説明

イオン伝導性電解質及び該イオン伝導性電解質を用いた二次電池

【課題】 優れたイオン伝導度を実現できるイオン伝導性電解質及びそれを用いた二次電池を提供する。
【解決手段】 ポリマー、リチウム塩、常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質において、前記ポリマーが、重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたものであり、常温溶融塩が5.0V以上の耐電圧を有することを特徴とするイオン伝導性電解質。前記イオン伝導性電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオン伝導性電解質及び該イオン伝導性電解質を使用した二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型軽量化やポータブル化に伴い、高電圧および高エネルギー密度などの特性を有するリチウム二次電池の研究開発が活発に行われている。特に最近のポータブル電子機器では、急速な性能向上に伴い、消費電力も急速に増大しつつある。こうした背景の中で、更なる高電圧、高エネルギー密度を実現できるようなリチウム二次電池が要求されている。
このような二次電池に対応するためには、高いイオン伝導性を発現し、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質が必要とされてきている。
【0003】
優れたイオン伝導度を実現させるために、アルキレンオキシド骨格、酸の脱プロトン残基、含窒素化合物のカチオンを有する高分子を利用する方法によって、良好なイオン伝導度を得る電解質が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、ここで開示されている方法では、電解質中に占めるイオン結合部位の割合が十分ではなく、イオン伝導度向上に効果があるものの十分なイオン伝導度を実現できているとはいえなかった。
また、高いイオン伝導性を示すという理由から、二次電池、電気二重層キャパシタ等の電気化学デバイスに常温溶融塩を利用するという試みがなされている。(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、ここで提案されている常温溶融塩では、常温溶融塩の耐電圧が十分ではなく、高容量の二次電池などに利用するのは困難である。さらに、常温溶融塩そのものは、室温付近の温度で液状であり、二次電池に利用する際、電池の形状の自由度が狭くなり、特に、大型のリチウム二次電池への適用は困難であるという問題もあった。
そのような背景から、さらに良好なイオン伝導度を実現でき、かつ、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質が求められていた。
【特許文献1】特開2002−298644(段落0009)
【特許文献2】特開H11−307121(段落0006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れたイオン伝導度を実現でき、かつ、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質及びそれを用いた二次電池を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、ポリマー、リチウム塩、常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質において、重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマー、及び、5.0V以上の耐電圧を有する常温溶融塩を用いることによって、良好なイオン伝導度を実現できつつ、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質が得られることを見出し、さらに検討を進めて本発明を完成させるに至った。
【0006】
すなわち、
(1) ポリマー、リチウム塩および常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質において、前記ポリマーが、重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたものであり、常温溶融塩が5.0V以上の耐電圧を有することを特徴とするイオン伝導性電解質、
(2) 前記常温溶融塩を構成するカチオン成分が、下記式(1)で表される4級アンモニウムカチオンである第(1)項記載のイオン伝導性電解質、
+1234 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基を示し、同一であっても異なっていても良い。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。)
(3) 前記常温溶融塩を構成するアニオン成分が、下記式(2)で表されるアニオンの群から選ばれるものである第(1)項または第(2)項に記載のイオン伝導性電解質、
N(R1SO2)(R2SO2-, N(R3SO3-, C(R4SO2)(R5SO2)(R6SO2- (2)
(式中、R1〜R6は、それぞれ、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基から選ばれる基であり、同一であっても異なっていても良く、これらは環構造を有していてもよい。また、これらはヘテロ原子を含んでもよい。)
