アンテナ装置
【課題】共振周波数の調整機構を設けても、装置体格を小型化することができ、部品コストも低く抑えることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】車両の車外送信機(車内送信機)は、例えばLF電波を送信するアンテナユニット14を備える。アンテナユニット14は、ボビン18にコイル19が複数巻回されたコイルユニット16と、高透磁率を有するコア17とを備える。アンテナユニット14は、コイル19に対するコア17の位置を動かすことによってアンテナの共振周波数を調整する第1共振周波数調整機構23を備える。よって、コア17をコイルユニット16に対してコイル軸心方向に動かして位置合わせをすることにより、アンテナのインダクタンス、つまり共振周波数を調整する。
【解決手段】車両の車外送信機(車内送信機)は、例えばLF電波を送信するアンテナユニット14を備える。アンテナユニット14は、ボビン18にコイル19が複数巻回されたコイルユニット16と、高透磁率を有するコア17とを備える。アンテナユニット14は、コイル19に対するコア17の位置を動かすことによってアンテナの共振周波数を調整する第1共振周波数調整機構23を備える。よって、コア17をコイルユニット16に対してコイル軸心方向に動かして位置合わせをすることにより、アンテナのインダクタンス、つまり共振周波数を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置には小型化/高出力化のニーズがあり、このニーズを満たすにはQ(Quality factor)値を上げることが一般的に知られている。Q値は、Q=ωL/R(L:インダクタンス、R:抵抗)により求まり、Q値を高く設定すれば、Lが高い値をとるということになる。Lが大きければ電流が小さくても高出力が得られるため、Q値を高い値に設定することで、アンテナ装置の小型化/高出力化が満足される。
【0003】
図10に、Q値の波形特性を示す。なお、同図の縦軸は、インピーダンスであり、横軸が周波数である。同図に示されるように、Q値が低ければ、インピーダンス(共振周波数)の変動ばらつきは小さく収まるものの、Q値を高くすると、インピーダンス(共振周波数)の変動ばらつきは大きくなってしまうことが分かる。よって、アンテナ装置の小型化/高出力化を狙ってQ値を高くとると、背反として、共振周波数変動による電界強度ばらつきが大きくなる懸念がある。
【0004】
そこで、共振周波数変動を狭い範囲に抑えるために、例えば特許文献1〜3の技術が周知である。これら文献1〜3は、コアにアンテナ線を巻回した主アンテナに対して、サブコアの位置や向き等を変えることで、共振周波数を調整する技術である。特許文献1は、アンテナに対してネジコアを前後に動かす技術である。特許文献2は、アンテナに対して半月状のコアを回転させる技術である。特許文献3は、板状コアを前後に動かす技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3735104号公報
【特許文献2】特許第4186818号公報
【特許文献3】特許第4254859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1〜3は、主アンテナの他にサブコアが必要となる技術であるので、サブコア分だけ装置体格の全長が長くなったり、部品コストが高くなったりする問題があった。
【0007】
本発明の目的は、共振周波数の調整機構を設けても、装置体格を小型化することができ、部品コストも低く抑えることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、高透磁率のコアにアンテナ線を巻き付け、環状の当該アンテナ線が共振回路のコイルとなるアンテナ装置において、少なくとも前記コイルを備えるコイルユニットに対し、前記コア自体を動かして位置調整することにより共振周波数を調整する共振周波数調整機構を備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の構成によれば、コア自体をコイルユニットに対して動かして共振周波数を調整するので、共振周波数を調整するために他の部品を必要とせずに済む。よって、アンテナ装置に共振周波数の調整機能を持たせたとしても、装置体格を小型に抑えることが可能となり、部品コストも低く抑えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記共振周波数調整機構は、前記コア及び前記コイルユニットの一方に設けられた突部と、前記した2者の他方に設けられた複数の溝部とを備え、複数の前記溝部の1つに前記突部を係止することにより、前記コアを前記コイルユニットに対して位置決めし、該位置にて共振周波数が決まることを要旨とする。この構成によれば、コイルユニットに対するコアの位置が突部と溝部との係止により決まるので、コアの位置合わせがし易くなる。また、位置決め時には、突と溝とが引っ掛かる構造をとるので、コアの位置ずれも生じ難くすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記コイルを主巻線と補助巻線との分割巻きとし、前記主巻線と前記補助巻線との間隔を調整することにより共振周波数を調整する第2共振周波数調整機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、主巻線と補助巻線との間隔(ギャップ)によっても共振周波数の調整が可能となるので、共振周波数を所望の値に一致させ易くなる。
【0012】
本発明では、前記コアを挿し込んだ前記コイルユニットをケースに取り付けたとき、ばね状の前記突部を前記ケースの壁面で押え付けることにより、前記突部及び前記溝部の位置状態を保持する位置保持機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、突部が位置保持機構によって溝部にしっかりと固定されるので、コアの位置ずれ防止に効果が高くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共振周波数の調整機構を設けても、装置体格を小型化することができ、部品コストも低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のキー操作フリーシステムの構成図。
