説明

アンテナ

【課題】強度を向上しつつ施工性を良くして、安定的な無指向性を実現することができるアンテナを提供する。
【解決手段】STA1は、支柱と、該支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備えている。支柱は、幅方向の外寸がほぼ等しい複数の中空柱21,31,41,51,61,71を、略鉛直方向に連結して構成されている。そして一の中空柱の板厚は、該一の中空柱の上方に配置される他の中空柱の板厚よりも大きくなるように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアンテナに関し、特に、放送や通信の電波の送信に使用されるスーパーターンスタイルアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン放送やFM放送等の電波を送信するアンテナとして、スーパーターンスタイルアンテナ(STA)が我が国を含む世界各国で使用されている。
【0003】
このSTAは、例えばモノポールからなるバットウイングアンテナ素子4基を、中心柱を中心として互いに直角に取り付けて90°の位相差で給電し、水平偏波の無指向性を実現するものである。
【0004】
図13は、従来のスーパーターンスタイルアンテナの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【0005】
図13(a)及び図13(b)において、スーパーターンスタイルアンテナ151は、鉄製の中心柱153に設置されており、中心柱133を中心として、90°ずつ離れた角度で4基1組のバットウィング素子122a〜122dが多段で取り付けられている(特許文献1)。
【0006】
また、図14に示すように、他の従来のスーパーターンスタイルアンテナ161では、外径の異なる複数の円形アンテナ支柱162を、外径の大きい順に積み重ねて溶接して1本のモノポールを作製し、各アンテナ支柱の外周面の4箇所にバットウィング素子163が取り付けられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−151946号公報
【特許文献2】特開平8−222923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような円柱型モノポールアンテナは、通常、平板を曲げ加工によって筒状に成形することによって作製されるが、アンテナの断面形状を真円とするのは難しく、加工性(施工性)が悪いという問題がある。一方、断面形状が真円から歪んだ円であると、円柱の外周近傍に形成される電界が一様とならず、安定的な無指向性を実現することができない。
【0009】
また、複数の円柱を外径の大きい順に積み重ねてモノポールアンテナを構成した場合、隣接する円柱の端面同士の重なり部分が少ないため、溶接面を十分に確保することができず、所望の機械的強度が得られないという問題がある。この問題を解消するために円柱の径を大きくしてモノポールアンテナの強度を高めることが考えられるが、円柱の径を大きくすると必然的にバットウィング素子同士が離れるため、放射パターンの無指向性が崩れてしまう。
【0010】
特に、我が国においては地震の発生頻度が高いこと、あるいは建物の更なる高層化に伴ってSTAをより高所に設置する可能性があることから、更に強度を向上させたSTAが切望されている。
【0011】
本発明の目的は、強度を向上しつつ施工性を良くして、安定的な無指向性を実現することができるアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明のアンテナは、支柱と、前記支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備えるアンテナであって、前記支柱は、断面略多角形の中空柱で構成されることを特徴とする。
【0013】
また、前記支柱は、幅方向外寸がほぼ等しい複数の中空柱を、略鉛直方向に連結して構成されており、一の中空柱の板厚が、該一の中空柱の上方に配置される他の中空柱の板厚よりも大きい。
【0014】
また、本発明のアンテナは、前記支柱の長手方向に沿って当該支柱の表面に取り付けられ、前記複数のバットスタイルアンテナ素子にそれぞれ給電する複数の給電線を更に備え、前記複数の給電線は、前記支柱の中心軸線に関してほぼ4回回転対称に配置される。
【0015】
