アンテナ装置
【課題】取付支柱の中段にスーパーターンスタイルアンテナを設置する場合に、水平面内の全方向に対してレベル偏差を小さく抑えることができるアンテナ装置を提供する。
【解決手段】スーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a〜32dを取付支柱31の円周上に90°開角で取付け、取付支柱31と各バットウィング32a〜32dとの間に給電管34a〜34dを設ける。上記バットウィング32a〜32dの素子寸法を最適化し、上部ウィング52aにおける中央放射素子53aの長さh1を約0.076λ、上部放射素子53dの長さh4を従来仕様より短い約0.178λに設定し、それに合わせて中間放射素子53b、53cの長さh2、h3を短く設定する。下部ウィング52bの各部の寸法は、上部ウィング52aと同じ値に設定する。また、バットウィング32a〜32dの内側導体51と取付支柱31との間隔W0を約0.05λに設定する。
【解決手段】スーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a〜32dを取付支柱31の円周上に90°開角で取付け、取付支柱31と各バットウィング32a〜32dとの間に給電管34a〜34dを設ける。上記バットウィング32a〜32dの素子寸法を最適化し、上部ウィング52aにおける中央放射素子53aの長さh1を約0.076λ、上部放射素子53dの長さh4を従来仕様より短い約0.178λに設定し、それに合わせて中間放射素子53b、53cの長さh2、h3を短く設定する。下部ウィング52bの各部の寸法は、上部ウィング52aと同じ値に設定する。また、バットウィング32a〜32dの内側導体51と取付支柱31との間隔W0を約0.05λに設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーターンスタイルアンテナを使用し、水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差が小さくなるように構成したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、VHF帯の送信用アンテナとしてスーパーターンスタイルアンテナが一般に用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。
上記スーパーターンスタイルアンテナを取付ける取付支柱は、充分な強度を保つために上部の直径は小さく、下方に行くに従って直径が大きくなるように設定されている。スーパーターンスタイルアンテナを取付支柱の上部に取付けて使用する場合、取付支柱の直径は例えば165mm程度と小さく、アンテナ素子間隔を狭くできるので、水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差を小さくすることができる。
【0003】
しかし、アンテナを設置する際、設置場所や設置費用等の関係から新しい取付支柱を設置することができず、既設の取付支柱を利用する場合がある。このように既設の取付支柱を利用する場合、取付支柱の上部には例えば地上デジタル放送用アンテナ等が既に取付けられているので、既設アンテナの下方部位すなわち取付支柱の中段にスーパーターンスタイルアンテナを取付けることになる。このためアンテナ取付部における取付支柱の直径は、最大で318.5mm程度と太くなり、アンテナ素子間隔が広くなって水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差が大きくなってしまう。
【0004】
上記従来のスーパーターンスタイルアンテナは、図11及び図12に示すように構成されている。
図11はVHF帯例えば200MHz帯で使用される従来のスーパーターンスタイルアンテナ(1段)を取付支柱に取付けた状態を示す上面図、図12は同スーパーターンスタイルアンテナのバットウィングの詳細な構成を示す側面図である。
【0005】
図11に示すようにスーパーターンスタイルアンテナ10は、直径Dを有する円筒状の取付支柱11の円周上に4基(2対)のバットウィング12a〜12dが90°開角の等間隔で取付けられる。上記4基のバットウィング12a〜12dは、時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電される。従って、対向配置されて対をなすバットウィング12a、12c間、及びバットウィング12b、12d間は、それぞれ180°の位相差で給電される。上記スーパーターンスタイルアンテナ10の給電インピーダンスは、一般に72Ωに設定されている。
【0006】
上記バットウィング12a〜12dは、図12に示すように構成される。図12はバットウィング12aの構成を示したものであるが、他のバットウィング12b〜12dも同様の構成となっている。
バットウィング12aは、所定長さの角柱状の内側導体21に対し、略Mの字形状のウィング素子22がMの字を横にした状態で上下両端が取付けられ、上部ウィング22aと下部ウィング22bを構成している。そして、ウィング素子22の中央位置と内側導体21との間に中央放射素子23aが設けられる。また、上部ウィング22aの最上部において水平方向に位置する素子部分は、上部放射素子23dとして作用する。更に上部ウィング22aには、中央放射素子23aと平行し、且つウィング素子22と内側導体21との間を接続する2つの中間放射素子23b、23cが所定の間隔で設けられる。
【0007】
また、下部ウィング22bにおいても、上部ウィング22aと同様に構成される。すなわち、下部ウィング22bの最下部において水平方向に位置する素子部分は、下部放射素子23d’として作用する。そして、下部ウィング22bには、中央放射素子23aと平行し、且つウィング素子22と内側導体21との間を接続する2つの中間放射素子23b’、23c’が所定の間隔で設けられる。上記上部ウィング22aと下部ウィング22bとは、各部の寸法が同じ値に設定される。
【0008】
そして、上記のように構成されたバットウィング12aは、内側導体21の上下両端部が取付金具(図示せず)により取付支柱11に所定の間隔W0で取付けられる。また、内側導体21と取付支柱11との間に給電用同軸ケーブル13が設けられる。上記給電用同軸ケーブル13は、上端部近傍において上下両端が取付金具15a、15bにより内側導体21に取付けられる。このとき給電用同軸ケーブル13の外部導体が取付金具15a、15bを介して内側導体21に電気的に接続される。また、給電用同軸ケーブル13は、中心導体13aがジャンパー(図示せず)により取付支柱11に電気的に接続される。
【0009】
上記バットウィング12aの各部の寸法、すなわち、放射素子23a〜23dの長さh1、h2、h3、h4、放射素子23a〜23dの各間隔d1、d2、d3、ウィング素子22の全高H0、内側導体21と取付支柱11との間隔W0は、次のように設定される。
【0010】
中央放射素子23aの長さh1:約0.076λ
中間放射素子23bの長さh2:約0.128λ
中間放射素子23cの長さh3:約0.182λ
上部放射素子23dの長さh4:約0.238λ
放射素子23a、23bの間隔d1:約0.106λ
放射素子23b、23cの間隔d2:約0.110λ
放射素子23c、23dの間隔d3:約0.112λ
ウィング素子22の全高H0:約0.657λ
内側導体21と取付支柱11との間隔W0:約0.1λ
