説明

アンテナ

【課題】広い周波数帯域において電波を送受信することができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供する。
【解決手段】アンテナ10は、給電部17および無給電部18を有する不平衡給電材11と、給電部17と共振する共振用導体12と、無給電部18と共振するグラウンド用導体13とから形成されている。共振用導体12は、給電材11に電気的に接続された第1固定部19と、給電部11に並行して軸線方向前方へ延びる一対の第1自由部20とを有し、グラウンド用導体13は、給電材11に電気的に接続された第2固定部25と、無給電部18に並行して軸線方向後方へ延びる一対の第2自由部26とを有する。給電材11の給電部17は、共振用導体12の第1自由部20と並行する並行部分23と、共振用導体12の第1自由部20から軸線方向前方へ延出する延出部分24とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不平衡給電材と共振用導体およびグラウンド用導体とを備えたアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
所定長さの第1導波部と、第1導波部につながる所定長さの第2導波部とを備え、第1導波部が同軸ケーブルの芯線と芯線を包被する第1絶縁体とから形成され、第2導波部が同軸ケーブルの第2絶縁体に固定された第1導体管とその第1導体管に摺動可能に取り付けられた第2導体管とから形成されたアンテナがある(特許文献1参照)。このアンテナは、第1導体管に対して第2導体管をそれらの長さ方向へ移動させることで、通信周波数におけるアンテナの効率が高くなるように第2導波部の長さを調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−100921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1に開示のアンテナは、第2導体管をその長さ方向へ移動させることで、共振周波数を変えることができるが、その使用周波数帯域(比周波数帯域)がアンテナとして使用可能な周波数帯域のうちの10%程度をカバーしているに過ぎず、使用周波数帯域を広げることが難しく、広帯域(ワイドバンド)における使用ができない。また、このアンテナは、その使用周波数帯域を高い方へ移動させることができない。
【0005】
本発明の目的は、広い周波数帯域において電波を送受信することができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための本発明にかかるアンテナは、所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、不平衡給電材の無給電部と共振するグラウンド用導体とから形成され、共振用導体が、不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された第1固定部と、第1固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、給電部に並行して不平衡給電材の軸線方向前方へ延びる一対の第1自由部とを有し、グラウンド用導体が、不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された第2固定部と、第2固定部につながって不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、無給電部に並行して軸線方向後方へ延びる一対の第2自由部とを有し、不平衡給電材の給電部が、共振用導体の第1自由部と並行する並行部分と、並行部分につながって共振用導体の第1自由部から軸線方向前方へ延出する延出部分とを有する。
【0007】
本発明のアンテナの一例としては、共振用導体のそれら第1自由部が不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、グラウンド用導体のそれら第2自由部が不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にある。
【0008】
本発明のアンテナの他の一例としては、共振用導体のそれら第1自由部が、第1固定部につながって軸線方向と交差する方向へ延びる第1交差部分と、第1交差部分につながって不平衡給電材の給電部から径方向外方へ離間し、給電部に並行して軸線方向前方へ延びる第1離間部分とを有し、不平衡給電材の軸線に対する第1交差部分の傾斜角度が30〜90度の範囲にある。
【0009】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の給電部の中心と共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離が2〜8mmの範囲にある。
【0010】
本発明のアンテナの他の一例としては、グラウンド用導体のそれら第2自由部が、第2固定部につながって軸線方向と交差する方向へ延びる第2交差部分と、第2交差部分につながって不平衡給電材の無給電部から径方向外方へ離間し、無給電部に並行して軸線方向後方へ延びる第2離間部分とを有し、不平衡給電材の軸線に対する第2交差部分の傾斜角度が30〜60度の範囲にある。
【0011】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の無給電部の外周面とグラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が3.5〜10mmの範囲にある。
【0012】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の無給電部の外周面とグラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が不平衡給電材の給電部の中心と共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離よりも大きい。
