説明

イオジキサノールの調製及び精製

イオジキサノールの調製のための改善された合成法、及び多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムと再結晶とを利用した精製プロセスが提供される。該合成法は、イオジキサノールを調製するための5-アセトアミド-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-イソフタルアミド(化合物A)の二量化に関するものであって、ホウ素含有酸性物質、又はそれらの塩、例えば、ホウ酸を含む反応混合物のpHを調節することによって、アルキル化などの過度の副反応が効果的に阻害される。この方法において、化合物Aからイオジキサノールへの変換率は、85〜90%である。該イオジキサノール粗生成物は、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製されて、90〜95%の回収率で、96〜98%の純度のイオジキサノール産物が得られる。該イオジキサノール粗生成物は、2-メトキシエタノールを含む混合溶媒において再結晶されて、90〜95%の回収率で、99%を超える純度のイオジキサノール産物が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学薬品の分野に属し、及びイオジキサノール(1,3-ビス(アセトアミド)-N,N'-ビス[3,5-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピルアミノカルボニル)-2,4,6-トリヨード-フェニル]-2-ヒドロキシプロパン)の調製及び精製の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオジキサノール、商品名Visipaque(登録商標)は、非イオン性X線造影剤として、Nycomed社によって開発された。イオジキサノールは、1993年に発表され、そして、大量生産されている。
【0003】
この非イオン性X線造影剤の製造は、化学的製造(一次生産)、及び医薬品の製造(二次生産)を含んでおり;イオジキサノールの一次生産は、多段階化学合成を含んでおり、及び精製プロセスによって完了する。
【0004】
注射用イオジキサノールは、非常に高い用量でヒトの血管に直接に注入されるものであり、このことは、二次生産用原料として用いるイオジキサノールに対しては非常に優れた品質が要求される、ことを意味している。したがって、イオジキサノールの純度は、好ましくは、米国薬局方の基準よりも高い純度にすべきである。にもかかわらず、市販医薬品の一次生産の効率及び経済性は、等しく重要とされている。したがって、イオジキサノールの化学合成及び精製プロセスの改善は、非常に重要である。
【0005】
イオジキサノールの化学合成及び精製プロセスは、双方を独立させることができ、また、互いに関連させることもできる。
【0006】
近年、文献には、イオジキサノールを調製するための多数の方法が引用されている。これらの方法は、多段階化学合成、並びにクロマトグラフィー及び非クロマトグラフィー精製法を含んでいる。薬局が入手可能な最終産物の原価は、これらのプロセスに大きく左右されるので、経済効果及び環境保護の観点から、これらプロセスを最適化することが重要である。
【0007】
(A.イオジキサノールの合成)
イオジキサノールの調製のための公知の主要なすべての化学合成プロセスは、5-ニトロイソフタル酸から出発する。最初に報告された方法は、欧州特許出願EP 0108638に記載されており、そこでは、最終中間体5-アセトアミド-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-イソフタルアミド(以下、化合物Aと称する)は、エピクロロヒドリン又は1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシルプロパンなどの試薬と反応をして、イオジキサノールを形成する(以下、この反応を、二量化と称する)。スキーム1を、参照されたい。
【化1】

【0008】
このプロセスでの全収率は、比較的低く、そして、最終産物であるイオジキサノールの精製プロセスは非常に費用が嵩み、しかも時間を浪費するものである。欧州特許出願EP 0108638に記載された精製プロセスは、精製を行うにあたって、分取液体クロマトグラフィーを使用している。同時に、そこに記載された方法によって調製された産物の純度の低さは、その精製をさらに困難なものにしている。分取液体クロマトグラフィーの使用は、工業プロセスにおいて、経済的かつ効率的に産物を生産することを難しくしている。大量生産は、困難である。
【0009】
効率的かつ経済的なイオジキサノールの調製方法を見出すための試みが行われてきた。Priebeは、論文(Acta Radioi. 36 (1995), Suppi 399, 21-31)を発表して、化学合成の収率を増大する試みについて報告をしている。この文献は、スキーム1に示した二量化における問題点を回避するための代替経路を記載している。しかしながら、この経路は、5-ニトロイソフタル酸を起点にして8つもの反応工程が関与しており、その内の一つの工程では、強力な腐食性を示す塩化チオニルを用いた塩素化も行っている。また、合成経路の初期段階でヨウ素原子が導入されているが、該プロセスにおいてヨウ素は最も高価な試薬である点で不利であり、したがって、コストを削減する余地が乏しい。この経路での収率及び最終精製方法については、未だ報告がされていない。
【0010】
イオジキサノールを調製するための第三の合成経路は、5-アミノ-2,4,6-トリヨード-イソフタル酸(WO 96/37458)を調製し、次いで、このものを、その二塩化物(WO 96/37459)、さらに、化合物A(米国特許US 5705692)へと変換し、そして、最終的に、スキーム1のプロセスにしたがって二量化を行う。これら二つのプロセスの間の差異は、化合物Aを合成するために、異なる経路を利用している点にある。したがって、この方法は、望ましくない酸塩素処理工程を必要とする第一の合成プロセスと同じ問題点を抱えている。
【0011】
イオジキサノールを調製するための第四の方法は、韓国特許出願KR 0050006367A及びKR 050024944Aにおいて報告がされている。まず、化合物A は、ヒドロキシル基保護試薬と反応し、次いで、二量化を行い、そして、最後に、脱保護工程を実施してイオジキサノールを調製する。この方法は、さらに二つの反応工程を必要とするが、O-アルキル化の減少が認められるものの収率の増加は報告されていない。
【0012】
(B. イオジキサノールの精製プロセス)
(a). クロマトグラフィー精製法)
