アンテナ装置
【課題】 限られた空間に互いに影響し合わないように複数のアンテナ素子を設ける。
【解決手段】 アンテナベース11上にアンテナ基板12が立設されて配置され、アンテナ基板12には第1エレメント15と、第2エレメント16とが形成されている。第1エレメント15の上部にはトップ部14が設けられ、第1エレメント15の下にはコイル部13が設けられて、全体でFM周波数に共振している。トップ部14のアンテナベース11からの高さを約20mm以上とすると共に、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔が約10mm以上とされて、AM周波数において第1エレメント15が効率的に動作するようにされている。
【解決手段】 アンテナベース11上にアンテナ基板12が立設されて配置され、アンテナ基板12には第1エレメント15と、第2エレメント16とが形成されている。第1エレメント15の上部にはトップ部14が設けられ、第1エレメント15の下にはコイル部13が設けられて、全体でFM周波数に共振している。トップ部14のアンテナベース11からの高さを約20mm以上とすると共に、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔が約10mm以上とされて、AM周波数において第1エレメント15が効率的に動作するようにされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車へ搭載可能な小型低姿勢の複数の周波数帯に対応できるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナケースを備える車両用のアンテナ装置のように限られた空間しか有していないアンテナ装置に、さらにアンテナを組み込むアンテナ装置が提案されている。この従来のアンテナ装置100の構成を図15に示す。
この図に示す従来のアンテナ装置100は、アンテナケース110と、このアンテナケース110の下面に嵌合されているアンテナベース120と、アンテナベース120に取り付けられているアンテナ基板130と、アンプ基板134と、平面アンテナユニット135から構成されている。アンテナケース110の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされている。アンテナケース110は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナケース110内には、アンテナ基板130を立設して収納できる空間と、アンプ基板134をアンテナベース120にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナケース110の下面には金属製のアンテナベース120が取り付けられている。そして、アンテナベース120にアンテナ基板130が立設して固着されていると共に、アンテナ基板130の前方に位置するようにアンプ基板134がアンテナベース120に固着されている。また、アンテナ基板130の下縁の中央部に矩形状の切欠130aが形成されており、この切欠130a内に位置するように平面アンテナユニット135がアンテナベース120に取り付けられている。このアンテナベース120をアンテナケース110の下面に取り付けることにより、アンテナケース110の内部空間にアンテナ基板130とアンプ基板134と平面アンテナユニット135とを収納することができる。
【0003】
また、アンテナベース120の下面からは、アンテナ装置100を車両に取り付けるためのボルト部121とケーブル引出口122が突出して形成されている。このボルト部121の貫通孔とケーブル引出口122から、複数本のケーブルが導出される。さらに、アンテナ基板130は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成するアンテナ素子131のパターンが上部に形成されている。アンテナ基板130のアンテナベース120からの高さは約75mm程度、長さは約90mm程度とされている。また、アンテナ素子131の長さはアンテナ基板130と同じ長さとされている。さらに、アンテナ素子131の下縁と平面アンテナユニット135の上面との間隔は約33mmとされている。ここで、FM波帯の周波数100MHzの波長をλaとすると、約75mmの寸法は約0.025λa、約90mmの寸法は約0.03λaとなり、アンテナ素子131は波長λaに対して超小型のアンテナとなる。
【0004】
なお、1μH〜3μH程度のアンテナコイルがアンテナ素子131の給電点とアンプ基板134におけるアンプの入力との間に直列に挿入されており、アンテナ素子131とアンテナコイル132とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させている。また、アンプ基板134に設けられているアンプは、アンテナ素子131により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。さらに、アンテナ素子131の直下に衛星ラジオ放送を受信する平面アンテナユニット135が配置されている。平面アンテナユニット135は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を備えている。平面アンテナユニット135は、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:衛星ディジタルラジオサービス)受信用のアンテナとされ、その中心周波数は2338.75MHzとされている。平面アンテナユニット135の動作周波数帯の中心周波数の波長をλsとした際に、平面アンテナユニット135の上面とアンテナ素子131の下端との間隔が約0.25λs以上とされている。これにより、アンテナ素子131の影響を受けることなく平面アンテナユニット135の水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に、良好なゲイン特性が得られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の車両には安全性や快適性を求め様々な情報機器の搭載が進められている。それに伴い、車両には放送系受信アンテナの搭載が必要とされている。車両(移動体)用のアンテナに求められる性能は水平面内において無指向性であることが一般的ある。従って、アンテナ搭載位置として適している位置は、金属物による遮蔽や反射の影響が最も少ない車両の外側であり、特にルーフパネル上が好条件となる。しかし、車両デザインとの整合性を考慮すると複数のアンテナをルーフパネル上に設置することは困難である。また、法規制により車両からの突起(アンテナ高)には制限が設けられている場合が多く、各周波数帯に適した波長のアンテナサイズとした場合には長くなることから、法規制を回避するために脱着式エレメントとしている。この場合、付け忘れによる通信不具合や盗難による被害等が懸念される。