【0013】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材が、第1導体と、第1導体の外周面を包被する第1絶縁体と、第1絶縁体の外周面を包被する第2導体と、第2導体の外周面を包被する第2絶縁体とのうちの少なくとも第1および第2導体と第1絶縁体とから作られ、不平衡給電材の給電部が第1導体と第1絶縁体とから形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と第1および第2絶縁体とのうちの少なくとも第1および第2導体と第1絶縁体とから形成されている。
【0014】
本発明のアンテナの他の一例として、不平衡給電材の給電部では、第1導体が第1絶縁体から軸線方向前方へ所定長さ露出している。
【0015】
本発明のアンテナの他の一例として、不平衡給電材の給電部の延出部分には、軸方向へ延びる所定長さの第3絶縁体が固定されている。
【0016】
本発明のアンテナの他の一例としては、アンテナがその後方に配置されてアンテナの周り方向へ延びる電波反射材を備え、アンテナでは、不平衡給電材の軸線と電波反射材を周り方向に二分する電波反射材の中心線とが一致するとともに、共振用導体のそれら第1自由部が中心線に対して面対称に配置され、グラウンド用導体のそれら第2自由部が中心線に対して面対称に配置されている。
【0017】
本発明のアンテナの他の一例としては、電波反射材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画いている。
【0018】
本発明のアンテナの他の一例としては、不平衡給電材の給電部の中心と電波反射材との離間距離がλ/4である。
【発明の効果】
【0019】
本発明にかかるアンテナは、給電部とそれに並行する共振用導体とが共振するとともに、無給電部とそれに並行するグラウンド用導体とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。アンテナは、給電部と並行する共振用導体の第1自由部の長さ寸法を自由に設定することができるとともに、無給電部と並行するグラウンド用導体管の第2自由部の長さ寸法を自由に設定することができるから、共振用導体の第1自由部の長さ寸法のみを変更することができ、グラウンド用導体の第2自由部の長さ寸法のみを変更することができることはもちろん、それら長さ寸法の両者を変更することができる。このアンテナは、共振用導体の第1自由部の長さ寸法とグラウンド用導体の第2自由部の長さ寸法とのうちの少なくとも一方の長さ寸法を変更することで、その使用周波数帯域を高い方と低い方とのいずれかへ移動させることができ、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。
【0020】
共振用導体のそれら第1自由部が不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、グラウンド用導体のそれら第2自由部が不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあるアンテナは、給電部と共振用導体のそれら第1自由部とが同帯域の複数の共振周波数で共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体のそれら第2自由部とが同帯域の複数の共振周波数で共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0021】
共振用導体のそれら第1自由部が軸線方向と交差する方向へ延びる第1交差部分と給電部から径方向外方へ離間して軸線方向前方へ延びる第1離間部分とを有し、不平衡給電材の軸線に対する第1交差部分の傾斜角度が30〜90度の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の軸線に対する第1交差部分の傾斜角度をその範囲にすることで、給電部と共振用導体とを確実に共振させることができる。アンテナは、給電部と共振用導体とが共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0022】
不平衡給電材の給電部の中心と共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離が2〜8mmの範囲にあるアンテナは、最大離間距離をその範囲にすることで、給電部と共振用導体との電波の反射効率が最適となり、給電部と共振用導体とを効率よく共振させることができる。アンテナは、給電部と共振用導体とが効率よく共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体とが効率よく共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0023】
グラウンド用導体のそれら第2自由部が軸線方向と交差する方向へ延びる第2交差部分と不平衡給電材の無給電部から前記径方向外方へ離間して軸線方向後方へ延びる第2離間部分とを有し、不平衡給電材の軸線に対する第2交差部分の傾斜角度が30〜60度の範囲にあるアンテナは、不平衡給電材の軸線に対する第2交差部分の傾斜角度をその範囲にすることで、無給電部とグラウンド用導体とを確実に共振させることができる。アンテナは、給電部と共振用導体とが共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体とが共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0024】