さらに、本発明のアンテナは、前記給電線を前記支柱の表面に固定する略コの字型の給電線固定具を更に備え、前記給電線固定具は、前記支柱における一の平面に略水平方向に並べて取り付けられる一対の脚部と、前記一対の脚部に設けられる橋部とを有している。そして、前記脚部は前記一の平面と当接する平坦な底面を有している。
【0016】
また、好ましくは、前記支柱は断面略四角形の中空柱であり、前記バットスタイルアンテナ素子は、前記中空柱断面における各辺の略中央に配置される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のバットスタイルアンテナ素子が、支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され且つ多段で設けられ、支柱が断面略多角形の中空柱で構成されている。したがって、所定幅を有する複数の平板を溶接等で接合して多角柱を作製すれば、曲げ加工を施す必要がなくなり、施工性を向上しつつ寸法精度の高い多角柱を提供することができる。また、高い寸法精度を実現できることから、多角柱の外周近傍に一様な電界が形成され、水平偏波の安定的な無指向性を実現することができる。さらに、同一幅、同一板厚の円柱と多角柱を比較した場合、多角柱の周長が円柱の周長より大きくなることから、中空柱の機械的強度を向上させることができる。
【0018】
また支柱は、幅方向の外寸がほぼ等しい複数の中空柱を、略鉛直方向に連結して構成され、一の中空柱の板厚が、該一の中空柱の上方に配置される他の中空柱の板厚よりも大きくなるように設計されている。したがって、隣接する中空柱の端面同士の重なり部分が多くなり、溶接面を十分に確保することが可能となるので、機械的強度を更に向上させることができる。
【0019】
さらに、複数の給電線は、支柱の中心軸線に関してほぼ4回回転対称に配置されるので、複数の給電線の水平方向における対称性を実現することができ、水平偏波の無指向性を向上することができる。
【0020】
加えて、給電線固定具を構成する脚部が一の平面と当接する平坦な底面を有するので、脚部の底面を所定曲率の曲面に形成する必要がなく、給電線を支柱に固定する際の施工性を格段に向上することが可能となる。
【0021】
また、バットスタイルアンテナ素子が中空柱断面における各辺の略中央に配置されるので、アンテナ素子を確実に固定することができると共に、水平偏波の無指向性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態に係るスーパーターンスタイルアンテナ(STA)の構成を概略的に示す斜視図である。
【図2】図1における支持柱の構成を示す鉛直方向の部分断面図である。
【図3】図1における各バットスタイルアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。
【図4】図1のSTAの水平方向の断面図であり、(a)〜(d)はそれぞれI−I断面、II−II断面、III−III断面、IV−IV断面を示す。
【図5】図1のSTAの水平方向の断面図であり、(a)〜(c)はそれぞれV−V断面、VI−VI断面、VII−VII断面を示す。
【図6】図5における給電線固定具の構成を示す拡大図であり、(a)は1本固定用の給電線固定具、(b)は2本固定用の給電線固定具、(c)は3本固定用の給電線固定具を示す。
【図7】図1のSTAの電圧定在波比(VSWR)特性を示すグラフである。
【図8】f=80.5MHzにおけるSTAの水平偏波の指向性を示す図である。
【図9】f=90MHzにおけるSTAの水平偏波の指向性を示す図である。
【図10】f=99MHzにおけるSTAの水平偏波の指向性を示す図である。
【図11】f=108MHzにおけるSTAの水平偏波の指向性を示す図である。
【図12】図1における支持柱の変形例を示す図である。
【図13】従来のSTAの一例を示す図であり、(a)は平面図、(b)は側面図を示す。
【図14】従来のSTAの他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明の実施形態に係るアンテナの構成を概略的に示す斜視図である。
【0025】
図1に示すように、スーパーターンスタイルアンテナ(STA)1は、鉄塔8の上部に配置された支柱と、該支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備えている。本実施形態のSTA1は、アンテナユニット2〜7を基本単位としてこれらユニットを略鉛直方向に一列に並べて連結することで構成されている。