なお、上記λは使用周波数帯の中心周波数における波長を示している。
【0011】
図13は、上記のように構成された従来のスーパーターンスタイルアンテナ10を直径Dが318.5mmの取付支柱11に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示したもので、この場合の水平面内のレベル偏差は約5dBとなっている。
上記従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、バットウィング寸法の最適化が充分でなく、取付支柱11の径が細い場合には、対向するバットウィングの間隔が狭くなって水平面内のレベル偏差を小さく抑えることが可能であるが、取付支柱11の径が太くなると、対向するバットウィングの間隔が広くなって水平面内のレベル偏差が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−151946号公報
【特許文献2】実開昭48−86738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、バットウィング寸法の最適化が充分でなく、このため取付支柱11の径が細い場合には、対向するバットウィングの間隔が狭くなって水平面内のレベル偏差を小さく抑えることが可能であるが、取付支柱11の径が太くなると、対向するバットウィングの間隔が広くなって水平面内のレベル偏差が大きくなってしまうという問題がある。
【0014】
また、上記従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、72Ω系のインピーダンスで整合されており、72Ω系の分岐ケーブルを使用する必要があった。72Ω系の分岐ケーブルは、50Ωの一般的な分岐ケーブルに比較して高価であり、また、購入時には絶縁体ヘッド容量を指定する必要があり、購入から数十年経過してしまってから部品保守のため、新品に交換しようとしても、設置当時の資料を紛失してしまい、絶縁体ヘッド容量を確認できない場合も多々あった。
【0015】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、取付支柱の中段等、径の太い位置にアンテナを設置する場合においても、アンテナ素子寸法の最適化により、水平面内の全方向に対して水平面指向性のレベル偏差を小さく抑えることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明に係るアンテナ装置は、取付支柱の円周上に4基のバットウィングが略90°開角で取付けられるVHF帯用のスーパーターンスタイルアンテナにおいて、
前記4基のバットウィングと前記取付支柱との間に設けられて給電インピーダンスが72Ωの前記各バットウィングに給電する第1ないし第4の給電管を備え、前記4基の各バットウィングは、前記取付支柱に沿って所定の間隔で略垂直に配置される内側導体と、前記内側導体に装着されるウィング素子と、前記内側導体と前記ウィング素子の中央位置との間に略水平に設けられる中央放射素子と、前記ウィング素子の上部位置に略水平に設けられる上部放射素子と、前記ウィング素子の下部位置に略水平に設けられる下部放射素子と、前記上部放射素子と前記下部放射素子との間に所定の間隔で平行に設けられる複数の中間放射素子とを具備し、
前記中央放射素子の長さを約0.076波長、
前記上部放射素子及び前記下部放射素子の長さ約0.178波長、
前記ウィング素子の全長を約0.657波長、
前記取付支柱と前記内側導体との間隔を約0.05波長、
に設定したことを特徴とする。
【0017】
第2の発明は、前記第1の発明に係るアンテナ装置において、前記取付支柱の円周上で、前記バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を90°開角で、且つ前記4基の各バットウィングとの開角が略45°となるように放射状に配置し、
前記パターン調整素子は、
前記バットウィングの中心との間隔を約0.36波長、
前記取付支柱の中心と素子先端との長さを約0.434波長、
に設定して水平面内の全方向に対するレベル偏差が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取付支柱の中段等、径の太い位置にアンテナを設置する場合においても、アンテナ素子寸法の最適化により、水平面内の全方向に対して水平面指向性のレベル偏差を小さく抑えることができる。
また、取付支柱の円周上で、バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を放射状に配置することにより、水平面指向性のレベル偏差を更に小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す側面図である。
【図2】同実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの上面図である。
【図3】同実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの給電系統の構成例を示すブロック図である。
【図4】同実施例1におけるバットウィングの詳細な構成を示し、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図5】同記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す側面図である。
【図7】同実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナにおける各素子の概略的な配置構成を示す上面図である。
【図8】同実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係るスーパーターンスタイルアンテナの給電系統の構成例を示すブロック図である。
【図10】同実施例3に係るスーパーターンスタイルアンテナのVSWR特性を示す図である。
【図11】従来のスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す上面図である。
【図12】従来のスーパーターンスタイルアンテナのバットウィングの詳細な構成を示す側面図である。
【図13】従来のスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1に係るアンテナ装置、すなわち取付支柱の中段に1段のスーパーターンスタイルアンテナ30を設置した場合の側面図、図2は同スーパーターンスタイルアンテナ30の上面図である。
図1において、31は鉄柱等の取付支柱で、充分な強度を保つために直径Dが上部では細く、下方に行くに従って順次太くなるように設定されている。この取付支柱31には、中段位置にVHF帯例えば200MHz帯の電波を送信するスーパーターンスタイルアンテナ30が装着される。スーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a(N面:北面)、32b(E面:東面)、32c(S面:南面)、32d(W面:西面)で構成され、図2に示すように取付支柱31の円周上に上部取付金具33a及び下部取付金具33bにより90°開角の等間隔で垂直にかつ同一の高さで取付けられる。上記バットウィング32a〜32dの詳細については後述する。
【0022】
