イオントラップ
イオントラップが、実質的に細長い電極10、20を備えており、そのいくらかは、その長軸に沿って湾曲して、それらの間にトラップ容積を規定する。長手方向におけるトラップの極値に向かうこのトラップ容積の断面積は、その極値から離れた(例えばトラップの中間に向かう)断面積とは異なっている。好適な実施形態では、トラップは複数の細長い電極を有しており、対向する電極は異なる湾曲半径を有していて、トラップはその極値に向かって広がる。それによって、より広い質量範囲のイオンがトラップされて射出されることができ、(所与のトラップ長に対して)より高い空間電荷容量が提供され、射出時によりシャープなイオンビームフォーカスが可能になる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子を蓄積し且つ/又は質量分析器に射出するイオントラップに関する。限定するものではないが、特に本発明は、多反射飛行時間型分析器又はオービトラップ(orbitrap)のような静電トラップにイオンを注入するために適したイオントラップに関している。
【背景技術】
【0002】
RFイオントラップを含むイオントラップは十分に確立された装置であり、イオンの蓄積及びイオンサイクロトロン共鳴(ICR)分析器のような質量分析器への蓄積されたイオンの射出を許容する。P.Kofel、M.Allemann、H.P.Kellerhals及びK.P.Wanczekの「イオンサイクロトロン共鳴分光分析法のための外部トラップイオン源」International Journal of Mass Spectrometry and Ion Processes、1989、87、237-247は方形トラップを記述しており、そこでは、全ての辺が等電位に保持されて、ICR磁石からの浮遊場がトラップ動作を生成する。加えて、磁場の中又は外におけるイオン蓄積RFトラップの使用が、その文書では示唆されている。
【0003】
Rev.Sci.Instrum.、1992、63、4277-4284において、US-A-5,569,917において、及びUS-A-5,763,878において、S.Michael、M.Chien、D.Lubmanは、TOF質量分析器への蓄積器及び注入器としての3D四重極イオントラップの使用を記述している。しかし、この従来技術のトラップにおけるイオン雲の限られた容積は、蓄積されたイオンの間に顕著なクーロン相互作用を生じさせる結果となり、これは、結果として得られるイオンビームのパラメータに大きく影響する。
【0004】
直線状のイオントラップ及び湾曲したイオントラップは、イオン雲の容積の増加を可能にし、これより空間電荷が性能に影響を与え始めるレベルを低減した(通常は、イオンの許容数が1桁又はそれ以上増加される)。それゆえ、それらは、質量分光分析法、ならびに質量分析器へのイオン注入のためにより適していることが証明されている。M.W.Senko et al.、J.Am.Soc.Mass Spectrom.、1997、8、970-976は、FT−ICR分光分析器とともに使用するためのある範囲の異なるトラップの使用を要約し、蓄積器としての八重極イオンガイド、及びその後に注入器としての第2の八重極の使用を記述しており、イオンは、トラップ軸に直交する方向ではなくトラップ軸の方向に、トラップの端から外に転送される。US-A-5,763,878にてFranzenは、平行な直線ロッドを備えてイオン射出がそのロッドに直交したトラップを記述している。Makarov et al.は、US-A-6,872,938において、直交射出を有する湾曲した多極ロッドトラップを記述している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、イオン雲がトラップ軸の実質的な長さに沿って分布されるにつれて、これは、この方向における引き続くフォーカスを困難にする。US-A-6,872,938におけるように、冷却されたイオン雲はRF擬似電位の最小に位置し、この中央線(「軸」)は湾曲し得る。
【0006】
最近導入されたオービトラップ質量分析器、及び多反射飛行時間型分析器の両方が、高い空間電荷容量だけではなく、イオン雲を時間的に並びに軸方向を含む全方向でフォーカスする能力を必要とする。イオンをオービトラップ質量分析器の小さな入口スロットを通ってフォーカスする湾曲したイオントラップが、US-A-6,872,938に記述されている。このフォーカスは、湾曲したイオントラップ自身の形状によって、並びにトラップとオービトラップ質量分析器との間に位置する湾曲したフォーカス及び偏向光学系を使用することによって、提供される。偏向光学系(zレンズ)はまた、イオンを湾曲した経路上に導き、これによって比較的高圧の蓄積トラップとターゲット質量分析器又はトラップとの間の直接視線(及びそこを通るイオンの飛行)をブロックすることによって、圧力の問題を低減する役割も果たす。
【0007】
高い性能を提供するが、結果として得られる構造は多くの不利益を有する。第1に、これは製造には複雑である。第2に、これは広いスリット(焦点に近付くと減少する幅を有する)を必要とし、これが差動ポンピングに関する要求の増加をもたらす。第3に、このトラップは、オービトラップ自身よりも低い空間電荷容量を有するという不利益を被る。
【0008】
さらに、トラップと質量分析器との間のレンズが湾曲しており、製造及び位置合わせには複雑である。加えて、蓄積され且つ質量分析器に射出されることができるイオンの質量範囲が限定される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、及び本発明の第1の局面にしたがって、トラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極を備えるイオントラップが提供され、トラップ容積が長軸を有して一般的に細長く、長軸方向の両端(extremities)の近傍のトラップ容積の断面積が、その両端から離れた前記トラップ容積の断面積とは異なる。
【0010】
その最も一般的な意味における発明的な概念は、これより、イオンに対する湾曲した非直線トラップ場を規定する。これは、より高いトラップ容量ならびにより高い質の空間的及び飛行時間的フォーカスが、例えば広範囲に(extensively)(しかし異なって)湾曲した複数の電極を有するイオン蓄積装置によって提供されることができるという驚くべき概念から生じている。新しいトラップは、通常はより低次の多極の拡張(例えば、四重極、八重極、など)を使用するRFイオントラップに対する伝統的な視点とは異なる。湾曲した非直線電極は複雑すぎ且つ予測不能すぎて、高くフォーカスされたビームの蓄積及びパルス注入に役立てることができないという広く支持された見解にもかかわらず、本発明者は、イオンの蓄積に関する限りは、RFトラップは蓄積場の歪みに対して優雅に、又は積極的にさえ反応することを認識した。それゆえ、(ストークスの定理を使用して)電極形状に対する多極の拡張及びその変形から生じる形状に対する不必要な束縛の代わりに、射出に対するイオン光学的性能(ion-optical performance)が支配的な設計原則として使用されて、RF設計は二の次としている。これは、分析器に向かうイオンの射出の間は、RFが典型的には(必然ではないが)オフされるという事実を尊重する。
【0011】
代替的な局面では、本発明は、長軸を有するトラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極と、トラップ電極にrf電圧を供給する電源と、を備えており、トラップ電極の形状及び/又は印加されるrf電圧の大きさが、トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成するように選択され、その電気力の大きさがトラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わる、イオントラップに存在する。
【0012】
言い換えれば、本トラップは、放物性の非一定係数によく合致する擬似電位を確立するように構成されている。好ましくは、例えば少なくとも一つの平面で湾曲した電極を使用することによって、長軸が少なくとも部分的に湾曲され、電気力の大きさが湾曲した軸に平行な任意の線に沿って(すなわち、湾曲した軸に対して一定の距離を保つ任意の線に沿って)、距離と共に変化する。最も好適な実施形態では、この長軸に平行な電気力成分の導入(これは、トラップ内のイオンに、トラップの長軸に垂直でも平行でもない射出力をもたらす結果となる)が、少なくとも一つの平面で(トラップの断面積が長軸に沿って距離と共に変わるように)異なる湾曲半径を有する複数の電極を、あるいはより好ましくは、1つの湾曲した電極に対向するもう1つの一般的に平坦な平面電極を使用することによって、達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の好適な実施形態の効果は、以下の点を含む。
・トラップの低質量カットオフが電極間の可変ギャップによって不鮮明になるために、広い質量範囲のイオンが首尾よくトラップされ且つ射出されることができる。
・同じトラップ長に対して、より高い空間電荷容量。これは、射出の直前に、イオンビームをより良く絞る(squeeze)能力のためである。
・差動ポンピングのためのより狭いスリットが、射出されたイオンビームの低減された幅のために、使用されることができる。これは、例えば異なる湾曲を有する電極の使用によって生成されることができるより強いフォーカス動作のためである。
・射出トラップに引き続くイオン光学系の低コスト製造(zレンズは、複雑な湾曲した形状の代わりに、ここではより単純な平面対称性を有する)。
・射出トラップ自身の低コスト製造(表面が加工困難な湾曲した双曲線状のロッドをプレートに置き換える)。
・イオンビームのよりシャープなフォーカス。
・質量対電荷比から独立した方法でイオンを射出する能力。
本発明のさらなる特徴及び効果は、添付の請求項及び以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は多くの方法で実行され得て、いくつかの実施形態がここで、添付の図面を参照しながら、例示のためのみに記述される。
【図1】イオン光学系の下流とともに本発明に従ったイオントラップの好適な実施形態の斜視図である。
【図2】イオン運動の平面における図1のイオントラップの断面図である。
【図3】イオン運動の平面に垂直な図1のイオントラップの断面図である。
【図4】イオン光学系の方向から見た図1のトラップの正面図である。
【図5】図1のイオントラップのイオン引き出しの平面における典型的な電位分布を示す図である。
【図6a】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの上面図を示す図である。
【図6b】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの平面図を示す図である。
【図6c】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの側面図を示す図である。
