説明

アーク溶接装置

【課題】 本発明では、溶接トーチのケーブルが長くても溶接条件の調整を作業者の手元で調整できるアーク溶接装置を提供する。
【解決手段】 トーチスイッチをオンすると溶接開始信号を出力する溶接トーチと溶接電源とを備えたアーク溶接装置において、加速度センサを溶接トーチ内部に具備し、溶接電源は、トーチスイッチの設定モード切換操作に応じて実溶接モードから出力調整モードに移行し、出力調整モードのとき、溶接トーチを移動させ、X軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が第1の加速基準値を超え、且つ第1の加速基準値より大きい第2の加速基準値を超えたとき、溶接条件設定値を増加させ、Y軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が第3の加速基準値を超え、且つ第3の加速基準値より大きい第4の加速基準値を超えたとき、溶接条件設定値を減少させる、ことを特徴とするアーク溶接装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アーク溶接装置に使用される溶接トーチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業者は溶接ワーク毎に溶接条件(例えば、溶接電流又は溶接電圧)を調整して作業するが、作業現場において出力ケーブルを延長して作業を行うときがある。このときリモコン調整器の制御ケーブルが短いため、作業者がリモコン調整器まで移動して溶接条件の調整を行なうことになり、移動が作業者に大きな負担をかけていた。この対策として、溶接トーチに溶接条件調整器を設けて、作業者の手元で溶接条件の調整を行って作業者の負担を軽減していた。
【0003】
図7は、従来技術のアーク溶接装置の電気接続図である。同図において、アーク溶接装置は、溶接電源WGと、シールドガスが充填されたガスボンベGBと、ガスボンベGBに取り付けられたガス流量調整器GCと、溶接ワイヤを巻回したワイヤリールWLと、溶接電力、溶接ワイヤ及びシールドガスの中継及び供給を行うワイヤ送給機WFと、トーチスイッチTSを設けたアーク溶接トーチTHとにより構成されている。
【0004】
図7に示す、被加工物Mと溶接電源WGとの距離が近いとき、リモコン調整器RECを作業者の手元に置いて溶接条件調整ツマミで溶接条件の調整が行えるので、作業者が溶接条件調整のため、そのつど溶接電源WGの設置位置まで移動する必要がない。
【0005】
しかし、溶接作業現場において、被加工物用ケーブル2及び溶接用ケーブル3を、例えば、10mに延長して作業を行うこともある。このときリモコン調整器RECを手元に置いて溶接条件の調整を行うことができなくなる。
この対策として、溶接トーチTHに溶接条件の変更できる調整器を設けて、作業者が溶接条件の調整を手元で行えるようにしていた。
【0006】
図8は、溶接条件の調整を作業者の手元に行う溶接トーチTHの操作部の概略図である。同図において、トーチスイッチTSをオンすることにより、トーチ先端部からシールドガスが放流され、ワイヤが送給され、被加工物Mとワイヤ先端との間に出力電圧が印加され、アーク溶接が開始される。
【0007】
図8に示す溶接トーチTHは、上面にモード選択ボタンMS及び調整器CBから成る溶接条件調整器が設けられている。モード選択ボタンMSを押すことによって、溶接電源WGは溶接条件を調整するための溶接電流調整モード又は溶接電圧調整モードのどちらかが設定され、図示省略の第1調整ボタンCBaを押すことによって調整値が増加し、第2調整ボタンCBbを押すことによって調整値が減少する。
【0008】
しかし、溶接トーチTHにモード選択ボタンMS、調整器CB等を設けると溶接トーチ自体が大きく、重くなって溶接作業を長時間行うことが困難になり作業性が落ちる。
【0009】
特許文献1には、モード選択ボタンMS、調整器CB等を設けた溶接トーチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−21542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
溶接作業現場において、被加工物用ケーブル2及び溶接用ケーブル3を延長して溶接ワーク毎に溶接条件の調整を必要とする溶接作業では、標準仕様のリモコン調整器では、リモコン調整器に接続されたリモコン用ケーブルが短く、作業者が手元にリモコン調整器を置いて溶接条件を調整できないので、調整の度にリモコン調整器の傍まで移動して溶接条件を調整する必要があり、作業者に大きな負担となっていた。この対策として、従来の溶接トーチに溶接条件調整器を設けて、作業者の手元で溶接条件の調整を行っていた。
【0012】
