説明

アンドロゲン調節性PMEPA1遺伝子および癌細胞増殖を抑制するための同遺伝子の使用方法

本発明は、アンドロゲン調節性遺伝子PMEPA1ならびにこの遺伝子によりコードされるタンパク質(その変異体および類似体を含む)に関する。癌細胞増殖を抑制し、アンドロゲン受容体発現を低下させ、アンドロゲン受容体により転写制御される遺伝子の発現を調節し、前立腺癌を診断および/または予後判定する方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍抑制遺伝子、特にPMEPA1遺伝子、ならびに、その変異体および/または類似体を含むこれらの遺伝子によってコードされるタンパク質に関する。特に、本発明は、一部には、PMEPA1ポリペプチドが癌細胞増殖を抑制するという発見に基づく。癌細胞の増殖を抑制する方法が提供される。本発明はまた、アンドロゲン受容体およびアンドロゲン調節性遺伝子の発現を調節する方法に関する。前立腺癌を診断または予後判定する方法もまた提供される。
【背景技術】
【0002】
前立腺癌(CaP)は米国男性において最も一般的な悪性腫瘍であり、癌による死亡原因の第2位である(Jemalら、Cancer statistics, 2002. CA Cancer J Clin. 52:23-47, 2002)。継続的な研究にも関わらず、CaPの発生・進行に関連する特異的な遺伝子変化については多くが未知のままである(Augustusら、The molecular phenotype of the malignant prostate. In S. Srivastava, D. E. Henson, およびA. Gazden(編), Molecular pathology of early cancer, pp 321-340. IOS press, Amsterdam, 1999; Moulら、1994. Molecular biology of CaP. Oncogenes and tumor suppressor genes. Current Clinical Oncology: CaP.(Dawson, N.A.およびVogelzang, N.J. 編), Wiley-Liss Publications, 19-46; Lalaniら、Cancer and Mets. Rev., 16:29-66, 1997; Shiら、World J. Urol.; 14, 318-328, 1996; Heidenbergら、Urology, 48:971-979, 1996; Bovaら、World J. Urol., 14:338-346, 1996; ならびにIssacsら、Prostate Cancer: The Genetic Basis of Human Cancer. Vogelstein B, およびKinzler KW, McGraw-Hill Companies, Inc., pp. 653-660, 1998)。従って、前立腺癌の発生および進行に関連する遺伝子変化の同定ならびに解析は、本疾患の生物学的および臨床的経過の理解に有益である。
【0003】
腫瘍抑制遺伝子および腫瘍遺伝子の変化が前立腺の腫瘍形成において重要であると同時に、ホルモン機構もまた同様に前立腺癌の発達に重要な役割を果たす。このようなホルモンの1つであるアンドロゲンは、前立腺の成長および発達の過程に関与する。アンドロゲンは前立腺細胞の細胞表面上のアンドロゲン受容体に結合する。アンドロゲンの結合は、アンドロゲン調節性遺伝子(androgen-regulated gene: ARG)と呼ばれる特異的な標的遺伝子の活性化または転写を誘導する細胞内シグナル伝達のカスケードを開始させる(Augustusら、The molecular phenotype of the malignant prostate. In S. Srivastava, D. E. Henson, およびA. Gazden(編), Molecular pathology of early cancer, pp 321-340. IOS press, Amsterdam, 1999; Gelman E, J. Clin. Oncol., 20:3001-3015, 2002; Grossmannら、J. Natl. Cancer Inst., 93:1687-1697, 2001)。これらのARGは細胞増殖および分化に影響を及ぼす様々な機能を有するタンパク質をコードする。アンドロゲンは前立腺細胞の増殖および分化を誘導することが示されている。更に、前立腺細胞からのアンドロゲンの除去は細胞死を誘導することが示されている。従って、特異的な標的遺伝子のアンドロゲン調節は、正常な前立腺の成長および前立腺癌の発達の両方において、ある役割を果たすと思われる。
【0004】
これらの研究を踏まえて、ARGおよびそれらの生物学的機能の系統的且つ包括的な解析は、遺伝子変化が前立腺癌の発生および進行にどのように寄与するか、ならびに、前立腺癌をより良く診断および治療するためのこれらのARGの使用方法の、更なる理解を提供するはずである。
【発明の開示】
【0005】
発明の概要
以前、本発明者らは前立腺組織において豊富な発現を示す新規アンドロゲン調節性遺伝子の同定を記載した。(2001年1月26日に出願された米国出願S.N.09/769,482、その内容は参照により本明細書に組み入れられる。)新規遺伝子はPMEPA1と命名された。
【0006】
本明細書において本発明者らは更にPMEPA1の生物学的機能の評価を報告する。本発明は、一部には、PMEPA1が癌細胞増殖を抑制するという発見に基づく。従って、ある実施形態では、本発明は癌細胞の増殖を抑制する方法を提供し、それは癌細胞の増殖を抑制するのに有効な量で配列番号2を含んでなるポリペプチドを癌細胞に投与することを含む。ある実施形態では、癌細胞は前立腺癌細胞である。ポリペプチドは直接細胞に投与されてもよく、または間接的に配列番号2を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを用いてもよい。これらの方法には癌、特に前立腺癌を治療する方法が含まれる。
【0007】
本発明の更なる実施形態は、アンドロゲン受容体の発現を低下させる方法、または、前立腺特異的抗原(PSA)遺伝子、PSMA遺伝子およびPCGEM1遺伝子を含むがこれらに限定されない、転写がアンドロゲン受容体によって制御される遺伝子の発現を調節する方法を提供する。従って、ある態様では、本発明は癌細胞でのアンドロゲン受容体の発現を低下させる方法、または、転写がアンドロゲン受容体によって制御される遺伝子の発現を調節する(すなわち、増加もしくは低下させる)方法を提供し、それは、癌細胞においてアンドロゲン受容体を減少させるのに有効な量、もしくは、前記遺伝子の発現を調節するのに有効な量で、配列番号2を含んでなるポリペプチドを癌細胞に投与することを含む。ある実施形態では、その癌細胞は前立腺癌細胞である。ポリペプチドは直接細胞に投与されてもよく、または間接的に配列番号2を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含むベクターを用いてもよい。
【0008】
別の態様において、本発明は以下の能力、すなわち、癌細胞増殖を抑制する能力、アンドロゲン受容体の発現を低下させる能力、またはアンドロゲン受容体によって転写が制御される遺伝子の発現を調節する能力、のうち少なくとも1つを保持するPMEPA1ポリペプチドの変異体を提供する。ある実施形態では、これらの変異体は配列番号2に対して少なくとも95%同一であり、例えばコロニー形成アッセイで測定したとき前立腺癌細胞(例えばLNCaP細胞)の増殖を抑制する。
【0009】
更に別の態様では、本発明は、以下でさらに詳しく述べるように、PMEPA1の少なくとも1つのPYモチーフに少なくとも1つの突然変異および/または欠失を持つPMEPA1ポリペプチドの変異体を提供する。このような突然変異はPMEPA1の細胞増殖抑制効果を減少させる。これらのPMEPA1変異体は、例えば、PMEPA1が細胞増殖抑制機能を媒介するために直接または間接的に相互作用する細胞タンパク質を定義するために使用され得る。
【0010】
更なる実施形態では、本発明は、PMEPA1変異体をコードするポリヌクレオチド、ならびに、例えば、前立腺癌を含む癌細胞増殖を抑制するために、および/またはアンドロゲン受容体の発現を低下させるために、および/またはアンドロゲン受容体によって転写が制御される遺伝子の発現を調節するために、これらの変異体を使用する方法(配列番号2を含んでなるポリペプチドに関して上述した方法)を提供する。
【0011】
別の実施形態では、本発明はPMEPA1発現のレベルを測定することにより前立腺癌を診断または予後判定する方法を提供する。従って、本発明の方法は、患者由来の生体サンプル中のポリヌクレオチド(該ポリヌクレオチドがPMEPA1ポリペプチドをコードする)の発現レベルを検出し、前立腺癌の発生または進行の可能性を判定することを含み、その際、生体サンプル中の該ポリヌクレオチドの発現低下が癌の発生または進行の可能性の増加と相関する。例えば、前立腺癌の予後判定方法において、PMEPA1の発現低下は臓器非限局性腫瘍のような進行した段階の前立腺癌と相関する。発現の低下は対照サンプルとのPMEPA1発現レベルの比較によって測定されうる。代替方法として、PMEPA1発現の閾値を選定することもできる。この場合、PMEPA1発現レベルが閾値未満であれば、発現低下と見なされる。閾値は公知の方法を用いて決定できる。例えば、その値はPMEPA1 mRNAのコピー数またはそのサイクル閾値(cT)から決定できる。ある実施形態では、生体サンプルは前立腺外科手術などの治療を受けた前立腺癌患者から得られる。このように、PMEPA1は癌の進行を予測する、および/または治療効果を測定するための生体マーカーとして機能する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドが配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする。他の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2に対して少なくとも95%同一であり、かつ前立腺癌細胞の増殖を抑制するポリペプチドを含めて、配列番号2の変異体をコードする。
【0012】
別の実施形態では、前立腺癌を診断または予後判定する方法は、生体サンプル中のPMEPA1ポリペプチドの発現レベルを検出し、前立腺癌の発生または進行の可能性を判定することを含み、その際、生体サンプル中の前記ポリペプチドの発現低下が癌の発生または進行の可能性の増加と相関する。上述したように、発現の低下は対照サンプルおよび/またはあらかじめ定められた閾値とのPMEPA1発現の比較によって測定されうる。ある実施形態では、生体サンプルは前立腺外科手術などの治療を受けた前立腺癌患者から得られる。別の実施形態では、ポリペプチドが配列番号2のアミノ酸配列を有する。他の実施形態では、ポリペプチドは配列番号2に対して少なくとも95%同一であり、前立腺癌細胞の増殖を抑制する。PMEPA1ポリペプチドは、例えばPMEPA1ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用いて検出できる。
【0013】
本発明の別の実施形態は、配列番号2を含んでなるポリペプチドに特異的に結合する化合物を検出するためのスクリーニング方法である。この方法は、試験化合物と該ポリペプチドとを接触させ、該ポリペプチドおよび化合物間の結合を測定し、該ポリペプチドに特異的に結合する化合物を同定することを含む。別の実施形態では、この方法は、細胞、特に前立腺癌細胞などの癌細胞におけるPMEPA1の発現を増加させる化合物を同定することを含む。
【0014】
本発明の更なる態様は、一部が以下の説明に記載され、一部が下記の説明から理解されると考えられ、また、本発明の実施により習得されうる。
【0015】
発明の詳細な説明
PMEPA1は、アンドロゲンによって最も誘導される前立腺癌細胞の遺伝子として、Serial Analysis of Gene Expression(SAGE)により本発明者らの研究室で発見された(Xuら、Int. J. Cancer, 92:322-328, 2001; Xuら、Genomics, 66:257-263, 2000)。PMEPA1の発現は用量および時間依存的にアンドロゲンによって調節され、他の器官と比較して前立腺でより強く発現している(米国出願S.N.09/769,482参照)。
【0016】
以下に要約され、それに続く実施例において更に詳細に説明されるように、本発明者らのPMEPA1の評価は、それが細胞増殖制御および腫瘍形成における役割を有する、前立腺に豊富なアンドロゲン調節性遺伝子であることを示している。前立腺癌におけるPMEPA1発現の消失または低下は、特に主要な治療法としての外科手術後の、前立腺腫瘍形成もしくは進行(例えば、腫瘍が前立腺を越えて拡大する臓器非限局性の癌のような進行した段階の前立腺癌)の高い危険性または可能性と相関する。従って、PMEPA1および/またはそのコードするポリペプチドのレベル、発現、ならびに活性の変化は、前立腺癌の臨床的挙動についての有用な情報を提供する。本発明者らの評価の一部は、近年報告された遺伝子、N4WBP4に対して83%の同一性を示すPMEPA1タンパク質配列の相同性検索を含んでいた(実施例3)。N4WBP4はマウスの胚で発現する2つのPYモチーフを有するNEDD4 WWドメイン結合タンパク質をコードする(Jolliffeら、Biochem. J., 351:557-565, 2000)。PYモチーフは、WWドメインを有するタンパク質と結合できるPPXYコンセンサス配列(Xは任意のアミノ酸であり得る)を持つプロリンに富むペプチド配列である(Jolliffeら、Biochem. J., 351:557-565, 2000; Harvey Kら、Trends Cell Biol., 9:166-169, 1999; Hicke L, Cell, 106:527-530, 2001; Kumarら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 185:1155-1161, 1992; Kumarら、Genomics, 40:435-443, 1997; Sudol M, Trends Biochem. Sci., 21:161-163, 1996; Harveyら、J. Biol. Chem., 277:9307-9317, 2002; およびBrunschwigら、Cancer Res., 63:1568-1575, 2003)。NEDD4は当初マウスにおいて発生的に調節される遺伝子として同定されたものであり、ユビキチン依存性プロテアソーム介在タンパク質分解経路に関与するユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)である。更なる研究は、NEDD4が膜チャンネルおよびパーミアーゼの調節、エンドサイトーシス、ウイルスの出芽、細胞周期、転写ならびにタンパク質輸送などの多様な細胞機能に関与することを明らかにした(Harveyら、Trends Cell Biol., 9:166-169, 1999; Hicke L, Cell, 106:527-530, 2001)。NEDD4タンパク質に存在するWWドメインは、PYモチーフを含むいくつかの標的タンパク質に結合する、2個の高度に保存されたトリプトファンを有するモジュールである。
【0017】
実施例4において説明されるように、本発明者らはPMEPA1がNEDD4結合タンパク質であり、PMEPA1のNEDD4への結合がPMEPA1のPYモチーフによって媒介されることを発見した。PYモチーフの突然変異はPMEPA1のNEDD4への結合を著しく減少させる。加えて、PMEPA1のNEDD4結合タンパク質との相同性は、PMEPA1もまた細胞においてユビキチン化およびプロテアソーム経路を介したタンパク質の代謝回転を調節する可能性があることを示唆する。これは更に、PMEPA1がゴルジ装置に局在するという本発明者らの観察によって支持される(実施例6)。
【0018】
更に、本発明者らは最近、LNCaP細胞でのPMEPA1発現がアンドロゲン受容体タンパク質をダウンレギュレートし、アンドロゲン受容体によって転写的に制御される遺伝子の発現を調節することを見いだした(実施例5)。これは、PMEPA1がアンドロゲン受容体の調節において機能することを示す。
【0019】
本発明者らのデータはまた、PMEPA1が前立腺癌細胞の増殖を抑制することを示す(実施例7)。より具体的には、PMEPA1のコード領域を発現ベクターに挿入し、293細胞(腎臓)およびLNCaP細胞(前立腺癌)にトランスフェクトした。細胞増殖および細胞周期解析は、PMEPA1を過剰発現した293細胞と対照ベクターをトランスフェクトした293細胞との間に差異がないことを示した。しかし、PMEPA1を過剰発現しているLNCaP細胞は顕著な細胞増殖抑制を示した。同様の増殖抑制は他の前立腺癌細胞株においても観察された。
【0020】
更に、原発性前立腺癌でのPMEPA1発現の定量的評価において、本発明者らは62のうち40(64.5%)の合致する前立腺標本が腫瘍組織におけるPMEPA1の発現低下を示すことを見出し、PMEPA1発現の低下と前立腺腫瘍形成との間の相関を示した(実施例8)。これらの発現パターンを器官限局性および器官非限局性腫瘍によって階層化した場合、器官限局性腫瘍(44%)に対して器官非限局性腫瘍(68%)で、より高い割合の患者がPMEPA1の発現低下を示し、このことはPMEPA1発現の低下が進行した前立腺癌の可能性の増加と相関することを示している。
【0021】
定義
「PMEPA1遺伝子」という用語は、PMEPA1ポリペプチドの定義に示されるような機能および構造上の特性を有するPMEPA1ポリペプチドをコードしているポリヌクレオチド配列を指す。
【0022】
「PMEPA1ポリペプチド」、「PMEPAタンパク質」、または文脈が許す場合は略して「PMEPA1」という用語は、配列番号2と実質的に同一のポリペプチドを指す。その定義は更に、PMEPA1変異体、例えばオーソログおよびホモログなどの類似体、同様に、癌細胞でのその発現が細胞増殖を抑制するPMEPA1、変異体および類似体の機能的に同等な断片を包含する。以下に述べる実施例7は、一例として、PMEPA1発現が腫瘍増殖を抑制するかどうかを判定するアッセイを提供する。当技術分野において公知の他の標準的な方法もまた使用されうる。
【0023】
「ポリペプチド」という用語は、「ペプチド」および「タンパク質」という用語と互換的に用いられ、長さまたは翻訳後修飾(例えばグリコシル化もしくはリン酸化)、あるいは起源(例えば種)に関わらず、任意のアミノ酸鎖を指す。
【0024】
「実質的に同一の」、または、「実質的に示された」という語句は、関連配列が所定配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、または99%同一であることを意味する。一例として、このような配列は対立遺伝子多型、様々な種に由来する配列であるかもしれず、または、それらはトランケーション、欠失、アミノ酸置換および/または付加により所定配列から派生するかもしれない。ポリペプチドでは、比較配列の長さは通常少なくとも20、30、50、100またはそれ以上のアミノ酸であろう。核酸では、比較配列の長さは通常少なくとも50、100、150、300、またはそれ以上のヌクレオチドであろう。2つの配列間の同一性パーセントは、例えば、Altschulら(1990) J. Mol. Biol., 215:403-410に記載されるBasic Local Alignment Tool(BLAST)、Needlemanら(1970) J. Mol. Biol., 48:444-453のアルゴリズム、または、Meyersら(1988) Comput. Appl. Biosci., 4:11-17のアルゴリズムのような標準的なアライメントアルゴリズムによって決定される。
【0025】
「アンドロゲン受容体」という用語は、男性ホルモンテストステロンに結合するタンパク質を指す。
【0026】
「診断する」という用語は、疾患もしくは状態を検出、同定、観察、または識別することを意味する。
【0027】
「予後判定する」という用語は、疾患の進行の危険性を規定することを意味する。
【0028】
「相関する」という用語は、2つの要素、例えば、PMEPA1発現と疾患の発生もしくは進行との間に、因果関係のある、相補的な、平行した、または相互的な関係を有するか、あるいは、質的および/または量的な対応を有するものとして確立または実証することを意味する。
【0029】
「癌細胞の増殖を抑制する」という語句は、PMEPA1ポリペプチドの非存在下での細胞増殖と比較した、PMEPA1ポリペプチドの存在下での細胞増殖の減少を指す。あるいは、細胞が基底レベルのPMEPA1ポリペプチド発現を持つ場合、「癌細胞の増殖を抑制する」という語句は、基底レベルのPMEPA1ポリペプチドの存在下での細胞増殖と比較して、増加したレベルのPMEPA1ポリペプチドの存在下での細胞増殖の減少を指す。細胞増殖は、実施例に記載されるコロニー形成アッセイなどの従来のアッセイを用いて測定できる。
【0030】
「アンドロゲン受容体の発現を低下させる」という語句は、PMEPA1ポリペプチドの非存在下での発現と比較して、PMEPA1ポリペプチドの存在下でのアンドロゲン受容体タンパク質または核酸の発現の減少を指す。あるいは、細胞が基底レベルのPMEPA1ポリペプチド発現を持つ場合、「アンドロゲン受容体の発現を低下させる」という語句は、基底レベルのPMEPA1ポリペプチドの存在下でのアンドロゲン受容体の発現と比較して、増加したレベルのPMEPA1ポリペプチドの存在下でのアンドロゲン受容体タンパク質または核酸の発現の減少を指す。
