説明

アンテナ装置

【課題】アンテナロッドの固定構造を改善することにより、アンテナロッドを起立状態と後倒状態の2段階で容易に位置決めして固定できるとともに、製造コストを格段に低減できる可倒式のアンテナ装置を提供する。
【解決手段】可倒式のアンテナ装置において、アンテナ取付部がアンテナロッドの接続部位の近傍に平坦部を有し、アンテナベースがアンテナロッドが起立した起立状態において前記平坦部と当接する第1平坦部と、アンテナロッドが後傾した後倒状態において前記平坦部と当接する第2平坦部を有する構成とする。
アンテナロッドの基端面と前記平坦部で第1平坦部又は第2平坦部を狭持することにより、起立状態又は後倒状態が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置に関し、特に自動車のルーフ等に設置される可倒式のアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のルーフ等に設置されるアンテナ装置は、被設置面に取り付けられるアンテナベースの上部にアンテナ取付部が設けられ、このアンテナ取付部にアンテナロッドの基端側が接続されて構成されている(例えば特許文献1)。
また、アンテナロッドが起立した状態や後倒した状態で保持されるように、アンテナ取付部がアンテナベースに揺動可能に支持された可倒式アンテナ装置が提案されている(例えば特許文献2)。さらには、アンテナロッドをアンテナ取付部に着脱不能に接続し、アンテナロッドの脱落や盗難を防止するようにしたアンテナ装置が提案されている(例えば特許文献2,3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−64313号公報
【特許文献2】特開平9−246836号公報
【特許文献3】特開2002−217622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2に記載のアンテナ装置では、間接接合要素の本体(73)に形成された外歯とリング(63)に形成された内歯を噛合させることにより、アンテナロッドの傾斜を段階的に調整して位置決めするようになっている。これらの間接接合要素の本体及びリングは、アンテナロッドからの信号の伝達経路となるため、金属などの導電性材料で構成されている。
このように、引用文献2に記載のアンテナ装置では、導電性材料の切削加工により間接接合要素の本体及びリングを成形するために製造工程が複雑となり、低コスト化の妨げとなっている。
【0005】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、アンテナロッドの固定構造を改善することにより、アンテナロッドを起立状態と後倒状態の2段階で容易に位置決めして固定できるとともに、製造コストを格段に低減できる可倒式のアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、アンテナロッドと、アンテナロッドの基端側が接続されるアンテナ取付部と、前記アンテナ取付部を内部に揺動可能に収容するアンテナベースとを備え、前記アンテナ取付部に接続された前記アンテナロッドが、前記アンテナベースに形成された開口を通して外部に延出するとともに、前後方向に傾倒可能となっているアンテナ装置において、
前記アンテナ取付部は、前記アンテナロッドの接続部位の近傍に平坦部を有し、
前記アンテナベースは、前記アンテナロッドが起立した起立状態において前記平坦部と当接する第1平坦部と、前記アンテナロッドが後傾した後倒状態において前記平坦部と当接する第2平坦部を有し、
前記アンテナロッドの基端面と前記平坦部で前記第1平坦部又は前記第2平坦部を狭持することにより、前記起立状態又は後倒状態を保持することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のアンテナ装置において、前記アンテナ取付部は、周面に突出形成された凸部を有し、
前記アンテナベースは、前記凸部を係止して前記アンテナロッドが前記起立状態より以降に傾倒しないように前記アンテナ取付部の揺動を制止する第1係止部と、前記凸部を係止して前記アンテナロッドが前記後倒状態より以降に傾倒しないように前記アンテナ取付部の揺動を制止する第2係止部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のアンテナ装置において、前記アンテナロッドの基端面が平坦に形成され、
