説明

アンテナ

【課題】広い周波数帯域において電波を送受信することができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ10Aは、不平衡給電材11と共振用導体12およびグランド用導体13とを備えている。共振用導体12は、給電部18に並行して不平衡給電材11の軸方向前方へ延びる第1および第2共振用導体部20a,20bから形成され、グランド用導体13は、不平衡給電材11に電気的に接続された固定部25と、無給電部19に並行して不平衡給電材11の軸方向後方へ延びる第1および第2グランド用導体部26a,26bとから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不平衡給電材と共振用導体およびグランド用導体とを備えたアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
所定長さの第1導波部と、第1導波部につながる所定長さの第2導波部とを備え、第1導波部が同軸ケーブルの芯線と芯線を包被する第1絶縁体とから形成され、第2導波部が同軸ケーブルの第2絶縁体に固定された第1導体管とその第1導体管に摺動可能に取り付けられた第2導体管とから形成されたアンテナがある(特許文献1参照)。このアンテナは、第1導体管に対して第2導体管をそれらの長さ方向へ移動させることで、通信周波数におけるアンテナの効率が高くなるように第2導波部の長さを調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−100921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のアンテナは、第2導体管をその長さ方向へ移動させることで、共振周波数を変えることができるが、その使用周波数帯域(比周波数帯域)がアンテナとして使用可能な周波数帯域のうちの10%程度をカバーしているに過ぎず、使用周波数帯域を広げることが難しく、広帯域(ワイドバンド)における使用ができない。また、このアンテナは、その使用周波数帯域を高い方へ移動させることができない。
【0005】
本発明の目的は、広い周波数帯域において電波を送受信することができ、高い利得を得ることができるとともに、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明にかかるアンテナは、所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて共振用導体と一体となり、不平衡給電材の無給電部と共振するグランド用導体とを備え、共振用導体が、不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、給電部に並行して不平衡給電材の軸方向前方へ延びる第1共振用導体部と、不平衡給電材を挟んで第1共振用導体部の反対側に位置し、不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、給電部に並行して軸方向前方へ延びる第2共振用導体部とから形成され、グランド用導体が、不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された固定部と、固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、無給電部に並行して不平衡給電材の軸方向後方へ延びる第1グランド用導体部と、不平衡給電材を挟んで第1グランド用導体の反対側に位置し、固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、無給電部に並行して軸方向後方へ延びる第2グランド用導体部とから形成されている。
【0007】
本発明のアンテナの一例としては、第1共振用導体部の平面形状と第2共振用導体部の平面形状とが不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、第1グランド用導体部の平面形状と第2グランド用導体部の平面形状とが不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にある。
【0008】
本発明のアンテナの他の一例としては、第1および第2共振用導体部が、グランド用導体の側に位置して給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁と、軸方向前方に位置して第2内側縁から外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が給電部に対して平行して延びている。
【0009】
本発明のアンテナの他の一例としては、第1および第2グランド用導体部が、共振用導体の側に位置して無給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって無給電部に対向して軸方向後方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸方向後方へ延びる外側縁と、軸方向後方に位置して第2内側縁から外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が無給電部に対して平行して延びている。
【0010】
本発明のアンテナの他の一例としては、第1および第2共振用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が2.5〜9mmの範囲にあり、第1および第2グランド用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が2.5〜9mmの範囲にある。
【0011】
本発明のアンテナの他の一例としては、第1および第2共振用導体部が、グランド用導体の側に位置して給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁と、第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が給電部に対して平行して延びている。
【0012】
本発明のアンテナの他の一例としては、第1および第2グランド用導体部が、共振用導体の側に位置して無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と、第1内側縁につながって無給電部に対して軸方向後方へ延びる第2内側縁と、第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が無給電部に対して平行して延びている。
【0013】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の軸線に対する第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が15〜60°の範囲にある。
【0014】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が45〜80°の範囲にあり、軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が30〜60°の範囲にある。
【0015】
本発明のアンテナの他の一例としては、給電部の中心と第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が2〜9mmの範囲にあり、無給電部の外周面と第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が3〜10mmの範囲にあり、第2離間寸法が第1離間寸法と同一または第1離間寸法よりも大きい。
【0016】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材が、第1導体と、第1導体の外周面を包被する絶縁体と、絶縁体の外周面を包被する第2導体とから作られ、不平衡給電材の給電部が第1導体から形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と絶縁体とから形成され、グランド用導体の固定部が第2導体に電気的に接続されている。
【0017】
本発明のアンテナの他の一例として、不平衡給電材の給電部を形成する第1導体には、所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子が電気的に接続されている。
【0018】
本発明のアンテナの他の一例としては、アンテナが、その後方に配置されてアンテナの周り方向へ延びる電波反射材を備え、アンテナでは、不平衡給電材の軸線と電波反射材を周り方向に二分する電波反射材の中心線とが一致するとともに、第1および第2共振用導体部が中心線に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部が中心線に対して面対称に配置されている。
【0019】
電波反射材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画いている。
【発明の効果】
【0020】
本発明にかかるアンテナによれば、給電部と所定面積の板状に成型された第1および第2共振用導体部とが共振するとともに、無給電部と所定面積の板状に成型された第1および第2グランド用導体部とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0021】
