説明

アーク加工用電源装置

【課題】 倍電圧整流回路において、リップルの小さい回路構成を実現すること。
【解決手段】 三相全波整流回路と三相全波整流回路に並列に設けた平滑コンデンサと、インバータ回路の出力を制御する出力制御回路と、インバータ出力をアークに適した電圧に変換する主変圧器と、変換した出力を整流する2次整流回路とを設けたアーク加工用電源装置において、三相全波整流回路と平滑コンデンサとの間に設けた第1乃至第3の直列回路と、第1の入力端子(U相)乃至第3の入力端子(W相)と第1乃至第3の直列回路の間に設けて所定の各相の電位差によって生じる充電電流を各直列回路に供給する充電用スイッチング素子と、三相全波整流回路の直流電圧が所定の基準電圧以下のとき充電制御信号を出力して充電用スイッチング素子を導通し、基準電圧以上のとき充電制御信号の出力を停止する充電制御回路とを、備えたことを特徴とするアーク加工用電源装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三相交流電源が高電圧又はその約半分の低電圧の2系統どちらでも使用可能なアーク加工用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アーク加工用電源装置において、三相交流電源が200V又は400Vの2系統の電源を共用するために、変圧器の巻数比等を切り換えることによって対応してきた。
【0003】
図4は、従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図である。同図において、ダイオードD13乃至ダイオードD21は、三相交流電源を直流電圧に三相全波整流する1次整流用のダイオードである。スイッチSW1乃至スイッチSW3は、互いに連動する電圧切換スイッチであり、平滑コンデンサC11及び平滑コンデンサC12は、直流電圧を平滑するコンデンサである。
【0004】
インバータ回路INVは、例えば、図示省略の4つのスイッチング素子でフルブリッジを形成する。主変圧器INTは、アーク加工に適した高周波交流電圧に変換して出力し、2次整流回路DR1は、高周波交流電圧を直流電圧に整流して出力する。
【0005】
図4に示す、電圧切換スイッチSW1乃至電圧切換スイッチSW3がa側、例えば200V側(低電圧側)にあるときはダイオードD13乃至ダイオードD21とコンデンサC8乃至コンデンサC10とによって倍電圧整流回路を形成する。一方、電圧切換スイッチSW1乃至電圧切換スイッチSW3がb側、例えば400V側(高電圧側)にあるときはダイオードD13乃至スイッチD21によって三相全波整流回路が形成される。
【0006】
つぎに、図5に示す三相交流電源の入力波形図を用いて動作について説明する。図4に示す、電圧切換スイッチSW1乃至電圧切換スイッチSW3がb側、例えば400V側(高電圧側)にあるときは、回路は通常の三相全波整流回路となるので説明を省略し、電圧切換スイッチSW1乃至電圧切換スイッチSW3がa側、200V側(低電圧側)にあるときの動作を三相交流電源の各U、V、W相の電圧波形とともに説明する。
【0007】
図5に示す、T1の期間はU相の電位が最も高くV相の電位が最も低い。従って、UV間の電圧によってダイオードD14を通してコンデンサC8が充電される。このとき、図に示す、出力端子1、2間には入力端子U、電圧切換スイッチSW3、コンデンサC10、ダイオードD19、出力端子1、平滑コンデンサC11、平滑コンデンサC12、出力端子2、ダイオードD18、第2の入力端子(V相)の経路で電圧が印加される。
【0008】
このとき、ダイオードD13及びダイオードD16はコンデンサC10とU相またはV相の電位によって逆バイアスされており導通しない。ここでコンデンサC10は、これより先のT5の期間に充電され、極性はダイオードD19とダイオードD20との接続点がプラスとなってUV間の電圧と同極性であるので出力端子1、2間にはこれらの和の電圧が印加される。
【0009】
T2の期間において、コンデンサC8の端子電圧はUV間電圧の波高値まで充電されているので、これ以上充電されることなく、この状態を保持する。一方、出力端子1、2間にはW相の電位が最も低くなるために、ダイオードD21を通してWU間電圧とコンデンサC10の端子電圧との和が出力される。
【0010】
T3の期間において、V相の電位が最高、W相の電位が最低となるのでVW間電圧によってコンデンサC9が充電され、同時にコンデンサC8の電圧とVW間電圧との和が、出力端子1、2間に出力される。
【0011】
T4の期間において、コンデンサC9の充電は停止し、コンデンサC9の端子電圧とVU間の電圧との和が出力端子1,2間に出力される。
【0012】
T5の期間において、WU間の電圧によってコンデンサC10が充電されるとともにコンデンサC9の端子電圧とWU間の電圧との和が出力端子1、2間に出力される。
【0013】