前記アンテナベースの前記第1平坦部又は前記第2平坦部に対応する外面が平坦に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れか一項に記載のアンテナ装置において、前記アンテナロッドは前記アンテナ取付部に螺着され、このアンテナロッドの締め付けに応じて、前記平坦部が前記第1平坦部又は前記第2平坦部と当接又は離間することを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れか一項に記載のアンテナ装置において、前記平坦部、前記第1平坦部及び前記第2平坦部は樹脂材料で構成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れか一項に記載のアンテナ装置において、前記アンテナロッドは、基端面から突出し、ねじ部とフランジが形成されたシャフトを有し、
前記アンテナ取付部は、周面に前記シャフトの挿通口を有する略円筒状のケース部材と、前記挿通口と同軸の貫通ねじ孔と前記アンテナベースに枢設される揺動軸を有する揺動軸部材と、前記シャフトの挿通方向を規制する抜け止め孔を有する抜け止め部材と、で構成され、
前記ケース部材に前記揺動軸部材と前記抜け止め部材が収容され、前記挿通口、前記貫通ねじ孔及び前記抜け止め孔が同軸上に配置された状態で、前記フランジが前記抜け止め孔に圧入され、前記ねじ部が前記貫通ねじ孔に螺入されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るアンテナ装置よれば、アンテナロッドを起立状態と後倒状態の2段階で容易に位置決めして固定できるとともに、製造コストを格段に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るアンテナ装置の外観を示す図である。
【図2】アンテナロッドの取付部分を示す分解斜視図である。
【図3】アンテナ取付部の取付態様を示す図である。
【図4】アンテナロッドを起立状態で締結したときの前後方向の中心軸を通る縦断面を示す図である。
【図5】アンテナロッドを起立状態で締結したときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
【図6】アンテナロッドを起立状態で緩めたときの前後方向の中心軸を通る縦断面を示す図である。
【図7】アンテナロッドを起立した状態で緩めたときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
【図8】アンテナロッドを緩めて後倒状態としたときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
【図9】アンテナロッドを後倒状態で締結したときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
【図10】アンテナロッドを後倒状態としたときの前後方向の中心軸を通る縦断面をアンテナロッドを省略して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、実施形態に係るアンテナ装置1の外観を示す図である。図1に示すように、アンテナ装置1は、AM/FMラジオ等の電波を受信するアンテナロッド10がアンテナベース20に対して傾倒可能に取り付けられた可倒式のアンテナ装置である。アンテナベース20の底部に位置するベースプレート26が自動車のルーフ等に取り付けられることにより、アンテナ装置1が被設置面に固定されるようになっている。
また、アンテナベース20は、内部(例えばベースプレート26上)に増幅回路等を搭載した回路基板を有しており、この回路基板には電源供給用ケーブル41や信号出力用ケーブル42などの配線40が接続されている。
【0015】
ここで、アンテナロッド10とアンテナベース20は、製造段階では別々に製造される。そして、自動車メーカ等により被設置面にアンテナ装置1を取り付ける際に、アンテナロッド10がアンテナベース20に組み込まれる。アンテナロッド10とアンテナベースを別体とすることにより、梱包費や輸送費を低減することが可能となる。
【0016】
図2は、アンテナ装置1におけるアンテナロッド10の取付部分を示す分解斜視図である。図2に示すように、アンテナ装置1は、アンテナロッド10、アンテナロッド10の基端側が接続されるアンテナ取付部30、アンテナ取付部30を内部に揺動可能に収容するアンテナベース20を備えて構成されている。
【0017】
アンテナロッド10は、例えば、金属等の導電性材料の外面をゴム等の弾性部材からなるアンテナカバー11で被覆して構成されている。アンテナロッド10(アンテナカバー11)の基端面111は平坦に形成されており、アンテナ取付部30に接続するためのシャフト12が基端面111から突出している。シャフト12の基端面111側にはねじ部121が形成され、先端側にはフランジ122が形成されている。
