説明

イオン伝導性架橋コポリマー

本発明は、イオン伝導性架橋コポリマーを提供する。該コポリマーは、燃料電池及び電子装置、電源及び乗り物における該燃料電池の用途において有用な膜電極アセンブリー(MEA)、プロトン交換膜(PEM)及び触媒被覆プロトン交換膜(CCM)を製造するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、燃料電池に使用されるポリマー電解質膜の製造において有用なイオン伝導性ポリマーに関する。
【0002】
関連出願のクロス・リファレンス
この出願は、米国の仮出願第60/686,757号(出願日:2005年6月1日)に基づく優先権を主張する出願であり、該仮出願の明細書の記載内容も本願明細書の一部を成す。
【背景技術】
【0003】
燃料電池は、主としてその非汚染特性に起因して、携帯用電子装置、電気自動車およびその他の用途に対する前途有望な電源として開発されている。種々の燃料電池系のうちで、ポリマー電解質膜に基づく燃料電池、例えば、直接メタノール燃料電池(DMFC;direct methanol fuel cell)及び水素燃料電池は多大の注目を集めているが、これは該燃料電池の高い出力密度と高いエネルギー変換効率に基づくものである。ポリマー電解質膜に基づく燃料電池の「核心部」は、所謂「膜電極アセンブリー」(MEA;membrane-electrode assembly)であり、該アセンブリーは、プロトン交換膜(PEM;proton exchange membrane)、PEMの対置表面上に配設されて触媒被覆膜(CCM;catalyst coated membrane)を形成する触媒、および触媒層と電気的に接触するように配設される一対の電極(即ち、アノードとカソード)を具備する。
【0004】
DMFC用プロトン伝導性膜は既知であり、この種の膜としては「ナフィオン(Nafion)」(登録商標)[E.I.デュポン・デ・ネムール・アンド・カンパニー社製]およびドウ・ケミカルズ社から市販されている類似製品が例示される。しかしながら、これらのペルフルオロ化炭化水素スルホネートアイオノマー製品は、高い温度での燃料電池に使用する場合には重大な制限がある。ナフィオンは、燃料電池の作動温度が80℃を越えると伝導性を失う。さらに、ナフィオンは非常に高いメタノールのクロスオーバー速度(crossover rate)を示し、このためDMFCにおける適用が妨げられる。
【0005】
バラード・パワー・システム社へ譲渡された米国特許第5773480号明細書には、α,β,β−トリフルオロスチレンを原料とする部分的にフッ素化されたプロトン伝導性膜が記載されている。この膜の1つの欠点は、α,β,β−トリフルオロスチレンモノマーの複雑な合成法に起因して膜の製造コストが高くなるだけでなく、ポリ(α,β,β−トリフルオロスチレン)のスルホン化能が低いことである。この膜の別の欠点は、非常に脆いために、支持マトリックス中へ組み込まなければならないことである。
【0006】
ケルレスらによる米国特許第6300381号および同第6194474号各明細書には、プロトン伝導性膜用の酸−塩基二成分ポリマーブレンド系が記載されている。この場合、スルホン化ポリ(エーテルスルホン)はポリ(エーテルスルホン)の後スルホン化によって調製される。
【0007】
M.ウエダは、スルホン化モノマーを使用してスルホン化ポリ(エーテルスルホンポリマー)を調製する方法を開示している[ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、第31巻(1993年)、第853頁]。
【0008】
マクグラスらは、この方法を使用してスルホン化ポリスルホンポリマーを調製している(米国特許出願2002/0091225A1)。
【0009】
イオン伝導性ブロックコポリマーはPCT/US2003/015351に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
燃料電池の作動に関して良好な膜の必要性に対しては、該膜の種々の特性のバランスが要求される。このような特性には、プロトン伝導率、耐燃料油性、特に高温で使用されるときの化学的安定性と燃料のクロスオーバー、DMFCの迅速な起動、及び耐久性が含まれる。さらに、該膜に関しては、燃料の作動温度範囲にわたって寸法安定性が維持されることが重要である。該膜の著しい膨潤は燃料のクロスオーバーを増大させるため、電池性能の低下をもたらす。膜の寸法の変化は、触媒を含む膜電極アセンブリー(MEA)の結合部に応力をもたらす。このため、膜の過度の膨潤後には、触媒及び/又は電極からの膜の剥離がもたらされる場合が多い。従って、膜の寸法安定性を広い温度範囲にわたって維持することによって、膜の膨潤性を最小限度に抑制することが要請されており、本発明はこのような要請に応えるためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、イオン伝導性コポリマーの架橋に関する。この架橋は、好ましくは、イオン伝導性コポリマーを含有するプロトン交換膜(PEM)の形成時におこなわせる。
【0012】
イオン伝導性コポリマーの合成時において、1種又は複数種の架橋性モノマーを存在させる。このような架橋性モノマーは、コポリマー中へランダムに組み入れてもよく、あるいは、コポリマー中に存在させてもよい1又は複数のブロック又はオリゴマー内へ限定してもよい。例えば、イオン伝導性コポリマーがイオン性オリゴマーと非イオン性オリゴマーを含有する場合、架橋性モノマーは、該コポリマーの合成中において、一方又は両方のオリゴマー中へ組み込むことができる。その後、該オリゴマーはイオン伝導性コポリマーを調製するために使用することができる。
【0013】
架橋性モノマーを含有するイオン伝導性コポリマーは、PEMを製造するために使用される。イオン伝導性コポリマーを注型して膜を調製した後、使用した架橋剤に応じて、該膜を放射線の照射処理又は熱処理に付すことによって、イオン伝導性架橋膜が得られる。
【0014】
架橋可能なPEMは、燃料電池、例えば、水素燃料電池及び直接メタノール電池等において有用な膜電極アセンブリー(MEA)及び触媒を被覆したプロトン交換膜(CCM)を製造するために使用することができる。この種の燃料電池は携帯型及び固定型の電子装置、補助出力ユニット(APU)を含む電源及び輸送機関(例えば、自動車、航空機、船舶)用移動電源、並びにこれらに関連するAPUにおいて利用することができる。
【0015】
本発明の1つの観点によれば、本発明によるイオン伝導性コポリマーは、ポリマー主鎖中に分布される1種又は複数種のイオン伝導性オリゴマー(該オリゴマーはしばしばイオン伝導性セグメント又はイオン伝導性ブロックとよばれる)を含む。この場合、該ポリマー主鎖は次の成分(1)〜(3)から選択される少なくとも1種、2種又は3種(好ましくは少なくとも2種)の成分を含む:(1)1種又は複数種のイオン伝導性モノマー、(2)1種又は複数種の非イオン性モノマー、及び(3)1種又は複数種の非イオン性オリゴマー。これらのイオン伝導性オリゴマー、イオン伝導性モノマー、非イオン性モノマー、及び/又は非イオン性オリゴマーは、酸素原子及び/又は硫黄原子を介して、相互に共有結合される。
【0016】
イオン伝導性コポリマーは、燃料電池、例えば、水素燃料電池及び直接メタノール電池等において有用な膜電極アセンブリー(MEA)、ポリマー電解質膜(PEM)、及び触媒が被覆されたPEM(CCM)を製造するために使用することができる。この種の燃料電池は携帯型及び固定型の電子装置、補助出力ユニット(APU)を含む電源及び輸送機関(例えば、自動車、航空機、船舶)用移動電源、並びにこれらに関連するAPUにおいて利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明によるイオン伝導性コポリマーは、ポリマー主鎖中の分布される1種又は複数種のイオン伝導性オリゴマーを含有し、該ポリマー主鎖は次の成分(1)〜(3)から選択される少なくとも1種、2種又は3種(好ましくは少なくとも2種)の成分を含む:(1)1種又は複数種のイオン伝導性モノマー、(2)1種又は複数種の非イオン性モノマー及び(3)1種又は複数種の非イオン性オリゴマー。これらのイオン伝導性オリゴマー、イオン伝導性モノマー、非イオン性モノマー及び非イオン性オリゴマーの少なくとも1種は架橋性モノマーを含むか、又は架橋性モノマーである。イオン伝導性オリゴマー、イオン伝導性モノマー、非イオン性モノマー及び/又は非イオン性オリゴマーは酸素原子及び/又は硫黄原子を介して相互に共有結合する。
【0018】
好ましい実施態様においては、イオン伝導性オリゴマーは第1コモノマーと第2コモノマーを含有する。第1コモノマーは1又は複数のイオン伝導性基を含む。第1コモノマーと第2コモノマーの少なくとも一方は2個の脱離基を有し、他方のコモノマーは2個の置換基を有する。1つの実施態様においては、第1コモノマーと第2コモノマーの一方を他方に比べてモル過剰量で存在させて両者を反応させることによって形成されるオリゴマーは、イオン伝導性のオリゴマーの各末端に脱離基又は置換基を有する。
【0019】
このイオン伝導性オリゴマー前駆体は、次の成分(1)〜(3)から選択される少なくとも1種、2種又は3種の成分と組み合わされる:(1)1種又は複数種のイオン伝導性モノマー前駆体、(2)1種又は複数種の非イオン性モノマー前駆体及び(3)1種又は複数種の非イオン性オリゴマー前駆体。イオン伝導性モノマー、非イオン性モノマー及び/又は非イオン性オリゴマーの各々の前駆体は2つの脱離基又は2つの置換基を有する。各々の前駆体に対する脱離基又は置換基の選択は、これらの前駆体が結合して酸素結合及び/又は硫黄結合が形成されるようにおこなわれる。
【0020】
「脱離基(leaving group)」という用語は、一般的には別のモノマー中に存在する求核性部分によって置換されることができる官能性部分を意味する。脱離基は当該分野においては周知であり、ハロゲン化物(塩化物、フッ化物、ヨウ化物、臭化物)、トシルおよびメシル等が例示される。特定の態様においては、モノマーは少なくとも2つの脱離基を有する。好ましいポリフェニレンの実施態様においては、これらの脱離基は、これらが結合する芳香族モノマーに関して相互に「パラ」の関係にある。しかしながら、これらの脱離基は相互に「オルト」又は「メタ」の関係にあってもよい。
【0021】
「置換基(displacing group)」という用語は、一般的には求核試薬として作用することによって適当なモノマーの脱離基と置換する官能性部分を意味する。置換基を有するモノマーは、一般的には共有結合によって、脱離基を有するモノマーと結合する。好ましいポリアリーレンの例においては、芳香族モノマーのフッ化物基は、芳香族モノマーに結合したフェノキシドイオン、アルコキシドイオン、スルフィドイオンによって置換される。ポリフェニレンの実施態様においては、これらの置換基は相互に「パラ」の関係にある態様が好ましい。しかしながら、これらの置換基は相互に「オルト」又は「メタ」の関係にあってもよい。
【0022】
以下の表1には、脱離基と置換基との例示的な組合せを示す。イオン伝導性オリゴマー前駆体は2つの脱離基(フッ素原子F)を含み、他の3種の成分はフッ素原子及び/又はヒドロキシル(−OH)置換基を含む。硫黄結合は、チオール(−SH)による−OHの置換によって形成させることができる。イオン伝導性オリゴマー中の置換基Fは、置換基(例えば、−OH)によって置き換えることができる。この場合、他の前駆体は、脱離基が置換基で置換されるか、及び/又は置換基が脱離基で置換されることによって変性される。
【0023】
【表1】