【図7a】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7b】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7c】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7d】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態に従ったイオン蓄積トラップが、ここで図面を参照して記述される。平行又は同心円状のトラップ電極表面を有する以前の装置とは対照的に、異なる湾曲の表面を有することが可能且つ有益であることが見出されてきている。いくつかの例が、図1、図2、及び図3に示される。
【0016】
このトラップは、(3Dの四重極イオントラップとは異なり)実質的に細長い電極から形成される。これらの電極の間隔(スペース)は、トラップの中央領域よりも、トラップの両端でお互いから異なっている。電極の端は、端で外側に広がるか、または端で縮まっている。電極の数は3又はそれ以上であることができる。好ましくは、偶数個の電極が使用される。広がった端を有する4電極装置が、ここで特に記述される。電極の端の広がりは図面で、最も明瞭には図2及び図3に見ることができ、電極10及び20は、電極30及び40の内側表面がそうであるように、トラップの端に向かってお互いに遠ざかる。このタイプの構成のトラップの直接の効果は、より広い質量範囲のイオンが首尾よくトラップされて射出されることを可能にする点である。これは、RF四重極装置に通常存在する低質量カットオフが、RF電極10〜40の間の可変ギャップによって不明瞭にされるからである。同様の効果は、ロッドが、広がる代わりにその端に向かって小さくなっても得られる。
【0017】
トラップは、電圧が印加される端プレート60及び70を有する。トラップからのイオンの射出に先立って、電極60及び70に印加された電位が、イオンをトラップの中心に向かって移動させ、イオン雲を圧縮する。雲の圧縮は、端プレート60及び70上の電圧を増やすことによって達成されることができる。同じ効果のために、RF電極に印加されたDCを、逆の方向に変化させる(DCの差を大きくする)ことができる。両方法が電位の井戸の深化をもたらし、一定のエネルギーを有するイオンをその後により小さな空間に収縮する。雲の圧縮は、(断熱的に)傾斜させることにより、又は単に電圧の変化及び引き続く衝突冷却によって、ゆっくりと行われることができる。雲の圧縮は本発明の第2の効果を生成し、これは、トラップが増加した蓄積容量を有する点である。この効果は、電極がその端に向かって広がると、特に得られる。
【0018】
これに加えて、トラップ電極10及び20の湾曲の差は、軸方向に沿ったイオンビームの強いフォーカスを作り出す合成場を生成するために使用されることができ、従来技術の装置とは異なり、この強いフォーカスは、トラップ内部で生じ始める。これは、増加した空間フォーカス効果を作り出し、これが今度は、従来技術の湾曲した電極の代わりに、平面zレンズ電極51、52、53(図1)の使用を許容する。これは、これらの電極がそのような強いフォーカス動作を有する必要が無いからであり、このトラップがより厳しくフォーカスした射出イオンビームを作り出すので、イオンビームはこれらのレンズ要素に到達するときにはより小さい。このビームは、より小さな差動ポンピング開口を通して向きが定められることができ、これは、質量分析器上のガス負荷を低減することによって、器具のコストを減らす手助けをする。これらの効果は、後に示されるように、電極をそれらの端に向かって広げるか又は小さくすることによって、得られる。
【0019】
電場の特性は、3つの電極表面によって支配される。第1は、トラップ電極10の内側表面、すなわち、電極20に面して図1の視点からは隠れている電極10の表面である。電場を支配する第2の表面は、トラップ電極20の内側表面(図1で見えていて電極10に面している電極20の表面)である。第3の且つ最も支配的な表面は、トラップ電極20の外側表面(zレンズ51、52、53に面していて、再び図1では隠れている)である。これら3つの表面は、それら自身はフォーカスさせないが、それにもかかわらず、それらは、イオンがトラップから射出されるときに、イオンによって主に「見られる」表面である。それゆえ、これらはイオンのフォーカスに支配的な役割を果たし、射出場を決定する表面とみなされる。
【0020】
一般的に、イオンが射出されるときに通過する第1の電極(すなわち「引き出し」電極20)又は背面電極(すなわち「押し出し」電極10)の湾曲中心は、軸方向の焦点位置よりもトラップの近くにあるべきである。電極10、20の湾曲中心がイオン焦点と同じ線上にあることは、強制的ではないが好ましい。この線をトラップの対称軸として使用することもまた、好ましい。一般的に、
(R2<|R1|及びR2<f) 又は (|R2|>R1及びR1<f)
である。ここで、R1は電極10の湾曲半径、R2は電極20の湾曲半径、及びfはイオン焦点から軸までの距離である。|...|という記号は絶対値を示し、対応する半径が負の湾曲を有し得ること、すなわち、その中心がイオン焦点に対してトラップの反対側にあり得ることを示している。
【0021】
それから、引き続く(好ましくは平坦な)レンズ50は、電極20及び/又は10の初期フォーカス動作をわずかに低減するが、完全には補償しない。典型的には、イオンは、レンズ50を通ってよりも、低エネルギーでスリット21を通過してくる。所与のイオンビームパラメータに対する配置及び電圧の最適化は、トラップ及びレンズが、湾曲したトラップ及びレンズのシステムのものに匹敵する空間的及び飛行時間的収差を提供することを可能にする。
【0022】
電極20及び/又は10の強い湾曲の結果として、トラップからのイオン射出の方向は、湾曲した軸に直交ではなく、直交から実質的に偏向している。
【0023】
加えて、より複雑な形状は、より高次の場の強さを高めて、これによりトラップの空間電荷容量を増すことを手助けする。さらに、上述のように、RF電極10及び20の間のギャップはトラップの中心から離れると増加し、そのことが、トラップの端プレート60、70からの場がトラップ内により深く貫通し、(他の点では同様の電場及び配置パラメータに対して)イオン雲をより小さい長さに絞ることを可能にする。好ましくは、軸に沿ったRFは、上記及び図3で記すように、垂直方向における電極30及び40の間のギャップGを増すことによってもまた、バランスされた状態を維持される。必須ではないが典型的に、Gは、電極10及び20の間のギャップにほぼ等しい。典型的には、電極30及び40の湾曲R3、R4は
|R3|>R2; |R4|>R2
であり、それらの湾曲中心はイオンの動きの平面の外側に位置する。電極の湾曲した形状は、通常は、共鳴励起を有するトラップの使用を排除する(トラップが主に、引き続く質量分析器のためのイオンパルスを準備する役割を果たすので、このことは、いずれにしても通常は必要とされない)が、特に、この目的のために非直線性、例えば高次の非直線性を支配する六重極又は八重極の多極構成要素がもたらされるときには、粗い質量選択又は調和関係を有する質量の選択のための使用は、依然として可能である。高次の多極場成分の追加によって、安定領域は単純な四重極の場合よりも複雑になる。これは、より複雑な質量走査機能をもたらし、主にターゲットにされているものとともに、イオンの選択又は非選択を生じさせ得る。イオンの安定性の判定のための解析的な表現が既知である純粋な又はわずかに乱された四重極場とは反対に、質量選択特性又は選択的な質量不安定走査は、イオン安定領域の数値的な決定、ならびに現在の操作慣習からのずれ、又は質量選択操作パラメータの完全な実験的決定さえ、必要とし得る。
【0024】
動作時には、(正の)イオンは開口60又は70を介してトラップに入り(図2)、電極10及び20に印加されたRF電位(位相1)、ならびに30及び30に印加されたRF電位(逆位相、図3)によって発散を防がる。開口60及び70は、典型的には電極10〜40上のDC電位に対してDCオフセットを有している(これは、通常は全てのロッドに対して同じであるが、オプションとして、電極10のDC電位は、トラップ内のイオンフォーカスを改善するために、電極20のものよりも正であることができる)。あるいは、RF電位が、蓄積のために開口電極60及び70に印加されることができる。これは、独立した周波数及び振幅を有することができる。単一の電荷極性の粒子の蓄積のための使用のほかにも、開口電極上のこのRFは、正及び負のイオンの同時蓄積又は閉じ込めのために使用されることができる。正及び負のイオンが同じ空間に閉じ込められるとき、それらは様々な処理のために使用されることができ、これらは、電子転送分離(ETD)を含む電子転送反応、電荷状態低減を含む電荷転送反応、電荷交換反応又は共鳴冷却を含むが、これらに限定されるものではない。これらの方法のいくつかはまた、トラップを通した逆電荷のビームの伝送によっても可能であるが、蓄積は、特に冷却又は運動的に制約された反応が望まれるならば、より長い反応時間を許容する。
【0025】
トラップ内での残存ガスとの衝突は、イオンの運動エネルギーを、それらがその中にトラップされるまで低減する。オプションとして、WO-A-2006/103445に記載されているように、イオンは、軸80に沿って冷却される前にトラップを複数回通過する。
【0026】
開口60、70は、好ましくは、両側及び開口の内側にメタライゼーションを有するプリント回路ボード(PCB)として作製される。これらのボードは、トラップ容積を内包して真空システムへのガス流を低減するために使用されることができる。しかし、そのような囲いは、表面に沿った絶縁破壊の可能性を導入する。後者は、ガス流を実質的に増加することなくメタライズされた領域を絶縁領域から分離する非常に薄い(厚さ1mmのPCBに対しては0.1〜0.2mm)の溝を設けることによって、避けられ得る。ある領域(例えば開口60又は70が電極20又は10に近付く点の近傍)では、電極10又は20は小さなくぼみ(やはり0.1〜0.2mm)を有し得て、これは、ガス流を顕著に増加させること無く、付加的なギャップを提供する。図4に示されているように、セラミックプレートはまた、頂部及び底部からトラップ容積を囲むためにも使用されることができる。
【0027】
