説明

イオン処理セルとしてのセグメント化ロッド多重極

【課題】質量分析においてイオンを処理するための改善された装置を提供する。
【解決手段】 セグメント化ロッド多重極装置10は、その間に細長い空間を画定する1組の細長いセグメント化ロッド20、22、24、26と、空間が長手方向の軸を有し、各細長いセグメント化ロッド20、22、24、26が複数のセグメント30、31、32、34を有し、細長いセグメント化ロッドにRF電圧を適用して、空間内にRF電界をもたらす回路と、セグメントにDC電圧を適用する回路と、このDC電圧を適用する回路が複数のリード線を有し、各リード線が細長いセグメント化ロッドの個々のセグメント30、31、32、34に接続され、第1のリード線に接続されている第1の個々のセグメントへの電圧が、第2のリード線に接続されている第2の個々のセグメントへの電圧とは別個に制御することができ、細長い空間と連通する反応試薬源82とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術分野は、包括的にはイオン分析に関し、より詳細には、質量分析におけるイオン分析に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析法は、化学的、生物学的、生化学的な物質を特徴付けるのに、及び/又は定量するのに非常に有用である。タンデム質量分析法(MS/MS)は、混合物の個々の成分を特徴付けるのに、及び/又は限られた断片しかもたらさない被分析物から高度な構造情報を得るのに特に有用であることがわかっている。
【0003】
一般的なMS/MS構成では、第1の質量分析器において、特定の質量対電荷比(m/z)のイオンが選択されて、衝突セルに移送され、衝突セル内に不活性ガスを導入して、選択されたイオンと衝突させて断片化を引き起こす。こうして形成されたイオンは、その後、第2の質量分析器によって分析され、質量スペクトルが得られる。
【0004】
先細りの四重極ロッドを使用して、四重極タンデム質量分析計の衝突セル内に軸方向場を生成し、低エネルギーのシステムを利用してイオンを動かすのを容易にすることが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
衝突誘起解離のための衝突セルとして、質量分析計システムにおいて線形イオントラップ構成要素を使用することが開示されている(例えば特許文献2参照)。特許文献2は、セグメント化されたロッドを使用して、衝突セルの中でイオンを動かすための勾配を形成することを開示する。
【特許文献1】Thompsonらによる米国特許第5,847,386号
【特許文献2】Campbellらによる米国特許第6,833,544号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、質量分析においてイオンを処理するための改善された装置及び方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、質量分析システムにおいてイオンを処理するためのセグメント化されたロッド状の多重極装置を開示する。この装置は、端部を有し、その端部間に細長い空間を画定する1組の細長いセグメント化されたセグメント化ロッドを備えている。細長い空間は1つの長手方向の軸を有し、各細長いセグメント化ロッドは複数のセグメントを有する。装置はさらに、細長いセグメント化ロッドに無線周波数(RF)電圧を印加して、その空間内にRF電界を与えるための回路と、セグメントにDC電圧を印加するための回路とを備えている。異なるセグメントに異なるDC電圧を印加して、細長い空間内にDC電界を与えることができ、そのDC電界は、選択的に制御可能な1つ又は複数の電位領域を含む。
【0008】
本発明は、イオンを処理する方法も開示する。イオンを処理する方法は、本発明のセグメント化されたロッド状のセグメント化ロッド装置を設け、細長い空間内に被分析物イオンをもたらし、その空間にRF電界を適用し、細長いセグメント化ロッドの複数のセグメントに選択的にDC電圧を印加し、細長い空間内に被分析物イオン及び反応試薬を供給し、被分析物イオンを処理することを含む。細長い空間において、反応試薬で被分析物イオンを処理することは、イオン間反応、電子移動反応、陽子移動反応、電子誘起解離、被分析物イオンのエネルギー変調、交流勾配による断片化、衝突による活性化、光解離、イオン-分子反応及びそれらの組み合わせからなるグループから選択される反応を含む。
【0009】