【0024】
イオン伝導性ポリマーの前駆体の好ましい組合せを表1の第5列と第6列に示す。
【0025】
イオン伝導性コポリマーは次式 I で表されるコポリマーであってもよい:
【化1】

【0026】
式中、Ar、Ar、Ar及びArは相互に独立して同一又は異なる芳香族部分を示し、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、T、U、V及びWは結合部分を示し、Xは相互に独立して−O−又は−S−を示し、i及びjは相互に独立して1よりも大きな整数を示し、a、b、c及びdはモル分率を示し(但し、a+b+c+d=1であり、aは0よりも大きな値を示し、また、b、c及びdの少なくとも2つは0よりも大きい値を示す)、m、n、o及びpは該コポリマー中の異なるオリゴマー又はモノマーの数を表す整数を示し、[(Ar-T-)i-Ar-X-]、[Ar-U-Ar-X-]、[(Ar-V-)-Ar-X-]及び[Ar-W-Ar-X-]の少なくとも1つは架橋性基をさらに含む。
【0027】
a、b、c及びd、i及びj、並びにm、n、o及びpの好ましい値については後述する。
【0028】
イオン伝導性コポリマーは次式 II で表されるコポリマーであってもよい:
【化2】

【0029】
式中、Ar、Ar、Ar及びArは相互に独立してフェニル、置換フェニル、ナフチル、テルフェニル、アリールニトリル及び置換アリールニトリルを示し、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、Xは相互に独立して−O−又は−S−を示し、i及びjは相互に独立して1よりも大きな整数を示し、a、b、c及びdはモル分率を示し(但し、a+b+c+d=1であり、aは0よりも大きな値を示し、また、b、c及びdの少なくとも2つは0よりも大きな値を示す)、m、n、o及びpは該コポリマー中の異なるオリゴマー又はモノマーの数を表す整数を示し、[(Ar-T-)i-Ar-X-]、[Ar-U-Ar-X-]、[(Ar-V-)-Ar-X-]及び[Ar-W-Ar-X-]の少なくとも1つは架橋性基をさらに含み、T、U、V及びWは相互に独立して単結合及び下記の群から選択される結合を示す:
【0030】
【化3】

【0031】
イオン伝導性コポリマーは次式 III で表されるコポリマーであってもよい。
【化4】

【0032】
式中、Ar、Ar、Ar及びArは相互に独立してフェニル、置換フェニル、ナフチル、テルフェニル、アリールニトリル及び置換アリールニトリルを示し、Xは相互に独立して−O−又は−S−を示し、T、U、V及びWは相互に独立してO、S、C(O)、S(O)、アルキル、分枝状アルキル、フルオロアルキル、分枝状フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール又は複素環を示し、i及びjは相互に独立して1よりも大きな整数を示し、a、b、c及びdはモル分率を示し(但し、a+b+c+d=1であり、aは0よりも大きな値を示し、また、b、c及びdの少なくとも2つは0よりも大きな値を示す)、m、n、o及びpは該コポリマー中の異なるオリゴマー又はモノマーの数を表す整数を示し、[(Ar-T-)i-Ar-X-]、[Ar-U-Ar-X-]、[(Ar-V-)-Ar-X-]及び[Ar-W-Ar-X-]の少なくとも1つは架橋性基をさらに含む。
【0033】
上記の式 I 、式 II 及び式 III において、次式 i)、ii)、iii)及びiv)で表されるコポリマーの構成単位はそれぞれイオン伝導性オリゴマー、イオン伝導性モノマー、非イオン性オリゴマー及び非イオン性モノマーを示す。従って、式 I 〜 III は、次の成分(1)〜(3)から選択される少なくとも1種、2種又は3種の成分と組み合わされるイオン伝導性オリゴマーを含有するイオン伝導性コポリマーを示す:(1)1種又は複数種のイオン伝導性モノマー、(2)1種又は複数種の非イオン性モノマー及び(3)1種又は複数種の非イオン性オリゴマー。
【0034】
【化5】