不平衡給電材の無給電部の外周面とグラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が3.5〜10mmの範囲にあるアンテナは、最大離間距離をその範囲にすることで、無給電部とグラウンド用導体との電波の反射効率が最適となり、無給電部とグラウンド用導体とを効率よく共振させることができる。アンテナは、給電部と共振用導体とが効率よく共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体とが効率よく共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0025】
不平衡給電材の無給電部の外周面とグラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が不平衡給電材の給電部の中心と共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離よりも大きいアンテナは、給電部と共振用導体との電波の反射効率や無給電部とグラウンド用導体との電波の反射効率が最適となり、給電部と共振用導体とを効率よく共振させることができるとともに、無給電部とグラウンド用導体とを効率よく共振させることができる。アンテナは、給電部と共振用導体とが効率よく共振するとともに、無給電部とグラウンド用導体とが効率よく共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を大幅に広げることができる。このアンテナは、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0026】
不平衡給電材の給電部が第1導体と第1絶縁体とから形成され、不平衡給電材の無給電部が第1および第2導体と第1および第2絶縁体とのうちの少なくとも第1および第2導体と第1絶縁体とから形成されたアンテナは、給電部とそれに並行する共振用導体とが確実に共振するとともに、無給電部とそれに並行するグラウンド用導体とが確実に共振することで、複数の共振周波数を得ることが可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を広げることができ、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができる。
【0027】
不平衡給電材の給電部において第1導体が第1絶縁体から軸線方向外方へ所定長さ露出するアンテナは、給電部と共振用導体との共振点を高い方へ移動させることができ、それによってアンテナの使用周波数帯域を高い方へ移動させることができる。アンテナは、給電部における第1導体の露出長さを変更することで、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。アンテナは、給電部とそれに並行する共振用導体とが確実に共振するとともに、無給電部とそれに並行するグラウンド用導体とが確実に共振することで、複数の共振周波数を得ることは可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を広げることができ、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができる。
【0028】
不平衡給電材の給電部の延出部分に軸方向へ延びる所定長さの第3絶縁体が固定されたアンテナは、使用周波数帯域内でVSWR(電圧定在波比)を低い周波数において最適化することができるとともに、給電部と共振用導体との共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。アンテナは、第1導体に固定する第3絶縁体の長さを変更することで、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。アンテナは、給電部とそれに並行する共振用導体とが確実に共振するとともに、無給電部とそれに並行するグラウンド用導体とが確実に共振することで、複数の共振周波数を得ることは可能であり、得られた複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナにおける使用周波数帯域を広げることができ、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができる。
【0029】
アンテナの後方に配置されてその周り方向へ延びる電波反射材を備え、不平衡給電材の軸線が電波反射材の中心線に一致するとともに、共振用導体のそれら第1自由部が中心線に対して対称に配置され、グラウンド用導体のそれら第2自由部が中心線に対して対称に配置されたアンテナは、アンテナにおける使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナから発信された電波が電波反射材によって反射されることで、アンテナから発信された電波のすべてを所定の方向へ発信することができるとともに、所定方向から進入する電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【0030】
電波反射材がアンテナの後方を取り囲むようにアンテナの周り方向へ円弧を画くアンテナは、アンテナの後方へ発信された電波が電波反射材によって確実に反射され、その電波がアンテナの前方へ発信されるから、アンテナから発信された電波のすべてをアンテナの前方へ発信することができるとともに、前方から進入する電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナに特定方向への指向性を持たせることができる。
【0031】
不平衡給電材の給電部の中心と電波反射材との離間距離がλ/4であるアンテナは、給電部の中心と電波反射材との離間距離がλ/4にすることで、アンテナから発信された電波が効率よく電波反射材に達し、その電波が反射材によって反射されることで、アンテナから発信された電波のすべてを所定の方向へ発信することができる。また、所定の方向から進入して電波反射材によって反射した電波が効率よくアンテナに達し、アンテナが電波を効率よく受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】一例として示すアンテナの斜視図。
