説明

イオントフォレシスによるスマトリプタン投与の薬物動態

スマトリプタンのイオントフォレシス送達用の改善された薬物動態プロファイルを記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
関係出願
本出願は米国特許出願第12/142,604号(2008年6月19日出願)の優先権を主張し、その全ての内容は本明細書に参照により組み入れられる。
【0003】
背景
イオントフォレシスは1908年LeDucにより記載され、それ以後、ピロカルピン、リドカインおよびデキサメタゾンなどのイオンとして荷電した治療薬分子の送達に商業的利用が見出されている。この送達方法においては、イオンは陽および陰電極により補給される電流により皮膚中に運ばれる。陽イオンは陽極アノードから運び去られる一方、陰イオンは陰極カソードから運び去られる
初期およびいくつかの現在のイオントフォレシスデバイスは、典型的には患者に接着物質で接着した2つの電極から構成され、それぞれの電極は遠隔の電源と導線により接続されている。最近の文献はスマトリプタンがイオントフォレシスを利用して効果的に経皮輸送できることを示している(Femenia-font et al, J. Pharm Sci 94, 2183-2186, 2005)。この研究では、スマトリプタンのイオントフォレシス輸送が受動輸送より385倍高い速度であることが見出された。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Femenia-font et al, J. Pharm Sci 94, 2183-2186, 2005
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、治療期間の少なくとも一部分に3.5mA以上の電流を用いてスマトリプタンのある量を被験体にイオントフォレシスで投与するステップを含む。
【0006】
他の実施形態において、本発明はまた、被験体のスマトリプタンに関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、約1時間の高電流治療期間に約4mAの電流および次の低の電流治療期間に約2mAの電流を使用する、被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与するステップを含むものである。
【0007】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンに関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にイオントフォレシスで95%信頼区間約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLのAUC0-infおよび95%信頼区間約20ng/mL〜約28ng/mLのCmaxをもたらすスマトリプタンの量を投与するステップを含む。
【0008】
さらに他の実施形態においては、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関わる。本方法は、被験体にスマトリプタンの量を投与し、95%信頼区間で約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mL内のAUC0-inf(被験体の血漿中のスマトリプタン)をもたらすステップを含む。
【0009】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンの量を投与し、約20ng/mL〜約28ng/mLまたは約23ng/mL〜約25ng/mL内のCmax(被験体の血漿中)をもたらし、ここでスマトリプタンの血漿濃度を少なくとも3時間、この治療レベルに維持するステップを含む。
【0010】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンの量を投与し、約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLのAUC0-infおよび約20ng/mL〜約28ng/mLのCmaxをもたらすステップを含む。
【0011】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、AUC0-inf(被験体の血漿中のスマトリプタン)を約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLにするステップを含む。
【0012】
本発明はまた、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法は、イオントフォレシスパッチを有効治療期間に用いて、スマトリプタンの有効量を被験体に投与するステップを含む。パッチは少なくとも約0.10mA/cm2以上(例えば、約0.30mA/cm2以上、または約0.40mA/cm2)の電流密度を、治療期間の少なくとも一部分に用いることができる。
【0013】
本発明はまた、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法は、高電流密度期間と低電流密度期間を含む有効治療期間に、イオントフォレシスパッチを用いて、スマトリプタンの有効量を被験体に投与するステップを含む。さらなる実施形態において、高電流密度の期間は約0.13mA/cm2以上(例えば、約0.4mA/cm2)の電流密度を有し、低電流密度の期間は約0.067mA/cm2以上(例えば、約0.2mA/cm2)の電流密度を有する。なお他のさらなる実施形態において、高電流密度の期間は約0.1mA/cm2以上(例えば、約0.3mA/cm2)の電流密度を有しかつ前記低電流密度の期間は約0.05mA/cm2以上(例えば、約0.15mA/cm2)の電流密度を有する。
【0014】
さらなる実施形態において、本発明はまた、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法はスマトリプタンの有効量が実質的に有害な影響を与えることなく投与される、被験体にスマトリプタンの有効量を投与するステップを含む。
【0015】
他のさらなる実施形態において、本発明はまた、被験体にスマトリプタンの有効量を経皮投与することにより被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、スマトリプタンの投与が約25%未満のAUC0-inf変動係数をもたらす前記方法を特徴とする。
【0016】
なお他のさらなる実施形態において、本発明はまた、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンの有効量を経皮投与することにより被験体に被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、同様なサンプルサイズについてスマトリプタンの投与がスマトリプタンの皮下投与に対するAUC0-inf変動係数の2倍未満のAUC0-inf変動係数をもたらす前記方法
【発明を実施するための形態】
【0017】