欧州特許出願EP 108638は、分取液体クロマトグラフィーを利用して、精製を行うことを記載している。水溶性でかつ非イオン性の造影剤を、脱色、分離、及び精製するために、非イオン性化合物を含む溶液に対して利用をしたRP-HPLCを使用することが、Mallinckrodt社の欧州特許EP 0470247B1に記載されている。Bracco社の欧州特許EP 0902686B1は、造影剤に関する改善された精製方法を記載しており、そこでは、クロマトグラフィーとナノ濾過技術との組み合わせが利用されている。クロマトグラフィーとナノ濾過は、粗溶液の分離を行うために、及び、イオン交換樹脂は、その後脱色を行うために、利用されている。
【0013】
分取クロマトグラフィーを利用する前述したいずれの方法でも、医薬品に求められる許容純度にまで、イオジキサノールを精製することはできる。これらの方法での最大の問題点は、プロセスのコストが嵩むこと、それに、工業生産の条件に見合わないことにある。
【0014】
(b). 非クロマトグラフィー精製法)
欧州特許出願EP 0108636に記載された液体クロマトグラフィー法に代わる方法を見出すための幾つかの試みが行われている。
【0015】
WO 99/18054は、イオジキサノールの結晶化のためのプロセスを記載しており、該結晶化は、高エネルギープロセスを用いて行われており、具体的には、高圧下で、かつ常圧下の該溶液の沸騰点を超える温度下で行われている。
【0016】
WO 00/47549は、イオジキサノールを調製するためのプロセスを記載している。未反応の化合物Aは、反応混合物から析出し、及び次回のバッチ処理で再利用するために回収されるので、該プロセスでの全収率は増大することとなる。大半の未反応化合物Aが、反応混合物から析出する場合には、高速液体クロマトグラフィーに代えて、従来の結晶化を利用することができる。
【0017】
イオジキサノールを、少量の残留水を還流させながら、メタノール及び2-プロパノールの混合物から結晶化する場合(WO 9918054)、結晶化の進行は遅く、また、精製効果も限定されている。所望の純度を獲得するために、合成して直ちに得られるイオジキサノール粗生成物は、二度にわたって結晶化される。このプロセスは、時間を浪費するものであり、最初の結晶化に約3日を要し、及び二度目の結晶化には約2日を要する。
【0018】
WO 2006/016815は、結晶化によって、1-メトキシ-2-プロパノール及び水から精製を行う方法を記載している。WO 2007/064220は、結晶化によって、エタノール及び水を含む溶液から精製を行う方法を記載している。WO 2007/073202は、様々な溶媒を用いて結晶化を行う方法を記載している。この方法では、n-プロパノール又はイソ-プロパノール及び水が、精製溶媒として記載されている。しかしながら、該プロセスは、約3日またはそれ以上の時間を要し、また、収率は約80〜85%である。
【0019】
中国特許出願CN 101293855Aでは、2-メトキシエタノール、エタノール、及びメタノールなどの大量の極性溶媒を使用して、粗生成物を溶解する。次いで、少量の酢酸メチル、酢酸エチル、アセトニトリルなどの低極性溶媒を、溶液に濁りが生じるまで加える。徐冷および結晶化を終えた後に、イオジキサノールの純度の増大が認められる。
【0020】
この方法では、五度にわたって調製を行う必要があり、また、全収率は、わずか30%以下でしかない。これらの方法は、調製に求められる高い性能や経済性を備えておらず、工業規模での再生産は困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
以上をまとめると、結晶化による精製を行う以前に、HPLCで決定された75〜90%のイオジキサノールの純度が必要とされている。しかしながら、合成して得られる原料の純度は、一般的に、50〜60%である。したがって、イオジキサノールを調製するプロセスを改善する必要がある。該化学合成のプロセスは、産物の精製効率と品質の改善を明らかに妨げている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の内容)
本発明は、イオジキサノールの調製の方法を提供するものであって、効率的な合成および精製の方法も含む。
【0023】
本発明は、以下の特徴を含む:
【0024】
1. イオジキサノールの調製の方法であって、以下の工程;
a) イオジキサノールを調製するために、5-アセトアミド-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-イソフタルアミド(化合物A)を二量化して、二量化の溶液を取得し;
b) 該二量化の溶液を多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製して、97%を超える純度を有するイオジキサノール粗生成物を取得し;又は、
該二量化の溶液を陰イオンおよび陽イオン交換樹脂又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって脱塩して、脱塩したイオジキサノール粗生成物を取得し;
c) 該イオジキサノール粗生成物を、2-メトキシエタノールを含む混合溶媒を用いて再結晶して、99%を超える純度を有するイオジキサノールを取得する、
ことを含むこと特徴とする前記方法。
【0025】
本発明の方法で使用した多孔質吸着樹脂は、非極性または弱極性の樹脂である。適切な樹脂として、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル(pololyacrylic)エステル系樹脂、又は網状脂肪族ポリマー樹脂などがあり、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー系樹脂が好ましい。該樹脂の孔径は、通常は、80〜300Åの範囲である。該樹脂の例として、非イオン性ポリマー吸着樹脂、例えば、Amberlite XAD-16、XAD-4などの多環芳香族樹脂がある。これらの樹脂は、反応プロセスが進行している間に形成された不純物を除去する機能を奏する。
【0026】
本発明の方法で使用した陰イオンまたは陽イオン交換樹脂は、強酸型陽イオン交換樹脂、強酸型又は弱酸型陰イオン交換樹脂である。脱塩のための陰イオン又は陽イオン交換樹脂とイオジキサノール粗生成物との重量比率は、20:1〜0.2:1の範囲である。
【0027】
2. 二量化の溶液を脱塩して得た該イオジキサノール粗生成物が、85〜90重量%のイオジキサノール、3〜7重量%のイオヘキソール、2〜5重量%の化合物A、及びその他の不純物を含む条項1記載の方法。
【0028】