また、取付支柱31と各バットウィング32a〜32dとの間に給電管34a〜34dが設けられる。各給電管34a〜34dは、下端部に給電用コネクタ37a〜37dを備え、図3に示すように送信機41からの送信信号を4基のバットウィング32a〜32dに対し時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電する。従って、対向配置されて対をなすバットウィング32a、32c間、及びバットウィング32b、32d間は、それぞれ180°の位相差で給電される。
【0023】
図3は上記スーパーターンスタイルアンテナ30の各バットウィングへの給電系統例を示すブロック図である。送信機41から出力される送信信号は、給電線42、4分配器43、分岐ケーブル44a〜44dを介して給電管34a〜34dへ送られ、この給電管34a〜34dにより各バットウィング32a〜32dに給電される。上記バットウィング32a〜32dの給電インピーダンスは、72Ωとなっている。
【0024】
上記分岐ケーブル44a〜44dは、例えばN面バットウィング32aに給電する分岐ケーブル44aを基準(0°給電)とし、E面バットウィング32bへの分岐ケーブル44bを1/4・λ長く(−90°給電)、S面バットウィング32cへの分岐ケーブル44cを2/4・λ長く(−180°給電)、W面バットウィング32dへの分岐ケーブル44dを3/4・λ長く(−270°給電)設定し、バットウィング32a〜32dに対して時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電する。上記λは使用周波数帯の中心周波数における波長を示している。
【0025】
次にバットウィング32a〜32dの詳細について説明する。
バットウィング32a〜32dは、同様の構成であるので、以下、N面のバットウィング32aについて図4を参照して説明する。図4はバットウィング32aの詳細な構成を示し、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【0026】
バットウィング32aは、取付支柱11と平行して略垂直に設けられる所定長さの略角棒状の内側導体51を備え、この内側導体51に対し、略Mの字状に形成されたウィング素子52がMの字を横にした状態で上下両端において取付けられる。上記ウィング素子52は、上部ウィング52aと下部ウィング52bとが上下対称(線対称)に構成され、両ウィング間の中央位置と内側導体51との間に中央放射素子53aが設けられる。また、上部ウィング52aの最上部において水平方向に位置する素子部分は、上部放射素子53dとして作用する。更に上部ウィング52aには、中央放射素子53aと平行し、且つウィング素子52と内側導体51との間を接続する2つの中間放射素子53b、53cが所定の間隔で設けられる。
【0027】
また、下部ウィング52bにおいても、上部ウィング52aと同様に構成される。すなわち、下部ウィング52bの最下部において水平方向に位置する素子部分は、下部放射素子53d’として作用する。なお、中央放射素子53aは、上部ウィング52aと下部ウィング52bに共通の放射として設けられる。そして、下部ウィング52bには、中央放射素子53aと平行し、且つウィング素子52と内側導体51との間を接続する2つの中間放射素子53b’、53c’が所定の間隔で設けられる。上記上部ウィング52aと下部ウィング52bとは、各部の寸法が同じ値に設定される。
【0028】
そして、上記のように構成されたバットウィング32aは、内側導体51の上下両端部が取付金具(図示せず)により取付支柱31に所定の間隔W0で取付けられる。また、内側導体51と取付支柱31との間に給電管34aが設けられる。この給電管34aの下端部には、給電用コネクタ37aが取付けられている。上記給電管34aは、外導体35の上下両端が取付金具38a、38bにより内側導体51に取付けられ、外導体35と内側導体51との間が電気的に接続される。また、給電管34aの中心導体36は、ジャンパー39及び取付金具40(図1参照)を介して取付支柱31に取付けられる。
【0029】
上記バットウィング32aの各部の寸法、すなわち、放射素子53a〜53dの長さh1、h2、h3、h4、放射素子53a〜53dの各間隔d1、d2、d3、ウィング素子52の全高H0、内側導体51と取付支柱31との間隔W0は、次のように設定される。なお、各放射素子の直径は、例えば約16mmのものが使用される。
【0030】
中央放射素子53aの長さh1:約0.076λ
中間放射素子53bの長さh2:約0.109λ
中間放射素子53cの長さh3:約0.143λ
上部放射素子53dの長さh4:約0.178λ
放射素子53a、53bの間隔d1:約0.106λ
放射素子53b、53cの間隔d2:約0.110λ
放射素子53c、53dの間隔d3:約0.112λ
ウィング素子52の全高H0:約0.657λ
内側導体51と取付支柱31との間隔W0:約0.05λ
上記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a〜32dの素子寸法を最適化したもので、中央放射素子53aの長さh1は約0.076λで従来と同じ長さとなっているが、上部放射素子53d及び下部放射素子53d’の長さh4を約0.178λとして従来の長さ約0.238λより短く設定すると共に、それに合わせて中間放射素子53b、53cの長さh2、h3を短く設定している。放射素子53a〜53d、53a、53b’〜53d’の各間隔d1〜d3及びウィング素子52の全高H0は従来と同じである。そして、バットウィング32aの内側導体51と取付支柱31との間隔W0を約0.05λとし、従来の約1/2の値に設定している。
【0031】
図5は、上記実施例1に示したようにバットウィング寸法を最適化したスーパーターンスタイルアンテナ30を直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示している。この実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30では、図5から明らかなように水平面内のレベル偏差を約3.5dBに抑えることが可能である。
【0032】
上記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30によれば、取付支柱31の径が太くなっても水平面内の全方向に対してレベル偏差を小さくすることが可能となり、例えば直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合には水平面内のレベル偏差を約3.5dBに抑えることができる。
【実施例2】
【0033】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ装置について説明する。
図6は本発明の実施例2に係るアンテナ装置の側面図、図7は同アンテナ装置における素子の概略的な配置構成を示す上面図である。この実施例2に係るアンテナ装置は、図6及び図7に示すように、実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30の上下に2段の例えば棒状の導電性部材からなる無給電のパターン調整素子61a〜61dを90°開角で、且つ4基の各バットウィング32a〜32dとの開角が45°となるように取付金具62a、62bにより取付け、水平面内のレベル偏差が更に小さくなるように改善したものである。
【0034】