詳細な説明
スマトリプタンの経口投与を超える本発明の方法の1つの利点は、経口または経鼻送達と比較して、本発明による薬物動態パラメーターの変動が低いことである。スマトリプタンの経口送達と比較して、スマトリプタンをイオントフォレシスで投与した後の被験体間の変動量はスマトリプタンを経口投与した後の被験体間の変動量の何分の1でしかない。
【0018】
本発明の方法の他の利点として、本方法はスマトリプタンを、AUC0-infは全身、経口または経鼻投与などの他の投与剤形と類似するもののCmaxは実質的に低下するように投与することが可能である。これにより、全身に送達されるスマトリプタンの量は他の方法と類似しているが、好ましいことに濃度急上昇が下げられる。本発明の方法の他の利点は、被験体のスマトリプタンの濃度が一般に投与開始後1時間未満に治療レベルに到達することである。さらに、スマトリプタンの治療レベルは、所望の長さの時間、例えば4〜5時間維持することができる。
【0019】
本発明の方法は、少なくとも部分的に、薬物動態パラメーターを用いて記述することができる。薬物動態パラメーターは当技術分野で公知の方法を用いて計算することができる。本明細書に記載した例においては、薬物動態パラメーターをノン・コンパートメント法を用いて WinNonlin(登録商標)コンピュータープログラム(WinNonlin Professional, Version 5.2, Pharsight Corp, Palo Alto, CA)の助けをかりて計算した。計算したパラメーターは次の通りである:
AUC0-last=時点0から測定可能濃度(Ct)の最終時点までの「濃度対時間曲線の下の面積」;直線の台形公式を用いて計算した。
【0020】
AUC0-inf=時点0から無限大までの「濃度下面積-対-時間曲線」;AUC0-last +Ctz2として計算した。
【0021】
Cmax=最高観察薬物濃度。
【0022】
Tmax=最高薬物濃度の時間。
【0023】
Cl/F=見掛けの全身クリアランス;用量/AUCinfとして計算し、FはSQ注射後1.0であると仮定した。
【0024】
λz=終末消失相速度定数;非線形回帰分析を用いて計算した。
【0025】
t1/2=終末消失半減期;0.693/λz2として計算した。
【0026】
一実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、3.5mA以上の電流を治療期間の少なくとも一部分に用いて、被験体にある量のスマトリプタンをイオントフォレシスで投与するステップを含む。
【0027】
用語「スマトリプタンが関わる状態」は、片頭痛、通常の片麻痺性片頭痛(前兆を伴うおよび伴わない)、慢性発作性頭痛、群発性頭痛、片頭痛頭痛、脳底動脈片頭痛、および自律神経性の症候群に随伴する非定形性頭痛、例えば周期性嘔吐症候を含む。
【0028】
用語「治療」はスマトリプタンが関わる状態の1以上の症候群の軽減または改善を含む。それにはまた、スマトリプタンが関わる状態の発症または再発の予防を含む。
【0029】
用語「有効量」は特定のスマトリプタンが関わる状態を治療するのに有効であるスマトリプタンの量を含む。
【0030】
用語「被験体(または被験者)」には、スマトリプタンが関わる状態を有しうる生物(例えば、哺乳動物)が含まれる。被験体の例には、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ヤギ、ラットおよびマウスが含まれる。一実施形態において、被験体はヒトである。さらなる実施形態において、この用語はスマトリプタンが関わる状態を患う被験体を含む。
【0031】
用語「イオントフォレシスで」または「イオントフォレシスの」は、イオントフォレシスデバイス(例えば、パッチ)から被験体の皮膚を通しての治療化合物(例えば、スマトリプタン)の吸収を電流を用いて促進する投与の方法を含む。
【0032】
用語「イオントフォレシスパッチ」または「イオントフォレシス経皮パッチ」は、電流を用いることによりパッチから被験体の皮膚を通してスマトリプタンのイオントフォレシス投与を可能にするデバイスを含む。一実施形態において、パッチは電気的要素、スマトリプタン、および接着裏当て層を含むものである。さらなる実施形態において、イオントフォレシスパッチは別の調節装置または電源を必要としない集積デバイス、例えば、装着可能な、自己充足型デバイスであってもよい。他のさらなる実施形態において、本発明のイオントフォレシスパッチは、集積されておらす、例えば、別の調節装置、電源などを必要とし、必ずしも装着を必要としなくてもよい。
【0033】
さらなる実施形態において、本発明の方法は、約3.6mA以上、約3.7mA以上、約3.8mA以上、約3.9mA以上、約4.0mA以上、約4.1mA以上、約4.2mA以上、または約4.5mA以上の電流を用いてスマトリプタンを投与する。
【0034】
本発明の方法は治療期間の少なくとも一部分(高電流治療期間)に約4.0mAの電流を使用することが有利である。さらなる実施形態において、高電流治療期間は約30分間〜約2時間、約30分間〜90分間、または約1時間である。
【0035】
さらなる実施形態において、本発明の方法はまたさらに、低電流治療期間 (好ましくは、高電流治療期間の後に)を含むものであってもよい。低電流治療期間は約1.5〜約2.5mA(例えば、約2mA)の電流を用いてもよい。他のさらなる実施形態において、低電流治療期間の長さは約2時間〜約6時間、約2時間〜約5時間、約2時間〜約4時間、または約3時間である。
【0036】
さらなる実施形態において、本発明はまた、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、被験体にスマトリプタンのある量を、約1時間の高電流治療期間に約4mAの電流およびその後の低電流治療期間に約2mAの電流を用いてイオントフォレシスで投与することによる前記方法に関する。
【0037】
さらなる実施形態においては、スマトリプタンを、イオントフォレシスパッチを用いてイオントフォレシスで投与する。
【0038】
さらなる実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンのある量を投与してスマトリプタンが関わる状態を治療するするステップを含む。この実施形態において、スマトリプタンの量は約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mL(例えば、約107hr*ng/mL〜約115hr*ng/mL、または約112hr*ng/mL〜約114hr*ng/mL)のAUC0-infおよび約20ng/mL〜約28ng/mL(例えば、好ましくは約22.5ng/mLおよび約25ng/mL)のCmaxをもたらす。
【0039】
さらなる実施形態において、本発明はまた、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、イオントフォレシスで被験体にスマトリプタンの量を投与するステップを含み、95%信頼区間で約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLのAUC0-inf(スマトリプタンについて)をもたらす。