【0018】
アンテナ取付部30は、略円筒状に成型された樹脂製のインナーケース31、ガイドプレート22に枢設される揺動軸金具32、シャフト12の挿通方向を規制する抜け止め金具33を備えている。
【0019】
インナーケース31の周面上部にはシャフト12の挿通孔314が形成され、周面下部には挿通孔314と同軸同形の挿通孔315が形成されている。また、インナーケース31の内面には揺動軸金具32及び抜け止め金具33を載置する段差部316が形成されている。
さらに、インナーケース31の周面上部の両端縁には挿通孔314を挟んで平坦部311,311が形成されており、周面下部の軸方向略中央には前方凸部312及び後方凸部313(図4参照)が所定の角度で離間して形成されている。
インナーケース31は樹脂材料で構成されるので、樹脂成型により上述した構造を容易に実現できる。
【0020】
揺動軸部材32には、シャフト12のねじ部121を螺入する貫通ねじ孔322が上面から下面に貫通して形成されている。また、揺動軸部材32の軸方向両側には円板状の揺動軸321が形成されている。
抜け止め金具33は、例えばバネ鋼で構成され、内縁に下方に傾斜した内歯331aを有する抜け止め孔331を有している(いわゆるプッシュナット)。抜け止め金具33に挿通されるシャフト12には、内歯331aの食い付きによって大きなスラスト荷重が生じる。
【0021】
アンテナベース20は、略円錐台状に成型され内部にアンテナ取付部30の収容空間を有する樹脂製のアンテナケース21、アンテナ取付部30(揺動軸金具32)を揺動可能に支持する金属製のガイドプレート22、アンテナ取付部30を載置した状態でアンテナケース21の上部に取り付けるガイドベース23、防水用ゴム24を備えている。
【0022】
アンテナケース21にはケース上部211の中央からケース背部212の上半分にわたって開口215が形成されており、アンテナロッド10は開口215を通して外部に延出するとともに、前後方向(ここでは垂直から後方)に傾倒可能となっている。
ケース上部211の内面211a及びケース背部212の内面212aは平坦に形成されている(図5参照)。また、ケース上部211の外面211b及びケース背部212の外面212bも平坦に形成されている。
さらに、ケース背部内面212aの開口215の後方端縁部分には第1係止部214が形成されており、ケース上部内面211aの開口215の前方端縁部分には第2係止部213が形成されている(図4参照)。
アンテナケース21は樹脂材料で構成されるので、樹脂成型により上述した構造を容易に実現できる。
【0023】
ガイドプレート22とガイドベース23は、例えばインサート成型により一体的に構成されている。
ガイドプレート22は、例えば板金加工により断面コ字状に成型された起立壁221,221を上部に有し、断面L字状に成型された垂下壁222(図4参照)を下部に有している。垂下壁222はアンテナロッド10で受信した信号を回路基板に伝達するための端子部となる。
起立壁221,221には、揺動軸金具32の揺動軸321,321を支持する軸受孔221a,221aが形成されている。この軸受孔221a,221aは、例えば、上下方向に揺動軸321,321より大きい長径を有する楕円形、又は揺動軸321,321より大きい径を有する円形とされ、揺動軸321,321が遊嵌されるようになっている。つまり、アンテナロッド10を締め付けると揺動軸321,321が軸受孔221a,221aの内周上部に接するまでアンテナ取付部30が上方に移動し、アンテナロッド10を緩めると揺動軸321,321が軸受孔221a,221aの内周下部に接するまでアンテナ取付部30が下方に移動することとなる。
なお、アンテナロッド10を完全に締め付けた状態では、アンテナ取付部30の上面(インナーケース31の平坦部311)が起立壁221,221より突出する、又は起立壁221,221と面一となるようになっている。
【0024】
ガイドベース23は円弧状の台座233を有し、この台座233にアンテナ取付部30が載置される。また、ガイドベース23の周面には凹部231が形成されており、この凹部231に防水用ゴム24が嵌着される。この防水用ゴム24により、アンテナケース21の開口215から侵入した水が回路基板側に漏れるのを防止している。なお、侵入した水は、台座233に形成された水抜き溝234により誘導され、アンテナケース21のケース背部212に形成された水抜き穴216から排水される(図4参照)。
【0025】