【図2】図1の2−2線断面図。
【図3】アンテナの部分拡大図。
【図4】離間距離と使用周波数帯域との相関関係を示す図。
【図5】一例として示す給電部の斜視図。
【図6】VSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図。
【図7】アンテナのインピーダンスを示すスミスチャート。
【図8】アンテナの周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図9】アンテナの周り方向において計測した電波強度を示す図。
【図10】アンテナの使用の一例を示す斜視図。
【図11】図10の正面図。
【図12】図10の上面図。
【図13】他の一例として示す給電部の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
アンテナの一例を示す図1等の添付の図面を参照し、本発明にかかるアンテナの詳細を説明すると、以下のとおりである。なお、図2は、図1の2−2線矢視断面図であり、図3は、アンテナ10の部分拡大図である。図4は、離間距離と使用周波数帯域との相関関係を示す図である。図1では、軸線方向を矢印A、径方向を矢印Bで示すとともに、軸線方向前方を矢印A1で示し、軸線方向後方を矢印A2で示す。図3では、軸線S1(中心軸線)を点線で示す。アンテナ10は、不平衡給電材11(同軸ケーブルまたはセミリジットケーブル)と、共振用導体12およびグラウンド用導体13とから形成されている。
【0034】
不平衡給電材11は、図2に示すように、第1導体14(中心金属導体)と、第1導体14の外周面を包被する第1絶縁体15と、第1絶縁体15の外周面を包被する第2導体16(外側金属導体)とから作られ、軸線方向へ延びている。不平衡給電材11では、第1導体14の外周面と第1絶縁体15の内周面とが固着され、第1絶縁体15の外周面と第2導体16の内周面とが固着されている。
【0035】
不平衡給電材11は、略λ/4の長さに設定された給電部17と、給電部17につながる所定長さ(略λ/4+2)の無給電部18とを有する。給電部17は、第1導体14と第1絶縁体15とから形成され、軸線方向へ略直線状に延びている。無給電部18は、第1導体14と第1絶縁体15と第2導体16とから形成され、給電部17から軸線方向後方へ略直線状に延びている。
【0036】
なお、不平衡給電材11は、第1導体14や第1絶縁体15、第2導体16に加え、第2導体16の外周面を包被する第2絶縁体(図示せず)を備えていてもよい。この場合、第2導体16の外周面と第2絶縁体の内周面とが固着され、給電部17が第1導体14と第1絶縁体15とから形成されるとともに、無給電部18が第1導体14と第1絶縁体15と第2導体16と第2絶縁体とから形成される。第1導体14や第2導体16には、アルミニウムや銅等を使用することができ、第1絶縁体15や第2絶縁体には、熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するテフロン(登録商標)樹脂)を使用することができる。
【0037】
共振用導体12は、断面円形の軸線方向へ細長い線条であり、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、不平衡給電材11の給電部17と共振する。なお、共振用導体12は、軸線方向へ長い板状であってもよい。共振用導体12は、第1固定部19と、第1固定部19につながる一対の第1自由部20とを有する。第1固定部19は、不平衡給電材11(給電材11における給電部17と無給電部18との境界近傍に位置する無給電部18の第2導体16)に溶接(半田付け等)(固定手段)によって固定され、不平衡給電材11に電気的に接続されている。それら第1自由部20は、給電部17から不平衡給電材11の径方向外方へ離間するとともに、給電部17に並行して第1固定部19から不平衡給電材11の軸線方向前方へ延びている。
【0038】
共振用導体12のそれら第1自由部20は、第1固定部19につながって軸線方向と交差する方向へ延びる第1交差部分21と、第1交差部分21につながって給電部17から不平衡給電材11の径方向外方へ離間する第1離間部分22とを有する。図1〜図3において第1交差部分21は、第1固定部19から延びていて不平衡給電材11の軸線S1(図3参照)に対して末広がりに傾斜している(軸線方向前方へ向かって傾斜している)。第1離間部分22は、給電部17に並行(平行)して交差部分21から軸線方向前方へ延びている。なお、第1離間部分22は、給電部17に対して軸線方向前方へ末広がりに傾斜して延びていてもよい。不平衡給電材11の給電部17は、共振用導体12のそれら第1自由部20と並行して延びる並行部分23と、並行部分23につながって共振用導体12の第1自由部20から軸線方向前方へ延出する延出部分24とを有する。
【0039】
共振用導体12のそれら第1自由部20は、不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係にある。したがって、それら第1自由部20の断面形状が同一であり、それら第1自由部20の後記する軸線方向の長さL3が同一である。また、不平衡給電材11の軸線S1に対するそれら第1自由部20の第1交差部分21の傾斜角度α1が同一であり、不平衡給電材11の給電部17の中心(第1導体14の中心)とそれら第1自由部20の第1離間部分22との間の離間距離が同一である。
【0040】
グラウンド用導体13は、断面円形の軸線方向へ細長い線条であり、導電性金属(アルミニウムや銅等)から作られ、不平衡給電材10の無給電部18と共振する。なお、グラウンド用導体13は、軸線方向へ長い板状であってもよい。グラウンド用導体管13は、第2固定部25と、第2固定部25につながる一対の第2自由部26とを有する。第2固定部25は、不平衡給電材11(給電材11における給電部17と無給電部18との境界近傍に位置する無給電部18の第2導体16)に溶接(半田付け等)(固定手段)によって固定され、不平衡給電材11に電気的に接続されている。それら第2自由部26は、無給電部18から不平衡給電材11の径方向外方へ離間するとともに、無給電部18に並行して第2固定部25から不平衡給電材11の軸線方向後方へ延びている。
