説明

アントラセン誘導体化合物を含む有機膜を備える有機発光素子

【課題】寿命、輝度、消費電力の効率特性を向上させた有機発光素子を提供する。
【解決手段】下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体、または相異なる2種の下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を含む有機層を備えることを特徴とする有機発光素子である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体、または相異なる2種のアントラセン誘導体化合物を含む有機発光素子に係り、より詳細には電気的な安定性と高い電子輸送能力を持つ材料を使用し、高効率、低電圧、高輝度、長寿命の特性を持つ有機発光素子に関する。
【0002】
本発明は、高品位有機発光素子開発のための必須先行技術に係り、有機発光素子の消費電力低減及び寿命改善に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光素子とは、図1に示したように両電極間に挿入されている有機膜に電圧を印加する時、有機膜での電子と正孔との結合によって光が発生する装置をいう。したがって、有機発光素子は、高画質、速い応答速度及び広視野角特性を持つ軽量薄型の情報表示装置具現を可能にする長所を持つ。これは、有機発光表示素子技術の急激な成長を先導する原動力になり、現在有機発光素子は、携帯電話だけでなくその他の高品位の情報表示装置へまでその応用領域が拡張されつつある。
【0004】
このような有機発光素子の急成長により、学術的側面だけでなく、産業技術側面でTFT−LCDのようなその他の情報表示素子との競争が不回避になり、既存の有機発光素子は、量的、質的成長を阻害する最も大きい要因として残っている素子の効率、寿命延長及び消費電力低減という技術的限界を克服せねばならないという難局に直面している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術の問題点を解決するために、本発明は、有機発光素子の寿命、輝度及び消費電力の効率特性を向上させることができる有機発光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記本発明の課題を解決するために、本発明の第1態様は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機層と、を備える有機発光素子であり、前記有機層は、下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体を含むことを特徴とする有機発光素子を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
前記式で、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルキル基、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリール基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリールオキシ基、炭素数4ないし30の置換または非置換のヘテロアリール基、または炭素数6ないし30の置換または非置換の縮合多環基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、または置換または非置換のアミノ基である。
【0009】
前記本発明の課題を解決するために、本発明の第2態様は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機層と、を備える有機発光素子であって、前記有機層が相異なる2種の前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を含むことを特徴とする有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
前記本発明の有機発光素子に使われるアントラセン誘導体化合物と金属イオン錯体との混合物、または相異なる2種のアントラセン誘導体化合物の混合物は優秀な電子輸送能力を持ち、有機膜形成材料として有効に使われて、高効率、低電圧、高輝度、長寿命の有機発光素子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明による有機発光素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に有機層と、を備える。
【0013】
前記有機層は、下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体を含むか、または、相異なる2種の下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を含む。
【0014】
【化2】

