説明

イオン付着質量分析方法

【課題】 少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスのガス分子を正確に区別して定性・定量分析できるイオン付着質量分析方法を提供する。
【解決手段】 このイオン付着質量分析方法は、イオン放出体18により発生させたイオンを被測定ガスの分子に付着させて付着イオンを生成し、Qポール質量分析器30で付着イオンの質量を計測し、被測定ガスの定性・定量を行う方法であり、さらに、少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスの分子に、被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差を生じさせる所定のイオンを付着させるステップと、被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差に基づいて被測定ガスの同質量・異成分を区別して計測するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はイオン付着質量分析方法に関し、特に、少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスをそれぞれ分析し得るイオン付着質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イオン付着質量分析装置(Ion Attachment Mass Spectrometer)では、被測定ガスの分子をイオン化するとき、当該分子にイオンを付着させる。被測定ガスの分子にイオンが付着するとき、イオンはガス分子の電荷の偏りのある場所に非常に穏やかに付着(会合)し、解離の発生はほとんどない。このためイオン付着質量分析装置は、被測定ガスの分子をイオン化し、解離を発生させずに当該被測定ガスを質量分析することができるという利点を有している。このイオンとして、LiやNaなどのイオンを使うことが多いが、HやFなども使うことができる
【0003】
イオン付着質量分析装置の従来技術として特許文献1に開示されたイオン付着質量分析方法および装置を挙げる。このイオン付着質量分析方法等では、低濃度の被測定ガス(被検出ガス)を計測しようとする場合に生じていた干渉ピークの問題を解決する。すなわち、予め複数種類の第三体ガスまたは複数種類のイオン放出体等を用意しておき、かつ干渉ピークの発生をモニタし、干渉ピークが発生した場合には適切な第三体ガスまたはイオン放出体を選択して使用し、干渉ピークの発生を排除できるようにしている。
【特許文献1】特開2002−203509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イオン付着質量分析法は被測定ガスのガス分子を解離させずに分子ピークとして検出するため、成分分離なしに混合成分を直接に測定できるという利点を有する。しかし、イオン付着質量分析法では、質量数によってのみ成分を区別するため、同じ質量数でかつ異なる成分(同質量・異成分)が被測定ガスの中に共存している場合には、同じ質量数の分子ピークになり、これらを区別することができない。同質量・異成分として、構成元素(化学式)が異なるものと、構成元素が同じであるが配置(構造式)が異なるものの2種類がある。後者は異性体と呼ばれている。同質量・異成分の被測定ガスのガス分子を区別して測定することが、イオン付着質量分析法では重要な課題になっている。
【0005】
本発明の目的は、上記の課題に鑑み、少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスのガス分子を正確に区別して定性・定量分析することができるイオン付着質量分析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るイオン付着質量分析方法は、本発明者らが初めて見出した現象に基づくものであり、上記の目的を達成するために、次のように構成される。
【0007】
第1のイオン付着質量分析方法(請求項1に対応)は、エミッタにより発生させたイオンを被測定ガスの分子に付着させて付着イオンを生成し、質量分析計で付着イオンの質量を計測し、被測定ガスの定性・定量を行う方法であり、さらに、少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスの分子に、被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差を生じさせる所定のイオンを付着させるステップと、被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差に基づいて被測定ガスの同質量・異成分を区別して計測するステップと、を有する。
【0008】