【0007】
従来のアンテナ装置は、脱着式のポールエレメントを備えず低姿勢のアンテナ装置とされており、AMラジオ帯とFMラジオ帯を受信するアンテナ素子を備えている。しかしながら、この従来のアンテナ装置に、さらに他の放送に対応するアンテナ素子を設けるとアンテナケース内は限られた空間とされていることから、互いにアンテナ素子同士が影響し合って、特にAMラジオ帯では良好なゲイン特性を得られないという問題点があった。
そこで、本発明は限られた空間に互いに影響し合わないように複数のアンテナ素子を設けたアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、アンテナケースの下面にアンテナベースが嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、前記アンテナベース上に立設されて配置され、後部の上部に形成された第1エレメントのパターンと、斜辺とされた上辺の前部に沿って形成された第2エレメントのパターンと、前記第1エレメントと給電との間に接続されるコイル部とを有するアンテナ基板と、該アンテナ基板に形成されている前記第1エレメントの上部に接続されるように、前記アンテナ基板の後部の上部に設けられたトップ部とを備え、前記トップ部の前記アンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされてAM放送を効率的に受信できることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアンテナ装置では、トップ部のアンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、第1エレメントと第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされていることから、コイル部とトップ部とを含む第1エレメントの全体の浮遊容量が低減されるようになる。これにより、コイル部とトップ部とを含む第1エレメントの全体で非共振ではあるがAM放送を効率的に受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す背面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す正面図である。
【図6】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【図7】本発明のアンテナ装置のAM帯におけるアンテナおよびアンプの等価回路を示す図である。
【図8】本発明のアンテナ装置のアンテナ基板における各部の寸法を示す図である。
【図9】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際の第1浮遊容量およびAM受信電圧減衰量を示す図表である。
【図10】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際の第1浮遊容量を示すグラフである。
【図11】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際のAM受信電圧減衰量を示すグラフである。
【図12】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際の第2浮遊容量およびAM受信電圧減衰量を示す図表である。
【図13】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際の第2浮遊容量を示すグラフである。
【図14】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際のAM受信電圧減衰量を示すグラフである。
【図15】従来のアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の構成を図1ないし図3に示す。ただし、図1は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す斜視図であり、図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す背面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置とされており、アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10を備えている。アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10内に、後述する第1エレメントおよび第2エレメントが形成されているアンテナ基板が収納されている。このアンテナ装置1の長さは約150mmで高さhは70mm以下の小型で低姿勢のアンテナ装置とされている。
【0012】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の内部構成を図4ないし図6に示す。ただし、図4は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す斜視図であり、図5は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す正面図であり、図6は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す側面図である。なお、図4ないし図6においては、アンテナケース10を省略して示している。