【0035】
好ましい実施態様においては、iとjは相互に独立して2〜12、より好ましくは3〜8、最も好ましくは4〜6の数を示す。
【0036】
コポリマー中のイオン伝導性オリゴマーのモル分率aは、0.1〜0.9、好ましくは0.3〜0.9、より好ましくは0.3〜0.7、最も好ましくは0.3〜0.5の値を示す。
【0037】
コポリマー中のイオン伝導性モノマーのモル分率bは、好ましくは0〜0.5、より好ましくは0.1〜0.4、最も好ましくは0.1〜0.3の値を示す。
【0038】
非イオン伝導性オリゴマーのモル分率cは、好ましくは0〜0.3、より好ましくは0.1〜0.25、最も好ましくは0.01〜0.15の値を示す。
【0039】
非イオン伝導性モノマーのモル分率dは、好ましくは0〜0.7、より好ましくは0.2〜0.5、最も好ましくは0.2〜0.4の値を示す。
【0040】
場合によっては、b、c及びdの全てが0よりも大きな値を示す。別の場合には、aとcは0よりも大きい値を示し、bとdは0を示す。また、他の場合には、aは0を示し、bは0よりも大きな値を示し、少なくともc若しくはd又はc及びdは0よりも大きな値を示す。コポリマーの主鎖中には、窒素原子は一般的には存在しない。
【0041】
m、n、o及びpは、同一のコポリマー中又はコポリマーの混合物中における異なるモノマー及び/又はオリゴマーの使用を考慮して選択される整数を示し、mは好ましくは1、2又は3を示し、nは好ましくは1又は2を示し、oは好ましくは1又は2を示し、pは1、2、3又は4を示す。
【0042】
一部の実施態様においては、Ar、Ar及びArの少なくとも2つは相互に異なる。また、別の実施態様においては、Ar、Ar及びArは相互に異なる。
【0043】
疎水性オリゴマーが存在しない一部の実施態様、即ち、前記の式 I 、 II 又は III においてcが0を示す場合には、(1)イオン伝導性ポリマーを調製するために使用されるイオン伝導性モノマー前駆体は2,2’−ジスルホン化4,4’−ジヒドロキシビフェニルでななく、あるいは、(2)イオン伝導性ポリマーは、該イオン伝導性モノマー前駆体を用いて形成されるイオン伝導性モノマーを含有しない。
【0044】
架橋性基Rには、アリル基、ビニル基及び当業者には既知のその他の架橋性基、特にイオン伝導性ポリマーの芳香族基と架橋し得る基が含まれる。好ましい架橋性基は、熱的に活性化されて、熱プレスにおいて得られるような均一条件下で架橋をもたらすような基である。
【0045】
好ましい実施態様においては、架橋性基は芳香族基(好ましくはアリル基)と共有結合するので、架橋性基中の二重結合は芳香族基と共役しない。さらに、種々のリンカー(linker)を使用することによって、架橋性基をイオン伝導性コポリマーの主鎖から離して配置させてもよい。この種の主鎖としては、炭素原子数が1〜10の脂肪族鎖が好ましい。
【0046】
イオン伝導性コポリマーを調製するために使用されるモノマーを下記の表2に例示する。
【表2】

【0047】
架橋性モノマーとして、特に限定的ではないが、下記のモノマーが例示される:
【化6】



【0048】
コポリマーの一方及び/又は他方の末端に制限される架橋性モノマーとして、特に限定的ではないが、下記のモノマーが例示される:
【化7】



【0049】
上記の架橋性モノマーにおいて、Rは不飽和アリル(例えば、アリル基)を示す。モノマー中には少なくとも1個のR基を存在させるが、2個のR基を存在させることが好ましい場合がある。さらに、OHはSHで置き換えてもよく、あるいは、SHをOHで置き換えてもよい。
【0050】
熱架橋用の特に好ましい架橋性モノマーは次式で表される2,2’−ジアリルビスフェノールAである:
【化8】