アンテナ装置1を組み立てる際には、図3、図4に示すように、揺動軸金具32の下面に抜け止め金具33を配置し、これをインナーケース31の段差部316より上の空間に嵌入し、挿通孔314,315、貫通ねじ孔322及び抜け止め孔331を同軸に配列する。このとき、揺動軸金具32の揺動軸321,321はインナーケース31の両側の開口から露出する。
ガイドプレート22の起立壁221の間にアンテナ取付部30を嵌め込むと、揺動軸金具32の揺動軸321,321が軸受孔221a,221aに枢設される。この状態で、ガイドベース23の挿通孔232にねじ25を挿通し、ガイドベース23をアンテナケース21の上部に螺着する。
【0026】
そして、アンテナロッド10をアンテナケース21の開口215を介して挿入し、アンテナ取付部30(揺動軸金具32)に螺着する。具体的には、アンテナロッド10を押し込むことで、内歯331aを弾性変形させつつシャフト12のフランジ122を抜け止め孔331に圧入した後、シャフト12のねじ部121を揺動軸金具32の貫通ねじ孔322に螺入する。
このとき、アンテナ取付部30は、インナーケース31の後方凸部313がアンテナケース21の第1係止部214に係止され回動が制止されるか、又はインナーケース31の前方凸部312がアンテナケース21の第2係止部213に係止され回動が制止されるようになっているので、挿通孔314,315、貫通ねじ孔322及び抜け止め孔331は常に開口215の範囲内となる。したがって、アンテナロッド10のアンテナ取付部30への取付けを容易に行うことが可能となる。
アンテナロッド10で受信した信号は、シャフト12、揺動軸金具32、ガイドプレート22からなる信号伝達経路を介して、回路基板(図示略)に出力されることとなる。
【0027】
このように、アンテナ装置1において、アンテナ取付部30は、周面にシャフト12の挿通口314を有する略円筒状のケース部材(インナーケース)31と、挿通口314と同軸の貫通ねじ孔322とアンテナベース20(ガイドプレート22)に枢設される揺動軸を有する揺動軸部材(揺動軸金具)32と、シャフト12の挿通方向を規制する抜け止め孔331を有する抜け止め部材(抜け止め金具)33とで構成されている。
そして、ケース部材31に揺動軸部材32と抜け止め部材33が収容され、挿通口314、貫通ねじ孔322及び抜け止め孔331が同軸上に配置された状態で、フランジ122が抜け止め孔331に圧入され、ねじ部121が貫通ねじ孔322に螺入されている。
【0028】
図4はアンテナロッドを起立状態で締結したときの前後方向の中心軸を通る縦断面を示す図で、図5は中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
図4,5に示すように、アンテナロッド10を起立状態で締め付けると、これに伴いアンテナ取付部30が上方に移動し、アンテナロッド10の基端面111とインナーケース31の平坦部311,311でアンテナケース21のケース上部211が狭持されて、起立状態の位置決めがなされる。
このとき、アンテナケース21のケース上部内面211aが平坦に形成されているので、インナーケース31の平坦部311,311とケース上部内面211aが面接触することとなり、安定した起立状態が保持される。また、アンテナケース21のケース上部外面211bが平坦に形成されているので、アンテナロッド10の基端面111とケース上部外面211bが面接触することとなり、起立状態の安定性がさらに向上する。
【0029】
図6はアンテナロッドを起立状態で緩めたときの前後方向の中心軸を通る縦断面を示す図で、図7は中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。
図6,7に示すように、アンテナロッド10を起立状態で緩めると、これに伴いアンテナ取付部30が下方に移動可能となる。すなわち、インナーケース31の平坦部311,311及びアンテナロッド10の基端面111がアンテナケース21のケース上部211から離間して位置決め状態が解除されるので、アンテナロッド10が開口215に沿って後傾できるようになる。
このとき、アンテナロッド10を緩めすぎてもフランジ122が内歯331aに引っ掛かるため、アンテナロッド10が抜けることはない。したがって、アンテナロッド10の脱落や盗難を容易に防止することができる。
【0030】
アンテナロッド10を起立状態とする場合、アンテナロッド10を緩めた状態で前方に向けて回動させることとなる。このとき、アンテナロッド10が起立状態より前方に傾倒しないように、インナーケース31の後方凸部313がアンテナケース21の第1係止部214に係止され回動が制止されるようになっている。