処理されたイオンは、質量スペクトルを求めるために、質量分析器に移送される。任意の質量分析器を利用することができるが、その方法は、飛行時間質量分析器とともに使用するのに特に適している。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、質量分析においてイオンを処理する方法及び装置を提供する。本発明の装置は、セグメント化ロッド多重極20、22、24、26を有するイオン処理セル10、そのセル10内に反応試薬イオンを導入するための手段80、82を含む。セグメント化ロッド多重極20、22、24、26にタイムシーケンス制御されたRF電圧及びDC電圧を提供することを含む。工程は、被分析イオンを捕捉し、そのイオンに反応試薬イオンを選択的に作用させ、並びに/あるいは電界の特性を変更すること及び/又は電界に別個の領域を生成することによりイオンを物理的に操作することを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本明細書に記述する装置及び方法は、質量分析においてイオンを処理することを可能にする。より詳細には、その装置は、イオン処理セル内の電界内にイオンを捕捉し、イオン処理セル内のイオンを処理し、イオンをイオン処理セルから質量分析器に放出することを可能にする。捕捉することは、ポテンシャル井戸内のような、電界のある領域内にイオンを捕捉することを含む。イオン処理セルは、セグメント化四重極ロッドと、イオン処理セルに反応試薬を導入する手段とを備えている。イオン処理セルは、被分析物イオン源から被分析物イオンを、また反応試薬源から反応試薬を受容する。反応試薬は、反応試薬イオン、反応試薬分子、電子ビーム、陽子ビーム、光子ビームを含む。選択される反応試薬の特性は、被分析物の化学的特性及び被分析物において求められる情報に依存する。イオンの処理は、被分析物イオンを捕捉し、収集すること、及び/又は被分析物イオンをイオン-イオン陽子移動反応、イオン-分子陽子移動反応、イオン-イオン電子移動反応、イオン-イオン電子移動解離、交流勾配による断片化、電荷還元、衝突による活性化、光解離(たとえば赤外線多光子解離のような)、イオン-分子反応、イオン間反応、それらの組み合わせの反応を受けることを含む。処理後に、処理されたイオンは、任意の質量分析器に移送され、質量スペクトルが求められる。しかしながら、本発明の装置は、飛行時間質量分析器とともに使用されるのに特に適している。
【0012】
通常、本発明の装置は、被分析物イオン源、イオン処理セル、質量分析器を含む質量分析計システムにおいて使用される。被分析物イオンは、被分析物イオン源において形成される。たとえば、被分析物イオンは被分析物イオン源において、電子衝撃、化学イオン化、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)、エレクトロスプレー、高速原子衝撃等によって生成される。こうして形成されたイオンは、イオン処理セルに直に渡される。随意的に、システムは、イオン処理セルに特定の質量対電荷比(m/z)の選択されたイオンだけを通す質量フィルタをさらに備え、及び/又は処理する前に、特定の質量対電荷比(m/z)のイオンを処理セルにおいて選択することができる。
【0013】
被分析物イオンは、1組のセグメント化ロッドを備えているイオン処理セルに導入される。ロッドを、四重極、六重極又は他の多重極構造として構成することができる。全てのロッドにRF電圧が適用され、ロッド間の細長い領域内にRF電界がもたらされ、さらにセグメント化ロッドの複数のセグメントにDC電圧が選択的かつ制御可能に適用され、それによりイオンが捕捉され、イオンの動きが制御され、イオンの移送を制御することができる。反応試薬イオンをイオン処理セルに導入し、被分析物イオンの少なくとも一部と反応させることができる。
【0014】
随意的に、処理は、タイミングシーケンスによってDC電圧及び/又はRF電圧を操作し、イオン処理セル内の場又は場の一部を変更し、被分析物イオンと反応試薬イオンとの間の反応を促進することができる条件を与えること、及び/又は1つもしくは複数の付加的な処理ステップを可能にすることを含む。本明細書において使用する用語「処理済のイオン」は、イオン処理セルにおいて少なくとも1つの処理ステップを受けたイオンを指すために使用される。
【0015】
処理セルに導入され、イオン処理セル内に捕捉されるイオンは、複数のm/z値が混在するイオンのサンプル(グループ)、又は選択されたm/z値を有するイオンである。随意的に、複数のm/z値が混在するイオンのサンプルがイオン処理セルに導入されると、処理セルから不要なm/z値を有するイオンを放出することによって、処理セル内で特定のm/z値を有するイオンを選択することもできる。本明細書において議論するように、イオン処理セルにおいてイオンを処理することは、イオン間反応、イオンの断片化、イオンの物理的特性の操作、イオンの選択、イオンの分離等、及びこれらの組み合わせを含む。イオン処理セルにおいて処理した後、処理されたイオンは、分析のために、質量分析器に移送される。質量分析器は、飛行時間質量分析器、四重極質量分析器、モーメント質量分析器、ICR質量分析器等を含む。