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、AMラジオ帯と、76〜90MHzあるいは88〜108MHzのFMラジオ帯と、470MHz〜710MHzの地上デジタル放送帯とを受信できるアンテナ装置とされている。アンテナ装置1は、樹脂製のアンテナケース10と、このアンテナケース10の下面に嵌合されている金属製のアンテナベース11とを備えている。アンテナベース11には、アンテナ基板12がほぼ垂直に取り付けられている。アンテナベース11の下面からは、アンテナ装置1を車両に取り付けるためのボルト部11aとケーブル引き出し部11bが突出するよう形成されている。このボルト部11aの貫通孔とケーブル引き出し部11bから、受信信号等を出力する複数本のケーブルが導出される。
【0013】
アンテナ基板12は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、上辺は前部から後部に向かって次第に高さが高くなる斜辺とされており、斜辺の形状はアンテナケース10の頂部の内部形状に沿った形状とされている。このアンテナ基板12の後部の上方に、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成する矩形状の第1エレメント15のパターンが形成されており、斜辺とされた上辺に沿って先端から中央をやや超えた位置まで細長い帯状の地上デジタル放送を受信可能な第2エレメント16のパターンが形成されている。第1エレメント15の下辺から受信信号を導く細長いパターン17がアンテナ基板12の下辺まで形成されており、パターン17の下端が給電点とされている。このパターン17の中途に接続される1μH〜3μH程度のコイル部13がアンテナ基板12に設けられている。また、第1エレメント15に対応する位置であって、アンテナ基板12の上辺に断面がくさび状に折曲されたトップ部14が固着されており、トップ部14は第1エレメント15の上部に接続されている。このトップ部14と、第1エレメント15に直列に接続されるコイル部13との作用により第1エレメント15がFM波帯付近に共振するようになる。なお、トップ部14とコイル部13とを備える第1エレメント15は、AMラジオ帯においては非共振アンテナとして動作する。
また、アンテナ基板12の下辺は両端を残して切り取られており、この切り取られた部分に対応するアンテナベース11上に、少なくとも第1エレメント15のAM/FM受信信号を増幅するアンプを組み込んだ図示しないアンプ基板が設けられている。
【0014】
本発明にかかるアンテナ装置1の第1エレメント15のAM帯における等価回路を図7に示す。AM帯の波長に対して第1エレメント15が非常に小さくされているので、AM帯において第1エレメント15はほぼ容量として考えることができる。図7に示す等価回路におけるCaはアンテナ全体容量であり、アンテナ全体容量Caからなるアンテナエレメント部50はトップ部14とコイル部13とを備える第1エレメント15に相当し、第1エレメント15に誘起したアンテナエレメント誘起電圧源V0とアンテナ全体容量Caとが直列に接続される。アンテナエレメント部50から出力される受信信号はアンプ回路部51に入力される。アンプ回路部51には、第1エレメント15の受信信号を増幅するAMPが設けられており、AMPにより増幅された受信信号がAM受信機52に入力される。また、アンプ回路部51の入力側にはグランドとの間にアンプ入力部容量とされる無効容量Ciが発生している。無効容量Ciは、アンテナエレメント部50のグランドに対する浮遊容量により発生する。AMPに入力される受信信号のアンテナ入力部電圧Viは次式(1)で求められる。
Vi=V0・Ca/(Ca+Ci) (1)
【0015】
(1)式で示されるように、アンテナ全体容量Caが大きいほど、または、無効容量Ciが小さいほどAMPに入力されるアンテナ入力部電圧Viは大きくなって、第1エレメント15のゲインが向上することがわかる。
無効容量Ciは、具体的には図6に示すトップ部14および第1エレメント15とアンテナベース11とが対向することにより発生する第1浮遊容量Ci−1と、トップ部14および第1エレメント15と第2エレメント16とが対向することにより発生する第2浮遊容量Ci−2との和として表される。第1浮遊容量Ci−1は、トップ部14および第1エレメント15におけるアンテナベース11からの高さH1に依存するが、トップ部14による浮遊容量が支配的とされる。また、第1エレメント15の前端はトップ部14の前端にほぼ一致していることから、第2浮遊容量Ci−2は、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1に依存する。
【0016】
ここで、アンテナ基板12における各部の寸法を図8に示す。図8に示すように、アンテナ基板12の長さがL1とされ、高さがH2とされる。第1エレメント15の長さはL2とされ、アンテナ基板12の後端と第1エレメント15の前端との距離がL3とされ、下端からの高さがH1とされる。また、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔がD1とされる。例えば、アンテナ基板12の長さL1は約150mm、高さH2は約55mmとされ、第1エレメント15の長さL2が約51mmとされ、アンテナ基板12の後端と第1エレメント15の前端との距離L3が約55mmとされる。なお、上記したように第1エレメント15の前端はトップ部14の前端にほぼ一致している。
【0017】
第1浮遊容量Ci−1は、トップ部14および第1エレメント15におけるアンテナベース11からの高さH1に依存するが、トップ部14による浮遊容量が支配的とされることから、トップ部14の下端からアンテナベース11までの高さH1を5mm〜30mmに変化させた際の第1浮遊容量Ci−1と上記(1)式から求めたAM受信電圧減衰量との図表を図9に示し、高さH1を5mm〜30mmまで変化させた際の第1浮遊容量Ci−1のグラフを図10に示し、高さH1を5mm〜30mmまで変化させた際のAM受信電圧減衰量のグラフを図11に示す。なお、第1エレメント15のアンテナ全体容量Caは約3.5pFとされており、高さH1が約30mmとされた時に第1浮遊容量Ci−1が0pFになるとしていると共に、高さH1が約30mmとされた時にAM受信電圧減衰量が0dBになるとしている。また、高さH1を低くさせる際にはトップ部14の下端をアンテナベース11に向かって延伸することにより低くしている。
図9,10を参照すると、高さH1を約30mmから約5mmまで低くしていくにつれて第1浮遊容量Ci−1が高い増加率で増加していく。このことから、高さH1は高くするほど第1浮遊容量Ci−1が小さくなることが分かる。