【0041】
グラウンド用導体13のそれら第2自由部26は、第2固定部につながって軸線方向と交差する方向へ延びる第2交差部分27と、第2交差部分27につながって無給電部18から不平衡給電材11の径方向外方へ離間する第2離間部分28とを有する。図1〜図3において第2交差部分27は、第2固定部25から延びていて不平衡給電材11の軸線S1に対して末広がりに傾斜している(軸線方向後方へ向かって傾斜している)。第2離間部分28は、無給電部18に並行して交差部分27から軸線方向後方へ延び、無給電部18に対して軸線方向後方へ末広がりに傾斜している。
【0042】
不平衡給電材11の無給電部18は、グラウンド用導体13のそれら第2自由部26と並行して延びる並行部分29と、並行部分29につながってグラウンド用導体13の第2自由部26から軸線方向後方へ延出する延出部分30とを有する。無給電部18の延出部分30の後端には、コネクタ31が取り付けられている。
【0043】
グラウンド用導体13のそれら第2自由部26は、不平衡給電材11の軸線S1に対して面対称の関係にある。したがって、それら第2自由部26の断面形状が同一であり、それら第2自由部26の後記する軸線方向の長さL4が同一である。また、不平衡給電材11の軸線S1に対するそれら第2自由部26の第2交差部分27の傾斜角度α2が同一であり、不平衡給電材11の無給電部18の外周面(第2導体16の外周面)とそれら第2自由部26の第2離間部分28との間の離間距離が同一である。
【0044】
アンテナ10では、不平衡給電材11の給電部17の中心(第1導体13の中心)と共振用導体12のそれら第1自由部20の第1離間部分22との間の最大離間距離L1(図3参照)が2〜8mmの範囲、好ましくは2〜3mmの範囲にある。最大離間距離L1が2mm未満では、不平衡給電材11の給電部17と共振用導体12との共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10において使用可能な周波数帯域を広げることができない。最大離間距離L1が8mmを超過すると、アンテナ10における使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10の周波数帯域を広げることができないのみならず、最大離間距離L1を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の給電部17と共振用導体12とを共振させることができない場合がある。
【0045】
アンテナ10は、図4に示すように、最大離間距離L1が略0.2mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、最大離間距離L1が略8mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、最大離間距離L1がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10の使用周波数帯域は略一定となる。アンテナ10は、最大離間距離L1を2〜8mmの範囲、好ましくは2〜3mmの範囲にすることで、共振用導体12と給電部17との電波の反射効率が最適となり、共振用導体11と給電部17とを効率よく共振させることができる。
【0046】
アンテナ10では、不平衡給電材11の軸線S1に対する第1交差部分21の傾斜角度α1(図3参照)が30〜90度の範囲にある、傾斜角度α1が30度未満または90度を超過すると、不平衡給電材11の給電部17と共振用導体12との共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10において使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10は、傾斜角度α1を30〜90度の範囲にすることで、共振用導体11と給電部17との電波の反射効率が最適となり、共振用導体11と給電部17とを効率よく共振させることができる。
【0047】
アンテナ10では、不平衡給電材11の無給電部18の外周面(第2導体16の外周面)とグラウンド用導体13のそれら第2自由部26の第2離間部分28との間の最大離間距離L2(図3参照)が3.5〜10mmの範囲にある。なお、最も好ましい最大離間距離L2は、4mmである。なお、アンテナ10では、最大離間距離L2が最大離間距離L1よりも大きい。
【0048】
最大離間距離L2が3.5mm未満では、不平衡給電材11の無給電部18とグラウンド用導体13との共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10において使用可能な周波数帯域を広げることができない。最大離間距離L2が10mmを超過すると、アンテナ10における使用可能な周波数帯域が最も広い状態で飽和し、それ以上アンテナ10の周波数帯域を広げることができないのみならず、最大離間距離L2を大きくし過ぎると、不平衡給電材11の無給電部18とグラウンド用導体13とを共振させることができない場合がある。
【0049】
アンテナ10は、図4に示すように、離間距離L2が略0.2mm(a点)から大きくなるにつれて使用周波数帯域が急勾配に広がり、離間距離L2が略10mm(b点)で使用周波数帯域が最も広い状態となり、離間距離L2がそれ以上大きくなったとしても、アンテナ10の使用周波数帯域は略一定となる。アンテナ10は、最大離間距離L2を3.5〜10mmの範囲、最も好ましくは4mmにすることで、グラウンド用導体13と無給電部18との電波の反射効率が最適となり、グラウンド用導体13と無給電部18とを効率よく共振させることができる。
【0050】