【図2】送信機の斜視図。
【図3】送信機を一側面側から見たときの分解斜視図。
【図4】送信機を他側面側から見たときの分解斜視図。
【図5】アンテナユニットの分解斜視図。
【図6】第1共振周波数調整機構の構造を示す断面図。
【図7】(a)はコア位置とインダクタンス変化率との関係を示すグラフ、(b)はコイルギャップを変えた各アンテナの模式図。
【図8】コイルギャップとインダクタンス変化率との関係を示すグラフ。
【図9】(a)はコイル巻数比とインダクタンス変化率との関係を示すグラフ、(b)はコイル巻数比を変えた各アンテナの模式図。
【図10】従来のQ値の周波数特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したアンテナ装置の一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1からの通信をトリガとして電子キー2と無線によりID照合を行うキー操作フリーシステム3が設けられている。この場合、車両1には、電子キー2とのID照合を行うキー照合装置4と、車両ドアの施解錠動作を管理するドアロック装置5と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置6とが設けられ、これらが車内のバス7を介して接続されている。
【0016】
キー照合装置4には、キー照合装置4を統括制御する照合ECU(Electronic Control Unit)8が設けられている。照合ECU8には、電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU8には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信する車外送信機9と、車内にLF電波を送信する車内送信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両受信機11とが接続されている。なお、車外送信機9及び車内送信機10がアンテナ装置を構成する。
【0017】
車両1が駐車状態のとき、照合ECU8は、車外送信機9からリクエスト信号Srqを断続的に送信し、スマート通信(車外スマート通信)を実行する。リクエスト信号Srqの車外通信エリアに電子キー2が進入し、電子キー2がリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2は起動し、ID信号SidをUHF電波により送信する。ID信号Sidには、電子キー2に登録されたIDコードが含まれている。照合ECU8は、リクエスト信号Srqの送信後にID信号Sidを受信すると、ID照合としてスマート照合(車外スマート照合)を行い、この照合が成立すれば、ドアロック施解錠を許可又は実行させる。
【0018】
ユーザが車内に乗車すると、それまでの車外送信機9に代わり、今度は車内送信機10がリクエスト信号Srqの送信を開始し、スマート通信(車内スマート通信)を実行する。車内で車外と同様のスマート照合(車内スマート照合)が行われ、この照合が成立すれば、車内に設置されたプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ12による電源遷移及びエンジン始動の操作が許可される。
【0019】
図2〜図6に、車外送信機9の構造を示す。なお、車内送信機10は車外送信機9と同様の構造をとるので、ここでは車外送信機9についてのみ説明する。車外送信機9には、車外送信機9の各種部品を収納する樹脂製のケース13が設けられている。ケース13は、長細い中空の箱状を呈するとともに、樹脂により形成されている。車外送信機9は、例えばドア等の車体ボディ(金属等の鉄板)に、ネジ等により組み付けられている。
【0020】
図3及び図4に示すように、ケース13の内部には、車外送信機9のアンテナユニット14が収納されている。ケース13において長手方向の側部(図2及び図3の紙面右側の側部)には、開口部15が形成され、この開口部15からアンテナユニット14がケース13の内部に収納される。
【0021】
図5に示すように、アンテナユニット14には、アンテナ線(電線)が複数巻回されたコイルユニット16と、高透磁率の材料(例えばフェライト)からなる棒状のコア17とが設けられている。コイルユニット16には、アンテナ線の巻回するための樹脂製のボビン18と、ボビン18に巻き付けられた環状のアンテナ線の群からなるコイル19とが設けられている。ボビン18において長手方向の側部(図5の左側の側部)には、開口部20が設けられ、この開口部20からコア17がボビン18の内部に収納される。アンテナユニット14は、コイル19をL(インダクタンス)とし、アンテナユニット14の基板(図示略)に実装されたコンデンサをC(キャパシタンス)とする直列回路からなる。また、コイル19は、アンテナユニット14をボビン18に取り付けたとき、コア17の周囲に巻き付く取り付け状態をとる。
【0022】
ボビン18の根元には、アンテナユニット14をケース13に固定する一対の係止突21,21(図3〜図5では一方のみ図示)が設けられている。よって、アンテナユニット14がケース13に取り付けられたとき、係止突21,21がケース13の係止孔22,22に係止することで、アンテナユニット14がケース13から抜け止めされる。
【0023】
図3〜図5に示すように、アンテナユニット14には、コイル19に対するコア17の位置を動かすことによってアンテナの共振周波数fcを調整する第1共振周波数調整機構23が設けられている。ところで、共振周波数fcは、直列共振回路のインダクタンスをLとし、キャパシタンスをCとすると、次式により求まることが知られている。
【0024】
【数1】
ここで、コイル19に対してコア17をコイル19の軸心方向(コイル軸心方向:図3及び図5のX軸方向)に動かすと、コイル19のインダクタンスが変化する現状がある。よって、コア17をコイル19に対して動かしてインダクタンスを調整すれば、結果として、共振周波数fcを所望の値に切り換えることが可能である。従って、本例の共振周波数調整機構23は、この原理を用いて、共振周波数fcを調整する。