【0051】
イオン伝導性コポリマーを調製するために使用されるコモノマーであって本願明細書で特に言及されていないコモノマーも使用することができる。この種のコモノマーには下記の特許文献に記載されているものが包含され、これらの文献の記載内容も本明細書の一部を成すものである:
1)米国特許出願No.09/872,770(出願日:2001年6月1日);米国特許公報US2002−0127454A1(発行日:2002年9月12日)「ポリマー組成物」、
2)米国特許出願No.10/351,257(出願日:2003年1月23日);米国特許公報US2003−0219640A1(発行日:2003年2月20日)「酸塩基プロトン伝導性ポリマーブレンド膜」、
3)米国特許出願No.10/438,186(出願日:2003年5月13日);米国特許公報US2004−0039148A1(発行日:2004年2月26日)「スルホン化コポリマー」、
4)米国特許出願No.10/438,299(出願日:2003年5月13日);米国特許公報US2004−0126666(発行日:2004年7月1日)「イオン伝導性ブロックコポリマー」、
5)米国特許出願No.10/449,299(出願日:2003年2月20日);米国特許公報US2003−0208038A1(発行日:2003年11月6日)「イオン伝導性コポリマー」、
6)米国特許出願No.10/987,178(出願日:2004年11月12日);米国特許公報US2005−0181256(発行日:2005年8月18日)「イオン伝導性ランダムコポリマー」、
7)米国特許出願No.10/987,951(出願日:2004年11月12日);米国特許公報US2005−0234146(発行日:2005年10月20日)「1種又は複数種の疎水性のモノマー又はオリゴマーを含有するイオン伝導性コポリマー」、
8)米国特許出願No.10/988,187(出願日:2004年11月11日);米国特許公報US2005−0282919(発行日:2005年12月22日)「1種又は複数種の疎水性オリゴマーを含有するイオン伝導性コポリマー」、及び
9)米国特許出願No.11/077,994(出願日:2005年3月11日);米国特許公報US2006−0041100、「1種又は複数種のイオン伝導性オリゴマーを含有するイオン伝導性コポリマー」。
【0052】
その他のコモノマーには、スルホン化トリフルオロスチレン調製用コモノマー(米国特許5,773,480)、酸−塩基ポリマー調製用コモノマー(米国特許6,300,381)、ポリアリーレンエーテルスルホン調製用コモノマー(米国特許公報US2002/0091225A1)、グラフトポリスチレン調製用コモノマー(マクロモレキュルズ、第35巻、第1348頁、2002年)、ポリイミド調製用コモノマー(米国特許6,586,561及び J. Membr. Sci. 、第160巻、第127頁、1999年)並びに日本国特許出願2003−147076及び2003−055457に記載されているコモノマーが包含され、これらの開示内容も本明細書の一部を成すものである。
【0053】
コモノマーI中に1個のイオン伝導性基が存在する場合の該基の好ましいモル%は30〜70モル%、より好ましくは40〜60モル%、最も好ましくは45〜55モル%である。1個よりも多くのイオン伝導性基がイオン伝導性モノマー中に含まれる場合の該基のモル%の値は、モノマーあたりのイオン伝導性基の総数を乗じた値である。従って、2個のスルホン酸基を有するモノマーのスルホン化度は、好ましくは60〜140%、より好ましくは80〜120%、最も好ましくは90〜110%である。
【0054】
あるいは、イオン伝導性基の量はイオン交換能(IEC)によって測定することができる。比較例としての「ナフィオン」の一般的なIECは0.9ミリ当量(meq)/gである。本発明の場合のIECは、好ましくは0.9〜3.0meq/g、より好ましくは1.0〜2.5meq/g、最も好ましくは1.6〜2.2meq/gである。
【0055】
本発明によるコポリマーについて、アリーレンポリマーの用途に関連して説明したが、次の成分(1)〜(3)の少なくとも1種、2種又は3種(好ましくは少なくとも2種)と組み合わせるイオン伝導性オリゴマーの使用原理は多くのその他の多くの系に対しても適用することができる:(1)1又は複数のイオン伝導性コモノマー、(2)1又は複数の非イオン性モノマー、及び(3)1又は複数の非イオン性オリゴマー。例えば、イオン性オリゴマー、非イオン性オリゴマー並びにイオン性及び非イオン性モノマーは必ずしもアリーレンである必要はなく、イオン伝導性基を有する脂肪族若しくはペルフルオロ化脂肪族の主鎖を有するものであってもよい。イオン伝導性基は主鎖に結合していてもよく、あるいは主鎖に対する側基(pendant)であってもよい。例えば、該基はリンカーを介してポリマー主鎖に結合していてもよい。あるいは、イオン伝導性基は、ポリマーの標準的な主鎖の一部として形成されていてもよい(例えば、米国特許公報US2002/018737781(発行日:2002年12月12日)参照)。これらのイオン伝導性オリゴマーのいずれも本発明の実施に使用することができる。
【0056】
PEMは、イオン伝導性コポリマーの溶液流延(solution casting)によって製造してもよく、該膜を熱処理又は放射線照射処理に付すことによって、該膜中のコポリマーの架橋を誘発させる。
【0057】
流延によって調製される膜を架橋させることによって得られるPEMは燃料電池において使用することができる。膜厚は、好ましくは0.1〜10ミル、より好ましくは1〜6ミル、最も好ましくは1.5〜2.5ミルである。
【0058】
ここで使用するように、プロトン束(proton flux)が約0.005S/cmよりも大きいとき、より好ましくは0.01S/cmよりも大きいとき、最も好ましくは0.02S/cmよりも大きいときには、膜はプロトンを透過させる。
【0059】
ここで使用するように、所定の厚さを有する膜を横断するメタノールの移動度が、同じ厚さを有するナフィオン膜を横断するメタノールの移動度よりも小さいときには、膜はメタノールを実質上透過させない。好ましい実施態様においては、メタノールの透過度は、ナフィオン膜の場合に比べて好ましくは50%小さく、より好ましくは75%小さく、最も好ましくは80%よりも大きな割合で小さい。
【0060】
イオン伝導性コポリマーから膜(PEM)を形成させた後、該膜は触媒被覆膜(CCM)を製造するのに使用してもよい。ここで使用するように、CCMはPEMを含有しており、PEMの対置する少なくとも一方の側(好ましくは両側)は、部分的もしくは全面的に触媒層によって被覆される。好ましくは、触媒層は触媒とアイオノマー(ionomer)から構成される層である。好ましい触媒はPtおよびPt−Ruである。好ましいアイオノマーにはナフィオンおよびその他のイオン伝導性ポリマーが含まれる。
【0061】
一般に、アノード触媒とカソード触媒は、十分に確立された標準的な技法によって膜上へ塗布される。直接メタノール燃料電池に対しては、一般にアノード側には白金/ルテニウム触媒が使用され、カソード側には白金触媒が使用される。水素/空気燃料電池又は水素/酸素燃料電池に対しては、一般にアノード側には白金又は白金/ルテニウムが使用され、カソード側には白金が使用される。
【0062】
触媒は、所望により、カーボン上に担持されていてもよい。触媒は、最初は少量の水に分散させる(水1g中に触媒約100mgを分散させる)。この分散液に、水/アルコールを溶媒とする5%アイオノマー溶液(0.25〜0.75g)を添加する。得られる分散液はポリマー膜上へ直接的に塗布してもよい。あるいは、イソプロパノール(1〜3g)を添加した分散液を膜上へ直接的に噴霧してもよい。触媒は、次の公知文献に記載のようにして転写法(decal transfer)によって膜上へ塗布してもよい:エレクトロキミカ・アクタ、第40巻、第297頁(1995年)。
【0063】
CCMはMEAの製造に使用される。ここで使用するように、MEAは、本発明によるCCMから製造されるイオン伝導性ポリマー膜に、CCMの触媒層と電気的に接触するように配置されたアノード電極とカソード電極を組合せたものを示す。
【0064】
電極と触媒層との電気的接触は、直接的におこなってもよく、あるいはガス拡散層又はその他の伝導性層を介して間接的におこなってもよく、これにより、CCM及び燃料電池の電流が供給される負荷を含む電気回路が該電極によって完成される。特に、第1触媒は、水素若しくは有機燃料の酸化を促進するように、PEMのアノード側と電気触媒的に連絡する。一般に、このような酸化によって、プロトン、エレクトロン、並びに二酸化炭素および水(有機燃料の場合)が生成する。膜は分子状水素、メタノールのような有機燃料および二酸化炭素を実質上透過させないので、このような成分は膜のアノード側に保持される。電気触媒反応によって生成するエレクトロンはアノードから負荷へ伝達され、次いでカソードへ伝達される。この直接的なエレクトロンの流れのバランスは、当量数のプロトンが膜を通過してカソードコンパートメントへ移動することである。該コンパートメントにおいては、移動したプロトンの存在下での酸素の電気触媒的還元がおこなわれ、水が生成する。1つの実施態様においては、空気が酸素源となる。別の実施態様においては、酸素に富む空気又は酸素が使用される。
【0065】