T6の期間において、コンデンサC10の充電は停止し、コンデンサC9の端子電圧とWV間の電圧との和が出力端子1,2間に出力される。
【0014】
上述のT1からT6が繰り返される各期間において、各コンデンサの端子電圧は常に同極性であり、かつ出力端子1側がプラス極性であるので出力端子1、2間には交流電源の線間電圧の2倍の出力電圧が供給されることになる。(例えば、特許文献1)
【0015】
【特許文献1】特開平5−96372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従来のアーク加工用電源装置では、三相交流電源が200V又は400Vの2系統の電源を共用するために、図4に示す電圧切換スイッチSW1乃至SW3をa側、例えば200V側(低電圧側)のときに、9つのダイオードと3つのコンデンサとによって倍電圧整流回路を形成し、この三相全波整流回路は、三相交流電源の200Vを三相全波整流した脈動を有する直流電圧を2倍に昇圧して出力する。一方、電圧切換スイッチSW1乃至SW3をb側、例えば400V側(高電圧側)のときには、9つのダイオードによって三相全波整流回路を形成し、この三相全波整流回路は、三相交流電源の400Vを三相全波整流して出力するようにして、2系統の電源の共用を可能にさせていた。
【0017】
しかし、従来の倍電圧整流回路において、三相交流電源が400V系統のときには、三相全波整流した直流電圧のリップル値に変化がなく、平滑コンデンサの寿命に影響はない。しかし、三相交流電源が200V系統のとき、三相全波整流した脈動を有する直流電圧を2倍に昇圧するので、昇圧に応じて直流電圧のリップル値も増加する。このリップル値の増加に伴って平滑コンデンサ及び昇圧コンデンサの寿命が短くなってしまう。通常平滑コンデンサ及び昇圧コンデンサの寿命は、5年〜7年程度であり、溶接機に使用する全部品の中で寿命が一番短く、この平滑コンデンサ及び昇圧コンデンサの寿命が溶接機の寿命となる。よって、三相交流電源が200V系統のとき、リップル値の増加に対応して、平滑コンデンサ及び昇圧コンデンサの寿命を延ばすために容量を大きくする必要に迫られるが、容量を大きくすると平滑コンデンサ及び昇圧コンデンサの外寸が大きくなり、溶接機の大形化につながってしまう。
【0018】
そこで、本発明では、上述した課題を解決することができるアーク加工用電源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、第1の入力端子乃至第3の入力端子から入力される三相交流電源を整流し脈動する直流電圧を出力する三相ブリッジダイオードからなる三相全波整流回路と、上記三相全波整流回路に並列に設けて上記脈動する直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、上記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、上記インバータ回路の出力を制御する出力制御回路と、アーク加工に適した高周波交流電圧に変換する主変圧器と、上記主変圧器の出力を整流して直流電圧を出力する2次整流回路とを、設けたアーク加工用電源装置において、第1の昇圧コンデンサ乃至第6の昇圧コンデンサを同一容量とし、上記第1の昇圧コンデンサ及び第2の昇圧コンデンサを直列にして上記三相全波整流回路と上記平滑コンデンサとの間に設けられている第1の直列回路と、上記第3の昇圧コンデンサ及び第4の昇圧コンデンサを直列にして上記三相全波整流回路と上記平滑コンデンサとの間に設けられている第2の直列回路と、上記第5の昇圧コンデンサ及び第6の昇圧コンデンサを直列にして上記三相全波整流回路と上記平滑コンデンサとの間に設けられている第3の直列回路と、上記第1の入力端子と上記第1の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を上記第1の直列回路に供給する第1の充電用スイッチング素子及び第2の充電用スイッチング素子並びに上記第1の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第1の充電用ダイオード及び第2の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第2の充電用ダイオードと、上記第2の入力端子と上記第2の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を上記第2の直列回路に供給する第3の充電用スイッチング素子及び第4の充電用スイッチング素子並びに上記第3の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第3の充電用ダイオード及び第4の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第4の充電用ダイオードと、上記第3の入力端子と上記第3の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