【0018】
また、図9,11を参照すると、高さH1を約5mmから約10mm、約15mm、約20mmと高くしていくにつれてAM受信電圧減衰量が約−0.66dB,約−0.33dB,約−0.16db,0dBと減衰量が小さくなるよう変化していく。そして、高さH1を約20mmとした時にAM受信電圧減衰量は飽和して、これ以上高さH1を高くしてもAM受信電圧減衰量は小さくならない。このような、図9ないし図11に示す第1浮遊容量Ci−1およびAM受信電圧減衰量の電気的特性から、高さH1は約20mm以上とすると第1エレメント15により効率的にAM放送を受信できることが分かる。なお、高さH1を20mmとした時は、第1浮遊容量Ci−1は約0.65pFとなるが、AM受信電圧減衰量は0dBと最小値となる。また、FM中心周波数の波長をλとすると、20mmは約0.0055λとなる。
【0019】
第2浮遊容量Ci−2は、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1に依存することから、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1を1mm〜15mmまで変化させた際の第2浮遊容量Ci−2と上記(1)式から求めたAM受信電圧減衰量との図表を図12に示し、間隔D1を1mm〜15mmまで変化させた際の第2浮遊容量Ci−2のグラフを図13に示し、間隔D1を1mm〜15mmに変化させた際のAM受信電圧減衰量のグラフを図14に示す。なお、アンテナ全体容量Caは約3.5pFとされており、第2エレメント16を取り去った時に第2浮遊容量Ci−2が0pFになるとしていると共に、第2エレメント16を取り去った時にAM受信電圧減衰量が0dBになるとしている。また、間隔D1を変化させる際には、第2エレメント16の長さを変化させることで間隔D1を変化させている。
図12,13を参照すると、間隔D1を約15mmから約7mmまで短くしていっても第2浮遊容量Ci−2はわずかに増加するがさほど変化しない。しかし、間隔D1を約7mmより短くしていくと増加率が次第に高くされて第2浮遊容量Ci−2が増加していくようになる。このことから、間隔D1は約7mm以上とすると第2浮遊容量Ci−2が小さくなることが分かる。
【0020】
また、図12,14を参照すると、間隔D1を1mmから3mm、5mm、7mm、9mm、10mmと長くしていくにつれてAM受信電圧減衰量が約−1.83dB,約−1.67dB,約−1.5db,約−1.33dB,約−1.33dB,約−1.17dBと変化していくが、間隔D1を10mm未満としても約−1.17dB以上とはならない。すなわち、間隔D1を10mmとした時にAM受信電圧減衰量は飽和して、これ以上間隔D1を大きくしてもAM受信電圧減衰量は小さくならない。このような、図12ないし図14に示す第2浮遊容量Ci−2およびAM受信電圧減衰量の電気的特性から、間隔D1は約10mm以上とすると第1エレメント15により効率的にAM放送を受信できることが分かる。なお、間隔D1を10mmとした時は、第2浮遊容量Ci−2は約0.19pFになると共に、AM受信電圧減衰量は−1.17dBとなる。AM受信電圧減衰量が上記(1)式から算出される値と異なるのは、図12,14に示すAM受信電圧減衰量には第1浮遊容量Ci−1によるAM受信電圧減衰量が含まれているからと考えられる。また、FM中心周波数の波長をλとすると、10mmは約0.0028λとなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上説明した本発明にかかるアンテナ装置1において、第2エレメント16は原理的にモノポールアンテナとされており、地上デジタル放送用のアンテナとしたが、これに限ることはなくDAB(Digital Audio Broadcast)用のアンテナ等の他の周波数帯のアンテナとしてもよい。第2エレメント16を他の周波数帯のアンテナとする場合には、その周波数帯に応じた所定の長さとすればよい。
また、第1エレメント15は原理的にモノポールアンテナとされており、アンテナ基板12の長さは約150mmで高さは約55mmとされている。従って、第1エレメント15だけで所望のFM周波数に共振させることは困難となることから、コイル部13とトップ部14とを設けている。これにより、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体がFM周波数に共振するようになる。なお、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体の浮遊容量を低減したことから、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体で非共振ではあるがAM放送を効率的に受信できるようになる。
【符号の説明】
【0022】
1 アンテナ装置、10 アンテナケース、11 アンテナベース、11a ボルト部、11b 部、12 アンテナ基板、13 コイル部、14 トップ部、15 第1エレメント、16 第2エレメント、17 パターン、50 アンテナエレメント部、51 アンプ回路部、52 受信機、100 アンテナ装置、100MHz 周波数、110 アンテナケース、120 アンテナベース、121 ボルト部、122 ケーブル引出口、130 アンテナ基板、130a 切欠、131 アンテナ素子、132 アンテナコイル、134 アンプ基板、135 平面アンテナユニット、Ca アンテナ全体容量、Ci 無効容量、Ci−1 第1浮遊容量、Ci−2 第2浮遊容量、V0 アンテナエレメント誘起電圧源、Vi アンテナ入力部電圧
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車へ搭載可能な小型低姿勢の複数の周波数帯に対応できるアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナケースを備える車両用のアンテナ装置のように限られた空間しか有していないアンテナ装置に、さらにアンテナを組み込むアンテナ装置が提案されている。この従来のアンテナ装置100の構成を図15に示す。