【0040】
用語「信頼区間」は、一般に、無作為なサンプリングがこれらの値の範囲にありうる機会を反映する所与の比率(ここでは95%)に関する。
【0041】
さらなる実施形態において、本発明はまた、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する他の方法にも関する。本方法は、被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して95%信頼区間で約20ng/mL〜約28ng/mLのCmaxをもたらすステップを含む。
【0042】
さらなる実施形態において、本発明はまた、被験体におけるスマトリプタンが関わる状態を治療するためのさらに他の方法に関する。本方法は、被験体にイオントフォレシスでスマトリプタンのある量を投与し、約20ng/mL〜約28ng/mL、または約23ng/mL〜約25ng/mLのCmax(前記被験体の血漿中のスマトリプタン)をもたらし、ここでスマトリプタンの血漿濃度を少なくとも3時間治療レベルに維持するステップを含む。
【0043】
さらなる実施形態において、用語「維持する」は、ある期間(例えば、低電流期間)にわたって約20%未満、約10%未満、または約5%未満しか変動しないレベル(例えば、スマトリプタンの血漿レベル)を意味する。
【0044】
他の実施形態において、スマトリプタンの治療血漿レベルは、スマトリプタン治療の開始後1時間未満存在する。用語「治療血漿レベル」は、スマトリプタンが関わる状態について被験体の症候群を治療することができるスマトリプタンのレベルを意味する。治療レベルの例は約10〜28ng/mLの被験体の血漿中のスマトリプタンの濃度である。他の実施形態において、治療レベルは約20〜28ng/mLである。
【0045】
さらに他の実施形態において、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLのAUC0-infおよび約20ng/mL〜約28ng/mLのCmaxをもたらすステップを含む。
【0046】
さらに他の実施形態においては、本発明は、少なくとも部分的に、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法に関する。本方法は被験体に約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLのAUC0-inf(被験体の血漿中のスマトリプタン)をもたらすスマトリプタンの量を投与するステップを含む。
【0047】
他のさらなる実施形態において、本発明のイオントフォレシスパッチは少なくとも約3.5mA(例えば、約4mA)の電流を、30分間〜90分間(例えば、1時間)使用する。高電流治療期間の後にさらに低電流治療期間を伴ってもよい。低電流治療期間は約1.5mA〜約2.5mA(例えば、約2mA)の電流を、約2〜約6時間(例えば、約3時間)用いてもよい。
【0048】
他の実施形態において、本発明はまた、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンの有効量を投与するステップを含み、ここでスマトリプタンの有効量は実質的に有害な影響を与えることなく投与される。
【0049】
用語「実質的に有害な影響」は現行のトリプタン製品ラベルに示されたものを含む。これらの実質的に有害な影響の例には、非定形的感覚(例えば、温または冷の感覚、知覚異常など)および疼痛および圧力感覚が含まれる。有害な影響の例には、限定されるものでないが、粘膜の灼熱感覚、聴覚不快感、顔面疼痛、熱い感覚、紅潮、頭部不快感、顔面紅潮、知覚異常、重い感覚、圧力の感覚、首疼痛、などが含まれる。
【0050】
さらなる実施形態において、用語「実質的に有害な影響」はパッチ自体が誘発する皮膚刺激または「適用部位障害」を含まない。
【0051】
用語「経皮」は、実質的に皮膚を傷付けることなく被験体の皮膚を通してスマトリプタンを投与する方法を含む。経皮送達方法の例は、吸収、エレクトロポレーション、高周波(RF)ポレーションおよびイオントフォレシスを含む。
【0052】
さらなる実施形態において、本発明の方法は経皮的に被験体に有効量のスマトリプタンを投与してスマトリプタンの投与が約25%未満の変動係数のAUC0-infをもたらすことにより、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法を含む。さらなる実施形態において、前記変動係数は(同じ用量のスマトリプタンを同じ方法と治療プロファイルを用いて投与した被験体グループについて)約20%未満である。
【0053】
変動係数(CV)はあるセットのデータ点の変動の尺度である。これは標準偏差を平均値で除することにより計算される。
【0054】
他のさらなる実施形態において、本発明は被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療するのに有効な量のスマトリプタンを被験体に経皮的に投与することにより、スマトリプタンが関わる状態を治療する方法を特徴とする。この方法におけるスマトリプタンの投与は、同様なサンプルサイズのスマトリプタンの皮下投与に対するAUC0-inf変動係数より2倍低いAUC0-inf変動係数をもたらす(例えば、イオントフォレシスを用いて被験体に投与したスマトリプタンに対するAUC0-inf CVは、スマトリプタンを皮下に投与した同様なサイズの被験体のグループに対するAUC0-inf CVより2倍低いであろう)。
【0055】
一実施形態においては、本発明は、少なくとも部分的に、スマトリプタンまたはその塩を送達するためのイオントフォレシス経皮パッチに関する。パッチはアノードリザーバー、カソードリザーバーおよび本発明の方法を実施するための適当な電気回路を含むものである。
【0056】
本発明は、少なくとも部分的に、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法は、有効治療期間にイオントフォレシスパッチを用いて被験体にスマトリプタンの有効量を投与するステップを含む。パッチは少なくとも約0.10mA/cm2以上、約0.2mA/cm2以上、約0.30mA/cm2以上、または約0.4mA/cm2以上の電流密度を治療期間の少なくとも一部分に用いることができる。
【0057】
一実施形態において、有効量は片頭痛を治療するのに有効な量である。この場合、スマトリプタンの有効量は、被験体の血液または血漿中の約10ng/mL以上、約11ng/mL以上、約12ng/mL以上、約13ng/mL以上、約14ng/mL以上、約15ng/mL以上、約16ng/mL以上、約17ng/mL以上、約18ng/mL以上、約19ng/mL以上、約20ng/mL以上、約21ng/mL以上、約22ng/mL以上、または約22.5ng/mL以上の濃度でありうる。他の実施形態において、スマトリプタンの有効量は約5mgより多く、約10mgより多く、または約15mgより多い。さらなる一実施形態において、スマトリプタンの有効量は前記被験体の血漿中の約10〜約25ng/mLである。