(4) 第(1)項〜第(3)項のいずれかに記載のイオン伝導性電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、優れたイオン伝導度と、広い電位範囲で電気化学的に安定であり高い耐電圧を発現するイオン伝導性電解質を提供でき、これを用いた二次電池は、良好な充放電特性を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、ポリマー、リチウム塩および常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質において、前記ポリマーが、重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたものと、耐電圧が5.0V以上の常温溶融塩を用いることを特徴とするイオン伝導性電解質であり、これにより、優れたイオン伝導性と広い電位範囲で安定なイオン伝導性電解質が得られる。
これは、塩モノマーによりポリマー骨格中にイオン結合部位を導入しながら、また、常温溶融塩を併用することで、イオン結合濃度をさらに高めることができ、そのため、リチウム塩の解離を促進し、優れたイオン伝導度を発現するものと考えられる。また、耐電圧性に優れた常温溶融塩を用いることで広い電位範囲でイオン伝導性電解質を使用することが可能となる。塩モノマーを含んで得られるポリマーは、イオン伝導性電解質を固形化でき、電池作製の際、電池の形状の自由度を上げることが可能となる。さらに、塩モノマーを含んで得られるポリマーは、イオン性の化合物である常温溶融塩との親和性が高く、均質な固形物が得られる。
【0009】
本発明に用いる前記塩モノマーを構成する重合性官能基を有するオニウムカチオンとしては、フルオニウム(F+)、オキソニウム(O+)、スルホニウム(S+)、アンモニウム(N+)、ホスホニウム(P+)などがカチオン種として挙げられる。汎用性、作業性の点から、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、アンモニウムカチオンがより好ましく、中でも、アンモニウムカチオンが最も好ましい。
【0010】
前記スルホニウムカチオンとしては、具体的には、硫黄原子が3つの置換基Rで置換されたカチオンが挙げられる。3つの置換基Rの内、少なくとも一つは重合性官能基を含む基である。置換基Rは、置換または無置換の、アルキル基:Cn2n+1、アリール基:(R’)n−C65-n−、アラルキル基:(R’)m−C65-m−Cn2n−、アルケニル基:R’−CH=CH−R’−、アラルケニル基:(R’)n−C65-n−CH=CH−R’−、アルコキシアルキル基:R’−O−Cn2n−、アシルオキシアルキル基:R’−COO−Cn2n−などを例示することができる。また、置換基Rはヘテロ原子やハロゲン原子を含んでも良い。また、3つのRは各々異なっても、同一であってもかまわない。前記スルホニウムカチオンで置換基Rにおける、R’は水素、または置換もしくは無置換の炭素数20以下のアルキル基などであり、複数ある場合は互いに異なっても良く、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上20以下の整数である。R、R’において置換された場合の置換基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基およびn−デシル基などの直鎖または分岐のアルキル基、シクロヘキシル基および4−メチルシクロヘキシル基などの環状のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基およびn−ヘキシルオキシ基等の直鎖または分岐のアルコキシ基、シクロヘキシルオキシ基などの環状のアルコキシ基、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基、エトキシプロポキシ基、プロポキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基、フェニル基、p−トリル基、m−トリル基、o−トリル基、p−クロロフェニル基、m−クロロフェニル基およびo−クロロフェニル基等のアリール基、フェノキシ基、m−メチルフェノキシ基、o−メチルフェノキシ基、p−クロロフェノキシ基、m−クロロフェノキシ基、o−クロロフェノキシ基およびp−n−ブチルフェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基、m−メチルフェニルチオ基,o−メチルフェニルチオ基、o−エチルフェニルチオ基、p−プロピルフェニルチオ基および2,4,6−トリメチルフェニルチオ基等のアリールチオ基、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、n−プロピルカルボニルアミノ基、イソプロピルカルボニルアミノ基およびn−ブチルカルボニルアミノ基等のアルキルカルボニルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、イソプロポキシカルボニルアミノ基およびn−ブトキシカルボニルアミノ基等のアルコキシカルボニルアミノ基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、n−プロピルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基およびn−ブチルカルボニル基等のアルキルカルボニル基、メチルカルボキシ基、エチルカルボキシ基、n−プロピルカルボキシ基、イソプロピルカルボキシ基およびn−ブチルカルボキシ基等のアルキルカルボキシ基、メトキシカルボキシ基、エトキシカルボキシ基、n−プロポキシカルボキシ基、イソプロポキシカルボキシ基およびn−ブトキシカルボキシ基等のアルコキシカルボキシ基、メトキシカルボニルメトキシ基、エトキシカルボニルエトキシ基、エトキシカルボニルメトキシ基、n−プロポキシカルボニルメトキシ基、イソプロポキシカルボニルメトキシ基およびn−ブトキシカルボニルメトキシ基等のアルコキシカルボニルアルコキシ基等を挙げることができ、これらの置換基は、ハロゲン原子やヘテロ原子が含まれていても良い。さらに、前記置換基として、シアノ基や、フッ素、塩素および臭素などのハロゲン原子も挙げることができる。