上記パターン調整素子61a〜61dは、例えば直径が約10〜20mmの棒状の導電性部材を用いて構成したもので、バットウィング32a〜32dの中心との間隔H1が約0.360λ±0.078λに設定される。上記パターン調整素子61a〜61dとしては、例えば直径が約10〜20mmの棒状の導電性部材が使用されるが、指向性とは無関係である。また、パターン調整素子61a〜61dは、取付支柱31の中心と素子先端との長さL1が約0.434λに設定される。
【0035】
そして、上記4基のバットウィング32a〜32dには、実施例1の図3に示したように送信機41から出力される送信信号が給電線42、4分配器43、ウィング給電用分岐ケーブル44a〜44d、給電管34a〜34dを介して時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電される。
【0036】
上記のようにスーパーターンスタイルアンテナ30の上下に2段のパターン調整素子61a〜61dを90°開角で、且つ各バットウィング32a〜32dとの開角が45°となるように配置することにより、水平面内のレベル偏差を実施例1の場合より更に小さくすることができる。
【0037】
図8は、上下に2段のパターン調整素子61a〜61dを備えたスーパーターンスタイルアンテナ30を直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示したもので、水平面内のレベル偏差は約2.5dBに抑えられている。
【0038】
上記実施例2に係るアンテナ装置によれば、取付支柱31の径が太くなっても水平面内の全方向に対してレベル偏差を小さくすることが可能となり、スーパーターンスタイルアンテナ30を例えば直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合においても水平面内のレベル偏差を約2.5dB以内に抑えることができる。
【実施例3】
【0039】
次に本発明の実施例3に係るアンテナ装置について説明する。
この実施例3は、実施例1に示したアンテナ装置、すなわちバットウィング寸法を最適化したスーパーターンスタイルアンテナ30において、給電インピーダンスが72Ωのバットウィング32a〜32dを給電管34a〜34dにより50Ωのインピーダンスで整合させ、実施例1の図3に示した4分配器43及び分岐ケーブル44a〜44dを50Ω系の標準的なものを使用できるようにしたものである。
【0040】
図9は、上記スーパーターンスタイルアンテナ30の各バットウィング32a〜32dへの給電系統例を示すブロック図である。給電管34a〜34dは、同様の構成であるので、図9では給電管34aの給電系統について示している。
給電管34aは、50Ωのインピーダンスを72Ωに変換するインピーダンス変換機能を備えている。このインピーダンス変換機能は、入力側に設けられるインピーダンス50Ωの中心導体361と、出力側すなわちバットウィング接続側に設けられて50Ωと72Ωのインピーダンスを整合する中心導体362が直列に接続されており、この中心導体362の直径及び長さにより50Ωと72Ωのインピーダンスを整合する。
【0041】
また、4分配器43としては50Ω系の標準的な分配器を使用し、この4分配器43と給電管34a〜34dとの間は50Ωの標準的な分岐ケーブル44a〜44dにより接続する。上記4分配器43は、入力インピーダンスが50/4Ω、各分配端子のインピーダンスが50Ωに設定されている。
【0042】
そして、送信機41と4分配器43との間を接続する給電線42は、4分配器43側にインピーダンス変換部42Aを備えている。インピーダンス変換部42Aは、2段編成でのインピーダンス変換を行う場合、インピーダンス
【数1】
の長さaが約λ/4の同軸ケーブル421と、インピーダンス
【数2】
の長さbが約λ/4の同軸ケーブル422が直列に接続されてなり、同軸ケーブル421、422の太さと長さa、bによって50Ωと50/4Ωのインピーダンスを整合する。
【0043】
図10は、上記実施例3に示したアンテナ装置のVSWR特性であり、横軸に周波数をとり、縦軸にVSWRをとって示した。図10において、マーカーm1は「中心周波数f0−7.0%」、マーカ−m2は「中心周波数f0−3.5%」、マーカ−m3は「中心周波数f0」、マーカ−m4は「中心周波数f0+3.5%」、マーカーm5は「中心周波数f0+7.0%」の周波数を示している。具体的な周波数としては、例えばマーカーm1が200MHz、マーカ−m2が207.5MHz、マーカ−m3が214MHz、マーカ−m4が222MHz、マーカ−m5が230MHzであり、207.5MHz(m2)〜222MHz(m4)の範囲が使用周波数帯となっている。この使用周波数帯におけるVSWRは、1.06以下であり、良好な値が得られている。
【0044】
上記実施例3に示したように各バットウィング32a〜32dの給電管34a〜34dに分岐ケーブル44a〜44dのインピーダンス50Ωとバットウィング32a〜32dのインピーダンス72Ωを整合するインピーダンス変換機能を設けることにより、インピーダンスが50Ω系の安価で標準的な4分配器43及び分岐ケーブル44a〜44dを使用することが可能となる。
【0045】
また、4分配器43により4分配した信号を分岐ケーブル44a〜44d及び給電管34a〜34dを介してバットウィング32a〜32dに給電することにより、分岐ケーブル44a〜44dに絶縁体ヘッド容量を設ける必要はなく、一般的な同軸ケーブルを使用することが可能となり、部品の保守管理が容易となる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0047】
30…スーパーターンスタイルアンテナ、31…取付支柱、32a〜32d…バットウィング、33a…上部取付金具、33b…下部取付金具、34a〜34d…給電管、35…外導体、36、361、362…中心導体、37a〜37d…給電用コネクタ、38a、38b…取付金具、39a…ジャンパー、40…取付金具、41…送信機、42…給電線、42A…インピーダンス変換部、421、422…同軸ケーブル、43…4分配器、44a〜44d…ウィング給電用分岐ケーブル、51…内側導体、52…ウィング素子、52a…上部ウィング、52b…下部ウィング、53a…中央放射素子、53d…上部放射素子、53b、53c…中間放射素子、53b’、53c’…中間放射素子、53d’…下部放射素子、61a〜61d…パターン調整素子、62a、62b…取付金具。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーターンスタイルアンテナを使用し、水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差が小さくなるように構成したアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、VHF帯の送信用アンテナとしてスーパーターンスタイルアンテナが一般に用いられている(例えば、特許文献1、2参照。)。
上記スーパーターンスタイルアンテナを取付ける取付支柱は、充分な強度を保つために上部の直径は小さく、下方に行くに従って直径が大きくなるように設定されている。スーパーターンスタイルアンテナを取付支柱の上部に取付けて使用する場合、取付支柱の直径は例えば165mm程度と小さく、アンテナ素子間隔を狭くできるので、水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差を小さくすることができる。
【0003】
しかし、アンテナを設置する際、設置場所や設置費用等の関係から新しい取付支柱を設置することができず、既設の取付支柱を利用する場合がある。このように既設の取付支柱を利用する場合、取付支柱の上部には例えば地上デジタル放送用アンテナ等が既に取付けられているので、既設アンテナの下方部位すなわち取付支柱の中段にスーパーターンスタイルアンテナを取付けることになる。このためアンテナ取付部における取付支柱の直径は、最大で318.5mm程度と太くなり、アンテナ素子間隔が広くなって水平面内の全方向に対する水平面指向性のレベル偏差が大きくなってしまう。
【0004】
上記従来のスーパーターンスタイルアンテナは、図11及び図12に示すように構成されている。
図11はVHF帯例えば200MHz帯で使用される従来のスーパーターンスタイルアンテナ(1段)を取付支柱に取付けた状態を示す上面図、図12は同スーパーターンスタイルアンテナのバットウィングの詳細な構成を示す側面図である。
【0005】
図11に示すようにスーパーターンスタイルアンテナ10は、直径Dを有する円筒状の取付支柱11の円周上に4基(2対)のバットウィング12a〜12dが90°開角の等間隔で取付けられる。上記4基のバットウィング12a〜12dは、時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電される。従って、対向配置されて対をなすバットウィング12a、12c間、及びバットウィング12b、12d間は、それぞれ180°の位相差で給電される。上記スーパーターンスタイルアンテナ10の給電インピーダンスは、一般に72Ωに設定されている。
【0006】
上記バットウィング12a〜12dは、図12に示すように構成される。図12はバットウィング12aの構成を示したものであるが、他のバットウィング12b〜12dも同様の構成となっている。
バットウィング12aは、所定長さの角柱状の内側導体21に対し、略Mの字形状のウィング素子22がMの字を横にした状態で上下両端が取付けられ、上部ウィング22aと下部ウィング22bを構成している。そして、ウィング素子22の中央位置と内側導体21との間に中央放射素子23aが設けられる。また、上部ウィング22aの最上部において水平方向に位置する素子部分は、上部放射素子23dとして作用する。更に上部ウィング22aには、中央放射素子23aと平行し、且つウィング素子22と内側導体21との間を接続する2つの中間放射素子23b、23cが所定の間隔で設けられる。
【0007】
また、下部ウィング22bにおいても、上部ウィング22aと同様に構成される。すなわち、下部ウィング22bの最下部において水平方向に位置する素子部分は、下部放射素子23d’として作用する。そして、下部ウィング22bには、中央放射素子23aと平行し、且つウィング素子22と内側導体21との間を接続する2つの中間放射素子23b’、23c’が所定の間隔で設けられる。上記上部ウィング22aと下部ウィング22bとは、各部の寸法が同じ値に設定される。
【0008】
そして、上記のように構成されたバットウィング12aは、内側導体21の上下両端部が取付金具(図示せず)により取付支柱11に所定の間隔W0で取付けられる。また、内側導体21と取付支柱11との間に給電用同軸ケーブル13が設けられる。上記給電用同軸ケーブル13は、上端部近傍において上下両端が取付金具15a、15bにより内側導体21に取付けられる。このとき給電用同軸ケーブル13の外部導体が取付金具15a、15bを介して内側導体21に電気的に接続される。また、給電用同軸ケーブル13は、中心導体13aがジャンパー(図示せず)により取付支柱11に電気的に接続される。
【0009】
上記バットウィング12aの各部の寸法、すなわち、放射素子23a〜23dの長さh1、h2、h3、h4、放射素子23a〜23dの各間隔d1、d2、d3、ウィング素子22の全高H0、内側導体21と取付支柱11との間隔W0は、次のように設定される。
【0010】
中央放射素子23aの長さh1:約0.076λ
中間放射素子23bの長さh2:約0.128λ
中間放射素子23cの長さh3:約0.182λ
上部放射素子23dの長さh4:約0.238λ
放射素子23a、23bの間隔d1:約0.106λ
放射素子23b、23cの間隔d2:約0.110λ
放射素子23c、23dの間隔d3:約0.112λ
ウィング素子22の全高H0:約0.657λ
内側導体21と取付支柱11との間隔W0:約0.1λ
なお、上記λは使用周波数帯の中心周波数における波長を示している。
【0011】
図13は、上記のように構成された従来のスーパーターンスタイルアンテナ10を直径Dが318.5mmの取付支柱11に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示したもので、この場合の水平面内のレベル偏差は約5dBとなっている。
上記従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、バットウィング寸法の最適化が充分でなく、取付支柱11の径が細い場合には、対向するバットウィングの間隔が狭くなって水平面内のレベル偏差を小さく抑えることが可能であるが、取付支柱11の径が太くなると、対向するバットウィングの間隔が広くなって水平面内のレベル偏差が大きくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2002−151946号公報
【特許文献2】実開昭48−86738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、バットウィング寸法の最適化が充分でなく、このため取付支柱11の径が細い場合には、対向するバットウィングの間隔が狭くなって水平面内のレベル偏差を小さく抑えることが可能であるが、取付支柱11の径が太くなると、対向するバットウィングの間隔が広くなって水平面内のレベル偏差が大きくなってしまうという問題がある。
【0014】
また、上記従来のスーパーターンスタイルアンテナ10は、72Ω系のインピーダンスで整合されており、72Ω系の分岐ケーブルを使用する必要があった。72Ω系の分岐ケーブルは、50Ωの一般的な分岐ケーブルに比較して高価であり、また、購入時には絶縁体ヘッド容量を指定する必要があり、購入から数十年経過してしまってから部品保守のため、新品に交換しようとしても、設置当時の資料を紛失してしまい、絶縁体ヘッド容量を確認できない場合も多々あった。
【0015】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、取付支柱の中段等、径の太い位置にアンテナを設置する場合においても、アンテナ素子寸法の最適化により、水平面内の全方向に対して水平面指向性のレベル偏差を小さく抑えることができるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
第1の発明に係るアンテナ装置は、取付支柱の円周上に4基のバットウィングが略90°開角で取付けられるVHF帯用のスーパーターンスタイルアンテナにおいて、
前記4基のバットウィングと前記取付支柱との間に設けられて給電インピーダンスが72Ωの前記各バットウィングに給電する第1ないし第4の給電管を備え、前記4基の各バットウィングは、前記取付支柱に沿って所定の間隔で略垂直に配置される内側導体と、前記内側導体に装着されるウィング素子と、前記内側導体と前記ウィング素子の中央位置との間に略水平に設けられる中央放射素子と、前記ウィング素子の上部位置に略水平に設けられる上部放射素子と、前記ウィング素子の下部位置に略水平に設けられる下部放射素子と、前記上部放射素子と前記下部放射素子との間に所定の間隔で平行に設けられる複数の中間放射素子とを具備し、