【0058】
ある特定の実施形態においては、パッチは約10cm2以上、約15cm2以上、約17.5cm2以上、約20cm2以上、約22.5cm2以上、約25cm2以上、約27.5cm2以上または約30cm2以上のイオントフォレシス活性表面積を有する。
【0059】
好ましくは、高い電流密度期間は低い電流密度期間に先行する。さらに、好ましくは、これらの期間の電流密度は異なり、高電流密度期間の電流密度は低電流密度期間の電流密度より少なくとも10%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも100%高い。
【0060】
さらなる実施形態において、治療期間は2つの部分、例えば、高電流密度期間および低電流密度期間を含む。好ましくは、高電流密度期間は低電流密度期間に先行する。理論的に限定されるものではないが、最初の高電流密度期間はスマトリプタンが関わる状態、例えば、片頭痛の被験体に対する1以上の症候群を軽減できると思われる。次いで低電流密度期間はスマトリプタンが関わる状態の再発を阻止または遅延することができる。
【0061】
一実施形態において、高電流密度期間は約30分間〜約90分間、例えば、約1時間である。高電流密度期間の長さと強度は、被験体のスマトリプタンが関わる状態の急性症候群を治療できるように選択することができる。例えば、高電流密度期間は被験体にスマトリプタンの有効用量を与え、スマトリプタンが関わる状態の一次症候群、例えば、片頭痛を消失または寛解することができる。
【0062】
他のさらなる実施形態において、イオントフォレシスが約30cm2である場合、高電流密度期間の電流密度は約0.10mA/cm2〜約0.18mA/cm2である。高電流密度は、スマトリプタンの治療上有効な量の迅速な送達を可能にする。高電流密度期間で用いる電流の例は、約2.5mA〜約5mA、例えば、約3mA〜約4mAの電流を含む。イオントフォレシスパッドが約10cm2である他のさらなる実施形態においては、電流密度は約0.25mA/cm2〜約0.5mA/cm2、または約0.3mA/cm2〜約0.4mA/cm2であってもよい。
【0063】
他の実施形態において、低電流密度期間は約2時間以上、約3時間s以上、約4時間以上、または約5時間以上である。低電流密度期間は、被験体のスマトリプタンが関わる状態、例えば、片頭痛を有効に治療するように選択することができる。低電流密度時間は、スマトリプタンが関わる状態の症候群を改善するかまたはスマトリプタンが関わる状態の即時再発を防止するのに有効であるように選択することができる。
【0064】
さらなる実施形態において、30cm2パッチについての低電流密度期間の電流密度は約0.04mA/cm2〜0.09mA/cm2、または約0.05mA/cm2〜約0.08mA/cm2である。好ましくは、低電流密度期間は、被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療するように選択する。一実施形態において、低電流密度期間は約2時間以上、約2.5時間以上、約3時間以上、約3.5時間以上、約4時間以上、約4.5時間以上、約5時間以上、約5.5時間以上、または約6時間以上である。他のさらなる実施形態において、低電流密度期間は約2.5〜約6時間の長さである。さらなる実施形態において、10cm2パッチについての低電流密度期間の電流密度は約0.125mA/cm2〜0.25mA/cm2、または約0.15mA/cm2〜約0.2mA/cm2である。
【0065】
他のさらなる実施形態において、低電流密度期間は約1.25mA〜約2.5mA、または約1.5mA〜約2mAの電流を用いる。
【0066】
好ましくは、本発明の方法に従って用いた場合、パッチは実質的に被験体の皮膚を刺激しない。表現「被験体の皮膚を実質的に刺激しない」は、パッチがパッチ除去後約2時間に1.50以下、または1.00以下の皮膚紅斑スコアをもたらすことを意味する。他のさらなる実施形態において、表現「被験体の皮膚を実質的に刺激しない」は、パッチがパッチ除去直後に2.00以下、または1.00以下の皮膚紅斑スコアをもたらすことを意味する。
【0067】
一実施形態において、本発明はまた、スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法に関する。本方法は、被験体にスマトリプタンの有効量を、イオントフォレシスパッチを用いて高電流密度期間および低電流密度期間を含む有効治療期間に投与するステップを含むものである。
【0068】
他の実施形態において、高電流密度期間は約0.1mA/cm2〜約0.3mA/cm2の電流密度を有しかつ低電流密度期間は約0.05mA/cm2〜約0.15mA/cm2の電流密度を有する。この実施形態において、高電流密度期間は約1時間であってもよくかつ低電流密度期間は約5時間であってもよい。
【0069】
さらに他の実施形態において、高電流密度期間は約0.13mA/cm2〜約0.4mA/cm2の電流密度を有しかつ低電流密度期間は約0.067mA/cm2〜約0.2mA/cm2の電流密度を有する。この実施形態において、高電流密度期間は約1時間であってもよくかつ低電流密度期間は約3〜5時間であってもよい。
【実施例】
【0070】
実施例1 スマトリプタンコハク酸塩を送達するためのイオントフォレシスパッチの使用
単一施設、オープン標識、単回投与、5期間試験を実施して、本発明のスマトリプタンイオントフォレシス経皮パッチの4種のプロトタイプの薬物動態を、100mg経口スマトリプタンコハク酸塩を用いて、健常なボランティアにおいて比較した。被験者は、少なくとも、治療Aと治療Bに参加した。
【0071】
使用したイオントフォレシスパッチは自己充足型で外部電源を備え、皮膚表面に適用して、投薬負荷を全身送達するように設計された。
【0072】
この実施例のために調製したパッチ治療とプロトタイプイオントフォレシスパッチを下表1に詳述する。
【表1】

【0073】
9名の被験者が治療B(100mgスマトリプタンコハク酸塩の経口錠)に参加した。この研究はスクリーニング訪問と次いで治療A、B、C、DおよびEから成る。それぞれの治療期間の間には2日間の洗浄期間を置いた。スクリーニング期間中、各被験者は物理的試験を受け、その試験には生命徴候、肝炎検査、HIV検査、尿薬物検査、心電図、妊娠試験(女性のみ)、エタノール呼吸試験および臨床研究試験sが含まれた。さらに、病歴および年齢および人種を含む人口統計学データを記録した。全ての試験を実施した後、28日以内に最初の投薬を行った。全ての試験判定基準に合格しかつ消失判定基準に該当しない被験者を第-1日に認定した。拘束期間中、被験者は過激な仕事ならびに飲酒および喫煙を禁じた。それぞれの拘束期間中に、被験者は一晩絶食後に試験投薬を受けた。被験者はそれぞれの投薬期間の第1日に8時に投薬を受けた。期間1および2については、被験者を、治療Aの投薬前(第-1日)の朝および治療Bに対する用量アセスメント後24時間を通して研究施設に拘束した。
【0074】
期間3〜5については、被験者を治療Cの投薬前(第-1日)の朝および治療Eに対する用量アセスメント後24時間を通して研究施設に拘束した。それぞれの投薬期間はおよそ2日間続け、投薬の間に少なくとも2日間の洗浄期間を置いた。研究参加者は19〜50歳であった。