【0011】
前記ホスホニウムカチオンとしては、具体的には、燐原子が4つの置換基Rで置換されたカチオンが挙げられる。4つの置換基Rの内、少なくとも一つは重合性官能基を含む基である。置換基Rは、置換または無置換の、アルキル基:Cn2n+1、アリール基:(R’)n−C65-n−、アラルキル基:(R’)m−C65-m−Cn2n−、アルケニル基:R’−CH=CH−R’−、アラルケニル基:(R’)n−C65-n−CH=CH−R’−、アルコキシアルキル基:R’−O−Cn2n−、アシルオキシアルキル基:R’−COO−Cn2n−などを例示することができる。また、置換基Rはヘテロ原子やハロゲン原子を含んでも良い。また、4つのRは各々異なっても、同一であってもかまわない。前記ホスホニウムカチオンで置換基Rにおける、R’は水素、または置換もしくは無置換の炭素数20以下のアルキル基などであり、複数ある場合は互いに異なっても良く、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上20以下の整数である。R、R’において置換された場合の置換基としては、上記スルホニウムカチオンにおけるそれと同じものが挙げられる。
【0012】
前記アンモニウムカチオンとしては、アミン化合物から生じうるカチオンであって、アミン化合物が、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、含窒素複素環式アミン化合物などのすべてのアミン化合物を含むことは言うまでもなく、アミンから生じる正電荷を有するのであれば、特に限定されない。具体的には、窒素原子が4つの置換基Rで置換されたカチオンが挙げられる。4つの官能基Rの内、少なくとも一つは重合性官能基を含む基である。置換基Rは、置換または無置換の、アルキル基:Cn2n+1、アリール基:(R’)n−C65-n−、アラルキル基:(R’)m−C65-m−Cn2n−、アルケニル基:R’−CH=CH−R’−、アラルケニル基:(R’)n−C65-n−CH=CH−R’−、アルコキシアルキル基:R’−O−Cn2n−、アシルオキシアルキル基:R’−COO−Cn2n−などを例示することができる。また、置換基Rはヘテロ原子やハロゲン原子を含んでも良い。また、4つのRは各々異なっても、同一であってもかまわない。前記アンモニウムカチオンで置換基Rにおける、R’は水素、または置換もしくは無置換の炭素数20以下のアルキル基などであり、複数ある場合は互いに異なっても良く、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上20以下の整数である。R、R’において置換された場合の置換基としては、上記スルホニウムカチオンにおけるそれと同じものが挙げられる。
【0013】
上記アンモニウムカチオン以外のアンモニウムカチオンとしては、ピリジニウムカチオン、ピラリジニウムカチオンおよびキノリニウムカチオンなどの芳香族アンモニウムカチオン、ピロリジウムカチオン、ピペリジニウムカチオンおよびピペラジニウムカチオンなどの脂肪族複素環式アンモニウムカチオン、モルホリンカチオンのような窒素以外のヘテロ原子を含む複素環式アンモニウムカチオン、イミダゾリウムカチオンなどの不飽和の含窒素複素環式カチオンなど、のアンモニウムカチオンも挙げることができる。さらに、上記環状のアンモニウムカチオンでは窒素の位置が異なるカチオンや、環上に置換基をもったカチオンでもよく、ヘテロ原子を含む置換基を有するカチオンでもよい。
【0014】
前記オニウムカチオンにおける重合性官能基としては、ラジカル重合、イオン重合、配位重合およびレドックス重合などにより重合が可能な官能基であれば、何ら限定されないが、炭素−炭素二重結合を有する基が好ましく、ラジカル重合性官能基がより好ましい。前記ラジカル重合性官能基としては、活性エネルギー線もしくは熱によりラジカル重合が可能であることがより好ましい。このような官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、アリル基、ビニル基、スチリル基が挙げられるが、これらの中でも、(メタ)アクリロイルオキシ基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、アリル基およびビニル基が好ましい。
【0015】
前記塩モノマーを構成する重合性官能基を有するオニウムカチオンの具体例として、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−n−プロピルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−iso−プロピルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−n−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−iso−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリ−tert−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリエチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルジエチル−n−ヘキシルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリデシルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリオクチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルドデシルジメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシジメチルベンジルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルドデシルヘキシルメチルアンモニウムカチオン、ジアリルジメチルアンモニウムカチオン、ビススチリルメチルジメチルアンモニウムカチオン、ビススチリルエチルジメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリエチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリ−n−プロピルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリ−iso−プロピルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリ−n−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリ−iso−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリ−tert−ブチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリエチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルジエチル−n−ヘキシルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリデシルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルトリオクチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルドデシルジメチルアンモニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルドデシルヘキシルメチルアンモニウムカチオン等の各種アンモニウムカチオン、スチリルメチルメチルピロリジニウムカチオン、ビススチリルメチルピペリジニウムカチオン、N,N’−((メタ)アクリロイルオキシエチルメチル)ピペラジニウムカチオン、(メタ)アクリルアミドエチルメチルモルホリニウムカチオン、(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられる。
【0016】
また、本発明に用いる塩モノマーを構成する有機アニオンとしては、重合性官能基を有するアニオンであれば、特に限定されないが、例えば、アルコラートおよびフェノラートなどの水酸基含有有機化合物のプロトンが脱離したアニオン:RO-アニオン、チオレートおよびチオフェノラートなどのプロトンが脱離したアニオン:RS-アニオン、スルホン酸アニオン:RSO3-、カルボン酸アニオン:RCOO-、リン酸および亜リン酸の水酸基の一部が有機基で置換している含リン誘導体アニオン:Rx(OR)y(O)z-、(但し、x、y、zは0以上の整数で、かつ、x+y+2z=3またはx+y+2z=5)、置換ボレートアニオン:Rx(OR)y-、(但し、x、yは0以上の整数で、かつ、x+y=4)、置換アルミニウムアニオン:Rx(OR)yAl-、(但し、x、yは0以上の整数で、かつ、x+y=4)、カルボアニオン(EA)3-、窒素アニオン(EA)2-などが挙げられる。EAは水素原子または電子吸引基を示す。
【0017】
前記有機アニオンとしては特に、スルホキシル基、カルボキシル基、ホスフォキシル基およびスルホンイミド基由来のアニオンである、RSO3-、RCOO-、RPO32-、および(RO2S)2-が好ましい。ここで、Rは、水素、置換または無置換の、アルキル基Cn2n+1、アリール基(R’)n−C65-n−、アラルキル基(R’)m−C65-m−Cn2n−、アルケニル基R’−CH=CH−R’−、アラルケニル基(R’)n−C65-n−CH=CH−R’−、アルコキシアルキル基R’−O−Cn2n−、アシルオキシアルキル基R’−COO−Cn2n−であり、これらは環構造を有していてもよく、また、ヘテロ原子を含んでもよい。このRが分子内に2個以上ある場合は互いに同じであっても異なっていてもかまわない。ただし、置換基Rを一つ有するアニオンの場合はそのRが、複数の置換基Rを有する場合は、少なくとも一つが、重合性官能基を含む基であり、同様に、置換基EAを一つ有するアニオンの場合はそのEAが、複数の置換基EAを有する場合は、少なくとも一つが、重合性官能基を含む基である。前記Rにおける、R’は水素、または置換もしくは無置換の炭素数20以下のアルキル基などであり、複数ある場合は互いに異なっても良く、mは1以上5以下の整数であり、nは1以上20以下の整数である。また、前述Rの炭素上の水素原子の一部または全部がハロゲン原子に置換されているものも含まれる。R、R’において置換された場合の置換基としては、上記スルホニウムカチオンにおけるそれと同じものが挙げられる。
【0018】
前記有機アニオンにおける重合性官能基としては、上記重合性官能基を有するオニウムカチオンのそれと同じものを挙げることができる。塩モノマーの場合、少なくとも2つの重合性官能基を有することになるが、それらの重合性官能基は、それぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0019】