【0031】
「特異的な相互作用」、「特異的な結合」などの用語は、2つの分子が生理的条件下で比較的安定した複合体を形成することを意味する。本用語はまた、例えば、抗原結合ドメインをもつ特異的な結合メンバーがそのエピトープをもつ様々な抗原に結合できる場合、抗原結合ドメインが、多くの抗原がもつ特定のエピトープに特異的である状況にも当てはまる。特異的な結合は、高い親和性および低から中程度の受容能力によって特徴付けられる。非特異的な結合は、通常、中程度から高度の受容能力を伴う低い親和性を有する。一般的に、親和定数Kaが106M-1より高い時、結合は特異的であると考えられるが、Kaは107M-1より高くてもよく、別の実施形態では108M-1より高いかもしれない。必要であれば、結合条件を変化させることにより特異的な結合に実質的な影響を及ぼさずに、非特異性結合を減少させることができる。このような条件は当技術分野において公知であり、当業者は通常の技術を用いて適切な条件を選択できる。条件は通常、分子の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合時間、非関連分子(例えば血清アルブミン、ミルクカゼイン)の濃度等に関して規定される。
【0032】
「検出可能に標識された」という用語は、例えばオリゴヌクレオチドプローブもしくはプライマー、遺伝子もしくはその断片、またはcDNA分子などの分子に印付けし、その存在を同定する任意の手段を指す。分子を標識する方法は、当技術分野において周知であり、(例えば32P、35S、または125I等の同位元素による)放射性標識および非放射性標識(例えば化学発光標識)を含むが、これらに限定されるものではない。
【0033】
「調節する」という用語は、特定の反応または活性のアゴニストまたはアンタゴニストのいずれかとして作用する化合物の能力について述べる。従って、調節するという用語は「活性化する」および「抑制する」という用語を包含する。
【0034】
「調節化合物」という用語は、転写、翻訳、もしくは翻訳後レベルのいずれかでPMEPA1発現を「調節する」、または、PMEPA1ポリペプチドの生物学的活性を調節することができる任意の化合物を意味する。「活性化する」という用語は、例えば、調節化合物の存在下で、同化合物の非存在下での遺伝子またはポリペプチドの活性と比較して、PMEPA1のような遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が増加することを指す。発現レベルまたは活性の増加は、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である。同様に、「抑制する」という用語は、調節化合物の存在下で、同化合物の非存在下での遺伝子またはポリペプチドの活性と比較して、PMEPA1のような遺伝子の発現またはポリペプチドの活性が減少することを指す。発現レベルまたは活性の減少は、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上である。遺伝子の発現レベルもしくはポリペプチドの活性は、本明細書に記載されるように、または、当技術分野で一般に公知の技術によって測定され得る。
【0035】
「治療」という用語は本明細書では「治療法」という用語と互換的に用いられ、治療および予防/防止措置の両方を指す。「治療」または「治療する」という用語は、疾患、疾患の症状、もしくは疾患の素因の回復、治癒軽減、緩和、変更、矯正、改善、好転、または影響を目的として、疾患、疾患の症状もしくは疾患の素因に悩む被検者または被検者から単離した組織もしくは細胞への治療薬の適用あるいは投与を含む。治療を必要とする者は、既に特定の医学的疾患を有する個体、ならびに最終的に疾患をもつ可能性のある個体を含みうる。薬剤の投与は予防的に、望ましくない疾患または障害の症状の発現に先だって行うことができ、その結果、疾患または障害を予防し、あるいはその進行を遅延させることができる。本発明の予防または防止法は、用量および治療計画は異なるかもしれないが、本明細書に記載される他の治療法と同様の方法で実施することができる。
【0036】
「単離された」という用語は、実質的にその天然の環境から解放された分子を指す。任意の操作、例えば過剰発現、部分精製等によって天然に生じるレベル以上に上昇した任意の量のその分子は、この定義に含まれる。部分精製された組成物のみに関して、本用語は、単離された化合物が少なくとも50〜70%、70〜90%、90〜95%(w/w)またはより高い純度であることを指す。
【0037】
「有効な用量」または「有効な量」という用語は、結果的に患者の症状を改善する、または、例えば細胞増殖の抑制などの望ましい生物学的効果を生じる化合物の量を指す。有効な量は以後のセクションに記載するように決定することができる。
【0038】
「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」および「DNA」という用語は本明細書において互換的に用いられ、デオキシリボ核酸(DNA)、および適切な場合には、リボ核酸(RNA)、あるいはそれらのキメラ混合物または変異体もしくは改変体を指す。本用語はまたヌクレオチド類似体および一本鎖または二本鎖ポリヌクレオチドをも含むことを理解すべきである。ポリヌクレオチドの例はプラスミドDNAまたはその断片、ウイルスDNAまたはRNA、アンチセンスRNA等を含むが、それらに限定されない。「プラスミドDNA」という用語は環状の二本鎖DNAを指す。
【0039】
「トランスジーン」という用語は、細胞内に導入した際、例えば治療上有用なタンパク質の発現などの細胞に有益な特性をもたらすために、適切な状況下で転写され得るポリヌクレオチドを指す。遺伝子治療のために、トランスジーンは望ましい治療効果に基づいて選択される。適切な場合には、「トランスジーン」という用語はコード配列およびポリアデニル化シグナル、プロモーター、エンハンサー、リプレッサー等の任意選択の非コード調節配列の組合せを含むことを理解すべきである。
【0040】
「トランスフェクション」という用語は「遺伝子導入」、「形質転換」、および「形質導入」という用語と互換的に用いられ、ポリヌクレオチドの細胞内導入を意味する。「トランスフェクション効率」は、トランスフェクションを受けた細胞によって取り込まれるトランスジーンの相対量を表す。実際には、トランスフェクション効率はトランスフェクション処置の後に発現したリポーター遺伝子産物の量により評価される。
【0041】
「ベクター」という用語は「トランスジーン送達ベクター」、「発現ベクター」、「発現モジュール」、「発現カセット」、「発現構築物」、および適切な場合には、「核酸」と互換的に用いられ、その配列のすべてまたは一部を転写するために「宿主細胞」と呼ばれる細胞内にトランスフェクトされ得る、ウイルス性または非ウイルス性、原核生物または真核生物の、DNAまたはRNA配列を指す。その転写産物が発現される必要はない。またベクターがコード配列を有するトランスジーンを含む必要はない。ベクターはしばしば異なるウイルス、細菌、または哺乳類の遺伝子に由来するエレメントの合成物として組み立てられる。ベクターは、選択マーカーをコードする配列、細菌内でのそれらの増殖を促進する配列、または特定の細胞型のみで発現する1つ以上の転写単位のような、様々なコード配列および非コード配列を有する。例えば、哺乳類の発現ベクターはしばしば、細菌内でのベクターの増殖を促進する原核生物の配列と真核細胞のみで発現する1つ以上の真核生物の転写単位との両方を有する。発現ベクターの設計が形質転換される宿主細胞の選択、望ましいタンパク質の発現レベル等の要因に依存し得ることは、当業者によって認識されるであろう。
【0042】
ベクターに挿入されたトランスジーンのコード配列の転写を開始するために十分なベクターの最小配列は、「プロモーター」と呼ばれる。プロモーターは構成的または誘導性であってよく、適切な細胞内調節因子と結合した際、プロモーター依存性の転写を促進(「エンハンサー」)もしくは抑制(「リプレッサー」)する他の調節配列/エレメントと連結されうる。このようなエレメントがトランスジーン転写速度もしくは効率を制御し、または影響を及ぼす場合、プロモーター、エンハンサー、あるいはリプレッサーはトランスジーンに「機能しうる形で連結される」と言われる。例えば、トランスジーンコード配列の5'末端に隣接して位置するプロモーター配列は、通常トランスジーンに機能しうる形で連結されている。本明細書で用いられる場合、「調節エレメント」は「調節配列」と互換的に用いられ、プロモーター、エンハンサー、および他の発現制御エレメント、またはこのようなエレメントの任意の組合せを指す。
【0043】
「トランスフェクション試薬」という用語は、細胞壁および/または細胞膜を横切るポリヌクレオチドの導入を促進しうる物質を指す。一般的に、このような化合物は細胞表面およびポリヌクレオチド自体の静電荷を減少させるか、あるいは細胞壁および/または細胞膜の透過性を増加させる。
【0044】
本明細書で用いる場合、「規定した条件下でのハイブリダイゼーション」という用語は、互いに対して顕著に同一または相同であるヌクレオチド配列が互いに結合し続けるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を表す。その条件は、少なくとも50、100、150、300、またはそれ以上のヌクレオチド長、および少なくとも約70%、80%、85%、90%、または95%同一である配列が互いに結合し続けるものである。同一性パーセントは、Altschulら(1997) Nucleic Acids Res., 25: 3389-3402に記載されるように決定することができる。低ストリンジェンシーおよび高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の非限定的な例を、本出願において以後に示す。
【0045】
遺伝子の単離
ゲノムDNAは、例えば、プローブとして配列番号1のDNAもしくはその適切な断片を用いることにより、または実施例に記載したように、従来の技術によって単離されうる。
【0046】
本発明は配列番号1のPMEPA1 cDNA、例えば、配列番号2に示されたポリペプチドをコードするヌクレオチド配列、にハイブリダイズする核酸を提供する。
【0047】
ある実施形態では、選択の前に望ましい配列を増幅するため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が用いられる。既知のPMEPA1配列に相当するオリゴヌクレオチドプライマーがプライマーとして使用できる。例えば、少なくとも約17、30、または60個連続したヌクレオチドを含む配列番号1の断片は通常、プライマーとして使用できる。増幅される配列は、任意の真核生物種由来のmRNA、またはcDNA、またはゲノムDNAを含み得る。既知のPMEPA1ヌクレオチド配列と単離される核酸ホモログとの間のヌクレオチド配列類似性の程度の差が許容されるように、いくつかの異なる縮重プライマーの合成、およびPCR反応の開始におけるハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの変更を選択することができる。異種間のハイブリダイゼーションには低ストリンジェンシー条件が推奨され、一方、同種間のハイブリダイゼーションには中程度のストリンジェンシー条件が推奨される。PMEPA1配列ホモログの断片の増幅が成功した後、その断片は分子クローニングされ、配列決定されて、完全なcDNAまたはゲノムクローンを単離するためプローブとして利用される。これは遺伝子の完全ヌクレオチド配列の決定を可能にする。このようにして、必要以上の実験をせずにPMEPA1タンパク質をコードする更なる遺伝子が同定されうる。手順の詳細は、SambrookらのMolecular Cloning, A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY (www.molecularcloning.com); およびDNA Cloning: A Practical Approach, Glover, 編、MRL Press, Ltd., Oxford, UK, 1985に記載される。
【0048】
ひとたびPMEPA1配列の全部または一部を含むポリヌクレオチドが生成されると、所望の遺伝子を含む特異的なDNA断片の同定はいくつかの方法で達成することができる。例えば、ある量の(任意の種の)PMEPA1遺伝子もしくはその特異的なRNAの一部、つまりその断片が入手可能で、精製および標識できる場合、生成されたDNA断片は標識プローブに対する核酸ハイブリダイゼーションによりスクリーニングされうる(Bentonら、(1977) Science, 196:180; Grunsteinら、(1975) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 72:3961)。プローブに対して実質的な相同性を有するDNA断片がハイブリダイズするであろう。制限酵素消化および既知の制限地図に従って予測されるものとの断片サイズの比較によって、適切な断片を同定することも可能である。遺伝子の特性に基づいて更なる選択を行ってもよい。あるいはまた、遺伝子の存在を、その発現産物の物理的、化学的、または免疫学的特性に基づくアッセイによって検出してもよい。例えば、cDNAクローンはそれらが産生するタンパク質の特性、例えばPMEPA1の電気泳動移動度、等電点電気泳動での挙動、タンパク質分解地図、細胞増殖の抑制、アンドロゲン受容体発現の抑制等との類似性または同一性に基づいて選択され得る。PMEPA1に対する抗体が利用できる場合、PMEPA1タンパク質は、ELISA(酵素免疫測定法)型の方法で、検出可能に標識された抗体の推定上のPMEPA1への結合によって同定することができる。
【0049】
PMEPA1遺伝子はまた、核酸ハイブリダイゼーションとそれに続くin vitro翻訳を用いたmRNA選択によっても同定、単離され得る。この方法では、ハイブリダイゼーションによって相補的なmRNAを単離するために断片が用いられる。このようなDNA断片は入手可能な別の種(例えばショウジョウバエ、マウス、ヒト等)の精製PMEPA1 DNAに相当するものでもよい。単離した生成物のin vitro翻訳産物の免疫沈降解析または機能アッセイ(例えば癌細胞増殖の抑制、アンドロゲン受容体発現の抑制等)は、mRNAを同定し、従って、望ましい配列を含む相補的DNA断片を同定する。加えて、特異的なmRNAは、PMEPA1タンパク質に対する特異的な固定化抗体への細胞から単離されたポリソームの吸着によって選択されうる。鋳型として(吸着したポリソーム由来の)選択されたmRNAを用いて、検出可能に標識されたPMEPA1 cDNAを合成できる。mRNAまたはcDNAはその後、他のゲノムDNA断片からPMEPA1 DNA断片を同定するためプローブとして使用されうる。
【0050】
PMEPA1ゲノムDNAを単離する代替方法には、限定するものではないが、既知の配列からの遺伝子配列自体の化学合成、またはPMEPA1タンパク質をコードするmRNAに対するcDNAの作製が含まれる。例えば、PMEPA1遺伝子のcDNAクローニングのためのRNAはPMEPA1を発現する細胞から単離できる。他の方法も可能であり、本発明の範囲内である。
【0051】
同定、単離した遺伝子は、その後、以下のセクションで記載されるように後続のクローニングおよび発現のために適切なクローニングベクターに挿入することができる。
【0052】
PMEPA1遺伝子に相当するクローニングされたDNAまたはcDNAは、サザンハイブリダイゼーション(Southern (1975) J. Mol. Biol., 98:503-517)、ノーザンハイブリダイゼーション(例えば、Freemanら(1983) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:4094-4098参照)、制限酵素マッピング(Maniatis (1982) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版. Cold Spring Harbor, NY (www.molecularcloning.com))およびDNA配列解析を含むがそれらに限定されない方法によって解析され得る。ポリメラーゼ連鎖反応(米国特許第4,683,202号; 第4,683,195号; および第4,889,818号; Gyllensteinら(1988) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:7652-7656; Ochmanら(1988) Genetics, 120:621-623; Lohら(1989) Science, 243:217-220)とそれに続くPMEPA1特異的プローブを用いたサザンハイブリダイゼーションは、様々な細胞型由来のDNAでのPMEPA1遺伝子の検出を可能にする。PCR以外の増幅方法が一般に知られており、それらもまた使用できる。ある実施形態では、PMEPA1の遺伝子連鎖を決定するためにサザンハイブリダイゼーションが使用される。ノーザンハイブリダイゼーション解析はPMEPA1遺伝子の発現を測定するために使用できる。PMEPA1発現について、様々な発達または活性状態の様々な細胞型を検査することができる。使用する特異的PMEPA1プローブに対して望ましい類似度を有する核酸の検出を確実にするために、サザンおよびノーザンハイブリダイゼーションの両方に対するハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーを操作することができる。これらの方法の改変および当技術分野において周知の他の方法を使用してもよい。
【0053】
制限酵素マッピングを用いてPMEPA1遺伝子の遺伝子構造をおおむね決定することができる。制限酵素切断によって得られた制限地図は、その後DNA配列解析によって確認できる。
【0054】
DNA配列解析は、マキサム・ギルバート法(1980, Meth. Enzymol. 65:499-560)、サンガーのジデオキシ法(Sangerら(1977) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 74:5463)、T7 DNAポリメラーゼの使用(米国特許第4,795,699号)、または自動DNAシークエネーターの使用(例えばApplied Biosystems, Foster City, CA)を含むがそれらに限定されない、当技術分野において公知の技術によって行うことができる。
【0055】
核酸
1,141塩基対のPMEPA1 cDNA配列の解析は、以下の配列を有する759ヌクレオチドのオープンリーディングフレームを示した:
ATGGCGGAGC TGGAGTTTGT TCAGATCATC ATCATCGTGG TGGTGATGAT 50
GGTGATGGTG GTGGTGATCA CGTGCCTGCT GAGCCACTAC AAGCTGTCTG 100
CACGGTCCTT CATCAGCCGG CACAGCCAGG GGCGGAGGAG AGAAGATGCC 150
CTGTCCTCAG AAGGATGCCT GTGGCCCTCG GAGAGCACAG TGTCAGGCAA 200
CGGAATCCCA GAGCCGCAGG TCTACGCCCC GCCTCGGCCC ACCGACCGCC 250
TGGCCGTGCC GCCCTTCGCC CAGCGGGAGC GCTTCCACCG CTTCCAGCCC 300
ACCTATCCGT ACCTGCAGCA CGAGATCGAC CTGCCACCCA CCATCTCGCT 350
GTCAGACGGG GAGGAGCCCC CACCCTACCA GGGCCCCTGC ACCCTCCAGC 400
TTCGGGACCC CGAGCAGCAG CTGGAACTGA ACCGGGAGTC GGTGCGCGCA 450
CCCCCAAACA GAACCATCTT CGACAGTGAC CTGATGGATA GTGCCAGGCT 500
GGGCGGCCCC TGCCCCCCCA GCAGTAACTC GGGCATCAGC GCCACGTGCT 550
ACGGCAGCGG CGGGCGCATG GAGGGGCCGC CGCCCACCTA CAGCGAGGTC 600
ATCGGCCACT ACCCGGGGTC CTCCTTCCAG CACCAGCAGA GCAGTGGGCC 650
GCCCTCCTTG CTGGAGGGGA CCCGGCTCCA CCACACACAC ATCGCGCCCC 700
TAGAGAGCGC AGCCATCTGG AGCAAAGAGA AGGATAAACA GAAAGGACAC 750
CCTCTCTAG(配列番号1)759
【0056】
遺伝暗号の縮重(すなわち2以上のコドンが同一アミノ酸をコードできる)により、PMEPA1 DNA配列は配列番号1に示されたものから変化してもなお配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることができる。このような変異型DNA配列は対立遺伝子多型または(例えばPCR増幅の際に生じる)「サイレント」変異であり得、または天然の配列の突然変異誘発によって意図的に導入できる。
【0057】