第2のイオン付着質量分析方法(請求項2に対応)は、上記の第1の方法において、好ましくは、イオン付着特性の差は、被測定ガスの分子に所定のイオンが付着した時に、一方の被測定ガスの分子に係る付着イオンでは解離が起き、他方の被測定ガスの分子に係る付着イオンでは解離が起きないという差である。
【0009】
第3のイオン付着質量分析方法(請求項3に対応)は、上記の方法において、好ましくは、2種類の被測定ガスは1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンであり、所定のイオンはLi である。
【0010】
第4のイオン付着質量分析方法(請求項4に対応)は、上記の方法において、好ましくは、2種類の被測定ガスは非アルカンとアルカンであり、所定のイオンはHである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、イオン付着質量分析方法において、少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスを含有する混合ガスを分析するとき、被測定ガスの分子にイオンを付着させるときに起きる解離の発生挙動等に関するイオン付着特性の差を利用するようにしたため、少なくとも2種類の被測定ガスの各々のガス分子を正確に区別することができ、同質量・異成分であっても区別して正確に定性・定量の分析を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の好適な実施形態(実施例)を添付図面に基づいて説明する。
【0013】
図1〜図3を参照して本発明の第1実施形態に係るイオン付着質量分析方法を説明する。図1はイオン付着質量分析装置の構成を示し、図2は2種類の被測定ガスの各々と2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示し、図3は混合された2種類の被測定ガスと2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示している。
【0014】
図1において、イオン化室11と差動排気室12と質量分析室13がカスケードに連結され、装置全体として装置容器10が形成されている。差動排気室12と質量分析室13のそれぞれに真空ポンプ14,15が設けられている。イオン化室11と差動排気室12の間に第1アパーチャ16、差動排気室12と質量分析室13の間に第2アパーチャ17が配置されている。
【0015】
イオン化室11には、1つのイオン放出体(エミッタ)18とリペラ19を備えた放出機構20が設けられる。放出機構20に放出機構制御電源21が付設されている。イオン化室11には、試料ガス導入機構22とが接続される。試料ガス導入機構22によって試料である被測定ガスが導入される。被測定ガスは0.1Pa以下である。試料ガス導入機構22は試料ガスボンベ24とバルブ25を備える。この実施形態の場合には、被測定ガスは、同質量・異成分である2種類の被測定ガス(1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタン)を含んでいる。イオン放出体18の近傍の下流側領域にイオン付着領域が形成される。
【0016】
イオン化室11の下流側に位置する作動排気室12には集束レンズ28が配置される。
【0017】
図1中には、イオン放出体18から放出されたイオンの流れ、および当該イオンが付着した被検出ガスの分子(付着イオン)の流れの軌跡29が示されている。
【0018】
また質量分析室13には例えばQポール型質量分析器30、イオン収集器31が設けられている。
【0019】
イオン収集器31の出力部はデータ処理器50が接続されている。このデータ処理器50は、イオン収集器31から与えられる検出信号に基づいて測定データを処理する機能を有している。
【0020】
放出機構20のイオン放出体18はLi酸化物のイオン放出体である。装置容器10の軸線上に設置されたイオン放出体18は、放出機構制御電源21に基づく給電によって所要温度に加熱されると、Liの正電荷のイオン(プライマリ・イオン)が空間に放出される。このイオンは電界とガスの流れによって第1アパーチャ16の開口16aの方に進む。その途中のイオン付着領域で、イオンは、試料ガス導入機構22によりイオン化室11内に導入されている2種類の被検出ガスの各分子に付着する。こうしてイオンが付着してイオン化した被検出ガスの分子すなわち付着イオンが生成される。生成された付着イオンは、軌跡29に示されるごとく、質量分析室13のQポール型質量分析器30に輸送され、計測が行われる。
【0021】
さらに上記のイオン付着質量分析装置では、第三体ガス導入機構51によって例えば100PaのNの第三体ガスをイオン化室11のイオン付着領域に導入している。第三体ガス導入機構51は第三体ガスボンベ52とバルブ53から構成される。第三体ガスは、生成された付着イオンにおいて結合エネルギの小さいイオンが再脱離するのを防止する。