前記中央放射素子の長さを約0.076波長、
前記上部放射素子及び前記下部放射素子の長さ約0.178波長、
前記ウィング素子の全長を約0.657波長、
前記取付支柱と前記内側導体との間隔を約0.05波長、
に設定したことを特徴とする。
【0017】
第2の発明は、前記第1の発明に係るアンテナ装置において、前記取付支柱の円周上で、前記バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を90°開角で、且つ前記4基の各バットウィングとの開角が略45°となるように放射状に配置し、
前記パターン調整素子は、
前記バットウィングの中心との間隔を約0.36波長、
前記取付支柱の中心と素子先端との長さを約0.434波長、
に設定して水平面内の全方向に対するレベル偏差が小さくなるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、取付支柱の中段等、径の太い位置にアンテナを設置する場合においても、アンテナ素子寸法の最適化により、水平面内の全方向に対して水平面指向性のレベル偏差を小さく抑えることができる。
また、取付支柱の円周上で、バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を放射状に配置することにより、水平面指向性のレベル偏差を更に小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す側面図である。
【図2】同実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの上面図である。
【図3】同実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナの給電系統の構成例を示すブロック図である。
【図4】同実施例1におけるバットウィングの詳細な構成を示し、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【図5】同記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【図6】本発明の実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す側面図である。
【図7】同実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナにおける各素子の概略的な配置構成を示す上面図である。
【図8】同実施例2に係るスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施例3に係るスーパーターンスタイルアンテナの給電系統の構成例を示すブロック図である。
【図10】同実施例3に係るスーパーターンスタイルアンテナのVSWR特性を示す図である。
【図11】従来のスーパーターンスタイルアンテナの構成を示す上面図である。
【図12】従来のスーパーターンスタイルアンテナのバットウィングの詳細な構成を示す側面図である。
【図13】従来のスーパーターンスタイルアンテナを径の太い取付支柱に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1に係るアンテナ装置、すなわち取付支柱の中段に1段のスーパーターンスタイルアンテナ30を設置した場合の側面図、図2は同スーパーターンスタイルアンテナ30の上面図である。
図1において、31は鉄柱等の取付支柱で、充分な強度を保つために直径Dが上部では細く、下方に行くに従って順次太くなるように設定されている。この取付支柱31には、中段位置にVHF帯例えば200MHz帯の電波を送信するスーパーターンスタイルアンテナ30が装着される。スーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a(N面:北面)、32b(E面:東面)、32c(S面:南面)、32d(W面:西面)で構成され、図2に示すように取付支柱31の円周上に上部取付金具33a及び下部取付金具33bにより90°開角の等間隔で垂直にかつ同一の高さで取付けられる。上記バットウィング32a〜32dの詳細については後述する。
【0022】
また、取付支柱31と各バットウィング32a〜32dとの間に給電管34a〜34dが設けられる。各給電管34a〜34dは、下端部に給電用コネクタ37a〜37dを備え、図3に示すように送信機41からの送信信号を4基のバットウィング32a〜32dに対し時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電する。従って、対向配置されて対をなすバットウィング32a、32c間、及びバットウィング32b、32d間は、それぞれ180°の位相差で給電される。
【0023】
図3は上記スーパーターンスタイルアンテナ30の各バットウィングへの給電系統例を示すブロック図である。送信機41から出力される送信信号は、給電線42、4分配器43、分岐ケーブル44a〜44dを介して給電管34a〜34dへ送られ、この給電管34a〜34dにより各バットウィング32a〜32dに給電される。上記バットウィング32a〜32dの給電インピーダンスは、72Ωとなっている。
【0024】
上記分岐ケーブル44a〜44dは、例えばN面バットウィング32aに給電する分岐ケーブル44aを基準(0°給電)とし、E面バットウィング32bへの分岐ケーブル44bを1/4・λ長く(−90°給電)、S面バットウィング32cへの分岐ケーブル44cを2/4・λ長く(−180°給電)、W面バットウィング32dへの分岐ケーブル44dを3/4・λ長く(−270°給電)設定し、バットウィング32a〜32dに対して時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電する。上記λは使用周波数帯の中心周波数における波長を示している。
【0025】
次にバットウィング32a〜32dの詳細について説明する。
バットウィング32a〜32dは、同様の構成であるので、以下、N面のバットウィング32aについて図4を参照して説明する。図4はバットウィング32aの詳細な構成を示し、(a)は側面図、(b)は上面図である。
【0026】
バットウィング32aは、取付支柱11と平行して略垂直に設けられる所定長さの略角棒状の内側導体51を備え、この内側導体51に対し、略Mの字状に形成されたウィング素子52がMの字を横にした状態で上下両端において取付けられる。上記ウィング素子52は、上部ウィング52aと下部ウィング52bとが上下対称(線対称)に構成され、両ウィング間の中央位置と内側導体51との間に中央放射素子53aが設けられる。また、上部ウィング52aの最上部において水平方向に位置する素子部分は、上部放射素子53dとして作用する。更に上部ウィング52aには、中央放射素子53aと平行し、且つウィング素子52と内側導体51との間を接続する2つの中間放射素子53b、53cが所定の間隔で設けられる。
【0027】