【0075】
治療AとC用のパッチは、上腕部の清浄で乾いた、比較的無毛の領域に適用した。治療は腕部に交互に適用した。治療DおよびEのパッチは、上背部の清浄で、乾いた、比較的無毛の領域に適用した。治療は上背部に交互に右と左の位置に適用した。PK血液サンプルは5期間のそれぞれに対して被験者1人当たりの採集を予定した。
【0076】
治療AとBについては、スマトリプタン血漿濃度用の血液サンプル4mLをEDTA採取チューブ中にカテーテルまたは静脈穿刺により、予定した採取時間に採取した。治療C、DおよびEについては、スマトリプタン血漿濃度用の血液サンプル2.7 mLを、EDTA採取チューブ中にカテーテルまたは静脈穿刺により、予定した採取時間に採取した。血液サンプルを氷浴で冷却し、採取後なるたけ速やかに遠心分離した。血漿サンプルを標識したチューブ中で-20℃にて貯蔵した。標準安全評価はまた、それぞれの治療期間中および研究終結時に実施し、それには有害事象モニタリング、臨床安全研究室試験および生命徴候が含まれた。接着および皮膚刺激ならびに皮膚上の接着残渣量を含む、イオントフォレシス送達系評価を治療A、C、DおよびEの間に実施した。
【0077】
被験者は健常な成人ボランティア(4名の男性と5名の女性)であり、自発的に5回の治療期間に診療所に来訪した。被験者は、指名医師の承認がない限り、研究実施前の2週間、他の医薬(処方薬または一般用医薬品)を使用しなかった。研究参加者は19〜50歳であった。平均年齢は28歳であった。
【0078】
表1に記載した5種の治療を5臨床期間に投与した。5種の投薬治療のうちの4種は本発明の製剤から成るパッチを用いるものであった。パッチは治療期間に応じて上腕部または上背部に適用した。
【0079】
治療Bにおいて、被験者はイミグランFTab経口錠(100mgスマトリプタンコハク酸塩)を240mLの水と共に、一晩絶食後に受けた。被験者は投薬後4時間絶食した。
【0080】
治療A、C、DおよびE用の薬物リザーバーパッド(アノード)製剤は次の通りであった:10%ポリアミン製剤+4%スマトリプタンコハク酸塩(120mgまでのスマトリプタンを負荷)。
【0081】
治療A、C、DおよびE用の塩リザーバーパッド(カソード)製剤は次の通りであった:2%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)およびNaCl。
【0082】
研究機関中に重大な有害事象は報じられなかった。最も高頻度で報じられた有害事象は治療B(スマトリプタンコハク酸塩100mg経口錠)に関係する頭痛ならびにパッチ治療A、C、DおよびEに対する刺痛およびパッチ部位のかゆみであった。
【0083】
それぞれのパッチ治療に対する平均皮膚紅斑スコアも計算した。それぞれの4種のパッチ治療に対して、パッチ除去直後、平均スコアは1.40以下であった。72時間後、平均スコアはそれぞれ1.00より低かった。
【0084】
9名の被験者にパッチ治療Aおよび治療B(100mgスマトリプタン経口錠)を投薬した。7名の被験者はパッチ治療C、D、および Eで治療した。PKパラメーター、AUC0-inf、AUC0-last、Cmax、Tmax、λzおよびt1/2に対する記述統計量を計算した。
【0085】
AUC0-infの算術平均はパッチ(治療A:99ng/mL;治療C:99ng/mL;治療D:144ng/mL;および治療E:105ng/mL)について99〜144ng/mLであり、治療Bについて約225ng/mL*hである。半減期(T1/2)の算術平均はパッチ(治療A:3.0hr;治療C:2.7hr;治療D:2.6hr;および治療E:2.5hr)について2.6〜3時間であり、治療Bについて約3.4時間である。
【0086】
AUC0-inf、AUC0-last、およびCmaxにおける治療グループ間の分散分析の結果も解析した。治療B(スマトリプタン100mg経口錠剤)は研究した全てのパッチ治療(A、C、D、およびE)とは全PKパラメーターにおいて統計的に異なる(p<0.001)。治療AおよびCはPKパラメーターにおいていくらか類似し;両方とも治療DとはAUC0-inf、AUC0-last、およびCmaxにおいて異なり;両方とも治療EとはAUCにおいて異ならない。さらに、治療Aおよび治療Cの両方は治療Eと比較して低いCmaxを有する。
【0087】
実施例2 スマトリプタンの経口、経鼻および皮下注射と比較したパッチ薬物動態の研究
この実施例においては、本発明のイオントフォレシスパッチを現在認可されているImitrex(登録商標)の経口、皮下(SQ)注射および経鼻噴霧製剤と健常なボランティアにおいて比較した。薬物のバイオアベイラビリティを6mg SQ注射に関するバイオアベイラビリティと比較した。
【0088】
本研究は単一施設、オープン標識、無作為化、単回投与、クロスオーバー研究であり、被験者は、無作為スケジュールに従い、各治療の間に3〜10日の洗浄期間を置いて、順に7種の研究治療を受けた。
【0089】
試験した薬物は本発明のイオントフォレシスパッチ中のスマトリプタンコハク酸塩であった。パッチをImitrex(登録商標)の3製剤(100mg経口スマトリプタンコハク酸塩錠(治療B)、6mg皮下注射(治療C)および20mg経鼻噴霧(治療D))と比較した。
【0090】
被験者は第-1日、各治療期間の第1日の投薬の少なくとも12時間前に入院し、最終PKサンプルを得るまで監督下で臨床施設に留まった。各治療期間の間、PK分析用に処方した時間に血液が採取された。
【0091】
被験者
合計25名の被験者(12名の女性と13名の男性)が研究に登録され、全員がスマトリプタンを受けた。全体で、16(64%)名の被験者が研究を完了した。4名は同意を撤回し;3名は有害事象によって研究を中止し;1名はフォローに失敗し;そして1名はプロトコル違反で中止した。研究参加者は21〜57歳であった。
【0092】
全25名の登録した被験者をスマトリプタンを用いて治療した:23名の被験者は対照治療(治療B(100mg経口スマトリプタンコハク酸塩錠)、C(6mg皮下注射)、およびD(20mg鼻腔内噴霧))を受け、17名の被験者は少なくとも1種の本発明のパッチ(表2に示した治療A、E、FまたはG)を受けた。
【表2】

【0093】
薬物動態分析
PK分析用の連続血液サンプルを、カテーテルまたは穿刺によりEDTA採取チューブ中に、治療によって予め定めた時間に採取し、血漿中のスマトリプタン濃度を決定した。血漿サンプルを、検証済みのMS/MS検出を備えたHPLCにより分析した。
【0094】
次のPKパラメーターを決定した:Cmax、Tmax、λz、t1/2、AUC0-last、AUC0-infおよび全身クリアランス(Cl/F)。経口または経鼻(non-parenteral)製剤のバイオアベイラビリティ(F)をSQ注射と比較して評価した。
【0095】
スマトリプタンに対するPKパラメーターを、実血漿濃度-時間データからノンコンパートメント法を用いてWinNonlin(登録商標)コンピュータープログラムにより計算した。各治療に対するPKパラメーターを記述統計学に沿って報じた。