膜電極アセンブリーは一般に燃料電池をアノードコンパートメントとカソードコンパートメントに分割するのに使用される。この種の燃料電池系においては、水素ガスのような燃料又はメタノールのような有機燃料はアノードコンパートメントに加えられ、一方、酸素もしくは周囲空気のようなオキシダントはカソードコンパートメントに導入される。
【0066】
燃料電池の特定の用途に応じて、多数の電池を組合せることによって適当な電圧と電力出力を達成することができる。このような用途には、住宅用、工業用および商業用の電力システムまたは自動車におけるような移動力に使用するための電力源が含まれる。本発明が特に適用できる他の用途には次に例示するような携帯用電子機器類における燃料電池が含まれる:セル電話およびその他の遠距離通信用機器、消費者用のビデオとオーディオ機器、ラップトップ型コンピューター、ノートブック型コンピューター、パーソナルデジタル補助機器および他の計算装置並びにGPS装置等。
【0067】
さらに、このような燃料電池は、高出力な用途(例えば、工業用および住宅用下水施設)に供するために設置して電圧と電流容量を高めるのに使用してもよく、あるいは、輸送機関へ移動力を供給するのに使用してもよい。この種の燃料電池の構造体には、次の米国特許の明細書に開示されているものが含まれる:6,416,895、6,413,664、6,106,964、5,840,438、5,773,160、5,750,281、5,547,776、5,527,363、5,521,018、5,514,487、5,482,680、5,432,021、5,382,478、5,300,370、5,252,410 及び 5,230,966。
【0068】
このようなCCMおよびMEMは、例えば、次の米国特許の明細書に開示されているような燃料電池において一般に有用であり、これらの明細書の開示内容は本明細書の一部を成すものである:5,945,231、5,773,162、5,992,008、5,723,229、6,057,051、5,976,725、5,789,093、4,612,261、4,407,905、4,629,664、4,562,123、4,789,917、4,446,210、4,390,603、6,110,613、6,020,083、5,480,735、4,851,377、4,420,544、5,759,712、5,807,412、5,670,266、5,916,699、5,693,434、5,688,613 及び 5,688,614。
【0069】
本発明によるCCMおよびMEMは、当該分野において知られている水素燃料電池において使用してもよい。この種の燃料電池としては次の米国特許の明細書に開示されている燃料電池が例示され、これらの明細書の開示内容は本明細書の一部を成すものである:6,630,259、6,617,066、6,602,920、6,602,627、6,568,633、6,544,679、6,536,551、6,506,510、6,497,974、6,321,145、6,195,999、5,984,235、5,759,712、5,509,942 及び 5,458,989。
【0070】
本発明によるイオン伝導性ポリマー膜は、バッテリーにおけるセパレーターとしても使用することができる。特に好ましいバッテリーはリチウムイオンバッテリーである。
【実施例】
【0071】
I.ランダム共重合
比較例1
機械的攪拌機、窒素導入口へ接続した温度計プローブ及びディーン−スターク型トラップ/コンデンサーを具備した三つ口丸底フラスコ(500ml)内において、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(19.09g;0.0875モル)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(15.84g;0.0375モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(33.54g;0.125モル)及び無水炭酸カリウム(22.46g;0.165モル)をDMSO(225ml)/トルエン(112ml)混合溶剤中に加えた。得られた反応混合物を、低速の窒素気流条件下でゆっくりと撹拌した。反応混合物を約85℃で1時間加熱した後、約120℃で1.5時間加熱し、さらに反応温度を140℃まで上昇させて1.5時間加熱し、次いで約155℃で1時間加熱した後、最後に170℃で2時間加熱した。反応溶液を撹拌下で約70℃まで冷却した後、冷メタノール(2L)中へ激しく撹拌しながら滴下した。沈殿物を濾取し、脱イオン水で4回洗浄した後、80℃で一日乾燥させた。得られたナトリウム型ポリマーを、該ポリマーを1.5M熱硫酸溶液で2回処理することによって(1回当たりの処理時間は1時間とした)、酸性型に変換させた後、冷脱イオン水で2回洗浄した。得られたポリマーを80℃で一夜乾燥させた後、さらに真空下で80℃の条件で1日乾燥させた。該ポリマーの内部粘度は、DMAc溶液(0.25g/dl)中において1.20dl/gであった。
【0072】
実施例1
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、製造原料として下記の原料を使用し、前記の比較例1に記載の手順に準拠して合成した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(18.33g)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(15.20g)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(30.59g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(2.17g;純度85%)、無水炭酸カリウム(21.75g)、DMSO(216ml)及びトルエン(108ml)。
【0073】
実施例2
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、製造原料として下記の原料を使用し、前記の比較例1に記載の手順に準拠して合成した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(6.32g)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(10.26g)、オリゴマー1(15.67g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(1.09g;純度85%)、4,4’−ビフェノール(10.61g)、無水炭酸カリウム(10.78g)、DMSO(162ml)及びトルエン(81ml)。
【0074】
実施例3
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、製造原料として下記の原料を使用し、前記の比較例1に記載の手順に準拠して合成した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(4.99g)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(12.85g)、オリゴマー1(15.67g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(1.09g;純度85%)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(19.75g)、無水炭酸カリウム(10.78g)、DMSO(204ml)及びトルエン(102ml)。
【0075】
実施例4
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、製造原料として下記の原料を使用し、前記の比較例1に記載の手順に準拠して合成した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(6.15g)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(10.59g)、オリゴマー2(16.89g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(1.09g;純度85%)、4,4’ビフェノール(10.61g)、無水炭酸カリウム(10.78g)、DMSO(168ml)及びトルエン(84ml)。
【0076】
実施例5
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、製造原料として下記の原料を使用し、前記の比較例1に記載の手順に準拠して合成した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(4.82g)、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(13.17g)、オリゴマー2(16.89g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(1.09g;純度85%)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン(19.75g)、無水炭酸カリウム(10.78g)、DMSO(208ml)及びトルエン(104ml)。
【0077】
実施例1〜5において調製したポリマーから得られた膜1〜5及び比較例1において調製したポリマーから得られた比較膜1に関するデータを以下の表3にまとめて示す。
【表3】