したがって、アンテナロッド10が必要以上に傾倒してアンテナケース21の開口215の前方端縁に衝突するのを回避できるので、アンテナロッド10の衝突に伴う負荷によりアンテナケース21が損傷するのを防止できる。
【0031】
図8はアンテナロッド10を緩めて後倒状態としたときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図で、図9はアンテナロッド10を後倒状態で締結したときの前後方向の中心軸から平行にずれた軸を通る縦断面を示す図である。また、図8は、アンテナロッドを後倒状態としたときの前後方向の中心軸を通る縦断面を示す図である。なお、図8ではアンテナロッド10を省略している。
図6,7に示す状態からアンテナロッド10を後倒させると、図8に示す状態となる。図8に示すように、アンテナロッド10を後倒状態とする場合、アンテナロッド10を緩めた状態で後方に向けて回動させることとなる。このとき、図10に示すように、アンテナロッド10が後倒状態より後方に傾倒しないように、インナーケース31の前方凸部312がアンテナケース21の第2係止部213に係止され回動が制止されるようになっている。
したがって、アンテナロッド10が必要以上に傾倒してアンテナケース21の開口215の後方端縁に衝突するのを回避できるので、アンテナロッド10の衝突に伴う負荷によりアンテナケース21が損傷するのを防止できる。
【0032】
図9に示すように、アンテナロッド10を後倒状態で締め付けると、これに伴いアンテナ取付部30が上方に移動し、アンテナロッド10の基端面111とインナーケース31の平坦部311,311でアンテナケース21のケース背部212が狭持されて、後倒状態の位置決めがなされる。
このとき、アンテナケース21のケース背部内面212aが平坦に形成されているので、インナーケース31の平坦部311,311とケース背部内面212aが面接触することとなり、安定した後倒状態が保持される。また、アンテナケース21のケース背部外面212bが平坦に形成されているので、アンテナロッド10の基端面111とケース背部外面212bが面接触することとなり、後倒状態の安定性がさらに向上する。
【0033】
このように、本実施形態のアンテナ装置1において、アンテナ取付部30(インナーケース31)はアンテナロッド10の接続部位(インナーケース31の挿通孔314)の近傍に平坦部311,311を有している。また、アンテナベース20(アンテナケース21)は、アンテナロッド10が起立した起立状態において平坦部311,311と当接する第1平坦部(ケース上部内面)211aと、アンテナロッド10が後倒した後倒状態において平坦部311,311と当接する第2平坦部(ケース背部内面)212aを有している。そして、アンテナロッド10の基端面111と平坦部311,311で第1平坦部211a又は第2平坦部212aを狭持することにより、起立状態又は後倒状態を保持する。
これにより、アンテナロッド10を起立状態と後倒状態の2段階で容易に位置決めして固定することができる。また、アンテナ装置1は簡易な構造で実現されるため、製造コストを格段に低減することができる。
【0034】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
【0035】
実施形態では、インナーケース31の周面上部の両端縁に挿通孔314を挟んで平坦部311,311を形成しているが、この平坦部は挿通孔314の近傍に形成されていればよい。例えば、インナーケース31の周面の一部を平坦化したり、平坦部を周面から突出形成したりして、挿通孔314を囲むように平坦部を形成してもよい。
【0036】
また、実施形態では、インナーケース31の周面下部の軸方向略中央に前方凸部312と後方凸部313を所定の角度で離間して形成し、前方凸部312がアンテナケース21に形成された第2係止部213で係止され、後方凸部313が第1係止部214で係止されるようになっているが、これらの数、位置、形状及び大きさは適宜変更することができる。
【0037】
また、アンテナロッド10の固定状態の安定性よりも外観のデザイン性を重視する場合は、アンテナケース21のケース上部外面211bやケース背部外面212bは平坦に形成されていなくてもよい。この場合でも、インナーケース31の平坦部311,311とケース上部内面211a又はケース背部内面212aが当接するため、アンテナロッド10の起立状態と後倒状態は安定して保持される。
さらに、インナーケース31は成型が容易な点から樹脂材料で構成するのが望ましいが、金属材料(例えば亜鉛ダイキャスト、真鍮)、セラミック材料、その他の素材で構成することもできる。