第1共振用導体部の平面形状と第2共振用導体部の平面形状とが不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、第1グランド用導体部の平面形状と第2グランド用導体部の平面形状とが不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあるアンテナは、第1および第2共振用導体部を面対称にすることで、給電部と第1および第2共振用導体部とが同帯域の複数の共振周波数で共振するとともに、第1および第2グランド用導体部を面対称にすることで、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが同帯域の複数の共振周波数で共振し、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0022】
第1および第2共振用導体部が給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁と第2内側縁から外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり、第2内側縁が給電部に対して平行して延びているアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部とそれら内外縁を有して所定面積の板状に成型された第1および第2共振用導体部とが確実に共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0023】
第1および第2グランド用導体部が無給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と無給電部に対向して軸方向後方へ延びる第2内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸方向後方へ延びる外側縁と第2内側縁から外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、第2内側縁が無給電部に対して平行して延びているアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが確実に共振するとともに、無給電部とそれら内外縁を有して所定面積の板状に成型された第1および第2グランド用導体部とが確実に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0024】
第1および第2共振用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が2.5〜9mmの範囲にあり、第1および第2グランド用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が2.5〜9mmの範囲にあるアンテナは、それら幅寸法を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子の幅寸法を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子の幅寸法を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。
【0025】
第1および第2共振用導体部が給電部から径方向外方へ延びる第1内側縁と給電部に対向して軸方向前方へ延びる第2内側縁と第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、第2内側縁と給電部との間の離間寸法が同一であり第2内側縁が給電部に対して平行して延びているアンテナは、第3内側縁を傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができる。アンテナは、第3内側縁の傾斜角度を調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部とそれら内外縁を有して所定面積の板状に成型された第1および第2共振用導体部とが確実に共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0026】
第1および第2グランド用導体部が無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と無給電部に対して軸方向後方へ延びる第2内側縁と第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁とそれら内側縁の外側に位置して軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、第2内側縁と無給電部との間の離間寸法が同一であり、第2内側縁が無給電部に対して平行して延びているアンテナは、第1内側縁を無給電部から軸方向後方へ末広がりに傾斜させ、第3内側縁を第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜させることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができる。アンテナは、第1内側縁の傾斜角度を調整し、第3内側縁の傾斜角度を調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが共振するとともに、無給電部とそれら内外縁を有して所定面積の板状に成型された第1および第2グランド用導体部とが確実に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0027】
不平衡給電材の軸線に対する第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が15〜60°の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の軸線に対する第3内側縁の傾斜角度を前記範囲にすることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第3内側縁の傾斜角度を前記範囲で調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0028】
不平衡給電材の軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が45〜80°の範囲にあり、軸線に対する第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が30〜60°の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の軸線に対する第1内側縁の傾斜角度を前記範囲にし、軸線に対する第3内側縁の傾斜角度を前記範囲にすることで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を安定化させることができるとともに、第1内側縁の傾斜角度を前記範囲で調整し、第3内側縁の傾斜角度を前記範囲で調整することで、使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、それ1本のみで広帯域の電波を送受信することができる。
【0029】
給電部の中心と第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が2〜9mmの範囲にあり、無給電部の外周面と第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が3〜19mmの範囲にあり、第2離間寸法が第1離間寸法と同一または第1離間寸法よりも大きいアンテナは、離間寸法を前記範囲にすることで、給電部と第1および第2共振用導体部との電波の共振効率が最適となり、給電部とそれら共振用導体とを効率よく共振させることができ、無給電部と第1および第2グランド用導体部との電波の共振効率が最適となり、無給電部とそれらグランド用導体とを効率よく共振させることができる。このアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが効率よく共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが効率よく共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0030】
不平衡給電材の給電部が第1導体から形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と第1絶縁体とから形成され、グランド用導体の固定部が第2導体に電気的に接続されているアンテナは、高い利得を得ることができるのみならず、給電部と第1および第2共振用導体部とが確実に共振するとともに、無給電部と第1および第2グランド用導体部とが確実に共振し、それによって複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができ、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナを作ることができる。
【0031】
所定面積を有して軸方向前方へ延びる給電素子が不平衡給電材の給電部を形成する第1導体に電気的に接続されたアンテナは、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部と第1および第2共振用導体部との共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。このアンテナは、第1導体に接続された給電素子の幅寸法を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子の幅寸法を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子の幅寸法を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。