しかし、この溶接条件調整器を設けた溶接トーチでは、溶接トーチ自体が大きくなり且つ、重量も増えるので溶接作業を長時間継続することが困難になり作業性が落ちてしまう。更に、溶接条件調整器の設定部が小さく、皮手袋を付けて溶接条件の調整を行うとき、調整がしにくいので作業者が皮手袋を脱いで溶接条件の調整を行う必要があり作業性が落ちる、という課題が生じる。
【0013】
そこで、本発明では、溶接機の出力ケーブルが長くなっても、作業者が容易に溶接条件の調整を行うことができる、アーク溶接装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するために、請求項1の発明は、トーチスイッチをオンすると溶接開始信号を出力する溶接トーチと、前記溶接開始信号に応じて動作する溶接電源と、を備えたアーク溶接装置において、
各方向の加速度を検出し加速度センサ信号として前記溶接電源に出力する加速度センサを前記溶接トーチ内部に具備し、前記溶接電源は、前記トーチスイッチの設定モード切換操作に応じて実溶接モードから出力調整モードに移行し、前記出力調整モードのとき、作業者が前記溶接トーチを移動させたとき、X軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が、予め定めた第1の加速基準値を超え、且つ、前記第1の加速基準値より大きい第2の加速基準値を超えたとき、溶接条件の設定値を所定の増加幅だけ増加させ、Y軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が、予め定めた第3の加速基準値を超え、且つ、前記第3の加速基準値より大きい第4の加速基準値を超えたとき、前記溶接条件の設定値を所定の減少幅だけ減少させたのち、前記設定モード切換操作を再度行なって出力調整モードから実溶接モードに移行する、ことを特徴とするアーク溶接装置である。
【0015】
請求項2の発明は、前記トーチスイッチの設定モード切換操作を、ダブルクリック操作又は複数のクリック操作とする、ことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置である。
【0016】
請求項3の発明は、前記溶接条件の設定値が、溶接電流設定値及び/又は溶接電圧設定値である、ことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のアーク溶接装置である。
【0017】
請求項4の発明は、前記溶接条件設定値の増減幅を、Z軸方向の加速度センサ信号の加速値が正で予め定めた第5の加速基準値を超え、且つ、前記第5の加速基準値より大きい第6の加速基準値を超えたとき増加させ、前記Z軸方向の加速度センサ信号の加速値が負で予め定めた第5の加速基準値を超え、且つ、前記第5の加速基準値より大きい第6の加速基準値を超えたとき減少させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアーク溶接装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1及び請求項2によれば、作業者が手元の溶接トーチのトーチスイッチを設定モード切換操作(例えば、複数のクリック操作又はダブルクリック操作)を行うことで出力調整モードが設定でき、出力調整モードを設定したのちに、溶接トーチをX軸に沿って移動すると溶接条件の値が増加でき、Y軸に沿って移動すると溶接条件の値が減少できるので、作業者が溶接条件設定値の調整のために離れたリモコン調整器又はフロントパネルの調整期まで移動する必要が無くなり、作業の負担が大きく軽減できる。更に、皮手袋を付けた状態で溶接電流設定値及び溶接電圧設定値の調整が容易できるので作業効率が大きく向上する。
【0019】
本発明の請求項3によれば、出力調整モードを設定したのちに、溶接トーチをX軸又はY軸に沿って移動するだけで、溶接電流設定値及び/又は溶接電圧設定値の調整が遠隔から可能になる。
【0020】
本発明の請求項4によれば、溶接トーチのZ軸に沿って移動するだけで、溶接条件設定値の増減幅を遠隔から作業者が所望する値に変更できるので、更なる溶接の品質向上に繋がる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るアーク溶接装置の電気接続図である。
【図2】実施形態の溶接トーチの詳細図である。
【図3】実施形態1の調整モードのとき、溶接トーチをX軸に沿って移動(左右)したときの動作を説明する波形図である。
【図4】実施形態1の調整モードのとき、溶接トーチをY軸に沿って移動(上下)したときの動作を説明する波形図である。
【図5】実施形態2の調整モードのとき、溶接トーチをZ軸に沿って移動(前後)したときの動作を説明する波形図である。
【図6】溶接トーチと3軸との相関図である
【図7】従来技術のアーク溶接装置の電気接続図である。