トラップに続いて、イオンは付加的に、(上述のように)それらに対する電圧を増すことによって、開口60〜70から離れるように絞られ得る。その後、WO-A-05/124,821に記述されているように電極10〜40上のRF電位がシャントされ、DC電圧がこれらの電極に印加されて引き出し場を生成し、これが、(この場が、図5の等電位によって例示されるように実質的な軸方向成分を有するので)イオンを電極20に向かって加速し且つ同時にそれらをトラップの軸に向かって押し出す。よりよい飛行時間的又は空間的フォーカスが達成されるように、RFのシャントとDC電圧の印加との間には遅れがあり得る。オプションとして、時間的に可変な電圧が、DC電位の代わりに印加され得る。この場は、イオンを、電極20のスロット21(図2及び図4)を介してトラップから出させてレンズアセンブリ50に入れさせて、これがそれらを、好ましくはオービトラップ又は飛行時間型質量分析器である質量分析器内に、オプションの差動ポンピングを通してガイドする。前者に対しては、イオンビームを一点にフォーカスすることが好ましく、飛行時間型分析器に対しては、より大きなサイズの平行ビームを提供することが好ましい。後者は、好ましくは一対の円筒状レンズ91、92を含む図6a、6b、6cに示されるレンズアセンブリ90によって達成される。トラップから質量分析器へのガスのキャリーオーバーは、図6に又はWO-A-02/078046に示されるように、イオンビームの単一の又は二重の偏向を使用することによって、避けられる。レンズアセンブリは好ましくは、絶縁性又は抵抗性のスペーサによって隔てられたプレートのセットである。
【0028】
可能な変形が図7a〜7dに示されている。最初に図7aを参照すると、イオンビーム平面上に、本発明を具現化するイオントラップの全体的な外観が示されている。電極10の半径>電極20の半径である。図7bは、イオンビーム平面上に、本発明の代替的な実施形態に従ったイオントラップの全体的な外観を示す。電極10の半径は、ここでは負である。図7a及び7bの両方において、両電極10及び20は湾曲しているが、内側表面は平行ではなく、それらの表面の間のギャップは、トラップの中心においてよりも電極の端においてのほうが大きい。
【0029】
あるいは、電極が端で広がる代わりに、それらは代わりに小さくすることができる。ここでは、両電極10及び20は湾曲しているが、内側表面は平行ではなく、それらの表面の間のギャップは、トラップの中心においてよりも電極の端においてのほうが小さい。この例は、図7c及び7dに示されている。図7cにおいて、第1のそのような実施形態が示されており、電極20の半径>電極10の半径である。
【0030】
依然として更なる実施形態が図7dに示されており、ここでは、電極20の半径は0よりも小さい。
【0031】
飛行時間型質量分析器とともに使用されるとき、湾曲R1及びR2は、最低の収差、及び/又はイオンビームパラメータの空間電荷に対する最高の独立性を、好ましくはトラップからのイオンの出口で提供するように最適化されることができる。さらに下流では、これらのパラメータを最適化することは、より挑戦的になる。飛行時間型質量分光分析器の入口は、好ましくは、イオンビームをフォーカスされたビームからより平行なビームに変換する修正レンズ(図示されず)の後ろに置かれる。この修正レンズは、トラップの焦点に近くてもよく、又はそのいずれかの側にあってもよい。修正レンズの下流で、最初の焦点でTOF MSに入ることが便利であり得る。TOF MS装置を使用する際に、一つの特に適した配置は、我々が2007年12月21日付けで英国特許庁に出願した「多反射飛行時間型質量分光分析器」という名称の我々の出願に記載した多反射TOF MS装置であり、その内容は参照によってここに援用される。我々の同時係属出願番号GB0620963.9の多反射検出システムは、その又は任意の他のTOF MS装置を通過するイオンの検出に特に好適であり得て、その内容は参照によってここに援用される。
【0032】
オービトラップ質量分析器について、主な基準は、大きな空間電荷に対する厳しい空間的なフォーカス、及びときおりはイオンエネルギーの質量に対する適切な依存性である。再び、オービトラップへの入口が、湾曲した非直線イオントラップを出るイオンビームの焦点にできるだけ近くに位置することが望ましい。
【0033】
正面及び背面電極の他の形状の変形が考えられ得て、例えば、
押し出し電極10が平坦で、引き出し電極20が湾曲している(トラップの外側正面から見たときに凹である)
電極20が平坦で、電極10が湾曲している(トラップの外側正面から見たときに凸である)
押し出し10が平坦で、引き出し20は、外側は双曲線的で内側は湾曲している
電極10が平坦で、電極20が円筒状である
電極10及び20が双曲線的である
両電極が円筒状である。
【0034】
電極10及び20の形状は、特定のタスクのために最適化されるべきである。例えば、オービトラップへの注入のために最適な形状は、最低の飛行時間的収差のための最適形状とは異なることができる。
【0035】
頂部及び底部電極30及び40の特別な形状の変形はまた、以下のように企図され得るが、これらに限定されるものではない:
双曲線状、
円筒状、
対称的、水平方向の分離と同様に垂直方向の電極の分離を維持するように湾曲されている(図3)、
非対称的(通常は射出の間に偏向を助けるために使用される)、
軸方向の場ができるだけ四重極に近くなるような頂部及び底部電極の湾曲(又は例えば特定の高次項を最大化するため)、
RF電位の最小線に沿って効果的な電位勾配が生成される(又は避けられる)ような頂部及び底部電極の湾曲。
【0036】
トラップのフォーカス特性は、電極20の外側形状を考慮することによって最適化されることができる。この電極面はまた、射出されたイオンビームの形状決定にも関与する。
・電極20の外側の形状の変形(垂直方向における最良のフォーカスを提供するように最適化される)
・図4に示されるような、ベースとしての三角形又は円を有する回転の図(トロイド)。スリット21は比較的狭いべきである(好ましくは、その高さよりは厚くない)
・トラップの内側からのガスの流れを最小化するための重量感のある電極内部での長いチャンネル。
【0037】
本発明の特定の実施形態が記述されてきているが、当業者によって様々な改変及び改良が企図され得ることが理解されるべきである。例えば、異なる湾曲半径及び中心の湾曲した電極が、改良されたイオン蓄積及び/又は射出時の空間的なフォーカスを達成するために使用され得るが、同様の効果が他の類似の方法でも達成できることが理解されるべきである。例えば、連続した細長い電極の代わりに、一つ又はそれ以上のトラップ電極が、より短い電極部から代わりに形成されることができる。これらの電極部の各々は、湾曲することも直線であることもできる。いずれでも、湾曲した複合電極が形成され得る。実際のところ、差動電場の電極部への印加によって、それらは全て共直線的になることができ、トラップに沿った電場における適切な変化が、依然として達成されることができる。この方法における電場の生成は、参照によってここに援用されるWO-A-2007/000587として発行された我々の同時係属出願において、他のイオントラップ配置(オービトラップ)に関して記述されている。
【0038】
本発明のトラップは、多くの異なる配置、特に、イオンを第1の方向(通常はトラップの長手方向に一般的に沿っている)で受け取り、それらを直交して射出する2Dタイプのイオントラップとともに最適に配置されたものにおける使用に適している。例えば、湾曲した非直線トラップは、我々の同時係属出願番号PCT/GB2006/001174の配置において特に有用であり得て、これは参照によって全体として援用される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電粒子を蓄積し且つ/又は質量分析器に射出するイオントラップに関する。限定するものではないが、特に本発明は、多反射飛行時間型分析器又はオービトラップ(orbitrap)のような静電トラップにイオンを注入するために適したイオントラップに関している。
【背景技術】
【0002】
RFイオントラップを含むイオントラップは十分に確立された装置であり、イオンの蓄積及びイオンサイクロトロン共鳴(ICR)分析器のような質量分析器への蓄積されたイオンの射出を許容する。P.Kofel、M.Allemann、H.P.Kellerhals及びK.P.Wanczekの「イオンサイクロトロン共鳴分光分析法のための外部トラップイオン源」International Journal of Mass Spectrometry and Ion Processes、1989、87、237-247は方形トラップを記述しており、そこでは、全ての辺が等電位に保持されて、ICR磁石からの浮遊場がトラップ動作を生成する。加えて、磁場の中又は外におけるイオン蓄積RFトラップの使用が、その文書では示唆されている。
【0003】
Rev.Sci.Instrum.、1992、63、4277-4284において、US-A-5,569,917において、及びUS-A-5,763,878において、S.Michael、M.Chien、D.Lubmanは、TOF質量分析器への蓄積器及び注入器としての3D四重極イオントラップの使用を記述している。しかし、この従来技術のトラップにおけるイオン雲の限られた容積は、蓄積されたイオンの間に顕著なクーロン相互作用を生じさせる結果となり、これは、結果として得られるイオンビームのパラメータに大きく影響する。
【0004】
直線状のイオントラップ及び湾曲したイオントラップは、イオン雲の容積の増加を可能にし、これより空間電荷が性能に影響を与え始めるレベルを低減した(通常は、イオンの許容数が1桁又はそれ以上増加される)。それゆえ、それらは、質量分光分析法、ならびに質量分析器へのイオン注入のためにより適していることが証明されている。M.W.Senko et al.、J.Am.Soc.Mass Spectrom.、1997、8、970-976は、FT−ICR分光分析器とともに使用するためのある範囲の異なるトラップの使用を要約し、蓄積器としての八重極イオンガイド、及びその後に注入器としての第2の八重極の使用を記述しており、イオンは、トラップ軸に直交する方向ではなくトラップ軸の方向に、トラップの端から外に転送される。US-A-5,763,878にてFranzenは、平行な直線ロッドを備えてイオン射出がそのロッドに直交したトラップを記述している。Makarov et al.は、US-A-6,872,938において、直交射出を有する湾曲した多極ロッドトラップを記述している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、イオン雲がトラップ軸の実質的な長さに沿って分布されるにつれて、これは、この方向における引き続くフォーカスを困難にする。US-A-6,872,938におけるように、冷却されたイオン雲はRF擬似電位の最小に位置し、この中央線(「軸」)は湾曲し得る。
【0006】
最近導入されたオービトラップ質量分析器、及び多反射飛行時間型分析器の両方が、高い空間電荷容量だけではなく、イオン雲を時間的に並びに軸方向を含む全方向でフォーカスする能力を必要とする。イオンをオービトラップ質量分析器の小さな入口スロットを通ってフォーカスする湾曲したイオントラップが、US-A-6,872,938に記述されている。このフォーカスは、湾曲したイオントラップ自身の形状によって、並びにトラップとオービトラップ質量分析器との間に位置する湾曲したフォーカス及び偏向光学系を使用することによって、提供される。偏向光学系(zレンズ)はまた、イオンを湾曲した経路上に導き、これによって比較的高圧の蓄積トラップとターゲット質量分析器又はトラップとの間の直接視線(及びそこを通るイオンの飛行)をブロックすることによって、圧力の問題を低減する役割も果たす。