【0032】
アンテナの後方に配置されてその周り方向へ延びる電波反射材を備え、不平衡給電材の軸線が電波反射材の中心線に一致するとともに、第1および第2共振用導体部が中心線に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部が中心線に対して面対称に配置されているアンテナは、アンテナにおける使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナから発信された電波が電波反射材によって反射されることで、アンテナから発信された電波のすべてを所定の方向へ発信することができるとともに、所定方向から進入する電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【0033】
電波反射材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画いているアンテナは、アンテナの後方へ発信された電波が電波反射材によって確実に反射され、その電波がアンテナの前方へ発信されるから、アンテナから発信された電波のすべてをアンテナの前方へ発信することができるとともに、前方から進入する電波が電波反射材によってアンテナに向かって確実に反射され、反射材によって反射された電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】一例として示すアンテナの斜視図。
【図2】図1の2−2線矢視断面図。
【図3】幅寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図。
【図4】VSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図。
【図5】アンテナのインピーダンスを示すスミスチャート。
【図6】アンテナの周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図7】アンテナの周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図8】アンテナの使用の一例を示す斜視図。
【図9】図8の正面図。
【図10】図8の上面図。
【図11】他の一例として示すアンテナの斜視図。
【図12】離間寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図。
【図13】VSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図。
【図14】アンテナの周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図15】アンテナの使用の一例を示す斜視図。
【図16】図15の正面図。
【図17】図15の上面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
一例として示すアンテナ10Aの斜視図である図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるアンテナの実施形態の詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線矢視断面図であり、図3は、幅寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図である。図1では、軸方向を矢印A、径方向を矢印Bで示すとともに、軸方向前方を矢印A1で示し、軸方向後方を矢印A2で示す。図1では、軸線S1を一点鎖線で示す。アンテナ10Aは、不平衡給電材11(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)と、共振用導体12およびグランド用導体13と、給電素子14とから形成されている。
【0036】
不平衡給電材11は、所定長さを有して軸方向へ延びている。不平衡給電材11は、図1,2に示すように、棒状の細長い第1導体15(中心金属導体)と、第1導体15の外周面を包被する断面円形の絶縁体16と、絶縁体16の外周面を包被する断面円筒状の第2導体17(外側金属導体)とから作られている。不平衡給電材11では、第1導体15の外周面と絶縁体16の内周面とが固着され、絶縁体16の外周面と第2導体17の内周面とが固着されている。
【0037】
不平衡給電材11は、所定長さ(約λ/4)に設定されて軸方向前方へ延びる給電部18と、所定長さ(約λ/4)に設定されて給電部18から軸方向後方へ延びる無給電部19とを有する(長さはλ/4+30mm程度付加可能)。不平衡給電材11の後端には、コネクタ34が取り付けられている。給電部18は、第1導体15と給電素子14とから形成されて軸方向へ略直線状に延びている。なお、給電部18は、第1導体15のみでもよいが、比帯域を広くするために給電素子14を接続している。給電部18が第1導体15のみの場合は、その第1導体15が所定長さ(約λ/4)に設定されて軸方向へ略直線状に延びる。無給電部19は、第1導体15と絶縁体16と第2導体17とから形成され、給電部18から軸方向後方へ略直線状に延びている。第1導体15や第2導体17には、アルミニウムや銅等の導電性金属を使用することができ、絶縁体16には、同軸ケーブルのインピーダンスを固定するための材料となる熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するテフロン(登録商標)樹脂)を使用することができる。
【0038】
共振用導体12は、給電部18を挟んで径方向へ離間して並ぶ第1共振用導体部20aおよび第2共振用導体部20bから形成されている。第1および第2共振用導体部20a,20bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1共振用導体部20aは、不平衡給電材11(給電部18)の径方向外方へ離間するとともに、給電部18に並行してグランド用導体13から軸方向前方へ延びている。
【0039】
第2共振用導体部20bは、不平衡給電材11を挟んで第1共振用導体部20aの反対側に位置し、不平衡給電材11(給電部18)の径方向外方へ離間するとともに、給電部18に並行してグランド用導体13から軸方向前方へ延びている。第1および第2共振用導体部20a,20bは、不平衡給電材11の給電部18と共振する。第1および第2共振用導体部20a,20bは、それらの平面形状が同形同大の矩形であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0040】
第1および第2共振用導体部20a,20bは、第1内側縁21および第2内側縁22と、外側縁23および外端縁24とを有する。第1内側縁21は、グランド用導体13の側(無給電部19の側)に位置し、給電部18から径方向外方へ延びている。第2内側縁22は、第1内側縁21につながり、第1内側縁21の径方向外端から給電部18に対向して軸方向前方へ延びている。外側縁23は、それら内側縁21,22の外側(径方向外方)に位置し、内側縁22と平行して軸方向前方へ延びている。外端縁24は、軸方向前方に位置し、第2内側縁22の軸方向先端から外側縁23の軸方向先端に向かって径方向外方へ延びている。
【0041】
第1および第2共振用導体部20a,20bでは、それらの第1内側縁21の径方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁22の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの外側縁23の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外端縁24の径方向の幅寸法L1が同一である。第1および第2共振用導体部20a,20bでは、それらの第2内側縁22と給電部18(第1導体15の中心)との間の離間寸法L2が同一であり、それらの第2内側縁22が給電部18に対して平行して延びている。離間寸法L2は、1〜9mmの範囲、好ましくは1〜3mmの範囲にある。なお、給電部18に給電素子14を接続した場合の離間寸法は、2mmが好ましい。離間寸法L2を前記範囲にすることで、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの電波の共振効率が最適となり、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20b(第2共振用導体部20a,20bの第2内側縁22)とを効率よく共振させることができる。
【0042】
グランド用導体13は、固定部25と、無給電部19を挟んで径方向に並ぶ第1グランド用導体部26aおよび第2グランド用導体部26bとから形成されている。グランド用導体13は、共振用導体12と一体に作られており、共振用導体13につながっている。共振用導体12およびグランド用導体13の両者を含めた軸方向の長さ寸法は、約λ/4の設定されている。固定部25は、第1および第2グランド用導体部26a,26bの間に位置し、不平衡給電材11の第2導体17に溶接(半田付け等)(固定手段)によって電気的に接続(固定)されている。
