説明

アーク閃光検出システム

アークを検出するための装置が提供される。装置には、アーク閃光の特性を検出するためのファイバセンサと、アーク閃光の少なくとも2つの特性を処理するためのプロセッサが含まれている。プロセッサは、さらに、アーク故障信号を生成するように構成されている。保護デバイスは、アーク故障信号に基づいてアーク閃光を抑制するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般にアーク閃光検出に関し、詳細にはアーク閃光の複数のパラメータを使用したアーク検出に関する。
【背景技術】
【0002】
電力回路および開閉装置は、絶縁体によって分離された導体を有している。空気空間は、いくつかの領域ではしばしばこの絶縁体の一部またはすべてとして作用している。これらの導体が互いに近すぎるか、あるいは電圧が絶縁レベルを超えると、これらの導体間にアークが生じることがある。導体間の空気または任意の他の絶縁体(気体、固体または液体)は、イオン化して絶縁体を導電性にし、それによりアーク発生事象を可能にすることがある。アーク事象により、20,000℃程度の高温に達することがある温度が誘導され、導体および隣接する材料が蒸発し、また、周囲の回路を破壊する爆発性エネルギーが放出される。
【0003】
アーク閃光は、相と相の間、相と中性の間、あるいは相と接地の間のアーク発生故障による急激なエネルギー放出によるものである。アーク閃光は、爆発の場合と同様、高い熱、強烈な光、圧力波および音波/衝撃波をもたらすことがある。しかしながら、アーク故障電流は、通常、短絡電流と比較するとその大きさははるかに小さく、したがってアーク故障状態を取り扱うべく遮断器が選択されない限り、遮断器のトリッピングが遅延し、あるいはまったくトリップしないことが有り得る。通常、アーク閃光抑制技法には標準のヒューズおよび遮断器が使用されている。しかしながら、このような技法は応答時間が遅く、また、アーク閃光を抑制するだけの十分な速さを有していない。
【0004】
アーク故障を抑制するための他の技法の1つは、光などのアーク発生事象の特定の特性を検出することである。光センサは、エンクロージャ内の光を検出し、かつ、アーク閃光事象が発生したことを決定する。しかしながら、光を検出するこのような方法は、迷光または他の光源からの光が検出されると、誤ったアーク検出をもたらすことがある。さらに、このような方法は、アーク発生事象の位置を提供していない。他の技法には、エンクロージャ内における、アーク閃光によって誘導される圧力変化を検出するための圧力センサの実施がある。しかしながら、このような方法は、実際にアーク閃光が発生した後の圧力蓄積に相当な時間を要するため、検出が遅延することになる。また、圧力センサによるアーク閃光の早期検出は、帯域幅および感度によっても制限されることがあり、したがって圧力センサの応答範囲を超えるアーク発生事象を捕えることができないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許第1538722号公報
【発明の概要】
【0006】
改良型応答時間を有し、かつ、誤った警報を回避する改良型アーク閃光防止機構が必要である。
【0007】
簡潔には、アークを検出するための装置が提供される。装置には、アーク閃光の特性を検出するためのファイバセンサと、アーク閃光の少なくとも2つの特性を処理するためのプロセッサが含まれている。プロセッサは、さらに、アーク故障信号を生成するように構成されている。保護デバイスは、アーク故障信号に基づいてアーク閃光を抑制するように構成されている。
【0008】
他の実施形態では、アーク検出システムが提供される。アーク閃光検出システムには、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出するための複数のファイバ知覚モジュールが含まれている。アーク閃光検出システムには、さらに、ファイバ知覚モジュールに結合された光スプリッタと、光スプリッタに結合された複数のフィルタが含まれている。プロセッサはフィルタに結合されており、また、1つまたは複数のアーク閃光特性の検出に基づいてアーク故障信号を生成するように構成されている。
【0009】
他の実施形態では、配電システム内の複数の位置に配置された複数のファイバ知覚モジュールを有するアーク閃光検出システムが提案される。ファイバ知覚モジュールは、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出するように構成されている。アーク閃光検出システムには、さらに、アーク閃光特性を分割するための複数の光スプリッタと、アーク閃光の位置を計算し、かつ、アーク故障信号を生成するためのプロセッサが含まれている。保護デバイスは、アーク故障信号に基づいて配電システムへの電力供給を遮断するように構成されている。