アンテナ10では、不平衡給電材11の軸線S1に対する第2交差部分27の傾斜角度α2(図3参照)が30〜60度の範囲にある。傾斜角度α2が30度未満または60度を超過すると、不平衡給電材11の無給電部18とグラウンド用導体13との共振が不十分になり、複数の共振周波数を得ることができず、アンテナ10において使用可能な周波数帯域を広げることができない。アンテナ10は、傾斜角度α2を30〜60度の範囲にすることで、グラウンド用導体13と無給電部18との電波の反射効率が最適となり、グラウンド用導体13と無給電部18とを効率よく共振させることができる。
【0051】
アンテナ10は、最大離間距離L1,L2が前記範囲にあり、給電部17とそれに並行する共振用導体12とが確実に共振するとともに、無給電部18とそれに並行するグラウンド用導体13とが確実に共振することで、複数の共振周波数を得ることは可能であり、それによって複数の共振周波数が一方向へ連続して隣り合うとともにそれら共振周波数の一部が重なり合うから、アンテナ10における使用周波数帯域を大幅に広げることができる。アンテナ10は、それが使用可能な周波数帯域のうちのすべての帯域において電波を送信または受信することができ、広帯域(ワイドバンド)における使用が可能である。
【0052】
アンテナ10は、不平衡給電材11の給電部17に対する共振用導体12のそれら第1自由部20の軸方向の長さL3(図2参照)や不平衡給電材11の無給電部18に対するグラウンド用導体13のそれら第2自由部26の軸方向の長さL4(図2参照)を自由に設定することができる。アンテナ10では、給電部17に対するそれら第1自由部20の長さL3のみを変更することができ、無給電部18に対するそれら第2自由部26の長さL4のみを変更することができることはもちろん、それら長さL3,L4の両者を変更することができる。
【0053】
給電部17に対するそれら第1自由部20の長さL3の変更には、共振用導体12の第1自由部20の長さを変更する場合、不平衡給電材11に対する共振用導体12の第1固定部19の固定位置を軸線方向前方または後方へ移動させる場合、または、それらの両者を併用する場合がある。無給電部18に対するそれら第2自由部26の長さL4の変更には、グラウンド用導体13の第2自由部26の長さを変更する場合、不平衡給電材11に対するグラウンド用導体13の第2固定部25の固定位置を軸線方向前方または後方へ移動させる場合、または、それらの両者を併用する場合がある。
【0054】
アンテナ10は、給電部17に対するそれら第1自由部20の長さL3と無給電部18に対するそれら第2自由部26の長さL4とのうちの少なくとも一方の長さL3,L4を変更することで、その使用周波数帯域を高い方と低い方とへ自由に移動させることができる。たとえば、長さL3を図示のそれよりも長くすると、給電部17と共振用導体12との共振点が高い方へ移動し、それによってアンテナ10の使用周波数帯域を高い方へ移動させることができる。逆に長さ寸法L3を図示のそれよりも短くすると、給電部17と共振用導体12との共振の波長が長くなり、アンテナ10の使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。また、長さL4を図示のそれよりも長くすると、無給電部18とグラウンド用導体13との共振波長が長くなり、アンテナ10の使用周波数帯域を低い方へ移動させることができる。逆に長さL4を図示のそれよりも短くすると、無給電部18とグラウンド用導体13との共振点が高い方へ移動し、それによってアンテナ10の使用周波数帯域を高い方へ移動させることができる。
【0055】
図5は、一例として示す給電部17の斜視図である。図5では、給電部17および共振用導体12の一部のみを示し、その他の図示を省略している。給電部17のうちの共振用導体12から軸線方向前方へ延出する延出部分24は、第1導体14のみから形成された前方部位32と、第1導体14と第1絶縁体15とから形成され後方部位33とを有する。ゆえに、給電部17の延出部分24では、第1導体14が第1絶縁体15から軸線方向前方へ所定長さ露出している。なお、この給電部17を有するアンテナ10のその他の構成は図1のアンテナ10のそれらと同一であるから、図1のアンテナ10の説明を援用することで、このアンテナ10のその他の構成の説明は省略する。
【0056】
図5の給電部17を有するアンテナ10は、給電部17の全体が第1導体14と第1絶縁体15とから形成された場合と比較し、給電部17と共振用導体12との共振点が高い方へ移動する。なお、給電部17における第1導体14の露出長さL5を大きくすると、共振点の高位への移動を大きくすることができ、給電部17における第1導体14の露出長さL5を短くすると、共振点の高位への移動を小さくすることができる。
【0057】
この給電部17を有するアンテナ10は、図1に示すアンテナ10が有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10は、給電部17において第1導体14を第1絶縁体15から所定長さ露出させることで、共振点を微細に高い方へ移動させることができ、それによってアンテナ10の使用周波数帯域を高い方へ移動させることができる。アンテナ10は、給電部17における第1導体14の露出長さL5を変更することで、使用周波数帯域の高低を自由に微調整することができる。
【0058】
図6は、VSWR(電圧定在波比)と使用帯域との相関関係を示す図であり、図7は、アンテナのインピーダンスを示すスミスチャートである。図8,9は、アンテナの3平面(XY面、YZ面、ZX面)の周り方向において計測した電波強度を示す図である。図8は、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示し、図9は、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度の計測結果を示す。
【0059】