前記塩モノマーを構成する有機アニオンの具体例としては、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸、2−[(2−プロペニロキシ)メトキシ]エテンスルホン酸、3−(2−プロペニロキシ)−1−プロペン−1−スルホン酸、ビニルスルホン酸、2−ビニルベンゼンスルホン酸、3−ビニルベンゼンスルホン酸、4−ビニルベンゼンスルホン酸、4−ビニルベンジルスルホン酸、2−メチル−1−ペンテン−1−スルホン酸、1−オクテン−1−スルホン酸、4−ビニルベンゼンメタンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンリン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ−1−エタンリン酸等由来の各種アニオンが挙げられる。
【0020】
本発明に用いる重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーとしては、例えば、前記重合性官能基を有する有機アニオンの銀塩などの金属塩と、前記重合性官能基を有するオニウムカチオンのハロゲン化物とを反応させて合成できるが、目的の塩モノマーが得られるのであればこの合成方法に限定されない。
【0021】
前記塩モノマーを重合してポリマーを合成する方法としては、塩モノマーを、メタノールおよびアセトニトリルなどの有機溶媒に溶解させ、必要に応じてラジカル重合開始剤を添加し、加熱、可視・紫外領域の光を照射、あるいは、電子線などの放射線を照射することによって重合することにより、所望のポリマーが得られる。
前記ラジカル重合開始剤としては、加熱による方法の場合、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−イソブチロニトリル)および2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシドおよびジイソプロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系重合開始剤などが挙げられ、重合において、例えば、30〜150℃で加熱して重合する方法が適用できる。光を照射する方法の場合は、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノンおよび2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンなどがラジカル重合開始剤として挙げられる。ラジカル重合開始剤を使用する場合の添加量としては、電解質系中に含まれる全ての成分の重合性官能基のモル数に対して、0.01〜30mol%程度であることが好ましく、さらに好ましくは0.1〜20mol%である。合成においては、作業性を考慮し、溶媒中で重合しても良い。
本発明における塩モノマー由来のポリマーの好ましい含有量としては、電解質中での好ましい下限値が0.1wt%、好ましい上限値が99.8wt%であり、より好ましい下限値1wt%、より好ましい上限値98wt%である。ここでのポリマーの含有量とは、ポリマーを添加する場合にはその添加量、塩モノマーをその他の成分と混合した状態で重合させる場合にはモノマーの含有量である。
【0022】
本発明に用いるリチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiClO4、LiCF3SO3、LiBF4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22およびLiC(CF3SO23やLiイオンを含有するイオン性液体などが挙げられ、これらを単独あるいは2種以上を混合して用いても良い。使用するリチウム塩の添加量は、リチウムイオン伝導性電解質中での好ましい下限値が0.1wt%、好ましい上限値が99.8wt%であり、より好ましい下限値1wt%、より好ましい上限値98wt%である。
【0023】
本発明に用いる常温溶融塩としては、4級アンモニウムカチオンとアニオンから構成されるが、耐電圧が5.0V以上であれば、何ら限定されないが、5.3V以上であることがより好ましい。また、前記常温溶融塩のカチオン成分としては、式(1)で表される4級アンモニウムカチオンが好ましい。
+1234 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基を示し、同一であっても異なっていても良い。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。)
【0024】
ここで、前記アンモニウムカチオンに含まれるR1、R2、R3、R4の基としては、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基から選ばれる基である場合が好ましい。さらに、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基がより好ましく、アルコキシアルキル基が最も好ましい。さらにこれらの基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、メトキシメチル、メトキシエチル、(メトキシエトキシ)エチル、(ヒドロキシエトキシ)エチル、(ヒドロキシエチル)メチルアミノ、メトキシ(カルボニルエチル)、ヒドロキシエチル、フェニル、ナフチル、ベンジル、オキサゾリル、モルホリニルなどの基が挙げられる。
【0025】
また、前記常温溶融塩のアニオン成分としては、式(2)で表されるアニオンが好ましい。