【0010】
他の実施形態では、インテリジェント格子が提案される。インテリジェント格子には、格子に結合された配電システムが含まれており、この配電システムは、所定の機能を実行するために電気結合された複数のデバイスを備えている。格子には、格子の1つまたは複数の特性を監視するための遠隔診断システムが結合されている。インテリジェント格子には、さらに、配電システム内の複数の位置に配置された複数のファイバ知覚モジュールを備えたアーク検出システムが含まれており、ファイバ知覚モジュールは、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出する。プロセッサは、アーク故障信号を生成してアーク閃光を抑制するために、複数のファイバセンサに結合されている。
【0011】
他の実施形態では、アーク閃光検出システムが提供される。システムには、アーク閃光の光特性、音響特性および熱特性のうちの少なくとも1つを検出するためのファイバセンサが含まれている。アーク閃光の複数の特性を解析し、かつ、アーク閃光の複数の特性に基づいてアーク故障信号を生成するためのプロセッサがこれらのファイバセンサに結合されている。アーク故障信号に基づいてアーク閃光が抑制される。
【0012】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様ならびに利点は、同様の文字がすべての図面を通して同様の部品を表している添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことにより、より深く理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一例示的配電システムの略図である。
【図2】図1の配電システム内で実施されるファイバ知覚モジュールの一実施形態を示す図である。
【図3】図1の配電システム内で実施される一例示的アーク閃光検出システムを示す図である。
【図4】図2で実施されるファイバ熱センサを示す図である。
【図5】図2で実施されるファイバ音響センサの詳細図である。
【図6】図2で実施されるファイバ光センサの詳細図である。
【図7】複数のエンクロージャを有する、本発明の一実施形態によるアーク閃光検出システムを実施する配電システムを示す図である。
【図8】本発明の一実施形態によるアーク検出システムの代替接続形態を示す図である。
【図9】本発明の一態様によるアーク閃光検出システムを実施するインテリジェント格子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、一例示的配電システムの略図である。配電システム10には、電力源12、保護デバイス14、母線16および負荷18が含まれている。一例示的実施形態では、アーク閃光検出システム20は、配電システム10の中で実施されている。ファイバセンサ22および24は、アーク閃光検出システム20に結合されており、アーク閃光事象26を検出するように構成されている。電力源12の一例には、保護デバイス14を介して母線16に電力を引き渡すように構成された発電機が含まれている。保護デバイス14の一例には、電気コマンド信号を介して動作させることができる遮断器が含まれている。負荷18は、母線16を介して電力源12から電力を受け取っている。
【0015】
アーク閃光は、場合によっては少なくとも2つの電流搬送母線/導体間のシステム10のあらゆる位置で生じる。さらに、アーク発生事象は、場合によっては電流搬送母線/導体と接地または中性導体の間で生じる。アーク閃光が生じる位置は、一般に、閉位置または開位置として分類することができる。閉位置は、パネルボードまたは密閉開閉装置パネルあるいは配電システムを含むことができる。開位置は、エンクロージャの外部の環境に露出される領域であって、例えば開閉装置またはパネルを電源から負荷に接続する母線または電気導線などの領域である。アーク発生故障が生じる主な原因は、相導体間または相導体と接地導体の間の離間距離の不足によるものである。離間距離は、環境条件(例えば湿度あるいは汚染環境中の導電粒子)、絶縁故障、導体間の異物(例えば技術者が落とした工具)を含むいくつかの要因によって影響されることがある。
【0016】
参照数表示26は、場合によっては光および他の成分(例えば蒸発物質)を放出する1つのこのようなアーク閃光の例を示したものである。ファイバセンサ22および24は、28および30などのアーク閃光の1つまたは複数の特性を検出するように構成されている。アーク閃光検出システム20は、ファイバセンサ22、24から信号を受け取り、かつ、受け取った信号をさらに処理してアーク発生事象を検証するように構成されている。システム20は、アーク閃光を示すアーク故障信号32を生成するように構成することも可能である。信号32は、アーク閃光を抑制するために電力を遮断することができる保護デバイス14に結合することができる。