この図に示す従来のアンテナ装置100は、アンテナケース110と、このアンテナケース110の下面に嵌合されているアンテナベース120と、アンテナベース120に取り付けられているアンテナ基板130と、アンプ基板134と、平面アンテナユニット135から構成されている。アンテナケース110の長手方向の長さは約200mmとされ、横幅は約75mmとされている。アンテナケース110は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナケース110内には、アンテナ基板130を立設して収納できる空間と、アンプ基板134をアンテナベース120にほぼ平行に収納する空間が形成されている。アンテナケース110の下面には金属製のアンテナベース120が取り付けられている。そして、アンテナベース120にアンテナ基板130が立設して固着されていると共に、アンテナ基板130の前方に位置するようにアンプ基板134がアンテナベース120に固着されている。また、アンテナ基板130の下縁の中央部に矩形状の切欠130aが形成されており、この切欠130a内に位置するように平面アンテナユニット135がアンテナベース120に取り付けられている。このアンテナベース120をアンテナケース110の下面に取り付けることにより、アンテナケース110の内部空間にアンテナ基板130とアンプ基板134と平面アンテナユニット135とを収納することができる。
【0003】
また、アンテナベース120の下面からは、アンテナ装置100を車両に取り付けるためのボルト部121とケーブル引出口122が突出して形成されている。このボルト部121の貫通孔とケーブル引出口122から、複数本のケーブルが導出される。さらに、アンテナ基板130は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成するアンテナ素子131のパターンが上部に形成されている。アンテナ基板130のアンテナベース120からの高さは約75mm程度、長さは約90mm程度とされている。また、アンテナ素子131の長さはアンテナ基板130と同じ長さとされている。さらに、アンテナ素子131の下縁と平面アンテナユニット135の上面との間隔は約33mmとされている。ここで、FM波帯の周波数100MHzの波長をλaとすると、約75mmの寸法は約0.025λa、約90mmの寸法は約0.03λaとなり、アンテナ素子131は波長λaに対して超小型のアンテナとなる。
【0004】
なお、1μH〜3μH程度のアンテナコイルがアンテナ素子131の給電点とアンプ基板134におけるアンプの入力との間に直列に挿入されており、アンテナ素子131とアンテナコイル132とからなるアンテナ部をFM波帯付近で共振させている。また、アンプ基板134に設けられているアンプは、アンテナ素子131により受信されたFM放送信号とAM放送信号とを増幅して出力している。さらに、アンテナ素子131の直下に衛星ラジオ放送を受信する平面アンテナユニット135が配置されている。平面アンテナユニット135は、摂動素子を備え円偏波を受信可能なパッチ素子を備えている。平面アンテナユニット135は、SDARS(Satellite Digital Audio Radio Service:衛星ディジタルラジオサービス)受信用のアンテナとされ、その中心周波数は2338.75MHzとされている。平面アンテナユニット135の動作周波数帯の中心周波数の波長をλsとした際に、平面アンテナユニット135の上面とアンテナ素子131の下端との間隔が約0.25λs以上とされている。これにより、アンテナ素子131の影響を受けることなく平面アンテナユニット135の水平面内の放射指向特性を無指向性とすることができると共に、良好なゲイン特性が得られるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−135741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の車両には安全性や快適性を求め様々な情報機器の搭載が進められている。それに伴い、車両には放送系受信アンテナの搭載が必要とされている。車両(移動体)用のアンテナに求められる性能は水平面内において無指向性であることが一般的ある。従って、アンテナ搭載位置として適している位置は、金属物による遮蔽や反射の影響が最も少ない車両の外側であり、特にルーフパネル上が好条件となる。しかし、車両デザインとの整合性を考慮すると複数のアンテナをルーフパネル上に設置することは困難である。また、法規制により車両からの突起(アンテナ高)には制限が設けられている場合が多く、各周波数帯に適した波長のアンテナサイズとした場合には長くなることから、法規制を回避するために脱着式エレメントとしている。この場合、付け忘れによる通信不具合や盗難による被害等が懸念される。
【0007】
従来のアンテナ装置は、脱着式のポールエレメントを備えず低姿勢のアンテナ装置とされており、AMラジオ帯とFMラジオ帯を受信するアンテナ素子を備えている。しかしながら、この従来のアンテナ装置に、さらに他の放送に対応するアンテナ素子を設けるとアンテナケース内は限られた空間とされていることから、互いにアンテナ素子同士が影響し合って、特にAMラジオ帯では良好なゲイン特性を得られないという問題点があった。
そこで、本発明は限られた空間に互いに影響し合わないように複数のアンテナ素子を設けたアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、アンテナケースの下面にアンテナベースが嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、前記アンテナベース上に立設されて配置され、後部の上部に形成された第1エレメントのパターンと、斜辺とされた上辺の前部に沿って形成された第2エレメントのパターンと、前記第1エレメントと給電との間に接続されるコイル部とを有するアンテナ基板と、該アンテナ基板に形成されている前記第1エレメントの上部に接続されるように、前記アンテナ基板の後部の上部に設けられたトップ部とを備え、前記トップ部の前記アンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされてAM放送を効率的に受信できることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のアンテナ装置では、トップ部のアンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、第1エレメントと第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされていることから、コイル部とトップ部とを含む第1エレメントの全体の浮遊容量が低減されるようになる。これにより、コイル部とトップ部とを含む第1エレメントの全体で非共振ではあるがAM放送を効率的に受信できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す背面図である。
