装置11の特性が最も良くなる以下の寸法を標準パラメータとして定義する。
ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)=5mm(0.0092λ)
ヘリカルアンテナ素子の外径(d)=5mm
ヘリカルアンテナ素子のリード端子の長さ(L1)=2.5mm(0.0046λ)
シールド導体の長さ(H)=7.5mm
シールド導体の外径(D)=9mm(0.0165λ)
ヘリカルアンテナ素子間の間隔(g)=2mm(0.00366λ)
【0025】
そして、本実施形態のアンテナ装置においては、ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、0.8<(b/d)<1.5の関係を有することが好ましい。一般に、アンテナの伝送帯域(使用周波数帯域)は、伝送損失が最小となる値から3dBだけ増加する周波数範囲として定義されるが、ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、伝送損失を3dB以下に抑えることができる。すなわち、アンテナ装置の伝送特性を使用周波数帯域内に収めることができる。
【0026】
また、本実施形態のアンテナ装置においては、シールド導体の長さ(H)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、1.1<(H/d)<1.7の関係を有することが好ましい。シールド導体の長さ(H)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、やはり伝送損失を3dB以下に抑えることができ、良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0027】
また、本実施形態のアンテナ装置においては、シールド導体の外径(D)及びヘリカルアンテナ素子の外径(d)が、0.5<(d/D)<0.65の関係を有することが好ましい。シールド導体の外径(D)とヘリカルアンテナ素子の外径(d)がこの関係を満たしていれば、やはり伝送損失を3dB以下に抑えることができ、良好なアンテナ特性を得ることができる。
【0028】
以上のように、アンテナ素子をヘリカル構造とした場合には、使用周波数の波長に比べてアンテナ装置11全体の大きさを十分に小型化することが可能である。例えば、使用周波数が500〜600MHz(波長は600〜500ミリメートル)である場合、ヘリカルアンテナ素子12の長さは、その直径やピッチにもよるが、通常は数ミリメートル程度となるので、波長の1/20程度の大きさにすることが可能である。
【0029】
このようにアンテナ素子の寸法が共振周波数の波長λに比べて十分に小さい場合には、アンテナ素子の入力インピーダンスが小さくなり、さらに小型化していくと入力インピーダンスは短絡状態に近づくことが知られている。しかし、図2に示したように二つのヘリカルアンテナ素子を対向させることにより、両者は近傍電磁界で電磁的に結合され、全体として高周波の伝送路が形成される。この場合、アンテナ素子全体の電気長はλ/2程度となり、アンテナ素子の両端が開放端となるので、いずれか一方のアンテナ装置11の入(出)力端から見た当該アンテナ装置11の入力インピーダンスは、アンテナ素子が孤立して置かれる場合に比べてより高くなる。図5はアンテナ装置11同士を近接配置した場合における当該アンテナ装置11の入力インピーダンスの周波数特性を示すスミスチャートであるが、図5から明らかなように、アンテナ素子の共振周波数付近における入力インピーダンスは50オームに近い値となる。これは、電気回路の特性インピーダンスである50オームに近いことから、実用上好ましい特性であるといえる。
【0030】
また本実施形態によれば、ヘリカルアンテナ素子12の外周及び給電側の端面を覆うシールド導体13を設けているので、相手側のアンテナ装置を含め、ヘリカルアンテナ素子12の周囲に存在する物体等の影響を受けにくく、アンテナ素子同士を近接させても通過帯域近傍の周波数において副共振等が現れにくい。したがって、特性の良好なアンテナ装置及びこれを用いた高周波結合装置を実現することができる。
【0031】
本発明は、以上の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を加えることが可能であり、それらも本発明に包含されるものであることは言うまでもない。
【0032】
たとえば、上記実施形態においては、シールド導体13として円筒状のものを用いたが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、角筒状のシールド導体15で構成してもよい。この場合にも円筒状のものとほぼ同等の特性を得ることができる。
【実施例】
【0033】
上述したアンテナ装置について、各種パラメータを変更しながら、アンテナ装置間の伝送損失の周波数特性を測定した。図7乃至10は、各種パラメータを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフであり、横軸は周波数(MHz)、伝送損失(dB)を示している。伝送損失は、一方のアンテナ装置に所定の周波数の信号を印加したときに他方のアンテナ装置で受信される信号のレベルの低下の程度を示すものであり、アンテナ装置間の信号の通過特性を示すものである。また横軸の周波数については使用周波数を基準にして正規化したものを示している。
【0034】
図7は二つのアンテナ装置の間隔gを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、一対のアンテナ装置の間隔gについて、g=1.0mm,1.5mm,2.0mm,4.0mm,4.5mm及び6.0mmの6通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、D=9mm,H=7.5mm,d=5mm,b=5mmとした。さらに、ヘリカルアンテナ素子の先端部(開放端)の端面とシールド導体の開口面とを一致させるようにした。