【0007】
高い性能を提供するが、結果として得られる構造は多くの不利益を有する。第1に、これは製造には複雑である。第2に、これは広いスリット(焦点に近付くと減少する幅を有する)を必要とし、これが差動ポンピングに関する要求の増加をもたらす。第3に、このトラップは、オービトラップ自身よりも低い空間電荷容量を有するという不利益を被る。
【0008】
さらに、トラップと質量分析器との間のレンズが湾曲しており、製造及び位置合わせには複雑である。加えて、蓄積され且つ質量分析器に射出されることができるイオンの質量範囲が限定される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この背景に対して、及び本発明の第1の局面にしたがって、トラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極を備えるイオントラップが提供され、トラップ容積が長軸を有して一般的に細長く、長軸方向の両端(extremities)の近傍のトラップ容積の断面積が、その両端から離れた前記トラップ容積の断面積とは異なる。
【0010】
その最も一般的な意味における発明的な概念は、これより、イオンに対する湾曲した非直線トラップ場を規定する。これは、より高いトラップ容量ならびにより高い質の空間的及び飛行時間的フォーカスが、例えば広範囲に(extensively)(しかし異なって)湾曲した複数の電極を有するイオン蓄積装置によって提供されることができるという驚くべき概念から生じている。新しいトラップは、通常はより低次の多極の拡張(例えば、四重極、八重極、など)を使用するRFイオントラップに対する伝統的な視点とは異なる。湾曲した非直線電極は複雑すぎ且つ予測不能すぎて、高くフォーカスされたビームの蓄積及びパルス注入に役立てることができないという広く支持された見解にもかかわらず、本発明者は、イオンの蓄積に関する限りは、RFトラップは蓄積場の歪みに対して優雅に、又は積極的にさえ反応することを認識した。それゆえ、(ストークスの定理を使用して)電極形状に対する多極の拡張及びその変形から生じる形状に対する不必要な束縛の代わりに、射出に対するイオン光学的性能(ion-optical performance)が支配的な設計原則として使用されて、RF設計は二の次としている。これは、分析器に向かうイオンの射出の間は、RFが典型的には(必然ではないが)オフされるという事実を尊重する。
【0011】
代替的な局面では、本発明は、長軸を有するトラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極と、トラップ電極にrf電圧を供給する電源と、を備えており、トラップ電極の形状及び/又は印加されるrf電圧の大きさが、トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成するように選択され、その電気力の大きさがトラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わる、イオントラップに存在する。
【0012】
言い換えれば、本トラップは、放物性の非一定係数によく合致する擬似電位を確立するように構成されている。好ましくは、例えば少なくとも一つの平面で湾曲した電極を使用することによって、長軸が少なくとも部分的に湾曲され、電気力の大きさが湾曲した軸に平行な任意の線に沿って(すなわち、湾曲した軸に対して一定の距離を保つ任意の線に沿って)、距離と共に変化する。最も好適な実施形態では、この長軸に平行な電気力成分の導入(これは、トラップ内のイオンに、トラップの長軸に垂直でも平行でもない射出力をもたらす結果となる)が、少なくとも一つの平面で(トラップの断面積が長軸に沿って距離と共に変わるように)異なる湾曲半径を有する複数の電極を、あるいはより好ましくは、1つの湾曲した電極に対向するもう1つの一般的に平坦な平面電極を使用することによって、達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の好適な実施形態の効果は、以下の点を含む。
・トラップの低質量カットオフが電極間の可変ギャップによって不鮮明になるために、広い質量範囲のイオンが首尾よくトラップされ且つ射出されることができる。
・同じトラップ長に対して、より高い空間電荷容量。これは、射出の直前に、イオンビームをより良く絞る(squeeze)能力のためである。
・差動ポンピングのためのより狭いスリットが、射出されたイオンビームの低減された幅のために、使用されることができる。これは、例えば異なる湾曲を有する電極の使用によって生成されることができるより強いフォーカス動作のためである。
・射出トラップに引き続くイオン光学系の低コスト製造(zレンズは、複雑な湾曲した形状の代わりに、ここではより単純な平面対称性を有する)。
・射出トラップ自身の低コスト製造(表面が加工困難な湾曲した双曲線状のロッドをプレートに置き換える)。
・イオンビームのよりシャープなフォーカス。
・質量対電荷比から独立した方法でイオンを射出する能力。
本発明のさらなる特徴及び効果は、添付の請求項及び以下の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は多くの方法で実行され得て、いくつかの実施形態がここで、添付の図面を参照しながら、例示のためのみに記述される。
【図1】イオン光学系の下流とともに本発明に従ったイオントラップの好適な実施形態の斜視図である。
【図2】イオン運動の平面における図1のイオントラップの断面図である。
【図3】イオン運動の平面に垂直な図1のイオントラップの断面図である。
【図4】イオン光学系の方向から見た図1のトラップの正面図である。
【図5】図1のイオントラップのイオン引き出しの平面における典型的な電位分布を示す図である。
【図6a】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの上面図を示す図である。
【図6b】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの平面図を示す図である。
【図6c】平行な射出イオンビームを生成する下流レンズシステムとともに図1のトラップの側面図を示す図である。
【図7a】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7b】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7c】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【図7d】本発明に従った様々な模式的な代替的電極配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好適な実施形態に従ったイオン蓄積トラップが、ここで図面を参照して記述される。平行又は同心円状のトラップ電極表面を有する以前の装置とは対照的に、異なる湾曲の表面を有することが可能且つ有益であることが見出されてきている。いくつかの例が、図1、図2、及び図3に示される。
【0016】
このトラップは、(3Dの四重極イオントラップとは異なり)実質的に細長い電極から形成される。これらの電極の間隔(スペース)は、トラップの中央領域よりも、トラップの両端でお互いから異なっている。電極の端は、端で外側に広がるか、または端で縮まっている。電極の数は3又はそれ以上であることができる。好ましくは、偶数個の電極が使用される。広がった端を有する4電極装置が、ここで特に記述される。電極の端の広がりは図面で、最も明瞭には図2及び図3に見ることができ、電極10及び20は、電極30及び40の内側表面がそうであるように、トラップの端に向かってお互いに遠ざかる。このタイプの構成のトラップの直接の効果は、より広い質量範囲のイオンが首尾よくトラップされて射出されることを可能にする点である。これは、RF四重極装置に通常存在する低質量カットオフが、RF電極10〜40の間の可変ギャップによって不明瞭にされるからである。同様の効果は、ロッドが、広がる代わりにその端に向かって小さくなっても得られる。
【0017】
トラップは、電圧が印加される端プレート60及び70を有する。トラップからのイオンの射出に先立って、電極60及び70に印加された電位が、イオンをトラップの中心に向かって移動させ、イオン雲を圧縮する。雲の圧縮は、端プレート60及び70上の電圧を増やすことによって達成されることができる。同じ効果のために、RF電極に印加されたDCを、逆の方向に変化させる(DCの差を大きくする)ことができる。両方法が電位の井戸の深化をもたらし、一定のエネルギーを有するイオンをその後により小さな空間に収縮する。雲の圧縮は、(断熱的に)傾斜させることにより、又は単に電圧の変化及び引き続く衝突冷却によって、ゆっくりと行われることができる。雲の圧縮は本発明の第2の効果を生成し、これは、トラップが増加した蓄積容量を有する点である。この効果は、電極がその端に向かって広がると、特に得られる。
【0018】
これに加えて、トラップ電極10及び20の湾曲の差は、軸方向に沿ったイオンビームの強いフォーカスを作り出す合成場を生成するために使用されることができ、従来技術の装置とは異なり、この強いフォーカスは、トラップ内部で生じ始める。これは、増加した空間フォーカス効果を作り出し、これが今度は、従来技術の湾曲した電極の代わりに、平面zレンズ電極51、52、53(図1)の使用を許容する。これは、これらの電極がそのような強いフォーカス動作を有する必要が無いからであり、このトラップがより厳しくフォーカスした射出イオンビームを作り出すので、イオンビームはこれらのレンズ要素に到達するときにはより小さい。このビームは、より小さな差動ポンピング開口を通して向きが定められることができ、これは、質量分析器上のガス負荷を低減することによって、器具のコストを減らす手助けをする。これらの効果は、後に示されるように、電極をそれらの端に向かって広げるか又は小さくすることによって、得られる。
【0019】
電場の特性は、3つの電極表面によって支配される。第1は、トラップ電極10の内側表面、すなわち、電極20に面して図1の視点からは隠れている電極10の表面である。電場を支配する第2の表面は、トラップ電極20の内側表面(図1で見えていて電極10に面している電極20の表面)である。第3の且つ最も支配的な表面は、トラップ電極20の外側表面(zレンズ51、52、53に面していて、再び図1では隠れている)である。これら3つの表面は、それら自身はフォーカスさせないが、それにもかかわらず、それらは、イオンがトラップから射出されるときに、イオンによって主に「見られる」表面である。それゆえ、これらはイオンのフォーカスに支配的な役割を果たし、射出場を決定する表面とみなされる。
【0020】
一般的に、イオンが射出されるときに通過する第1の電極(すなわち「引き出し」電極20)又は背面電極(すなわち「押し出し」電極10)の湾曲中心は、軸方向の焦点位置よりもトラップの近くにあるべきである。電極10、20の湾曲中心がイオン焦点と同じ線上にあることは、強制的ではないが好ましい。この線をトラップの対称軸として使用することもまた、好ましい。一般的に、