を上記第3の直列回路に供給する第5の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子並び上記第5の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第5の充電用ダイオード及び第6の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第6の充電用ダイオードと、上記三相全波整流回路の直流電圧が予め定めた基準電圧値以下のとき、互いに半周期ずらした最大導通比率の同一時間の第1の充電制御信号及び第2の充電制御信号を繰り返し出力し、第1の充電制御信号に応じて上記第1の充電用スイッチング素子、第3の充電用スイッチング素子及び第5の充電用スイッチング素子を導通し、第2の充電制御信号に応じて上記第2の充電用スイッチング素子、第4の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子を導通し、上記直流電圧が上記基準電圧値以上のとき、上記第1の充電制御信号及び第2の充電制御信号の出力を停止して上記第1の充電用スイッチング素子乃至第6の充電用スイッチング素子を遮断する充電制御回路とを、備えたことを特徴とするアーク加工用電源装置である。
【0020】
第2の発明は、上記充電制御回路は、上記三相交流電源が投入されたときから予め定めた時間後に、上記直流電圧と上記基準電圧とを比較することを、特徴とする請求項1記載のアーク加工用電源装置である。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、倍電圧昇圧回路は、第1の充電用スイッチング素子乃至第6の充電用スイッチング素子並びに第1の昇圧コンデンサ乃至第6の昇圧コンデンサから形成される。そして、第1の充電用スイッチング素子、第3の充電用スイッチング素子及び第5の充電用スイッチング素子並びに第2の充電用スイッチング素子、第4の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子を予め定めた高周波(例えば、可聴領域以上の20kHz)で交互に導通し、第1の昇圧コンデンサ乃至第6の昇圧コンデンサを高速で充電して三相全波整流回路の直流電圧を倍電圧に昇圧するので、昇圧された直流電圧のリップルは高周波化によってリップル値が大きく減少し、このリップル値の減少によって平滑コンデンサ及び各昇圧コンデンサの寿命が延びる。
【0022】
第2の発明によれば、充電制御回路は、三相交流電源が投入され、この三相交流電源の整流を開始したときから予め定めた時間が経過したときに、整流された直流電圧と基準電圧とを比較するので、三相交流電源の入力電圧が200V又は400Vかを正確に自動判別できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態1に係るアーク加工用電源装置である。同図において、図4に示す従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0024】
図1に示す第1のダイオードD1乃至第6のダイオードD6は、三相ブリッジダイオードからなる三相全波整流回路を形成する。入力電圧検出回路IVは、三相全波整流された直流電圧を検出して入力電圧検出信号Ivとして出力する。
【0025】
図1に示す、第1の昇圧コンデンサC1乃至第6の昇圧コンデンサC6は同一容量とし、第1の昇圧コンデンサC1及び第2の昇圧コンデンサC2を直列に設けて第1の直列回路を形成し、第3の昇圧コンデンサC3及び第4の昇圧コンデンサC4を直列に設けて第2の直列回路を形成し、第5の昇圧コンデンサC5及び第6の昇圧コンデンサC6を直列に設けて第3の直列回路を形成する。
【0026】
第1の充電用スイッチング素子TR1及び第2の充電用スイッチング素子TR2は、第1の入力端子(U相)と第1の昇圧コンデンサC1及び第2の昇圧コンデンサC2から形成される第1の直列回路の中点との間に設けると共に、第1の充電用ダイオードD7を第1の充電用スイッチング素子TR1に対して逆方向に並列に接続し、第2の充電用ダイオードD8を第2の充電用スイッチング素子TR2に対して逆方向に並列に接続して第1の昇圧コンデンサC1及び第2の昇圧コンデンサC2に各相の電位差によって生じる電流を充電する。
【0027】
第3の充電用スイッチング素子TR3及び第4の充電用スイッチング素子TR4は、第2の入力端子(V相)と第3の昇圧コンデンサC3及び第4の昇圧コンデンサC4から形成される第2の直列回路の中点との間に設けると共に、第3の充電用ダイオードD9を第3の充電用スイッチング素子TR3に対して逆方向に並列に接続し、第4の充電用ダイオードD10を第4の充電用スイッチング素子TR4に対して逆方向に並列に接続して第3の昇圧コンデンサC3及び第4の昇圧コンデンサC4に各相の電位差によって生じる電流を充電する。
