説明

アンテナ装置

【課題】容易に製造可能でありながら防水性を高めたアンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ装置1は、磁性体コア11、磁性体コア11に巻回されるコイル13、磁性体コア11を保持するベース部材14及び外部端子16を備えるコイルアンテナ10を有する。また、アンテナ装置10は、コイルアンテナ10を収納する収納部2及びコイルアンテナ10を収納部2に導入する開口部8が形成されるケース部材5と、ケース部材5に一体に形成され、外部端子16が露出するコネクタ部7と、開口部8に嵌合され、収納部2を密閉する蓋部4と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品として、例えば、磁性体コアと、磁性体コアに巻回されるコイルを備えるコイルアンテナをケース部材に収納する場合に適用して好適なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品として一般的に用いられるコイルアンテナは、磁性体コアに導線を巻回したコイルで構成される。このコイルアンテナは、樹脂製のケース部材に一部またはすべてが収納される。そして、コイルアンテナが収納されたケース部材の内部に液状樹脂が充填され、防水性を高めている。ケース部材にコイルアンテナを収納すると、薬品がかかったり、振動や衝撃が加わったり、温度や湿度の変化が激しかったり、塵や埃が漂ったりする様々な環境下で使用されてもコイルアンテナが劣化せず、コイルアンテナの品質を保てる。このため、ケース部材に収納されたコイルアンテナは、特に、使用時の環境が厳しい自動車に搭載されることが多い。
【0003】
特許文献1には、磁性体で形成されたコアと、このコアの周囲に導線が巻回されたコイルと、共振周波数の調整を行うサブコアを備えるアンテナ装置について記載されている。このアンテナ装置のケースには、コアとコイルが収納される部位に樹脂が充填される。
【特許文献1】再表2005/086288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ケースに充填される樹脂からできるだけ気泡を除く必要がある。樹脂に残った気泡に熱が加わると、気泡が膨張または収縮を繰り返す。アンテナ装置が経年使用され、気泡の膨張または収縮が繰り返されると、内部コイルに不要な応力が加わりやすくなるため、導線が断線したり、品質が低下したりする要因となる。
【0005】
また、製造時に多量の樹脂をケース内に充填すると、樹脂を硬化させるために長い時間が必要となる。このため、アンテナ装置の製造時間が長くなってしまう。さらに、アンテナ装置は、ケースの内部全体に樹脂が充填されると重くなる。このようなアンテナ装置を自動車に複数個用いると、自動車の重量が増加するため燃費が下がる要因となる。また、多量の樹脂を使用するためアンテナ装置の製造コストが高騰してしまう。
【0006】
本発明はこのような状況に鑑みて成されたものであり、製造が容易でありながら、ケース内にコイルアンテナを密閉して収納するアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のアンテナ装置は、磁性体コア、磁性体コアに巻回されるコイル、磁性体コアを保持するベース、及び外部端子を備えるコイルアンテナと、コイルアンテナを収納する収納部及びコイルアンテナを収納部に導入する開口部が形成されるケース部材と、ケース部材に一体に形成され、外部端子が露出するコネクタ部と、開口部に嵌合され、収納部を密閉する蓋部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ケース部材内(収納部)にコイルアンテナを収納し、収納部を蓋部で密閉したアンテナ装置が得られる。このアンテナ装置は、使用する樹脂の量を抑えながら、密閉性が高く、防水性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態例について、図1〜図7を参照して説明する。本実施の形態では、例えば、自動車に搭載される電子部品として、コイルアンテナを備えたアンテナ装置1に適用した例として説明する。
【0010】