【0026】
アンテナユニット2は、支柱の一部を構成する断面略四角形の中空柱21と、該中空柱の長手方向に沿って配置された4基のバットスタイルアンテナ素子22と、バットスタイルアンテナ素子22を固定する上下一対のブラケット23,23と、中空柱21の長手方向に沿って当該中空柱の表面に取り付けられ、4基のバットスタイルアンテナ素子22にそれぞれ給電する複数の給電線24とを有している。
【0027】
バットスタイルアンテナ素子22は、水平方向及び鉛直方向に配される複数の丸棒部材を溶接等で接合することで構成されており、中空柱21の断面における各辺の略中央に配置されている。この配置によって、アンテナ素子が確実に固定されると共に、水平偏波の無指向性が実現される。
【0028】
給電線24は、隣り合うバットスタイルアンテナ素子22に対して90°の位相差となるように各アンテナ素子に電力を供給している。これにより水平偏波のバランスが保たれている。本実施形態では、1つのアンテナユニット2に対して、4基のバットスタイルアンテナ素子22に対応する4つの給電線24が配設されている。
【0029】
アンテナユニット3〜7の構成は、アンテナユニット2の構成と基本的に同じであるので、以下に異なる部分を説明する。
【0030】
図2は、図1における支柱の構成を示す鉛直方向の部分断面図である。尚、図2では説明を容易にするために各中空柱の板厚を大きく異ならせて表しているが、本発明における各中空柱の板厚は図2の形態に限られないものとする。
【0031】
図2において、支柱は、幅方向の外寸がほぼ等しい複数の中空柱21,31,41,・・・を、略鉛直方向に連結して構成されている。隣接する2つの中空柱は、例えば溶接にて接合されている。
【0032】
そして、一の中空柱の板厚は、該一の中空柱の上方に配置される他の中空柱の板厚よりも大きくなるように設計されている。例えば、中空柱41の板厚Cは中空柱31の板厚Bよりも大きく、中空柱31の板厚Bは中空柱21の板厚Aよりも大きい(A<B<C)。換言すれば、中空柱21,31,41,・・・は、その幅方向の外寸が等しいものであり、かつ、幅方向の内寸が小さい順に積み重ねられている。本構成によれば、隣接する中空柱の端面同士の重なり部分が多くなり、溶接面Xを十分に確保することが可能となる。
【0033】
図3は、図1における各バットスタイルアンテナ素子に電力を供給する給電線の経路を示す側面図である。なお、図3はSTA1を西側から見た図である。
【0034】
給電線24,34,44,54,64,74は、それぞれ支柱の長手方向に沿って当該支柱の表面に取り付けられ、各給電線の一端がバットスタイルアンテナ素子に、他端が外部経路に接続されている。そして、上側3段のアンテナユニットにおける給電線24,34,44は、中空柱21の水平方向外側から内側に向かって並列して順に配置されている。本配置により各給電線が交差することが無く、また給電線の布設作業性が向上する。
【0035】
給電線54,64,74は、西側のバットスタイルアンテナ素子52,62,72に関して給電線24,34,44の反対側に配置されている。そして、給電線54,64,74は、中空柱21の水平方向外側から内側に向かって並列して順に配置されている。
【0036】
図4は、図3のスーパーターンスタイルアンテナ1の水平方向の断面図であり、図4(a)〜図4(d)は、それぞれI−I断面、II−II断面、III−III断面、IV−IV断面を示す。また、図5(a)〜図5(c)は、それぞれV−V断面、VI−VI断面、VII−VII断面を示す。尚、図5及び図6の平面視において、前方側を北側正極、手前側を南側負極、左側を西側正極、右側を東側負極とする。
【0037】
アンテナユニット2において(図4(a))、中空柱21の外表面にはブラケット23を固定するアンテナ素子取付用コマ25が取り付けられている。そしてブラケット23の一端がアンテナ素子取付用コマ25に固定され、他端がバットスタイルアンテナ素子22に固定されている。
【0038】
そして本実施形態では、アンテナ素子取付用コマ25及びバットスタイルアンテナ素子22にはそれぞれ水平方向に形成された貫通孔(不図示)が設けられている。また、ブラケット23の一端にはアンテナ素子取付用コマ25の貫通孔に対応する他の貫通孔(不図示)が設けられ、他端にはバットスタイルアンテナ素子22の貫通孔に対応する他の貫通孔(不図示)が設けられている。これら貫通孔にそれぞれボルト26,27が挿通されることで、ブラケット23の一端がバットスタイルアンテナ素子22に接合され、他端がアンテナ素子取付用コマ25に接合される。