【0016】
図1は、イオンを操作することができ、及び/又は反応させることができ、及び/又は断片化することができるイオン処理セル10の1つの例示的な実施形態の概略的な斜視図を示す。イオンセル10は、イオン処理セル10にイオンを導入するための入口オリフィス12、及び処理されたイオンをイオン処理セル10から移送するための出口オリフィス14を有する。
【0017】
図1に示すように、例示的なイオン処理セル10は、4つのセグメント化四重極ロッド20、22、24、26を有する。図1及び、図2のイオン処理セル10の断面図が示すように、セグメント化ロッド20、22、24、26は真空チャンバに収容され、細長い捕捉空間21の周囲に配置されている。各セグメント化ロッド20、22、24、26は、複数のセグメント30に分割されている。通常、4つのセグメント化ロッド20、22、24、26は全て、同じようにセグメント化されている。たとえば、1つの例示的な実施形態では4つのロッドを使用し、各ロッドは長さが15cmで、直径が12.5mmであり、12個の同様のセグメントに分割されている。この例は例示であり、他の寸法のロッド20、22、24、26及び/又は他のセグメント30の数も同様に適している。セグメント30はギャップ40によって分離されている。セグメント30は、最初の端部セグメント31、最後の端部セグメント32、中間セグメント34を含む。1つの例示的な実施形態では、セグメント30は、幅が0.3mmのギャップ40によって分離されている。これらの寸法は例示であり、他の寸法が同様に適している場合がある。セグメント30を、導電性材料から、又は導電性材料で被覆されている基板から製造し、たとえば絶縁性リング(図示せず)のような支持体を利用して他のロッドのセグメントに対して平行に位置合わせされている別個の部分とすることができる。
【0018】
実施形態によっては、セグメント30が、非導電性ロッドの被覆されていない領域間に離れて存在する複数の位置において、非導電性ロッドを導電性材料で被覆することによって形成されているセグメント化ロッド20、22、24、28を使用することが好都合である場合もある。たとえば、そのようなロッドを、たとえばセラミックのような絶縁性材料から形成されているロッドに金属化層を適用し、その後、金属被覆の一部を除去することによって形成することができる。金属被覆の一部を除去するために、ロッドの円周にわたって金属に帯状の切込みを入れ、切込みを入れられた金属の帯を円周にわたって除去することができる。金属の帯を除去することにより、非導電性ギャップ40が形成される。この工程を繰り返して、残る金属の帯の間に存在する多数のギャップ40を形成することができる。ロッド上に残される金属の帯が、多数のセグメント30を形成する。セグメント化ロッド20、22、24、28は、別個の部分からなるセグメントを含むロッド、もしくは非導電性材料の被覆されていない領域間に存在する金属被覆されたロッドの領域を設けるために、導電性材料の帯で選択的に被覆された非導電性材料から構成されるロッドのいずれか、又はその組み合わせを意味するものと見なされるべきである。
【0019】
不活性ガスをイオン処理セル10に導入するためのガス注入口89及び試薬イオン源82も設けられている。
【0020】
図3は、1つの例示的なセグメント化ロッド22を示す。図3に示すように、各ギャップ40は、チップ抵抗50及びキャパシタ60によって橋絡され、一定のRF電圧及び随意的なDC勾配をもたらし、細長い空間21内に電位場分布を形成するための手段が設けられている。RF電圧及びDC電圧は、タイミングシーケンスによって変化し、操作される。複数のセグメント30は電気リード線70を有し、電気リード線70は、リード線70に接続されている特定のセグメント30へのDC電圧を制御する。リード線70は、駆動電子機器に接続するためのものであり、駆動電子回路は手動で、又は自動化システムによって制御される。一実施形態では、複数のリード線70は、イオン処理セル10の内部に捕捉場を随意的に生成するのに十分な数のセグメント30へのリード線を含む。図3に示す例示的なロッド22の場合、これは、ロッド22の端部セグメント31、32及び中間セグメント34へのリード線70を含む。図3に示す中間セグメント34の位置は例示であり、端部セグメント31と32との間にあるセグメントのうちのどれでも中間セグメントとして選択することができる。