【0043】
固定部25は、径方向へ延びる帯状の第1支持部分27と、第1支持部分27の軸方向前方と軸方向後方とに位置する第2支持部分28とから形成されている。第1支持部分27は、径方向へ延びる一対の切断線で固定部25を切断することから作られている。固定部25では、不平衡給電材11の第2導体17の一方の周面が第1支持部分27に当接するとともに、不平衡給電材11の第2導体17の他方の周面が第2支持部分28に当接し、不平衡給電材11が第1および第2支持部分27,28に挟まれた状態でそれら支持部分27,28に固定されている。
【0044】
アンテナ10Aでは、第1支持部分27と第2支持部分28との間に形成された空間29(図2参照)に不平衡給電材11を挿入し、共振用導体12やグランド用導体13に対する不平衡給電材11の固定位置を調節し、不平衡給電材11のインピーダンスが変化しない程度に第1および第2支持部分27,28をプレスして不平衡給電材11をそれら支持部分27,28に固定した後、不平衡給電材11の第2導体17をそれら支持部分27,28に溶接する。アンテナ10Aは、固定部25に第1支持部分27と第2支持部分28とを形成することで、共振用導体12やグランド用導体13に対する不平衡給電材11の固定位置を容易に調節することができるとともに、不平衡給電材11をグランド用導体13の固定部25に容易に固定することができるから、アンテナ10Aの製作にかかる手間を大幅に軽減することができるとともに、アンテナ特性に影響を与えることなく、アンテナ10Aの製作にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0045】
第1および第2グランド用導体部26a,26bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1グランド用導体部26aは、固定部25につながって不平衡給電材11(無給電部19)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部19に並行して共振用導体12から軸方向後方へ延びている。
【0046】
第2グランド用導体部26bは、不平衡給電材11を挟んで第1グランド用導体部26aの反対側に位置し、固定部25につながって不平衡給電材11(無給電部19)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部19に並行して共振用導体12から軸方向後方へ延びている。第1および第2グランド用導体部26a,26bは、不平衡給電材11の無給電部19と共振する。第1および第2グランド用導体部26a,26bは、それらの平面形状が同形同大の矩形であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0047】
第1および第2グランド用導体部26a,26bは、第1内側縁30および第2内側縁31と、外側縁32および外端縁33とを有する。第1内側縁30は、共振用導体12の側(給電部18の側)に位置し、無給電部19から径方向外方へ延びている。第2内側縁31は、第1内側縁30につながり、第1内側縁30の径方向外端から無給電部19に対向して軸方向後方へ延びている。外側縁32は、それら内側縁30,31の外側(径方向外方)に位置し、内側縁31と平行して軸方向後方へ延びている。外端縁33は、軸方向後方に位置し、第2内側縁31の軸方向後端から外側縁32の軸方向後端に向かって径方向外方へ延びている。
【0048】
第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、それらの第1内側縁30の径方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁31の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの外側縁32の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外端縁33の径方向の幅寸法L3が同一である。第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、それらの第2内側縁31と無給電部19(第2導体17の表面)との間の離間寸法L4が同一であり、それらの第2内側縁31が無給電部19に対して平行して延びている。離間寸法L4は、1〜9mmの範囲、好ましくは1〜3mmの範囲にある。離間寸法L4を前記範囲にすることで、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26b(第1および第2グランド用導体部26a,26bの第2内側縁31)とを効率よく共振させることができる。
【0049】
アンテナ10Aでは、第1および第2共振用導体部20a,20bの外端縁24の幅寸法L1(第2内側縁22と外側縁23との間に幅寸法)が2.5〜9mmの範囲にあり、第1および第2グランド用導体部26a,26bの外端縁33の幅寸法L3(第2内側縁31と外側縁32との間に幅寸法)が2.5〜9mmの範囲にある。それら幅寸法L1,L3が2.5mm未満では、不平衡給電材11の給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの共振が不十分になるとともに、不平衡給電材11の無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Aにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。それら幅寸法L1,L3が9mmを超過すると、アンテナ10Aにおける使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Aの周波数帯域を広げることができないのみならず、幅寸法L1,L3を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとを共振させることができない場合があるとともに、不平衡給電材11の無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとを共振させることができない場合がある。
【0050】
アンテナ10Aは、それら幅寸法L1,L3を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができ、共振帯域を安定化させることができる。具体的には、幅寸法L1,L3を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、幅寸法L1,L3を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。アンテナ10Aは、図3に示すように、幅寸法L1,L3が2.5mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、幅寸法L1,L3が9mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、幅寸法L1,L3がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Aの使用周波数帯域は略一定となる。アンテナ10Aは、それら幅寸法L1,L3を2.5〜9mmの範囲にすることで、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0051】
給電素子14は、不平衡給電材11の給電部18を形成する第1導体15に電気的に接続され、所定面積を有して軸方向前方へ延びている。給電素子14には、熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するテフロン(登録商標)樹脂)を使用することができる。給電素子14は、軸方向へ長い帯状に成型され、軸方向の長さ寸法が約λ/4に設定されている。給電素子14は、その幅寸法L5がアンテナ10Aの使用周波数帯域によって異なり、その幅寸法L5を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、給電素子14の幅寸法L5を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、給電素子14の幅寸法L5を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くすることができる。アンテナ10Aは、第1導体15に給電素子14を接続することで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。
【0052】
図4は、アンテナ10AにおけるVSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図であり、図5は、アンテナ10Aのインピーダンスを示すスミスチャートである。図6,7は、アンテナ10Aの3平面(XY面、YZ面、ZX面)の周り方向において計測した電波強度を示す図である。図6は、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示し、図7は、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す。
【0053】