【0025】
この場合、コア17は、コイルユニット16(ボビン18)に対して、コイル軸心方向に直線往復移動可能となっている。そして、コア17をボビン18に対して動かして所定位置に位置させることにより、所望の共振周波数fcに合わせ込む。
【0026】
図6に示すように、本例の第1共振周波数調整機構23には、コア17のコイル軸心方向の位置を段階的に設定する位置設定部24が設けられている。この場合、ボビン18には、コア17に係止可能なバネ状のボビン突起部25が設けられている。ボビン突起部25は、根元を支点に高さ方向(図6のZ軸方向)に動く。一方、コア17の上面において挿込方向の端部には、ボビン突起部25が係止する複数の凹部26が設けられている。これら複数の凹部26は、コア17の長手方向に沿って等間隔に配置されている。なお、ボビン突起部25が突部に相当し、凹部26が溝部に相当する。
【0027】
また、共振周波数調整機構23には、位置設定部24が決めた位置を強固に保持する位置保持機構27が設けられている。この場合、ボビン突起部25の上面には、ボビン突起部25の位置決め状態を保持するときに機能する抑え突28が部分的に突設されている。アンテナユニット14がケース13に収納された際、ボビン突起部25は抑え突28がケース13の内面(壁面)13aによって上から押されることにより、ボビン突起部25が凹部26に強く固定される。
【0028】
さらに、本例のアンテナユニット14は、コイル19を分割巻きとすることで共振周波数fcを調整する第2共振周波数調整機構29が設けられている。本例の場合、コア17の挿込方向手前側を第1分割コイル19aし、コア17の挿込方向奥側を第2分割コイル19bとする。そして、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの間の間隔(以降、コイルギャップTと記す)や、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻数(コイルターン数N)を調整することで、インダクタンス(共振周波数fc)を調整する。なお、分割コイル19a,19bが主巻線及び補助巻線を構成する。
【0029】
次に、本例のアンテナの作用を、図5〜図9を用いて説明する。
車外送信機9(車内送信機10)を組み立てるとき、図5に示すように、用意したコイルユニット16にコア17を挿し込み、ボビン突起部25を複数の凹部26のうちの所定の1つに係止する。このとき、複数の凹部26のうち、所望の共振周波数fcを出力できるコア位置となる凹部26にボビン突起部25を係止して、コア17をコイルユニット16に取り付ける。この部品組み付けによって、コイルユニット16及びコア17が1つのアンテナユニット14となり、アンテナの共振周波数fcが所望値に一致する。
【0030】
そして、このアンテナユニット14を開口部15からケース13の内部に挿し込み、アンテナユニット14をケース13に組み付ける。このとき、図6に示すように、ボビン突起部25がケース13の内面13aによって上から押され、ボビン突起部25が凹部26に強く固定される。これにより、コア17がコイルユニット16(ボビン18)に強固に固定され、コア17がコイルユニット16に対して位置ずれするような状況が生じ難くなる。
【0031】
図7(a)に、コア17の位置とインダクタンスの変動率との関係を示す。なお、この場合、図7(b)に示すように、コイルギャップTが、5mm、10mm、15mm、20mmの4パターンを図示する。同図からも分かるように、コア17をボビン18に対して動かせば、インダクタンスの変動率が変わり、結果、インダクタンス(共振周波数fc)を調整できることが分かる。よって、コア17をボビン18に対してスライド移動させ、所望の共振周波数fcを送信できる位置にコア17を配置する。
【0032】
続いて、図8に、コイルギャップTと、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率との関係を示す。同図からも分かるように、コイルギャップTが大きくなれば、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率が大きくなる。よって、共振周波数fcを細かな値で切り換えたい場合は、コイルギャップTを小さめに設定し、一方で共振周波数fcを大きく切り換えたい場合は、コイルギャップTを大きめに設定する。
【0033】
また、図9(a)に、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻数比と、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率との関係を示し、図9(b)に、各巻数比のアンテナの外観を示す。同図からも分かるように、巻数比が大きくなれば、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率が大きくなる。よって、共振周波数fcを細かな値で切り換えたい場合は、巻数比を小さめに設定し、一方で共振周波数fcを大きく切り換えたい場合は、巻数比を大きめに設定する。
【0034】
以上により、本例においては、コイルユニット16に対してコア17自体を動かすことにより共振周波数fcを調整可能な第1共振周波数調整機構23を設けたので、他の別部品を使用することなく共振周波数fcを所望の値に合わせ込むことができる。よって、アンテナユニット14にこの種の共振周波数調整機構を設けたとしても、装置体格を小型に抑えつつ、部品コストも低く抑えた上で、アンテナユニット14の共振周波数fcを調整することが可能となる。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)コア17をコイルユニット16に対してコイル軸心方向に沿って動かすことにより、アンテナユニット14の共振周波数fcを調整する第1共振周波数調整機構23を設けた。よって、他の別部品を使用することなく共振周波数fcを調整することが可能となるので、アンテナユニット14にこの種の共振周波数調整機構を設けたとしても、アンテナユニット14のコイル軸心方向の装置体格を小型に抑えることができる。