【図3】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【図4】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す斜視図である。
【図5】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す正面図である。
【図6】本発明の実施例にかかるアンテナ装置の内部構成を示す側面図である。
【図7】本発明のアンテナ装置のAM帯におけるアンテナおよびアンプの等価回路を示す図である。
【図8】本発明のアンテナ装置のアンテナ基板における各部の寸法を示す図である。
【図9】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際の第1浮遊容量およびAM受信電圧減衰量を示す図表である。
【図10】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際の第1浮遊容量を示すグラフである。
【図11】本発明のアンテナ装置におけるトップ部からアースまでの距離を変化させた際のAM受信電圧減衰量を示すグラフである。
【図12】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際の第2浮遊容量およびAM受信電圧減衰量を示す図表である。
【図13】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際の第2浮遊容量を示すグラフである。
【図14】本発明のアンテナ装置における第1エレメントと第2エレメント間の間隔を変化させた際のAM受信電圧減衰量を示すグラフである。
【図15】従来のアンテナ装置の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の構成を図1ないし図3に示す。ただし、図1は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す斜視図であり、図2は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す背面図であり、図3は本発明にかかるアンテナ装置1の構成を示す側面図である。
これらの図に示すように、本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、車両のルーフに取り付けられるアンテナ装置とされており、アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10を備えている。アンテナケース10は電波透過性の合成樹脂製とされており、先端に行くほど細くなると共に、側面も内側に絞った曲面とされた流線型の外形形状とされている。アンテナベース11が下面に嵌合されたアンテナケース10内に、後述する第1エレメントおよび第2エレメントが形成されているアンテナ基板が収納されている。このアンテナ装置1の長さは約150mmで高さhは70mm以下の小型で低姿勢のアンテナ装置とされている。
【0012】
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1の内部構成を図4ないし図6に示す。ただし、図4は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す斜視図であり、図5は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す正面図であり、図6は本発明にかかるアンテナ装置1の内部構成を示す側面図である。なお、図4ないし図6においては、アンテナケース10を省略して示している。
本発明の実施例にかかるアンテナ装置1は、AMラジオ帯と、76〜90MHzあるいは88〜108MHzのFMラジオ帯と、470MHz〜710MHzの地上デジタル放送帯とを受信できるアンテナ装置とされている。アンテナ装置1は、樹脂製のアンテナケース10と、このアンテナケース10の下面に嵌合されている金属製のアンテナベース11とを備えている。アンテナベース11には、アンテナ基板12がほぼ垂直に取り付けられている。アンテナベース11の下面からは、アンテナ装置1を車両に取り付けるためのボルト部11aとケーブル引き出し部11bが突出するよう形成されている。このボルト部11aの貫通孔とケーブル引き出し部11bから、受信信号等を出力する複数本のケーブルが導出される。
【0013】
アンテナ基板12は、高周波特性の良好なガラスエポキシ基板等のプリント基板とされており、上辺は前部から後部に向かって次第に高さが高くなる斜辺とされており、斜辺の形状はアンテナケース10の頂部の内部形状に沿った形状とされている。このアンテナ基板12の後部の上方に、AM放送とFM放送を受信可能なアンテナを構成する矩形状の第1エレメント15のパターンが形成されており、斜辺とされた上辺に沿って先端から中央をやや超えた位置まで細長い帯状の地上デジタル放送を受信可能な第2エレメント16のパターンが形成されている。第1エレメント15の下辺から受信信号を導く細長いパターン17がアンテナ基板12の下辺まで形成されており、パターン17の下端が給電点とされている。このパターン17の中途に接続される1μH〜3μH程度のコイル部13がアンテナ基板12に設けられている。また、第1エレメント15に対応する位置であって、アンテナ基板12の上辺に断面がくさび状に折曲されたトップ部14が固着されており、トップ部14は第1エレメント15の上部に接続されている。このトップ部14と、第1エレメント15に直列に接続されるコイル部13との作用により第1エレメント15がFM波帯付近に共振するようになる。なお、トップ部14とコイル部13とを備える第1エレメント15は、AMラジオ帯においては非共振アンテナとして動作する。