【0078】
II. ブロック共重合
フッ化物末端基を有するオリゴマー1
機械的攪拌機、窒素導入口へ接続した温度計プローブ及びディーン−スターク型トラップ/コンデンサーを具備した三つ口丸底フラスコ(500ml)内において、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(34.91g;0.16モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(42.05g;0.12モル)及び無水炭酸カリウム(25.87g;0.187モル)をDMSO(220ml)/トルエン(110ml)混合溶剤中に加えた。得られた反応混合物を、低速の窒素気流条件下でゆっくりと撹拌した。反応混合物を約85℃で1時間加熱した後、約120℃で1時間加熱し、さらに反応温度を約135℃まで上昇させて3時間加熱し、最後に約170℃で2時間加熱した。反応溶液を撹拌下で約70℃まで冷却した後、冷メタノール(2L)中へ激しく撹拌しながら滴下した。沈殿物を濾取し、脱イオン水で4回洗浄した後、80℃で一日乾燥させ、さらに真空下で80℃の条件で2日間乾燥させた。
【0079】
フッ化物末端基を有するオリゴマー2
このオリゴマーは、上記のオリゴマー1の調製法に準拠して、次の製造原料を用いて調製した:ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(71.19g;0.28モル)、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(73.59g;0.2175モル)、無水炭酸カリウム(37.73g;0.364モル)、及びDMSO(504ml)/トルエン(252ml)。
【0080】
フッ化物末端基を有するオリゴマー3
このオリゴマーは、上記のオリゴマー1の調製法に準拠して、次の製造原料を用いて調製した:4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(BisK)(28.36g;0.13モル)、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン(34.36g;0.0975モル)、無水炭酸カリウム(17.51g;0.169モル)、及びDMSO(234ml)/トルエン(117ml)。
【0081】
フッ化物末端基を有するオリゴマー4
このオリゴマーは、上記のオリゴマー1の調製法に準拠して、次の製造原料を用いて調製した:ビス(4−フルオロフェニル)スルホン(30.51g)、4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン(31.72g)、無水炭酸カリウム(16.17g)、及びDMSO(216ml)/トルエン(108ml)。
【0082】
比較例2
機械的攪拌機、窒素導入口へ接続した温度計プローブ及びディーン−スターク型トラップ/コンデンサーを具備した三つ口丸底フラスコ(500ml)内において、3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(25.42g)、オリゴマー1(22.93g)、4,4’−ビフェノール(13.03g)及び無水炭酸カリウム(12.58g)を無水DMSO(234ml)/蒸留直後のトルエン(117ml)混合溶剤中に加えた。得られた反応混合物を、低速の窒素気流条件下でゆっくりと撹拌した。反応混合物を85℃で1時間加熱した後、120℃で1時間加熱し、さらに反応温度を140℃まで上昇させて2時間加熱し、最後に163℃で2時間加熱した。反応溶液を撹拌下で約70℃まで冷却した。得られた粘性溶液を冷メタノール(1L)中へ激しく撹拌しながら滴下した。ヌードル状沈殿物を切断し、脱イオン水で4回洗浄した後、80℃で一夜乾燥させた。得られたナトリウム型ポリマーを、該ポリマーを1.5Mの熱硫酸溶液で2回処理することによって(1回当たりの処理時間は1時間とした)、酸性型に変換させた後、冷脱イオン水で2回洗浄した。得られたポリマーを80℃で一夜乾燥させた後、さらに真空下で80℃の条件で2日間乾燥させた。該ポリマーの内部粘度は、DMAc溶液(0.25g/dl)中において1.79dl/gであった。
【0083】
実施例6
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含むと共に酸性側基を有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、比較例2に記載の手順に準拠し、次の製造原料を用いて合成した:3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(17.10g)、オリゴマー1(22.16g)、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム(3.28g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(0.907;純度85%)、4,4’−ビフェノール(6.52g)、無水炭酸カリウム(8.76g)、及びDMSO(188ml)/トルエン(94ml)。
【0084】
実施例7
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含むと共に酸性側基を有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、比較例2に記載の手順に準拠し、次の製造原料を用いて合成した:3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(17.31g)、オリゴマー2(22.62g)、2,3−ジヒドロキシナフタレン−6−スルホン酸ナトリウム(3.28g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(0.907;純度85%)、4,4’−ビフェノール(6.52g)、無水炭酸カリウム(8.76g)、及びDMSO(188ml)/トルエン(94ml)。
【0085】
実施例8
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、比較例2に記載の手順に準拠し、次の製造原料を用いて合成した:3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(18.91g)、オリゴマー3(19.95g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(0.967g;純度85%)、4,4’−ビフェノール(9.43g)、無水炭酸カリウム(9.33g)、及びDMSO(194ml)/トルエン(97ml)。
【0086】
実施例9
この実施例においては、架橋性モノマーとして2,2’−ジアリルビスフェノールAを5モル%含むと共に末端キャップ化剤として4−フルオロビフェニルを有するポリマーについて説明する。該ポリマーは、比較例2に記載の手順に準拠し、次の製造原料を用いて合成した:3,3’−ジスルホン化−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(SBisK)(19.97g)、オリゴマー4(9.73g)、2,2’−ジアリルビスフェノールA(1.00g;純度85%)、4,4’−ビフェノール(9.73g)、4−フルオロビフェニル(0.21g)、無水炭酸カリウム(9.63g)、及びDMSO(194ml)/トルエン(97ml)。
【0087】
実施例6〜9において調製したポリマーから得られた膜6〜9及び比較例2において調製したポリマーから得られた比較膜2に関するデータを以下の表4にまとめて示す。
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン伝導性オリゴマー、並びに(1)1種又は複数種のイオン伝導性モノマー、
(2)1種又は複数種の非イオン性モノマー、及び(3)1種又は複数種の非イオン性オリゴマーから選択される少なくとも2種の成分を相互に共有結合した状態で含有するイオン伝導性コポリマーであって、該イオン伝導性コポリマーがその主鎖中にアリール基を含み、該オリゴマー又はモノマーの少なくとも1種が架橋性基を含む該イオン伝導性コポリマー。
【請求項2】
下記の一般式で表されるイオン伝導性コポリマー:
【化1】