【0035】
図7から明らかなとおり、アンテナ装置の間隔gが1.0mmときには通過特性が双峰性を有し、1.0mmから大きくなると双峰性は徐々に改善され、g=2.0mmのときに通過特性は最も良好となるが、間隔gがさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定から、g=2.0mmのときに通過特性が最も良好であることが分かった。
【0036】
図8は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するその長さbの比(b/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、アンテナ直径dと長さbとの比(b/d)について、(b/d)=0.5,0.7,0.8,0.9,1.0,1.5,2.0及び3.0の8通りを測定対象とした。また、シールド導体の長さ(H)についてはH=bとした。すなわち、ヘリカルアンテナ素子の長さbに応じてシールド導体の長さHを伸縮させ、ヘリカルアンテナ素子の先端部(開放端)の端面とシールド導体の開口面とを一致させるようにした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,D=9mmとした。
【0037】
図8から明らかなとおり、(b/d)が0.5のときには通過特性が双峰性を有し、0.5から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(b/d)が1.0のときに通過特性が最も良好となるが(b/d)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、(b/d)が1.0mmのときの伝送損失のピーク値を基準とし、そこから+3dBの範囲(すなわちアンテナの使用周波数帯域)をカバーできる(b/d)の値は、0.8<(b/d)<1.5の場合であることが分かった。
【0038】
図9は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するシールド導体の長さHの比(H/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、アンテナ直径dとシールド導体の長さHとの比(H/d)について、(H/d)=0(シールド導体なし),0.9,1.1,1.3,1.4,1.5,1.6及び1.7の8通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,D=9mm,b=5.0mmとした。なお、ヘリカルアンテナ素子の直径dを変化させつつその長さbを一定にするため、巻き線のピッチは可変としている。
【0039】
図9から明らかなとおり、(H/d)が0ときには通過特性が極端な双峰性を有し、0から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(H/d)が1.7のときに通過特性が最も良好となるが、(H/d)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、アンテナの使用周波数帯域をカバーできる値は、1.1<(H/d)<1.7の場合であることが分かった。ただし、シールド導体の長さ(H)が十分に長くなる場合には、対向する二つのヘリカルアンテナ素子間の距離が遠くなること、シールド導体によるシールド効果が大きくなること、アンテナ装置の外形寸法が大きくなること等の理由から、シールド導体の長さ(H)をあまり長くすると実用上の効果が得られないものと考えられる。
【0040】
図10は、シールド導体の直径Dに対するヘリカルアンテナ素子の直径dの比(d/D)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。この測定では、シールド導体の直径Dとアンテナ直径dとの比(d/D)について、(d/D)=0.455,0.505,0.510,0.555,0.649及び0.694の6通りを測定対象とした。他のパラメータについては標準パラメータに固定し、g=2mm,H=7.5mm,b=5.0mmとした。
【0041】
図10から明らかなとおり、(d/D)が0.455ときには通過特性が双峰性を有し、0.455から大きくなると双峰性は徐々に改善され、(d/D)が0.555のときに通過特性が最も良好となるが、(d/D)がさらに大きくなると伝送損失(dB)は増大している。すなわち、この測定結果から、アンテナの使用周波数帯域をカバーできる値は、0.505<(d/D)<0.649の場合であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、本発明の好ましい実施形態に係る高周波結合装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図2は、一対のアンテナ装置11の構成を透過的に示す略斜視図である。
【図3】図3は、シールド導体の開口13a側から見たアンテナ装置11の平面図であり、
【図4】図4は、アンテナ装置11の側面断面図である。
【図5】図5はアンテナ装置11同士を近接配置した場合における当該アンテナ装置11の入力インピーダンスの周波数特性を示すスミスチャートである
【図6】図6は、シールド導体13の他の形状を示す斜視図である。