【図8】従来技術の溶接トーチの詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係るアーク溶接装置の電気接続図である。同図において、図8示す従来技術のアーク溶接装置の電気接続図と同一符号の構成物は、同一動作を行うので説明は省略し、符号の相違する構成物についてのみ説明する。
【0023】
近年、物体の移動加速度を検知できる2軸加速度センサが、ゲーム機等に多く使用されており、この2軸加速度センサASは、X軸(左右方向)、Y軸(上下方向)の加速度を1個のセンサで検出でき、例えば、X軸の右方向に移動し加速するとプラスの加速度信号が出力され、左向に移動し加速するとマイナスの加速度信号が出力され、Y軸の上方向に移動し加速するとプラスの加速度信号が出力され、下右向に移動し加速するとマイナスの加速度信号が出力される。図2は2軸加速度センサASをトーチスイッチTSの上側の溶接トーチTHの内部に設けた詳細図である。
【0024】
図3及び図4は、本発明の実施形態1の動作を説明する波形図である。図3において、図3(A)は、トーチスイッチ信号Tsを示し、同図(B)は、溶接トーチTHをX軸(左右)に沿って移動したときのX軸対応加速度センサ信号Xsを示し、同図(C)は、溶接電流設定値Isを示し、同図(D)は、溶接電圧設定値Vsを示す。
【0025】
次に、図1〜図4を参照して本発明の実施形態1の動作について説明する。
図1に示す溶接電源WGの前面のフロントパネルに設けられた図示省略の溶接電流設定器又は溶接電圧設定器で、作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が若干の溶接電流設定値又は溶接電圧設定値の調整を必要と判断し、例えば、溶接電流設定値を100Aから101A、溶接電圧設定値を20Vから21Vに増加したいと思ったとき、作業者は、設定モード切換操作、例えば、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、時刻t=t2において、溶接電源WGを出力調整モードに設定する。このとき、設定モード切換操作を、例えば、複数のクリック操作でも良い。
【0026】
溶接電源WGが出力調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図6のX軸(左右)に沿って移動したとき、図2に示す溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、X軸(左右)に沿って移動したときの加速度を検出して図3(B)に示すX軸対応加速度センサ信号Xsを出力し、図1に示すトーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル6を介して溶接電源WGに送信する。
【0027】
溶接電源WGは、図3(B)に示すX軸対応加速度センサ信号Xsの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の最大加速値の絶対値を(ピークホールド)検出し、この検出した絶対値が、零近傍の予め定めた第1の加速基準値Arxを超え、且つ、第1の加速基準値Arxより大きい第2の加速基準値Arx2を超えたとき、時刻t=t4おいて、溶接電流設定値100Aに予め定めた加算電流値1Aを加算し、溶接電流設定値を図3(C)に示すように100Aから101Aに増加させ、且つ、溶接電圧設定値20Vに予め定めた加算電圧値1Vを加算し、溶接電圧設定値を図3(D)に示すように20Vから21Vに増加させる。
【0028】
次に、作業者が、溶接電流設定値を101Aから102A、溶接電圧設定値を21Vから22Vにさらに増加したいと判断したとき、溶接トーチTHを図6のX軸(左右)に沿って移動したとき、溶接電源WGは、図3(B)に示すX軸対応加速度センサ信号Xsの時刻t=t6の初速値零から時刻t=t8の終速値零の間の最大加速値の絶対値を(ピークホールド)検出し、この検出した絶対値が、零近傍の予め定めた第1の加速基準値Arxを超え、且つ、第1の加速基準値Arxより大きい第2の加速基準値Arx2を超えたとき、時刻t=t7おいて、溶接電流設定値101Aに加算電流値1Aを加算し、溶接電流設定値を図3(C)に示すように101Aから102Aに増加させ、且つ、溶接電圧設定値21Vに加算電圧値1Vを加算し、溶接電圧設定値を図3(D)に示すように21Vから22Vに増加させる。
【0029】
溶接電流設定値及び溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、調整モードを解除して通常の溶接モードに移行する。
【0030】
上記より、図3に示す調整モード時間T1の間に、溶接トーチTHを図6のX軸(左右)に沿って移動する移動回数に応じて加算回数が決定し、作業者の所望する値に調整することができる。
【0031】