PMEPA1核酸は、(a)配列番号1のヌクレオチド配列を含んでなる核酸;(b)配列番号2のポリペプチドをコードする核酸;(c)定義された条件下で(a)または(b)の核酸とハイブリダイズすることができ、LNCaP細胞での該核酸の発現がコロニー形成アッセイにおいて形成されるコロニー数を減少させる核酸;および(d)上記(c)の核酸によってコードされるポリペプチドをコードする核酸;から選択される単離された核酸配列を含む。(a)、(b)、(c)、および(d)の核酸によってコードされるポリペプチドは本発明に含まれる。ある実施形態では、定義された条件は低ストリンジェンシー条件である。別の実施形態では、定義された条件は中程度のストリンジェンシー条件である。更に別の実施形態では、定義された条件は高ストリンジェンシー条件である。
【0058】
適切なハイブリダイゼーション条件は、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, 2003 (www.wiley.com/cp)に例示されるように最小限の実験によって当業者により選択され得る。あるいは、ストリンジェント条件はSambrookらMolecular Cloning: A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Press, (www.molecularcloning.com)に記載されている。定義された低ストリンジェンシー条件の非限定的な例は下記のとおりである。DNAを含むフィルターを、35%ホルムアミド、5x SSC、50 mM Tris-HCl (pH 7.5)、5 mM EDTA、0.1% PVP、0.1%フィコール、1% BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAを含有する溶液中で6時間40℃にて前処理する。ハイブリダイゼーションは以下の改変を伴う同一の溶液中で行われる。すなわち、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.2% BSA、100μg/mlサケ精子DNA、10% (wt/vol) 硫酸デキストラン、および5〜20x106 32P標識プローブが用いられる。フィルターをハイブリダイゼーション混合液中で18〜20時間40℃にて保温し、その後2x SSC、25 mM Tris-HCl (pH 7.4)、5 mM EDTA、および0.1% SDSを含有する溶液中で1.5時間55℃で洗浄する。洗浄液を新しい溶液に交換し、更に1.5時間60℃で保温する。フィルターを吸取り紙で乾燥させ、オートラジオグラフィーに露光する。(例えば異種間ハイブリダイゼーションに用いられるような)当技術分野において周知の他の低ストリンジェンシー条件を使用してもよい。
【0059】
定義された高ストリンジェンシー条件の非限定的な例は下記のとおりである。6x SSC、50 mM Tris-HCl (pH 7.5)、1 mM EDTA、0.02% PVP、0.02%フィコール、0.02% BSA、および500μg/ml変性サケ精子DNAから成るバッファー中で8時間から一晩65℃で、DNAを含むフィルターのプレハイブリダイゼーションを行う。100μg/ml変性サケ精子DNAおよび5〜20x106 cpmの32P標識プローブを含有するプレハイブリダイゼーション混合液中で48時間65℃にてフィルターをハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は2x SSC、0.01% PVP、0.01%フィコール、および0.01% BSAを含む溶液中で1時間37℃にて行う。これに続いて0.1x SSC中で45分間50℃にて洗浄を行う。
【0060】
別の実施形態では、本発明の核酸は実質的に配列番号1に示された配列を含む。ある実施形態では、核酸は、配列番号1に対して少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一であり、例えば、実施例7に記載したようなコロニー形成アッセイで実証されるように、前立腺癌細胞の増殖を抑制するタンパク質をコードする。異種間で保存された領域を含むPMEPA1核酸もまた提供される。
【0061】
更に別の実施形態では、核酸は、配列番号1の少なくとも50、100、250、500、または750個連続したヌクレオチドの連続ストレッチを含む。このような配列番号1の連続した断片は、少なくとも1つの突然変異を含みうるが、かかる突然変異型の配列はもとの配列の機能を保持しかつ低または高ストリンジェンシー条件下で配列番号1とハイブリダイズする能力を保持する必要がある。
【0062】
PMEPA1タンパク質の変異体をコードする核酸が提供される。
【0063】
特定の実施形態では、ここに開示した核酸は、更に、融合パートナーと呼ばれるPMEPA1以外のタンパク質をコードする配列を含む。
【0064】
本発明はまた、上記のような本発明の少なくとも1つの核酸を含むベクター、転写または発現カセットの形をとる構築物を提供する。必要であれば、このようなベクターは更に、機能しうる形で連結された発現制御エレメントまたは調節エレメント、制限酵素切断部位等のような、任意選択のエレメントを含みうる。
【0065】
PMEPA1アンチセンス核酸もまた提供される。特定の実施形態では、オリゴヌクレオチドは、配列番号1をはじめとする本明細書に記載された本発明のPMEPA1核酸に対してアンチセンス方向の、少なくとも10、15、100、200、500、600、700、または750個連続したヌクレオチドである。ある実施形態では、PMEPA1アンチセンスオリゴヌクレオチドは一本鎖DNAである。
【0066】
ポリペプチド
本発明は、一部には、PMEPA1が腫瘍の増殖を抑制するという知見に基づくものである。例えば、実施例7において実証されるように、組換えPMEPA1の発現は、コロニー形成アッセイにおいて前立腺癌細胞株LNCaP、PC3、DU145ならびにLNCaP亜細胞株C4、C4-2、およびC4-2Bの増殖を抑制する。この証拠は、PMEPA1が腫瘍抑制作用を有することを実証する。
【0067】
PMEPA1オープンリーディングフレームは、以下の配列を有する予測分子量27.8 kDaの252アミノ酸タンパク質(配列番号2)をコードする:
MAELEFVQII IIVVVMMVMV VVITCLLSHY KLSARSFISR HSQGRRREDA 50
LSSEGCLWPS ESTVSGNGIP EPQVYAPPRP TDRLAVPPFA QRERFHRFQP 100
TYPYLQHEID LPPTISLSDG EEPPPYQGPC TLQLRDPEQQ LELNRESVRA 150
PPNRTIFDSD LMDSARLGGP CPPSSNSGIS ATCYGSGGRM EGPPPTYSEV 200
IGHYPGSSFQ HQQSSGPPSL LEGTRLHHTH IAPLESAAIW SKEKDKQKGH 250
PL*(配列番号2)252
【0068】
実施例3で述べるように、配列番号2はNEDD4 WW結合タンパク質に対して83%の同一性を共有し、2つのPYモチーフ、すなわち、PPPY(配列番号15)(「PY1」)およびPPTY(配列番号16)(「PY2」)を含む。Xが任意のアミノ酸であり得るPPXYモチーフは、WWドメイン含有タンパク質との結合を促進することが示されている。本発明者らは実施例においてPMEPA1がWWドメインを含有するNEDD4タンパク質に結合することを実証する。NEDD4は、ユビキチン依存性のプロテアソームを介したタンパク質分解経路に関与するユビキチンタンパク質リガーゼ(E3)である。
【0069】
PMEPA1などのポリペプチドがWWドメインを有する他のタンパク質に結合するかどうかを決定するためのアッセイとしては、当技術分野において周知であり、コンビナトリアルペプチドライブラリー、アフィニティークロマトグラフィー、発現ライブラリースクリーニングおよび酵母ツーハイブリッドスクリーニングなどの方法がある(Kayら(2000)FEBS Lett., 480:55-62; Frederickら(1999)Mol. Cell. Biol., 19:2330-2337; DaiおよびPendergast(1995)Genes Dev., 9:2569-2582; Kitamuraら(1996)Biochem. Biophys. Res. Commun., 219:509-514; Richardら(1995)Mol. Cell. Biol. 15:186-197;ならびにSudol(1994)Oncogene 9:2145-2152)。
【0070】
実施例に示した実験データは、PMEPA1が癌細胞増殖を下方制御することを示す。このような機能の低下は、腫瘍形成または既存の疾患の進行に有利に働く。従って、PMEPA1は、WWドメイン含有分子との相互作用により、腫瘍形成または癌進行を抑制する可能性がある。NEDD4結合タンパク質に対するPMEPA1の相同性およびNEDD4と結合するPMEPA1の能力は、PMEPA1が細胞においてユビキチン化およびプロテアソーム経路を介したタンパク質の代謝回転を調節する可能性があることを示す。この作用機構は、当然のことながら、単なる提案にすぎない。更に、それはPMEPA1がその機能を発揮する唯一の作用機構ではない。本発明は、PMEPA1活性の任意の特定の作用機構に限定されるものではない。
【0071】
ある実施形態では、本発明のポリペプチドは配列番号2に示されたアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、ポリペプチドは実質的に配列番号2に示されたようなアミノ酸配列を含む。更に別の実施形態では、ポリペプチドは配列番号2と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含むが、ただし、前記ポリペプチドは、例えば、実施例7に記載したようなコロニー形成アッセイで実証されるように、前立腺癌細胞の増殖を抑制する。下記で更に詳細に記載されるように、これらのポリペプチドは組換えDNA技術によって生産することができる。
【0072】
別の実施形態では、本発明のポリペプチドは配列番号2の少なくとも50、100、150、200個、またはそれ以上のアミノ酸の連続ストレッチを含む。このような配列番号2の断片は、それがもとの配列の機能を保持する限り、少なくとも1つの突然変異を含みうる。このような断片は、例えば、約アミノ酸(aa)20から約aa 250、約aa 100から約aa 250、約aa 200から約aa 250、約aa 20から約aa 100、約aa 20から約aa 200、約aa 100から約aa 200、および約aa 100から約aa 250より誘導することができる。
【0073】
PMEPA1ポリペプチドまたはそれらの断片は、クロマトグラフィー(例えばイオン交換、(免疫)アフィニティー、およびサイズ分画カラムクロマトグラフィー)、遠心分離、溶解度の差異、もしくはタンパク質精製のための他の標準的な技術を含む標準方法によって単離、精製されうる。ポリペプチドおよびそれらの断片の機能的特性は、適切なアッセイを用いて、例えば、実施例に記載されるような増殖抑制アッセイによって評価することができる。
【0074】
代替方法として、PMEPA1ポリペプチドは、ここに開示したPMEPA1の配列を用いて、組換えDNA技術または化学合成法(例えばHunkapillerら(1984) Nature, 310:105-111参照)によって生産することができる。
【0075】
PMEPA1タンパク質配列は疎水性解析によって特徴付けられる(Hoppら(1981) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 78:3824)。疎水性プロファイルを使用することにより、PMEPA1タンパク質の疎水性および親水性領域、ならびにこのような領域をコードする遺伝子配列の対応する領域を同定することができる。
【0076】
二次および三次構造解析(Chouら(1974) Biochemistry, 13:222)を実施して、特異的な三次元構造をとるPMEPA1の領域を同定することができる。その他の構造解析法としては、X線結晶学(Engstom (1974) Biochem. Exp. Biol., 11:7-13)および開示したポリペプチドの仮想表示のコンピュータモデリング(Fletterickら(1986) Computer Graphics and Molecular Modeling, in Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY)が含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
クローニングおよび発現系
本発明は、上述のような1つ以上の核酸を含む宿主細胞、および本発明の核酸を発現させることを含む本発明のPMEPA1ポリペプチドの生産方法を提供する。発現は、核酸を含む組換え宿主細胞を適切な条件下で培養することにより達成される。発現によるPMEPA1ポリペプチドの産生に続いて、ポリペプチドは任意の適切な技術を用いて単離および/または精製される。
【0078】
本発明のPMEPA1ポリペプチドおよびコードしている核酸ならびにベクターは、例えば、それらの天然の環境から、実質的に純粋もしくは均一な形で単離および/または精製することができ、また、核酸の場合には、必要とされる機能を有するポリペプチドをコードする配列以外の、由来する核酸もしくは遺伝子を含まないか、または実質的に含まない。
【0079】
さまざまな異なる宿主細胞におけるポリペプチドのクローニングおよび発現系は周知である。適切な宿主細胞としては、細菌、哺乳類細胞、および酵母、ならびにバキュロウイルス系が挙げられる。異種ポリペプチドの発現のために当技術分野で利用可能な哺乳類細胞株には、チャイニーズハムスター卵巣細胞、HeLa細胞、新生仔ハムスター腎細胞、NS0マウスメラノーマ細胞、ヒト前立腺癌細胞株PC3およびLNCaP、その他の多くが含まれる。一般的な細菌宿主は大腸菌である。他の適切な細胞株については、Fernandezら(1999) Gene Expression Systems, Academic Pressを参照されたい。本発明に適合しうる細胞はどれもここに開示したポリペプチドの生産に使用することができる。
【0080】
プロモーター配列、ターミネーター配列、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列を含む適切な調節配列、マーカー遺伝子および必要に応じて他の配列を含有する、適切な発現ベクターを選択または構築することができる。ベクターは、必要に応じてプラスミドまたは、例えばファージもしくはファージミドのようなウイルスでありうる。更なる詳細については、例えばSambrookら、Molecular Cloning: a Laboratory Manual: 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory Press(www.molecularcloning.com)を参照されたい。例えば、核酸構築物の調製、突然変異誘発、配列決定、細胞へのDNA導入および遺伝子発現、ならびにタンパク質の解析等における核酸の操作のための多数の公知技術および方法は、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編、John Wiley & Sons, 2003 (www.wiley.com/cp) に詳細に記載されている。このようにして、本発明は発現ベクターを含有する宿主細胞を提供し、その発現ベクターはプロモーターまたはエンハンサーなどの調節配列に機能しうる形で連結された本発明のPMEPA1核酸配列を含む。ある実施形態では、宿主細胞は真核細胞である。別の実施形態では、宿主細胞は原核細胞である。
【0081】
プロモーターは誘導性または構成的であってよく、状況に応じて組織特異的であってもよい。前立腺細胞のための組織特異的プロモーターとしては、限定するものではないが、ラットプロバシン(probasin)および前立腺ステロイド結合タンパク質をコードする遺伝子の調節エレメント(Allisonら(1989) Mol. Cell Biol., 9:2254-2257; Greenbergら(1994) Mol. Endocrinol., 8:230-239)、ならびにヒト前立腺特異的抗原、前立腺酸性ホスファターゼ、DD3およびPCGEM1をコードする遺伝子由来の調節エレメント(Schuurら(1996) J. Biol. Chem., 271:7043-7051; Zelivianskiら(2002) Oncogene, 21:3696-3705; Bussemakersら(1999) Cancer Res., 59:5975-5979; Srikantanら(2000) Proc. Natl. Acad. Sci.U.S.A, 97:12216-12221)が含まれる。他の組織特異的プロモーターは当技術分野において周知である。
【0082】
特定の実施形態では、PMEPA1核酸を含むベクターは、pEGFP-C1またはpEGFP-N1プラスミドである。
【0083】
従って、更なる態様は、宿主細胞にPMEPA1核酸を導入することを含む方法を提供する。導入にはどのような利用可能な技術を使用してもよい。真核細胞の場合、適切な技術として、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、リポソームを介したトランスフェクション、およびレトロウイルスもしくは他のウイルス(例えば、ワクシニア)を用いたまたは昆虫細胞に対してはバキュロウイルスを用いた形質導入が挙げられる。細菌細胞の場合の適切な技法としては、塩化カルシウム形質転換、エレクトロポレーションおよびバクテリオファージを用いたトランスフェクションが含まれる。
【0084】
導入に続いて、例えば、遺伝子発現のための条件下で宿主細胞を培養することによって、核酸からの発現を誘導または可能にしうる。
【0085】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)もまた、例えば、上述のような本発明の核酸を単離および増幅するために使用することができる。
【0086】
代替方法として、本発明の所望の核酸またはその断片は、ポリヌクレオチド合成の周知の技術を用いて化学的に合成することも可能である。
【0087】
抗体
PMEPA1ポリペプチドは免疫原として、このような免疫原と特異的に結合する抗体を作製するために使用される。このような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖およびFabフラグメントを含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、ヒトPMEPA1タンパク質に対する抗体が産生される。別の実施形態では、PMEPA1タンパク質のドメイン(例えばPYモチーフ)に対する抗体が産生される。特定の実施形態では、親水性と同定されたPMEPA1タンパク質の断片を、抗体産生のための免疫原として使用する。
【0088】
PMEPA1タンパク質に対するポリクローナル抗体の産生のために、当技術分野で公知の様々な方法を使用することができる。特定の実施形態では、配列番号2の配列またはその部分配列によってコードされるPMEPA1タンパク質のエピトープに対するウサギポリクローナル抗体を得ることができる。抗体産生のために、PMEPA1タンパク質の注入によって様々な宿主動物(ウサギ、マウス、ラット等を含むがそれに限定されない)を免疫することができる。免疫応答を高めるために、宿主種に応じて様々なアジュバントを使用することが可能であり、それらはフロイント(完全および不完全)、水酸化アルミニウムのような無機ゲル、リゾレシチンのような界面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、ならびにBCG(bacille Calmette-Guerin)およびCorynebacterium parvumなどの潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない。
【0089】
PMEPA1タンパク質に対するモノクロナール抗体を調製する場合は、連続継代培養細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術が使用される。例えば、Kohlerら(1975)Nature, 256:495-497によって最初に開発されたハイブリドーマ技術、ならびにトリオーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozborら(1983)Immunology Today、4:72)、およびヒトモノクロナール抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Coleら(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)である。本発明によれば、ヒト抗体を使用することができ、ヒトハイブリドーマの使用により(Coteら、(1983)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A、80:2026-2030)、またはin vitroでEBVウイルスを用いてヒトB細胞を形質転換することにより(Coleら(1985)Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)取得することができる。本発明によれば、PMEPA1に特異的なマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性のヒト抗体分子由来の遺伝子とスプライシングすることによる、キメラ抗体の作製のために開発された技術(Morrisonら(1984)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 81:6851-6855; Neubergerら(1984)Nature 312:604-608; Takedaら(1985) Nature 314:452-454)が使用でき、このような抗体は本発明の範囲内である。