N(R1SO2)(R2SO2-, N(R3SO3- C(R4SO2)(R5SO2)(R6SO2- (2)
(式中、R1〜R6は、それぞれ、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基から選ばれる基であり、同一であっても異なっていても良く、これらは環構造を有していてもよい。また、これらはヘテロ原子を含んでもよい。)
【0026】
ここで、前記アニオンに含まれる基としては、アルキル、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基から選ばれる基である場合に耐電圧が高く好ましい。さらに、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基がより好ましい。さらにこれらの基の具体例としては、前記常温溶融塩におけるアンモニウムカチオンと同じ基が挙げられる。また、これらの基を置換する場合の置換基は、前記塩モノマーのスルホニウムカチオンにおけるそれと同じものが挙げられ、さらには、全てがハロゲンで置換されていても良い。
使用する常温溶融塩の添加量は、リチウムイオン伝導性電解質中での好ましい下限値が0.1wt%、好ましい上限値が99.8wt%であり、より好ましい下限値1wt%、より好ましい上限値98wt%である。
【0027】
本発明に用いるポリマーにおいて、前記塩モノマーに、その他のモノマーを併用することも可能である。そのようなモノマーの例としては、メチレンビスアクリルアミド、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルメチルアミン、ジアリルエチルアミン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートおよびジアリルフタレートなどの重合性官能基を複数有するモノマーや、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、アクリル酸ステアリル、ジアセトンアクリルアミド、(メタ)アクリル酸1−アダマンチルおよび(メタ)アクリル酸2−エチルアダマンチルなどの重合性官能基を一つ有するモノマーなどが挙げられる。
本発明のイオン伝導性電解質には、上記成分の他に、可塑剤、重合開始剤、難燃性電解質溶解剤、その他の添加剤を用いることができる。
【0028】
本発明のイオン伝導性電解質を製造する方法としては、まず、塩モノマー、リチウム塩、常温溶融塩、必要に応じて、その他のモノマー、可塑剤、重合開始剤、その他添加剤の混合物を調製し、モノマーを重合して電解質を得ることができる。ここで、塩モノマーと任意に混合するその他の成分は、これにより合成されるポリマーの含有量が上記割合になるように添加する。前記塩モノマーを含んで得られたポリマー、リチウム塩、常温溶融塩を混合することによってもイオン伝導性電解質が得られる。この場合も、必要に応じて、その他のモノマー、可塑剤、重合開始剤、その他添加剤を使用しても良い。
前記混合方法としては、溶液混合、粉体混合、溶融混練など、公知の混合方法により行えば良い。可塑剤を使用する場合は、リチウム塩を可塑剤に溶かした溶液を、モノマーと混合しても良い。
【0029】
本発明のイオン伝導性電解質の製造において、モノマー、リチウム塩、常温溶融塩、必要に応じて難燃性電解質溶解剤、可塑剤、重合開始剤、その他添加剤を混合し、液状またはペースト状の混合物を調製するが、常温溶融塩、難燃性電解質溶解剤にリチウム塩を溶かした溶液と、モノマーとを混合しても良い。
前記可塑剤としては、例えば、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートなどの環状炭酸エステル、エチルメチルカーボネートおよびジエチルカーボネートなどの鎖状炭酸エステルなどが挙げられ、これらは、それらの混合物を添加することができる。
前記難燃性電解質塩溶解剤としては、自己消火性を示し、かつ、電解質塩が共存した状態で電解質塩を溶解するのに寄与する化合物が挙げられ、一般に非水電解質電池用電解液に添加される難燃性溶媒が利用でき、リン酸エステル、ハロゲン化合物およびフォスファゼンなどが挙げられる。
【0030】
さらに、電池製造における電解質の作製方法について具体例を示して説明するが、電解質の作製方法は何ら限定されない。
上記で調製した混合物は、液状またはペースト状のように均質な形態をとるものが好ましい。但し、実際にリチウムイオン伝導性電解質を製造する際に、調製後から重合による硬化が完了するまでの間、乳化、エマルジョン、コロイド、コアセルベートなどの溶液状態を維持可能であれば、混合物の濁度が高くても利用可能である。
上記で調製した混合物は、電極を備えた所定のセル若しくは型枠に注液し、加熱あるいはエネルギー線照射などの方法でモノマーを重合し、硬化させることにより、イオン伝導性電解質を得ることができる。
調製した混合物の粘度が高く作業しにくい場合は、調製した混合物を、テトラヒドロフラン、メタノールおよびアセトニトリルなどの低沸点の希釈溶媒で希釈したものを重合し、硬化させた後に、それらの希釈溶媒を除去する方法、または、希釈溶媒を電池に使用する電解液に、溶媒置換する方法などの公知であるセルの作製方法を用いても良い。
また、セルの構成によっては注液以外にも、調製した混合物をキャスト法や固相重合法など公知の方法によってリチウムイオン伝導性電解質を得ることができる。
【0031】
本発明の二次電池は、上記で得られたイオン伝導性電解質を構成要素とするものであり、前記イオン伝導性電解質の他に正極及び負極などを組み合わせて製造することができる。