まず、本例のアンテナ装置1の外部構成例について、図1の斜視図を参照して説明する。
図1(a)は、正面視した場合におけるアンテナ装置1の構成例である。
図1(b)は、背面視した場合におけるアンテナ装置1の構成例である。
【0011】
アンテナ装置1は、自動車のキーレスエントリシステムを構成する際に好適に使用される送信用アンテナ装置であり、信号電波を送信するためのコイルアンテナ10(図2参照)と、コイルアンテナ10が収納されるケース部材5を備える。
ケース部材5には、コイルアンテナ10を収納する空間が形成された筒状の収納部2と、所定の規格に準じた形状のコネクタ端子が挿入されるコネクタ部7を備える。コネクタ部7は、ケース部材5に一体に形成される。
【0012】
ケース部材5に形成される収納部2の一端は閉じており、他端には、コイルアンテナ10を収納部2に導入する開口部8が形成される。コイルアンテナ10が収納部2に挿入されると、収納部2を密閉する蓋部4が開口部8に嵌合される。蓋部4には複数の凹部が形成されており、この凹部に液状樹脂が充填され、充填部6が形成される。液状樹脂が硬化すると、蓋部4と充填部6は、開口部8の面に対して面一となるように加工される。なお、蓋部4の詳細な説明は、図3を参照して後述する。
【0013】
ケース部材5は、機械強度、耐薬品性、耐熱・耐湿性に優れるABS(Acrylonitrile butadiene styrene:アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂,PBT(Poly Buthylene Terephthalete:ポリ−ブチレン−テレフタレート)樹脂,PPS(Poly Phenylene Sulfide:ポリ−フェニレン−サルファイド)樹脂またはその混合物によって形成される。そして、ケース部材5の両端には、例えば、車体に固定可能な脚部3a,3bが形成される。
【0014】
コネクタ部7の内部には、外部端子16(後述の図2参照)が露出する。自動車に設置された電子機器から延ばされた不図示のコネクタ端子がコネクタ部7に挿入されると、外部端子16に接続される。そして、コイルアンテナ10と自動車に設置された電子機器は電気的に接続される。
【0015】
次に、本例のアンテナ装置1の内部構成例について、図2の分解斜視図を参照して説明する。
図2(a)は、正面視した場合におけるアンテナ装置1の構成例である。
図2(b)は、背面視した場合におけるアンテナ装置1の構成例である。
【0016】
収納部2に収納されるコイルアンテナ10は、所定のインダクタンス値を有するコイル13、外部端子16を保持する樹脂製のベース部材14を備える。コイル13は、ほぼ直方体の形状とした磁性体コア11に、絶縁性被膜が形成された導線12が所望の巻き数で巻回されて構成される。
【0017】
また、ベース部材14には、導線12の両端部が接続されるコイル端子17と、チップ状のコンデンサ18が取り付けられる。外部端子16とコイル端子17は、ベース部材14に埋め込まれて一体形成される。ベース部材14は、ケース部材5と同様に非導電性の硬化樹脂で形成される。本例のコイルアンテナ10は、コンデンサ18をコイル13と直列接続することで直列共振回路を構成している。
【0018】
なお、磁性体コア11の主材として、Ni−Zn系フェライトやMn−Zn系フェライトコア,金属系磁性コア、アモルファス磁性コアを用いてもよい。ただし、Mn−Zn系フェライト等、比抵抗が小さい磁性材料を磁性コアに採用する場合は、絶縁性樹脂等で形成されたボビンや絶縁テープ等を磁性体コア11と導線12の間に介在させると、磁性体コア11と導線12の間に高い絶縁性を確保できる。また、磁性体コア11の形状は、用途に応じて任意の形状としてもよい。
【0019】
次に、蓋部4の構成例について、図3を参照して説明する。
蓋部4の外周面には、開口部8の内面に接触する範囲にわたって連続する2条の突起部22a,22bが形成される。突起部22a,22bは、蓋部4が開口部8に嵌合されると、収納部2を密閉する。このため、収納部2に水が入り込まず、コイルアンテナ10に水分,塵・埃がつかない。なお、蓋部4の外周面に形成され、開口部8の内面に接触する範囲にわたって連続する突起部は1条以上あればよい。