(R2<|R1|及びR2<f) 又は (|R2|>R1及びR1<f)
である。ここで、R1は電極10の湾曲半径、R2は電極20の湾曲半径、及びfはイオン焦点から軸までの距離である。|...|という記号は絶対値を示し、対応する半径が負の湾曲を有し得ること、すなわち、その中心がイオン焦点に対してトラップの反対側にあり得ることを示している。
【0021】
それから、引き続く(好ましくは平坦な)レンズ50は、電極20及び/又は10の初期フォーカス動作をわずかに低減するが、完全には補償しない。典型的には、イオンは、レンズ50を通ってよりも、低エネルギーでスリット21を通過してくる。所与のイオンビームパラメータに対する配置及び電圧の最適化は、トラップ及びレンズが、湾曲したトラップ及びレンズのシステムのものに匹敵する空間的及び飛行時間的収差を提供することを可能にする。
【0022】
電極20及び/又は10の強い湾曲の結果として、トラップからのイオン射出の方向は、湾曲した軸に直交ではなく、直交から実質的に偏向している。
【0023】
加えて、より複雑な形状は、より高次の場の強さを高めて、これによりトラップの空間電荷容量を増すことを手助けする。さらに、上述のように、RF電極10及び20の間のギャップはトラップの中心から離れると増加し、そのことが、トラップの端プレート60、70からの場がトラップ内により深く貫通し、(他の点では同様の電場及び配置パラメータに対して)イオン雲をより小さい長さに絞ることを可能にする。好ましくは、軸に沿ったRFは、上記及び図3で記すように、垂直方向における電極30及び40の間のギャップGを増すことによってもまた、バランスされた状態を維持される。必須ではないが典型的に、Gは、電極10及び20の間のギャップにほぼ等しい。典型的には、電極30及び40の湾曲R3、R4は
|R3|>R2; |R4|>R2
であり、それらの湾曲中心はイオンの動きの平面の外側に位置する。電極の湾曲した形状は、通常は、共鳴励起を有するトラップの使用を排除する(トラップが主に、引き続く質量分析器のためのイオンパルスを準備する役割を果たすので、このことは、いずれにしても通常は必要とされない)が、特に、この目的のために非直線性、例えば高次の非直線性を支配する六重極又は八重極の多極構成要素がもたらされるときには、粗い質量選択又は調和関係を有する質量の選択のための使用は、依然として可能である。高次の多極場成分の追加によって、安定領域は単純な四重極の場合よりも複雑になる。これは、より複雑な質量走査機能をもたらし、主にターゲットにされているものとともに、イオンの選択又は非選択を生じさせ得る。イオンの安定性の判定のための解析的な表現が既知である純粋な又はわずかに乱された四重極場とは反対に、質量選択特性又は選択的な質量不安定走査は、イオン安定領域の数値的な決定、ならびに現在の操作慣習からのずれ、又は質量選択操作パラメータの完全な実験的決定さえ、必要とし得る。
【0024】
動作時には、(正の)イオンは開口60又は70を介してトラップに入り(図2)、電極10及び20に印加されたRF電位(位相1)、ならびに30及び30に印加されたRF電位(逆位相、図3)によって発散を防がる。開口60及び70は、典型的には電極10〜40上のDC電位に対してDCオフセットを有している(これは、通常は全てのロッドに対して同じであるが、オプションとして、電極10のDC電位は、トラップ内のイオンフォーカスを改善するために、電極20のものよりも正であることができる)。あるいは、RF電位が、蓄積のために開口電極60及び70に印加されることができる。これは、独立した周波数及び振幅を有することができる。単一の電荷極性の粒子の蓄積のための使用のほかにも、開口電極上のこのRFは、正及び負のイオンの同時蓄積又は閉じ込めのために使用されることができる。正及び負のイオンが同じ空間に閉じ込められるとき、それらは様々な処理のために使用されることができ、これらは、電子転送分離(ETD)を含む電子転送反応、電荷状態低減を含む電荷転送反応、電荷交換反応又は共鳴冷却を含むが、これらに限定されるものではない。これらの方法のいくつかはまた、トラップを通した逆電荷のビームの伝送によっても可能であるが、蓄積は、特に冷却又は運動的に制約された反応が望まれるならば、より長い反応時間を許容する。
【0025】
トラップ内での残存ガスとの衝突は、イオンの運動エネルギーを、それらがその中にトラップされるまで低減する。オプションとして、WO-A-2006/103445に記載されているように、イオンは、軸80に沿って冷却される前にトラップを複数回通過する。
【0026】
開口60、70は、好ましくは、両側及び開口の内側にメタライゼーションを有するプリント回路ボード(PCB)として作製される。これらのボードは、トラップ容積を内包して真空システムへのガス流を低減するために使用されることができる。しかし、そのような囲いは、表面に沿った絶縁破壊の可能性を導入する。後者は、ガス流を実質的に増加することなくメタライズされた領域を絶縁領域から分離する非常に薄い(厚さ1mmのPCBに対しては0.1〜0.2mm)の溝を設けることによって、避けられ得る。ある領域(例えば開口60又は70が電極20又は10に近付く点の近傍)では、電極10又は20は小さなくぼみ(やはり0.1〜0.2mm)を有し得て、これは、ガス流を顕著に増加させること無く、付加的なギャップを提供する。図4に示されているように、セラミックプレートはまた、頂部及び底部からトラップ容積を囲むためにも使用されることができる。
【0027】
トラップに続いて、イオンは付加的に、(上述のように)それらに対する電圧を増すことによって、開口60〜70から離れるように絞られ得る。その後、WO-A-05/124,821に記述されているように電極10〜40上のRF電位がシャントされ、DC電圧がこれらの電極に印加されて引き出し場を生成し、これが、(この場が、図5の等電位によって例示されるように実質的な軸方向成分を有するので)イオンを電極20に向かって加速し且つ同時にそれらをトラップの軸に向かって押し出す。よりよい飛行時間的又は空間的フォーカスが達成されるように、RFのシャントとDC電圧の印加との間には遅れがあり得る。オプションとして、時間的に可変な電圧が、DC電位の代わりに印加され得る。この場は、イオンを、電極20のスロット21(図2及び図4)を介してトラップから出させてレンズアセンブリ50に入れさせて、これがそれらを、好ましくはオービトラップ又は飛行時間型質量分析器である質量分析器内に、オプションの差動ポンピングを通してガイドする。前者に対しては、イオンビームを一点にフォーカスすることが好ましく、飛行時間型分析器に対しては、より大きなサイズの平行ビームを提供することが好ましい。後者は、好ましくは一対の円筒状レンズ91、92を含む図6a、6b、6cに示されるレンズアセンブリ90によって達成される。トラップから質量分析器へのガスのキャリーオーバーは、図6に又はWO-A-02/078046に示されるように、イオンビームの単一の又は二重の偏向を使用することによって、避けられる。レンズアセンブリは好ましくは、絶縁性又は抵抗性のスペーサによって隔てられたプレートのセットである。
【0028】
可能な変形が図7a〜7dに示されている。最初に図7aを参照すると、イオンビーム平面上に、本発明を具現化するイオントラップの全体的な外観が示されている。電極10の半径>電極20の半径である。図7bは、イオンビーム平面上に、本発明の代替的な実施形態に従ったイオントラップの全体的な外観を示す。電極10の半径は、ここでは負である。図7a及び7bの両方において、両電極10及び20は湾曲しているが、内側表面は平行ではなく、それらの表面の間のギャップは、トラップの中心においてよりも電極の端においてのほうが大きい。
【0029】
あるいは、電極が端で広がる代わりに、それらは代わりに小さくすることができる。ここでは、両電極10及び20は湾曲しているが、内側表面は平行ではなく、それらの表面の間のギャップは、トラップの中心においてよりも電極の端においてのほうが小さい。この例は、図7c及び7dに示されている。図7cにおいて、第1のそのような実施形態が示されており、電極20の半径>電極10の半径である。
【0030】
依然として更なる実施形態が図7dに示されており、ここでは、電極20の半径は0よりも小さい。
【0031】
飛行時間型質量分析器とともに使用されるとき、湾曲R1及びR2は、最低の収差、及び/又はイオンビームパラメータの空間電荷に対する最高の独立性を、好ましくはトラップからのイオンの出口で提供するように最適化されることができる。さらに下流では、これらのパラメータを最適化することは、より挑戦的になる。飛行時間型質量分光分析器の入口は、好ましくは、イオンビームをフォーカスされたビームからより平行なビームに変換する修正レンズ(図示されず)の後ろに置かれる。この修正レンズは、トラップの焦点に近くてもよく、又はそのいずれかの側にあってもよい。修正レンズの下流で、最初の焦点でTOF MSに入ることが便利であり得る。TOF MS装置を使用する際に、一つの特に適した配置は、我々が2007年12月21日付けで英国特許庁に出願した「多反射飛行時間型質量分光分析器」という名称の我々の出願に記載した多反射TOF MS装置であり、その内容は参照によってここに援用される。我々の同時係属出願番号GB0620963.9の多反射検出システムは、その又は任意の他のTOF MS装置を通過するイオンの検出に特に好適であり得て、その内容は参照によってここに援用される。
【0032】
オービトラップ質量分析器について、主な基準は、大きな空間電荷に対する厳しい空間的なフォーカス、及びときおりはイオンエネルギーの質量に対する適切な依存性である。再び、オービトラップへの入口が、湾曲した非直線イオントラップを出るイオンビームの焦点にできるだけ近くに位置することが望ましい。
【0033】
正面及び背面電極の他の形状の変形が考えられ得て、例えば、
押し出し電極10が平坦で、引き出し電極20が湾曲している(トラップの外側正面から見たときに凹である)
電極20が平坦で、電極10が湾曲している(トラップの外側正面から見たときに凸である)
押し出し10が平坦で、引き出し20は、外側は双曲線的で内側は湾曲している
電極10が平坦で、電極20が円筒状である
電極10及び20が双曲線的である
両電極が円筒状である。
【0034】
電極10及び20の形状は、特定のタスクのために最適化されるべきである。例えば、オービトラップへの注入のために最適な形状は、最低の飛行時間的収差のための最適形状とは異なることができる。
【0035】
頂部及び底部電極30及び40の特別な形状の変形はまた、以下のように企図され得るが、これらに限定されるものではない:
双曲線状、
円筒状、
対称的、水平方向の分離と同様に垂直方向の電極の分離を維持するように湾曲されている(図3)、
非対称的(通常は射出の間に偏向を助けるために使用される)、
軸方向の場ができるだけ四重極に近くなるような頂部及び底部電極の湾曲(又は例えば特定の高次項を最大化するため)、