通常、端部セグメント31及び32は、セグメント化ロッドの終端セグメントであるが、セグメント化ロッドの終端付近にあるセグメントを同様に、端部セグメント31及び32として機能させることができる。中間セグメント34は、各セグメント化ロッド20、22、24、26上の同じ相対位置に存在するように選択され、リード線70は装置の他のセグメント化ロッド20、24、26にも同じように接続されている。実施形態によっては、たとえば、反応試薬が加えられる位置の近く、又は光子ビームが導入される領域内のような、イオン処理セル10の特定の物理的領域内にイオンを収集するのを促進するように中間セグメントの位置を選択することが望ましい場合もある。
【0021】
実施形態によっては、さらに別のセグメント30に個別のリード線70を取り付けることができ、全てのセグメント30に取り付けることもできる。特定のセグメント30にリード線70を接続することによって、そのように接続されるセグメント30に関連付けられるDC電圧及び/又はDC電位場を直に制御することができるようになる。リード線70に取り付けられるセグメント30の数を増やすことにより、細長い空間21内の場を細かく選択的に制御できるようになり、たとえば細長い空間21の中で、ポテンシャル井戸のような、場の条件が異なる複数の領域を設定することができる。
【0022】
多数のリード線70を利用する場合、DC電圧を、タイミングシーケンスによって、セグメント30のグループに対して、及び/又は個々のセグメント30に対して操作することができる。セグメント30へのDC電圧を制御及び変更して、細長い空間21内に、異なる構成の電位領域、及び/又は場の条件が異なる複数の領域を作り出すことができる(たとえば、領域の数及び/又は領域の特性を変更することができ、及び/又は特定の領域に対する電界強度を操作することができる)。DC及びRF回路は、タイミングシーケンスによってそのような変更を行うことを可能にする。そのタイミングシーケンスは、DC電圧を変更すること、及び/又はRF電圧を変更することを含む。こうして、イオンを細長い空間21の中及び/又は細長い空間21の一部の中に捕捉し、一連の電位場条件にかけることができる。
【0023】
図4に示すように、そのイオン処理セルはさらに、シールド電極16及び18を備える。図4では、シールド電極16及び18を、一部を切り取った図において示す。各シールド電極16及び18は円筒形の鞘であり、入口及び出口開口部が捕捉空間21の長手方向の軸と位置合わせされている。シールド電極16、18は、シールド機能を果たし、及び/又は、以下に記述するように、イオン処理セル10内にイオンを捕捉し、蓄積するのを容易にするためのイオンゲートとしての機能を果たす。
【0024】
図5に示すように、イオン処理セル10はさらに、一対のイオンガイド多重極62、64を備えている。イオンガイド多重極62、64は、イオンをイオン処理セル10内に案内するように機能する。イオンガイド多重極62、64に適用される電圧は、RFのみ、又はDC及びRFとすることができる。随意的に、実施形態によっては、イオンガイド多重極62、64のDC電位を選択的に変化させ、被分析物イオンをイオン処理セル10に導入し、被分析物イオンをイオン処理セル10内に捕捉し、イオンをイオン処理セル10から放出することができる。
【0025】
イオン処理セル10は、イオンを処理するための数多くの実験オプションを提供する。本明細書で記述するイオンを処理するためのオプションは、イオン処理セル10が促進する様々な分析の例示である。
【0026】
飛行時間質量分析器は、通常、分析するためにイオンのパルスを受容するが、パルス間に被分析物イオン源において生成されるイオンのかなりの部分が、分析するためのパケット内に捕捉されない。1つの例示的な実施形態では、被分析物イオン源と飛行時間質量分析器との間にイオン処理セル10を配置することにより、パルス間に生成されるイオンを収集し、次のパルスにおいて、質量分析器内に放出するためにイオンを蓄積できるようになる。収集し、蓄積することによって、飛行時間システムにおいて、より大量の被分析物イオンを分析することができるようになる(たとえば、飛行時間分析器のデューティサイクルを高くすることによって)。実施形態によっては、被分析物イオン源において形成されるイオンの大部分を収集、蓄積、分析することができる。
【0027】