【0039】
また、バットスタイルアンテナ素子22にはジャンパ線28の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ29を介して給電線24に接続されている(図4(b))。本構成により、所定の電力がジャンパ線28を介してバットスタイルアンテナ素子22に供給されている。
【0040】
アンテナユニット3には、給電線24を中空柱31の表面に固定する給電線固定具35が設けられており、本実施形態では、4つの給電線固定具35が中空柱31の中心軸線に関して4回回転対称に配置されている(図4(c))。また、バットスタイルアンテナ素子32にはジャンパ線38の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ39を介して給電線34に接続されている。
【0041】
次に、アンテナユニット4には、給電線24,34を中空柱41の表面に固定する給電線固定具45が設けられている。本実施形態では、4つの給電線固定具45が中空柱41の中心軸線に関して4回回転対称に配置されている(図4(d))。また、バットスタイルアンテナ素子42にはジャンパ線48の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ49を介して給電線44に接続されている。
【0042】
また、図5(a)に示すように、アンテナユニット5には、給電線24,34,44を中空柱51の表面に固定する給電線固定具55が設けられている。本実施形態では、4つの給電線固定具55が中空柱51の中心軸線に関して4回回転対称に配置されている。バットスタイルアンテナ素子52にはジャンパ線58の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ49を介して給電線54に接続されている。
【0043】
アンテナユニット6には、給電線24,34,44を中空柱61の表面に固定する給電線固定具65と、給電線固定具65が取り付けられた表面と同一表面に給電線54を固定する給電線固定具66とが設けられている(図5(b))。本実施形態では、4つの給電線固定具65が中空柱61の中心軸線に関して4回回転対称に配置されており、さらに、4つの給電線固定具66が中空柱61の中心軸線に関して4回回転対称に配置されている。バットスタイルアンテナ素子62にはジャンパ線68の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ69を介して給電線64に接続されている。
【0044】
次いでアンテナユニット7には、給電線24,34,44を中空柱71の表面に固定する給電線固定具75と、給電線固定具75が取り付けられた表面と同一表面に給電線54,64を固定する給電線固定具76とが設けられている(図5(c))。本実施形態では、4つの給電線固定具75が中空柱71の中心軸線に関して4回回転対称に配置されており、さらに、4つの給電線固定具76が中空柱71の中心軸線に関して4回回転対称に配置されている。また、バットスタイルアンテナ素子72にはジャンパ線78の一端が接続されており、他端がジャンパ取付用コマ79を介して給電線74に接続されている。
【0045】
このように、アンテナユニット2〜7では、自身のユニットより上方に位置するユニットへの給電線の全てを給電線固定具で固定する構成となっている。そして、一のアンテナユニットの給電線固定具は、STA1の投影面において他のアンテナユニットの給電線固定具とほぼ同一位置に配置されている。
【0046】
給電線固定具35,45,55,65,75が上記のように配置されると、給電線24,34,44,54,64,74は、支柱のいずれの高さにおいても該支柱の中心軸線に関して4回回転対称に配置されることとなる。よって、複数の給電線の水平方向における正確な対称性を実現することができ、水平偏波の無指向性を向上することができる。
【0047】
図6は、図5における給電線固定具の構成を示す拡大図であり、(a)は1本固定用の給電線固定具35、(b)は2本固定用の給電線固定具45、(c)は3本固定用の給電線固定具55を示す。
【0048】
尚、給電線固定具65は給電線固定具35と同一構成であり、給電線固定具75は給電線固定具45と同一構成であるので、それらの説明を省略する。
【0049】