【図7】図7は二つのアンテナ装置の間隔gを変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図8】図8は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するその長さbの比(b/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図9】図9は、ヘリカルアンテナ素子の直径dに対するシールド導体の長さHの比(H/d)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図10】図10は、シールド導体の直径Dに対するヘリカルアンテナ素子の直径dの比(d/D)を変化させたときの伝送損失の周波数特性を示すグラフである。
【図11】図11は、ヘリカルアンテナ同士を近接させた状態を示す模式図である。
【図12】図12は、ヘリカルアンテナの通過特性を示すグラフであり、図12(a)は特性の良好なヘリカルアンテナ単体の特性、また図12(b)はそのようなヘリカルアンテナ同士を近づけた場合の特性を示すものである。
【符号の説明】
【0043】
1 無線通信機器
2 高周波導波路
10 高周波結合装置
11 アンテナ装置
12 ヘリカルアンテナ素子
13 シールド導体
13a 開口
14 給電点
15 シールド導体
21 ヘリカルアンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘリカルアンテナ素子と、前記ヘリカルアンテナ素子の外周を覆う筒状のシールド導体とを備え、
前記シールド導体は、前記ヘリカルアンテナ素子の開放端側に開口を有しかつ給電側に導体面を有し、その中心軸が前記ヘリカルアンテナ素子の中心軸と一致していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
使用周波数の波長λに対して、前記ヘリカルアンテナ素子の電気長がλ/4であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)と前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.8<(b/d)<1.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記シールド導体の長さ(H)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、1.1<(H/d)<1.7であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記シールド導体の外径(D)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.5<(d/D)<0.65であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記アンテナ装置を用いて構成され、前記ヘリカルアンテナ素子の前記開放端同士が互いに向かい合わせになるように一対の前記アンテナ装置を非接触状態で配置したことを特徴とする高周波結合装置。
【請求項7】
前記ヘリカルアンテナ素子間の距離が10cm以内であることを特徴する請求項6に記載の高周波結合装置。
【請求項8】
前記一対のアンテナ装置のヘリカルアンテナ素子の中心軸が互いにほぼ一致していることを特徴とする請求項6又は7に記載の高周波結合装置。
【請求項1】
ヘリカルアンテナ素子と、前記ヘリカルアンテナ素子の外周を覆う筒状のシールド導体とを備え、
前記シールド導体は、前記ヘリカルアンテナ素子の開放端側に開口を有しかつ給電側に導体面を有し、その中心軸が前記ヘリカルアンテナ素子の中心軸と一致していることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
使用周波数の波長λに対して、前記ヘリカルアンテナ素子の電気長がλ/4であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記ヘリカルアンテナ素子の長さ(b)と前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.8<(b/d)<1.5であることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記シールド導体の長さ(H)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、1.1<(H/d)<1.7であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記シールド導体の外径(D)及び前記ヘリカルアンテナ素子の外径(d)との関係が、0.5<(d/D)<0.65であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の前記アンテナ装置を用いて構成され、前記ヘリカルアンテナ素子の前記開放端同士が互いに向かい合わせになるように一対の前記アンテナ装置を非接触状態で配置したことを特徴とする高周波結合装置。
【請求項7】
前記ヘリカルアンテナ素子間の距離が10cm以内であることを特徴する請求項6に記載の高周波結合装置。
【請求項8】
前記一対のアンテナ装置のヘリカルアンテナ素子の中心軸が互いにほぼ一致していることを特徴とする請求項6又は7に記載の高周波結合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−287324(P2006−287324A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−101066(P2005−101066)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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