アンテナ10Aは、図4に示すように、使用周波数が約2.0GHz〜約4.0GHzにおいて反射係数VSWR(電圧定在波比)が2以下であり、低いVSWR(電圧定在波比)を維持した状態で、広い使用周波数帯域を持っていることが分かる。また、図5に示すように、アンテナ10Aのインピーダンスが50Ωであり、図6に示すように、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が略真円を画き、図7に示すように、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度がバタフライ型を画いており、アンテナ10Aが良好な無指向性を有していることが分かる。
【0054】
アンテナ10Aは、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20b(第2共振用導体部20a,20bの第2内側縁22)とが共振するとともに、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26b(第1および第2グランド用導体部26a,26bの第2内側縁31)とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Aにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナ10Aは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナ10Aを作ることができる。
【0055】
図8は、アンテナ10Aの使用の一例を示す斜視図であり、図9は、図8の正面図である。図10は、図8の上面図である。図9,10では、縦方向を矢印Cで示し(図9のみ)、周り方向を矢印Dで示すとともに(図10のみ)、前後方向Eを矢印で示す(図10のみ)。また、図8,10では、前後方向前方を矢印E1で示し、前後方向後方を矢印E2で示す(図10のみ)。図9では、中心線S2を二点鎖線で示す。
【0056】
アンテナ10Aは、その使用の一例として電波反射材35を備えている。電波反射材35は、アンテナ10Aの後方に配置されている。電波反射材35は、導電性金属(アルミニウムや銅、メッキ等)から作られ、アンテナ10Aから発信された電波を反射する。電波反射材35は、図8,10に示すように、半円形に成形され、アンテナ10Aの周り方向へ円弧(正円)を画いている。アンテナ10Aでは、不平衡給電材11の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されている。
【0057】
電波反射材35は、その縦方向の長さ寸法がアンテナ10Aの不平衡給電材11(コネクタ34を含まず)と給電素子14との両者の軸方向の長さ寸法と略同一かそれよりも大きく、アンテナ10Aの後面側の全域を取り囲んでいる。なお、電波反射材35は、半円形に限らず、その円周の長さを自由に設定することができる。また、アンテナ10Aを取り囲むようにその周り方向へ延びていればよく、必ずしも正円を画く必要はなく、半楕円形やV形であってもよい。
【0058】
このアンテナ10Aの使用例では、不平衡給電材11の軸線S1(図1参照)と電波反射材35を周り方向に二分する反射材35の中心線S2とが一致するとともに、給電材11の軸線S1が反射材35を正円としたときのその中心点S2に位置するように、電波反射材35に対してアンテナ10Aが配置されている。また、第1および第2共振用導体部20a,20bが中心線S2に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部26a,26bが中心線S2に対して面対称に配置されている。アンテナ10Aは、図8,10に矢印E1,E2で示すように、その後面側から前後方向後方へ発信された電波が電波反射材35によって反射され、反射された電波とその前面側から発信された電波とが前後方向前方へ向かって発信される。
【0059】
アンテナ10Aは、不平衡給電材11の給電部18の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されているが、図10に示すように、不平衡給電材11の軸線S1と電波反射材35の中心線S2とを結ぶ移動線S3上を移動させることができる。それによって、アンテナ10Aの放射利得と共振周波数とを自由に微調整することができる。
【0060】
電波反射材35を備えたアンテナ10Aは、その使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナ10Aの後方へ発信された電波が電波反射材35によって反射され、その電波が前後方向前方へ発信されるから、アンテナ10Aから発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができるとともに、前後方向前方(所定の方向)から進入する電波をアンテナ10A全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナ10Aに前後方向前方(特定方向)への指向性を持たせることができる。
【0061】
不平衡給電材11の給電部18の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されたアンテナ10Aは、アンテナ10Aから発信された電波が効率よく電波反射材35に達し、その電波が反射材35によって反射されることで、アンテナ10Aから発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができる。また、前後方向前方(所定の方向)から進入して電波反射材35によって反射した電波が効率よくアンテナ10Aに達し、アンテナ10Aが電波を効率よく受信することができる。
【0062】
図11は、他の一例として示すアンテナ10Bの斜視図であり、図12は、離間寸法と使用周波数帯域との相関関係を示す図である。図11では、軸方向を矢印A、径方向を矢印Bで示すとともに、軸方向前方を矢印A1で示し、軸方向後方を矢印A2で示す。図11では、軸線を一点鎖線S1で示す。アンテナ10Bは、図1のそれと同様に、不平衡給電材11(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)と、共振用導体12およびグランド用導体13と、給電素子14とから形成されている。不平衡給電材11は図1のアンテナ10Aのそれと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。
【0063】
共振用導体12は、給電部18を挟んで径方向へ離間して並ぶ第1共振用導体部20aおよび第2共振用導体部20bから形成されている。第1および第2共振用導体部20a,20bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1共振用導体部20aは、不平衡給電材11(給電部18)の径方向外方へ離間するとともに、給電部18に並行してグランド用導体13から軸方向前方へ延びている。
【0064】
第2共振用導体部20bは、不平衡給電材11(給電部18)を挟んで第1共振用導体部20aの反対側に位置し、不平衡給電材11(給電部18)の径方向外方へ離間するとともに、給電部18に並行してグランド用導体13から軸方向前方へ延びている。第1および第2共振用導体部20a,20bは、不平衡給電材11の給電部18と共振する。第1および第2共振用導体部20a,20bは、それらの平面形状が同形同大であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0065】
第1および第2共振用導体部20a,20bは、第1内側縁〜第3内側縁36〜38と、外側縁39および外端縁40とを有する。第1内側縁36は、グランド用導体13の側(無給電部19の側)に位置し、給電部18から径方向外方へ延びている。第2内側縁37は、第1内側縁36につながり、第1内側縁36の径方向外端から給電部18に対向して軸方向前方へ延びている。第3内側縁38は、第2内側縁37につながり、第2内側縁37の軸方向先端から軸方向前方へ末広がりに傾斜(軸線方向前方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。外側縁39は、それら内側縁36〜38の外側(径方向外方)に位置し、内側縁37と平行して軸方向前方へ延びている。外端縁40は、軸方向前方に位置し、第3内側縁38の軸方向先端から外側縁39の軸方向先端に向かって径方向外方へ延びている。
【0066】
第1および第2共振用導体部20a,20bでは、それらの第1内側縁36の径方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁37の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの第3内側縁38の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外側縁39の軸方向の長さ寸法が同一であるとともに、それらの外端縁40の径方向の長さ寸法が同一である。第1および第2共振用導体部20a,20bでは、それらの第2内側縁37と給電部18の中心(軸線S1)との間の離間寸法L6(第1離間寸法)が同一であり、それらの第2内側縁37が給電部18に対して平行して延びている。
【0067】
アンテナ10Bでは、第1および第2共振用導体部20a,20bの第2内側縁37と不平衡給電材11の給電部18の中心(軸線S1)との間の離間寸法L6が2〜9mmの範囲にある。離間寸法L6が9mmを超過すると、アンテナ10Bにおける使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Bの周波数帯域を広げることができないのみならず、離間寸法L6を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとを共振させることができない場合がある。