次に作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定して溶接を開始する。そして、溶接が終了し新たに被加工物Mを交換して再度溶接を開始するとき、作業者が、例えば、溶接電流設定値を100Aから99A、溶接電圧設定値を20Vから19Vに減少したいと思ったとき、作業者は、設定モード切換操作、例えば、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、図4の時刻t=t2において、溶接電源WGを出力調整モードに設定する。
【0032】
溶接電源WGが出力調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHを図6のY軸(上下)に沿って移動したとき、図2に示す溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、Y軸(上下)に沿って往復移動したときの加速度を検出して図4(B)に示すY軸対応加速度センサ信号Ysを出力し、図1に示すトーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル6を介して溶接電源WGに送信する。
【0033】
溶接電源WGは、図4(B)に示すY軸対応加速度センサ信号Ysの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の最大加速値の絶対値を(ピークホールド)検出し、この検出した絶対値が予め定めた第1の加速基準値Aryを超え、且つ、第1の加速基準値Aryより大きい第2の加速基準値Ary2を超えたとき、時刻t=t4において、溶接電流設定値100Aに予め定めた減算電流値1Aを減算し、溶接電流設定値を図4(C)に示すように100Aから99Aに減算させ、且つ、溶接電圧設定値20Vに予め定めた減算電圧値1Vを減算し、溶接電圧設定値を図4(D)に示すように20Vから19Vに減算させる。
【0034】
次に、作業者が、溶接電流設定値の減少を99Aから98A、溶接電圧設定値を19Vから18Vにさらに減少したいと判断したとき、溶接トーチTHを図6のY軸(上下)に沿って移動したとき、溶接電源WGは、図4(B)に示すY軸対応加速度センサ信号Ysの時刻t=t6の初速値零から時刻t=t8の終速値零の間の最大加速値の絶対値を(ピークホールド)検出し、この検出した絶対値が第1の加速基準値Aryを超え、且つ、第1の加速基準値Aryより大きい第2の加速基準値Ary2を超えたとき、時刻t=t7において、溶接電流設定値99Aに減算電流値1Aを減算し98Aに減少させ、且つ、溶接電圧設定値を19Vから18Vに減少させる。
【0035】
溶接電流設定値及び溶接電流設定値の調整が終了すると、作業者は、再度トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、調整モードを解除して通常の溶接モードに移行する。
【0036】
上記より、図4に示す調整モード時間T1の間に、溶接トーチTHを図6のY軸(上下)に沿って移動する移動回数に応じて減算回数が決定し、作業者の所望する値に調整ができる。
また、溶接電源WGは、加算電流値、減算電流値、加算電圧値及び減算電圧値を個別に予め定めた値に設定でき、例えば、加算電圧値及び減算電圧値を0Vにしておけば、溶接電流設定値のみ個別に加算、減算の調整ができ、逆に、加算電流値及び減算電流値を0Vにしておけば、溶接電圧設定値のみ個別に加算、減算の調整ができる。
【0037】
「実施形態2」
図5は、本発明の実施形態2の動作を説明する波形図である。図5において、図5(A)は、トーチスイッチ信号Tsを示し、同図(B)は、溶接トーチTHをZ軸(上下)に沿って移動したときのZ軸対応加速度センサ信号Zsを示し、同図(C)は、溶接条件設定値の電圧増減値を示し、同図(D)は、溶接条件設定値の電流増減値を示す。
【0038】
図5を参照して本発明の実施形態2の動作について説明する。
図1に示す溶接電源WGの前面のフロントパネルに設けられた図示省略の溶接電流設定器又は溶接電圧設定器で、作業者が、例えば、溶接電流設定値100A、溶接電圧設定値20Vに設定し、溶接電流設定値の増減値1A、溶接電圧設定値の増減値1Vに設定する。このとき、作業者が溶接電流設定値の増減値1Aを2A、溶接電圧設定値の増減値1Vを2Vに変更したいと判断したとき、作業者は、設定モード切換操作、例えば、トーチスイッチのオン、オフを繰り返すダブルクリック操作を行い、図5に示す時刻t=t2において、溶接電源WGを出力調整モードに設定する。このとき、設定モード切換操作を、例えば、複数のクリック操作でも良い。
【0039】