【0017】
従来のシステムには、通常、アーク閃光を抑制するために、遮断器またはヒューズなどの直列デバイス、および「クローバ」(回路の開を効果的に誘発する)などの並列デバイスの2つのカテゴリの保護デバイスが使用されている。直列デバイスは従来から使用されているが、反応時間および動作時間が遅く、満足すべきデバイスではない。クローバデバイスにも同様の欠点があり、実際に有害な故障をもたらすことがある。さらに、このような従来のシステムは、警報をトリガするためにアーク閃光のいずれか1つの特性を検出している。しかしながら、いずれか1つの特性に頼ることは、アーク閃光を誤って検出し、したがって誤って警報を発し、また、誤ってトリッピングすることになりかねない。本明細書において開示されている実施形態によれば、実際のアーク閃光を分類するために、アーク閃光の様々なパラメータが処理される。
【0018】
22および24のようなファイバセンサは、配電システム10内の複数の位置に配置することができる。本説明では2つのこのようなセンサまたは知覚モジュールが説明されているが、3つ以上または1つのセンサ/モジュールを使用することも可能である。本明細書において使用されているように、「配電システム」という用語には、いくつかの例を挙げると、例えばAC−DC駆動、可変周波数駆動などの所定の機能を実行するために電気的または光学的に結合された複数のデバイスが含まれている。さらに、「配電システム」は、制御または電力引渡しのために構成された電気デバイスを有する他の電気サブシステムを具体化することも可能である。
【0019】
次に図2を参照すると、図1の配電システムの中で実施されるファイバセンサの一実施形態が示されている。一例示的実施形態によれば、ファイバセンサ22には、光ファイバコア35および外部シールド34が含まれている。ファイバコア35は、入射光36を受け取るように構成されている。1つまたは複数のファイバブラッグ回折格子がファイバコア35内に刻まれている。このようなファイバブラッグ回折格子は、ファイバ熱センサ38、ファイバ音響センサ40およびファイバ光センサ42として個々に構成することができる。一実施形態では、ファイバブラッグ回折格子は、特定の波長の光を反射し、それ以外の波長の光を透過光49として透過させるように構成されている。図に示されている実施形態では、個々の回折格子は、特定の波長を反射するように構成されており、例えばファイバ光センサ42は、入射光36の特性波長λ3を反射し、それ以外の波長を透過させるように構成されている。同様に、ファイバ熱センサ38およびファイバ音響センサ40は、それぞれ特性波長λ1、λ2を反射するように構成されている。一実施形態では、ファイバ光センサ42の周囲の外部シールド34は、紫外光に対して敏感な重合体44でコーティングされている。他の実施形態では、ファイバ音響センサ40の周囲の外部シールド34には、以下でより詳細に説明する圧力差動パッケージ46が含まれている。
【0020】
一実施形態では、個々のファイバセンサ(38、40または42)は、アーク閃光を検出するように構成することができる。2つまたは3つのこのようなファイバセンサ(38、40、42)を組み合わせて、ファイバ知覚モジュールとして構成することができる。このような知覚モジュールは、アーク発生事象によって生じる熱、音響および光の過渡変化を同時に測定することができ、それによりアーク閃光を抑制することができる。さらに、アーク閃光を抑制するために複数のパラメータを知覚することにより、誤ったアーク閃光の検出が低減される。他の実施形態では、ファイバ知覚モジュールは冗長性を提供しており、したがってこれらのファイバセンサのうちの1つが故障しても高い信頼性が得られる。
【0021】
一例示的動作では、広い波長を特長とする入射光36は、ファイバコア35に入射する。センサ38、40、42は、とりわけ波長、強度などの入射光特性を反射する。反射光52を解析することにより、このような反射パラメータが入射部分48で測定される。別法としては、透過光49を解析してアーク閃光を検出することも可能である。一例示的実施形態では、式λ=2・n・Λによって個々のファイバセンサ(38、40、42)の中心波長が決定され、nは光ファイバコア35の実効屈折率であり、また、Λは回折格子変調の周期性である。個々の回折格子(38、40、42)は、反射スペクトル中の中心波長(例えばλ1、λ2、λ3)を画定する特定の周期性に対して構成されている。