また、下部ウィング52bにおいても、上部ウィング52aと同様に構成される。すなわち、下部ウィング52bの最下部において水平方向に位置する素子部分は、下部放射素子53d’として作用する。なお、中央放射素子53aは、上部ウィング52aと下部ウィング52bに共通の放射として設けられる。そして、下部ウィング52bには、中央放射素子53aと平行し、且つウィング素子52と内側導体51との間を接続する2つの中間放射素子53b’、53c’が所定の間隔で設けられる。上記上部ウィング52aと下部ウィング52bとは、各部の寸法が同じ値に設定される。
【0028】
そして、上記のように構成されたバットウィング32aは、内側導体51の上下両端部が取付金具(図示せず)により取付支柱31に所定の間隔W0で取付けられる。また、内側導体51と取付支柱31との間に給電管34aが設けられる。この給電管34aの下端部には、給電用コネクタ37aが取付けられている。上記給電管34aは、外導体35の上下両端が取付金具38a、38bにより内側導体51に取付けられ、外導体35と内側導体51との間が電気的に接続される。また、給電管34aの中心導体36は、ジャンパー39及び取付金具40(図1参照)を介して取付支柱31に取付けられる。
【0029】
上記バットウィング32aの各部の寸法、すなわち、放射素子53a〜53dの長さh1、h2、h3、h4、放射素子53a〜53dの各間隔d1、d2、d3、ウィング素子52の全高H0、内側導体51と取付支柱31との間隔W0は、次のように設定される。なお、各放射素子の直径は、例えば約16mmのものが使用される。
【0030】
中央放射素子53aの長さh1:約0.076λ
中間放射素子53bの長さh2:約0.109λ
中間放射素子53cの長さh3:約0.143λ
上部放射素子53dの長さh4:約0.178λ
放射素子53a、53bの間隔d1:約0.106λ
放射素子53b、53cの間隔d2:約0.110λ
放射素子53c、53dの間隔d3:約0.112λ
ウィング素子52の全高H0:約0.657λ
内側導体51と取付支柱31との間隔W0:約0.05λ
上記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30は、4基のバットウィング32a〜32dの素子寸法を最適化したもので、中央放射素子53aの長さh1は約0.076λで従来と同じ長さとなっているが、上部放射素子53d及び下部放射素子53d’の長さh4を約0.178λとして従来の長さ約0.238λより短く設定すると共に、それに合わせて中間放射素子53b、53cの長さh2、h3を短く設定している。放射素子53a〜53d、53a、53b’〜53d’の各間隔d1〜d3及びウィング素子52の全高H0は従来と同じである。そして、バットウィング32aの内側導体51と取付支柱31との間隔W0を約0.05λとし、従来の約1/2の値に設定している。
【0031】
図5は、上記実施例1に示したようにバットウィング寸法を最適化したスーパーターンスタイルアンテナ30を直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示している。この実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30では、図5から明らかなように水平面内のレベル偏差を約3.5dBに抑えることが可能である。
【0032】
上記実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30によれば、取付支柱31の径が太くなっても水平面内の全方向に対してレベル偏差を小さくすることが可能となり、例えば直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合には水平面内のレベル偏差を約3.5dBに抑えることができる。
【実施例2】
【0033】
次に本発明の実施例2に係るアンテナ装置について説明する。
図6は本発明の実施例2に係るアンテナ装置の側面図、図7は同アンテナ装置における素子の概略的な配置構成を示す上面図である。この実施例2に係るアンテナ装置は、図6及び図7に示すように、実施例1に係るスーパーターンスタイルアンテナ30の上下に2段の例えば棒状の導電性部材からなる無給電のパターン調整素子61a〜61dを90°開角で、且つ4基の各バットウィング32a〜32dとの開角が45°となるように取付金具62a、62bにより取付け、水平面内のレベル偏差が更に小さくなるように改善したものである。
【0034】
上記パターン調整素子61a〜61dは、例えば直径が約10〜20mmの棒状の導電性部材を用いて構成したもので、バットウィング32a〜32dの中心との間隔H1が約0.360λ±0.078λに設定される。上記パターン調整素子61a〜61dとしては、例えば直径が約10〜20mmの棒状の導電性部材が使用されるが、指向性とは無関係である。また、パターン調整素子61a〜61dは、取付支柱31の中心と素子先端との長さL1が約0.434λに設定される。
【0035】
そして、上記4基のバットウィング32a〜32dには、実施例1の図3に示したように送信機41から出力される送信信号が給電線42、4分配器43、ウィング給電用分岐ケーブル44a〜44d、給電管34a〜34dを介して時計方向に90°ずつ位相が回転するように給電される。
【0036】
上記のようにスーパーターンスタイルアンテナ30の上下に2段のパターン調整素子61a〜61dを90°開角で、且つ各バットウィング32a〜32dとの開角が45°となるように配置することにより、水平面内のレベル偏差を実施例1の場合より更に小さくすることができる。
【0037】
図8は、上下に2段のパターン調整素子61a〜61dを備えたスーパーターンスタイルアンテナ30を直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合の水平偏波水平面指向性を示したもので、水平面内のレベル偏差は約2.5dBに抑えられている。
【0038】
上記実施例2に係るアンテナ装置によれば、取付支柱31の径が太くなっても水平面内の全方向に対してレベル偏差を小さくすることが可能となり、スーパーターンスタイルアンテナ30を例えば直径Dが318.5mmの取付支柱31に取付けた場合においても水平面内のレベル偏差を約2.5dB以内に抑えることができる。
【実施例3】
【0039】
次に本発明の実施例3に係るアンテナ装置について説明する。
この実施例3は、実施例1に示したアンテナ装置、すなわちバットウィング寸法を最適化したスーパーターンスタイルアンテナ30において、給電インピーダンスが72Ωのバットウィング32a〜32dを給電管34a〜34dにより50Ωのインピーダンスで整合させ、実施例1の図3に示した4分配器43及び分岐ケーブル44a〜44dを50Ω系の標準的なものを使用できるようにしたものである。
【0040】
図9は、上記スーパーターンスタイルアンテナ30の各バットウィング32a〜32dへの給電系統例を示すブロック図である。給電管34a〜34dは、同様の構成であるので、図9では給電管34aの給電系統について示している。
給電管34aは、50Ωのインピーダンスを72Ωに変換するインピーダンス変換機能を備えている。このインピーダンス変換機能は、入力側に設けられるインピーダンス50Ωの中心導体361と、出力側すなわちバットウィング接続側に設けられて50Ωと72Ωのインピーダンスを整合する中心導体362が直列に接続されており、この中心導体362の直径及び長さにより50Ωと72Ωのインピーダンスを整合する。
【0041】