【0038】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0039】
1 アンテナ装置
10 アンテナロッド
11 アンテナカバー
111 基端面
12 シャフト
121 ねじ部
122 フランジ
20 アンテナベース
21 アンテナケース
211 ケース上部
211a ケース上部内面(第1平坦部)
211b ケース上部外面
212 ケース背部
212a ケース背部内面(第2平坦部)
212b ケース背部外面
213 第2係止部
214 第1係止部
215 開口
216 水抜き穴
22 ガイドプレート
221 起立壁
221a 軸受孔
222 垂下壁
23 ガイドベース
231 凹部
232 挿通孔
233 台座
234 水抜き溝
24 防水用ゴム
25 ねじ
26 ベースプレート
30 アンテナ取付部
31 インナーケース(ケース部材)
311 平坦部
312 前方凸部
313 後方凸部
314 挿通孔
315 挿通孔
316 段差部
32 揺動軸金具(揺動軸部材)
321 揺動軸
322 貫通ねじ孔
33 抜け止め金具(抜け止め部材)
331 抜け止め孔
331a 内歯
40 配線
41 電源供給用ケーブル
42 信号出力用ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナロッドと、アンテナロッドの基端側が接続されるアンテナ取付部と、前記アンテナ取付部を内部に揺動可能に収容するアンテナベースとを備え、前記アンテナ取付部に接続された前記アンテナロッドが、前記アンテナベースに形成された開口を通して外部に延出するとともに、前後方向に傾倒可能となっているアンテナ装置において、
前記アンテナ取付部は、前記アンテナロッドの接続部位の近傍に平坦部を有し、
前記アンテナベースは、前記アンテナロッドが起立した起立状態において前記平坦部と当接する第1平坦部と、前記アンテナロッドが後傾した後倒状態において前記平坦部と当接する第2平坦部を有し、
前記アンテナロッドの基端面と前記平坦部で前記第1平坦部又は前記第2平坦部を狭持することにより、前記起立状態又は後倒状態を保持することを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナ取付部は、周面に突出形成された凸部を有し、
前記アンテナベースは、前記凸部を係止して前記アンテナロッドが前記起立状態より以降に傾倒しないように前記アンテナ取付部の揺動を制止する第1係止部と、前記凸部を係止して前記アンテナロッドが前記後倒状態より以降に傾倒しないように前記アンテナ取付部の揺動を制止する第2係止部を有することを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記アンテナロッドの基端面が平坦に形成され、
前記アンテナベースの前記第1平坦部又は前記第2平坦部に対応する外面が平坦に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記アンテナロッドは前記アンテナ取付部に螺着され、このアンテナロッドの締め付けに応じて、前記平坦部が前記第1平坦部又は前記第2平坦部と当接又は離間することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記平坦部、前記第1平坦部及び前記第2平坦部は樹脂材料で構成されていることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナロッドは、基端面から突出し、ねじ部とフランジが形成されたシャフトを有し、
前記アンテナ取付部は、周面に前記シャフトの挿通口を有する略円筒状のケース部材と、前記挿通口と同軸の貫通ねじ孔と前記アンテナベースに枢設される揺動軸を有する揺動軸部材と、前記シャフトの挿通方向を規制する抜け止め孔を有する抜け止め部材と、で構成され、
前記ケース部材に前記揺動軸部材と前記抜け止め部材が収容され、前記挿通口、前記貫通ねじ孔及び前記抜け止め孔が同軸上に配置された状態で、前記フランジが前記抜け止め孔に圧入され、前記ねじ部が前記貫通ねじ孔に螺入されていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−176384(P2011−176384A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36766(P2010−36766)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】