【0015】
前記式で、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルキル基、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリール基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリールオキシ基、炭素数4ないし30の置換または非置換のヘテロアリール基、または炭素数6ないし30の置換または非置換の縮合多環基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、または置換または非置換のアミノ基である。
【0016】
望ましくは、前記R及びRは、それぞれ独立にフェニル基、炭素数1ないし5のアルキルフェニル基、炭素数1ないし5のアルコキシフェニル基、シアノフェニル基、フェノキシフェニル基、ハロフェニル基、ナフチル基、炭素数1ないし5のアルキルナフチル基、炭素数1ないし5のアルコキシナフチル基、シアノナフチル基、ハロナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、炭素数1ないし5のアルキルカルバゾリル基、ビフェニル基、炭素数1ないし5のアルキルビフェニル基、炭素数1ないし5のアルコキシビフェニル基及びピリジル基からなる群から選択された一つである。
【0017】
さらに望ましくは、前記R及びRは、それぞれ独立にフェニル基、エチルフェニル基、エチルビフェニル基、o−,m−及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、o−,m−、及びp−トリル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、ジメチルフェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセトナフチレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ペンタフェニル基、ヘキサフェニル基及びカルバゾリル基からなる群から選択された一つである。
【0018】
本発明の化学式で使われた非置換のC1−C20のアルキル基の具体的な例としては、メチル、エチル、プロピル、イソブチル、sec−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシルなどを挙げることができ、前記アルキル基のうち一つ以上の水素原子はハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン、ヒドラゾン、カルボキシル基やその塩、スルホン酸基やその塩、燐酸やその塩、C1−C30のアルキル基、C1−C30のアルケニル基、C1−C30のアルキニル基、C6−C30のアリール基、C7−C30のアリールアルキル基、C2−C20のヘテロアリール基、またはC3−C30のヘテロアリールアルキル基に置換されうる。
【0019】
本発明の化学式で使われた非置換のC1−C20のアルコキシ基の具体的な例として、メトキシ、エトキシ、フェニルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ナフチルオキシ、イソプロピルオキシ、ジフェニルオキシなどがあり、これらアルコキシ基のうち少なくとも一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同様な置換基に置換できる。
【0020】
本発明の化学式で使われた非置換のC6−C20アリール基は単独または組み合わせて使われて、一つ以上の環を含む芳香族炭素環を意味し、前記環はペンダント方法で共に付着されるか、または融合されうる。前記アリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同様な置換基に置換できる。
【0021】
前記アリール基としては、フェニル基、エチルフェニル基、エチルビフェニル基、o−,m−及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、o−,m−、及びp−トリル基、o−,m−及びp−クメニル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、(α,α−ジメチルベンゼン)フェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセナフチレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、メチルアントリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ピレニル基、クリセニル基、エチル−クリセニル基、ピセニル基、ペリレニル基、クロロペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、オバレニル基、カルバゾリル基などを挙げることができる。
【0022】
本発明の化学式で使われた非置換のアリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ、ナフチレンオキシ、ジフェニルオキシなどがある。前記アリールオキシ基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同様な置換基に置換できる。
【0023】
本発明で使用する非置換のヘテロアリール基は、N、O、PまたはSのうち選択された1、2または3個のヘテロ原子を含み、残りの環原子がCである環原子数6ないし30の単環式または二環式芳香族有機化合物を意味する。前記ヘテロアリール基のうち一つ以上の水素原子は、前述したアルキル基の場合と同様な置換基に置換できる。
【0024】
前記ヘテロアリール基の例には、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジニル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、カルバゾリル基、インドリル基などを挙げることができる。
【0025】
特に、前記化学式1で表示される化合物は、下記化学式2ないし化学式9および化学式13ないし化学式15で表示される化合物であるが、それら化合物に限定されるものではない。
【0026】
【化3】

【0027】
【化4】

【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
【化11】

【0035】
【化12】

【0036】
【化13】

【0037】
本発明による有機発光素子に使われうる前記イオン金属錯体は、望ましくは、中心金属MまたはM’が1価または2価金属である下記化学式10ないし12で表示される化合物である。
【0038】
【化14】

【0039】
【化15】

【0040】
【化16】

【0041】
前記式中で、MとM’とは1価または2価金属である。
【0042】
具体的に例を挙げれば、MとM’とは、Li、Na、Ca、Cs、Be、Mg、Znなどである。さらに望ましくは、前記イオン金属錯体は、リチウムキノリノラト(LiQ)金属錯体、ナトリウムキノリノラト(NaQ)金属錯体、セシウムキノリノラト(CsQ)金属錯体である。
【0043】
前記本発明の有機発光素子において、望ましくは、前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及び前記イオン金属錯体の混合重量比は、5:95ないし95:5である。前記混合比が5:95未満と化学式1のアントラセン誘導体化合物の含有量が少ない場合にはOLED寿命が短くなる問題点があり、前記混合比が95:5を超過してイオン金属錯体の含有量が少ない場合にはOLEDの駆動電圧が上昇する問題点がある。
【0044】
また、前記本発明の有機発光素子において、望ましくは、前記相異なる2種の下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物間の混合重量比は、5:95ないし95:5である。前記相異なる2種の化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物のうちいずれか1種の含有量が95:5を超過する混合比で過量に含まれるか、5:95未満の混合比で少量含まれる場合、OLEDの寿命が短くなるか、駆動電圧が上昇する問題点がある。
【0045】
本発明による有機発光素子の構造は非常に多様である。前記第1電極と第2電極との間に有機層として、電子輸送層、電子注入層、正孔阻止層、発光層、電子阻止層、正孔注入層及び正孔輸送層からなる群から選択された一つ以上の層を有機膜としてさらに備えることができる。このような有機層は、前述したような前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体の混合物、または相異なる2種の前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物の混合物を含むことができる。例えば、本発明による有機発光素子のうち、前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体の混合物、または相異なる2種の前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物の混合物を含む有機膜は電子輸送層または電子注入層であるが、これに限定されるものではない。
【0046】
さらに具体的に、本発明による有機発光素子の多様な具現例は、図1Aないし図1Cを参照する。図1Aの有機発光素子は、第1電極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極で形成される構造を持ち、図1Bの有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極で形成される構造を持つ。また、図1Cの有機発光素子は、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を持つ。この時、前記発光層、電子輸送層または電子注入層が前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を含みうることは言うまでもない。
【0047】
以下、本発明による有機発光素子の製造方法を、図1Cに図示された有機発光素子を参照して説明する。
【0048】
まず、高い仕事関数を持つ第1電極用物質を用いて、蒸着法またはスパッタリング法により基板上部に第1電極を形成する。前記第1電極はアノードでありうる。ここで基板としては、通常有機発光素子で使われる基板を使用するが、機械的強度、熱的安定性、透明性、表面平滑性、取り扱い容易性及び防水性に優れたガラス基板または透明プラスチック基板が望ましい。そして、第1電極用物質としては、透明で伝導性に優れた酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
【0049】
次いで、前記第1電極上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB(Langmuir−Blodgett)法のような多様な方法を利用して正孔注入層(HIL)を形成できる。
【0050】
真空蒸着法により正孔注入層を形成する場合、その蒸着条件は、正孔注入層の材料として使用する化合物、目的とする正孔注入層の構造及び熱的特性などによって異なるが、一般的に蒸着温度50ないし500℃、真空度10−8ないし10−3torr、蒸着速度0.01ないし100Å/sec、膜厚さは通常10Åないし5μmの範囲で適切に選択することが望ましい。
【0051】
前記正孔注入層物質としては特別に制限されず、例えば、米国特許第4,356,429号明細書に開示された銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物またはAdvanced Material,6,p.677(1994)に記載されているスターバースト型アミン誘導体類であるTCTA、m−MTDATA、m−MTDAPBなどを正孔注入層として使用できる。前記m−MTDATAの化学式は下記化学式を参照する。
【0052】
【化17】