3. 該二量化剤が、エピクロロヒドリン、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパン、又は1,3-ジブロモ-2-ヒドロキシプロパンであり、かつ該二量化反応が、非水溶媒、水、又は水と1種以上のアルコールとの混合物において進行する条項1記載の方法。
【0029】
4. 該二量化剤が、エピクロロヒドリンであり、かつ該溶媒が、水、2-メトキシエタノール、又はメタノール、好ましくは、水である条項3記載の方法。
【0030】
5. 該二量化剤/化合物Aの比率が、1モルの化合物Aにつき、0.45〜0.60モルの二量化剤である条項3又は4記載の方法。
【0031】
6. 過剰量のアルカリを使用して化合物Aを溶解し、次いで、ホウ素含有酸性物質又はその塩によって、過剰のアルカリを中和して、pHを10〜13、好ましくは、10〜11に調整する条項1記載の方法。
【0032】
7. 使用した該アルカリは、アルカリ金属水酸化物、好ましくは、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムであり、かつ化合物A/アルカリの比率が、1モルの化合物Aにつき、1.05〜1.60モルのアルカリである条項6記載の方法。
【0033】
8. 過剰のアルカリを中和して緩衝液を得るために用いた該ホウ素含有酸性物質又はその塩が、ホウ素酸素酸、ホウ素酸素酸を含む混酸、及びホウ酸塩を含み、前記ホウ素酸素酸が、ホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、又はテトラホウ酸であり、ホウ素酸素酸を含む該混酸が、酢酸、塩酸、リン酸、硫酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたその他の酸を含み、該ホウ酸塩が、ホウ砂、及びメタホウ酸塩、例えば、メタホウ酸ナトリウム又はメタホウ酸カリウムから選択され、好ましくは、該ホウ素含有酸性物質又はその塩は、ホウ酸、ホウ酸及び塩酸を含む混酸、及びホウ酸及びリン酸を含む混酸である条項6記載の方法。
【0034】
9. 該ホウ素含有酸性物質又はその塩での化合物A/ホウ素での比率が、1モルの化合物Aにつき、0.2〜1.2モルのホウ素、好ましくは、1モルの化合物Aにつき、0.2〜0.8モルのホウ素である条項8記載の方法。
【0035】
10. 調製をした該イオジキサノール粗生成物が、陰イオン及び陽イオン交換樹脂又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって脱塩される条項1記載の方法。
【0036】
11. 該イオジキサノール粗生成物の精製が、無機不純物及び有機不純物を分離する多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムを用いて実施される条項10記載の方法。
【0037】
12. 再結晶によって精製された該イオジキサノールが、国際的含量で、0.2%以下の不純物含量を含む条項1記載の方法。
【0038】
13. 該クロマトグラフィーカラムの多孔質吸着樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル(pololyacrylic)エステル系樹脂、又は網状脂肪族ポリマー樹脂、好ましくは、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー系樹脂である条項10又は11記載の方法。
【0039】
14. 該多孔質吸着樹脂とイオジキサノール粗生成物との重量比率が、20:1〜2:1である条項10又は11記載の方法。
【0040】
15. 該多孔質吸着樹脂とイオジキサノール粗生成物との重量比率が、2:1〜0.5:1である条項10又は11記載の方法。
【0041】
16. 化合物A 及びイオヘキソールが、水、又は5%未満の溶出用アルコールを含む水溶液を用いて単離される条項11記載の方法。
【0042】
17. 大量の水、又は20%未満のアルコールを含む大量の水溶液を使用して溶出し、次いで、該濾液をナノ濾過及び濃縮をして、97%を超える量のイオジキサノールを含むイオジキサノール粗生成物を取得する条項11記載の方法。
【0043】
18. 30%を超えるアルコールを含む水溶液を使用して溶出し、次いで、イオジキサノールの残渣を回収するために濃縮をする条項11記載の方法。
【0044】
19. 溶出のために使用される該アルコールが、C1〜C3アルカノール、好ましくは、メタノールである条項16、17又は18記載の方法。
【0045】
20. 該溶出が、常圧下、又は加圧下、好ましくは、1.5MPaの圧力下で実施される条項16、17又は18記載の方法。
【0046】
21. 単離した該化合物A及びイオヘキソールを使用してイオヘキソールを調製し、これを、条項1で定義をした多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラム及び2-メトキシエタノールを含む混合溶媒を用いる再結晶により精製し、イオヘキソールに関する米国薬局方の要件を満たすイオヘキソールを取得する条項16記載の方法。
【0047】
22. 再結晶のために使用した該イオジキサノール粗生成物が、該二量化の溶液、又はその脱塩溶液、又は噴霧乾燥をして得たその固形物である条項1記載の方法。
【0048】
23. 該再結晶の時間が、1〜4日、好ましくは、1〜3日、さらに好ましくは、約1〜2日である条項1記載の方法。
【0049】
24. 該再結晶の温度が、60℃より高く、好ましくは、90〜120℃、さらに好ましくは、102〜115℃である条項1記載の方法。
【0050】
25. 再結晶のための該混合溶媒が、2-メトキシエタノール、水、及び共溶媒を含み、該共溶媒が、C1〜C4アルカノール、又はこれらの混合物である条項1記載の方法。
【0051】
26. 該共溶媒が、エタノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブチルアルコール、又はこれらの混合物、好ましくは、n-ブタノール、又はイソ-プロパノールである条項25記載の方法。
【0052】
27. 再結晶のための該混合溶媒が、2-メトキシエタノールとイソ-プロピルアルコールとの混合溶媒、又は2-メトキシエタノールとn-ブタノールとの混合溶媒を含む条項1記載の方法。
【0053】
28. 再結晶のための該混合溶媒/イオジキサノール粗生成物の比率が、1グラムのイオジキサノール粗生成物につき、約1〜30グラム、好ましくは、2〜10グラムの混合溶媒である条項1記載の方法。
【0054】
29. 結晶化のための該混合溶媒の組成が、1グラムの2-メトキシエタノールにつき、0.2〜50グラムの共溶媒、好ましくは、0.8〜8グラムの共溶媒である条項25記載の方法。