【0036】
(2)第1共振周波数調整機構23はサブコア等の他の部品を不要とする構造をとるので、アンテナユニット14ひいては車外送信機9や車内送信機10の部品コストを低く抑えることができる。
【0037】
(3)第1共振周波数調整機構23は、ボビン18に設けたボビン突起部25を、コア17に設けた複数の凹部26の特定の1つに係止することにより、コア17の位置、つまり共振周波数fcを決める構造をとる。よって、コイルユニット16に対するコア17の位置を、単に突を溝に引っ掛けるという作業にて決めることが可能となるので、コア17の位置合わせがし易い利点がある。また、位置決め時には、ボビン突起部25が凹部26に引っ掛かる状態をとるので、コア17の位置ずれも生じ難くすることができる。
【0038】
(4)第1分割コイル19aと第2分割コイル19bとの間のギャップTや、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻線比(各ターン数N)を切り換えることにより、共振周波数fcを調整可能な第2共振周波数調整機構29を設けた。よって、コイルギャップTや巻線比を調整することによっても、共振周波数fcを所望の値に合わせ込むことができる。
【0039】
(5)第1共振周波数調整機構23(ボビン突起部25及び凹部26)が設定したコア17の位置を保持する位置保持機構27を設けた。よって、ボビン突起部25が位置保持機構27によって凹部26にしっかりと固定されるので、コア17の位置ずれ防止に効果が高くなる。
【0040】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ボビン突起部25を凹部26に係止した後、これらを例えば接着剤にて固定してもよい。
【0041】
・コイルギャップTやコイルターン数Nは、必要とする電界強度に応じて、適宜変更可能である。
・共振回路は、直列共振回路に限定されず、並列共振回路としてもよい。
【0042】
・アンテナ装置設置場所は、車両ボディに限定されず、他の場所に適宜変更可能である。
・アンテナ装置は、バーアンテナに限らず、他のアンテナ種類が採用可能である。
【0043】
・第1共振周波数調整機構23は、突と複数の溝からなる位置設定部24を有することに限定されない。例えば、コア17をボビン18に対して単に圧入にて取り付けるようにし、コア17の挿込量にてインダクタンス(共振周波数fc)を調整するものでもよい。
【0044】
・コイルユニット16は、ボビン18及びコイル19からなるユニット部品に限定されず、例えばコイル19のみから構成されてもよい。
・ボビン18及びコア17に位置決め用の突及び溝を設ける場合、ボビン18に複数の位置決め用の溝を設け、コア17に突を設けてもよい。
【0045】
・ボビン突起部25や凹部26の形状は、実施形態に述べたものに限定されず、適宜変更可能である。
・位置保持機構27は、ケース13の内面13aでボビン突起部25を抑える構造に限定されず、例えばケース13に新たに突を設け、この突にてボビン突起部25を押え込む構造をとってもよい。
【0046】
・コイル19を分割式とするとき、2つに分割することに限定されず、3つ以上としてもよい。
・コア17をコイルユニット16に対して動かすとき、移動開始の基準位置はどの位置でもよい。
【0047】
・突部は、ばね状のボビン突起部25に限定されず、例えば単なる山状の突でもよい。
・溝部の孔/穴の形状や深さは、適宜変更可能である。
・アンテナ装置は、車外送信機9及び車内送信機10の両方に適用されることに限らず、一方のみに適用してもよい。
【0048】
・アンテナ装置は、車両用アンテナに限定されず、他の機器や装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0049】
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記コアを前記コイルユニットに対して動かしたときの位置を保持する位置固定機構を備えた。この構成によれば、位置固定機構によってコアとコイルユニットを、位置決め状態にて保持することが可能となる。
【0050】
(ロ)請求項1〜4、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記コイルユニットは、前記コイルと、当該コイルを巻き付けるボビンとからなる。この構成によれば、ボビンにアンテナ線を巻き付けて、これをコイルユニットとして用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
9…アンテナ装置を構成する車外送信機、10…アンテナ装置を構成する車内送信機、13…ケース、13a…壁面としての内面、16…コイルユニット、17…コア、19…コイル、19a…主巻線又は補助巻線を構成する第1分割コイル、19b…主巻線又は補助巻線を構成する第2分割コイル、23…共振周波数調整機構としての第1共振周波数調整機構、25…突部としてのボビン突起部、26…溝部としての凹部、27…位置保持機構、29…第2共振周波数調整機構、fc…共振周波数、T…間隔としてのコイルギャップ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信するアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナ装置には小型化/高出力化のニーズがあり、このニーズを満たすにはQ(Quality factor)値を上げることが一般的に知られている。Q値は、Q=ωL/R(L:インダクタンス、R:抵抗)により求まり、Q値を高く設定すれば、Lが高い値をとるということになる。Lが大きければ電流が小さくても高出力が得られるため、Q値を高い値に設定することで、アンテナ装置の小型化/高出力化が満足される。
【0003】