【0022】
図3は、図1の配電システム内で実施される一例示的アーク閃光検出システムを示したものである。アーク閃光検出システム20には、反射光52を受け取るように構成された光スプリッタ53が含まれている。一実施形態では、反射光52は、強度に基づいて少なくとも3つの信号54、56および58に一様に分割される。個々の信号54、56および58には、すべての特性波長λ1、λ2およびλ3が含まれている。帯域通過フィルタ60、62および64などのフィルタは、個々の波長λ1、λ2およびλ3を検出するように構成されている。これらのフィルタに結合された光検出器66、68および70は、個々のフィルタ60、62および64からの信号の光強度を測定するように構成されている。光検出器66、68、70に結合されたプロセッサ50は、特性波長を解析し、アーク閃光の熱特性、音響特性および光特性を検出するように構成されている。プロセッサ50は、上で言及した複数のパラメータのうちの少なくとも2つに基づいてアーク故障信号32を生成する。理解されるように、少なくとも2つのパラメータを使用することにより、誤った検出が低減される。例えば、ファイバセンサは迷光(閃光からの)を検出することがある。しかしながらこのような事象には圧力変化または熱変化が伴わないことがある。したがって少なくとも2つのパラメータを利用することにより、アーク閃光の誤った検出が低減される。
【0023】
アーク閃光は通常、光、音響を放出し、また、それによって温度が上昇する。ファイバセンサを使用した個々のこのようなパラメータの検出について、図4〜6を参照して説明する。図4は、図2で実施されるファイバ熱センサを示したものである。ファイバ熱センサ38(温度モニタとして構成されている)には、入射光36の特性波長λ1を反射し、それ以外の波長を射出光78として透過させるように構成されたファイバブラッグ回折格子76が含まれている。例えばアーク閃光77が回折格子76の近傍に入射すると温度が変化する。ファイバ熱センサ38の中心波長λ1は、Δλ=k・ΔTだけ上にシフトすることになり、温度感度kは約12pm/℃であり、また、ΔTは温度変化である。ファイバ熱センサ38は、アーク閃光(77)によって誘導される温度変化によって熱センサ38からの信号強度が大きくなるよう、図3に示されているフィルタ60の中心波長の近くに中心波長λ1を有するように構成されている。このような温度変化によって特性反射光80が得られる。反射光80は、反射光80より広い帯域幅82を有する狭帯域通過フィルタ(図3に示されているフィルタ60など)を介してフィルタリングされる。解析に都合がいいよう、フィルタリングされた反射光は、対応する電圧84に変換される。変換された電圧は、温度変化を決定するために閾値電圧86と比較される。例えば、変換された電圧84の大きさが閾値電圧86より大きい場合、正の温度変化が検出される。
【0024】
図5は、図2で実施されるファイバ音響センサの詳細図である。ファイバ音響センサ40(圧力センサとして構成されている)には、入射光78の特性波長λ2を反射し、それ以外の波長を射出光92として透過させるように構成されたファイバブラッグ回折格子90が含まれている。回折格子90の周囲に配置された圧力差動パッケージ46は、パッケージ46の近傍の圧力変化を検出するように構成されていることに留意されたい。例えば、アーク閃光によって発せられる音波94がパッケージ46に入射すると圧力が変化する。このような動的圧力変化P(t)は、ベース圧力96(エンクロージャ46の内側、PO)と比較され、特性反射光98が得られる。反射光98は、反射光98より広い帯域幅100を有する狭帯域通過フィルタ(図3に示されているフィルタ62など)を介してフィルタリングされる。圧力変化は、パッケージ46の内側と外側の間の圧力差ΔPによって誘導される。このような圧力変化によってファイバ音響センサ40の中心波長λ2が変化する。解析に都合がいいよう、フィルタリングされた反射光は、対応する電圧102に変換される。フィルタの中心波長は固定されているため、電圧102は、アーク閃光シグネチャ周波数を表す周波数領域信号104に変換される。周波数領域信号104は、ファイバ音響センサ40に入射する94などアーク閃光からの音波の周波数を表している。
【0025】
図6は、図2で実施されるファイバ光センサの詳細図である。ファイバ光センサ42(光検出器として構成されている)には、入射光92の特性波長λ3を反射し、それ以外の波長を透過光49として透過させるように構成されたファイバブラッグ回折格子108が含まれている。一例示的実施形態では、紫外光に対して感光性である重合体44が回折格子108の周囲に配置されている。感光性重合体44の屈折率は、紫外光エネルギーに露出されると約10-6 から約10-3まで適合するように構成されている。