【0028】
第5の充電用スイッチング素子TR5及び第6の充電用スイッチング素子TR6は、第3の入力端子(W相)と第5の昇圧コンデンサC5及び第6の昇圧コンデンサC6から形成される第3の直列回路の中点との間に設けると共に、第5の充電用ダイオードD11を第5の充電用スイッチング素子TR5に対して逆方向に並列に接続し、第6の充電用ダイオードD12を第6の充電用スイッチング素子TR6に対して逆方向に並列に接続して第5の昇圧コンデンサC5及び第6の昇圧コンデンサC6に各相の電位差によって生じる電流を充電する。
【0029】
インバータ回路INVは、4つのスイッチング素子で形成するフルブリッジ回路を使用しているが、ハーフブリッジ回路又はフォワード回路を使用してもよい。
【0030】
出力電流検出回路IDは、出力電流を検出して出力電流検出信号Idとして出力する。比較演算回路ERは、出力電流設定信号Irと出力電流検出信号Idとを比較演算して、比較演算信号Erとして出力する。出力制御回路SCは、パルス周波数が一定でパルス幅を変調するPWM制御を行ない、比較演算信号Erの値に応じて、第1の出力制御信号Sc1及び第2の出力制御信号Sc2のパルス幅を制御する。
【0031】
図2は充電制御回路CRの詳細図であり、第1の比較回路CP1、第2の比較回路CP2、入力基準設定回路VR1、基準電圧設定回路VR2、第1のアンド回路AD1、第2のアンド回路AD2、時限回路TI、反転回路IN及びスイッチング素子駆動回路SDによって形成されている。そして、上記充電制御回路CRは、入力電圧検出回路IVによって検出された入力電圧検出信号Ivの値が、基準電圧設定回路VR2によって設定された予め定めた基準電圧設定値Vr2より小さいときに、三相交流電源が200V系統であると判別してスイッチング素子駆動回路SDが動作を開始して、互いに半周期ずらした最大導通比率の同一時間の第1の充電制御信号Tc1及び第2の充電制御信号Tc2を出力する。
【0032】
つぎに、図5に示す三相交流電源の入力波形図を用いて、三相交流電源が200V系統のときについて、本発明の昇圧動作について説明する。同図において、T1の期間はU相の電位が最も高くV相の電位が最も低い、この期間において電流は第1の入力端子(U相)から第2の入力端子(V相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第1のダイオードD1、第3の昇圧コンデンサC3、第4の充電用ダイオードD10及び第3の充電用スイッチング素子TR3の経路で電流が流れ上記第3の昇圧コンデンサC3を充電する。
【0033】
また、図5に示すT1の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第1の充電用ダイオードD7、第2の充電用スイッチング素子TR2、第2の昇圧コンデンサC2及び第4のダイオードD4の経路で電流が流れ上記第2の昇圧コンデンサC2を充電する。
【0034】
図5に示すT2の期間は、U相の電位が最も高くW相の電位が最も低い、この期間において電流は第1の入力端子(U相)から第3の入力端子(W相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第1のダイオードD1、第5の昇圧コンデンサC5、第6の充電用ダイオードD12及び第5の充電用スイッチング素子TR5の経路で電流が流れ上記第5の昇圧コンデンサC5を充電する。
【0035】
また、図5に示すT2の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第1の充電用ダイオードD7、第2の充電用スイッチング素子TR2、第2の昇圧コンデンサC2及び第6のダイオードD6の経路で電流が流れ上記第2の昇圧コンデンサC2を充電する。
【0036】
図5に示すT3の期間は、V相の電位が最も高くW相の電位が最も低い、この期間において電流は第1の入力端子(V相)から第3の入力端子(W相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第3のダイオードD3、第5の昇圧コンデンサC5、第6の充電用ダイオードD12及び第5の充電用スイッチング素子TR5の経路で電流が流れ上記第5の昇圧コンデンサC5を充電する。
【0037】
また、図5に示すT3の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第3の充電用ダイオードD9、第4の充電用スイッチング素子TR4、第4の昇圧コンデンサC4及び第6のダイオードD6の経路で電流が流れ上記第4の昇圧コンデンサC4を充電する。
【0038】
図5に示すT4期間は、V相の電位が最も高くU相の電位が最も低い、この期間において電流は第2の入力端子(V相)から第1の入力端子(U相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第3のダイオードD3、第1の昇圧コンデンサC1、第2の充電用ダイオードD8及び第1の充電用スイッチング素子TR1の経路で電流が流れ上記第1の昇圧コンデンサC1を充電する。