【0022】
イオン化室11と差動排気室12は真空ポンプ14によって、また質量分析室13は真空ポンプ15によってそれぞれ所要の圧力状態に保持される。
【0023】
次に本実施形態に係るイオン付着質量分析方法を説明する。以下の説明では、対比説明のため、本実施形態のLi酸化物であるイオン放出体18に対して、当該イオン放出体18がNa酸化物である場合を想定する。Na酸化物であるイオン放出体からは、所定条件下でNaの正電荷のイオン(プライマリ・イオン)が放出される。
【0024】
なおイオン化室11に、Li酸化物であるイオン放出体とNa酸化物であるイオン放出体の2つのイオン放出体を配置して、交互にイオン発生状態を作り、イオン付着を行うようにすることも可能である。
【0025】
試料ガス導入機構22からイオン化室11のイオン付着領域に導入される2種類の被測定ガスは、同質量・異成分である1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンである。1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンは、土壌汚染対策法(環境省、平成14年施行)の対象物質になっており、迅速かつ正確な測定が要望されている物質である。
【0026】
図2は、第1実施形態に係るイオン付着質量分析方法を予備的に説明するための解説図である。図2は上段(A)と下段(B)に分けて示されている。上段(A)は1.1.2トリクロロエタンを被測定ガスとした場合の解説図であり、下段(B)は1.1.1トリクロロエタンを被測定ガスとした場合の解説図である。上段には1.1.2トリクロロエタンの分子式が示され、下段には1.1.1トリクロロエタンの分子式が示されている。
【0027】
図2によれば、前述したイオン付着質量分析装置において、被測定ガスとして1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンのうちのいずれか1つを使用し、かつイオン放出体から放出されるイオンとしてLiとNaのうちのいずれか1つを使用した場合に、Qポール型質量分析器30の計測で得られるマススペクトル上での分子ピークの位置を示している。
【0028】
1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンのいずれの分子も2つのCを持つ直鎖のエタンであり、そのうち3つのHがClに置き換えられている。しかし、2つの分子では、1.1.2トリクロロエタンではClが2つのCに結合しているのに対して、1.1.1トリクロロエタンではClは1つのCのみに結合している点が相違している。換言すれば、1.1.1トリクロロエタンでは質量の大きなClが片方に集中しており、バランスの悪い分子構造となっている。そのため、1.1.2トリクロロエタンではLiとNaのいずれでも解離なしで分子ピークを検出する(状態ST1,ST2)のに対して、1.1.1トリクロロエタンではイオンNaの場合のみに分子ピークが検出され(状態ST3)、イオンLiの場合では解離したもののピーク(フラグメントピーク)が検出される(状態ST4)。解離した分子のピークは、1.1ジクロロエチレンであり、1.1.1トリクロロエタンからHとClが抜けたものとなっている。
【0029】
1.1.1トリクロロエタンに関してイオンLiのみで解離が発生するのは、同じ分子に対しては分子直径の小さいLiの方がNaよりも付着エネルギが大きくなるからである。
【0030】
上記のごとく、イオン付着質量分析方法によれば、同質量・異成分の被測定ガスの分子においてイオン付着時での解離の発生挙動に差がある。すなわち被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差に基づいて被測定ガスの同質量・異成分を区別することができる。
【0031】
図3は、第1実施形態に係るイオン付着質量分析方法を説明する解説図である。被測定ガスは、試料ガス導入機構22から導入される同質量・異成分の2種類の1.1.2トリクロロエタンと1.1.1トリクロロエタンを含む混合ガスである。この混合ガスに対してイオン放出体(エミッタ)としてイオンLiを用いた場合とイオンNaを用いた場合の各例を示している。
【0032】
同質量・異成分の2種類の被測定ガス(1.1.2トリクロロエタンと1.1.1トリクロロエタン)を含有する混合ガス61が導入される場合において、イオンNaを用いる場合には同じ分子ピークの位置(質量数が同じ)になって重なり、区別することができない(状態ST5)。これに対してイオンLiを用いる場合には、2種類の被測定ガスの分子の各々が質量数が異なる分子ピーク(状態ST6,ST7)となり、区別して定性・定量の分析を行うことができる。
【0033】