【0055】
30. 再結晶のための該混合溶媒/水の比率が、1グラムの水につき、1〜100グラム、好ましくは、15〜50グラムの混合溶媒である条項25記載の方法。
【0056】
31. 20%を超えるイオジキサノールを含む該回収産物が、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製されて、97%を超える含量のイオジキサノールを含むイオジキサノール粗生成物を取得し、イオジキサノール含量が20%を超える該回収産物が、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムでの残渣であり、又は再結晶をした後に得られた精製母液である条項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本発明の目的は、5-アセチル-アミノ-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-イソフタルアミド(化合物A)から出発してイオジキサノールの調製に至る合成方法を改良することにある。改善内容の本質は、O-アルキル化不純物の形成を抑制し、かつイオジキサノールの変換率を高めることによって、イオジキサノールを調製するための改善された方法を提供することにある。この考え方に基づいて、新規かつ効果的なイオジキサノールの精製の方法が提供され、これにより、最終産物であるイオジキサノールが、米国薬局方の要件を満足するのみならず、製造コストが顕著に抑制され、及び産物の大量生産が可能となるのである。
【0058】
上記した目的は、化合物AのN-アルキル化によってイオジキサノール粗生成物を取得し(「二量化」)、次いで、さらに精製を行って薬局方承認基準の要件に適合させるスキームIの合成経路によって達成される。驚くべきことに、このプロセスにおいて、化合物Aを溶解するために、過剰量のアルカリ溶液を使用し、次いで、pHを10〜13、好ましくは、10〜11に調整する緩衝液を調製するために、例えば、ホウ素含有酸性物質又はその塩を用いて、過度のアルカリを中和することによって、85〜90%のイオジキサノールを含む反応混合物を得ることができることを知見するに至ったのである。多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムを使用して精製することで、97%を超えるイオジキサノールを含む粗生成物が生成され、又は陰イオン及び陽イオン交換樹脂又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムを使用して脱塩することによって、脱塩したイオジキサノール粗生成物が生成される。最後に、粗生成物を再結晶するための2-メトキシエタノールを含む混合溶媒系を使用することによって、薬局方の要件を満足するイオジキサノールが生成される。したがって、生産性は向上し、コストが抑制されるので、工業的に利用可能なプロセスの要件を満足し、並びに、前述した数多くの改善事項を達成することとなる。
【0059】
該粗生成物は、以下のようにして、二量化に関するスキームIの合成経路に記載したプロセスから取得される。欧州特許出願EP 0108638及びWO 98/23296に記載された方法と同様の方法で実施される該二量化は、二量化試薬として、エピクロロヒドリン、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパン、又は、1,3-ジブロモ-2-ヒドロキシプロパンを使用する。この反応は、通常、1〜6炭素アルコールなどの非水溶媒、特に、2-メトキシエタノール及び/又はメタノールにおいて実施されるが、水性溶媒、好ましくは、水において実施することもでき、或いは、水と1種以上のアルコール、例えば、1〜6炭素アルコールとの混合溶媒において実施することもできる。
【0060】
まず、化合物Aを溶解するために、過剰(例えば、1.05〜1.60モル)のアルカリを用いる。次いで、pH値を調節するために、例えば、ホウ素酸素酸、好ましくは、ホウ酸を含む適量の混酸を加え、そして、やや過剰量の二量化試薬が加えられる。O-アルキル化副産物を生成する反応は、ホウ素酸素酸、好ましくは、ホウ酸の塩を用いて形成される緩衝液によって、効果的に阻害される。このようにして、化合物Aの85%〜90%は、イオジキサノールへと変換され、及び化合物Aの3〜10%は、イオヘキソールへと変換される。通常、未反応の化合物Aは、 わずか3〜5%に過ぎず、また、その他の不純物は3%にも満たない。このことは、WO 00/47594で示された事項、すなわち、化合物Aのわずか40〜60%しか、イオジキサノールへと変換されず、及び大量の未反応の化合物Aを、時間を要する手順にしたがって分離しなければならない、ことが問題点であることを明示している。本発明は、該粗生成物の精製の難しさを軽減するのみならず、生産効率を劇的に改善する。
【0061】
その後、該二量化反応混合物は、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムクロマトグラフィーで処理されて、無機塩などの不純物、化合物A、イオヘキソール、及びO-アルキル化化合物の分離を首尾良く終える。これにより、イオジキサノールの含量は、粗生成物の96〜98%、通常は、97%を超える量にまで増大する。分離および精製プロセスにおいて、まず、無機塩を分離するために、該樹脂カラムに水を通して溶出を行う。化合物A及びイオヘキソールを溶出及び回収するために、水又はメタノールの5%水溶液が用いられる。イオジキサノールを溶出するために、大量の水又は少量のメタノールの20%水溶液が用いられる。ナノ濾過に続いて、該溶液を濃縮するための真空蒸溜を行うことで、96〜98%、通常は、97%を超えるイオジキサノールを含む粗生成物が生成する。20%以上のメタノール水溶液を用いた溶出を継続し、次いで、濃縮を行い、及び樹脂カラムを用いた処理を1〜2回反復することによって、イオジキサノールのさらなる画分をカラムから回収することができる。これにより、96〜98%、通常は、97%を超える純度を有するイオジキサノールが生成される。樹脂カラムからの精製イオジキサノールの回収率は、90〜95%である。
【0062】
好ましくは、溶媒精製、好ましくは、結晶化のために選択された該粗生成物は、陰イオン及び陽イオン交換樹脂によって、反応物から塩を除去するために処理が行われ、又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製される。
【0063】