【0090】
一本鎖抗体の作製のための記載された技術(米国特許第4,946,778号)を用いて、PMEPA1特異的一本鎖抗体を作製することができる。本発明の更なる実施形態では、PMEPA1タンパク質に対して所望の特異性を有するモノクローナルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にするため、Fab発現ライブラリーの構築のための記載された技術(Huseら (1989) Science, 246:1275-1281)を使用する。
【0091】
抗体分子のイディオタイプを含む抗体フラグメントは公知の技術によって作製できる。例えば、このようなフラグメントには、抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab')2フラグメント、F(ab')2フラグメントのジスルフィド架橋の還元によって生成されるFab'フラグメント、抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することによって生成されるFabフラグメント、ならびに一本鎖Fv(scFv)フラグメントを含むFvフラグメントが含まれるが、それらに限定されない。
【0092】
抗体の生産において、所望の抗体のスクリーニングは、例えばELISAのような当技術分野において公知の技術によって達成され得る。例えば、PMEPA1タンパク質の特定のドメインを認識する抗体を選択するために、このようなドメインを含むPMEPA1断片と結合する産物について、作製したハイブリドーマをアッセイすることができる。
【0093】
変異体および類似体
PMEPA1に関連した機能的に活性のある変異体および類似体の生産および使用は、本発明の範囲内である。これらの機能的に活性のある変異体または類似体は、完全長の野生型PMEPA1タンパク質に関連した1つ以上の活性を示す能力がある。一例として、望ましい免疫原性または抗原性を有するこのような変異体または類似体は、例えば、イムノアッセイにおいて、免疫感作のため、PMEPA1活性の阻害のため等に使用される。望ましい対象のPMEPA1特性を保持するか、または、欠如もしくは阻害する変異体または類似体はそれぞれ、このような特性およびその生理的な相関物の誘導因子またはインヒビターとして使用できる。これらのPMEPA1特性には、WWドメインを有するタンパク質または他のPMEPA1結合パートナーとの結合、癌細胞増殖の抑制、アンドロゲン受容体発現の抑制、およびアンドロゲン受容体によって転写が制御される遺伝子発現の調節が含まれるが、これらに限定されない。PMEPA1の変異体または類似体は、実施例に記載されるアッセイを含むがそれに限定されない当技術分野において公知の方法により、所望の活性について試験することができる。
【0094】
一例として、機能的に同等な分子を提供する置換、付加および/または欠失によってPMEPA1配列を改変することにより、PMEPA1変異体を作製できる。PMEPA1遺伝子と実質的に同じアミノ酸配列をコードする配列番号1以外のDNA配列を、本発明の実施において使用してもよい。これらには、配列内の機能的に同等なアミノ酸残基をコードする異なるコドンの置換によって改変され、それゆえ「サイレント」変化を生じる、PMEPA1遺伝子の全部または一部を含むヌクレオチド配列が含まれるが、それに限定されない。同様に、本発明のPMEPA1変異体には、配列内の残基が機能的に同等なアミノ酸残基で置換されてサイレント変化を生じる改変された配列を含む、配列番号2の全部または一部を含有するものが含まれるが、それに限定されない。例えば、配列内の1個以上のアミノ酸残基は、機能的同等物として作用して、結果として「サイレント」変化を生じる類似の極性の別のアミノ酸によって置換できる。配列内のアミノ酸の置換は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することができる。例えば、非極性アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、およびメチオニンが含まれる。極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
【0095】
ある実施形態では、PMEPA1変異体は、PMEPA1の少なくとも1つのPYモチーフに少なくとも1つの突然変異および/または欠失を有する。これらの変異体は、例えば、低増殖性疾患の治療に使用できる。更に、これらの変異体は、抗体を調製するための免疫原として使用できる。
【0096】
本発明のPMEPA1変異体および類似体は、遺伝子またはmRNAレベルで行われる様々な操作によって作製できる。例えば、クローニングされたPMEPA1遺伝子配列は、当技術分野において公知の多数の方法のいずれかによって改変することができる(Maniatis(1990), Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第3版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (www.molecularcloning.com))。この配列を制限酵素により適切な部位で切断し、続いて更なる酵素的修飾を行い、必要に応じて、単離してin vitroで連結することができる。PMEPA1の変異体または類似体をコードする遺伝子の作製においては、改変された遺伝子が確実にPMEPA1と同じ翻訳読み枠内に留まり、そして所望のPMEPA1活性がコードされている遺伝子領域で、翻訳終止シグナルによって絶対に中断されないように、注意を払うべきである。
【0097】
更に、PMEPA1核酸にin vitroまたはin vivoにおいて突然変異を起こさせて、翻訳、開始および/または終止配列を作製および/または破壊したり、あるいは、コード領域に変異を導入したり、かつ/または新しい制限酵素部位を形成したりもしくは既存のものを除去したりすることができる。当技術分野において公知のどのような突然変異誘発技術を使用してもよく、それらには化学的突然変異誘発、in vitroでの部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonら (1978) J. Biol. Chem., 253:6551)等が含まれるが、それらに限定されない。
【0098】
ポリヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖の、DNAまたはRNAまたはキメラ混合物、あるいはその変異体もしくは改変体であり得る。オリゴヌクレオチドは、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格において改変され得る。オリゴヌクレオチドは他の付属的なグループを含んでいてもよく、例えば、ペプチド、または細胞膜(例えばLetsingerら (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A, 86:6553-6556; Lemaitreら (1987) Proc. Natl. Acad. Sci., 84:648-652; PCT公開番号WO 88/09810参照)もしくは血液脳関門(例えばPCT公開番号WO 89/10134参照)を横切っての輸送を促進する薬剤、ハイブリダイゼーション誘導性切断剤(例えばKrolら、(1988) Bio/Techniques, 6:958-976参照)、またはインターカレート剤(例えばZon (1988) Pharm. Res., 5:539-549参照)などを含みうる。
【0099】
変異体および類似体のその他の特定の具体例については、他のセクションに記載する。
【0100】
治療上の用途
本発明は、治療用化合物(本明細書では「治療薬」という)の投与による様々な疾患および障害の治療または予防を提供する。「治療薬」としては、限定するものではないが、PMEPA1タンパク質、PMEPA1タンパク質をコードする核酸、PMEPA1アンチセンス核酸、PMEPA1抗体、ならびにPMEPA1発現を増加させうる化合物を含むPMEPA1アゴニストおよびアンタゴニストが挙げられる。PMEPA1療法の治療効果は、疾患および/または癌の進行を測定するために通常使用されているパラメーターを測定することによりモニタリングすることができる。例えば、前立腺癌におけるPMEPA1の治療効果は、特に前立腺の外科手術後に、前立腺癌の進行をモニタリングするために通常使用される前立腺特異的抗原(PSA)のようなアンドロゲン調節性遺伝子の血清レベルを測定することによって判定することができる。
【0101】
過増殖性障害
細胞の過剰増殖を伴う障害は、PMEPA1機能を促進する(活性化する)治療薬の投与によって治療または予防される。細胞増殖が欠損しているかまたは望まれる障害は、PMEPA1機能に拮抗する(阻害する)治療薬の投与によって治療または予防される。このことを以下で詳しく説明する。
【0102】
本発明のこの実施形態によれば、障害の治療に有用な治療薬は、細胞の生存または分化を促進する生物学的活性を試験することによって選択することができる。例えば、前立腺癌の治療を含めて、癌治療に関する特定の実施形態では、治療薬は腫瘍細胞の増殖を減少させる。これらの効果は、実施例に記載されるように、または、当技術分野において標準的な他の方法を用いて測定される。
【0103】
PMEPA1機能を促進する(すなわち、増加または供給する)このような治療薬の例として、限定するものではないが、PMEPA1タンパク質(機能的に活性のある、特に細胞増殖の抑制に活性がある(例えば、in vitroアッセイまたはモデル動物において実証される)変異体、類似体、または断片を含む)、およびPMEPA1タンパク質をコードする核酸(例えば、遺伝子治療に使用される)が挙げられる。使用可能な他の治療薬、例えばPMEPA1アゴニストは、in vitroアッセイまたはモデル動物を用いて同定することができ、それらの例を後述する。
【0104】
特定の実施形態では、PMEPA1機能を促進する治療薬は、以下の疾患または障害に治療上(予防を含む)投与される。すなわち、(1)PMEPA1タンパク質のレベルまたは機能の欠如または(正常もしくは所望のレベルに対して)低下を伴う疾患または障害、例えば、PMEPA1タンパク質が欠乏している、遺伝的欠陥がある、生物学的に不活性もしくは低活性である、または過少発現である疾患または障害、あるいは(2)in vitroまたはin vivoアッセイがPMEPA1アゴニスト投与の有用性を示す疾患または障害である。PMEPA1タンパク質のレベルまたは機能の欠如または低下は、例えば、患者から生体サンプル、例えば組織サンプル(例えば生検組織由来)、血液サンプル、もしくは尿サンプルを採取し、in vitroにおいて発現されたPMEPA1 mRNAもしくはタンパク質のmRNAまたはタンパク質レベル、構造および/または活性についてサンプルをアッセイすることによって、容易に検出することができる。当技術分野で標準的な多数の方法を使用することができ、それらには、キナーゼアッセイ、PMEPA1タンパク質を検出および/または可視化するイムノアッセイ(例えばウェスタンブロット、免疫沈降とそれに続くSDS-PAGE、免疫細胞化学等)、および/または、PMEPA1 mRNAの検出および/または可視化によってPMEPA1発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーション、RT-PCR等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0105】
治療または予防可能な過剰増殖を伴う疾患および障害としては、限定するものではないが、悪性疾患、前悪性状態(例えば過形成、異形成、形成異常)、良性腫瘍、過増殖性障害、良性異常増殖障害等が挙げられる。PMEPA1機能を促進する治療薬の投与により治療または予防が可能な悪性疾患および関連障害には、白血病(急性白血病、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄芽球性、前骨髄性、骨髄単球性、単球性、赤白血病、慢性白血病、慢性骨髄性(顆粒球性)白血病、慢性リンパ性白血病)、真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病を含む)、多発性骨髄腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、充実性腫瘍(肉腫および上皮癌、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ肉腫、リンパ内皮肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、大腸癌、膵臓癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、絨毛膜癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルム腫瘍、子宮頸癌、子宮癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣細胞腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫、黒色腫、神経芽腫、および網膜芽腫が含まれるが、これらに限定されない。このような障害の総説については、Fishmanら(1985) Medicine, 第2版、J. B. Lippincott Co., PAを参照されたい。
【0106】
特定の実施形態においては、悪性疾患もしくは異常増殖性変化(異形成および形成異常など)、または過増殖性障害が前立腺において治療または予防される。
【0107】
PMEPA1活性を促進する本発明の治療薬はまた、前悪性状態を治療するため、また、新生物形成もしくは悪性状態(本明細書に記載した障害を含むが、それらに限定されない)への進行を予防するために投与され得る。腫瘍または癌への進行に先行することが知られるまたは疑われる状態、特に過形成、異形成、とりわけ形成異常から成る非腫瘍性細胞増殖が起こっている状態において、このような予防または治療上の使用が必要とされる(このような異常な増殖状態の総説については、Robbinsら(1976) Basic Pathology, 第2版、W.B. Saunders Co., PA, pp. 68-79を参照されたい)。過形成は、構造もしくは機能の著しい変化なしに、組織または器官での細胞数の増加を伴う制御された細胞増殖の形である。例えば、子宮内膜の過形成はしばしば子宮内膜癌に先立って起こる。異形成は、あるタイプの成熟または完全に分化した細胞が別のタイプの成熟細胞に置き換わる制御された細胞増殖の形である。異形成は上皮または結合組織細胞において起こり得る。非定型的な異形成はやや無秩序に異形成性の上皮を伴う。形成異常はしばしば癌の前兆であり、主に上皮において見いだされる。それは非腫瘍性細胞増殖の最も無秩序な形であり、個々の細胞の均一性および細胞の構造的配向性の喪失を伴う。形成異常細胞はしばしば異常に大きく、濃く染色される核を持ち、多形態性を示す。形成異常は慢性的な刺激または炎症が存在する場所に特徴的に生じ、頚部、気道、口腔、および胆嚢に見られることが多い。
【0108】
過形成、異形成、もしくは形成異常として特徴づけられる異常な細胞増殖の存在の代わりに、またはそれに加えて、患者由来の細胞サンプルによってin vivoもしくはin vitroで示される、変化した表現型または悪性の表現型の1以上の特徴の存在は、PMEPA1機能を促進する治療薬の予防/治療上の投与が望ましいことを示す。このような変化した表現型の特徴には、形態変化、より緩い基底への接着、接触阻害の喪失、足場依存性の喪失、プロテアーゼ放出、糖輸送の増加、血清要求性の減少、胎児性抗原の発現等が含まれる。
【0109】
特定の実施形態では、白斑症、上皮の良性の過形成性もしくは形成異常性病変、またはボーエン病は、予防的介入が望ましいことを示す前腫瘍性病変である。
【0110】
別の実施形態において、線維嚢胞性疾患(嚢胞性過形成、乳腺異形成、特に腺症(良性上皮過形成))は予防的介入が望ましいことを示す。
【0111】
他の実施形態では、以下の悪性疾患の素因の1つ以上を示す患者が、有効な量の治療薬の投与によって治療される。すなわち、悪性家族性ポリポーシスまたはガードナー症候群(大腸癌の可能性のある徴候)に関連する染色体転座、良性単クローン性免疫グロブリン血症(多発性骨髄腫の可能性のある徴候)、および(遺伝子の)メンデル型遺伝形式を示す癌または前癌性疾患(例えば、家族性大腸ポリポーシス、ガードナー症候群、遺伝性外骨腫、多腺性内分泌腺腫症、アミロイド産生および褐色細胞腫を伴う甲状腺髄様癌、ポイツ・ジェガース症候群、フォン・レックリングハウゼン神経線維腫症、網膜芽細胞腫、頚動脈球腫瘍、皮膚悪性黒色腫、眼内悪性黒色腫、色素性乾皮症、毛細血管拡張性運動失調症、チェディアック・東症候群、白子症、ファンコーニ再生不良性貧血、ならびにブルーム症候群;Robbinsら(1976) Basic Pathology,第2版、W.B. Saunders Co., PA, pp. 112-113等を参照)を持つ者との一親等の親族である。別の特定の実施形態では、本発明の治療薬は、乳癌、大腸癌、肺癌、膵臓癌もしくは子宮癌、または黒色腫もしくは肉腫の進行を防止するため、ヒト患者に投与される。
【0112】
低増殖性障害
細胞増殖の欠陥を伴う疾患および障害、または治療もしくは予防のために細胞増殖が必要とされる疾患および障害は、PMEPA1機能(特にPMEPA1を介した細胞増殖の抑制)に拮抗する(阻害する)治療薬の投与によって、治療または予防される。使用可能な治療薬としては、抗PMEPA1抗体(ならびにその結合領域を含むフラグメントおよびその変異体)、PMEPA1に拮抗するPMEPA1変異体または類似体(少なくとも1つのPMEPA1 PYモチーフに少なくとも1つの突然変異および/または欠失を持つ変異体を含む)、PMEPA1アンチセンス核酸、ならびに、相同組換えによって内在性のPMEPA1機能をノックアウトするために使用される、正常に機能しない(例えばPMEPA1コード配列内への異種(非PMEPA1配列)挿入による)PMEPA1核酸(例えばCapecchi (1989) Science, 244:1288-1292参照)が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
特定の実施形態では、PMEPA1遺伝子の一部を含む核酸(PMEPA1配列が異なる遺伝子と隣接する)は、相同組換えによるPMEPA1不活性化を促進するPMEPA1アンタゴニストとして使用される(Kollerら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86:8932-8935; Zijlstraら(1989) Nature, 342:435-438も参照)。PMEPA1機能を阻害する他の治療薬は、例えば、PMEPA1の別のタンパク質(例えばWWドメインを有するタンパク質)への結合を阻害する能力、または、in vitroでアッセイされるような既知のPMEPA1機能を阻害する能力に基づいた、公知の簡便なin vitroアッセイの使用によって同定することができるが、(例えばショウジョウバエにおける)遺伝学的アッセイを使用してもよい。適切なin vitroまたはin vivoアッセイを利用して、特定の治療薬の効果およびその投与が罹患した組織の治療に必要とされるかどうかを決定することができる。
【0114】
特定の実施形態では、PMEPA1機能を阻害する治療薬は、以下の疾患または障害に治療上(予防を含む)投与される。すなわち、(1)PMEPA1タンパク質または機能のレベルの増加を伴う疾患または障害、例えば、PMEPA1タンパク質が過剰活性であるかまたは過剰発現されるような疾患または障害、あるいは(2)in vitroまたはin vivoアッセイがPMEPA1アンタゴニスト投与の有用性を示す疾患または障害である。PMEPA1タンパク質または機能のレベルの増加は、例えば、タンパク質および/またはmRNAを定量することによって、患者の組織サンプル(例えば生検組織由来)を採取して、in vitroにおいて発現されたPMEPA1 mRNAもしくはタンパク質のmRNAまたはタンパク質レベル、構造および/または活性について該サンプルをアッセイすることによって、容易に検出できる。当技術分野において標準的な多数の方法を使用することができ、それらには、キナーゼアッセイ、PMEPA1タンパク質を検出および/または可視化するイムノアッセイ(例えばウェスタンブロット、免疫沈降とそれに続くSDS-PAGE、免疫細胞化学等)、および/または、PMEPA1 mRNAの検出および/または可視化によってPMEPA1発現を検出するハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンアッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーション等)が含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
細胞増殖の欠損を伴う疾患および障害、または治療もしくは予防のために細胞増殖が望ましく、PMEPA1機能の阻害によって治療もしくは予防され得る疾患および障害としては、変性疾患、発育不全、低増殖性障害、身体外傷、病変、創傷が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、PMEPA1拮抗作用を利用して、創傷治癒または病変もしく損傷等の再生を促進することができる。