【0096】
分散分析(ANOVA)を用いて、治療間のAUC0-infおよびCmax値を比較した。
【0097】
AUC0-last、Tmaxおよびt1/2を記述的に総括した。
【0098】
治療FおよびGを受けた17名の被験者に対する平均クリアランスは54483mL/hrであった。下表3は各治療グループに対する薬物動態パラメーターの算術平均をまとめたものである。
【表3】

【0099】
本発明の2種のパッチおよび3種のポジティブ対照(治療B、C、およびD)に対する、AUC0-inf、AUC0-last、Cmax、λz、t1/2、およびTmaxを含む薬物動態パラメーター(算術平均)を表4にまとめた。血漿濃度データから直接誘導したパラメーターを「観測したパラメーター」として提示した;AUCおよびCmaxは血漿濃度データから直接誘導した。
【表4】

【0100】
6mgSQ注射、100mg経口調製物、および20mg経鼻調製物に対するAUC0-inf算術平均は、それぞれ114hr*ng/mL、247hr*ng/mL、および50hr*ng/mLであった。FとGの両方の治療はおよそ113hr*ng/mLのAUC0-infを得た。
【0101】
経口、経鼻、および注射グループに対するCmaxの算術平均はそれぞれ51.6 ng/mL、12.5 ng/mL、および 82.2ng/mLであった。パッチに対するCmaxの算術平均は24.7ng/mL(治療F)〜23.1ng/mL(治療G)であった。Tmaxは注射に対して0.25時間、経鼻に対して1.45時間、および経口製剤に対して2.24時間であった。見掛けのTmaxは治療Fに対して1.65時間であり、治療Gに対して2.53時間であった。
【0102】
消失半減期は注射に対して2.21時間であり、経鼻に対して2.24時間であり、経口に対して4.84時間であった。パッチ除去後の消失半減期は治療Fに対して2.94時間であり、治療Gに対して2.86時間であった。本研究における経口製剤に対する終末半減期は従来報じられたより大きいと思われるかも知れない(例えば、Duquesnoy C, ら, Eur. J. Pharm. Sci., 6:99-104 (1998) および Jhee SS ら, Clin. Pharmacokinet., 40:189-205 (2001)を参照)、その理由は使用したPPD LCMS法の感度が高いため(定量限界は0.200 ng/mLに等しい)臨床的に無意味なレベルの定量値を得るためで、恐らく深いコンパートメントの存在を示すのであろう。
【0103】
安全性評価
本研究で報じられた死または厳しい有害事象はなかった。
【0104】
スマトリプタンの経口、経鼻および皮下投与と比較して、本発明のパッチを受けた被験者における不測の有害事象または共通して報じられた有害事象の頻度の有意な増加はなかった。
【0105】
治療FおよびGパッチの後に、経口および皮下スマトリプタンに対して通常報じられる非定形的感覚ならびに疼痛および圧力感覚は報じられなかった(表5に示した)。これは、部分的に、パッチ処理で得た低いCmaxレベルを反映しうる。
【0106】
有害事象をまた、2つの特別なグループ:(1)非定形的感覚ならびに(2)疼痛および圧力感覚に分類した。これによって、トリプタンに随伴する様々な短命の副作用(すなわち、温/冷、知覚異常)であって「非定形的感覚」と「疼痛および圧力感覚」として分類される両方の副作用をとらえることを求める、現行のトリプタンのラベリングと一致させた。これらの有害事象、非定形的の感覚ならびに疼痛および圧力感覚(表5)の大部分は、経口および皮下スマトリプタンで治療した被験者においてTmaxに密接して起こった。
【表5】

【0107】
本発明のパッチに随伴する有害事象は一般におだやかで治療せずに回復した。
【0108】
本発明のイオントフォレシスパッチによる治療全体について、本研究の被験者はどの時点でも3または4の皮膚刺激スコアを有しなかった。パッチ治療に直接かかわる被験者中断(適用部位の障害)はなかった。皮膚刺激スコアリングは72時間でスコア0または1であった。パッチ除去後48および72時間の治療Fに対する皮膚刺激スコアは、治療Gと比較して統計的に優れていた(すなわち、平均スコアが低い)。72時間または10日間フォローアップにおいて、全ての皮膚刺激スコアは「0」であった(紅斑無し)。
【0109】
パッチ除去の時点で、75%の被験者は紅斑が極小または無紅斑であった。
【0110】
パッチ除去後48時間で、全ての被験者は紅斑が極小であるかまたは無かった(注意:治療Fについては1つの評価が行われなかった)。72時間に、治療Fで治療した被験者の全ては無紅斑であった(注意:治療Fについては1つの評価が行われなかった)。72時間に極小の紅斑を有した被験者(治療G被験者の35.3%)については、10日間のフォローアップで紅斑は完全に回復した。一般に、これらの知見(表6)は、パッチAおよびEで治療した被験者において観察された知見と臨床的に異ならなかった。
【表6】

【0111】
全体的に、本研究で見られる安全プロファイルは、経口、皮下および経鼻投与したスマトリプタンの公知の安全プロファイルを反映している。パッチを介するスマトリプタン投与は予想されない有害事象を示すことなく、よく許容されるものであった。
【0112】
結果
治療B、C、およびD(皮下、経口および経鼻方法の投与)に対する薬物動態の結果は、認可されている製品ラベルに提示された結果と比較しうるものであった。本発明のイオントフォレシスパッチの両方に対するスマトリプタン血漿濃度時間曲線は、お互いに実質的に異なるものでなく、スマトリプタンの経皮送達が2.6〜3.0グラム範囲の製剤負荷の差によって有意な影響を受けないことを示す。本発明のパッチを用いる治療は、治療D(20mgスマトリプタン経鼻噴霧)と治療B(100mgスマトリプタン経口錠)の中間の血漿スマトリプタンの薬物動態を生じた。本発明のパッチはスマトリプタンを23〜25ng/mLのCmaxで送達しかつこの範囲のスマトリプタンの血漿濃度を通電中の全4時間維持した。これらの結果は実施例1で得た薬物動態データを確証しかつ拡張するものであった。
【0113】
等価物
当業者は、通常の実験だけを用いて本明細書に記載した具体的な手順に対する多数の等価物を確認できることを理解するであろう。かかる等価物は本発明の範囲内にあると考えられ、次の請求項に包含される。本出願全体に引用した全ての参照、特許および特許出願の内容は本明細書に参照により組み入れられる。これらの特許、出願および他の文書の適当な成分、プロセスおよび方法を、本発明およびその実施形態に対して選択することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体のスマトリプタンに関わる状態を治療する方法であって、治療期間の少なくとも一部分に3.5mA以上の電流を用いて、スマトリプタンのある量を被験体にイオントフォレシスで投与して被験体のスマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含む前記方法。
【請求項2】