以上のようにして、同質量・異成分の少なくとも2種類の被測定ガス(1.1.2トリクロロエタンと1.1.1トリクロロエタン)のイオン付着特性の差、すなわち解離発生挙動の差によって区別しそれぞれを計測することができる。
【0034】
図1に示したイオン付着質量分析装置の構成では、イオン放出体18としてLi酸化物のイオン放出体を使用しているため、1.1.2トリクロロエタンと1.1.1トリクロロエタンを区別してそれぞれを定性・定量分析することができる。
【0035】
なお試料ガス導入機構22から導入される被測定ガスに上記の2種類のガスしか含まれていないことが予め分かっている場合には、Liのみのイオン放出体18に基づく測定であっても問題はない。
【0036】
しかしながら、実際の装置による計測では、上記の2種類のガスを含めてその他にどのような成分が含まれているか否か不明であるのが普通である。そのため、実際の計測では、図1に示したイオン付着質量分析装置において、Liを放出する上記のイオン放出体18と、Naを放出するイオン放出体とを用意し、両方のイオンに関する計測データを作り、両データを比較し、両成分が含まれていることを確認してから、Liのデータから両成分を定量計測することが好ましい。
【0037】
次に、図4と図5を参照して本発明の第2実施形態に係るイオン付着質量分析方法を説明する。図4は図2に対応する図であり、図5は図3に対応する図である。
【0038】
第2実施形態に係るイオン付着質量分析方法が実施される装置構成は、基本的な構成部分は図1に示した装置構成と同じである。装置構成の上で相違する点は、第1に、使用されるイオン放出体が、Liを放出するイオン放出体であるか、またはHを放出するイオン放出体である点、第2に、試料ガス導入機構22から導入される被測定ガスが非アルカン(非C2n+2)とアルカン(C2n+2)を含む混合ガスである点である。イオン放出体としては、Liを放出するイオン放出体の代わりにNaを放出するイオン放出体を用いることもできる。
【0039】
イオン付着領域に導入される被測定ガスは、質量数が同じである非アルカン(非C2n+2)とアルカン(C2n+2)が含有される混合ガスである。なお「アルカン」とは化学式がC2n+2で表示される直鎖の炭化水素である。アルカンは自動車の排気ガスなどとして被測定ガスとしては一般的なものの1つである。
【0040】
図4は、第2実施形態に係るイオン付着質量分析方法を予備的に説明するための解説図である。図4は上段(A)と下段(B)に分けて示されている。上段(A)は非アルカン(非C2n+2)を被測定ガスとした場合の解説図であり、下段(B)はアルカン(C2n+2)を被測定ガスとした場合の解説図である。上段には非アルカンの分子式が示され、下段にはアルカンの分子式が示されている。
【0041】
図4によれば、前述したイオン付着質量分析装置において、被測定ガスとして非アルカンとアルカンのうちのいずれか1つを使用し、かつイオン放出体から放出されるイオンとしてLiとHのうちのいずれか1つを使用した場合に、Qポール型質量分析器30の計測で得られるマススペクトル上での分子ピークの位置を示している。
【0042】
イオンがH(プロトン)である場合には、イオンのLiやNaに比べて付着エネルギが数倍大きいこと、付着の際に電子の授受があることなどによって解離が発生しやすい。さらにイオン付着の際の挙動として、非アルカンの場合には解離なしにHが付着した分子イオンが発生するのに対して、アルカンの場合には解離が発生し、Hの引き抜かれた分子イオンが発生することが知られている。そのため、非アルカンではLiとHのいずれもイオンが付着した分子ピークが検出される(状態ST11,ST12)。これに対して、アルカンでは、LiによってH付着の分子ピークが検出され(状態ST13)、HによってHの引き抜かれた分子ピークが検出される(状態ST14)。
【0043】
このようなHでは、非アルカンとアルカンで解離によって検出されるイオンの形が異なり、同じ質量数を持っていても分子ピークの出現する位置が異なる。
【0044】
上記のごとく、イオン付着質量分析方法によれば、同質量・異成分の被測定ガスの分子においてイオン付着時での解離の発生挙動に差がある。すなわち被測定ガスの分子の各々が有するイオン付着特性の差に基づいて被測定ガスの同質量・異成分を区別することができる。
【0045】
図5は、第2実施形態に係るイオン付着質量分析方法を説明する解説図である。被測定ガスは、試料ガス導入機構22から導入される同質量・異成分の2種類の非アルカンとアルカンを含む混合ガスである。この混合ガスに対してイオン放出体18としてイオンLiを用いた場合とイオンH(プロトン)を用いた場合の各例を示している。
【0046】
同質量・異成分の2種類の被測定ガス(非アルカンとアルカン)を含有する混合ガス71が導入される場合において、イオンLiを用いる場合には同じ分子ピークの位置(質量数が同じ)になって重なり、区別することができない(状態ST15)。これに対してイオンHを用いる場合には、2種類の被測定ガスの分子の各々が異なる分子ピーク(質量数が異なる)となり(状態ST16)、区別して定性・定量の分析を行うことができる。