【0116】
本発明に従って治療される病変には、以下の病変が含まれるが、これらに限定されない。すなわち、(i)身体的損傷に起因するまたは外科手術に関連した病変を含む外傷性病変、(ii)酸素不足が細胞の損傷または死を引き起こす、例えば、心筋もしくは脳の梗塞または虚血、あるいは脊髄の梗塞または虚血のような、虚血性の病変、(iii)細胞が悪性組織によって破壊または傷害される、悪性病変、(iv)感染の結果として、例えば、膿瘍によって、あるいはヒト免疫不全ウイルス、帯状疱疹ウイルス、もしくは単純ヘルペスウイルスによる感染に関連して、またはライム病、結核もしくは梅毒に関連して、組織が破壊または傷害される、感染性の病変、(v)パーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病または筋萎縮性側索硬化症に関連した神経系の変性を含むがそれに限定されない、変性過程の結果として組織が破壊または傷害される、変性病変、(vi)ビタミンB12欠乏、葉酸欠乏、ウェルニッケ病、タバコ・アルコール性弱視、マーキアファーバ・ビグナミ病(脳梁の一次変性)およびアルコール依存性小脳変性を含むがこれらに限定されない、栄養障害もしくは代謝障害により組織が破壊または傷害される、栄養上の疾患または障害に関連した病変、(vii)糖尿病または全身性エリテマトーデスを含むがこれらに限定されない、全身性疾患に関連した病変、(viii)アルコール、鉛、または他の毒素を含む有毒物質に起因する病変、ならびに(ix)多発性硬化症、ヒト免疫不全ウイルス関連脊髄症、横断性脊髄症、進行性多病巣性白質脳障害、および橋中央ミエリン溶解を含むがこれらに限定されない脱髄疾患により神経系の一部が破壊または傷害される、神経系の脱髄病変である。
【0117】
ある実施形態では、PMEPA1アンチセンス核酸の使用によってPMEPA1機能が阻害される。本発明は、本明細書に記載された任意のPMEPA1ヌクレオチドに対してアンチセンスの、少なくとも約10、15、100、200、500、600、700、または750個連続したヌクレオチドからなる核酸の治療上または予防上の使用を提供する。特定の実施形態では、PMEPA1アンチセンス核酸は、配列番号1に対してアンチセンス方向の、少なくとも約10、15、100、200、500、600、700、または750個連続したヌクレオチドを含む。本明細書において用いる場合、PMEPA1「アンチセンス」核酸とは、いくらかの配列相補性によってPMEPA1 RNA(好ましくはmRNA)の一部にハイブリダイスできる核酸を指す。アンチセンス核酸はPMEPA1 mRNAのコード領域および/または非コード領域に相補的でありうる。このようなアンチセンス核酸はPMEPA1機能を阻害する治療薬としての有用性を持ち、本明細書に記載されるような障害の治療または予防に使用できる。
【0118】
本発明のアンチセンス核酸は、一本鎖もしくは二本鎖のRNAまたはDNA、あるいはその改変体または変異体であるオリゴヌクレオチドであってよく、これらは細胞に直接投与することもできるし、体外から導入されたコード配列の転写によって細胞内で産生させることもできる。
【0119】
遺伝子治療
特定の実施形態では、PMEPA1タンパク質をコードする配列を含む核酸は、遺伝子治療によってPMEPA1機能を促進するために投与される。遺伝子治療は、被験者への核酸の投与によって行われる治療を指す。本発明のこの実施形態では、核酸はそれがコードするタンパク質を産生し、該タンパク質がPMEPA1機能を促進させることによって治療効果を媒介する。
【0120】
当技術分野において利用可能な遺伝子治療法はどれも、本発明に従って使用され得る。典型的な方法を以下に記載する。
【0121】
特定のプロトコルについては、Morgan (2001) Gene Therapy Protocols, 第2版、Humana Pressを参照されたい。遺伝子治療法の一般的な総説については、Goldspielら(1993) Clinical Pharmacy, 12:488-505; Wuら(1991) Biotherapy, 3:87-95; Tolstoshev (1993) Ann. Rev. Pharmacol. Toxicol., 32:573-596; Mulligan (1993) Science, 260:926-932;およびMorganら(1993) Ann. Rev. Biochem., 62:191-217; May (1993) TIBTECH, 11(5):155-215)を参照されたい。当技術分野において一般的に知られている使用可能な組換えDNA技法は、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubelら編、John Wiley & Sons 2003 (www.wiley.com/cp), NY;およびKriegler (1990) Gene Transfer and Expression, A Laboratory Manual, Stockton Press, NYに記載される。
【0122】
ある実施形態では、治療薬はPMEPA1核酸を含み、この核酸は適切な宿主においてPMEPA1タンパク質、またはその断片もしくはキメラタンパク質を発現する発現ベクターの一部である。特に、このような核酸は、PMEPA1コード領域に機能しうる形で連結されたプロモーターなどの調節配列を持ち、該プロモーターは誘導性または構成的、状況に応じては組織特異的である。別の特定の実施形態では、PMEPA1コード配列および他の任意の望ましい配列が、ゲノム内の望ましい部位での相同組換えを促進する領域によって挟まれており、これにより、PMEPA1核酸の染色体内発現をもたらす核酸分子が用いられる(Kollerら(1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86:8932-8935; Zijlstraら(1989) Nature, 342:435-438)。
【0123】
特定の実施形態では、遺伝子治療のために導入される核酸は、核酸の発現が適切な転写の誘導因子によって制御可能となるように、コード領域に機能しうる形で連結された誘導性プロモーターを含む。
【0124】
患者への核酸の送達は、直接的であってよく(その場合は、患者を直接核酸もしくは核酸担持ベクターに曝露する)、または間接的であってもよい(その場合は、まずin vitroで細胞を核酸により形質転換し、その後細胞を患者に移す)。これらの2つのアプローチは、それぞれ、in vivoまたはex vivo遺伝子治療として知られている。
【0125】
特定の実施形態では、核酸がin vivoで直接投与され、そこで発現されてコードする産物を産生する。これは、当技術分野において公知の以下のような多数の方法によって行うことができる。例えば、核酸を適切な核酸発現ベクターの一部として構築し、それが細胞内に入るようにそれを投与する。例えば、欠損もしくは弱毒化レトロウイルスまたは他ウイルスのベクターを用いた感染により(米国特許第4,980,286号参照)、または裸のDNAの直接注入により、または微粒子衝撃(例えば遺伝子銃; Biolistic, DuPont)、または脂質または細胞表面受容体またはトランスフェクション剤による被覆、リポソーム、微粒子、もしくはマイクロカプセル内への封入の使用により、または核に入ることが知られているペプチドに連結してそれを投与することにより、受容体を介したエンドサイトーシスを受けるリガンドに連結してにそれを投与することにより(例えばWuら(1987) J. Biol. Chem., 262:4429-4432参照)達成され得る。別の実施形態では、リガンドがエンドソームを妨害する細胞融合誘導性ウイルスペプチドを含み、核酸がリソソーム分解を回避することを可能する、核酸-リガンド複合体を形成することができる。更に別の実施形態では、核酸は、特定の受容体を標的とすることによって、細胞特異的な取込みおよび発現のためにin vivoでターゲッティングされ得る(例えばPCT公開WO 92/06180; WO 92/22635; WO92/20316; WO93/14188; WO 93/20221参照)。代替方法として、核酸を細胞内に導入して、相同組換えにより発現のために宿主細胞DNA内に組み込むことができる(Kollerら(1989)Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 86:8932-8935; Zijlstraら(1989)Nature, 342:435-438)。
【0126】
特定の実施形態では、PMEPA1核酸を含むウイルスベクターが使用される。例えば、レトロウイルスベクターを使用できる(Millerら(1993) Meth. Enzymol., 217:581-599参照)。このレトロウイルスベクターは改変され、ウイルスゲノムのパッケージングおよび宿主細胞DNAへの組込みのために必要でないレトロウイルス配列が欠失されている。遺伝子治療に使用されるPMEPA1核酸は、患者への遺伝子の送達を促進するベクターにクローニングされる。レトロウイルスベクターについてのより詳細な記述は、Boesenら(1994) Biotherapy, 6:291-302に見いだすことができ、それは造血幹細胞の化学療法に対する耐性をより高めるために、MDRL遺伝子を造血幹細胞に送達するためのレトロウイルスベクターの使用を記載している。遺伝子治療におけるレトロウイルスベクターの使用を説明する他の参照文献は、Clowesら(1994) J. Clin. Invest., 93:644-651; Kiemら(1994) Blood, 83:1467-1473; Salmonsら(1993) Hum. Gene Ther., 4:129-141; およびGrossmanら(1993) Curr. Opin. Gen. Devel., 3:110-114である。
【0127】
アデノウイルスは遺伝子治療に使用され得る他のウイルスベクターである。アデノウイルスは、遺伝子を呼吸上皮に送達するために特に魅力的な運搬体である。アデノウイルスは、天然で呼吸上皮に感染し、そこでそれらは軽い疾患を引き起こす。アデノウイルスに基づく送達システムの他の標的は、肝臓、中枢神経系、内皮細胞および筋肉である。アデノウイルスは非分裂細胞に感染する能力があるという利点を有する。Kozarskyら(1993, Curr. Opin. Gen. Devel., 3:499-503)は、アデノウイルスに基づく遺伝子治療の総説を提示している。Boutら(1994, Hum. Gene Ther., 5:3-10)は、アカゲザルの呼吸上皮に遺伝子を導入するためのアデノウイルスベクターの使用を実証した。遺伝子治療におけるアデノウイルスの使用の他の事例は、Rosenfeldら(1991) Science, 252:431-434; Rosenfeldら(1992) Cell, 68:143-155およびMastrangeliら(1993) J. Clin. Invest., 91:225-234に見いだすことができる。
【0128】
アデノ随伴ウイルス(AAV)もまた、遺伝子治療における使用のために提案されている(Walshら(1993) Proc. Soc. Exp. Biol. Med., 204:289-300)。
【0129】
遺伝子治療に対する別のアプローチは、エレクトロポレーション、リポフェクション、リン酸カルシウムを介したトランスフェクション、またはウイルス感染などの方法による組織培養細胞への遺伝子の導入を含む。通常、導入方法は、細胞への選択マーカーの導入を含む。細胞はその後選択条件下に置かれ、導入された遺伝子を取り込んで発現している細胞を単離する。それらの細胞はその後患者に送達される。
【0130】
この実施形態では、核酸を細胞内に導入してから、得られた組換え細胞をin vivo投与する。このような導入は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、核酸配列を含むウイルスまたはバクテリオファージベクターによる感染、細胞融合、染色体を介した遺伝子導入、マイクロセルを介した遺伝子導入、スフェロプラスト融合等を含むがこれらに限定されない当技術分野において公知の方法によって実施することができる。細胞への外来遺伝子の導入のために、多数の技術が当技術分野において知られており(例えば Loefflerら(1993) Meth. Enzymol., 217:599-618; Cohenら(1993) Meth. Enzymol., 217:618-644; Cline (1985) Pharmac. Ther., 29:69-92参照)、受容細胞の必要な発生および生理的機能が妨げられないかぎり、本発明に従って使用されうる。核酸が細胞によって発現可能であり、好ましくはその細胞の子孫によって遺伝され且つ発現されるように、その技術は細胞への核酸の安定した導入を提供すべきである。
【0131】
得られた組換え細胞は、当技術分野において公知の様々な方法によって、患者に送達することができる。ある好ましい実施形態では、上皮細胞は例えば皮下に注入される。別の実施形態では、組換え皮膚細胞は、患者への皮膚移植片として適用される。組換え血液細胞(例えば造血幹細胞または前駆細胞)は静脈内に投与される。使用のために想定される細胞の量は、所望の効果、患者の状態等に左右され、当業者によって決定され得る。
【0132】
遺伝子治療のために核酸が導入される細胞は、どのような所望の、利用可能な細胞型であってもよく、上皮細胞、内皮細胞、角化細胞、線維芽細胞、筋細胞、肝細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中球、好酸球、巨核球、顆粒球; 様々な幹細胞または前駆細胞、特に、例えば骨髄、臍帯血、末梢血、胎児の肝臓等から得られるような造血幹細胞もしくは前駆細胞を含むが、これらに限定されない。特定の実施形態では、遺伝子治療に使用される細胞は、患者の自己由来細胞である。
【0133】
ある実施形態では、PMEPA1核酸が細胞またはそれらの子孫によって発現可能となるように細胞に導入され、その後組換え細胞が治療効果のためにin vivo投与される。特定の実施形態では、幹細胞または前駆細胞が使用される。単離でき、且つin vitroで維持できる幹細胞および/または前駆細胞はどれも、本発明のこの実施形態に従って使用できる可能性がある。このような幹細胞には、造血幹細胞(HSC)、皮膚および消化管の内層などの上皮組織の幹細胞、胚性心筋細胞、肝幹細胞(PCT公開WO 94/08598)および神経幹細胞(Stempleら(1992) Cell, 71:973-985)が含まれるが、これらに限定されない。
【0134】
上皮幹細胞(ESC)または角化細胞は、公知の方法によって、皮膚および消化管の内層などの組織から得られる(Rheinwald (1980) Meth. Cell Bio., 21A:229)。皮膚のような層状の上皮組織では、更新は、基底膜に最も近い層である胚層内での幹細胞の有糸分裂によって起こる。消化管の内層中の幹細胞は、この組織の迅速な更新速度をもたらす。患者もしくはドナーの皮膚または消化管の内層から得られるESCまたは角化細胞を組織培養で増殖させることができる(Rheinwald (1980) Meth. Cell Bio., 21A:229; Pittelkowら(1986) Mayo Clinic. Proc., 61:771)。ESCがドナーによって提供される場合は、宿主対移植片反応性を抑制する方法(例えば、適度な免疫抑制を促進するための照射、薬剤または抗体の投与)も使用され得る。
【0135】
造血幹細胞(HSC)に関して、HSCの単離、増殖およびin vitroでの維持を提供するあらゆる技術を、本発明のこの実施形態において使用することができる。これを達成しうる技術は、(a)将来の宿主もしくはドナーから分離した骨髄細胞由来のHSC培養物の単離および樹立、または、(b)同種もしくは異種でありうる、以前に樹立された長期HSC培養物の使用を含む。非自己由来HSCは、将来の宿主/患者の移植免疫反応を抑制する方法と共に使用しうる。特定の実施形態では、ヒト骨髄細胞を、針吸引によって後腸骨稜から採取できる(例えばKodoら(1984) J. Clin. Invest., 73:1377-1384参照)。ある実施形態では、HSCを高度に富化し、単離し、または実質的に純粋な形にしてもよい。この富化は、長期培養の前、間、または後に、当技術分野において公知の技術により行うことができる。骨髄細胞の長期培養物は、例えば、改変したDexter細胞培養法(Dexterら(1977) J. Cell Physiol., 91:335)またはWitlock-Witte培養法(Witlockら(1982) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 79:3608-3612)を用いて樹立し、維持することができる。
【0136】
医薬組成物および投与
本発明は更に、下記のように、製薬上許容される担体中に有効な量のPMEPA1治療薬(本発明のPMEPA1核酸またはPMEPA1ポリペプチドを含む)を含有する医薬組成物を提供する。
【0137】
本明細書においては、製薬上許容される希釈剤、担体、または賦形剤などの他の成分と組み合わせた、有効な量の本発明のポリペプチドを含む組成物が提供される。ポリペプチドは製薬上有用な組成物を調製するために用いられる公知の方法に従って製剤化することができる。それらは、単一の活性物質として、または、特定の適応症に適した他の公知の活性物質と共に、製薬上許容される希釈剤(例えば、生理食塩水、Tris-HCl、酢酸緩衝液およびリン酸緩衝液)、防腐剤(例えば、チメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、乳化剤、可溶化剤、アジュバントおよび/または担体と混合して組み合わされる。医薬組成物に適する製剤には、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第16版、Mack Publishing Company, Easton, PA, 1980に記載されるものが含まれる。
【0138】
更に、このような組成物は、ポリエチレングリコール(PEG)、金属イオンと複合体化したり、ポリ酢酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲル、デキストラン等のような高分子化合物に組み込んだり、リポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層リポソームもしくは多重膜リポソーム、赤血球ゴースト、またはスフェロブラストに組み込んだりすることができる。このような組成物は、物理的状態、溶解度、安定性、in vivoでの放出速度、およびin vivoでのクリアランス速度に影響を与え、従って、意図した用途に応じて選択される。
【0139】
本発明の組成物は、任意の適切な方法、例えば、注入またはボーラス注射によって、上皮または皮膚粘膜層(例えば口腔粘膜、直腸および腸粘膜等)からの吸収によって投与することができ、また、他の生物学的活性薬剤と共に投与してもよい。導入方法としては、皮内、筋内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外および経口経路が挙げられるが、これらに限定されない。投与は全身的または局所的であり得る。更に、本発明の医薬組成物を、脳室内およびくも膜下内への注入を含む適切な経路により、中枢神経系に導入することが望ましいことがあり、脳室内注入は、例えば、Ommayaリザーバーのようなリザーバーに取り付けた脳室内カテーテルにより円滑に行われる。また、肺投与も、例えば、吸入器または噴霧器の使用およびエアロゾル化剤を用いた製剤化により、採用することができる。
【0140】
特定の実施形態では、本発明の医薬組成物を治療の必要な部位に局所的に投与することが望ましい場合があり、これは、例えば、手術中の局所注入、局所塗布(例えば手術後の創傷包帯と併用)によって、注射によって、カテーテル、座薬、インプラント(ここで該インプラントは、シラスティック膜などの膜または繊維を含めて、多孔性、非多孔性、またはゼラチン様の材料のものである)を用いて、達成されうる。ある実施形態では、投与は、悪性腫瘍または新生物または前新生物組織の部位(または前の部位)への直接注入により行ってもよい。また、インプラントからの持続放出も考えられる。
当業者であれば、適切な用量が、治療すべき障害の性質、患者の体重、年齢および全身状態などの要因、ならびに投与経路に応じて変化することを認識するであろう。予備用量を動物実験によって決定でき、ヒトへの投与量の見積りは当業界の慣例に従って行われる。
【0141】
生理的に許容される製剤中に本発明の核酸を含む組成物(例えば、遺伝子治療に使用するためのもの)もまた考えられる。
【0142】
様々な送達システムが当技術分野で知られており、本発明の治療薬を投与するために使用することができる。例として、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内への封入、治療薬を発現することができる組換え細胞、受容体を介したエンドサイトーシス(例えばWuら(1987) J. Biol. Chem., 262:4429-4432参照)、および、レトロウイルスまたは他のベクターの一部としての治療用核酸の構築が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