【0068】
アンテナ10Bは、離間寸法L6を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができ、共振帯域を安定化させることができる。具体的には、離間寸法L6を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L6を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。アンテナ10Bは、図12に示すように、離間寸法L6が2mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L6が9mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L6がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Bの使用周波数帯域は略一定となる。アンテナ10Bは、離間寸法L6を2〜9mmの範囲にすることで、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの電波の共振効率が最適となり、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20b(第1および第2共振用導体部20a,20bの第2内側縁37)とを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0069】
第1および第2共振用導体部20a,20bでは、不平衡給電材11の軸線S1に対する第3内側縁38の傾斜角度α1が15〜60°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の軸線S1に対する第1共振用導体部20aの第3内側縁38の傾斜角度α1と不平衡給電材11の軸線S1に対する第2共振用導体部20bの第3内側縁38の傾斜角度α1とは同一である。傾斜角度α1が15度未満または60°を超過すると、不平衡給電材11の給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Bにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Bは、傾斜角度α1を15〜60°の範囲にすることで、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの電波の共振効率が最適となり、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20b(第1および第2共振用導体部20a,20bの第3内側縁38)とを効率よく共振させることができる。
【0070】
グランド用導体13は、固定部25と、無給電部19を挟んで径方向に並ぶ第1グランド用導体部26aおよび第2グランド用導体部26bとから形成されている。グランド用導体13は、共振用導体12と一体に作られ、共振用導体13につながっている。共振用導体12およびグランド用導体13の両者を含めた軸方向の長さ寸法は、約λ/4の設定されている。固定部25は、第1および第2グランド用導体部26a,26bの間に位置し、不平衡給電材11の第2導体17に溶接(半田付け等)(固定手段)によって電気的に接続(固定)されている。固定部25は図1のアンテナ10Aのそれと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。
【0071】
アンテナ10Bでは、第1支持部分27と第2支持部分28との間に形成された空間29(図2援用)に不平衡給電材11を挿入し、共振用導体12やグランド用導体13に対する不平衡給電材11の固定位置を調節し、不平衡給電材11のインピーダンスが変化しない程度に第1および第2支持部分27,28をプレスして不平衡給電材11をそれら支持部分27,28に固定した後、不平衡給電材11の第2導体17をそれら支持部分27,28に溶接する。アンテナ10Bは、固定部25に第1支持部分27と第2支持部分28とを形成することで、共振用導体12やグランド用導体13に対する不平衡給電材11の固定位置を容易に調節することができるとともに、不平衡給電材11をグランド用導体13の固定部25に容易に固定することができるから、アンテナ10Bの製作にかかる手間を大幅に軽減することができるとともに、アンテナ特性に影響を与えることなく、アンテナ10Bの製作にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0072】
第1および第2グランド用導体部26a,26bは、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、所定面積を有する板状に成型されている。第1グランド用導体部26aは、固定部25につながって不平衡給電材11(無給電部19)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部19に並行して共振用導体12から軸方向後方へ延びている。
【0073】
第2グランド用導体部26bは、不平衡給電材11を挟んで第1グランド用導体部26aの反対側に位置し、固定部25につながって不平衡給電材11(無給電部19)の径方向外方へ離間するとともに、無給電部19に並行して共振用導体12から軸方向後方へ延びている。第1および第2グランド用導体部26a,26bは、不平衡給電材11の無給電部19と共振する。第1および第2グランド用導体部26a,26bは、それらの平面形状が同形同大であり、それらの平面形状が不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係(鏡像関係)にある。
【0074】
第1および第2グランド用導体部26a,26bは、第1内側縁41〜第3内側縁43と、外側縁44とを有する。第1内側縁41は、共振用導体12の側(給電部18の側)に位置し、無給電部19から軸方向後方へ末広がりに傾斜(軸線方向後方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。第2内側縁42は、第1内側縁41につながり、第1内側縁41の径方向外端から無給電部19に対向して軸方向後方へ延びている。第3内側縁43は、第2内側縁42につながり、第2内側縁42の軸方向先端から軸方向後方へ末広がりに傾斜(軸線方向後方へ向かって径方向外方へ傾斜)して延びている。外側縁44は、それら内側縁41〜43の外側(径方向外方)に位置し、内側縁42と平行して軸方向前方へ延びている。
【0075】
第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、それらの第1内側縁41の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの第2内側縁42の軸方向の長さ寸法が同一である。また、それらの第3内側縁43の軸方向の長さ寸法が同一であり、それらの外側縁44の軸方向の長さ寸法が同一である。第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、それらの第2内側縁42と無給電部19(第2導体17の表面)との間の離間寸法L7(第2離間寸法)が同一であり、それらの第2内側縁42が無給電部19に対して平行して延びている。
【0076】
アンテナ10Bでは、第1および第2グランド用導体部26a,26bの第2内側縁42と不平衡給電材11の無給電部18(第2導体17の表面)との間の離間寸法L7が3〜10mmの範囲にある。アンテナ10Bでは、離間寸法L7が離間寸法L6よりも大きい。なお、離間寸法L7と離間寸法L6とが同一であってもよい。離間寸法L7が3mm未満では、不平衡給電材11の無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Bにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。離間寸法L7が10mmを超過すると、アンテナ10Bにおける使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10Bの周波数帯域を広げることができないのみならず、離間寸法L7を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとが共振帯域内において不安定になる場合がある。
【0077】
アンテナ10Bは、離間寸法L7を前記範囲において変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。具体的には、離間寸法L7を大きくすることで、使用周波数帯域を広くすることができ、離間寸法L7を小さくすることで、使用周波数帯域を狭くし、共振帯域内のVSWRを安定化させることができる。アンテナ10Bは、図12に示すように、離間寸法L7が3mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間寸法L7が10mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間寸法L7がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10Bの使用周波数帯域は略一定となる。アンテナ10Bは、離間寸法L7を前記範囲にすることで、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26b(第1および第2グランド用導体部26a,26bの第2内側縁42)とを効率よく共振させることができるとともに、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。