RF電位の最小線に沿って効果的な電位勾配が生成される(又は避けられる)ような頂部及び底部電極の湾曲。
【0036】
トラップのフォーカス特性は、電極20の外側形状を考慮することによって最適化されることができる。この電極面はまた、射出されたイオンビームの形状決定にも関与する。
・電極20の外側の形状の変形(垂直方向における最良のフォーカスを提供するように最適化される)
・図4に示されるような、ベースとしての三角形又は円を有する回転の図(トロイド)。スリット21は比較的狭いべきである(好ましくは、その高さよりは厚くない)
・トラップの内側からのガスの流れを最小化するための重量感のある電極内部での長いチャンネル。
【0037】
本発明の特定の実施形態が記述されてきているが、当業者によって様々な改変及び改良が企図され得ることが理解されるべきである。例えば、異なる湾曲半径及び中心の湾曲した電極が、改良されたイオン蓄積及び/又は射出時の空間的なフォーカスを達成するために使用され得るが、同様の効果が他の類似の方法でも達成できることが理解されるべきである。例えば、連続した細長い電極の代わりに、一つ又はそれ以上のトラップ電極が、より短い電極部から代わりに形成されることができる。これらの電極部の各々は、湾曲することも直線であることもできる。いずれでも、湾曲した複合電極が形成され得る。実際のところ、差動電場の電極部への印加によって、それらは全て共直線的になることができ、トラップに沿った電場における適切な変化が、依然として達成されることができる。この方法における電場の生成は、参照によってここに援用されるWO-A-2007/000587として発行された我々の同時係属出願において、他のイオントラップ配置(オービトラップ)に関して記述されている。
【0038】
本発明のトラップは、多くの異なる配置、特に、イオンを第1の方向(通常はトラップの長手方向に一般的に沿っている)で受け取り、それらを直交して射出する2Dタイプのイオントラップとともに最適に配置されたものにおける使用に適している。例えば、湾曲した非直線トラップは、我々の同時係属出願番号PCT/GB2006/001174の配置において特に有用であり得て、これは参照によって全体として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極を備えるイオントラップであって、前記トラップ容積が、少なくとも部分的に湾曲した長軸を有して一般的に細長く、前記長軸に沿った端部側の前記トラップ容積の断面積が、その端部から離れた位置における前記トラップ容積の断面積とは異なる、イオントラップ。
【請求項2】
前記トラップ電極の少なくとも一つが前記長軸に沿って湾曲し、少なくとも2つの対向する電極の間の物理的な間隔が、前記トラップの長手方向に沿って異なる、請求項1に記載のトラップ。
【請求項3】
前記トラップ電極の少なくとも一つが、その長手方向の少なくとも一部に沿って変化する断面積を有し、前記長手方向に沿った距離に対する断面積の変化率が一定ではない、請求項2に記載のトラップ。
【請求項4】
使用時に前記トラップ容積を横切る電場内にイオンをトラップするように、トラップ電圧を前記トラップ電極に供給するように構成された電源をさらに備える、請求項3に記載のトラップ。
【請求項5】
トラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記電源がさらに、前記トラップ容積を横切る前記電場を変更してその中へのイオンのトラップを手助けするように、電圧を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項4に記載のトラップ。
【請求項6】
前記電源がさらに、RF電位を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項5に記載のトラップ。
【請求項7】
前記電源がさらに、可変RF電位を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項6に記載のトラップ。
【請求項8】
少なくともトラップ電極の中に形成されてトラップからのイオンの射出を可能にする出口開口をさらに備える、請求項1〜8のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項9】
前記出口開口とは別個に形成された少なくとも一つのトラップ入口開口をさらに備える、請求項8に記載のトラップ。
【請求項10】
前記出口開口が前記トラップ電極の長さに沿ったほぼ中間に形成され、前記トラップが前記出口開口に対してほぼ対称である、請求項8又は請求項9に記載のトラップ。
【請求項11】
前記電源が、前記イオントラップの湾曲した長軸への垂線から偏向する方向に前記出口開口を通ってイオンを射出するように、射出電圧を前記イオントラップに印加する手段をさらに備えている、請求項4から7のいずれか一つ、請求項4に従属しているときの請求項8、あるいは請求項9又は請求項10に記載のトラップ。
【請求項12】
前記形状及び/又は前記電極に印加される電圧が、射出されたときにイオンを、前記出口開口の下流の焦点に到達させる、請求項11に記載のトラップ。
【請求項13】
少なくとも2つの細長いトラップ電極があり、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有する、請求項12に記載のトラップ。
【請求項14】
R2<|R1|及びR2<fである、請求項13に記載のトラップ。
【請求項15】
|R2|>R1及びR1<fである、請求項13に記載のトラップ。
【請求項16】
4つのトラップ電極があり、前記トラップ電極の形状及び/又はそれに印加される電圧が、前記トラップ容積における一般的に四重極場に非直線性を導入するようなものである、請求項1〜15のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項17】
少なくとも第3及び第4のさらなるトラップ電極をさらに備えており、それらが湾曲半径R3及びR4を有し、|R3|>R2及び|R4|>R2である、請求項13、請求項14、又は請求項15に記載のトラップ。
【請求項18】
少なくとも2つのトラップ電極があり、それらが、それらの端に向かって発散し、前記イオントラップが、その端で、少なくとも前記トラップの長軸に垂直な平面において広がっている、請求項1〜17のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項19】
中央の長軸の周りに配置された少なくとも4つのトラップ電極があり、トラップ電極の対向する2対はそれぞれ両端に向かって発散し、前記イオントラップが、その端で、前記長軸に垂直な複数の平面において広がっている、請求項18に記載のトラップ。
【請求項20】
少なくとも2つのトラップ電極があり、それらが、その端に向かって小さくなり、前記イオントラップが、その端で、前記トラップの長軸に垂直な少なくとも1つの平面において小さくなっている、請求項1から17のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項21】
中央の長軸の周りに配置された少なくとも4つのトラップ電極があり、トラップ電極の対向する2対はそれぞれその端に向かって小さくなり、前記イオントラップが、その端で、各々が前記長軸に垂直な複数の平面において小さくなっている、請求項20に記載のトラップ。
【請求項22】
前記トラップ電極の少なくとも1つが実質的に直線状又は平坦である、請求項1〜21のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項23】
前記トラップの前記長軸に沿った任意の点における前記トラップ電極の間隔が、その長軸に沿った前記電極の長さよりも小さい、請求項1〜22のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項24】
前記トラップ電極の少なくとも1つが複数の電極部として形成されている、請求項1〜23のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのトラップ電極が、前記トラップ電極の中心を形成している中央直線電極部と、前記トラップ電極の端を形成している外側湾曲電極部と、を含む、請求項24に記載のトラップ。
【請求項26】
請求項8に記載のイオントラップと、
前記イオントラップの下流にあって、前記イオントラップの前記出口開口から射出されたイオンを受け取るように構成された静電トラップと、
を備える、質量分光分析器。
【請求項27】
請求項8に記載のイオントラップと、
前記イオントラップの下流にあって、前記イオントラップの前記出口開口から射出されたイオンを受け取るように構成された飛行時間(TOF)型質量分光分析器と、
を備える、質量分光分析器。
【請求項28】
前記トラップ電極が少なくとも2つの湾曲した細長いトラップ電極を備えており、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有しており、半径R1、R2が、収差を最小化し且つ/又はイオンビームパラメータの空間電荷に対する独立性を最大化するように選択されている、請求項27に記載の質量分光分析器。
【請求項29】
前記静電トラップがオービトラップ質量分光分析器である、請求項26に記載の質量分光分析器。
【請求項30】
前記トラップ電極が少なくとも2つの湾曲した細長いトラップ電極を備えており、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有しており、半径R1、R2が、イオンが前記イオントラップから前記オービトラップに到着するときにイオンの空間的及び飛行時間的フォーカスの度合いを最大化するように選択され、且つ/又は、イオン質量に対するイオンエネルギーの所望の依存性を導入するように選択されている、請求項29に記載の質量分光分析器。
【請求項31】
イオントラップであって、
複数の細長いトラップ電極と、
前記トラップからイオンを射出するためのイオン出口開口と、
(a)イオントラップ容積内でイオンをトラップするようにトラップ電圧を前記細長いトラップ電極に供給し、且つ(b)引き続いて、そこにトラップされたイオンを前記トラップの長手方向に平行でも直交でもない方向に前記イオン出口開口から射出させるように、射出電圧を前記トラップに供給する、ように構成された電圧供給手段と、
を備えており、
前記トラップ電極及びそれらの間の前記射出電圧が、前記トラップの長手方向に沿って非直線である電場を生成し、前記射出電圧の印加時に前記トラップの長手方向に沿った異なる位置で、イオンが、前記トラップの下流で前記イオンの空間的なフォーカスを生じさせるように異なる電場電位となる、イオントラップ。
【請求項32】
前記細長い電極の少なくとも2つが湾曲しており、且つ異なる半径及び異なる湾曲中心を有する、請求項31に記載のトラップ。
【請求項33】
前記出口開口が前記複数の細長い電極の1つにある、請求項31又は請求項32に記載のトラップ。
【請求項34】