【0026】
ファイバ光センサ42は、感光性重合体44の屈折率の変化に応答するように構成されている。導波モードの入射光92は、ファイバコアに沿って伝搬する。一実施形態では、ファイバ回折格子108は、エバネッセントフィールドエネルギーが隣接するファイバクラッド領域へ透過してクラッドモード透過が形成されるよう、アポダイズされ、かつ、傾斜が付けられている。感光性重合体44は、導波モードのエバネッセントフィールドエネルギーを放射モード透過として感光性重合体層44中に散逸させることができるよう、ファイバクラッドより大きい屈折率に対して構成されている。アーク発生事象によって誘導される屈折率の変化は、導波モードとクラッドモードの間の結合強度に影響を及ぼすことができる。結合強度変化のあらゆる変動は、導波モード波長を修正し、また、伝送損失を含むことができる。一例示的実施形態では、結合強度を増すために、アポダイズされた輪郭を備えた傾斜回折格子構造が実施されており、クラッド領域への光エネルギーの案内を促進している。傾斜回折格子構造とアポダイズされた輪郭のこのような組合せにより、事実上、エバネッセントフィールドがファイバコアからファイバクラッドまで拡張される。紫外光によって誘導される屈折率の変化は、前方および後方導波モード結合を変調して、事実上、ファイバセンサ共振波長をシフトさせることになる。例えば、アーク閃光によって発せられる光110がコーティング44に入射すると、重合体コーティング材料44の屈折率が変化する。このような変化は、中心波長λ3に影響を及ぼす反射光112中で検出することができる。反射光112は、反射光112より広い帯域幅114を有する狭帯域通過フィルタ(図3に示されているフィルタ64など)を介してフィルタリングされる。解析に都合がいいよう、フィルタリングされた反射光は、対応する電圧118に変換される。変換された電圧は、紫外光を決定するために閾値電圧120と比較される。例えば、変換された電圧118の大きさが閾値電圧120より大きい場合、紫外光の存在が確証される。
【0027】
図7は、複数のエンクロージャを有する、本発明の一実施形態によるアーク閃光検出システムを実施する配電システムを示したものである。配電システム124には、複数のエンクロージャ内の複数の位置に配置された複数のファイバセンサ22、24、126〜138が含まれている。透過および反射などの様々な検出構成を実施することができる。図に示されている実施形態では、1つのこのような透過ベース検出が実施されている。光源140は、特性波長を有する光を光ファイバコア142を介して伝送するように構成されている。図2で説明した異なる回折格子ファイバセンサを有する複数のファイバ知覚モジュール22、24、126〜138は、温度、音響および紫外光などのアーク閃光の複数の特性を検出するように構成されている。光スプリッタ144は、複数のエンクロージャに従って透過光143を分割している。分割された個々の光は、さらに解析するために(特性のフィルタリングおよび検出など)、プロセッサ50、146〜152に結合される。アーク閃光事象が生じると、遮断器などの保護デバイスがアーク故障信号32を介して駆動される。アーク故障信号を生成したプロセッサを追跡することにより、アーク閃光の位置を決定することができる。
【0028】
図8は、反射構成に基づくアーク閃光検出システムの代替接続形態を示したものである。配電システム160には、複数のエンクロージャ内の複数の位置に配置された複数のファイバセンサ22、24、126〜138が含まれている。光源140は、特性波長を有する光を光ファイバコア142を介して伝送するように構成されている。図2で説明した回折格子を有する複数のファイバセンサ22、24、126〜138は、温度、音響および紫外光などのアーク閃光の複数の特性を検出するように構成されている。光結合162は、複数のセンサ22、24、126〜138からのすべての反射光信号が共同するように実施されている。さらに、光スプリッタ144は、複数のエンクロージャに従って反射光164を分割している。分割された個々の光は、さらに解析するために(特性のフィルタリングおよび検出など)、プロセッサ50、146〜152に結合される。アーク閃光事象が生じると、遮断器などの保護デバイスがアーク故障信号32を介して駆動される。アーク故障信号を生成したプロセッサを追跡することにより、アーク閃光の位置を決定することができる。
【0029】