図1を参照すると、1つの例示的な実施形態では、被分析物イオン源において生成されるイオンを収集し、蓄積することが、被分析物イオン源からイオンを導入するために各ロッドの最初の端部セグメント31の電位を調整すること、及び飛行時間質量分析器にイオンを放出できないようにするために各ロッドの最後の端部セグメント32の電位を調整することによって達成される。一実施形態では、イオンを捕捉するために、各ロッドの少なくとも1つの選択された中間セグメント34の電圧が、最初の端部セグメント31及び最後の端部セグメント32の電位よりも低い電位に調整される。一旦イオンが収集されたならば、イオンが入口オリフィス12から出入りできないように、最初の端部セグメント31の電位が上げられる。中間セグメント34への電圧は、同じままとすることができ、又はイオンが処理されるのに応じて様々に調整することができる。飛行時間質量分析器にイオンのパルスを送出するために、出口オリフィス14において、最後の端部セグメント32の電圧を下げて、それにより、飛行時間質量分析器内にイオンのパケットを移送できるようにする。イオンの移送を容易にする勾配を与えるために、中間セグメント34の電位を調整することが望ましい場合もある。
【0028】
通常、イオンの速度を落とすために、不活性ガスが存在する中でイオンが収集される。そのガスは、ガス注入口89を介して、イオン処理セル10に導入することができる。ガス圧は、イオンの速度を落とすのに十分であるが、イオンの断片化を誘発するほど高くないようにすべきである。通常、0.1333〜2.666パスカル(1〜20 mTorr)のガス圧で十分である。最適な圧力は、分析されるべきイオン及び使用される不活性ガスの種類に依存する。多くの応用形態の場合、0.6666〜1.333パスカル(5〜10 mTorr)の圧力が利用され、約0.6666パスカル(5mTorr)の圧力を利用することが一般的である。適する不活性ガスは、たとえばアルゴン、クリプトン、窒素を含む。
【0029】
代替的に、被分析物源において生成されたイオンは、入口オリフィス12及び出口オリフィス14の近くにあるイオンゲートを利用して、イオン処理セル10内に収集し、蓄積される。ゲートを、たとえば、図4に示すシールド電極16、18とすることができ、又は図5に示す多重極イオンガイド62、64とすることができる。図4を参照すると、イオンの収集、蓄積は、シールド電極16、18の電位を調整することによって達成される。イオンを捕捉するために、入口オリフィス12付近のシールド電極16の電位を下げ、イオンが導入され、出口オリフィス14付近のシールド電極18の電位を上げ、イオンがイオン処理セル10から出るのを防ぐ。一旦イオンのグループが収集されたならば、シールド電極16の電位を上げ、イオンのグループを捕捉する。処理セル10から処理されたイオンを放出するために、出口オリフィス14のシールド電極18の電位を下げ、イオンのパケットを飛行時間質量分析器に移送できるようにする。実施形態によっては、勾配を確立して移送するのを容易にするために、1組又は複数組の中間セグメント34の電圧を調整することが望ましい場合もある。1組の中間セグメント34として、各ロッド上で類似の位置に配置されている中間セグメント34を、セグメント化ロッドから1つずつ選ぶことが望ましい。こうして、1組の中間セグメント34は、細長い空間21の一部を取り囲む。
【0030】
図5を参照すると、被分析物源において生成される被分析物イオンの収集、蓄積は、イオンガイド多重極62、64への電圧を操作することによって達成される。収集段階では、入口オリフィス12の近くに配置されているイオンガイド多重極62のためのDC電位を下げ、出口オリフィス14の近くにあるイオンガイド多重極64のDC電位を、イオンが飛行時間質量分析器に放出されないようにする電位に調整する。イオンを捕捉するために、入口オリフィス12の近くにあるイオンガイド多重極の電位を上げ、イオンが入口オリフィス12から出入りするのを防ぐ。飛行時間質量分析器にイオンのパルスを送出するために、出口オリフィス14の近くにあるイオンガイド多重極64への電圧を調整し、出口オリフィス14の場の電位を下げ、イオンのパケットが飛行時間質量分析器内に移動できるようにする。移動するのを容易にするために、1組又は複数組の中間セグメント34の電圧を調整することが望ましい場合もある。
【0031】
端部セグメント及び中間セグメント31、32、34、シールド16、18、イオンガイド多重極62、64は、実施形態によっては、イオンゲートとして機能する以外の機能を実行することもでき、これらの構造は、特定の実施形態において使用されるときに、必ずしもイオンゲートとしては使用されない。セグメント31、32、34、シールド電極16、18、イオンガイド多重極62、64又はそれらのある組み合わせは、特定の実施形態において、イオンゲートとして利用される。
【0032】