【0039】
また、図5に示すT4の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第3の充電用ダイオードD9、第4の充電用スイッチング素子TR4、第4の昇圧コンデンサC4及び第2のダイオードD2の経路で電流が流れ上記第4の昇圧コンデンサC4を充電する。
【0040】
図5に示すT5期間は、W相の電位が最も高くU相の電位が最も低い、この期間において電流は第3の入力端子(W相)から第1の入力端子(U相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第5のダイオードD5、第1の昇圧コンデンサC1、第2の充電用ダイオードD8及び第1の充電用スイッチング素子TR1の経路で電流が流れ上記第1の昇圧コンデンサC1を充電する。
【0041】
また、図5に示すT5の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第5の充電用ダイオードD11、第6の充電用スイッチング素子TR6、第6の昇圧コンデンサC6及び第2のダイオードD2の経路で電流が流れ上記第6の昇圧コンデンサC6を充電する。
【0042】
図5に示すT6期間は、W相の電位が最も高くV相の電位が最も低い、この期間において電流は第3の入力端子(W相)から第2の入力端子(V相)に流れる。このとき、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5が導通すると、第5のダイオードD5、第3の昇圧コンデンサC3、第4の充電用ダイオードD10及び第3の充電用スイッチング素子TR3の経路で電流が流れ上記第3の昇圧コンデンサC3を充電する。
【0043】
また、図5に示すT6の期間において、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6が導通すると、第5の充電用ダイオードD11、第6の充電用スイッチング素子TR6、第6の昇圧コンデンサC6及び第4のダイオードD4の経路で電流が流れ上記第6の昇圧コンデンサC6を充電する。
【0044】
上述より、第1の昇圧コンデンサC1乃至第6の昇圧コンデンサC6は充電され、インバータ回路INVの入力電圧は、昇圧された電圧(例えば、200V→400V)が入力される。このとき、第1の充電用スイッチング素子、第3の充電用スイッチング素子及び第5の充電用スイッチング素子並びに第2の充電用スイッチング素子、第4の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子を所定の高周波(例えば、数kHz〜数10kHz)で交互に導通し、第1の昇圧コンデンサC1乃至第6の昇圧コンデンサC6を高周波で充電し所定の電圧に昇圧するために、昇圧された直流電圧のリップル値は高周波化によって減少する。そして、充電用スイッチング素子のスイッチング周波数を、数kHz〜数10kHzとしているが、可聴領域及び充電用スイッチング素子の損失を考慮して20kHz程度が望ましい。また、平滑コンデンサC7の容量と第1の昇圧コンデンサC1乃至第6の昇圧コンデンサC6の各容量の合計を同一にして、平滑コンデンサC7を削除し第1の昇圧コンデンサC1乃至第6の昇圧コンデンサC6を平滑コンデンサC7の替わりに使用してもよい。
【0045】
「実施の形態2」
図3は、本発明の実施の形態2の動作を説明する波形図である。図3(A)の波形は入力電圧検出信号Ivを示し、図3(B)の波形は図2に示す第1の比較信号Cp1を示し、図3(C)の波形は図2に示すアンド信号Ad2を示し、図3(D)の波形は第1の充電制御信号Tc1を示し、図3(E)の波形は第2の充電制御信号Tc2を示す。
【0046】
つぎに、三相交流用電源が200V系統のときについての動作について説明する。
図示省略のマグネットスイッチ等をオンすると、三相交流電源は三相全波整流回路に入力されると三相交流電源を整流し脈動する直流電圧に変換して出力する。入力電圧検出回路IVは、脈動する直流電圧を検出して図3(A)に示す入力電圧検出信号Ivとして出力する。
【0047】
図3に示す時刻t=t1において、図2に示す第1の比較回路CP1は、入力基準設定回路VR1によって設定した入力基準値Vr1と入力電圧検出信号Ivとを比較し、入力電圧検出信号Ivが入力基準値Vr1より大きくなったとき、図3(B)に示す第1の比較信号Cp1をHighレベルにする。時限回路TIは、第1の比較信号Cp1がHighレベルになると時限を開始し、第1のアンド回路AD1は第1の比較信号Cp1と時限信号Tiとのアンド論理を行って、時刻t=t2のときに、第1のアンド信号Ad1をHighレベルにして出力する。
【0048】