前記出口開口が、実質的に、前記少なくとも1つの細長い電極の長さに沿った中心点に形成されている、請求項33に記載のトラップ。
【請求項35】
長軸を有するトラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極と、前記トラップ電極にrf電圧を供給する電源と、を備えており、前記トラップ電極の形状及び/又は印加されるrf電圧の大きさが、前記トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成するように選択され、前記電気力の大きさが前記トラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わる、イオントラップ。
【請求項36】
前記長軸が少なくとも部分的に湾曲している、請求項35に記載のイオントラップ。
【請求項37】
前記トラップ電極の少なくとも一つが湾曲している、請求項36に記載のイオントラップ。
【請求項38】
第1及び第2の対向するトラップ電極を備えており、その少なくとも一つが、前記第1及び第2の電極の間の距離が前記トラップの長軸に沿って変化するように湾曲している、請求項37に記載のイオントラップ。
【請求項39】
イオントラップからイオンを射出する方法であって、前記トラップが複数の湾曲した細長いトラップ電極を備えており、前記電極はその長さに沿って形成された出口開口を有しており、前記方法が、
トラップ電圧を前記細長いトラップ電極に、その間にトラップ容積を形成するように印加するステップを包含し、前記トラップ容積は、その端から離れた前記トラップ容積の断面積とは異なる断面積を前記トラップ容積の端の近くに有する、方法。
【請求項40】
前記イオントラップが複数の湾曲した細長いトラップ電極を備えており、その少なくとも2つが異なる湾曲半径及び異なる湾曲中心を有している、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
イオンが前記出口開口の下流の点fに空間的にフォーカスされるように、前記トラップの長軸に平行でもなく直交もしない方向に、前記出口開口を介して前記トラップからイオンを射出するように、前記トラップ電圧の印加に引き続いて射出電圧を前記トラップの前記電極に印加するステップをさらに含む、請求項39又は請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記トラップがトラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記方法が、
前記端キャップ電極にrf電位を印加するステップをさらに含む、請求項39〜41のいずれか一つに記載の方法。
【請求項43】
前記トラップがトラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記方法が、
前記端キャップ電極にdc電位を印加するステップをさらに含む、請求項39、40、41、又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記トラップ容積内でイオンを絞るように、前記印加されたdc電位を可変するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記トラップ容積内の電場に2次より高い項を導入する形状の湾曲したトラップ電極を提供するステップと、前記トラップ容積内のイオンのサブセットをその質量に従って選択するステップと、をさらに含む、請求項39〜44のいずれか一つに記載の方法。
【請求項46】
前記トラップから射出されたイオン、又は断片/誘導体を前記トラップに再導入して戻すステップをさらに含む、請求項412に記載の方法。
【請求項47】
前記再導入するステップが、前記イオン出口開口から空間的に離れたイオン入口開口を介してイオンを前記トラップに再導入して戻すステップを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記トラップから射出されたイオンを飛行時間型分光分析器に捕捉するステップをさらに含む、請求項41、請求項46、又は請求項47に記載の方法。
【請求項49】
収差を最小化するように、及び/又はイオンビームパラメータの空間電荷への独立性を最大化するように、前記トラップ電極の形状及び/又は半径を最適化するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記トラップから射出されたイオンをオービトラップ質量分光分析器に捕捉するステップをさらに含む、請求項41、請求項46、又は請求項47に記載の方法。
【請求項51】
イオンが前記オービトラップに到着するときにイオンの空間的フォーカスの度合いを最大化するように、且つ/又は、イオン質量に対するイオンエネルギーの所望の依存性を導入するように、前記トラップ電極の形状及び/又は半径を最適化するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記トラップ電極の形状及び/又は湾曲半径及び/又は印加されるrf電位を、前記トラップ容積内の電場の3次又はより高次の成分を強調又は抑制するように選択するステップをさらに含む、請求項40〜47のいずれか一つに記載の方法。
【請求項53】
複数の細長いトラップ電極を有するイオントラップのトラップ容積にイオンをトラップする方法であって、前記方法が、
前記トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成し、前記電気力の大きさが前記トラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わるステップを包含する、方法。
【請求項54】
前記トラップ容積内に電場を生成するステップが、rf電圧を前記トラップ電極に供給するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記電場を生成するステップが、前記トラップの長軸が少なくとも部分的に湾曲するように、少なくとも1つの湾曲した電極を設けるステップを含む、請求項52又は請求項53に記載の方法。
【請求項1】
トラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極を備えるイオントラップであって、前記トラップ容積が、少なくとも部分的に湾曲した長軸を有して一般的に細長く、前記長軸に沿った端部側の前記トラップ容積の断面積が、その端部から離れた位置における前記トラップ容積の断面積とは異なる、イオントラップ。
【請求項2】
前記トラップ電極の少なくとも一つが前記長軸に沿って湾曲し、少なくとも2つの対向する電極の間の物理的な間隔が、前記トラップの長手方向に沿って異なる、請求項1に記載のトラップ。
【請求項3】
前記トラップ電極の少なくとも一つが、その長手方向の少なくとも一部に沿って変化する断面積を有し、前記長手方向に沿った距離に対する断面積の変化率が一定ではない、請求項2に記載のトラップ。
【請求項4】
使用時に前記トラップ容積を横切る電場内にイオンをトラップするように、トラップ電圧を前記トラップ電極に供給するように構成された電源をさらに備える、請求項3に記載のトラップ。
【請求項5】
トラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記電源がさらに、前記トラップ容積を横切る前記電場を変更してその中へのイオンのトラップを手助けするように、電圧を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項4に記載のトラップ。
【請求項6】
前記電源がさらに、RF電位を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項5に記載のトラップ。
【請求項7】
前記電源がさらに、可変RF電位を前記端キャップ電極に供給するように構成されている、請求項6に記載のトラップ。
【請求項8】
少なくともトラップ電極の中に形成されてトラップからのイオンの射出を可能にする出口開口をさらに備える、請求項1〜8のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項9】
前記出口開口とは別個に形成された少なくとも一つのトラップ入口開口をさらに備える、請求項8に記載のトラップ。
【請求項10】
前記出口開口が前記トラップ電極の長さに沿ったほぼ中間に形成され、前記トラップが前記出口開口に対してほぼ対称である、請求項8又は請求項9に記載のトラップ。
【請求項11】
前記電源が、前記イオントラップの湾曲した長軸への垂線から偏向する方向に前記出口開口を通ってイオンを射出するように、射出電圧を前記イオントラップに印加する手段をさらに備えている、請求項4から7のいずれか一つ、請求項4に従属しているときの請求項8、あるいは請求項9又は請求項10に記載のトラップ。
【請求項12】
前記形状及び/又は前記電極に印加される電圧が、射出されたときにイオンを、前記出口開口の下流の焦点に到達させる、請求項11に記載のトラップ。
【請求項13】
少なくとも2つの細長いトラップ電極があり、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有する、請求項12に記載のトラップ。
【請求項14】
R2<|R1|及びR2<fである、請求項13に記載のトラップ。
【請求項15】
|R2|>R1及びR1<fである、請求項13に記載のトラップ。
【請求項16】
4つのトラップ電極があり、前記トラップ電極の形状及び/又はそれに印加される電圧が、前記トラップ容積における一般的に四重極場に非直線性を導入するようなものである、請求項1〜15のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項17】
少なくとも第3及び第4のさらなるトラップ電極をさらに備えており、それらが湾曲半径R3及びR4を有し、|R3|>R2及び|R4|>R2である、請求項13、請求項14、又は請求項15に記載のトラップ。
【請求項18】
少なくとも2つのトラップ電極があり、それらが、それらの端に向かって発散し、前記イオントラップが、その端で、少なくとも前記トラップの長軸に垂直な平面において広がっている、請求項1〜17のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項19】
中央の長軸の周りに配置された少なくとも4つのトラップ電極があり、トラップ電極の対向する2対はそれぞれ両端に向かって発散し、前記イオントラップが、その端で、前記長軸に垂直な複数の平面において広がっている、請求項18に記載のトラップ。
【請求項20】
少なくとも2つのトラップ電極があり、それらが、その端に向かって小さくなり、前記イオントラップが、その端で、前記トラップの長軸に垂直な少なくとも1つの平面において小さくなっている、請求項1から17のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項21】