【0020】
また、蓋部4において、開口部8に対する挿入方向とは逆の面には、蓋部4の変形を抑える柱状の補強部21a〜21eが形成される。補強部21a〜21eによって、開口部8に蓋部4が嵌合された後のアンテナ装置の剛性が向上し、開口部8の付近に無理な力が加わった際の変形量がわずかとなる。
【0021】
また、蓋部4には、凹部23a〜23dが形成される。凹部23a〜23dには、蓋部4が開口部8に嵌合されると、液状樹脂が充填される。この充填された液状樹脂が硬化すると充填部6(図1参照)となる。
【0022】
次に、図1におけるアンテナ装置1を矢印B方向から視認して拡大視した例について、図4〜図6を参照して説明する。
【0023】
図4は、収納部2にコイルアンテナ10等を挿入していない状態におけるアンテナ装置1の構成例である。
開口部8には、外部端子16が挿入される2つの孔部31a,31bが形成される。また、収納部2には、コイルアンテナ10が挿入される空間が形成される。
【0024】
図5は、収納部2にコイルアンテナ10を挿入した後のアンテナ装置1の構成例である。なお、実際の製造工程では、ベース部材14とコイルアンテナ10が組み合わされた状態でケース部材5に挿入される。
【0025】
フープ部材32は、ベース部材14の成型時に一体成型(インサート成型とも称される)され、外部端子16,コイル端子17を形成する部材である。なお、図5において、外部から視認できないフープ部材32を破線で示している。
【0026】
図4に示した孔部31a,31bには、外部端子16が挿入される。また、フープ部材32に形成されたコイル端子17には、コイル13の両端部が接続される。孔部31a,31bは、外部端子16の断面形状にほぼ一致するため、孔部31a,31bに挿入された外部端子16と、孔部31a,31bの接触面に隙間はない。このため、コネクタ部7から収納部2に水分,塵・埃が浸入しにくい状態になっている。
【0027】
図6は、収納部2にコイルアンテナ10とベース部材14を挿入後、開口部8に蓋部4をはめ込んだ状態におけるアンテナ装置1の構成例である。
【0028】
蓋部4に形成された補強部21a〜21e以外の箇所には、補強部21a〜21eよりくぼんだ凹部23a〜23dが形成される。凹部23a〜23dには、後述するように液状樹脂が充填される。
【0029】
図7は、図1で説明したアンテナ装置1のうち、開口部8に嵌合された蓋部4を、A−A’線において断面視した例である。
【0030】
図6で説明したように、蓋部4が開口部8の内面に密着すると、コイルアンテナ10の防水性が高まる。また、開口部8の内面と、開口部8に嵌合された蓋部4の外面との間に区画される隙間に液状樹脂が充填される。本例では、蓋部4の凹部23a〜23dに液状樹脂が充填され、充填部6が形成される。
【0031】
また、開口部2と、蓋部4との合わせ面である、外周部22a,22bと開口部8の内面にわずかな隙間ができても、この隙間に液状樹脂が毛細管現象により浸透して硬化する。このため、ケース部材5の防水性が高まる。
【0032】
液状樹脂としては、例えば、硬化後に弾性を有するシリコン樹脂やポリアミド樹脂が用いられる。これらの樹脂は、射出性に優れることから安定した密閉性、すなわち防水性を得られる。
【0033】
以上説明した本実施の形態に係るアンテナ装置1は、ケース部材5に収納されたコイルアンテナ10を固定し、防水するため、開口部8に蓋部4が嵌合され、収納部2が密閉される。そして、液状樹脂は、蓋部4に形成される凹部23a〜23dと、収納部2と蓋部4の合わせ面に充填される。充填された液状樹脂が硬化すると、外部から収納部2の内部に水分が入り込む隙間がなくなる。このため、従来のアンテナ装置のように、ケースに収納された磁性体コアの周辺に多量の樹脂を充填しなくてよく、液状樹脂の使用量を抑えることもできる。また、開口部8の内面と、開口部8に嵌合された蓋部4の外面との間に区画される隙間に液状樹脂を充填するだけでよいため、液状樹脂が硬化する時間が短くなり、アンテナ装置1の製造工程に要する時間が短縮される。
【0034】