本発明の電池で用いられる正極に使用される活物質としては、エネルギー密度が高く、リチウムイオンの可逆的な脱挿入に優れたリチウムを含有する遷移金属酸化物が好ましく、例えば、LiCoO2などのリチウムコバルト酸化物、LiMn24などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO2などのリチウムニッケル酸化物、これら酸化物の混合物およびLiNiO2のニッケルの一部をコバルトやマンガンに置換したものなどが挙げられる。負極活物質としては、リチウムイオンを挿入、脱離させることのできる材料であれば限定されないが、金属リチウムや炭素系材料などが挙げられ、炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、メソカーボンマイクロビーズおよびグラファイトなどが挙げられる。
【0032】
本発明の高分子固体電解質を用いた二次電池を製造する方法の例としては、まず、上記LiCoO2などの正極活物質、黒鉛などの導電剤、ポリ(ビニリデンフルオライド)などの結着剤を混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の正極合剤とする。この正極合剤を、厚み20μmのアルミニウム箔などからなる正極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで正極が得られる。
【0033】
次に、黒鉛粉末などの負極活物質と、ポリ(ビニリデンフルオライド)などの結着剤を混合して、負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン中に分散させてスラリー状の負極合剤とする。この負極合剤を、厚み15μmの銅箔などからなる負極集電体の両面に均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで負極が得られる。
上記のようにして得た、正極とイオン伝導性電解質と負極を貼り合わせ単層セルとし、このセルをポリエステルフィルム−アルミニウムフィルム−変性ポリオレフィンフィルムの三層構造のラミネートフィルムからなる外装体に挿入し封止して、二次電池が得られる。
【実施例】
【0034】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0035】
<塩モノマーの合成と重合>
2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸10.36g(50mmol)を、メタノール500ml/蒸留水4mlに溶解し、これに炭酸銀8.28g(30mmol)を添加して、室温下で穏やかに4時間連続攪拌し、濾過後、無色透明の溶液を得た。この濾液に、101mmolのアクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロリドをメタノール100mlに溶解した溶液を滴下反応させた。反応は定量的に進行した。反応生成物である塩化銀を濾別し、無色透明のメタノール溶液を回収した。この濾液をエバポレーターで減圧濃縮し、冷暗所で終日静置することにより目的物を再結晶させ、無色透明の板状結晶を回収した。得られた塩モノマーは、1H−NMRにより生成物の確認を行い、所望の化合物が得られていることを確認した。
さらに、この塩モノマー10gをメタノール30mlに溶解させ、重合開始剤としてベンゾイルパーオキシド0.03gを添加し、充分脱気操作を行った後に、窒素気流下、60℃で60分加熱重合させた。反応液は、重合の進行に伴い増粘した。得られた反応溶液を1500mlのアセトン中に滴下すると白色の固体が析出した。これを濾別し、60℃で2時間減圧乾燥させることによって、塩モノマーの重合体6.5gを回収した。
【0036】
[実施例1]
乾燥アルゴン雰囲気(露点温度:−60℃以下)にて、十分に乾燥した上記塩モノマー重合体2.0g、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド2.0g、ジエチルメチル(メトキシエチル)アンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(常温溶融塩(1))16.0gを混合した後、メタノールを5ml添加し、完全に溶解させた。得られた溶液を、テフロン(登録商標)シート上でキャストし、60℃で溶媒を除去した後に、110℃で2時間減圧加熱し、膜状のイオン伝導性電解質(1)を得た。上記で得られたイオン伝導性電解質(1)について、交流インピーダンス法により、イオン伝導度を測定した。測定の際の周波数範囲は0.1Hz〜10MHz、電圧は0.1Vとした。イオン伝導度を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は1.3×10-3S/cmであった。
ここで用いた常温溶融塩(1)の耐電圧を調べるのに、サイクリックボルタンメトリー装置を用い、作用極として白金電極、対極として白金電極、参照極として銀/塩化銀電極を使用し、掃引速度1mV/秒の条件でサイクリックボルタンメトリー測定を行った。測定結果から、耐電圧は5.7Vであった。
また、イオン伝導性電解質(1)を用いた二次電池のサイクル特性評価を行った。正極活物質として、LiCoO2を85重量%、導電剤としての黒鉛を5重量%と、結着剤としてのポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、正極合剤を調製し、この正極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の正極合剤とした。この正極合剤を、正極集電体として用いる厚み20μmのアルミニウム箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで正極を得た。