別の実施形態では、治療薬は制御放出システムで送達することができる。ある実施形態では、ポンプが使用される(Langer、上述; Sefton (1987) CRC Crit. Ref. Biomed. Eng., 14:201; Buchwaldら(1980) Surgery, 88:507; Saudekら(1989) New Engl. J. Med., 321:574参照)。別の実施形態では、高分子材料が使用される(Medical Applications of Controlled Release, Langerら編、CRC Pres., Boca Raton, FL, 1974; Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance, Smolenら編、Wiley, New York, 1984; Rangerら(1983) J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem., 23:61を参照、また、Levyら(1985) Science, 228:190; Duringら(1989) Ann. Neurol., 25:351; Howardら(1989) J. Neurosurg., 71:105を参照)。更に別の実施形態では、制御放出システムを脳などの治療標的の近傍に設置でき、従って、全身用量の一部のみを必要とする(例えばMedical Applications of Controlled Release, 上述、第2巻pp. 115-138のGoodson (1984)を参照)。他の制御放出システムはLanger(1990, Science, 249:1527-1533)による総説で議論される。
【0144】
診断
PMEPA1タンパク質およびPMEPA1核酸(ならびにそれらの相補および相同配列)ならびにそれに対する抗体(抗PMEPA1抗体を含む)は、診断に利用される。このような分子は、PMEPA1発現に影響を及ぼす様々な状態、疾患および障害を検出、予知、診断もしくはモニタリングするために、または、その治療をモニタリングするために、イムノアッセイなどのアッセイにおいて使用される。特に、このようなイムノアッセイは、患者由来のサンプルを抗PMEPA1抗体と特異的な結合が起こり得るような条件下で接触させ、該抗体による特異的結合の量を検出または測定することを含む方法によって行われる。ある実施形態では、抗体のこのような結合は、組織切片において、異常なPMEPA1局在または異常な(例えば、低いもしくは欠如した)PMEPA1レベルを検出するために使用できる。特定の実施形態では、PMEPA1に対する抗体を用いて、患者の組織または血清サンプルでのPMEPA1の存在をアッセイすることができ、この場合は異常なPMEPA1レベルが病的状態の指標となる。
【0145】
使用可能なイムノアッセイは、いくつかを挙げると、ウエスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA、免疫沈降アッセイ、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射定量測定法、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイなどの技法を用いた競合的および非競合的なアッセイシステムを含むが、これらに限定されない。
【0146】
PMEPA1遺伝子ならびに相補配列を含む関連した核酸配列および部分配列はまた、ハイブリダイゼーションアッセイにおいても使用される。PMEPA1核酸配列、または、少なくとも約8ヌクレオチドを含むその部分配列は、ハイブリダイゼーションプローブとして使用できる。ハイブリダイゼーションアッセイは、上述のように、PMEPA1発現および/または活性の異常な変化と関連する状態、障害、または病態を検出、予知、診断、あるいはモニタリングするために使用できる。特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含むサンプルをPMEPA1核酸にハイブリダイズできる核酸プローブとハイブリダイゼーションが起こり得るような条件下で接触させ、結果として生じるハイブリダイゼーションの程度を検出または測定することを含む方法によって行われる。本明細書中で説明するように、PCR/RT-PCRを用いて、PMEPA1遺伝子の存在および/またはそのmRNAの発現レベルを検出することができる。
【0147】
特定の実施形態では、細胞の過剰増殖を伴う疾患および障害を診断および/または予後判定し、あるいは、このような障害を発生させる素因を予測することができる。それには、PMEPA1タンパク質、PMEPA1核酸、またはPMEPA1の機能活性(例えば、癌細胞増殖の抑制、アンドロゲン受容体発現の阻害等)のレベルの低下を検出するか、あるいは、PMEPA1の発現もしくは活性の低下を引き起こすPMEPA1 RNA、DNAまたはタンパク質における突然変異(例えば、PMEPA1核酸での転座、PMEPA1遺伝子もしくはタンパク質のトランケーション、野生型PMEPA1と比較したヌクレオチドもしくはアミノ酸配列の変化)を検出することによって行う。一例として、PMEPA1タンパク質のレベルはイムノアッセイによって検出でき、PMEPA1 mRNAのレベルはハイブリダイゼーションアッセイ(例えばノーザンブロット、ドットブロット、RT-PCR)によって検出でき、WWドメイン含有タンパク質とのPMEPA1結合は当技術分野において公知の結合アッセイによって行うことができ、PMEPA1核酸の転座および点突然変異は、サザンブロッティング、RFLP解析、PCR、患者から採取されたPMEPA1ゲノムDNAまたはcDNAの配列決定等によって検出できる。
【0148】
ある実施形態では、被験者サンプル中のPMEPA1 mRNAまたはタンパク質のレベルを検出または測定し、その際、対応する正常な組織サンプルと比較して低下したレベルは、被験者が前立腺の悪性疾患または過増殖性障害を有するか、または、それを発症する素因を有することを示している。別の特定の実施形態では、細胞増殖の欠損を伴うかまたは細胞増殖が望まれる疾患および障害も同様に診断される。ある実施形態では、癌の診断方法は、被験者から生体サンプル(組織サンプル(例えば、生検組織由来)、血液サンプル、もしくは尿サンプルを含むが、これらに限定されない)を採取し、サンプル中のPMEPA1遺伝子、PMEPA1ポリペプチド、および/またはPMEPA1活性の発現レベルを測定し、該被験者における癌(例えば前立腺癌)を診断または予後判定することを含む。更なる実施形態では、PMEPA1遺伝子および/またはPMEPA1活性の発現レベルが、サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、ELISA、RT-PCR、または、本明細書に記載されるもしくは当技術分野において公知の他の技術によって測定される。
【0149】
本発明の別の態様は、PMEPA1遺伝子の発現プロファイルを評価し、これらのプロファイルを疾患の臨床的兆候と相関させることにより、「ホルモン療法」への応答をモニタリングする手段を提供する。
【0150】
診断に使用するキットもまた提供される。キットは抗PMEPA1抗体を含むが、この抗体は場合により検出可能に標識されていてもよい。PMEPA1核酸にハイブリダイズできる核酸プローブを含むキットもまた提供される。特定の実施形態では、キットは、例えばPCRによって、PMEPA1遺伝子またはその断片の増幅を開始させることができる、少なくとも一対のプライマー(例えば、各々約6〜30ヌクレオチドのサイズ範囲のもの)を含む。キットは、例えば標準もしくは対照として使用するための、既定量の精製されたPMEPA1タンパク質または核酸を含んでいてもよい。
【0151】
調節化合物のスクリーニング
PMEPA1核酸およびタンパク質はまた、PMEPA1核酸もしくはタンパク質と特異的に結合する分子、または、PMEPA1核酸もしくはタンパク質の発現を調節でき、従って、PMEPA1のアゴニストもしくはアンタゴニストとして使用可能な分子、特に、細胞増殖を調節できる分子を検出するためのスクリーニングアッセイにおいて使用される。ある実施形態では、このようなアッセイは、抗癌薬として潜在的な有用性を持つ分子、または更なる創薬のためのリード化合物をスクリーニングするために行われる。例えば、PMEPA1核酸を発現する組換え細胞を用いて、PMEPA1タンパク質と結合する分子をスクリーニングするためのPMEPA1タンパク質を組換え技術によって産生させることができる。分子(例えば、PMEPA1の推定上の結合パートナー)を、結合を促す適切な条件下でPMEPA1タンパク質(またはその断片)と接触させ、その後、PMEPA1タンパク質と特異的に結合する分子を同定する。同様の方法を用いて、PMEPA1核酸に結合する分子をスクリーニングすることができる。これらを実施するために使用できる方法は、当技術分野において周知である。
【0152】
一例として、PMEPA1と特異的に結合する分子について、ランダムもしくはコンビナトリアルペプチドまたは非ペプチドライブラリーなどの多様性ライブラリーをスクリーニングすることができる。使用され得る多くのライブラリー、例えば、化学合成されたライブラリー、組換え(例えばファージディスプレイライブラリー)およびin vitro翻訳に基づくライブラリーが、当技術分野において知られている。
【0153】
化学合成されたライブラリーの例は、Fodorら(1991) Science, 251:767-773; Houghtenら(1991) Nature, 354:84-86; Lamら(1991) Nature, 354:82-84; Medynski (1994) Bio/Technology, 12:709-710; Gallopら(1994) J. Medicinal Chemistry, 37(9):1233-1251; Ohlmeyerら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:10922-10926; Erbら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:11422-11426; Houghtenら(1992) Biotechniques, 13:412; Jayawickremeら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:1614-1618; Salmonら(1993) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 90:11708-11712; PCT公開番号WO 93/20242;およびBrennerら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:5381-5383に記載されている。
【0154】
ファージディスプレイライブラリーの例は、Scottら(1990) Science, 249:386-390; Devlinら(1990) Science, 249:404-406; Christianら(1992) J. Mol. Biol., 227:711-718; Lenstra (1992) J. Immunol. Meth., 152:149-157; Kayら(1993) Gene, 128:59-65;およびPCT公開番号WO 94/18318に記載されている。
【0155】
in vitro翻訳に基づくライブラリーは、PCT公開番号WO 91/05058; およびMattheakisら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:9022-9026に記載されるものを含むが、それに限定されない。
【0156】
非ペプチドライブラリーの例は、使用に合わせることができるベンゾジアゼピンライブラリー(例えばBuninら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:4708-4712参照)を含むが、それに限定されない。ペプトイドライブラリー(Simonら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:9367-9371)もまた使用される。化学的に変換されたコンビナトリアルライブラリーを作製するためにペプチド中のアミド官能基がパーメチル化されている、別の使用可能なライブラリーの例は、Ostreshら(1994) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 91:11138-11142によって記載されている。
【0157】
ライブラリーのスクリーニングは、様々な周知の方法によって達成され得る。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングを開示する以下の参照文献、すなわちParmleyら(1989) Adv. Exp. Med. Biol., 251:215-218; Scottら(1990) Science, 249:386-390; Fowlkesら(1992) BioTechniques, 13:422-427; Oldenburgら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:5393-5397; Yuら(1994) Cell, 76:933-945; Staudtら(1988) Science, 241:577-580; Bockら(1992) Nature, 355:564-566; Tuerkら(1992) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89:6988-6992; Ellingtonら(1992) Nature, 355:850-852; 米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号、および米国特許第5,198,346号、すべてLadnerら; Rebarら(1993) Science, 263:671-673; ならびにPCT公開番号WO 94/18318を参照されたい。
【0158】
特定の実施形態では、スクリーニングは、固相上に固定化したPMEPA1タンパク質(または核酸)とライブラリーのメンバーとを接触させ、PMEPA1タンパク質または核酸と結合するライブラリーのメンバーを回収することによって行われる。「パンニング」法と呼ばれるこのようなスクリーニング法の例は、例えばParmleyら(1988) Gene, 73:305-318; Fowlkesら(1992) BioTechniques, 13:422-427; PCT公開番号WO 94/18318; および本明細書の上記引用文献に記載されている。
【0159】
別の実施形態では、酵母において相互作用タンパク質を選択するためのツーハイブリッドシステム(Fieldsら(1989) Nature, 340:245-246; Chienら(1991) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 88:9578-9582)を用いて、PMEPA1タンパク質と特異的に結合する分子を同定することができる。更に別の実施形態では、調節化合物のスクリーニング法は、細胞を試験化合物と接触させ、PMEPA1遺伝子の発現レベルまたはPMEPA1活性の変化を測定することを含む。
【0160】
更に、PMEPA1と相互作用する遺伝子を検出するためのモデル系として、下記のようなモデル動物を使用することができる。
【0161】
モデル動物
本発明はまたモデル動物を提供する。ある実施形態では、細胞の過剰増殖を伴う疾患および障害のためのモデル動物が提供される。このような動物は、初めに、染色体中のPMEPA1遺伝子と、生物学的に不活性にされた(好ましくは、異種配列、例えば抗生物質耐性遺伝子の挿入により不活性にされた)外因性PMEPA1遺伝子と、の間の相同組換えを促進することによって作製される。一般的には、Transgenic Mouse Methods and Protocols, Hofkerら編、Humana Press, 2002を参照されたい。好ましい態様において、この相同組換えを実施するには、相同組換えが起こるように、挿入により不活性化されたPMEPA1遺伝子を含むベクターを用いて胚性幹(ES)細胞を形質転換し、続いてこのES細胞を胚盤胞に注入し、胚盤胞を代理母に移植し、その後PMEPA1遺伝子が不活性化されたキメラ動物(「ノックアウト動物」)を出生させる(Gene Knockout Protocols, Tymmら編、Humana Press, 2001. Capecchi (1989) Science, 244:1288-1292参照)。キメラ動物を繁殖させて、更なるノックアウト動物を作出することができる。このような動物はマウス、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ウシ等であってよく、好ましくは非ヒト哺乳類である。特定の実施形態では、ノックアウトマウスが作出される。
【0162】
このようなノックアウト動物は、細胞の過剰増殖を伴う疾患もしくは障害(例えば悪性腫瘍)を発症するか、または、発症する素因を持つと予想される。従って、かかる動物は、このような疾患および障害のモデル動物として、例えば、過剰増殖(例えば腫瘍形成)を抑制し、従ってこのような疾患もしくは障害を治療または予防する能力について、分子(例えば潜在的な抗癌治療薬)をスクリーニングまたは試験するために利用される。
【0163】
異なる実施形態において、機能的なPMEPA1遺伝子が組み込まれていて、それを発現するトランスジェニック動物は、細胞増殖の欠陥を伴う疾患および障害、または、細胞増殖が望まれる疾患および障害のモデル動物として利用される。このような動物は、増殖を促進し、従ってこのような疾患および障害を治療もしくは予防する能力について、分子をスクリーニングまたは試験するために使用することができる。
【0164】
以下の実施例は更に本発明の特定の態様を例示するものである。
【実施例】
【0165】
実施例1
細胞培養およびアンドロゲン刺激
LNCaP細胞(American Type Culture Collection, Rockville, MD)は、当技術分野において承認されたヒト前立腺癌のモデルである(Hsiehら、Cancer Res., 53: 2852-7, 1993; Thalmannら、Cancer Res., 54: 2577-81, 1994; Wuら、Int. J. Cancer, 77: 887-94, 1998)。LNCaP細胞を10%ウシ胎児血清(FBS, Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)を添加したRPMI 1640(Life Technologies, Inc., Gaithersburg, MD)中に維持し、実験を継代数20〜30の細胞で行った。
【0166】
アンドロゲン調節の研究のために、チャコール/デキストラン除去したアンドロゲンフリーのFBS(cFBS, Gemini Bio-Products, Inc., Calabasas, CA)を使用した。LNCaP細胞をまず10%cFBSを含むRPMI 1640で5日間培養し、その後10-8Mの非代謝性アンドロゲン類似体R1881(DUPONT, Boston, MA)で24時間刺激した。R1881処理を行わなかった以外は同様に処理したLNCaP細胞を対照として用いた。指示された時間に細胞を回収し、Fast Trackキット(Invitrogene)を用いてポリA+ RNAを二重選択した。ポリA+の品質をノーザンハイブリダイゼーション解析によって確認した。
【0167】
アンドロゲンを含まないLNCaP細胞培養培地のアンドロゲン(R1881)添加により、LNCaP細胞において用量および時間依存的な様式で、約2.7塩基対と約5.0塩基対の両方のPMEPA1 RNA種が誘導された(図1)。LNCaP細胞のアンドロゲン枯渇は、PMEPA1の発現低下を引き起こした。正常な前立腺上皮細胞培養物および通常の培地で培養したアンドロゲン依存性LNCaP細胞では、基底レベルのPMEPA1発現が検出された。アンドロゲン依存性LNCaP細胞と比較して、アンドロゲン非依存性前立腺癌細胞株DU145およびPC3は、非常に低いレベルから検出不能なレベルのPMEPA1しか発現しなかった(データは示してない)。
【0168】
PMEPA1タンパク質コード領域の異なる領域をカバーする4対のプライマーを用いたLNCaP細胞由来のRNAのRT-PCR解析は、PCR反応から予想されるバンドサイズを示し、このことは、ノーザンブロットにおける2つのmRNA種がタンパク質コード領域において同一の配列を有し、5'および/または3'非コード領域において差異を示す可能性があることを示唆している。
【0169】
実施例2
PMEPA1組織発現の解析
23のヒト正常組織を含む複数のノーザンブロット解析は、前立腺組織において最高レベルでPMEPA1が発現していることを示した。他の組織はPMEPA1を発現したが、それらの相対的な発現は前立腺と比較して著しく低かった(図2)。前立腺組織におけるPMEPA1発現のin situ RNAハイブリダイゼーション解析は、間質細胞と比較して腺上皮区画において豊富な発現を示した。しかし、正常細胞および原発性腫瘍組織の組織切片における腫瘍細胞はどちらも同様の発現レベルを示した。
【0170】
実施例3
PMEPA1遺伝子の構造的特徴