【0047】
以上のようにして、同質量・異成分の少なくとも2種類の被測定ガス(非アルカンとアルカン)のイオン付着特性の差、すなわち解離の発生挙動の差によって区別して、それぞれを計測することができる。
【0048】
図1に示したイオン付着質量分析装置の構成では、イオン放出体18としてHを放出するイオン放出体を使用しているため、非アルカン(非C2n+2)とアルカン(C2n+2)を区別してそれぞれを定性・定量分析することができる。
【0049】
前述の各実施形態の説明では同質量・異成分の被測定ガスの種類は2種類であったが、3種類以上の被測定ガスの場合にも本発明の考え方を適用することができるのは勿論である。
【0050】
上記の各実施形態で説明された内容については本発明が理解・実施できる程度に概略的に示したものにすぎず、また数値等については例示にすぎない。従って本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示される技術的思想の範囲を逸脱しない限り様々な形態に変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、イオン付着質量分析方法において少なくとも2種類の同質量・異成分の被測定ガスを含む混合ガスを定性・定量分析するのに利用される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係るイオン付着質量分析方法が実施されるイオン付着質量分析装置の概略構成を示す構成図である。
【図2】本発明に係るイオン付着質量分析方法の第1実施形態を説明するための2種類の被測定ガスの各々と2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示す解説図である。
【図3】本発明に係るイオン付着質量分析方法の第1実施形態を説明するための2種類の被測定ガスを含む混合ガスと2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示す解説図である。
【図4】本発明に係るイオン付着質量分析方法の第2実施形態を説明するための2種類の被測定ガスの各々と2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示す解説図である。
【図5】本発明に係るイオン付着質量分析方法の第2実施形態を説明するための2種類の被測定ガスを含む混合ガスと2種類のイオンとマススペクトルとの関係を示す解説図である。
【符号の説明】
【0053】
11 イオン化室
12 差動排気室
13 質量分析室
18 イオン放出体(エミッタ)
22 試料ガス導入機構
30 Qポール型質量分析器
31 イオン収集器
51 第三体ガス導入機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エミッタにより発生させたイオンを被測定ガスの分子に付着させて付着イオンを生成し、質量分析計で前記付着イオンの質量を計測し、前記被測定ガスの定性・定量を行うイオン付着質量分析方法であり、
少なくとも2種類の同質量・異成分の前記被測定ガスの分子に、前記被測定ガスの前記分子の各々が有するイオン付着特性の差を生じさせる所定のイオンを付着させるステップと、
前記被測定ガスの前記分子の各々が有する前記イオン付着特性の差に基づいて前記被測定ガスの同質量・異成分を区別して計測するステップと、
を有することを特徴するイオン質量分析方法。
【請求項2】
前記イオン付着特性の差は、前記被測定ガスの前記分子に前記所定のイオンが付着した時に、一方の前記被測定ガスの前記分子に係る付着イオンでは解離が起き、他方の前記被測定ガスの前記分子に係る付着イオンでは解離が起きないという差であることを特徴とする請求項1記載のイオン質量分析方法。
【請求項3】
2種類の前記被測定ガスは1.1.1トリクロロエタンと1.1.2トリクロロエタンであり、前記所定のイオンはLi であることを特徴とする請求項1または2記載のイオン質量分析方法。
【請求項4】
2種類の前記被測定ガスは非アルカンとアルカンであり、前記所定のイオンはH であることを特徴とする請求項1または2記載のイオン質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−322365(P2007−322365A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156021(P2006−156021)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(503421139)キヤノンアネルバテクニクス株式会社 (26)
【Fターム(参考)】