図9は、本発明の一態様によるアーク検出システムを実施するインテリジェント格子を示したものである。インテリジェント格子170には、送電線路178を介して送電基地176に結合された1つまたは複数の配電システム10、172、174が含まれている。さらに、インテリジェント格子には、遠隔診断システム180および地域伝送器オペレータを備えた電気ネットワークへの通信ネットワーク(ダッシュ線で示されている)相互接続が含まれている。一例では、配電システム10の所定の機能には、送電基地からの電力の受取り(この送電基地は発電所184から電力を受け取っている)、および様々な産業および住宅負荷ネットワークへの配電が含まれている。一実施形態では、遠隔診断システムは、格子の1つまたは複数の特性を監視するように構成されている。アーク検出システム20は、複数の位置で格子に結合することができる。既に説明したように、このようなアーク検出システムは、配電システム内の複数の位置に配置された複数のファイバセンサを実施しており、これらのファイバセンサは、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出している。アーク閃光が検出されると、これらの複数のファイバセンサに結合されたプロセッサがアーク故障信号を生成する。遠隔診断システムは、格子に結合されている複数のアーク検出システム全体にわたってアーク故障信号を監視している。地域送電オペレータ182は、格子内における故障の正確な位置を識別するために、遠隔診断システムを介してイネーブルすることができる。
【0030】
有利には、本明細書において開示されている、ファイバセンサを実施するアーク検出システムなどの実施形態は、応答が速く、また、費用有効性が高い。紫外光は、光スペクトルの中では最初に放出される光の1つであるため、紫外光を検出することによってアーク検出時間が短縮される。さらに、音響検出を実施しているアーク検出システムにより、アークの正確な位置の検出が促進される。アーク閃光の少なくとも2つ以上の特性を利用して検出することにより、誤った警報率の低減が促進される。ファイバ検出システムはEMIに対して鈍感であり、したがって外部妨害が低減される。ファイバ検出システムと格子ベース監視システムとを統合することにより、格子の健全性を監視することができる。
【0031】
以上、本発明の特定の特徴についてのみ、本明細書において図に示し、かつ、説明したが、当業者には多くの修正および変更が可能である。したがって特許請求の範囲には、すべてのこのような修正および変更が本発明の真の精神の範疇として包含されることが意図されていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0032】
10、124、160、172、174 配電システ

12 電力源
14 保護デバイス
16 母線
18 負荷
20 アーク閃光検出システム、アーク検出システム
22、24、126〜138 ファイバセンサ(ファイバ知覚モジュール)
26 アーク閃光事象
28、30、77 アーク閃光
32 アーク故障信号
34 外部シールド
35、142 光ファイバコア
36 入射光
38 ファイバ熱センサ
40 ファイバ音響センサ
42 ファイバ光センサ
44 重合体(重合体層、コーティング、重合体コーティング材料、感光性重合体)
46 圧力差動パッケージ、エンクロージャ
48 入射部分
49、143 透過光
50、146〜152 プロセッサ
52、112、164 反射光
53、144 光スプリッタ
54、56、58 信号
60、62、64 帯域通過フィルタ
66、68、70 光検出器
76、90、108 ファイバブラッグ回折格子
78、92 射出光(入射光)
80、98 特性反射光
82、100、114 帯域幅
84、102、118 電圧
86、120 閾値電圧
94 音波
96 ベース圧力
104 周波数領域信号
110 光
140 光源
162 光結合
170 インテリジェント格子
176 送電基地
178 送電線路
180 遠隔診断システム
182 地域送電オペレータ
184 発電所

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アークを検出するための装置であって、
アーク閃光の特性を検出するためのファイバセンサと、
前記アーク閃光の特性を処理し、かつ、アーク故障信号を生成するためのプロセッサと、
前記アーク故障信号に基づいて前記アーク閃光を抑制するための保護デバイスと
を備える装置。
【請求項2】
前記ファイバセンサによって検出される前記アーク閃光の少なくとも1つの特性を分割するためのスプリッタをさらに備える、請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記スプリッタに結合された1つまたは複数のフィルタをさらに備える、請求項2記載の装置。
【請求項4】
前記アーク閃光の前記特性が、紫外光特性、温度特性、圧力特性および音響特性のうちの少なくとも1つを含む、請求項1記載の装置デバイス。