また、蓋部4の外周面には、開口部8の内面に接触する範囲にわたって連続する2条の突起部22a,22bが形成される。蓋部4が開口部8に嵌合されると、突起部22a,22bと開口部8の内面が密着し、収納部2が密閉されるため、蓋部4に充填された液状樹脂がコイルアンテナ10まで達しない。また、経年使用において繰り返し印加される熱的負荷によって生じ得る過剰な圧力が、コイルアンテナ10に悪影響を与えることがない。この結果、アンテナ装置1が経年使用された場合であっても、コイルアンテナ10の性能を保つことができる。
【0035】
ケース部材5に収納されたコイルアンテナ10は、蓋部4によって収納部2の内部に固定される。そして、コイルアンテナ10は、ケース部材5の内部に収納されるため、温度や湿度の変化が激しかったり、油,塵や埃が漂ったりする様々な環境下で使用されてもコイルアンテナ10の品質が劣化しない。
【0036】
また、蓋部4は、金型を用いた射出成型により容易に成型できる。また、各部材は、容易に組み立てられる。この結果、アンテナ装置1の製造コストが大幅に下がるという効果がある。また、完成したアンテナ装置1は従来に比べて軽量であるため、例えば、多数のアンテナ装置1を自動車の機構に組み込んでも、車重の増加が抑えられる。
【0037】
なお、上述した実施の形態では、ケース部材5に収納する電子部品としてコイルアンテナ10を収納したが、収納する部品はコイルアンテナ10に限られない。例えば、コイル部品以外の電子回路や電子部品をケース部材5に収納しても同様の機能、効果が得られることは言うまでもない。
【0038】
また、収納部2の形状は、一端が閉じた筒状としたが、両端が開いた筒状の構成としてもよい。このような構成とした場合、電子部品を収納部に収納した後、両端部を蓋部等で封止して用いる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施の形態例におけるアンテナ装置の外観構成例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態例におけるアンテナ装置の内部構成例を示す分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施の形態例における蓋部を拡大視した例を示す構成図である。
【図4】本発明の一実施の形態例におけるケース部材を開口部から視認した場合において開口部を拡大視した例を示す構成図である。
【図5】本発明の一実施の形態例におけるケース部材を開口部から視認した場合において、開口部を拡大視した例を示す構成図である。
【図6】本発明の一実施の形態例におけるケース部材を開口部から視認した場合において、開口部を拡大視した例を示す構成図である。
【図7】本発明の一実施の形態例における図1のA−A′線に沿ったアンテナ装置の断面例を示す構成図である。
【符号の説明】
【0040】
1…アンテナ装置、2…収納部、3a,3b…脚部、4…蓋部、5…ケース部材、6…充填部、7…コネクタ部、8…開口部、10…コイルアンテナ、11…磁性体コア、12…導線、13…コイル、14…ベース部材、16…外部端子、17…コイル端子、18…コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体コア、前記磁性体コアに巻回されるコイル、前記磁性体コアを保持するベース、及び外部端子を備えるコイルアンテナと、
前記コイルアンテナを収納する収納部及び前記コイルアンテナを前記収納部に導入する開口部が形成されるケース部材と、
前記ケース部材に一体に形成され、前記外部端子が露出するコネクタ部と、
前記開口部に嵌合され、前記収納部を密閉する蓋部と、を備える
アンテナ装置。
【請求項2】
前記開口部の内面と、前記開口部に嵌合された前記蓋部の外面との間に区画される隙間には樹脂が充填される
請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記蓋部の外周面には、前記開口部の内面に接触する範囲にわたって連続する1条以上の突起部が形成される
請求項1又は2記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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