【0078】
第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、不平衡給電材11の軸線S1に対する第1内側縁41の傾斜角度α2が45〜80°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の軸線S1に対する第1グランド用導体部26aの第1内側縁41の傾斜角度α2と不平衡給電材11の軸線S1に対する第2グランド用導体部26bの第1内側縁41の傾斜角度α2とは同一である。傾斜角度α2が45度未満または80°を超過すると、不平衡給電材11の給電部18と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Bにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Bは、傾斜角度α2を45〜80°の範囲にすることで、給電部18と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの電波の共振効率が最適となり、給電部18と第1および第2グランド用導体部26a,26bとを効率よく共振させることができる。
【0079】
第1および第2グランド用導体部26a,26bでは、不平衡給電材11の軸線S1に対する第3内側縁43の傾斜角度α3が15〜60°の範囲にある。なお、不平衡給電材11の軸線S1に対する第1グランド用導体部26aの第3内側縁43の傾斜角度α3と不平衡給電材11の軸線S1に対する第2グランド用導体部26bの第3内側縁43の傾斜角度α3とは同一である。傾斜角度α3が15度未満または60°を超過すると、不平衡給電材11の無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10Bにおいて使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10Bは、傾斜角度α3を15〜60°の範囲にすることで、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとの電波の共振効率が最適となり、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26bとを効率よく共振させることができる。
【0080】
給電素子14は、図1のアンテナ10Aのそれと同一であるから、図1と同一の符号を付すとともに、図1の説明を援用することで、その説明は省略する。給電素子14は、その幅寸法L5がアンテナ10Aの使用周波数帯域によって異なり、その幅寸法L5を変更することで、使用周波数帯域の広狭を自由に調整することができる。アンテナ10Aは、第1導体15に給電素子14を接続することで、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20bとの共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。
【0081】
図13は、アンテナ10BにおけるVSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図であり、図14は、アンテナ10BのYZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す図である。なお、アンテナ10Bのインピーダンスを示すスミスチャートは図5を援用し、アンテナ10BのYZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す図は図6を援用する。
【0082】
アンテナ10Bは、図13に示すように、使用周波数が約2.0GHz〜約4.0GHzにおいて反射係数VSWR(電圧定在波比)が2以下であり、低いVSWR(電圧定在波比)を維持した状態で、広い使用周波数帯域を持っていることが分かる。また、アンテナ10Bのインピーダンスが50Ωであり(図5援用)、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が略真円を画き(図6援用)、図14に示すように、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が楕円型を画いており、アンテナ10Bが良好な無指向性を有していることが分かる。
【0083】
アンテナ10Bは、給電部18と第1および第2共振用導体部20a,20b(第1および第2共振用導体部20a,20bの第2内側縁37)とが共振するとともに、無給電部19と第1および第2グランド用導体部26a,26b(第1および第2グランド用導体部26a,26bの第2内側縁42)とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10Bにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナ10Bは、高い利得を得ることができるのみならず、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能であり、1本のみで広帯域の電波を送受信可能なアンテナ10Bを作ることができる。
【0084】
図15は、アンテナ10Bの使用の一例を示す斜視図であり、図16は、図15の正面図である。図17は、図15の上面図である。図16,17では、縦方向を矢印Cで示し(図16のみ)、周り方向を矢印Dで示すとともに(図17のみ)、前後方向Eを矢印で示す(図17のみ)。また、図15,17では、前後方向前方を矢印E1で示し、前後方向後方を矢印E2で示す(図17のみ)。図16では、中心線S2を二点鎖線で示す。
【0085】
アンテナ10Bは、その使用の一例として電波反射材35を備えている。電波反射材35は、アンテナ10Bの後方に配置されている。電波反射材35は、導電性金属(アルミニウムや銅、メッキ等)から作られ、アンテナ10Bから発信された電波を反射する。電波反射材35は、図17,19に示すように、半円形に成形され、アンテナ10Bの周り方向へ円弧(正円)を画いている。アンテナ10Bでは、不平衡給電材11の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されている。電波反射材35は、その縦方向の長さ寸法がアンテナ10Bの不平衡給電材11(コネクタ34を含まず)と給電素子14との両者の軸方向の長さ寸法と略同一であり、アンテナ10Bの後面側の全域を取り囲んでいる。なお、電波反射材35は、半円形に限らず、その円周の長さを自由に設定することができる。
【0086】
このアンテナ10Bの使用例では、不平衡給電材11の軸線S1(図11参照)と電波反射材35を周り方向に二分する反射材35の中心線S2とが一致するとともに、給電材11の軸線S1が反射材35を正円としたときのその中心点S2に位置するように、電波反射材35に対してアンテナ10Bが配置されている。また、第1および第2共振用導体部20a,20bが中心線S2に対して面対称に配置され、第1および第2グランド用導体部26a,26bが中心線S2に対して面対称に配置されている。アンテナ10Bは、図15,17に矢印E1,E2で示すように、その後面側から前後方向後方へ発信された電波が電波反射材35によって反射され、反射された電波とその前面側から発信された電波とが前後方向前方へ向かって発信される。
【0087】
アンテナ10Bは、不平衡給電材11の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されているが、図17に示すように、不平衡給電材11の軸線S1と電波反射材35の中心線S2とを結ぶ移動線S3上を移動させることができる。それによって、アンテナ10Bの放射利得と共振周波数とを自由に微調整することができる。
【0088】
電波反射材35を備えたアンテナ10Bは、その使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナ10Bの後方へ発信された電波が電波反射材35によって反射され、その電波が前後方向前方へ発信されるから、アンテナ10Bから発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができるとともに、前後方向前方(所定の方向)から進入する電波をアンテナ10B全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナ10Bに前後方向前方(特定方向)への指向性を持たせることができる。
【0089】
不平衡給電材11の中心(第1導体15の中心)と電波反射材35の内周面との離間距離がλ/4に設定されたアンテナ10Bは、アンテナ10Bから発信された電波が効率よく電波反射材35に達し、その電波が反射材35によって反射されることで、アンテナ10Bから発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができる。また、前後方向前方(所定の方向)から進入して電波反射材35によって反射した電波が効率よくアンテナ10Bに達し、アンテナ10Bが電波を効率よく受信することができる。
【符号の説明】
【0090】