【請求項5】
前記特性が複数の位置で知覚される、請求項4記載の装置デバイス。
【請求項6】
前記ファイバセンサが、ファイバ光センサ、ファイバ熱センサおよびファイバ音響センサのうちの1つまたは複数を備える、請求項1記載の装置。
【請求項7】
アーク閃光検出システムであって、
アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出するための複数のファイバ知覚モジュールと、
前記ファイバ知覚モジュールに結合された光スプリッタと、
前記光スプリッタに結合された複数のフィルタと、
前記フィルタに結合されたプロセッサであって、1つまたは複数のアーク閃光特性の検出に基づいてアーク故障信号を生成するように構成されたプロセッサと
を備えるアーク閃光検出システム。
【請求項8】
アーク閃光検出システムであって、
配電システム内の複数の位置に配置され、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出する複数のファイバ知覚モジュールと、
前記アーク閃光特性を分割するための複数の光スプリッタと、
前記アーク閃光の位置を計算し、かつ、アーク故障信号を生成するためのプロセッサと、
前記アーク故障信号に基づいて前記配電システムへの電力供給を遮断するための保護デバイスと
を備えるアーク閃光検出システム。
【請求項9】
前記ファイバ知覚モジュールが、ファイバ光センサ、ファイバ熱センサおよびファイバ音響センサのうちの1つまたは複数を備える、請求項8記載のアーク検出システム。
【請求項10】
前記ファイバ光センサが紫外光を検出する、請求項9記載のアーク検出システム。
【請求項11】
前記ファイバ熱センサが温度を検出する、請求項9記載のアーク検出システム。
【請求項12】
前記ファイバ音響センサが前記アーク閃光からの動的圧力波を検出する、請求項9記載のアーク検出システム。
【請求項13】
前記配電システムが格子に結合される、請求項8記載のアーク検出システム。
【請求項14】
遠隔診断デバイスが前記格子に結合される、請求項13記載のアーク検出システム。
【請求項15】
インテリジェント格子であって、
格子に結合され、所定の機能を実行するために電気結合された複数のデバイスを備えた配電システムと、
前記格子の1つまたは複数の特性を監視するための遠隔診断システムと、
アーク閃光検出システムであって、
前記配電システム内の複数の位置に配置され、アーク閃光の1つまたは複数の特性を検出する複数のファイバ知覚モジュール、および
前記複数のファイバ知覚モジュールに結合されてアーク故障信号を生成し、かつ、前記アーク閃光を抑制するためのプロセッサ
を備えたアーク閃光検出システムと
を備えるインテリジェント格子。
【請求項16】
前記遠隔診断システムが、前記格子に結合されている複数のアーク閃光検出システム全体にわたって前記アーク故障信号を監視する、請求項15記載のインテリジェント格子。
【請求項17】
前記アーク閃光検出システムが、前記ファイバ知覚モジュールに結合された光スプリッタおよびフィルタをさらに備える、請求項15記載のインテリジェント格子。
【請求項18】
前記アーク故障信号が前記格子の前記特性を表す、請求項15記載のインテリジェント格子。
【請求項19】
アーク閃光検出システムであって、
アーク閃光の光特性、音響特性および熱特性のうちの少なくとも1つを検出するためのファイバセンサと、
アーク閃光の複数の特性を解析し、かつ、アーク閃光の複数の特性に基づいてアーク故障信号を生成し、また、前記アーク故障信号に基づいて前記アーク閃光を抑制するためのプロセッサと
を備えるアーク閃光検出システム。
【請求項20】
前記プロセッサが光スプリッタおよびフィルタをさらに含む、請求項19記載のファイバアーク閃光検出システム。
【請求項21】
前記プロセッサに結合された保護デバイスをさらに備える、請求項19記載のファイバアーク閃光検出システム。
【請求項22】
前記保護デバイスが電力を遮断するように構成される、請求項21記載のファイバアーク閃光検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−530897(P2012−530897A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516136(P2012−516136)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038078
【国際公開番号】WO2010/147832
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】