1,141塩基対のPMEPA1 cDNA配列の解析は、252アミノ酸からなるタンパク質(配列番号2)をコードする759ヌクレオチドのオープンリーディングフレーム(配列番号1)を明らかにした。ProfileScan(http://www.ch.embnet.org/cgi-bin/TMPRED)を用いたタンパク質モチーフ検索により、PMEPA1配列のアミノ酸残基9から25の間にIb型の膜貫通ドメインが存在することが示された。更に、モチーフ検索によりPMEPA1タンパク質配列中の2つのPYモチーフ、PPPY(配列番号15)(「PY1」)およびPPTY(配列番号16)(「PY2」)が明らかにされた。PYモチーフは、WWドメインを有するタンパク質に結合できるPPXYコンセンサス配列(Xは任意のアミノ酸を表す)を含むプロリンリッチペプチド配列である(Jolliffeら、Biochem. J., 351: 557-565, 2000; Harveyら、Trends Cell Biol., 9: 166-169, 1999; Hicke, Cell, 106: 527-530, 2001; Kumarら、Biochem. Biophys. Res. Commun., 185: 1155-1161, 1992; Kumarら、Genomics, 40: 435-443, 1997; Sudol, Trends Biochem. Sci., 21: 161-163, 1996; Harveyら、J. Biol. Chem., 277: 9307-9317, 2002; およびBrunschwigら、Cancer Res., 63: 1568-1575, 2003)。
【0171】
タンパク質配列の相同性検索は、下記の表2に見られるように、PMEPA1がマウスNEDD4 WW結合タンパク質4(「N4WBP4」、受入番号AK008976)(4)と83%の配列同一性を有することを示した。表2において、+は保存的置換を意味し、PYモチーフには下線が引いてある。
【表2】

【0172】
NEDD4タンパク質のWWドメインは、NEDD4結合タンパク質のPYモチーフとの相互作用を介してその標的タンパク質との結合を促進する(Jolliffeら、Biochem. J., 351: 557-565, 2000; Sudol M, Trends Biochem. Sci., 21: 161-163, 1996; Harveyら、J. Biol. Chem., 277: 9307-9317, 2002; Maciasら、Nature, 382: 646-649, 1996; Chenら、Proc. Natl. Acad. Sci., U S A., 92: 7819-7823, 1995; およびMurillasら、J. Biol. Chem., 277: 2897-2907, 2002)。PMEPA1タンパク質配列は2つのPYモチーフ、すなわち、PPPY(配列番号15)(「PY1」)およびPPTY(配列番号16)(「PY2」)を含む。PY1はPMEPA1タンパク質の中心領域にあり、PY2はPMEPA1タンパク質のカルボキシル末端に近接している(表2)。従って、N4WBP4とPMEPA1の高いタンパク質配列同一性およびPYモチーフの存在は、PMEPA1がN4WBP4のヒトホモログであり、NEDD4タンパク質および他のWWドメイン含有タンパク質と結合できることを示している。
【0173】
実施例4
PMEPA1-PYモチーフはNEDD4のWWドメインと相互作用する
プラスミド
PMEPA1-V5およびPMEPA1-GFP融合タンパク質をコードする哺乳類発現ベクターは、PMEPA1オープンリーディングフレームのPCR増幅によって作製された。PMEPA1-V5-pcDNA3.1ベクターの場合は、以下のプライマーを使用した:
5'-GCTGCTGGAGAACTGAAGGCG-3'(配列番号4)および
5'-GTGTCCTTTCTGTTTATCCTTC-3'(配列番号5)。
【0174】
PMEPA1-GFP-pEGFPベクターの場合は、以下のプライマーを使用した:
5'-AAGCTTGCTGCTGGAGAACTGAAGG CG-3'(配列番号6)および
5'-GAATTCGGTGTCCTTTCTGTTTATC-3'(配列番号7)。
【0175】
V5タグまたはGFPタンパク質はPMEPA1タンパク質のカルボキシル末端に融合させた。PMEPA1-V5を作製するためのPCR産物はpcDNA3.1-V5-His発現ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)に挿入した。PMEPA1-GFPを作製するためのPCR産物は、HindIIIおよびEcoRIで消化し、pEGFPベクター(Clontech, Palo Alto, CA)の同部位にクローニングした。チロシン残基(Y)をアラニン残基(A)で置換したPMEPA1-PYモチーフ突然変異体は、QuikChange部位特異的突然変異誘発キット(Stratagene, La Jolla, CA)を用い、鋳型としてPMEPA1-V5-pcDNA3.1ベクターを用いて作製した。PMEPA1-PYモチーフ突然変異体のプラスミドは以下の通りである。すなわち、第1PYモチーフ突然変異(Y126A)を有するPMEPA1-PY1m-V5-pcDNA3.1、第2PYモチーフ突然変異(Y197A)を有するPMEPA1-PY2m-V5-pcDNA3.1、ならびに両方のPYモチーフ突然変異(Y126AおよびY197A)を有するPMEPA1-PY1m/PY2m-V5-pcDNA3.1である。発現ベクター中のすべての挿入配列をDNA配列決定により確認した。
【0176】
グルタチオンS-トランスフェラーゼに融合された4つすべてのWWドメイン(GST-WW融合タンパク質)をコードしたヒトNEDD4遺伝子(受入番号XM_046129)の細菌発現プラスミド(pNEDD4WW-GST-pGEX-2TK)は、以下のプライマーを用いた、4つのWWドメインのコード領域のPCR増幅によって作製した:
5'-GCAGGATCCCAACCAGATGCTGCTTGC-3'(配列番号8)および
5'-GCAGAATTCTTTTGTAATCCCTGGAGTA-3'(配列番号9)。正常な前立腺組織由来のcDNAをPCRの鋳型として用い、増幅断片をpGEX-2TK(Amersham Biotech, Piscataway, NJ)のBamHI/EcoRI部位にクローニングした。NEDD4-GFP融合タンパク質をコードする哺乳類発現ベクター(NEDD4-GFP-pEGFP)は、PCRによってNEDD4遺伝子断片を生成する以下のプライマーを用いて作製した:
5'-GCAAAGCTTGTCCGGTTTGCTGGAAGC-3'(配列番号10)および
5'-GCAGAATTCCCTTTTTGTTCTTATTGGTGAC-3'(配列番号11)。
【0177】
PMEPA1およびNEDD4タンパク質結合アッセイ
PMEPA1およびNEDD4のin vitro結合はGSTプルダウンアッセイによって評価された。GST-WW融合タンパク質を調製し、Amersham Biotechの使用説明書に従ってグルタチオンセファロースビーズを用いて精製した。PMEPA1およびその突然変異体を表す[35S]メチオニン標識タンパク質は、in vitro転写/翻訳(TNT T7 quick coupled transcription/translation system, Promega, Madison, WI)により作製した。簡単に述べると、PMEPA1-V5-pcDNA3.1または3つの突然変異体(2μg)を40μCiの[35S]メチオニンを含む40μlの網状赤血球溶解液中で1.5時間30℃にてインキュベートした。
【0178】
[35S]メチオニンのタンパク質への取り込みを測定し、cpmに基づいてサンプルを均等化した。グルタチオンセファロースビーズに結合したGST-WW融合タンパク質(5μg)を、[35S]メチオニン標識した溶解液(12μl)と共に0.4 mlのリン酸緩衝生理食塩水(PBS, pH 7.4)、1 mMジチオスレイトール、およびプロテアーゼ阻害剤中でインキュベートした。各々の[35S]メチオニン標識溶解液についての陰性対照は、GST-WW融合タンパク質を含まないグルタチオンセファロースビーズと共にインキュベートした等量の溶解液を含む反応混合物とした。4℃で16時間インキュベートした後、ビーズをPBSで6回洗浄し、SDS-PAGEサンプルバッファーに再懸濁し、還元条件下において12%SDS-PAGEゲルで泳動した。ゲルを乾燥させ、オートラジオグラフィーを行った。
【0179】
結果
細胞でのPMEPA1およびNEDD4タンパク質の相互作用は、共免疫沈降アッセイによって評価された。293細胞(ヒト胚性腎細胞)を、NEDD4-GFP-pEGFPベクターおよび野生型PMEPA1-V5またはPMEPA1のPY突然変異体のいずれかをコードするPMEPA1-V5発現ベクターの1つを用いて共トランスフェクトした。36時間後細胞を回収し、溶解し、溶解液を抗GFP抗体(Clontech, Palo Alto, CA)で製造メーカーのプロトコルに従って免疫沈降させた。免疫沈降したタンパク質は、抗V5タグ抗体(Invitrogen)による免疫ブロッティングに供した。
【0180】
2つのインタクトなPYモチーフを有するin vitro翻訳した[35S]メチオニン標識PMEPA1-V5融合タンパク質は、GST-WW融合タンパク質との結合を示した(図6、レーン1)。PY1またはPY2突然変異を持つPMEPA1はWWドメインへの結合の著しい低下を示した(図6、レーン2およびレーン3)。更に、293細胞で発現させたPMEPA1-V5およびNEDD4-GFP融合タンパク質は強い結合を示し(図7、レーン1)、PY1もしくはPY2モチーフの単一突然変異またはPY1およびPY2モチーフ両方の二重突然変異を有する突然変異PMEPA1-V5タンパク質は、NEDD4への結合の著しい低下を示した(図7、レーン2、3および4)。従ってin vitroおよび細胞培養データは、PMEPA1がNEDD4と相互作用し、この相互作用がPMEPA1 PYモチーフのWWドメインへの結合を伴うことを示す。PY2モチーフの突然変異はPMEPA1のNEDD4 WWへの結合に対してより大きな影響を及ぼすようであった。
【0181】
PMEPA1のN4WBP4との高いタンパク質配列同一性は、PMEPA1がN4WBP4のヒトホモログであることを示唆する。
【0182】
実施例5
PMEPA1はアンドロゲン受容体をダウンレギュレートし、アンドロゲン受容体の転写標的に影響を及ぼす
LNCaP細胞をPMEPA1-GFP(PMEPA-GFP-LNCaP)およびpEGFP対照(pEGFP-LNCaP)発現ベクターで安定的にトランスフェクトした。LNCaPトランスフェクタントでのアンドロゲン受容体に対する外因性PMEPA1発現の影響を評価するために、内在性PMEPA1発現をダウンレギュレートすることが知られているアンドロゲン不含培地中で5日間、細胞を維持した。アンドロゲン不含培地中で5日後のこれらの細胞において、アンドロゲン受容体の発現を評価した(0時間)。アンドロゲン受容体の発現はまた、アンドロゲン除去後異なる時点(12時間および24時間)に0.1 nM R1881を再補給した細胞においても評価した。ウェスタンブロット解析はPMEPA-GFP-LNCaP細胞におけるアンドロゲン受容体タンパク質の発現低下を示した(図4A)。PMEPA1トランスフェクタントでのアンドロゲン受容体タンパク質レベルの低下はPSAタンパク質レベルの低下と相関し、比較的低いレベルのアンドロゲン受容体タンパク質に起因するPSA遺伝子発現の減衰の結果と思われる。アンドロゲン受容体のPMEPA1ダウンレギュレーションは更に、その発現が通常アンドロゲン受容体によってダウンレギュレートされるPSMAレベルの相対的な増加の結果によって支持された。これらの実験は、PMEPA1がアンドロゲン受容体をダウンレギュレートし、これに対応してアンドロゲン受容体の転写標的が影響を受けることを示した。
【0183】
PMEPA1はNEDD4結合タンパク質であるから、アンドロゲン受容体発現に対するその効果はユビキチン-プロテアソーム経路を必要とするかもしれない。アンドロゲン受容体発現に対するPMEPA1の効果が、タンパク質分解経路におけるユビキチンタンパク質リガーゼの一般的または非特異的なアップレギュレーション効果に起因するのではないことを示すために、本発明者らは、アンドロゲン受容体およびp27タンパク質(ユビキチン依存性経路を介して分解されることが知られている)に対するPMEPA1の効果を評価した。本発明者らは、安定なPMEPA1-GFP-Tet-LNCaPトランスフェクタントを作製したが、かかる細胞ではPMEPA1-GFP融合タンパク質の発現がテトラサイクリンにより調節される(Tet-off系, Clontech)。図4Bに示されたように、テトラサイクリンを含む培地で培養された細胞はPMEPA1発現を欠く(Tet-off)が、テトラサイクリンを含まない培地で培養した場合には、PMEPA1を過剰発現した。p27またはチューブリンの相対的な発現と比較して、アンドロゲン受容体のタンパク質レベルはPMEPA1過剰発現細胞において激減した(図4B)。総合すると、これらのデータはアンドロゲン受容体がPMEPA1の特異的な標的であることを示す。
【0184】
実施例6
PMEPA1タンパク質のゴルジ結合
本発明者らの研究はまた、PMEPA1がゴルジ結合タンパク質であることを示した。
【0185】
免疫蛍光アッセイ
実施例4において上述したようにプラスミドを調製した。免疫蛍光アッセイはHarveyら、J. Biol. Chem., 277: 9307-9317, 2002により記載された方法に従って行った。簡潔に述べると、PMEPA1-GFP-pEGFPを有するLNCaP細胞の安定なトランスフェクタント(LNCaP-PMEPA1-GFPトランスフェクタント)をカバースリップ上で2日間増殖させ、2%パラホルムアルデヒド中で15分間固定し、0.2%Triton X-100中で2分間膜透過処理した。固定および膜透過処理した細胞を、6.25μg/mlの抗GM130(シスゴルジマトリックスタンパク質を認識する)または抗TGN38(トランスゴルジ網TGNに局在するタンパク質を認識する)モノクローナル抗体(BD Transduction Laboratory, San Diego, CA)と共に、30分間室温でインキュベートした。その後、細胞を洗浄して、過剰のまたは非特異的に結合した一次抗体を除去し、続いて1:100希釈のTRITCコンジュゲート抗マウス抗体(Sigma, ST. Louis, MO)と共に、30分間室温でインキュベートした。切片をfluoromount(Southern Associates, Birmingham, AL)により標本にし、Leica蛍光顕微鏡およびOpen-Lab software(Improvision, Lexington, MA)を用いて画像を処理した。
【0186】
結果
PMEPA1-GFP融合タンパク質はゴルジ様の外観を有する核周囲への局在を示した。シスゴルジタンパク質GM130の細胞内局在の画像は、PMEPA1-GFP融合タンパク質と同様のパターンを示した。LNCaP-PMEPA1-GFPトランスフェクタントでのPMEPA1-GFP融合タンパク質およびGM130の画像を重ね合わせると、PMEPA1-GFP融合タンパク質のシスゴルジ構造への局在が確認された。PMEPA1-GFPおよびTGN-38(TGNに局在する)の共局在は認められなかった。
【0187】
PMEPA1の細胞内局在は、他の2つの新たに同定されたNEDD4 WWドメイン結合タンパク質N4WBP5およびN4WBP5a(これらもゴルジ複合体に局在する)と似ている(Harveyら、J. Biol. Chem., 277: 9307-9317, 2002; Konstasら、J. Biol. Chem., 277: 29406-29416, 2002)。N4WBP5aはNEDD4/NEDD4-2の輸送を封鎖し、その結果NEDD4によってダウンレギュレートされる既知の標的である上皮ナトリウムチャネル(EnaC)の活性を増加させた(Konstasら、J. Biol. Chem., 277: 29406-29416, 2002)。高度にアンドロゲン調節される遺伝子およびNEDD4結合タンパク質として、PMEPA1のゴルジ装置への局在は、PMEPA1がアンドロゲン受容体標的のタンパク質代謝回転に関与することを示唆する。
【0188】
実施例7
PMEPA1は前立腺癌細胞の増殖を抑制する
コロニー形成アッセイ
細胞増殖の調節におけるPMEPA1発現の生物学的効果およびこのような機能に対するPYモチーフの関与を調べるために、本発明者らは様々な前立腺癌細胞株を野生型PMEPA1(「wt-PMEPA1」)およびPMEPA1-PY突然変異体の発現ベクターでトランスフェクトすることにより、コロニー形成アッセイを行った。
【0189】
前立腺癌細胞株、すなわちLNCaP、PC3、およびDU145はATCC(Rockville, MD)から購入し、供給元によって記載された細胞培養培地で培養した。LNCaP亜細胞株C4、C4-2およびC4-2B(Hsiehら、Cancer Res., 53: 2852-7, 1993; Thalmannら、Cancer Res., 54: 2577-81, 1994; およびWuら、Int. J. Cancer, 77: 887-94, 1998)はUrocor(Oklahoma, OK)から購入し、T培地(5%FBS、80%DMEM、20%F12、5μg/mlインスリン、13.65pg/mlトリヨードチロニン、5μg/mlアポトランスフェリン、0.244μg/mlビオチン、25μg/mlアデニン)で培養した。
【0190】
3μgのプラスミド(PMEPA1-V5-pcDNA3.1またはPMEPA1インサートを含まないベクター)をLipofectamine(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて3回反復実験で60-mmペトリ皿の50〜70%コンフルエント細胞にトランスフェクトした。腫瘍抑制遺伝子p53(wt)およびmt p53(R175HおよびG245D)もまた対照として並行して使用した。約36時間後、800μg/ml(DU145およびPC3)または400μg/ml(LNCaPおよびその亜細胞株)のG418を用いた選択を開始した。G418含有培地で細胞を維持し、培地を3〜4日毎に交換した。2〜4週間の選択後、細胞を1x PBSで洗浄し、1x PBS中の2%ホルムアルデヒドで15分間固定し、1x PBS中の0.5%クリスタルバイオレットで15分間染色し、蒸留H2Oで1〜2回洗浄した。各皿において拡大せずに肉眼で見られるコロニーをOpen-Lab softwareで計数した。
【0191】
PMEPA1のコロニー形成能に対するPYモチーフ突然変異の影響を評価するため、LNCaPおよびPC3細胞をPMEPA1突然変異体、すなわちPMEPA1-PY1m-pcDNA3.1、PMEPA1-PY2m-pcDNA3.1、またはPMEPA1-PY1m/PY2m-pcDNA3.1でトランスフェクトした。PMEPA1-V5-pcDNA3.1およびインサートを含まない発現ベクターをそれぞれ陽性および陰性対照として用いた。2つの独立したコロニー形成アッセイを上述のように行った。
【0192】
図3A-Fに示されるように、前立腺癌細胞株DU145、PC3、LNCaP、およびLNCaP亜細胞株のコロニー形成能はセンス型のwt-PMEPA1発現ベクターのトランスフェクションによって顕著に抑制された。これらの条件下で、wt-p53は同様の細胞増殖抑制を示した(データは示してない)。
【0193】
2つの独立した実験において、PY1モチーフの突然変異はwt-PMEPA1によるコロニー形成の阻害を打ち消すようであり、PMEPA1とNEDD4の相互作用およびPMEPA1の生物学的機能におけるPY1モチーフの役割を強調している(図3G-H)。PMEPA1の増殖抑制効果はPY1モチーフとNEDD4 WWドメインとの相互作用に関連しているようである。この解釈は、wt-PMEPA1と比較してPY1モチーフ突然変異体で明確により多くのコロニーを示す顕著な観察に基づいている。
【0194】
細胞増殖解析。前立腺癌細胞に対するPMEPA1の増殖抑制効果を更に評価するため、安定なPMEPA1-GFP-Tet LNCaPトランスフェクタントを作製した。これらの細胞におけるPMEPA1-GFP融合タンパク質の発現は培地(Clontech)中のテトラサイクリンによって負に調節された。細胞増殖アッセイのために、培地中に1μg/mlのテトラサイクリンを含むまたは含まない96ウェルプレートに3,000個のPMEPA1-GFP-Tet LNCaP細胞を播種した。CellTiter 96 Aqueous One Solutionキット(Promega, Madison, WI)を用いて、製造メーカーの使用説明書に従って細胞増殖を測定した。
【0195】
PMEPA1の増殖抑制効果は、外因性PMEPA1がテトラサイクリンの非存在下でアップレギュレートされる安定なPMEPA1-GFP-Tet-LNCaP細胞の細胞増殖特性によって更に確認された。テトラサイクリン陰性培地でのPMEPA1-GFP-Tet-LNCaP細胞の増殖は、テトラサイクリン陽性培地でのPMEPA1-tet LNCaPトランスフェクタントのそれより著しく遅い(図5)。PMEPA1過剰発現を伴うLNCaP細胞はまたRBリン酸化の増加を示し、これによりPMEPA1の細胞増殖抑制効果が更に確認された(データは示してない)。
【0196】