溶接電源WGが出力調整モードを設定したのち、作業者が、溶接トーチTHをZ軸に沿って前方向移動したとき、図2に示す溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、Z軸の前に移動したときの加速度を検出して図5(B)に示すZ軸対応加速度センサ信号Zsを出力し、図1に示すトーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル6を介して溶接電源WGに送信する。
【0040】
溶接電源WGは、図5(B)に示すZ軸対応加速度センサ信号Zsの時刻t=t3の初速値零から時刻t=t5の終速値零の間の加速値を検出し、この検出した加速値が正で予め定めた第1の加速基準値Arzを超え、且つ、第1の加速基準値Arzより大きい第2の加速基準値Arz2を超えたとき、時刻t=t4において、溶接電流設定値の増減値1Aを2Aに増加させ、溶接電圧設定値の増減値1Vを2Vに増加させる。
【0041】
逆に、増加させた値を元に戻したいとき、溶接トーチTHをZ軸に沿って後方向に移動移動したとき、図2に示す溶接トーチTHに設けられた速度センサASは、Z軸の後方向に移動したときの加速度を検出して図5(B)に示すZ軸対応加速度センサ信号Zsを出力し、図1に示すトーチケーブル1、ワイヤ送給機WF及び制御ケーブル6を介して溶接電源WGに送信する。
【0042】
溶接電源WGは、図5(B)に示すZ軸対応加速度センサ信号Zsの時刻t=t6の初速値零から時刻t=t8の終速値零の間の加速値を検出し、この検出した加速値が負で予め定めた第1の加速基準値Arzを超え、且つ、第1の加速基準値Arzより大きい第2の加速基準値Arz2を超えたとき、時刻t=t7において、溶接電流設定値の増減値2Aを1Aに減少させ、溶接電圧設定値の増減値2Vを1Vに減少させて、溶接電流設定値の増減値を1A、溶接電圧設定値の増減値を1Vに戻すことが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 トーチケーブル
2 被加工物用ケーブル
3 溶接用ケーブル
4 ガスホース
5 リモコン用ケーブル
6 制御用ケーブル
AS 加速度センサ(3軸加速度センサ)
CB 調整器
GB ガスボンベ
GC ガス流量調整器
M 被加工物
MS モード選択ボタン
REC リモコン調整器
TH 溶接トーチ
TS トーチスイッチ
WF ワイヤ送給機
WG 溶接電源
WL ワイヤリール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トーチスイッチをオンすると溶接開始信号を出力する溶接トーチと、前記溶接開始信号に応じて動作する溶接電源と、を備えたアーク溶接装置において、
各方向の加速度を検出し加速度センサ信号として前記溶接電源に出力する加速度センサを前記溶接トーチ内部に具備し、
前記溶接電源は、前記トーチスイッチの設定モード切換操作に応じて実溶接モードから出力調整モードに移行し、前記出力調整モードのとき、作業者が前記溶接トーチを移動させたとき、X軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が、予め定めた第1の加速基準値を超え、且つ、前記第1の加速基準値より大きい第2の加速基準値を超えたとき、溶接条件の設定値を所定の増加幅だけ増加させ、Y軸方向の加速度センサ信号の加速値の絶対値が、予め定めた第3の加速基準値を超え、且つ、前記第3の加速基準値より大きい第4の加速基準値を超えたとき、前記溶接条件の設定値を所定の減少幅だけ減少させたのち、前記設定モード切換操作を再度行なって出力調整モードから実溶接モードに移行する、ことを特徴とするアーク溶接装置。
【請求項2】
前記トーチスイッチの設定モード切換操作を、ダブルクリック操作又は複数のクリック操作とする、ことを特徴とする請求項1記載のアーク溶接装置。
【請求項3】
前記溶接条件の設定値が、溶接電流設定値及び/又は溶接電圧設定値である、ことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載のアーク溶接装置。
【請求項4】
前記溶接条件設定値の増減幅を、Z軸方向の加速度センサ信号の加速値が正で予め定めた第5の加速基準値を超え、且つ、前記第5の加速基準値より大きい第6の加速基準値を超えたとき増加させ、前記Z軸方向の加速度センサ信号の加速値が負で予め定めた第5の加速基準値を超え、且つ、前記第5の加速基準値より大きい第6の加速基準値を超えたとき減少させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のアーク溶接装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−66906(P2013−66906A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206863(P2011−206863)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】