塩の除去を終えた該粗生成物は、85〜90%のイオジキサノール、3〜10%のイオヘキソール、3〜5%の化合物A、及び3%のその他の不純物を含む。樹脂カラムで精製を終えた該粗生成物は、96〜98%、通常は、97%を超えるイオジキサノール、0.5〜2%のイオヘキソール、0.5〜2%の化合物A、及び少量のその他の不純物を含む。2-メトキシエタノールを含む混合溶媒系からの結晶化によって該粗生成物のさらなる精製を行い、次いで、当該技術分野で周知の従来のプロセスが続く。
【0064】
2-メトキシエタノールの他に、溶媒精製に用いた溶媒系は、水及びその他の共溶媒も含む。該共溶媒として、C1〜C4アルカノール、又はこれらの混合物、例えば、メタノール、エタノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブチルアルコール、及び/又は、これらの混合物、最も好ましくは、n-ブタノール、及び、イソ-プロピルアルコールが使用できる。
【0065】
イオジキサノール粗生成物を含む水溶液の水分含量を、所定のレベルにまで調整する必要がある場合には、n-ブタノールなどの共溶媒を加え、及び共沸蒸溜又は蒸溜をして完全に乾燥することによって、過剰な水分を除去することができる。最も望ましくは、水分含量が、所定のレベルよりも大きい場合には、蒸溜塔を用いて、水分含量を低減する共沸蒸溜が行われる。その後、所望のレベルを実現するために、水分含量を調整した後に秤量される2-メトキシエタノール及び共溶媒を加えることができる。水及び混合溶媒の量は、当初に存在していたイオジキサノールの量に左右される。混合溶媒/水の範囲は、1グラムの水につき、1〜100グラム、好ましくは、15〜50グラムとすべきである。結晶化のための混合物の組成は、1グラムの2-メトキシエタノールにつき、0.2〜50 グラムの共溶媒、好ましくは、0.8〜8グラムの共溶媒である。混合溶媒/粗生成物の範囲は、1グラムの粗生成物につき、約1〜30グラムの混合溶媒、好ましくは、2〜10グラムの混合溶媒とすべきである。
【0066】
好ましくは、2-メトキシエタノール及びイソ-プロピルアルコールは、結晶化のための混合溶媒として使用される。結晶化を実施するにあたって好ましいその他の混合物は、2-メトキシエタノール及びn-ブタノールである。
【0067】
結晶化に先立って該イオジキサノール粗生成物を容易に溶解させることを確実にするために、下限量の2-メトキシエタノールは重要である。イオジキサノールを、無定形固体としてではなく、結晶の形態で確保する上で、2-メトキシエタノールの上限量は重要である。結晶化の温度は、60℃を超える温度、好ましくは、90〜120℃、さらに好ましくは、102〜115℃である。
【0068】
最初の結晶化プロセスにおいて、溶媒を一度に加え、及び、高粘性油状物の包み込みを回避するために、結晶化の緩慢な進行を許容することによって、産物の純度を高めることができる。次いで、結晶は、濾過され、及び、アルコール、好ましくは、メタノールで洗浄される。全体の精製プロセスには、1〜4日、通常は、1〜3日、より好ましくは、1〜2日を要するが、通常であれば、約2日もあれば十分である。
【0069】
該粗生成物を、2-メトキシエタノールを含む混合溶媒系を用いた結晶化によって精製することで、薬局方の基準(>99%)よりも大きな純度を有する高純度のイオジキサノールが生成され、及びイオジキサノールの回収率は約90〜95%にまで至る。
【0070】
結晶化して得た精製母液は、40〜60%のイオジキサノール、20〜40%のイオヘキソール、10〜20%の化合物A、及び少量のその他の不純物を含んでおり、この母液は、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムを用いて、1〜2回の精製を行った後に、96〜98%の純度、通常は、97%を超える純度を有するイオジキサノール粗生成物を取得するために使用することができる。
【0071】
2-メトキシエタノールを含む溶媒から取得したイオジキサノールの純度は、予想した以上に大きい。前述したように、この精製プロセスは、溶液から析出したイオジキサノールの濾過を含んでおり、濾過され次第に、得られた結晶は、メタノールなどのアルコール溶媒で洗浄される。濾過と洗浄プロセスの効率は、イオジキサノール(iodxanol)の結晶の大きさと形状に左右される。驚くべきことに、本発明で記載をした方法で得た結晶が、容易かつ迅速に濾過及び洗浄される。
【0072】
本発明のさらに別の実施態様は、本発明の方法によって取得されたイオジキサノールを提供するものであって、該イオジキサノールは、米国薬局方の基準を満足する純度を有する。
【0073】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照して更に説明がされている。
【実施例】
【0074】
収率に関する%とは、他の基準が適用されない限りは、重量%である。
【0075】
以下の実施例において、化合物Aは、当該技術分野で周知の合成経路にしたがって取得したものであり、及びその他のすべての試薬は、民間の供給業者から得たものである。
【0076】
(実施例1)
化合物A(1120.5 kg、1.50 kmol)を、KOH(140.0 kg、2.25 kmol)と水(1232.6 kg)で調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、ホウ酸(64.9 kg、1.05 kmol)をバッチ式に均等に添加し、及び塩酸(30.4 kg、0.30 kmol)を滴下して加え、次いで、エピクロロヒドリン(83.3 kg、0.90 kmol)を滴下して加えた。反応中のpHは、10〜11である。反応をモニターし、及び試料はHPLCで分析をした。反応物は、水(1232.6 kg)を加え、及び化合物Aの量が5%未満の場合には、18%の塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0077】
次に、該反応混合物は、活性炭を用いて脱色し、及び濾過をした。濾液は、86.3%のイオジキサノール、7.5%のイオヘキソール、2.9%の化合物A、並びに2.7%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。
【0078】
(実施例2)
化合物A(1120.5 kg、1.50 kmol)を、NaOH(78.0 kg、1.95 kmol)と水(1232.6 kg)で調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、ホウ酸(51.0 kg、0.83 kmol)をバッチ式に均等に添加し、及び塩酸(23.3 kg、0.23 kmol)を滴下して加え、次いで、エピクロロヒドリン(83.3 kg、0.90 kmol)を滴下して加えた。反応中のpHは、10〜11である。反応をモニターし、及び試料はHPLCで分析をした。反応物は、水(1232.6 kg)を加え、及び化合物Aの量が5%未満の場合には、18%の塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0079】