図2に示す第2の比較回路CP2は、基準電圧設定回路VR2によって設定した基準電圧値Vr2と入力電圧検出信号Ivとを比較し、入力電圧検出信号Ivが基準電圧値Vr2より小さいときに、第2の比較信号Cp2がLowレベルになり、反転回路INによってHighレベルにして第2のアンド回路AND2に入力する。
【0049】
時刻t=t2において、第2のアンド回路は、入力信号である第1のアンド信号Ad1はHighレベル、反転信号InもHighレベルであるので第2のアンド信号Ad2はHighレベルになる。スイッチング素子駆動回路SDは、第2のアンド信号Ad2がHighレベルになると三相交流電源が200V系であると判別して、図3(D)及び(E)に示す互いに半周期ずれて繰り返す第1の充電制御信号Tc1及び第2の充電制御信号Tc2を出力する。このとき、第1の充電制御信号Tc1及び第2の充電制御信号Tc2の出力周波数は、三相交流電源周波数の6倍(例えば、360Hz)以上の20kHzの高周波に設定してある。
【0050】
時刻t=t2において、図3(D)に示す第1の充電制御信号Tc1がHighレベルになると、第1の充電用スイッチング素子TR1、第3の充電用スイッチング素子TR3及び第5の充電用スイッチング素子TR5は導通し、時刻t=t3において遮断する。
【0051】
時刻t=t4において、図3(E)に示す第2の充電制御信号Tc2がHighレベルになると、第2の充電用スイッチング素子TR2、第4の充電用スイッチング素子TR4及び第6の充電用スイッチング素子TR6は導通し、時刻t=t5において遮断する。
【0052】
つぎに、三相交流用電源が400V系統のときについての動作について説明する。
図2に示す第2の比較回路CP2は、基準電圧設定回路VR2によって設定した基準電圧値Vr2と入力電圧検出信号Ivとを比較し入力電圧検出信号Ivが基準電圧値Vr2より大きいときに、第2の比較信号Cp2がHighレベルになり、反転回路INによってLowレベルにして第2のアンド回路AND2に入力する。
【0053】
図3に示す時刻t=t2において、第2のアンド回路AND2は、第1のアンド信号Ad1のHighレベルと反転信号InのLowレベルとのアンド論理を行って第2のアンド信号Ad2をLowレベルにする。スイッチング素子駆動回路SDは、第2のアンド信号Ad2がLowレベルになると三相交流電源が400V系であると判別して、第1の充電制御信号Tc1及び第2の充電制御信号Tc2の出力を停止する。
【0054】
充電制御回路CRは、第1の充電制御信号Tc1及び第2の充電制御信号Tc2の出力を停止して、第1の充電用スイッチング素子TR1乃至第6の充電用スイッチング素子TR6を遮断する。このとき三相全波整流回路は400Vの三相交流電源を三相全波整流し脈動する直流電圧にし、この直流電圧を平滑コンデンサC7によって平滑してインバータ回路INVに出力する。上述の充電制御回路CRによって、三相交流用電源が200V系統又は400V系統のどちらであるか精度良く判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【図2】図1に示す充電制御回路CRの詳細図である。
【図3】本発明の実施の形態2の動作を説明する波形図である。
【図4】従来技術のアーク加工用電源装置の電気接続図である。
【図5】三相交流電源の入力波形図である。
【符号の説明】
【0056】
AD1 第1のアンド回路
AD2 第1のアンド回路
C1 第1の昇圧コンデンサ
C2 第2の昇圧コンデンサ
C3 第3の昇圧コンデンサ
C4 第4の昇圧コンデンサ
C5 第5の昇圧コンデンサ
C6 第6の昇圧コンデンサ
C7 平滑コンデンサ
C8 コンデンサ
C9 コンデンサ
C10 コンデンサ
C11 平滑コンデンサ
C12 平滑コンデンサ
CR 充電制御回路
CP1 第1の比較回路
CP2 第2の比較回路
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
D3 第3のダイオード
D4 第4のダイオード
D5 第5のダイオード
D6 第6のダイオード
D7 第1の充電用ダイオード
D8 第2の充電用ダイオード
D9 第3の充電用ダイオード
D10 第4の充電用ダイオード
D11 第5の充電用ダイオード
D12 第6の充電用ダイオード
D13 ダイオード
D14 ダイオード
D15 ダイオード
D16 ダイオード
D17 ダイオード
D18 ダイオード
D19 ダイオード
D20 ダイオード
D21 ダイオード
DCL 直流リアクトル
DR1 2次整流回路
ER 比較演算回路
Er 比較演算信号
ID 出力電流検出回路
Id 出力電流検出信号
IN 反転回路
In 反転信号
IR 出力電流設定回路
Ir 出力電流設定信号
IV 入力電圧検出回路
Iv 入力電圧検出信号
INV インバータ回路
INT 主変圧器
M 被加工物
SC 出力制御回路
SD スイッチング素子駆動回路
Sc1 第1の出力制御信号
Sc2 第2の出力制御信号