中央の長軸の周りに配置された少なくとも4つのトラップ電極があり、トラップ電極の対向する2対はそれぞれその端に向かって小さくなり、前記イオントラップが、その端で、各々が前記長軸に垂直な複数の平面において小さくなっている、請求項20に記載のトラップ。
【請求項22】
前記トラップ電極の少なくとも1つが実質的に直線状又は平坦である、請求項1〜21のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項23】
前記トラップの前記長軸に沿った任意の点における前記トラップ電極の間隔が、その長軸に沿った前記電極の長さよりも小さい、請求項1〜22のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項24】
前記トラップ電極の少なくとも1つが複数の電極部として形成されている、請求項1〜23のいずれか一つに記載のトラップ。
【請求項25】
前記少なくとも1つのトラップ電極が、前記トラップ電極の中心を形成している中央直線電極部と、前記トラップ電極の端を形成している外側湾曲電極部と、を含む、請求項24に記載のトラップ。
【請求項26】
請求項8に記載のイオントラップと、
前記イオントラップの下流にあって、前記イオントラップの前記出口開口から射出されたイオンを受け取るように構成された静電トラップと、
を備える、質量分光分析器。
【請求項27】
請求項8に記載のイオントラップと、
前記イオントラップの下流にあって、前記イオントラップの前記出口開口から射出されたイオンを受け取るように構成された飛行時間(TOF)型質量分光分析器と、
を備える、質量分光分析器。
【請求項28】
前記トラップ電極が少なくとも2つの湾曲した細長いトラップ電極を備えており、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有しており、半径R1、R2が、収差を最小化し且つ/又はイオンビームパラメータの空間電荷に対する独立性を最大化するように選択されている、請求項27に記載の質量分光分析器。
【請求項29】
前記静電トラップがオービトラップ質量分光分析器である、請求項26に記載の質量分光分析器。
【請求項30】
前記トラップ電極が少なくとも2つの湾曲した細長いトラップ電極を備えており、それらが異なる半径R1、R2(R1≦∞、R2≦∞、及びR1≠R2)及び異なる湾曲中心を有しており、半径R1、R2が、イオンが前記イオントラップから前記オービトラップに到着するときにイオンの空間的及び飛行時間的フォーカスの度合いを最大化するように選択され、且つ/又は、イオン質量に対するイオンエネルギーの所望の依存性を導入するように選択されている、請求項29に記載の質量分光分析器。
【請求項31】
イオントラップであって、
複数の細長いトラップ電極と、
前記トラップからイオンを射出するためのイオン出口開口と、
(a)イオントラップ容積内でイオンをトラップするようにトラップ電圧を前記細長いトラップ電極に供給し、且つ(b)引き続いて、そこにトラップされたイオンを前記トラップの長手方向に平行でも直交でもない方向に前記イオン出口開口から射出させるように、射出電圧を前記トラップに供給する、ように構成された電圧供給手段と、
を備えており、
前記トラップ電極及びそれらの間の前記射出電圧が、前記トラップの長手方向に沿って非直線である電場を生成し、前記射出電圧の印加時に前記トラップの長手方向に沿った異なる位置で、イオンが、前記トラップの下流で前記イオンの空間的なフォーカスを生じさせるように異なる電場電位となる、イオントラップ。
【請求項32】
前記細長い電極の少なくとも2つが湾曲しており、且つ異なる半径及び異なる湾曲中心を有する、請求項31に記載のトラップ。
【請求項33】
前記出口開口が前記複数の細長い電極の1つにある、請求項31又は請求項32に記載のトラップ。
【請求項34】
前記出口開口が、実質的に、前記少なくとも1つの細長い電極の長さに沿った中心点に形成されている、請求項33に記載のトラップ。
【請求項35】
長軸を有するトラップ容積を間に形成するように配置された複数の細長いトラップ電極と、前記トラップ電極にrf電圧を供給する電源と、を備えており、前記トラップ電極の形状及び/又は印加されるrf電圧の大きさが、前記トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成するように選択され、前記電気力の大きさが前記トラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わる、イオントラップ。
【請求項36】
前記長軸が少なくとも部分的に湾曲している、請求項35に記載のイオントラップ。
【請求項37】
前記トラップ電極の少なくとも一つが湾曲している、請求項36に記載のイオントラップ。
【請求項38】
第1及び第2の対向するトラップ電極を備えており、その少なくとも一つが、前記第1及び第2の電極の間の距離が前記トラップの長軸に沿って変化するように湾曲している、請求項37に記載のイオントラップ。
【請求項39】
イオントラップからイオンを射出する方法であって、前記トラップが複数の湾曲した細長いトラップ電極を備えており、前記電極はその長さに沿って形成された出口開口を有しており、前記方法が、
トラップ電圧を前記細長いトラップ電極に、その間にトラップ容積を形成するように印加するステップを包含し、前記トラップ容積は、その端から離れた前記トラップ容積の断面積とは異なる断面積を前記トラップ容積の端の近くに有する、方法。
【請求項40】
前記イオントラップが複数の湾曲した細長いトラップ電極を備えており、その少なくとも2つが異なる湾曲半径及び異なる湾曲中心を有している、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
イオンが前記出口開口の下流の点fに空間的にフォーカスされるように、前記トラップの長軸に平行でもなく直交もしない方向に、前記出口開口を介して前記トラップからイオンを射出するように、前記トラップ電圧の印加に引き続いて射出電圧を前記トラップの前記電極に印加するステップをさらに含む、請求項39又は請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記トラップがトラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記方法が、
前記端キャップ電極にrf電位を印加するステップをさらに含む、請求項39〜41のいずれか一つに記載の方法。
【請求項43】
前記トラップがトラップ端キャップ電極をさらに備えており、前記方法が、
前記端キャップ電極にdc電位を印加するステップをさらに含む、請求項39、40、41、又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記トラップ容積内でイオンを絞るように、前記印加されたdc電位を可変するステップをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記トラップ容積内の電場に2次より高い項を導入する形状の湾曲したトラップ電極を提供するステップと、前記トラップ容積内のイオンのサブセットをその質量に従って選択するステップと、をさらに含む、請求項39〜44のいずれか一つに記載の方法。
【請求項46】
前記トラップから射出されたイオン、又は断片/誘導体を前記トラップに再導入して戻すステップをさらに含む、請求項412に記載の方法。
【請求項47】
前記再導入するステップが、前記イオン出口開口から空間的に離れたイオン入口開口を介してイオンを前記トラップに再導入して戻すステップを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記トラップから射出されたイオンを飛行時間型分光分析器に捕捉するステップをさらに含む、請求項41、請求項46、又は請求項47に記載の方法。
【請求項49】
収差を最小化するように、及び/又はイオンビームパラメータの空間電荷への独立性を最大化するように、前記トラップ電極の形状及び/又は半径を最適化するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記トラップから射出されたイオンをオービトラップ質量分光分析器に捕捉するステップをさらに含む、請求項41、請求項46、又は請求項47に記載の方法。
【請求項51】
イオンが前記オービトラップに到着するときにイオンの空間的フォーカスの度合いを最大化するように、且つ/又は、イオン質量に対するイオンエネルギーの所望の依存性を導入するように、前記トラップ電極の形状及び/又は半径を最適化するステップをさらに含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記トラップ電極の形状及び/又は湾曲半径及び/又は印加されるrf電位を、前記トラップ容積内の電場の3次又はより高次の成分を強調又は抑制するように選択するステップをさらに含む、請求項40〜47のいずれか一つに記載の方法。
【請求項53】
複数の細長いトラップ電極を有するイオントラップのトラップ容積にイオンをトラップする方法であって、前記方法が、
前記トラップ容積内に、その中のイオンに電気力を付与する電場を生成し、前記電気力の大きさが前記トラップの長軸に平行に引かれた任意の線の少なくとも一部に沿って距離と共に変わるステップを包含する、方法。
【請求項54】
前記トラップ容積内に電場を生成するステップが、rf電圧を前記トラップ電極に供給するステップを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記電場を生成するステップが、前記トラップの長軸が少なくとも部分的に湾曲するように、少なくとも1つの湾曲した電極を設けるステップを含む、請求項52又は請求項53に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7d】
【図7c】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図7a】
【図7b】
【図7d】
【図7c】
【公表番号】特表2010−515213(P2010−515213A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−543545(P2009−543545)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004434
【国際公開番号】WO2008/081334
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004434
【国際公開番号】WO2008/081334
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(508306565)サーモ フィッシャー サイエンティフィック (ブレーメン) ゲーエムベーハー (20)
【Fターム(参考)】
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