前記電流が4.0mA以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療期間の前記部分が約30分間〜約90分間である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が約1.5〜約2.5mAの電流を用いる低電流治療期間をさらに含むものである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記低電流治療期間が約2.0mAの電流を用いる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記低電流治療期間が約2時間〜約4時間の長さである、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、約1時間の高電流治療期間に対して約4mAの電流およびその後の低電流治療期間に対して約2mAの電流を用いて、スマトリプタンのある量を前記被験体にイオントフォレシスで投与して前記被験体の前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含む前記方法。
【請求項8】
前記スマトリプタンの量が約10mgである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量を投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンの量が95%信頼区間で約99〜128hr*ng/mLのAUC0-infおよび95%信頼区間で約20〜約28ng/mLのCmaxをもたらす前記方法。
【請求項10】
前記スマトリプタンをイオントフォレシスで投与するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
約10mgのスマトリプタンを前記被験体に投与する、請求項9または10に記載の方法。
【請求項12】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンの量が95%信頼区間で約99〜128hr*ng/mLのAUC0-infをもたらす前記方法。
【請求項13】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンの量が約99〜128hr*ng/mLのAUC0-infをもたらす前記方法。
【請求項14】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンの量が95%信頼区間で約20〜約28ng/mLのCmaxをもたらす前記方法。
【請求項15】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量をイオントフォレシスで投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンを投与して約23〜25ng/mLのCmaxを達成しかつ血漿濃度を少なくとも3時間維持する前記方法。
【請求項16】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンのある量を投与して前記スマトリプタンに関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記スマトリプタンの量が約99〜128hr*ng/mLのAUC0-infおよび約20〜約28ng/mLのCmaxをもたらす前記方法。
【請求項17】
前記スマトリプタンを少なくとも約3.5mAの電流を約30〜90分間用いて投与する、請求項12〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記スマトリプタンを少なくとも約4mAの電流を用いて投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
約1.5mA〜約2.5mAの電流を約2〜約6時間用いて前記スマトリプタンを投与する、請求項12〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
約4mAの電流を約1時間およびその後に約2.0mAの電流を約3時間用いて前記スマトリプタンを投与する、請求項12〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
イオントフォレシスパッチを用いて前記スマトリプタンをイオントフォレシスで投与する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記イオントフォレシスパッチが集積されたものである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、スマトリプタンの有効量をイオントフォレシスパッチを用いて有効治療期間に前記被験体に投与して前記被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記パッチが少なくとも約0.10mA/cm2以上の電流密度を前記治療期間の少なくとも一部分に使う前記方法。
【請求項24】
前記パッチが約10cm2以上のイオントフォレシス活性表面積を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面積が約30cm2である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記治療期間が高電流密度期間および低電流密度期間を含む、請求項22〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記高電流密度期間の電流密度が約0.10mA/cm2〜0.5mA/cm2である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記高電流密度期間が約30分間〜約90分間である、請求項26または27に記載の方法。
【請求項29】
約3mA〜約5mAの電流を前記高電流密度期間中に用いる、請求項26〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記低電流密度期間の前記電流密度が約0.03mA/cm2〜0.20mA/cm2である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記低電流密度期間の前記電流密度が約0.03mA/cm2〜約0.15mA/cm2である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記低電流密度期間が約2.5〜6時間である、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
約1.25mA〜約2.5mAの電流を前記低電流密度期間中に用いる、請求項30〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記高電流密度期間が前記低電流密度期間に先行する、請求項26〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