陰イオン及び陽イオン交換樹脂を含むカラムに通すことによって無機イオンを除去し、及び活性炭を用いて脱色をし;濾液は、蒸発乾固してイオジキサノール粗生成物(1163.0 kg)を生成するまで濃縮させた。
【0080】
HPLC分析によって示された量は、85.0%のイオジキサノール、7.1%のイオヘキソール、3.0%の化合物A、2.9%のO-アルキル化副産物、及び少量のその他の不純物であった。
【0081】
(実施例3)
化合物A(11.2 kg、15.0 mol)を、NaOH(0.96 kg、24.0 mol)と2-メトキシエタノールで調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、ホウ酸(0.65 kg、10.5 mol)をバッチ式に均等に添加し、及び塩酸(0.55 kg、5.4 mol)を滴下して加え、次いで、エピクロロヒドリン(0.75 kg、8.1 mol)を滴下して加えた。反応中のpHは、10〜11である。反応をモニターし、及び試料はHPLCで分析をした。反応物は、水(12.3 kg)を加え、及び化合物Aの量が5%未満の場合には、18%塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0082】
次に、該反応混合物を、活性炭を用いて脱色をした。濾液は、84.2%のイオジキサノール、5.1%のイオヘキソール、4.8%の化合物A、並びに2.5%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。
【0083】
(実施例4)
化合物A(11.2 kg、15.0 mol)を、KOH(1.34 kg、22.0 mol)と水(12.3 kg)で調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、ホウ酸(0.65 kg、10.5 mol)をバッチ式に均等に添加し、次いで、エピクロロヒドリン(0.83 kg、9.0 mol)を滴下して加えた。反応中のpHは、10〜11である。反応をモニターし、及び試料はHPLCで分析をした。反応物は、水(12.3 kg)を加え、及び化合物Aの量が5%未満の場合には、18%の塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0084】
次に、該反応混合物を、活性炭を用いて脱色をし、及び濾過をした。濾液は、86.2%のイオジキサノール、5.1%のイオヘキソール、3.2%の化合物A、並びに2.2%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。
【0085】
(実施例5)
化合物A(11.2 kg、15.0 mol)を、NaOH(0.96 kg、24.0 mol)と水(12.3 kg)で調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、ホウ酸(0.65 kg、10.5 mol)をバッチ式に均等に添加し、及び85%リン酸(0.21 kg、1.8 mol)を滴下して加えた。さらに5時間かけて攪拌をした後に、エピクロロヒドリン(0.75 kg、8.1 mol)を滴下して加えた。反応中のpHは、10〜11である。反応をモニターし、及び試料はHPLCで分析をした。反応物は、水(12.3 kg)を加え、及び化合物Aの量が5%未満の場合には、18%塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0086】
次に、該反応混合物を、活性炭を用いて脱色をし、及び濾過をした。濾液は、83.2%のイオジキサノール、6.1%のイオヘキソール、4.8%の化合物A、並びに2.7%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。
【0087】
(比較例1(WO 00/47549に記載の方法))
化合物A(11.2 g、15.0 mmol)を、NaOH(0.82 g、20.55 mol)と2-メトキシエタノール(12.3 kg)で調製した溶液に溶解し、温度を20℃未満に調節し、塩酸(1.02 g、10.1 mmol)をバッチ式に均等に添加し、次いで、エピクロロヒドリン(0.75 g、8.1 mmol)を滴下して加えた。反応をまる1日間行った後に、試料をHPLCで分析をしたところ、55.77%のイオジキサノール、1.28%のイオヘキソール、33.5%の化合物A、並びに2.06%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。さらに7日間かけて反応を継続した後に、反応物は、水(12.3 kg)を加え、18%の塩酸を用いて、pHを5〜6の範囲に調整することによって、クエンチした。
【0088】
次に、該反応混合物を、活性炭を用いて脱色をし、及び濾過をした。濾液は、69.1%のイオジキサノール、2.60%のイオヘキソール、18.31%の化合物A、並びに9.41%のO-アルキル化副産物、及びその他の不純物を含んでいたことが、HPLC分析によって示された。
【0089】
化合物Aからイオジキサノールへの変換が、本発明の方法において顕著に増大していることは、上記実施例および比較例から明らかである。
【0090】
(実施例6)
300 kgの実施例2に記載のイオジキサノール粗生成物を、70℃で、900kgの2-メトキシエタノール、1500kgのn-ブタノール、及び72kgの水を含む溶液に加え、次いで、得られた混合物を還流させ、該粗生成物が完全に溶解し、かつ溶液が透明になった後に、0.24gの結晶性イオジキサノールの種材を澄明な溶液に加え、及び得られた混合物を、結晶化プロセスの全期間にわたって、還流しながら攪拌を行った。最初の平衡状態から10時間後に、前出の割合と同じ割合で混合をした2-メトキシエタノール及びn-ブタノールを含む300kgの追加の溶媒が、28時間にわたって、継続的に結晶化混合物に加えられた。さらに6時間後に、結晶化を終えた。結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、及び乾燥をした。98.0%の純度を有する226.4kgの結晶性イオジキサノールが取得され、つまり、該粗生成物からの収率は87%であった。HPLC(水/アセトニトリル、RP-18カラム)分析の結果を、表1に示す。
【表1】

【0091】
(実施例7)