図10に、Q値の波形特性を示す。なお、同図の縦軸は、インピーダンスであり、横軸が周波数である。同図に示されるように、Q値が低ければ、インピーダンス(共振周波数)の変動ばらつきは小さく収まるものの、Q値を高くすると、インピーダンス(共振周波数)の変動ばらつきは大きくなってしまうことが分かる。よって、アンテナ装置の小型化/高出力化を狙ってQ値を高くとると、背反として、共振周波数変動による電界強度ばらつきが大きくなる懸念がある。
【0004】
そこで、共振周波数変動を狭い範囲に抑えるために、例えば特許文献1〜3の技術が周知である。これら文献1〜3は、コアにアンテナ線を巻回した主アンテナに対して、サブコアの位置や向き等を変えることで、共振周波数を調整する技術である。特許文献1は、アンテナに対してネジコアを前後に動かす技術である。特許文献2は、アンテナに対して半月状のコアを回転させる技術である。特許文献3は、板状コアを前後に動かす技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3735104号公報
【特許文献2】特許第4186818号公報
【特許文献3】特許第4254859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1〜3は、主アンテナの他にサブコアが必要となる技術であるので、サブコア分だけ装置体格の全長が長くなったり、部品コストが高くなったりする問題があった。
【0007】
本発明の目的は、共振周波数の調整機構を設けても、装置体格を小型化することができ、部品コストも低く抑えることができるアンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記問題点を解決するために、本発明では、高透磁率のコアにアンテナ線を巻き付け、環状の当該アンテナ線が共振回路のコイルとなるアンテナ装置において、少なくとも前記コイルを備えるコイルユニットに対し、前記コア自体を動かして位置調整することにより共振周波数を調整する共振周波数調整機構を備えたことを要旨とする。
【0009】
本発明の構成によれば、コア自体をコイルユニットに対して動かして共振周波数を調整するので、共振周波数を調整するために他の部品を必要とせずに済む。よって、アンテナ装置に共振周波数の調整機能を持たせたとしても、装置体格を小型に抑えることが可能となり、部品コストも低く抑えることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記共振周波数調整機構は、前記コア及び前記コイルユニットの一方に設けられた突部と、前記した2者の他方に設けられた複数の溝部とを備え、複数の前記溝部の1つに前記突部を係止することにより、前記コアを前記コイルユニットに対して位置決めし、該位置にて共振周波数が決まることを要旨とする。この構成によれば、コイルユニットに対するコアの位置が突部と溝部との係止により決まるので、コアの位置合わせがし易くなる。また、位置決め時には、突と溝とが引っ掛かる構造をとるので、コアの位置ずれも生じ難くすることが可能となる。
【0011】
本発明では、前記コイルを主巻線と補助巻線との分割巻きとし、前記主巻線と前記補助巻線との間隔を調整することにより共振周波数を調整する第2共振周波数調整機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、主巻線と補助巻線との間隔(ギャップ)によっても共振周波数の調整が可能となるので、共振周波数を所望の値に一致させ易くなる。
【0012】
本発明では、前記コアを挿し込んだ前記コイルユニットをケースに取り付けたとき、ばね状の前記突部を前記ケースの壁面で押え付けることにより、前記突部及び前記溝部の位置状態を保持する位置保持機構を備えたことを要旨とする。この構成によれば、突部が位置保持機構によって溝部にしっかりと固定されるので、コアの位置ずれ防止に効果が高くなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、共振周波数の調整機構を設けても、装置体格を小型化することができ、部品コストも低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態のキー操作フリーシステムの構成図。
【図2】送信機の斜視図。
【図3】送信機を一側面側から見たときの分解斜視図。
【図4】送信機を他側面側から見たときの分解斜視図。
【図5】アンテナユニットの分解斜視図。
【図6】第1共振周波数調整機構の構造を示す断面図。
【図7】(a)はコア位置とインダクタンス変化率との関係を示すグラフ、(b)はコイルギャップを変えた各アンテナの模式図。
【図8】コイルギャップとインダクタンス変化率との関係を示すグラフ。
【図9】(a)はコイル巻数比とインダクタンス変化率との関係を示すグラフ、(b)はコイル巻数比を変えた各アンテナの模式図。
【図10】従来のQ値の周波数特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化したアンテナ装置の一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1からの通信をトリガとして電子キー2と無線によりID照合を行うキー操作フリーシステム3が設けられている。この場合、車両1には、電子キー2とのID照合を行うキー照合装置4と、車両ドアの施解錠動作を管理するドアロック装置5と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置6とが設けられ、これらが車内のバス7を介して接続されている。
【0016】
キー照合装置4には、キー照合装置4を統括制御する照合ECU(Electronic Control Unit)8が設けられている。照合ECU8には、電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU8には、車外にLF(Low Frequency)帯の電波を送信する車外送信機9と、車内にLF電波を送信する車内送信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両受信機11とが接続されている。なお、車外送信機9及び車内送信機10がアンテナ装置を構成する。
【0017】