【0053】
次いで、前記正孔注入層上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような多様な方法を利用して正孔輸送層(HTL)を形成できる。真空蒸着法により正孔輸送層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲中で選択される。
【0054】
前記正孔輸送層の物質は特別に制限されず、正孔輸送層に使われている公知のもののうち任意に選択して使用できる。例えば、N−フェニルカルバゾル、ポリビニルカルバゾルなどのカルバゾル誘導体、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(TPD)、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニルベンジジン(α−NPD)などの芳香族縮合環を持つ通常的なアミン誘導体などが使われる。α−NPDの化学式は下記を参照する。
【0055】
【化18】

【0056】
次いで、前記正孔輸送層上部に真空蒸着法、スピンコーティング法、キャスト法、LB法のような方法を利用して発光層(EML)を形成できる。真空蒸着法により発光層を形成する場合、その蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲中で選択される。
【0057】
発光層材料は特別に制限されず、公知の材料、公知のホスト材料及びドーパント材料のうち任意に選択された物質を発光層材料として使用できる。ホスト材料の場合、例えば、グレイセル(Gracel)社製のGGH01、GGH02、GDI1403またはAlq3、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾル−ビフェニル)などを使用できる。ドーパントの場合、例えば、蛍光ドーパントとしてはグレイセル社製のGGD01、GGD02及び林原社製のC545Tなどを使用でき、燐光ドーパントとしては赤色燐光ドーパントPtOEP、UDC社製のRD25、RD61、緑色燐光ドーパントIr(PPy)(PPy=2−phenylpyridine)及び高砂社製のTLEC025、TLEC027、青色燐光ドーパントであるF2Irpicなどを使用できる。また、下記化学式で表示されるドーパントを使用できる。
【0058】
【化19】