また、アンテナ基板12の下辺は両端を残して切り取られており、この切り取られた部分に対応するアンテナベース11上に、少なくとも第1エレメント15のAM/FM受信信号を増幅するアンプを組み込んだ図示しないアンプ基板が設けられている。
【0014】
本発明にかかるアンテナ装置1の第1エレメント15のAM帯における等価回路を図7に示す。AM帯の波長に対して第1エレメント15が非常に小さくされているので、AM帯において第1エレメント15はほぼ容量として考えることができる。図7に示す等価回路におけるCaはアンテナ全体容量であり、アンテナ全体容量Caからなるアンテナエレメント部50はトップ部14とコイル部13とを備える第1エレメント15に相当し、第1エレメント15に誘起したアンテナエレメント誘起電圧源V0とアンテナ全体容量Caとが直列に接続される。アンテナエレメント部50から出力される受信信号はアンプ回路部51に入力される。アンプ回路部51には、第1エレメント15の受信信号を増幅するAMPが設けられており、AMPにより増幅された受信信号がAM受信機52に入力される。また、アンプ回路部51の入力側にはグランドとの間にアンプ入力部容量とされる無効容量Ciが発生している。無効容量Ciは、アンテナエレメント部50のグランドに対する浮遊容量により発生する。AMPに入力される受信信号のアンテナ入力部電圧Viは次式(1)で求められる。
Vi=V0・Ca/(Ca+Ci) (1)
【0015】
(1)式で示されるように、アンテナ全体容量Caが大きいほど、または、無効容量Ciが小さいほどAMPに入力されるアンテナ入力部電圧Viは大きくなって、第1エレメント15のゲインが向上することがわかる。
無効容量Ciは、具体的には図6に示すトップ部14および第1エレメント15とアンテナベース11とが対向することにより発生する第1浮遊容量Ci−1と、トップ部14および第1エレメント15と第2エレメント16とが対向することにより発生する第2浮遊容量Ci−2との和として表される。第1浮遊容量Ci−1は、トップ部14および第1エレメント15におけるアンテナベース11からの高さH1に依存するが、トップ部14による浮遊容量が支配的とされる。また、第1エレメント15の前端はトップ部14の前端にほぼ一致していることから、第2浮遊容量Ci−2は、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1に依存する。
【0016】
ここで、アンテナ基板12における各部の寸法を図8に示す。図8に示すように、アンテナ基板12の長さがL1とされ、高さがH2とされる。第1エレメント15の長さはL2とされ、アンテナ基板12の後端と第1エレメント15の前端との距離がL3とされ、下端からの高さがH1とされる。また、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔がD1とされる。例えば、アンテナ基板12の長さL1は約150mm、高さH2は約55mmとされ、第1エレメント15の長さL2が約51mmとされ、アンテナ基板12の後端と第1エレメント15の前端との距離L3が約55mmとされる。なお、上記したように第1エレメント15の前端はトップ部14の前端にほぼ一致している。
【0017】
第1浮遊容量Ci−1は、トップ部14および第1エレメント15におけるアンテナベース11からの高さH1に依存するが、トップ部14による浮遊容量が支配的とされることから、トップ部14の下端からアンテナベース11までの高さH1を5mm〜30mmに変化させた際の第1浮遊容量Ci−1と上記(1)式から求めたAM受信電圧減衰量との図表を図9に示し、高さH1を5mm〜30mmまで変化させた際の第1浮遊容量Ci−1のグラフを図10に示し、高さH1を5mm〜30mmまで変化させた際のAM受信電圧減衰量のグラフを図11に示す。なお、第1エレメント15のアンテナ全体容量Caは約3.5pFとされており、高さH1が約30mmとされた時に第1浮遊容量Ci−1が0pFになるとしていると共に、高さH1が約30mmとされた時にAM受信電圧減衰量が0dBになるとしている。また、高さH1を低くさせる際にはトップ部14の下端をアンテナベース11に向かって延伸することにより低くしている。
図9,10を参照すると、高さH1を約30mmから約5mmまで低くしていくにつれて第1浮遊容量Ci−1が高い増加率で増加していく。このことから、高さH1は高くするほど第1浮遊容量Ci−1が小さくなることが分かる。
【0018】
また、図9,11を参照すると、高さH1を約5mmから約10mm、約15mm、約20mmと高くしていくにつれてAM受信電圧減衰量が約−0.66dB,約−0.33dB,約−0.16db,0dBと減衰量が小さくなるよう変化していく。そして、高さH1を約20mmとした時にAM受信電圧減衰量は飽和して、これ以上高さH1を高くしてもAM受信電圧減衰量は小さくならない。このような、図9ないし図11に示す第1浮遊容量Ci−1およびAM受信電圧減衰量の電気的特性から、高さH1は約20mm以上とすると第1エレメント15により効率的にAM放送を受信できることが分かる。なお、高さH1を20mmとした時は、第1浮遊容量Ci−1は約0.65pFとなるが、AM受信電圧減衰量は0dBと最小値となる。また、FM中心周波数の波長をλとすると、20mmは約0.0055λとなる。
【0019】
第2浮遊容量Ci−2は、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1に依存することから、第1エレメント15と第2エレメント16との間隔D1を1mm〜15mmまで変化させた際の第2浮遊容量Ci−2と上記(1)式から求めたAM受信電圧減衰量との図表を図12に示し、間隔D1を1mm〜15mmまで変化させた際の第2浮遊容量Ci−2のグラフを図13に示し、間隔D1を1mm〜15mmに変化させた際のAM受信電圧減衰量のグラフを図14に示す。なお、アンテナ全体容量Caは約3.5pFとされており、第2エレメント16を取り去った時に第2浮遊容量Ci−2が0pFになるとしていると共に、第2エレメント16を取り去った時にAM受信電圧減衰量が0dBになるとしている。また、間隔D1を変化させる際には、第2エレメント16の長さを変化させることで間隔D1を変化させている。
図12,13を参照すると、間隔D1を約15mmから約7mmまで短くしていっても第2浮遊容量Ci−2はわずかに増加するがさほど変化しない。しかし、間隔D1を約7mmより短くしていくと増加率が次第に高くされて第2浮遊容量Ci−2が増加していくようになる。このことから、間隔D1は約7mm以上とすると第2浮遊容量Ci−2が小さくなることが分かる。