車両1が駐車状態のとき、照合ECU8は、車外送信機9からリクエスト信号Srqを断続的に送信し、スマート通信(車外スマート通信)を実行する。リクエスト信号Srqの車外通信エリアに電子キー2が進入し、電子キー2がリクエスト信号Srqを受信すると、電子キー2は起動し、ID信号SidをUHF電波により送信する。ID信号Sidには、電子キー2に登録されたIDコードが含まれている。照合ECU8は、リクエスト信号Srqの送信後にID信号Sidを受信すると、ID照合としてスマート照合(車外スマート照合)を行い、この照合が成立すれば、ドアロック施解錠を許可又は実行させる。
【0018】
ユーザが車内に乗車すると、それまでの車外送信機9に代わり、今度は車内送信機10がリクエスト信号Srqの送信を開始し、スマート通信(車内スマート通信)を実行する。車内で車外と同様のスマート照合(車内スマート照合)が行われ、この照合が成立すれば、車内に設置されたプッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ12による電源遷移及びエンジン始動の操作が許可される。
【0019】
図2〜図6に、車外送信機9の構造を示す。なお、車内送信機10は車外送信機9と同様の構造をとるので、ここでは車外送信機9についてのみ説明する。車外送信機9には、車外送信機9の各種部品を収納する樹脂製のケース13が設けられている。ケース13は、長細い中空の箱状を呈するとともに、樹脂により形成されている。車外送信機9は、例えばドア等の車体ボディ(金属等の鉄板)に、ネジ等により組み付けられている。
【0020】
図3及び図4に示すように、ケース13の内部には、車外送信機9のアンテナユニット14が収納されている。ケース13において長手方向の側部(図2及び図3の紙面右側の側部)には、開口部15が形成され、この開口部15からアンテナユニット14がケース13の内部に収納される。
【0021】
図5に示すように、アンテナユニット14には、アンテナ線(電線)が複数巻回されたコイルユニット16と、高透磁率の材料(例えばフェライト)からなる棒状のコア17とが設けられている。コイルユニット16には、アンテナ線の巻回するための樹脂製のボビン18と、ボビン18に巻き付けられた環状のアンテナ線の群からなるコイル19とが設けられている。ボビン18において長手方向の側部(図5の左側の側部)には、開口部20が設けられ、この開口部20からコア17がボビン18の内部に収納される。アンテナユニット14は、コイル19をL(インダクタンス)とし、アンテナユニット14の基板(図示略)に実装されたコンデンサをC(キャパシタンス)とする直列回路からなる。また、コイル19は、アンテナユニット14をボビン18に取り付けたとき、コア17の周囲に巻き付く取り付け状態をとる。
【0022】
ボビン18の根元には、アンテナユニット14をケース13に固定する一対の係止突21,21(図3〜図5では一方のみ図示)が設けられている。よって、アンテナユニット14がケース13に取り付けられたとき、係止突21,21がケース13の係止孔22,22に係止することで、アンテナユニット14がケース13から抜け止めされる。
【0023】
図3〜図5に示すように、アンテナユニット14には、コイル19に対するコア17の位置を動かすことによってアンテナの共振周波数fcを調整する第1共振周波数調整機構23が設けられている。ところで、共振周波数fcは、直列共振回路のインダクタンスをLとし、キャパシタンスをCとすると、次式により求まることが知られている。
【0024】
【数1】
ここで、コイル19に対してコア17をコイル19の軸心方向(コイル軸心方向:図3及び図5のX軸方向)に動かすと、コイル19のインダクタンスが変化する現状がある。よって、コア17をコイル19に対して動かしてインダクタンスを調整すれば、結果として、共振周波数fcを所望の値に切り換えることが可能である。従って、本例の共振周波数調整機構23は、この原理を用いて、共振周波数fcを調整する。
【0025】
この場合、コア17は、コイルユニット16(ボビン18)に対して、コイル軸心方向に直線往復移動可能となっている。そして、コア17をボビン18に対して動かして所定位置に位置させることにより、所望の共振周波数fcに合わせ込む。
【0026】
図6に示すように、本例の第1共振周波数調整機構23には、コア17のコイル軸心方向の位置を段階的に設定する位置設定部24が設けられている。この場合、ボビン18には、コア17に係止可能なバネ状のボビン突起部25が設けられている。ボビン突起部25は、根元を支点に高さ方向(図6のZ軸方向)に動く。一方、コア17の上面において挿込方向の端部には、ボビン突起部25が係止する複数の凹部26が設けられている。これら複数の凹部26は、コア17の長手方向に沿って等間隔に配置されている。なお、ボビン突起部25が突部に相当し、凹部26が溝部に相当する。
【0027】
また、共振周波数調整機構23には、位置設定部24が決めた位置を強固に保持する位置保持機構27が設けられている。この場合、ボビン突起部25の上面には、ボビン突起部25の位置決め状態を保持するときに機能する抑え突28が部分的に突設されている。アンテナユニット14がケース13に収納された際、ボビン突起部25は抑え突28がケース13の内面(壁面)13aによって上から押されることにより、ボビン突起部25が凹部26に強く固定される。
【0028】
さらに、本例のアンテナユニット14は、コイル19を分割巻きとすることで共振周波数fcを調整する第2共振周波数調整機構29が設けられている。本例の場合、コア17の挿込方向手前側を第1分割コイル19aし、コア17の挿込方向奥側を第2分割コイル19bとする。そして、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの間の間隔(以降、コイルギャップTと記す)や、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻数(コイルターン数N)を調整することで、インダクタンス(共振周波数fc)を調整する。なお、分割コイル19a,19bが主巻線及び補助巻線を構成する。
【0029】