アンテナ10は、図6に示すように、使用周波数が約2.0GHz〜約4.0GHzにおいて反射係数VSWR(電圧定在波比)が2以下であり、低いVSWR(電圧定在波比)を維持した状態で、広い使用周波数帯域を持っていることが分かる。また、図7に示すように、アンテナ10のインピーダンスが50Ωであり、図8に示すように、XY面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度が略真円を画き、図9に示すように、YZ面またはZX面アンテナ特性の周り方向(0°〜360°)の電波強度がバタフライ型を画いており、アンテナ10が良好な無指向性を有していることが分かる。
【0060】
図10は、アンテナの使用の一例を示す斜視図であり、図11は、図10の正面図である。図12は、図10の上面図である。図11,12では、縦方向を矢印Cで示し(図11のみ)、周り方向を矢印Dで示すとともに(図12のみ)、前後方向Eを矢印で示す(図12のみ)。また、図10,12では、前後方向前方を矢印E1で示し、前後方向後方を矢印E2で示す(図12のみ)。図11では、中心線S2を一点鎖線で示す。
【0061】
アンテナ10は、その使用例として電波反射材34を備えている。電波反射材34は、アンテナ10の後方に配置されている。電波反射材34は、導電性金属(アルミニウムや銅、メッキ等)から作られ、アンテナ10から発信された電波を反射する。電波反射材34は、図10,12に示すように、半円形に成形され、アンテナ10の周り方向へ円弧(正円)を画いている。アンテナ10では、不平衡給電材11の給電部17の中心と電波反射材34との離間距離L5がλ/4に設定されている。
【0062】
電波反射材34は、その縦方向の長さがアンテナ10の不平衡給電材11(コネクタ31は含まない)の軸方向の長さと略同一であり、アンテナ10の後面側の全域を取り囲んでいる。なお、電波反射材34は、半円形に限らず、その円周の長さを自由に設定することができる。また、アンテナ10を取り囲むようにその周り方向へ延びていればよく、必ずしも正円を画く必要はなく、半楕円形やV形であってもよい。
【0063】
このアンテナ10の使用例では、不平衡給電材11の軸線S1(図3参照)と電波反射材34を周り方向に二分する反射材34の中心線S2とが一致するとともに、給電材11の軸線S1が反射材34を正円としたときのその中心点に位置するように、電波反射材34に対してアンテナ10が配置されている。また、共振用導体12のそれら第1自由部20が中心線S2に対して面対称に配置され、グラウンド用導体12のそれら第2自由部26が中心線S2に対して面対称に配置されている。アンテナ10は、図12に矢印E1,E2で示すように、その後面側から前後方向後方へ発信された電波が電波反射材34によって反射され、反射された電波とその前面側から発信された電波とが前後方向前方へ向かって発信される。
【0064】
アンテナ10は、離間距離L5がλ/4に設定されているが、図12に示すように、不平衡給電材11の軸線S1と電波反射材34の中心線S2とを結ぶ移動線S3上を移動させることができる。それによって、アンテナ10の放射利得と共振周波数とを自由に微調整することができる。
【0065】
このアンテナ10は、その使用周波数帯域を広げることができることはもちろん、アンテナ10の後方へ発信された電波が電波反射材34によって反射され、その電波が前後方向前方へ発信されるから、アンテナ10から発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができるとともに、前後方向前方(所定の方向)から進入する電波をアンテナ全体で受信することができ、広い使用周波数帯域を有するアンテナ10に前後方向前方(特定方向)への指向性を持たせることができる。
【0066】
離間距離L5がλ/4に設定されたアンテナ10は、アンテナ10から発信された電波が効率よく電波反射材34に達し、その電波が反射材34によって反射されることで、アンテナ10から発信された電波のすべてを前後方向前方(所定の方向)へ発信することができる。また、前後方向前方(所定の方向)から進入して電波反射材34によって反射した電波が効率よくアンテナ10に達し、アンテナ10が電波を効率よく受信することができる。
【0067】
図13は、他の一例として示す給電部17の斜視図である。図13では、給電部17および共振用導体12の一部のみを示し、その他の図示を省略している。不平衡給電材11の給電部17の延出部分24には、軸方向へ延びる所定長さの第3絶縁体35が固定されている。第3絶縁体35は、不平衡給電材11と同様に、その断面形状が円形に成型されているが、断面形状は円形に限定されず、四角形や多角形等であってもよい。第3絶縁体35には、熱可塑性合成樹脂(特にプラスチック系の誘電率を有するテフロン(登録商標)樹脂)を使用することができる。なお、第3絶縁体35が固定されたアンテナ10のその他の構成は図1のアンテナ10のそれらと同一であるから、図1のアンテナ10の説明を援用することで、このアンテナ10のその他の構成の説明は省略する。
【0068】
給電部17の延出部分24に図13の第3絶縁体35が固定されたアンテナ10は、それが取り付けられていない場合と比較し、給電部17と共振用導体12との共振波長が長くなる。なお、延出部分24に固定する第3絶縁体35の長さL6を大きくすると、共振波長の長さをより長くすることができ、延出部分24に固定する第3絶縁体35の長さL6を短くすると、共振波長の長さを短くすることができる。逆に、第3絶縁体35の長さL6を長くすると、共振波長の長さを長くすることができる。
【0069】
第3絶縁体35が固定されたアンテナ10は、図1のアンテナ10が有する効果に加え、以下の効果を有する。アンテナ10は、給電部17の延出部分24に第3絶縁体35を固定することで、給電部17と共振用導体12との共振波長を長くすることができ、それによって使用周波数帯域内において低い周波数部分のVSWRを最適化することができる。アンテナ10は、第3絶縁体35の長さL6を変更することで、使用周波数帯域のVSWRを自由に微調整することができる。