負極活物質として粉砕した黒鉛粉末を90重量%と、結着剤としてポリ(ビニリデンフルオライド)を10重量%とを混合して、負極合剤を調製し、この負極合剤を、N−メチル−2−ピロリドン中に分散させて、スラリー状の負極合剤とした。この負極合剤を、負極集電体として用いる厚み15μmの銅箔の両面に、均一に塗布し、乾燥後、ロールプレス機で圧縮成形することで負極を得た。
上記で得られた正極とイオン伝導性電解質(1)と負極を貼り合わせ単層セルとし、このセルをポリエステルフィルム−アルミニウムフィルム−変性ポリオレフィンフィルムの三層構造のラミネートフィルムからなる外装体に挿入し封止して二次電池を得た。電池の組み立て後、25℃、500mAの定電流電圧充電を上限4.2Vまで2時間行い、次に500mAでの放電(1時間率放電)を終止電圧2.5Vまで行った。これを1サイクルとして充放電を100サイクル行い、1サイクル目の放電容量を100%としたときの100サイクル目の容量維持率を求めた。100サイクル後の容量維持率は、97%であった。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、常温溶融塩(1)の代わりにジエチルメチル(メトキシエチル)アンモニウム・テトラフルオロボレート(常温溶融塩(2))を使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(2)を得た。イオン伝導性電解質(2)のイオン伝導度、常温溶融塩(2)の耐電圧を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は1.5×10-3S/cm、常温溶融塩の耐電圧は、6.0Vであった。また、実施例1と同様にして二次電池を作製し、100サイクル後の容量維持率を求めたところ、93%であった。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、常温溶融塩(1)の代わりに{2−(メトキシエトキシ)エチル}トリメチルアンモニウム・ビス(トリフルオロメタンスルホン)イミド(常温溶融塩(3))を使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(3)を得た。イオン伝導性電解質(3)のイオン伝導度、常温溶融塩(3)の耐電圧を測定した結果、室温(20℃)に於けるイオン伝導度は1.1×10-3S/cm、常温溶融塩の耐電圧は、5.6Vであった。また、実施例1と同様にして二次電池を作製し、100サイクル後の容量維持率を求めたところ、94%であった。
【0039】
[比較例1]
実施例1において、常温溶融塩(1)の代わりに1−エチル−3−メチルイミダゾリウム・テトラフルオロボレート(常温溶融塩(4))を使用する以外は、実施例1と同様にして、膜状のイオン伝導性電解質(4)を得た。ここで得られたイオン伝導性電解質のイオン伝導度は、室温(20℃)で1.3×10-3S/cmと高かったが、常温溶融塩(4)の耐電圧は、4.6Vと低かった。このイオン伝導性電解質(4)を用いた二次電池を実施例1と同様に作製し、100サイクル後の容量維持率を求めたところ、62%と低い値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、優れたイオン伝導性を示し、広い電位範囲で電気化学的に安定であり耐電圧の高いイオン伝導性電解質を提供できることから、これを用いて、性能に優れた二次電池に適用できる。また、この電解質は、キャパシタやエレクトロクロミック素子等、電気化学素子全般へも適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー、リチウム塩および常温溶融塩を含むイオン伝導性電解質において、前記ポリマーが、重合性官能基を有するオニウムカチオンと重合性官能基を有する有機アニオンとから構成される塩モノマーを含んで合成されたものであり、常温溶融塩が5.0V以上の耐電圧を有することを特徴とするイオン伝導性電解質。
【請求項2】
前記常温溶融塩を構成するカチオン成分が、下記式(1)で表される4級アンモニウムカチオンである請求項1記載のイオン伝導性電解質。
+1234 (1)
(式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基を示し、同一であっても異なっていても良い。これらのいずれか一対又はそれ以上が環構造を形成していても良く、ヘテロ原子を含んでも良い。)
【請求項3】
前記常温溶融塩を構成するアニオン成分が、下記式(2)で表されるアニオンの群から選ばれるものである請求項1または2に記載のイオン伝導性電解質。
N(R1SO2)(R2SO2-, N(R3SO3-, C(R4SO2)(R5SO2)(R6SO2- (2)
(式中、R1〜R6は、それぞれ、置換もしくは無置換の、アルキル基、アルコキシアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アラルケニル基から選ばれる基であり、同一であっても異なっていても良く、これらは環構造を有していてもよい。また、これらはヘテロ原子を含んでもよい。)
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のイオン伝導性電解質を構成要素とすることを特徴とする二次電池。

【公開番号】特開2007−103064(P2007−103064A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288472(P2005−288472)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】