次に、本例のアンテナの作用を、図5〜図9を用いて説明する。
車外送信機9(車内送信機10)を組み立てるとき、図5に示すように、用意したコイルユニット16にコア17を挿し込み、ボビン突起部25を複数の凹部26のうちの所定の1つに係止する。このとき、複数の凹部26のうち、所望の共振周波数fcを出力できるコア位置となる凹部26にボビン突起部25を係止して、コア17をコイルユニット16に取り付ける。この部品組み付けによって、コイルユニット16及びコア17が1つのアンテナユニット14となり、アンテナの共振周波数fcが所望値に一致する。
【0030】
そして、このアンテナユニット14を開口部15からケース13の内部に挿し込み、アンテナユニット14をケース13に組み付ける。このとき、図6に示すように、ボビン突起部25がケース13の内面13aによって上から押され、ボビン突起部25が凹部26に強く固定される。これにより、コア17がコイルユニット16(ボビン18)に強固に固定され、コア17がコイルユニット16に対して位置ずれするような状況が生じ難くなる。
【0031】
図7(a)に、コア17の位置とインダクタンスの変動率との関係を示す。なお、この場合、図7(b)に示すように、コイルギャップTが、5mm、10mm、15mm、20mmの4パターンを図示する。同図からも分かるように、コア17をボビン18に対して動かせば、インダクタンスの変動率が変わり、結果、インダクタンス(共振周波数fc)を調整できることが分かる。よって、コア17をボビン18に対してスライド移動させ、所望の共振周波数fcを送信できる位置にコア17を配置する。
【0032】
続いて、図8に、コイルギャップTと、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率との関係を示す。同図からも分かるように、コイルギャップTが大きくなれば、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率が大きくなる。よって、共振周波数fcを細かな値で切り換えたい場合は、コイルギャップTを小さめに設定し、一方で共振周波数fcを大きく切り換えたい場合は、コイルギャップTを大きめに設定する。
【0033】
また、図9(a)に、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻数比と、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率との関係を示し、図9(b)に、各巻数比のアンテナの外観を示す。同図からも分かるように、巻数比が大きくなれば、コア移動1mm当たりのインダクタンスの変化率が大きくなる。よって、共振周波数fcを細かな値で切り換えたい場合は、巻数比を小さめに設定し、一方で共振周波数fcを大きく切り換えたい場合は、巻数比を大きめに設定する。
【0034】
以上により、本例においては、コイルユニット16に対してコア17自体を動かすことにより共振周波数fcを調整可能な第1共振周波数調整機構23を設けたので、他の別部品を使用することなく共振周波数fcを所望の値に合わせ込むことができる。よって、アンテナユニット14にこの種の共振周波数調整機構を設けたとしても、装置体格を小型に抑えつつ、部品コストも低く抑えた上で、アンテナユニット14の共振周波数fcを調整することが可能となる。
【0035】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)コア17をコイルユニット16に対してコイル軸心方向に沿って動かすことにより、アンテナユニット14の共振周波数fcを調整する第1共振周波数調整機構23を設けた。よって、他の別部品を使用することなく共振周波数fcを調整することが可能となるので、アンテナユニット14にこの種の共振周波数調整機構を設けたとしても、アンテナユニット14のコイル軸心方向の装置体格を小型に抑えることができる。
【0036】
(2)第1共振周波数調整機構23はサブコア等の他の部品を不要とする構造をとるので、アンテナユニット14ひいては車外送信機9や車内送信機10の部品コストを低く抑えることができる。
【0037】
(3)第1共振周波数調整機構23は、ボビン18に設けたボビン突起部25を、コア17に設けた複数の凹部26の特定の1つに係止することにより、コア17の位置、つまり共振周波数fcを決める構造をとる。よって、コイルユニット16に対するコア17の位置を、単に突を溝に引っ掛けるという作業にて決めることが可能となるので、コア17の位置合わせがし易い利点がある。また、位置決め時には、ボビン突起部25が凹部26に引っ掛かる状態をとるので、コア17の位置ずれも生じ難くすることができる。
【0038】
(4)第1分割コイル19aと第2分割コイル19bとの間のギャップTや、第1分割コイル19a及び第2分割コイル19bの巻線比(各ターン数N)を切り換えることにより、共振周波数fcを調整可能な第2共振周波数調整機構29を設けた。よって、コイルギャップTや巻線比を調整することによっても、共振周波数fcを所望の値に合わせ込むことができる。
【0039】
(5)第1共振周波数調整機構23(ボビン突起部25及び凹部26)が設定したコア17の位置を保持する位置保持機構27を設けた。よって、ボビン突起部25が位置保持機構27によって凹部26にしっかりと固定されるので、コア17の位置ずれ防止に効果が高くなる。
【0040】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ボビン突起部25を凹部26に係止した後、これらを例えば接着剤にて固定してもよい。
【0041】
・コイルギャップTやコイルターン数Nは、必要とする電界強度に応じて、適宜変更可能である。
・共振回路は、直列共振回路に限定されず、並列共振回路としてもよい。
【0042】
・アンテナ装置設置場所は、車両ボディに限定されず、他の場所に適宜変更可能である。
・アンテナ装置は、バーアンテナに限らず、他のアンテナ種類が採用可能である。
【0043】