実施例2に記載の300 kgのイオジキサノール粗生成物を、90℃で、900kgの2-メトキシエタノール、1500kgのn-ブタノール、及び72kgの水を含む溶液に加え、次いで、得られた混合物を還流させた。該粗生成物が完全に溶解し、かつ溶液が透明になった後に、0.24gの結晶性イオジキサノールの種材を透明な溶液に加え、及び得られた混合物を、結晶化の全期間にわたって、還流しながら攪拌を行った。最初の平衡状態から10時間後に、同じ割合で混合をした2-メトキシエタノール及びn-ブタノールを含む300kgの追加の溶媒が、28時間にわたって、継続的に結晶化混合物に加えられた。さらに6時間後に、結晶化を終えた。結晶を濾過し、メタノールで洗浄し、及び乾燥をした。98.5%の純度を有する233.0kgの結晶性イオジキサノールが取得され、つまり、該粗生成物からの収率は90%であった。HPLC(水/アセトニトリル、RP-18カラム)分析の結果を、表2に示す。
【0092】
同じ混合溶媒系及び同じ単位操作を用いる同じ結晶化プロセスによって、200kgのこのイオジキサノールの第二の結晶化を行ったところ、99.38%の純度を有する187.2kgの結晶性イオジキサノールが生成され、つまり、収率は95%であった。HPLC(水/アセトニトリル、RP-18カラム)分析の結果を、表2に示す。
【表2】

【0093】
(実施例8)
実施例1に記載の方法によって取得され、かつ500kgのイオジキサノール(約86.3%のイオジキサノール、7.5%のイオヘキソール、2.9%の化合物A、並びに2.7% のO-アルキル化、及びその他の不純物)を含む2400kgの未処理のイオジキサノール溶液を、多孔質吸着樹脂(Amberlite XAD-16樹脂)を装着した三つのカラム(Φ600×5000×3)に流し込み、及び脱イオン水で溶出をした; フローセルに廃液を通過させて伝導度を継続的に計測し、及びTLCによってモニターを行った。まず、無機塩及び有機小分子をカラムから溶出させ、及び廃液処理を止めた。TLCプレートに該溶液の染みを付けた時に蛍光が認められた場合に、HPLC分析を行った。イオジキサノール含有量が50%以上になるまで、イオジキサノールを含む溶離剤が回収された。該溶離剤をナノ濾過によって濃縮し、及び主に化合物A とイオヘキソールとを含む回収を終えた54kgの脱塩材料が得られた。次いで、大量の脱イオン水でカラムを継続的に洗浄し、及び溶出液をナノ濾過によって濃縮し、次いで、真空蒸溜によって濾過することで、97.68%の純度を有する375kgのイオジキサノール(部(Part)1)が生成され、つまり、該粗生成物からの収率は75%であった。メタノールの30%水溶液を用いて勾配溶離が継続され、及び溶出した溶液を濃縮し、次いで、真空蒸溜を行ったところ、70.8kgのイオジキサノールの第二画分が生成した。カラムクロマトグラフィー精製の工程を反復することで、97.82%の純度を有する42.8kgのイオジキサノール(部2)が取得され、つまり、回収した70.8kgのイオジキサノール粗生成物からの収率は8.56%であった。
【0094】
部1及び2を組み合わせることで、417.8kgの純粋なイオジキサノールが生成され、つまり、該粗生成物からの収率は83.6%であり、及びイオジキサノールからの回収率は94.6%であることを示している。この産物を、実施例5に記載の手順にしたがって再度の精製をしたところ、384kgのイオジキサノール最終産物が生成され、及び米国薬局方に記載された承認基準を満足する製剤原料を提供した。
【0095】
上記工程での収率、及びHPLCの結果を表3に示した。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオジキサノールの調製の方法であって、以下の工程;
a) イオジキサノールを調製するために、5-アセトアミド-N,N'-ビス(2,3-ジヒドロキシプロピル)-2,4,6-トリヨード-イソフタルアミド(化合物A)を二量化して、二量化の溶液を取得し;
b) 該二量化の溶液を多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製して、97%を超える純度を有するイオジキサノール粗生成物を取得し;又は、
該二量化の溶液を陰イオンおよび陽イオン交換樹脂又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって脱塩して、脱塩したイオジキサノール粗生成物を取得し;
c) 該イオジキサノール粗生成物を、2-メトキシエタノールを含む混合溶媒を用いて再結晶して、99%を超える純度を有するイオジキサノールを取得する、
ことを含むこと特徴とする前記方法。
【請求項2】
二量化の溶液を脱塩して得た前記イオジキサノール粗生成物が、85〜90重量%のイオジキサノール、3〜7重量%のイオヘキソール、2〜5重量%の化合物A、及びその他の不純物を含む請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記二量化剤が、エピクロロヒドリン、1,3-ジクロロ-2-ヒドロキシプロパン、又は1,3-ジブロモ-2-ヒドロキシプロパンであり、かつ前記二量化反応が、非水溶媒、水、又は水と1種以上のアルコールとの混合物において進行する請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記二量化剤が、エピクロロヒドリンであり、かつ前記溶媒が、水、2-メトキシエタノール、又はメタノール、好ましくは、水である請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記二量化剤/化合物Aの比率が、1モルの化合物Aにつき、0.45〜0.60モルの二量化剤である請求項3又は4記載の方法。
【請求項6】
過剰量のアルカリを使用して化合物Aを溶解し、次いで、ホウ素含有酸性物質又はその塩によって、過剰のアルカリを中和して、pHを10〜13、好ましくは、10〜11に調整する請求項1記載の方法。
【請求項7】
使用した前記アルカリは、アルカリ金属水酸化物、好ましくは、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウムであり、かつ化合物A/アルカリの比率が、1モルの化合物Aにつき、1.05〜1.60モルのアルカリである請求項6記載の方法。
【請求項8】