【0059】
ドーピング濃度は特別に制限されないが、通常ホスト及びドーパントの100重量部を基準とした前記ドーパントの含有量は0.01〜15重量部である。
【0060】
発光層が燐光ドーパントを含む場合には、三重項励起子または正孔が電子輸送層に広がる現象を防止するために、正孔阻止材料(HBL)を追加で真空蒸着法またはスピンコーティング法により積層させることができる。使用できる公知の正孔阻止材料は、例えば、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、または特開平11−329734(A1)公報に記載されている正孔阻止材料、BCPなどを挙げることができる。
【0061】
次いで、電子輸送層(ETL)を、真空蒸着法またはスピンコーティング法、キャスト法などの多様な方法を利用して形成する。前記電子輸送層材料は、電子輸送能力をさらに向上させることができる前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を使用でき、キノリン誘導体、特にトリス(8−キノリノラート)アルミニウム(Alq3)のような公知の材料を使用することもできる。
【0062】
望ましくは、電子輸送層(ETL)の厚さは5nm〜70nmである。電子輸送層の厚さが5nm未満である場合に正孔と電子とのバランスが取れなくて効率が低下し、70nmを超過すれば電流特性が低下して駆動電圧が上昇する傾向がある。
【0063】
また、電子輸送層上部に陰極からの電子の注入を容易にする機能を持つ物質である電子注入層(EIL)が積層され、これは特別に材料を制限しない。
【0064】
電子注入層としては、LiF、NaCl、CsF、LiO、BaOなどの物質を利用できる。前記正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)の蒸着条件は使用する化合物によって異なるが、一般的に正孔注入層の形成とほぼ同じ条件範囲中で選択される。
【0065】
最後に、第2電極形成用金属を用いて、真空蒸着法やスパッタリング法などの方法により第2電極を電子注入層上部に形成できる。前記第2電極はカソードとして使われうる。前記第2電極形成用金属としては、低い仕事関数を持つ金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を使用できる。具体的な例としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム−リチウム(Al−Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム−インジウム(Mg−In)、マグネシウム−銀(Mg−Ag)などを挙げることができる。また前面発光素子を得るためにITO、IZOを使用した透過型カソードを使用する事も出来る。
【0066】
本発明の有機発光素子は、図1Cに図示された第1電極、正孔注入層(HIL)、正孔輸送層(HTL)、発光層(EML)、正孔阻止層(HBL)、電子輸送層(ETL)、電子注入層(EIL)、第2電極構造の有機発光素子だけでなく、多様な構造の有機発光素子の構造が可能であり、必要に応じて1層または2層の中間層をさらに形成することもできる。
【0067】
以下で、本発明による化学式2で表示される化合物2(以下、“化合物2”という)及び化学式3で表示される化合物3(以下、“化合物3”という)の合成例及び実施形態を具体的に例示するが、本発明が下記の実施形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0068】
<合成例1>
下記反応式1の経路によって中間体(intermediate)Aを合成した。
【0069】
【化20】

【0070】
このように合成した中間体Aを使用して、下記反応式2の経路によって化合物2を合成した。
【0071】
【化21】

【0072】
<合成例2>
下記反応式3の反応経路によって中間体Bを合成した。
【0073】
【化22】

【0074】
前記反応式2で中間体Aの代わりに中間体Bを反応させて化合物3を合成した。
【0075】
<実施例1>
前記合成例1で合成した化合物2及びナトリウムキノリノラト(NaQ)の混合重量比1:1混合物を電子輸送層材料として使用して、次のような構造を持つ有機発光素子を製作した:m−MTDATA(750Å)/α−NPD(150Å)/GBHO2(300Å):GBD32(3%)/電子輸送層(200Å)/LiQ(10Å)/Al(3000Å)。
【0076】
アノードは、コーニング15Ω/cm(1200Å)ITOガラス基板を50mm×50mm×0.7mmサイズに切ってイソプロピルアルコールと純水中で各5分間超音波洗浄した後、30分間UVオゾン洗浄して使用した。前記基板上部にm−MTDATAを真空蒸着して正孔注入層を750Åの厚さに形成した。次いで、前記正孔注入層上部にα−NPDを150Å厚に真空蒸着して正孔輸送層を形成した。正孔輸送層を形成した後、前記正孔輸送層上部に青色蛍光ホストとしてグレイセル社製のGBH02を使用し、ドーパントとしてグレイセル社製のGBD32を3%使用して、これを真空蒸着して300Åの厚さの発光層を形成した。その後、前記発光層上部に化合物2とNaQとを混合真空蒸着して200Å厚さの電子輸送層を形成した。前記電子輸送層上部にLiQ 10Å(電子注入層)とAl 3000Å(カソード)とを順次に真空蒸着して、LiQ/Al電極を形成することによって有機発光素子を製造した。
【0077】
<実施例2>
前記合成例1で合成した化合物2及び前記合成例2で合成した化合物3を1:1混合重量比で混合真空蒸着して電子輸送層を形成したことを除いては、前記実施例1と同一に有機発光素子を製造した。
【0078】
<比較例1>
電子輸送層の材料をAlq3として使用した点を除いては、実施例1と同一に有機発光素子を製造した:m−MTDATA(750Å)/α−NPD(150Å)/GBHO2(300Å):GBD32(3%)/Alq3(200Å)/LiF(80Å)/Al(3000Å)。
【0079】
<評価例1>
前記実施例1、2及び比較例1に対して、電流密度、効率特性及び寿命特性を評価した。図2ないし4は、それぞれに対してグラフで示したものである。前記電流密度評価にはSource Measurement Unit 238(keithley社製)を使用し、効率特性評価にはPR650(フォトリサーチ社製)を使用し、寿命特性評価にはPolaronix M6000(Mcscience社製)を使用した。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、ディスプレイ関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1A】一般的な有機発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図1B】一般的な有機発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図1C】一般的な有機発光素子の構造を概略的に示す断面図である。
【図2】本発明の一具現例及び他の具現例による有機発光素子及び従来の有機発光素子の電流密度を測定したグラフである。
【図3】本発明の一具現例及び他の具現例による有機発光素子及び従来の有機発光素子の効率特性を測定したグラフである。
【図4】本発明の一具現例及び他の具現例による有機発光素子及び従来の有機発光素子の寿命特性を測定したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に有機層と、を備える有機発光素子であり、前記有機層は、下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及びイオン金属錯体を含むことを特徴とする有機発光素子:
【化1】