SW1 電圧切換スイッチ
SW2 電圧切換スイッチ
SW3 電圧切換スイッチ
TH トーチ
TI 時限回路
Tc1 第1の充電制御信号
Tc2 第2の充電制御信号
TR1 第1の充電用スイッチング素子
TR2 第2の充電用スイッチング素子
TR3 第3の充電用スイッチング素子
TR4 第4の充電用スイッチング素子
TR5 第5の充電用スイッチング素子
TR6 第6の充電用スイッチング素子
VR1 入力基準設定回路
Vr1 入力基準設定信号(入力基準値)
VR2 基準電圧設定回路
Vr2 基準電圧設定信号(基準電圧値)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子乃至第3の入力端子から入力される三相交流電源を整流し脈動する直流電圧を出力する三相ブリッジダイオードからなる三相全波整流回路と、前記三相全波整流回路に並列に設けて前記脈動する直流電圧を平滑する平滑コンデンサと、前記直流電圧を高周波交流電圧に変換するインバータ回路と、前記インバータ回路の出力を制御する出力制御回路と、アーク加工に適した高周波交流電圧に変換する主変圧器と、前記主変圧器の出力を整流して直流電圧を出力する2次整流回路とを、設けたアーク加工用電源装置において、第1の昇圧コンデンサ乃至第6の昇圧コンデンサを同一容量とし、前記第1の昇圧コンデンサ及び第2の昇圧コンデンサを直列にして前記三相全波整流回路と前記平滑コンデンサとの間に設けられている第1の直列回路と、前記第3の昇圧コンデンサ及び第4の昇圧コンデンサを直列にして前記三相全波整流回路と前記平滑コンデンサとの間に設けられている第2の直列回路と、前記第5の昇圧コンデンサ及び第6の昇圧コンデンサを直列にして前記三相全波整流回路と前記平滑コンデンサとの間に設けられている第3の直列回路と、前記第1の入力端子と前記第1の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を前記第1の直列回路に供給する第1の充電用スイッチング素子及び第2の充電用スイッチング素子並びに前記第1の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第1の充電用ダイオード及び第2の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第2の充電用ダイオードと、前記第2の入力端子と前記第2の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を前記第2の直列回路に供給する第3の充電用スイッチング素子及び第4の充電用スイッチング素子並びに前記第3の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第3の充電用ダイオード及び第4の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第4の充電用ダイオードと、前記第3の入力端子と前記第3の直列回路の中点との間に設けて予め定めた各相の電位差によって生じる充電電流を前記第3の直列回路に供給する第5の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子並びに前記第5の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第5の充電用ダイオード及び第6の充電用スイッチング素子に逆方向に並列に設けた第6の充電用ダイオードと、前記三相全波整流回路の直流電圧が予め定めた基準電圧値以下のとき、互いに半周期ずらした最大導通比率の同一時間の第1の充電制御信号及び第2の充電制御信号を繰り返し出力し、第1の充電制御信号に応じて前記第1の充電用スイッチング素子、第3の充電用スイッチング素子及び第5の充電用スイッチング素子を導通し、第2の充電制御信号に応じて前記第2の充電用スイッチング素子、第4の充電用スイッチング素子及び第6の充電用スイッチング素子を導通し、前記直流電圧が前記基準電圧値以上のとき、前記第1の充電制御信号及び第2の充電制御信号の出力を停止して前記第1の充電用スイッチング素子乃至第6の充電用スイッチング素子を遮断する充電制御回路とを、備えたことを特徴とするアーク加工用電源装置。
【請求項2】
前記充電制御回路は、前記三相交流電源が投入されたときから予め定めた時間後に、前記直流電圧と前記基準電圧とを比較することを、特徴とする請求項1記載のアーク加工用電源装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−62246(P2008−62246A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239718(P2006−239718)
【出願日】平成18年9月5日(2006.9.5)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】