・第1共振周波数調整機構23は、突と複数の溝からなる位置設定部24を有することに限定されない。例えば、コア17をボビン18に対して単に圧入にて取り付けるようにし、コア17の挿込量にてインダクタンス(共振周波数fc)を調整するものでもよい。
【0044】
・コイルユニット16は、ボビン18及びコイル19からなるユニット部品に限定されず、例えばコイル19のみから構成されてもよい。
・ボビン18及びコア17に位置決め用の突及び溝を設ける場合、ボビン18に複数の位置決め用の溝を設け、コア17に突を設けてもよい。
【0045】
・ボビン突起部25や凹部26の形状は、実施形態に述べたものに限定されず、適宜変更可能である。
・位置保持機構27は、ケース13の内面13aでボビン突起部25を抑える構造に限定されず、例えばケース13に新たに突を設け、この突にてボビン突起部25を押え込む構造をとってもよい。
【0046】
・コイル19を分割式とするとき、2つに分割することに限定されず、3つ以上としてもよい。
・コア17をコイルユニット16に対して動かすとき、移動開始の基準位置はどの位置でもよい。
【0047】
・突部は、ばね状のボビン突起部25に限定されず、例えば単なる山状の突でもよい。
・溝部の孔/穴の形状や深さは、適宜変更可能である。
・アンテナ装置は、車外送信機9及び車内送信機10の両方に適用されることに限らず、一方のみに適用してもよい。
【0048】
・アンテナ装置は、車両用アンテナに限定されず、他の機器や装置に適用してもよい。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
【0049】
(イ)請求項1〜4のいずれかにおいて、前記コアを前記コイルユニットに対して動かしたときの位置を保持する位置固定機構を備えた。この構成によれば、位置固定機構によってコアとコイルユニットを、位置決め状態にて保持することが可能となる。
【0050】
(ロ)請求項1〜4、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記コイルユニットは、前記コイルと、当該コイルを巻き付けるボビンとからなる。この構成によれば、ボビンにアンテナ線を巻き付けて、これをコイルユニットとして用いることが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
9…アンテナ装置を構成する車外送信機、10…アンテナ装置を構成する車内送信機、13…ケース、13a…壁面としての内面、16…コイルユニット、17…コア、19…コイル、19a…主巻線又は補助巻線を構成する第1分割コイル、19b…主巻線又は補助巻線を構成する第2分割コイル、23…共振周波数調整機構としての第1共振周波数調整機構、25…突部としてのボビン突起部、26…溝部としての凹部、27…位置保持機構、29…第2共振周波数調整機構、fc…共振周波数、T…間隔としてのコイルギャップ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高透磁率のコアにアンテナ線を巻き付け、環状の当該アンテナ線が共振回路のコイルとなるアンテナ装置において、
少なくとも前記コイルを備えるコイルユニットに対し、前記コア自体を動かして位置調整することにより共振周波数を調整する共振周波数調整機構を備えた
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記共振周波数調整機構は、前記コア及び前記コイルユニットの一方に設けられた突部と、前記した2者の他方に設けられた複数の溝部とを備え、複数の前記溝部の1つに前記突部を係止することにより、前記コアを前記コイルユニットに対して位置決めし、該位置にて共振周波数が決まる
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コイルを主巻線と補助巻線との分割巻きとし、前記主巻線と前記補助巻線との間隔を調整することにより共振周波数を調整する第2共振周波数調整機構を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コアを挿し込んだ前記コイルユニットをケースに取り付けたとき、ばね状の前記突部を前記ケースの壁面で押え付けることにより、前記突部及び前記溝部の位置状態を保持する位置保持機構を備えた
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
【請求項1】
高透磁率のコアにアンテナ線を巻き付け、環状の当該アンテナ線が共振回路のコイルとなるアンテナ装置において、
少なくとも前記コイルを備えるコイルユニットに対し、前記コア自体を動かして位置調整することにより共振周波数を調整する共振周波数調整機構を備えた
ことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記共振周波数調整機構は、前記コア及び前記コイルユニットの一方に設けられた突部と、前記した2者の他方に設けられた複数の溝部とを備え、複数の前記溝部の1つに前記突部を係止することにより、前記コアを前記コイルユニットに対して位置決めし、該位置にて共振周波数が決まる
ことを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記コイルを主巻線と補助巻線との分割巻きとし、前記主巻線と前記補助巻線との間隔を調整することにより共振周波数を調整する第2共振周波数調整機構を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記コアを挿し込んだ前記コイルユニットをケースに取り付けたとき、ばね状の前記突部を前記ケースの壁面で押え付けることにより、前記突部及び前記溝部の位置状態を保持する位置保持機構を備えた
ことを特徴とする請求項2又は3に記載のアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−239020(P2012−239020A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106441(P2011−106441)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]