治療血漿レベルが前記治療期間の開始後1時間未満存在する、請求項22〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
スマトリプタンの有効量が前記被験体血漿中で約10ng/mL〜約28ng/mLである、請求項22〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法であって、イオントフォレシスパッチを用いて高電流密度期間と低電流密度期間を含む有効治療期間の間、前記被験体にスマトリプタンの有効量を投与して前記被験体の前記スマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記高電流密度期間が約0.10mA/cm2〜約0.30mA/cm2の電流密度を有しかつ前記低電流密度期間が約0.05mA/cm2〜約0.15mA/cm2の電流密度を有する前記方法。
【請求項38】
スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法であって、イオントフォレシスパッチを用いて高電流密度期間と低電流密度期間を含む有効治療期間に前記被験体にスマトリプタンの有効量を投与して前記被験体の前記スマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、ここで前記高電流密度期間が約0.13mA/cm2〜約0.4mA/cm2の電流密度を有しかつ前記低電流密度期間が約0.067mA/cm2〜約0.2mA/cm2の電流密度を有する前記方法。
【請求項39】
前記高電流密度期間が約1時間である、請求項22〜38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記低電流密度期間が少なくとも約3時間以上である、請求項22〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記低電流密度期間が少なくとも約5時間以上である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
AUC0-infが約99hr*ng/mL〜約128hr*ng/mLである、請求項22〜41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
t1/2が約2時間〜約3.5時間である、請求項22〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
スマトリプタンが関わる状態の被験体を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンの有効量を経皮的に投与して前記スマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、前記スマトリプタンの有効量を実質的に有害な影響なく投与する前記方法。
【請求項45】
前記スマトリプタンをイオントフォレシスで投与する、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記有害な影響が疼痛、圧力感覚または非定形的感覚を含む、請求項44または45に記載の方法。
【請求項47】
前記スマトリプタンを投与して95%信頼区間で99〜128hr*ng/mLのAUC0-infを達成する、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記スマトリプタンを投与して95%信頼区間で約20ng/mL〜約28ng/mLのCmaxを達成する、請求項44〜47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記スマトリプタンを投与してAUC0-infを99〜128hr*ng/mLにする、請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記スマトリプタンを投与してCmaxを約20ng/mL〜約28ng/mLにする、請求項44に記載の方法。
【請求項51】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンの有効量を経皮的に投与して前記スマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、前記スマトリプタンの投与が約25%未満の変動係数(CV)のAUC0-inf、t1/2またはCmaxをもたらす前記方法。
【請求項52】
前記スマトリプタンをイオントフォレシスで投与する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記スマトリプタンをイオントフォレシスパッチを用いて投与する、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
被験体のスマトリプタンが関わる状態を治療する方法であって、前記被験体にスマトリプタンの有効量を経皮的に投与して前記スマトリプタンが関わる状態を治療するステップを含み、前記スマトリプタンの投与が同様なサンプルサイズについてスマトリプタンの皮下投与に対するAUC0-inf変動係数の2倍未満のAUC0-inf変動係数をもたらす前記方法。
【請求項55】
前記スマトリプタンの有効量を実質的に前記被験体の皮膚を刺激することなく投与する、請求項1〜54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
スマトリプタンの前記イオントフォレシス投与が紅斑を少ししかまたは全く生じない、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
スマトリプタンの前記イオントフォレシス投与が傷害を少ししかまたは全く生じない、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記スマトリプタンが関わる状態が片頭痛である、請求項1〜57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記被験体がヒトである、請求項1〜58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
スマトリプタンを送達し、請求項1〜59に記載のいずれか1項に記載の方法を達成するように設計されているイオントフォレシスパッチ。

【公表番号】特表2011−524784(P2011−524784A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514568(P2011−514568)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/081841
【国際公開番号】WO2009/154649
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510331652)ニューパス インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】