過剰のアルカリを中和して緩衝液を得るために用いた前記ホウ素含有酸性物質又はその塩が、ホウ素酸素酸、ホウ素酸素酸を含む混酸、及びホウ酸塩を含み、前記ホウ素酸素酸が、ホウ酸、メタホウ酸、ピロホウ酸、又はテトラホウ酸であり、ホウ素酸素酸を含む該混酸が、酢酸、塩酸、リン酸、硫酸、及びこれらの混合物からなる群から選択されたその他の酸を含み、該ホウ酸塩が、ホウ砂、及びメタホウ酸塩、例えば、メタホウ酸ナトリウム又はメタホウ酸カリウムから選択され、好ましくは、該ホウ素含有酸性物質又はその塩は、ホウ酸、ホウ酸及び塩酸を含む混酸、並びにホウ酸及びリン酸を含む混酸である請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記ホウ素含有酸性物質又はその塩での化合物A/ホウ素での比率が、1モルの化合物Aにつき、0.2〜1.2モルのホウ素、好ましくは、1モルの化合物Aにつき、0.2〜0.8モルのホウ素である請求項8記載の方法。
【請求項10】
調製をした前記イオジキサノール粗生成物が、陰イオン及び陽イオン交換樹脂又は多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって脱塩される請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記イオジキサノール粗生成物の精製が、無機不純物及び有機不純物を分離する多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムを用いて実施される請求項10記載の方法。
【請求項12】
再結晶によって精製された前記イオジキサノールが、国際的含量で、0.2%以下の不純物含量を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記クロマトグラフィーカラムの多孔質吸着樹脂が、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル(pololyacrylic)エステル系樹脂、又は網状脂肪族ポリマー樹脂、好ましくは、スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー系樹脂である請求項10又は11記載の方法。
【請求項14】
前記多孔質吸着樹脂とイオジキサノール粗生成物との重量比率が、20:1〜2:1である請求項10又は11記載の方法。
【請求項15】
前記多孔質吸着樹脂とイオジキサノール粗生成物との重量比率が、2:1〜0.5:1である請求項10又は11記載の方法。
【請求項16】
前記化合物A及びイオヘキソールが、水、又は5%未満の溶出用アルコールを含む水溶液を用いて単離される請求項11記載の方法。
【請求項17】
大量の水、又は20%未満のアルコールを含む大量の水溶液を使用して溶出し、次いで、該濾液をナノ濾過及び濃縮をして、97%を超える量のイオジキサノールを含むイオジキサノール粗生成物を取得する請求項11記載の方法。
【請求項18】
30%を超えるアルコールを含む水溶液を使用して溶出し、次いで、イオジキサノールの残渣を回収するために濃縮をする請求項11記載の方法。
【請求項19】
溶出のために使用される前記アルコールが、C1〜C3アルカノール、好ましくは、メタノールである請求項16、17又は18記載の方法。
【請求項20】
前記溶出が、常圧下、又は加圧下、好ましくは、1.5MPaの圧力下で実施される請求項16、17又は18記載の方法。
【請求項21】
単離した該化合物A及びイオヘキソールを使用してイオヘキソールを調製し、これを、請求項1で定義をした多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラム及び2-メトキシエタノールを含む混合溶媒を用いる再結晶により精製し、イオヘキソールに関する米国薬局方の要件を満たすイオヘキソールを取得する請求項16記載の方法。
【請求項22】
再結晶のために使用した前記イオジキサノール粗生成物が、前記二量化の溶液、又はその脱塩溶液、又は噴霧乾燥して得たその固形物である請求項1記載の方法。
【請求項23】
前記再結晶の時間が、1〜4日、好ましくは、1〜3日、さらに好ましくは、約1〜2日である請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記再結晶の温度が、60℃より高く、好ましくは、90〜120℃、さらに好ましくは、102〜115℃である請求項1記載の方法。
【請求項25】
再結晶のための前記混合溶媒が、2-メトキシエタノール、水、及び共溶媒を含み、該共溶媒が、C1〜C4アルカノール、又はこれらの混合物である請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記共溶媒が、エタノール、イソ-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、t-ブチルアルコール、又はこれらの混合物、好ましくは、n-ブタノール、又はイソ-プロパノールである請求項25記載の方法。
【請求項27】
再結晶のための前記混合溶媒が、2-メトキシエタノールとイソ-プロピルアルコールとの混合溶媒、又は2-メトキシエタノールとn-ブタノールとの混合溶媒を含む請求項1記載の方法。
【請求項28】
再結晶のための前記混合溶媒/イオジキサノール粗生成物の比率が、1グラムのイオジキサノール粗生成物につき、約1〜30グラム、好ましくは、2〜10グラムの混合溶媒である請求項1記載の方法。
【請求項29】
結晶化のための前記混合溶媒の組成が、1グラムの2-メトキシエタノールにつき、0.2〜50グラムの共溶媒、好ましくは、0.8〜8グラムの共溶媒である請求項25記載の方法。
【請求項30】
再結晶のための前記混合溶媒/水の比率が、1グラムの水につき、1〜100グラム、好ましくは、15〜50グラムの混合溶媒である請求項25記載の方法。
【請求項31】
20%を超えるイオジキサノールを含む前記回収産物が、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムによって精製されて、97%を超える含量のイオジキサノールを含むイオジキサノール粗生成物を取得し、イオジキサノール含量が20%を超える前記回収産物が、多孔質吸着樹脂クロマトグラフィーカラムでの残渣であり、又は再結晶をした後に得られた精製母液である請求項1記載の方法。

【公表番号】特表2013−512196(P2013−512196A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−540249(P2012−540249)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際出願番号】PCT/CN2009/001333
【国際公開番号】WO2011/063551
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(512137212)ホビオネ チャイナ ホールディング リミテッド (1)
【Fターム(参考)】