また、4分配器43としては50Ω系の標準的な分配器を使用し、この4分配器43と給電管34a〜34dとの間は50Ωの標準的な分岐ケーブル44a〜44dにより接続する。上記4分配器43は、入力インピーダンスが50/4Ω、各分配端子のインピーダンスが50Ωに設定されている。
【0042】
そして、送信機41と4分配器43との間を接続する給電線42は、4分配器43側にインピーダンス変換部42Aを備えている。インピーダンス変換部42Aは、2段編成でのインピーダンス変換を行う場合、インピーダンス
【数1】
の長さaが約λ/4の同軸ケーブル421と、インピーダンス
【数2】
の長さbが約λ/4の同軸ケーブル422が直列に接続されてなり、同軸ケーブル421、422の太さと長さa、bによって50Ωと50/4Ωのインピーダンスを整合する。
【0043】
図10は、上記実施例3に示したアンテナ装置のVSWR特性であり、横軸に周波数をとり、縦軸にVSWRをとって示した。図10において、マーカーm1は「中心周波数f0−7.0%」、マーカ−m2は「中心周波数f0−3.5%」、マーカ−m3は「中心周波数f0」、マーカ−m4は「中心周波数f0+3.5%」、マーカーm5は「中心周波数f0+7.0%」の周波数を示している。具体的な周波数としては、例えばマーカーm1が200MHz、マーカ−m2が207.5MHz、マーカ−m3が214MHz、マーカ−m4が222MHz、マーカ−m5が230MHzであり、207.5MHz(m2)〜222MHz(m4)の範囲が使用周波数帯となっている。この使用周波数帯におけるVSWRは、1.06以下であり、良好な値が得られている。
【0044】
上記実施例3に示したように各バットウィング32a〜32dの給電管34a〜34dに分岐ケーブル44a〜44dのインピーダンス50Ωとバットウィング32a〜32dのインピーダンス72Ωを整合するインピーダンス変換機能を設けることにより、インピーダンスが50Ω系の安価で標準的な4分配器43及び分岐ケーブル44a〜44dを使用することが可能となる。
【0045】
また、4分配器43により4分配した信号を分岐ケーブル44a〜44d及び給電管34a〜34dを介してバットウィング32a〜32dに給電することにより、分岐ケーブル44a〜44dに絶縁体ヘッド容量を設ける必要はなく、一般的な同軸ケーブルを使用することが可能となり、部品の保守管理が容易となる。
【0046】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【符号の説明】
【0047】
30…スーパーターンスタイルアンテナ、31…取付支柱、32a〜32d…バットウィング、33a…上部取付金具、33b…下部取付金具、34a〜34d…給電管、35…外導体、36、361、362…中心導体、37a〜37d…給電用コネクタ、38a、38b…取付金具、39a…ジャンパー、40…取付金具、41…送信機、42…給電線、42A…インピーダンス変換部、421、422…同軸ケーブル、43…4分配器、44a〜44d…ウィング給電用分岐ケーブル、51…内側導体、52…ウィング素子、52a…上部ウィング、52b…下部ウィング、53a…中央放射素子、53d…上部放射素子、53b、53c…中間放射素子、53b’、53c’…中間放射素子、53d’…下部放射素子、61a〜61d…パターン調整素子、62a、62b…取付金具。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付支柱の円周上に4基のバットウィングが略90°開角で取付けられるVHF帯用のスーパーターンスタイルアンテナにおいて、
前記4基のバットウィングと前記取付支柱との間に設けられて給電インピーダンスが72Ωの前記各バットウィングに給電する第1ないし第4の給電管を備え、
前記4基の各バットウィングは、
前記取付支柱に沿って所定の間隔で略垂直に配置される内側導体と、前記内側導体に装着されるウィング素子と、前記内側導体と前記ウィング素子の中央位置との間に略水平に設けられる中央放射素子と、前記ウィング素子の上部位置に略水平に設けられる上部放射素子と、前記ウィング素子の下部位置に略水平に設けられる下部放射素子と、前記上部放射素子と前記下部放射素子との間に所定の間隔で平行に設けられる複数の中間放射素子とを具備し、
前記中央放射素子の長さを約0.076波長、
前記上部放射素子及び前記下部放射素子の長さ約0.178波長、
前記ウィング素子の全長を約0.657波長、
前記取付支柱と前記内側導体との間隔を約0.05波長、
に設定したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記取付支柱の円周上で、前記バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を90°開角で、且つ前記4基の各バットウィングとの開角が略45°となるように放射状に配置し、
前記パターン調整素子は、
前記バットウィングの中心との間隔を約0.36波長、
前記取付支柱の中心と素子先端との長さを約0.434波長、
に設定して水平面内の全方向に対するレベル偏差が小さくなるようにしたことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項1】
取付支柱の円周上に4基のバットウィングが略90°開角で取付けられるVHF帯用のスーパーターンスタイルアンテナにおいて、
前記4基のバットウィングと前記取付支柱との間に設けられて給電インピーダンスが72Ωの前記各バットウィングに給電する第1ないし第4の給電管を備え、
前記4基の各バットウィングは、
前記取付支柱に沿って所定の間隔で略垂直に配置される内側導体と、前記内側導体に装着されるウィング素子と、前記内側導体と前記ウィング素子の中央位置との間に略水平に設けられる中央放射素子と、前記ウィング素子の上部位置に略水平に設けられる上部放射素子と、前記ウィング素子の下部位置に略水平に設けられる下部放射素子と、前記上部放射素子と前記下部放射素子との間に所定の間隔で平行に設けられる複数の中間放射素子とを具備し、
前記中央放射素子の長さを約0.076波長、
前記上部放射素子及び前記下部放射素子の長さ約0.178波長、
前記ウィング素子の全長を約0.657波長、
前記取付支柱と前記内側導体との間隔を約0.05波長、
に設定したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のアンテナ装置において、
前記取付支柱の円周上で、前記バットウィングの上下にそれぞれ4本の無給電のパターン調整素子を90°開角で、且つ前記4基の各バットウィングとの開角が略45°となるように放射状に配置し、
前記パターン調整素子は、
前記バットウィングの中心との間隔を約0.36波長、
前記取付支柱の中心と素子先端との長さを約0.434波長、
に設定して水平面内の全方向に対するレベル偏差が小さくなるようにしたことを特徴とするアンテナ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−98798(P2013−98798A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240551(P2011−240551)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】
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