10A アンテナ
10B アンテナ
11 不平衡給電材
12 共振用導体
13 グランド用導体
14 給電素子
15 第1導体
16 第1絶縁体
17 第2導体
18 給電部
19 無給電部
20a 第1共振用導体部
20b 第2共振用導体部
21 第1内側縁
22 第2内側縁
23 外側縁
24 外端縁
25 固定部
26a 第1グランド用導体部
26b 第2グランド用導体部
27 第1支持部分
28 第2支持部分
30 第1内側縁
31 第2内側縁
32 外側縁
33 外端縁
35 電波反射材
L1 幅寸法
L2 離間寸法
L3 幅寸法
L4 離間寸法
L5 幅寸法
L6 離間寸法
L7 離間寸法
α1 傾斜角度
α2 傾斜角度
α3 傾斜角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、所定面積を有する板状に成型されて前記不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、所定面積を有する板状に成型されて前記共振用導体と一体となり、前記不平衡給電材の無給電部と共振するグランド用導体とを備え、
前記共振用導体が、前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記給電部に並行して前記不平衡給電材の軸方向前方へ延びる第1共振用導体部と、前記不平衡給電材を挟んで前記第1共振用導体部の反対側に位置し、前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記給電部に並行して前記軸方向前方へ延びる第2共振用導体部とから形成され、
前記グランド用導体が、前記不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された固定部と、前記固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記無給電部に並行して前記不平衡給電材の軸方向後方へ延びる第1グランド用導体部と、前記不平衡給電材を挟んで前記第1グランド用導体の反対側に位置し、前記固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記無給電部に並行して前記軸方向後方へ延びる第2グランド用導体部とから形成されていることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記第1共振用導体部の平面形状と前記第2共振用導体部の平面形状とが、前記不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、前記第1グランド用導体部の平面形状と前記第2グランド用導体部の平面形状とが、前記不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にある請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記第1および第2共振用導体部が、前記グランド用導体の側に位置して前記給電部から前記径方向外方へ延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記給電部に対向して前記軸方向前方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸方向前方へ延びる外側縁と、前記軸方向前方に位置して前記第2内側縁から前記外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、前記第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と前記給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記給電部に対して平行して延びている請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記第1および第2グランド用導体部が、前記共振用導体の側に位置して前記無給電部から前記径方向外方へ延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記無給電部に対向して前記軸方向後方へ延びる第2内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸方向後方へ延びる外側縁と、前記軸方向後方に位置して前記第2内側縁から前記外側縁に向かって径方向外方へ延びる外端縁とを有し、前記第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と前記無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記無給電部に対して平行して延びている請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記第1および第2共振用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が、2.5〜9mmの範囲にあり、前記第1および第2グランド用導体部の第2内側縁と外側縁との間の幅寸法が、2.5〜9mmの範囲にある請求項4に記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第1および第2共振用導体部が、前記グランド用導体の側に位置して前記給電部から前記径方向外方へ延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記給電部に対向して前記軸方向前方へ延びる第2内側縁と、前記第2内側縁から軸方向前方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸方向前方へ延びる外側縁とを有し、前記第1および第2共振用導体部では、それらの第2内側縁と前記給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記給電部に対して平行して延びている請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第1および第2グランド用導体部が、前記共振用導体の側に位置して前記無給電部から前記軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第1内側縁と、前記第1内側縁につながって前記無給電部に対して前記軸方向後方へ延びる第2内側縁と、前記第2内側縁から軸方向後方へ末広がりに傾斜して延びる第3内側縁と、それら内側縁の外側に位置して前記軸線方向後方へ延びる外側縁とを有し、前記第1および第2グランド用導体部では、それらの第2内側縁と前記無給電部との間の離間寸法が同一であり、それらの第2内側縁が前記無給電部に対して平行して延びている請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記不平衡給電材の軸線に対する前記第1および第2共振用導体部の第3内側縁の傾斜角度が、15〜60°の範囲にある請求項6または請求項7に記載のアンテナ。
【請求項9】
前記不平衡給電材の軸線に対する前記第1および第2グランド用導体部の第1内側縁の傾斜角度が、45〜80°の範囲にあり、前記軸線に対する前記第1および第2グランド用導体部の第3内側縁の傾斜角度が、30〜60°の範囲にある請求項7または請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記給電部の中心と前記第1および第2共振用導体部の第2内側縁との間の第1離間寸法が、2〜9mmの範囲にあり、前記無給電部の外周面と前記第1および第2グランド用導体部の第2内側縁との間の第2離間寸法が、3〜10mmの範囲にあり、前記第2離間寸法が、前記第1離間寸法と同一または該第1離間寸法よりも大きい請求項7ないし請求項9いずれかに記載のアンテナ。
【請求項11】
前記不平衡給電材が、第1導体と、前記第1導体の外周面を包被する絶縁体と、前記絶縁体の外周面を包被する第2導体とから作られ、前記不平衡給電材の給電部が、前記第1導体から形成され、前記不平衡給電材の無給電部が、前記第1および第2導体と前記絶縁体とから形成され、前記グランド用導体の固定部が、前記第2導体に電気的に接続されている請求項1ないし請求項10いずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記不平衡給電材の給電部を形成する第1導体には、所定面積を有して前記軸方向前方へ延びる給電素子が電気的に接続されている請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記アンテナが、その後方に配置されて該アンテナの周り方向へ延びる電波反射材を備え、前記アンテナでは、前記不平衡給電材の軸線と前記電波反射材を前記周り方向に二分する該電波反射材の中心線とが一致するとともに、前記第1および第2共振用導体部が前記中心線に対して面対称に配置され、前記第1および第2グランド用導体部が前記中心線に対して面対称に配置されている請求項1ないし請求項12いずれかに記載のアンテナ。
【請求項14】
前記電波反射材が、前記アンテナの後方を取り囲むように該アンテナの周り方向へ円弧を画いている請求項13に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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