【符号の説明】
【0070】
10 アンテナ
11 不平衡給電材
12 共振用導体
13 グラウンド用導体
14 第1導体
15 第1絶縁体
16 第2導体
17 給電部
18 無給電部
19 第1固定部
20 第1自由部
21 第1交差部分
22 第1離間部分
23 並行部分
24 延出部分
25 第2固定部
26 第2自由部
27 第2交差部分
28 第2離間部分
29 並行部分
30 延出部分
34 電波反射材
35 第3絶縁体
L1 最大離間距離
L2 最大離間距離
L3 長さ
L4 長さ
L5 露出長さ
L6 長さ
α1 傾斜角度
α2 傾斜角度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定長さの給電部およびその給電部につながる所定長さの無給電部を有する不平衡給電材と、前記不平衡給電材の給電部と共振する共振用導体と、前記不平衡給電材の無給電部と共振するグラウンド用導体とから形成され、
前記共振用導体が、前記不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された第1固定部と、前記第1固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記給電部に並行して前記不平衡給電材の軸線方向前方へ延びる一対の第1自由部とを有し、前記グラウンド用導体が、前記不平衡給電材に固定手段を介して電気的に接続された第2固定部と、前記第2固定部につながって前記不平衡給電材の径方向外方へ離間するとともに、前記無給電部に並行して前記軸線方向後方へ延びる一対の第2自由部とを有し、前記不平衡給電材の給電部が、前記共振用導体の第1自由部と並行する並行部分と、前記並行部分につながって前記共振用導体の第1自由部から前記軸線方向前方へ延出する延出部分とを有することを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記共振用導体のそれら第1自由部が、前記不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にあり、前記グラウンド用導体のそれら第2自由部が、前記不平衡給電材の軸線に対して面対称の関係にある請求項1に記載のアンテナ。
【請求項3】
前記共振用導体のそれら第1自由部が、前記第1固定部につながって前記軸線方向と交差する方向へ延びる第1交差部分と、前記第1交差部分につながって前記不平衡給電材の給電部から前記径方向外方へ離間し、前記給電部に並行して前記軸線方向前方へ延びる第1離間部分とを有し、前記不平衡給電材の軸線に対する前記第1交差部分の傾斜角度が、30〜90度の範囲にある請求項1または請求項2に記載のアンテナ。
【請求項4】
前記不平衡給電材の給電部の中心と前記共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離が、2〜8mmの範囲にある請求項3に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記グラウンド用導体のそれら第2自由部が、前記第2固定部につながって前記軸線方向と交差する方向へ延びる第2交差部分と、前記第2交差部分につながって前記不平衡給電材の無給電部から前記径方向外方へ離間し、前記無給電部に並行して前記軸線方向後方へ延びる第2離間部分とを有し、前記不平衡給電材の軸線に対する前記第2交差部分の傾斜角度が、30〜60度の範囲にある請求項1ないし請求項4いずれかに記載のアンテナ。
【請求項6】
前記不平衡給電材の無給電部の外周面と前記グラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が、3.5〜10mmの範囲にある請求項5に記載のアンテナ。
【請求項7】
前記不平衡給電材の無給電部の外周面と前記グラウンド用導体のそれら第2自由部の第2離間部分との間の最大離間距離が、前記不平衡給電材の給電部の中心と前記共振用導体のそれら第1自由部の第1離間部分との間の最大離間距離よりも大きい請求項6に記載のアンテナ。
【請求項8】
前記不平衡給電材が、第1導体と、前記第1導体の外周面を包被する第1絶縁体と、前記第1絶縁体の外周面を包被する第2導体と、前記第2導体の外周面を包被する第2絶縁体とのうちの少なくとも第1および第2導体と第1絶縁体とから作られ、前記不平衡給電材の給電部が、前記第1導体と前記第1絶縁体とから形成され、前記不平衡給電材の無給電部が、前記第1および第2導体と前記第1および第2絶縁体とのうちの少なくとも第1および第2導体と第1絶縁体とから形成されている請求項1ないし請求項7いずれかに記載のアンテナ。
【請求項9】
前記不平衡給電材の給電部では、前記第1導体が前記第1絶縁体から前記軸線方向前方へ所定長さ露出している請求項8に記載のアンテナ。
【請求項10】
前記不平衡給電材の給電部の延出部分には、前記軸方向へ延びる所定長さの第3絶縁体が固定されている請求項1ないし請求項9いずれかに記載のアンテナ。
【請求項11】
前記アンテナが、その後方に配置されて該アンテナの周り方向へ延びる電波反射材を備え、前記アンテナでは、前記不平衡給電材の軸線と前記電波反射材を前記周り方向に二分する該電波反射材の中心線とが一致するとともに、前記共振用導体のそれら第1自由部が前記中心線に対して面対称に配置され、前記グラウンド用導体のそれら第2自由部が前記中心線に対して面対称に配置されている請求項1ないし請求項10いずれかに記載のアンテナ。
【請求項12】
前記電波反射材が、前記アンテナの後方を取り囲むように該アンテナの周り方向へ円弧を画いている請求項11に記載のアンテナ。
【請求項13】
前記不平衡給電材の給電部の中心と前記電波反射材との離間距離が、λ/4である請求項11または請求項12に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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