PMEPA1はLNCaPおよびその亜細胞株(C4、C4-2およびC4-2B)を含むアンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞株において発現される。LNCaP細胞の増殖はアンドロゲン依存性である。LNCaP亜細胞株の増殖はアンドロゲン非依存性であるが、アンドロゲン受容体はそれらの増殖に重要である(Zegarra-Moroら、Cancer Res., 62: 1008-1013, 2002)。本発明者らは、LNCaPおよびその亜細胞株をPMEPA1発現ベクターでトランスフェクトすることによるPMEPA1の過剰発現が細胞増殖を顕著に抑制することを観察した。本発明者らの予備的な観察は、LNCaP細胞でのPMEPA1過剰発現が結果としてアンドロゲン受容体下流遺伝子の発現を変化させることを示したので(Xuら、未発表データ)、本発明者らは、LNCaPおよびその亜細胞株でのPMEPA1の増殖抑制効果はアンドロゲン受容体機能に影響を及ぼすことを通じて直接的または間接的に媒介されうるという仮説を立てた。アンドロゲン受容体陽性前立腺癌細胞株に対する増殖抑制効果に関わらず、PMEPA1はまたアンドロゲン受容体陰性前立腺腫瘍細胞DU145およびPC3の増殖を抑制することも見いだされ、このことは、DU145およびPC3に対するPMEPA1の増殖抑制効果が、例えばPMEPA1による他の核内ステロイド受容体の調節のような代替機構を通じて仲介されうることを示唆した。とはいえ、PMEPA1による前立腺癌細胞増殖の抑制は、PMEPA1が前立腺癌の発生・進行の制御に関係していることを示す。
【0197】
実施例8
前立腺腫瘍組織でのPMEPA1発現の低下
本発明者らはまた、前立腺癌の臨床病理学的な特性とPMEPA1発現の変化との関係を評価した。
【0198】
前立腺組織標本、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCM)および定量RT-PCR(QRT-PCR)アッセイ
一対の前立腺癌および正常組織は、(IRB治験審査委員会に認可された手続きのもとで)Walter Reed Army Medical Centerで治療された62人のCaP患者からの前立腺全摘出術標本に由来するものであった。標本採取の手順は以前に記載されている(Xuら、Cancer Res. 60: 6568-6572, 2000)。10ミクロンの凍結切片を調製して、-70℃で保存した。各患者から、組織学的に正常な前立腺上皮細胞および前立腺腫瘍細胞を、LCM装置を用いて製造メーカー(Arcturus Engineering, Mountain View, CA)により提供されたプロトコルに従い採取した。
【0199】
以前に記載されたように(Xuら、Cancer Res. 60: 6568-6572, 2000)、採取した正常および腫瘍前立腺上皮細胞から全RNAを調製し、蛍光光度計(Bio-Rad, Hercules, CA)で定量した。対になった正常および腫瘍細胞由来の0.1 ngの全RNAを用いてQRT-PCRを行った。PMEPA1を増幅するがSTAG1(PMEPA1の選択的スプライシング型;Raeら、Mol. Carcinog., 32: 44-53, 2001)は増幅しないPMEPA1 PCRプライマーを慎重に設計した。そのPCRプライマーは、
5'-CATGATCCCCGAGCTGCT-3'(配列番号12)および
5'-TGATCTGAACAAACTCCAGCTCC-3'(配列番号13)であり、
標識プローブは、
5'-AGGCGGACAGTCTCCTGCGAAAC-3'(配列番号14)であった。
【0200】
内部対照としてGAPDH遺伝子発現を検出した(PE Applied Biosystems, Foster, CA)。製造メーカーの推奨する一般的な試薬、PMEPA1またはGAPDHの適切なプライマーおよびプローブを含む50μl容量で、7700 sequence detection system(PE Applied Biosystems, Foster, CA)を用いて、3回反復実験(1回はRTを欠き、2回はRTを含む)で対のサンプルを増幅した。
【0201】
結果は、各2回反復サンプルの平均サイクル閾値(cT)からGAPDHの2回反復平均cT値を引いた値としてプロットした。2exp(cTtumor-cTnormal)を用いて対になった腫瘍(T)サンプルと正常(N)サンプル間の差異を計算し、発現の変化倍率として表した。更にPMEPA1の発現状態を下記のいずれかに分類した。すなわち、1)対になった正常組織と比較して1+(1.5〜3倍)、2+(3.1〜10倍)、3+(10.1〜20倍)および4+(>20倍)の発現増加として定義される、腫瘍組織での過剰発現(T>N);2)対になった正常組織と比較して1-(1.5〜3倍)、2-(3.1〜10倍)、3-(10.1〜20倍)および4-(>20倍)の発現低下として定義される、腫瘍組織での発現低下(T<N);または3)0(<1.5倍)と定義される変化なし(T=N)。腫瘍/正常対の標本の1つにおいて検出可能なPMEPA1発現は、発現増加について4+、発現低下について4-として記録されたものはなかった。
【0202】
SPSSソフトウェアパッケージを用いて統計解析を行った。PMEPA1発現と臨床病理学的な特性との関連はカイ二乗検定を用いて解析された。PSA再発フリー生存データを表すためにカプラン・マイヤー曲線を適用した。0.05未満のp値を統計的に有意であると見なした。
【0203】
原発性前立腺癌の全体的なPMEPA1発現パターンは下記の表3に示される。
【表3】

【0204】
腫瘍細胞および正常細胞間のPMEPA1発現の比較は、64.5%の腫瘍標本(62のうち40)で腫瘍細胞に関連した発現低下(T<N)を示し、16.1%の標本(62のうち10)で発現増加(T>N)、19.4%の標本(62のうち12)で変化なし(T=N)を示した。これらの発現パターンを器官限局性(pT2)および器官非限局性(pT3)疾患に階層化した場合、pT2(48%)に対してpT3(74%)においてより高い割合のPMEPA1低下が見られた。T>N群は少数の症例であるので、本発明者らはT>N群とT=N群を一体化した(TN群)。下記の表4に示すように、T<N群およびTN群間での臨床病理学的なパラメーターの比較は、T<N群がpT3腫瘍を有する患者の有意に高い割合を占め(p=0.035)、この群のより多くの患者がより高い術前血清前立腺特異的抗原(PSA)レベルを持つ(p=0.023)ことを示した。
【表4】

【0205】
PMEPA1発現について腫瘍を解析した62人の患者のうち、14人の患者は、前立腺切除後0.2 ng/mlと同等またはそれより高い血清PSAレベルにより定義される、前立腺癌の再発を示した。14人の患者のうち、11人は腫瘍に関連したPMEPA1発現の低下を示した(78.5%)。統計解析がたとえ有意差を示さなくとも、PMEPA1発現の低下はより高い再発率およびより短い術後再発期間と関連しているようである。有意差がないのは患者数が少ないためである可能性がある。
【0206】
参照により本明細書に組み入れられる本明細書に引用された文献の教示に照らして、本明細書は最もよく理解される。本明細書中の実施形態は本発明の実施形態の例示を提供するものであり、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。当業者であれば、他の多くの実施形態が本発明に包含されることを容易に認識できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0207】
【図1】PMEPA1のアンドロゲン依存性発現を示す。それは、様々な持続時間でのR1881(アンドロゲン)処理を行ったまたは行わないLNCaP細胞に由来するmRNAを用いた、PMEPA1プローブによるノーザンブロット解析を示す。アンドロゲン依存性のLNCaP細胞と比較して、アンドロゲン非依存性の前立腺癌細胞株DU145およびPC3は非常に低いレベルから検出不能なレベルまでのPMEPA1しか発現しなかった(図示してない)。
【図2】PMEPA1およびGAPDHプローブを用いてハイブリダイズした多様な組織のノーザンブロットを示し、PMEPA1が前立腺において高レベルで発現することを示す。矢印はPMEPA1転写産物の2つの変異型を示す。試験した23の組織のうち、前立腺は最も高いPMEPA1発現を示した。
【図3A−B】コロニー形成に対するPMEPA1の効果を示す。前立腺癌細胞株:C4(図3A)およびC4-2(図3B)を、3回反復実験で、各々3μgのPMEPA1-V5-pcDNA3.1(PMEPA1)およびpcDNA3.1ベクター(ベクター)でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をプラスミド含有細胞についてG418で3週間選択し、生存細胞を固定して、クリスタルバイオレットで染色した。各実験において、培養皿当たりのコロニー数を数え、ヒストグラムとして表し、3回反復実験の平均コロニー数±SDを示した。各々の細胞株について、3μgの各プラスミドで処理した細胞の1つの培養皿の写真も示した。
【図3C−D】コロニー形成に対するPMEPA1の効果を示す。前立腺癌細胞株: C4-2B(図3C)およびLNCaP(図3D)を、3回反復実験で、各々3μgのPMEPA1-V5-pcDNA3.1(PMEPA1)およびpcDNA3.1ベクター(ベクター)でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をプラスミド含有細胞についてG418で3週間選択し、生存細胞を固定して、クリスタルバイオレットで染色した。各実験において、培養皿当たりのコロニー数を数え、ヒストグラムとして表し、3回反復実験の平均コロニー数±SDを示した。各々の細胞株について、3μgの各プラスミドで処理した細胞の1つの培養皿の写真も示した。
【図3E−F】コロニー形成に対するPMEPA1の効果を示す。前立腺癌細胞株: DU145(図3E)およびPC3(図3F)を、3回反復実験で、各々3μgのPMEPA1-V5-pcDNA3.1(PMEPA1)およびpcDNA3.1ベクター(ベクター)でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をプラスミド含有細胞についてG418で3週間選択し、生存細胞を固定して、クリスタルバイオレットで染色した。各実験において、培養皿当たりのコロニー数を数え、ヒストグラムとして表し、3回反復実験の平均コロニー数±SDを示した。各々の細胞株について、3μgの各プラスミドで処理した細胞の1つの培養皿の写真も示した。
【図3G−H】コロニー形成に対するPMEPA1の効果を示す。別の実験において、LNCaP(図3G)およびPC3(図3H)細胞を、対照ベクターまたはwt-PMEPA1もしくはPMEPA1-PY突然変異体をコードしている発現ベクター、すなわち、1. PMEPA1-V5-pcDNA3.1、2. PMEPA1-PY1m-pcDNA3.1、3. PMEPA1-PY2m-pcDNA3.1、4. PMEPA1-PY1m/PY2m-pcDNA3.1、および5. pcDNA3.1でトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞をプラスミド含有細胞についてG418で3週間選択し、生存細胞を固定して、クリスタルバイオレットで染色した。各実験において、培養皿当たりのコロニー数を数え、ヒストグラムとして表し、3回反復実験の平均コロニー数±SDを示した。各々の細胞株について、3μgの各プラスミドで処理した細胞の1つの培養皿の写真も示した。
【図4】図4Aは、アンドロゲン受容体調節性遺伝子に対するアンドロゲン受容体およびその機能上の結果のPMEPA1介在ダウンレギュレーションを示す。PMEPA1-GFPおよびpEGFP(対照)プラスミドで安定的にトランスフェクトしたLNCaP細胞を、cFBSを含む培地で5日間培養し、その後、0.1 nMのR1881で刺激した。ウェスタンブロッティングのためにアンドロゲン刺激後0、12および24時間で細胞を回収した。アンドロゲン受容体、PSA、PSMAおよびチューブリンに対する抗体を用いて、ウェスタンブロッティングで対応するタンパク質を検出した。 図4Bは、PMEPA1がユビキチン-プロテアソーム経路に対する非特異的なPMEPA1誘導性の効果を介してアンドロゲン受容体発現を減少させるのではないことを示す。安定なPMEPA1-GFP-Tet-LNCaPトランスフェクタント(Tet-off系)を、テトラサイクリンを含むまたは含まない適切な培地で10日間培養し、免疫ブロッティングに用いた。アンドロゲン受容体、GFP、p27およびチューブリンに対する抗体を用いて、対応するタンパク質を検出した。
【図5】細胞増殖に対するPMEPA1の効果を示す。安定なPMEPA1-GFP-Tet-LNCaPトランスフェクタントを、96ウェルプレート中の1μg/mlのテトラサイクリンを含むまたは含まない培地に播種した。細胞増殖は表示された時間にCellTiter 96 Aqueous One Solutionキットを用いて測定した。Tet+およびTet-はそれぞれテトラサイクリンを含むまたは含まない細胞培養培地を表す。細胞数を反映するOD値は1日目を除いて2群間で有意に異なる(p<0.01)。
【図6】NEDD4タンパク質へのPMEPA1の結合を規定する。発現プラスミド、すなわち、PMEPA1-V5-pcDNA3.1(レーン1、5)、PMEPA1-PY1m-pcDNA3.1(レーン2、6)、PMEPA1-PY2m-pcDNA3.1(レーン3、7)およびPMEPA1-PY1m/PY2m-pcDNA3.1(レーン4、8)に由来するin vitro転写/翻訳産物([35S]メチオニン標識溶解液)をGST-NEDD4-WW-セファロースビーズ(レーン1〜4)または対照GSTビーズ(レーン5〜8)と共にインキュベートし、GST-NEDD4-WW-セファロースビーズに結合した[35S]メチオニン標識タンパク質をサンプルバッファーで可溶化し、SDS-PAGEゲルによって分離した。レーン1〜4のサンプルに相当する等量の[35S]メチオニン溶解液をGSTプルダウンせずにSDS-PAGEゲルで泳動した(レーン9〜12)。
【図7】免疫沈降アッセイを示す。293細胞を、NEDD4-GFPおよび以下の融合タンパク質の1つ、すなわち、PMEPA1-V5(レーン1)、PMEPA1-PY1m-V5(レーン2)、PMEPA1-PY2m-V5(レーン3)またはPMEPA1-PY1m/PY2m-V5(レーン4)をコードする発現ベクターで共トランスフェクトした。各群の細胞溶解液を抗GFP抗体で免疫沈降し、その後、免疫ブロッティングに供した(ブロットa)。免疫沈降しない各群の細胞溶解液もまた、対照として免疫ブロッティングに供した(ブロットbおよびc)。ブロットaおよびbは抗V5抗体により検出し、ブロットcは抗GFP抗体により検出した。
【配列表】







【特許請求の範囲】
【請求項1】
前立腺癌細胞におけるアンドロゲン受容体の発現を低下させるのに有効な量で、前立腺癌細胞に配列番号2を含んでなるポリペプチドを投与することを含む、前立腺癌細胞におけるアンドロゲン受容体の発現を低下させる方法。
【請求項2】
前立腺癌細胞の増殖を抑制するのに有効な量で、前立腺癌細胞に配列番号2を含んでなるポリペプチドを投与することを含む、前立腺癌細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項3】
転写がアンドロゲン受容体によって制御される遺伝子の前立腺癌細胞における発現を調節するのに有効な量で、前立腺癌細胞に配列番号2を含んでなるポリペプチドを投与することを含む、前立腺癌細胞における前記遺伝子の発現を調節する方法。
【請求項4】
配列番号2の配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含むベクターを用いて、前記ポリペプチドが投与される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ポリヌクレオチドが配列番号1を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子が前立腺特異的抗原遺伝子、PSMA遺伝子、またはPCGEM1遺伝子である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
配列番号2に対して少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含んでなり、コロニー形成アッセイにおいてLNCaP細胞の増殖を抑制するポリペプチド。
【請求項8】
配列番号2の少なくとも1つのPYモチーフに少なくとも1つの突然変異および/または欠失を含む、配列番号2のポリペプチド変異体。
【請求項9】
前立腺癌を診断または予後判定する方法であって、
a) 患者由来の生体サンプル中のポリヌクレオチドの発現レベルを検出すること、ただし、前記ポリヌクレオチドは配列番号2のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするものであること、および、
b) 前立腺癌の発生または進行の可能性を判定すること、ただし、生体サンプル中の前記ポリヌクレオチドの発現の低下が癌の発生または進行の可能性の増加と相関すること、
を含む方法。
【請求項10】
前記ポリヌクレオチドが配列番号1を含んでなる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
配列番号2を含んでなるポリペプチドに特異的に結合する化合物をスクリーニングする方法であって、前記ポリペプチドに試験化合物を接触させること、前記ポリペプチドと前記化合物との結合を測定すること、および、前記ポリペプチドに特異的に結合する化合物を同定すること、を含む方法。
【請求項12】
前記化合物が調節化合物である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前立腺癌の診断または予後判定方法であって、
a) 生体サンプルにおける請求項7に記載のポリペプチドの発現レベルを検出すること、および、
b) 前立腺癌の発生または進行の可能性を判定すること、ただし、生体サンプル中の前記ポリペプチドの発現の低下が癌の発生または進行の可能性の増加と相関すること、
を含む方法。
【請求項14】
前記ポリペプチドがそのポリペプチドに特異的に結合する抗体により検出される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリペプチドの発現が対照サンプルと比較して低下している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリヌクレオチドの発現が対照サンプルと比較して低下している、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
生体サンプルが前立腺癌治療を受けた患者から得られる、請求項9または13に記載の方法。
【請求項18】
前記治療が前立腺外科手術である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前立腺癌患者において治療の効果を評価する方法であって、
a) 配列番号2を含んでなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの発現レベル、または配列番号2のアミノ酸配列を含んでなるポリペプチドの発現レベルを検出すること、および、
b) 治療の効果を判定すること、その際、生体サンプル中の前記ポリヌクレオチドもしくは前記ポリペプチドの発現の低下が治療後の癌進行の可能性の増加を示すこと、
を含む方法。
【請求項20】
前記治療が前立腺外科手術である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前立腺癌細胞におけるアンドロゲン受容体の発現を低下させるのに有効な量で、前立腺癌細胞に請求項7に記載のポリペプチドを投与することを含む、前立腺癌細胞におけるアンドロゲン受容体の発現を低下させる方法。
【請求項22】
癌細胞の増殖を抑制するのに有効な量で、癌細胞に請求項7に記載のポリペプチドを投与することを含む、癌細胞の増殖を抑制する方法。
【請求項23】
転写がアンドロゲン受容体によって制御される遺伝子の前立腺癌細胞における発現を調節するのに有効な量で、前立腺癌細胞に請求項7に記載のポリペプチドを投与することを含む、前立腺癌細胞における前記遺伝子の発現の調節方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A−B】
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【図3C−D】
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【図3E−F】
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【図3G−H】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−508031(P2006−508031A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−503605(P2004−503605)
【出願日】平成15年5月9日(2003.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2003/013401
【国際公開番号】WO2003/095611
【国際公開日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【出願人】(500213720)ヘンリー・エム・ジャクソン・ファンデイション・フォー・ジ・アドヴァンスメント・オヴ・ミリタリー・メディシン (5)
【Fターム(参考)】