式中、Ar、Ar、Ar及びArは芳香族部分を示し、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、Arの少なくとも1つはイオン伝導性基を含み、T、U、V及びWは結合部分を示し、Xは相互に独立して−O−又は−S−を示し、i及びjは相互に独立して1よりも大きな整数を示し、a、b、c及びdはモル分率を示し(但し、a+b+c+d=1であり、aは少なくとも0.3の値を示し、また、b、c及びdの少なくとも2つは0よりも大きい値を示す)、m、n、o及びpは該コポリマー中の異なるオリゴマー又はモノマーの数を表す整数を示し、[(Ar-T-)i-Ar-]、(Ar-U-Ar-)、[(Ar-V-)-Ar-]及び(Ar-W-Ar-)の少なくとも1つは架橋性基をさらに含む。
【請求項3】
Ar、Ar、Ar及びArが相互に独立してフェニル、置換フェニル、ナフチル、テルフェニル、アリールニトリル及び置換アリールニトリルを示し、T、U、V及びWが相互に独立してO、S、C(O)、S(O)、アルキル、分枝状アルキル、フルオロアルキル、分枝状フルオロアルキル、シクロアルキル、アリール、置換アリール又は複素環を示す請求項2記載のイオン伝導性コポリマー。
【請求項4】
Ar、Ar、Ar及びArが相互に独立してフェニル、置換フェニル、ナフチル、テルフェニル、アリールニトリル及び置換アリールニトリルを示し、Xが相互に独立して−O−又は−S−を示し、T、U、V及びWが相互に独立して単結合及び下記の群から選択される結合を示す請求項2記載のイオン伝導性コポリマー:
【化2】