給電線固定具35は、中空柱31の表面に取り付けられる角形部材本体36と、該角形部材本体の主面に形成されたタップ37とを有している。また、L字型ブラケットがボルトでタップ37に固定されており、このL字型ブラケットと中空柱31の間に給電線24が挟持された状態で、L字型ブラケットが中空柱31に締め付け固定される。
【0050】
給電線固定具45は、給電線24,34を中空柱41の表面に固定する略コの字型の固定具である(図6(b))。この給電線固定具45は、中空柱41の平面41aに略水平方向に並べて取り付けられる一対の脚部81,81と、一対の脚部81,81の端面に取り付けられる板状の橋部82と、一対の脚部81,81と橋部82とをそれぞれ接合するボルト83,83とを有している。そして、これら一対の脚部81,81と橋部82及び中空柱41によって、2つの給電線24,34が列設される空間が画定される。
【0051】
また、一対の脚部81,81及び橋部82の内側面には、給電線固定具45と給電線24,34との接触による断線等を防止するシート状の緩衝部材84が取り付けられている。緩衝部材84は、例えばネオプレンゴムからなる。
【0052】
脚部81は、例えば中実の四角柱であり、平面41aと当接する平坦な底面81aを有する。すなわち、底面81aは平面41aと略平行となるように形成されており、底面81aの全体が平面41aと当接する。本構成により、支持柱が円柱である場合と比較して、脚部の底面を曲率一定の曲面に形成する必要がなく、各給電線を支柱に固定する際の施工性を格段に向上することが可能となる。
【0053】
また、図6(c)に示すように、給電線固定具55は、給電線24,34,44を中空柱51の表面に固定する略コの字型の固定具である。この給電線固定具55は、中空柱51の平面51aに略水平方向に並べて取り付けられる一対の脚部91,91と、一対の脚部91,91の端面に取り付けられる板状の橋部92と、一対の脚部91,91と橋部92とをそれぞれ接合するボルト93,93とを有している。そして、これら一対の脚部91,91と橋部92及び中空柱51によって、3つの給電線24,34,44が列設される空間が画定される。
【0054】
また、給電線固定具45と同様にして、一対の脚部91,91及び橋部92の内側面には、給電線固定具55と給電線24,34,44との接触による断線等を防止するシート状の緩衝部材94が取り付けられている。
【0055】
このように、各給電線固定具で1〜3本の給電線を支柱の所定位置で固定することにより、STA1全体として24本の給電線が支柱に確実に固定される。また、一対の脚部と橋部をボルトで接合しているため、給電線を容易に交換することが可能となる。
【0056】
次に、上記のように構成されるSTA1のアンテナ特性を調査した結果を以下に示す。
【0057】
図7は、図1のSTA1のVSWR特性を示すグラフである。
【0058】
図7に示すように、周波数帯域75〜110MHzにおいてVSWRが1.25以下となっており、特に、周波数帯域76〜108MHzにおいてVSWRが1.15以下となっている。この結果から、本発明のSTA1によって、上記周波数帯域で良好な電圧定在波比が得られることが判明した。
【0059】
図8〜図11は、STA1の水平偏波の指向性を示す図である。図中、0°,90°,180°,270°の方向がバットスタイルアンテナ素子の取り付け方向である。
【0060】
図8のf=80.5MHzの場合において、およそ45°,135°,225°,315°の方向で相対的な利得(Gain)の落ち込みがあるものの、ほぼ無指向性を示しており、全方向で利得が約−2.7dB以上と高い利得を示した。
【0061】
また、f=90MHzの場合では(図9)、全方向で利得が約−3.1以上となっており、f=99MHzでは(図10)、全方向で利得が約−3.5dB以上となり、f=108MHzの場合では(図11)、全方向で利得が約−3.6dB以上となっている。この結果から、f=90〜108MHzの周波数帯域では、全方向で利得が−3.6dB以上となり、水平偏波の無指向性を実現できることが判明した。
【0062】