前記式で、R及びRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルキル基、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリール基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリールオキシ基、炭素数4ないし30の置換または非置換のヘテロアリール基、または炭素数6ないし30の置換または非置換の縮合多環基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、または置換または非置換のアミノ基である。
【請求項2】
第1電極と、
第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に有機層と、を備える有機発光素子であって、前記有機層が相異なる2種の下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物を含むことを特徴とする有機発光素子:
【化2】

前記式で、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルキル基、炭素数1ないし30の置換または非置換のアルコキシ基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリール基、炭素数6ないし30の置換または非置換のアリールオキシ基、炭素数4ないし30の置換または非置換のヘテロアリール基、または炭素数6ないし30の置換または非置換の縮合多環基、ヒドロキシ基、ハロゲン、シアノ基、または置換または非置換のアミノ基である。
【請求項3】
前記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物及び前記イオン金属錯体の混合重量比は、5:95ないし95:5であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記相異なる2種の下記化学式1で表示されるアントラセン誘導体化合物間の混合重量比は、5:95ないし95:5であることを特徴とする請求項2に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記R及びRは、それぞれ独立にフェニル基、炭素数1ないし5のアルキルフェニル基、炭素数1ないし5のアルコキシフェニル基、シアノフェニル基、フェノキシフェニル基、ハロフェニル基、ナフチル基、炭素数1ないし5のアルキルナフチル基、炭素数1ないし5のアルコキシナフチル基、シアノナフチル基、ハロナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、炭素数1ないし5のアルキルカルバゾリル基、ビフェニル基、炭素数1ないし5のアルキルビフェニル基、炭素数1ないし5のアルコキシビフェニル基及びピリジル基からなる群から選択された一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項6】
前記R及びRは、それぞれ独立的にフェニル基、エチルフェニル基、エチルビフェニル基、o−,m−及びp−フルオロフェニル基、ジクロロフェニル基、ジシアノフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、o−,m−、及びp−トリル基、メシチル基、フェノキシフェニル基、ジメチルフェニル基、(N,N’−ジメチル)アミノフェニル基、(N,N’−ジフェニル)アミノフェニル基、ペンタレニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントラセニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、アセトナフチレニル基、フルオレニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレン基、ペンタフェニル基、ヘキサフェニル基及びカルバゾリル基からなる群から選択された一つであることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項7】
前記化学式1で表示される化合物は、下記化学式2ないし化学式9および化学式13ないし化学式15で表示される化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【請求項8】
前記イオン金属錯体は、下記化学式10、下記化学式11または下記化学式12で表示される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子:
【化14】

【化15】

【化16】

前記式中で、MとM’とは、1価または2価金属である。
【請求項9】
前記有機層は、電子輸送層または電子注入層であることを特徴とする請求項1または2に記載の有機発光素子。
【請求項10】
前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、発光層、正孔阻止層、電子輸送層及び電子注入層からなる群から選択された一つ以上の層をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の有機発光素子。
【請求項11】
前記素子は、第1電極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/第2電極、第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/第2電極、または第1電極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層/第2電極の構造を持つことを特徴とする請求項10に記載の有機発光素子。
【請求項12】
前記有機層が下記化学式2及び3で表示されるアントラセン誘導体化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【化17】

【化18】

【請求項13】
前記有機層が下記化学式2で表示されるアントラセン誘導体化合物及びNaQ(sodium quinolinolate)を含むことを特徴とする請求項1に記載の有機発光素子。
【化19】


【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−258603(P2008−258603A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66612(P2008−66612)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】