【請求項5】
Ar、Ar、Ar及びArの少なくとも1つがイオン伝導性側基を有する請求項1又は請求項2記載のイオン伝導性コポリマー。
【請求項6】
請求項1又は2記載のイオン伝導性コポリマーから製造されるイオン伝導性架橋コポリマー。
【請求項7】
請求項6記載のイオン伝導性架橋コポリマーを含有するポリマー電解質膜(PEM)。
【請求項8】
請求項7記載のPEMを含有する触媒被覆膜(CCM)であって、該PEMの少なくとも1つの対置する表面の全部又は一部が触媒層を含む該触媒被覆膜。
【請求項9】
請求項8記載のCCMを含有する膜電極アセンブリー(MEA)。
【請求項10】
請求項9記載のMEAを含有する燃料電池。
【請求項11】
水素燃料電池を含有する請求項10記載の燃料電池。
【請求項12】
請求項10記載の燃料電池を具備する電子装置。
【請求項13】
請求項10記載の燃料電池を具備する電源。
【請求項14】
請求項10記載の燃料電池を具備する電気モーター。
【請求項15】
請求項14記載の電気モーターを具備する乗り物。

【公表番号】特表2008−542505(P2008−542505A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514929(P2008−514929)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2006/021575
【国際公開番号】WO2006/130860
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(502435797)ポリフューエル・インコーポレイテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】POLYFUEL, INC.
【Fターム(参考)】