【0020】
また、図12,14を参照すると、間隔D1を1mmから3mm、5mm、7mm、9mm、10mmと長くしていくにつれてAM受信電圧減衰量が約−1.83dB,約−1.67dB,約−1.5db,約−1.33dB,約−1.33dB,約−1.17dBと変化していくが、間隔D1を10mm未満としても約−1.17dB以上とはならない。すなわち、間隔D1を10mmとした時にAM受信電圧減衰量は飽和して、これ以上間隔D1を大きくしてもAM受信電圧減衰量は小さくならない。このような、図12ないし図14に示す第2浮遊容量Ci−2およびAM受信電圧減衰量の電気的特性から、間隔D1は約10mm以上とすると第1エレメント15により効率的にAM放送を受信できることが分かる。なお、間隔D1を10mmとした時は、第2浮遊容量Ci−2は約0.19pFになると共に、AM受信電圧減衰量は−1.17dBとなる。AM受信電圧減衰量が上記(1)式から算出される値と異なるのは、図12,14に示すAM受信電圧減衰量には第1浮遊容量Ci−1によるAM受信電圧減衰量が含まれているからと考えられる。また、FM中心周波数の波長をλとすると、10mmは約0.0028λとなる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上説明した本発明にかかるアンテナ装置1において、第2エレメント16は原理的にモノポールアンテナとされており、地上デジタル放送用のアンテナとしたが、これに限ることはなくDAB(Digital Audio Broadcast)用のアンテナ等の他の周波数帯のアンテナとしてもよい。第2エレメント16を他の周波数帯のアンテナとする場合には、その周波数帯に応じた所定の長さとすればよい。
また、第1エレメント15は原理的にモノポールアンテナとされており、アンテナ基板12の長さは約150mmで高さは約55mmとされている。従って、第1エレメント15だけで所望のFM周波数に共振させることは困難となることから、コイル部13とトップ部14とを設けている。これにより、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体がFM周波数に共振するようになる。なお、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体の浮遊容量を低減したことから、コイル部13とトップ部14とを含む第1エレメント15の全体で非共振ではあるがAM放送を効率的に受信できるようになる。
【符号の説明】
【0022】
1 アンテナ装置、10 アンテナケース、11 アンテナベース、11a ボルト部、11b 部、12 アンテナ基板、13 コイル部、14 トップ部、15 第1エレメント、16 第2エレメント、17 パターン、50 アンテナエレメント部、51 アンプ回路部、52 受信機、100 アンテナ装置、100MHz 周波数、110 アンテナケース、120 アンテナベース、121 ボルト部、122 ケーブル引出口、130 アンテナ基板、130a 切欠、131 アンテナ素子、132 アンテナコイル、134 アンプ基板、135 平面アンテナユニット、Ca アンテナ全体容量、Ci 無効容量、Ci−1 第1浮遊容量、Ci−2 第2浮遊容量、V0 アンテナエレメント誘起電圧源、Vi アンテナ入力部電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナケースの下面にアンテナベースが嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、
前記アンテナベース上に立設されて配置され、後部の上部に形成された第1エレメントのパターンと、斜辺とされた上辺の前部に上辺に沿って形成された第2エレメントのパターンと、前記第1エレメントと給電点との間に接続されるコイル部とを有するアンテナ基板と、
該アンテナ基板に形成されている前記第1エレメントの上部に接続されるように、前記アンテナ基板の後部の上部に設けられたトップ部とを備え、
前記トップ部の前記アンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされてAM放送を効率的に受信できることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1エレメントと前記コイル部および前記トップ部の全体が、FM周波数に共振することを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【請求項1】
アンテナケースの下面にアンテナベースが嵌合されて内部に収納空間が形成されているアンテナ装置であって、
前記アンテナベース上に立設されて配置され、後部の上部に形成された第1エレメントのパターンと、斜辺とされた上辺の前部に上辺に沿って形成された第2エレメントのパターンと、前記第1エレメントと給電点との間に接続されるコイル部とを有するアンテナ基板と、
該アンテナ基板に形成されている前記第1エレメントの上部に接続されるように、前記アンテナ基板の後部の上部に設けられたトップ部とを備え、
前記トップ部の前記アンテナベースからの高さが約20mm以上とされていると共に、前記第1エレメントと前記第2エレメントとの間隔が約10mm以上とされてAM放送を効率的に受信できることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記第1エレメントと前記コイル部および前記トップ部の全体が、FM周波数に共振することを特徴とする請求項1記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−199865(P2012−199865A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63891(P2011−63891)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000165848)原田工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】
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