上述したように、本実施形態によれば、バットスタイルアンテナ素子22,32,42,52,62,72が、支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され且つ多段で設けられ、支柱が断面略多角形の中空柱21,31,41,51,61,71で構成されている。したがって、所定幅を有する複数の平板を接合して多角柱を作製すれば、曲げ加工を施す必要がなくなり、施工性を向上しつつ寸法精度の高い多角柱を提供することができる。また、高い寸法精度を実現できることから、多角柱の外周近傍に一様な電界が形成され、水平偏波の安定的な無指向性を実現することができる。さらに、同一幅、同一板厚の円柱と多角柱を比較した場合、多角柱の周長が円柱の周長より大きくなることから、中空柱21,31,41,51,61,71の機械的強度、特に曲げ強度を向上させることができる。
【0063】
尚、上記実施形態では中空柱21は断面略四角形であるが、他の断面形状であってもよい。例えば、図12(a)〜図12(c)に示すように、断面略ひし形の中空柱121、断面略六角形の中空柱131、あるいは断面略八角形の中空柱141であってもよい。また、中空柱121に連結される他の複数の中空柱は、中空柱121の形状に応じて断面略菱形、断面略六角形、断面略八角形等の多角形状をとりうる。
【0064】
また、中空柱121,131において、隣接する2つのバットスタイルアンテナのうちの一方が、ひし形あるいは六角形等の頂点に固定される。本変形例によっても中空柱の機械的強度を向上することができ、加えて中空柱の設計の自由度を向上することができる。
【0065】
以上、本実施形態に係るSTAについて述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 スーパーターンスタイルアンテナ(STA)
2,3,4,5,6,7 アンテナユニット
8 鉄塔
21,31,41,51,61,71 中空柱
22,32,42,52,62,72 バットスタイルアンテナ素子
23,23 一対のブラケット
24,34,44,54,64,74 給電線
25 アンテナ素子取付用コマ
26,27,83 ボルト
28,38,48,58,68,78 ジャンパ線
29,39,49,59,69,79 ジャンパ取付用コマ
35,45,55,65,66,75,76 給電線固定具
36 角形部材本体
37 タップ
43,43 一対のブラケット
53,53 一対のブラケット
63,63 一対のブラケット
73,73 一対のブラケット
81,81 一対の脚部
82 橋部
84 緩衝部材
91,91 一対の脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と、前記支柱の周囲に互いに略直角となるように4方向に配置され、且つ多段で設けられた複数のバットスタイルアンテナ素子とを備えるアンテナであって、
前記支柱は、断面略多角形の中空柱で構成されることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記支柱は、幅方向の外寸がほぼ等しい複数の中空柱を、略鉛直方向に連結して構成されており、
一の中空柱の板厚が、該一の中空柱の上方に配置される他の中空柱の板厚よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記支柱の長手方向に沿って当該支柱の表面に取り付けられ、前記複数のバットスタイルアンテナ素子にそれぞれ給電する複数の給電線を更に備え、
前記複数の給電線は、前記支柱の中心軸線に関してほぼ4回回転対称に配置されることを特徴とする請求項1又は2記載のアンテナ。
【請求項4】
前記給電線を前記支柱の表面に固定する略コの字型の給電線固定具を更に備え、
前記給電線固定具は、前記支柱における一の平面に略水平方向に並べて取り付けられる一対の脚部と、前記一対の脚部に設けられる橋部とを有しており、
前記脚部は前記一の平面と当接する平坦な底面を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のアンテナ。
【請求項5】
前記支柱は、断面略四角形の中空柱であり、
前記バットスタイルアンテナ素子は、前記中空柱断面における各辺の略中央に配置されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−90251(P2013−90251A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231085(P2011−231085)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(505035954)古河C&B株式会社 (7)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】