イオン処理セル10において収集されるイオンを単に収集して、グループ(たとえばパケット)として質量分析器に移送することができる。先に議論したように、そのような過程は、飛行時間質量分析器のデューティサイクルを高めることができる。デューティサイクルを高めることにより、通常、感度が増す。代替的には、質量分析器に移送する前に、イオン処理セル10において、イオンを収集し、反応させ、及び/又は別の方法で操作することもできる。
【0033】
たとえば、図6を参照すると、イオン処理セル10において収集されたイオンを、反応試薬源82から反応試薬オリフィス80を介してイオン処理セル10に導入された反応試薬と反応させることができる。実施形態によっては、1組又は複数組の中間セグメント34の位置を選択して、被分析物イオンを反応試薬オリフィス80の近くに収集するのを容易にすることが望ましい場合もある。被分析物イオンを反応試薬オリフィス80の近くに収集することにより、被分析物イオン及び反応試薬イオンが反応する機会を最大とすることができる。さらに、実施形態によっては、被分析物イオンの近くに反応試薬を集中し、及び/又は位置付けるために、反応試薬イオンと被分析物イオンとの間の相互作用を最適化するのを容易にする1つ又は複数のレンズ81を設けることもできる。
【0034】
反応試薬イオンは、分子及び原子から導出されるイオン、又は代替的に、電子又は陽子のような電荷を有する物体とすることができる。本明細書に記述する例では、反応試薬イオンを、通常、分子及び原子から導出されるものとして説明する。しかしながら、応用形態によっては、たとえば、フィラメント又は放射性線源のような発生源から導出される電子又は陽子を被分析物イオンと反応させ、同様の結果をもたらすこともでき、したがって、それらも反応試薬イオンの範囲内に含まれることを理解されたい。反応試薬イオンは、収集された被分析物イオンと反応する。被分析物イオンの特性及び反応試薬イオンの特性が、行うことができる特定の種類の反応を決定する。したがって、イオン処理セル10は、非常に広範囲のイオン種に適用することができるという利点と、所望により、反応試薬イオンを注意深く選択することによって、特定のイオン間反応の種類に極めて特化できるという利点との両方を有する。反応試薬イオンは被分析物イオンと化学反応し、それにより、被分析物イオンの化学的構造が変化する。構造の変化は、付加物を形成すること、及び/又は反応試薬イオン及び被分析物イオンとは異なる1つ又は複数の化学種を形成するように相互作用することを含む。化学反応の生成物は、分析されると、被分析物イオンの特徴付けを容易にする質量スペクトル又は他のデータをもたらす。特徴付けることは、被分析物イオンの構造情報及び/又は物理的属性、化学的属性についての情報を提供すること、並びに/あるいは被分析物イオンの定量を容易にする化学種を提供することを含む。
【0035】
イオン処理セル10を、正又は負いずれかの被分析物イオンを分析するために使用することができる。随意的に、イオン処理セル10及び反応試薬源82の極性を変更することを含み、極性を変更することにより、単一の処理セル10を使用して両方の種類の被分析物に対応できるようにするための回路を設けることができる。
【0036】
図6の図に示すように、反応試薬イオンを軸方向に加える結果として、通常、細長い空間21のある領域において反応試薬イオンの密度がより高くなる(注記:図6は2つのロッド20、22だけを示す。四重極の例の場合、例示するのを簡単にするために、その概略図からロッド24、26を省略する。実際には、イオン処理セル10は多重極を含み、したがって四重極は、図1、図2、図4及び図5に示すように、4つのセグメント化ロッドを有し、六重極は6つのセグメント化ロッドを有する。他の多重極は、特定された多重極のための通例の数のロッドを有する)。実施形態によっては、1組の中間セグメント34を利用して、勾配を形成し、反応試薬オリフィス80の近くにある細長い空間21の領域内で被分析物イオンの収集を容易にすることによって、イオン密度をさらに高めることもできる。反応を容易にするために、実施形態によっては、より高いイオン密度であることが好都合である。所与の領域内のイオン密度を高める機構は、線形イオントラップにおいて特に有用である。通常3-Dイオントラップよりも大きな捕捉空間を有する線形イオントラップでは、線形イオントラップ内に高いイオン密度の領域を形成する能力が、被分析物イオンと試薬イオンとの反応を促進する。イオン処理セル10の特定の領域内のイオン密度は、全てのセグメント化ロッドに、又はセグメント化ロッドの選択された部分に勾配電位を与えることによってさらに調整することができる。ロッドの選択されたセグメント30への電位を調整することは、セグメントリード線70を介して達成される。
【0037】
図7は、図6の例示的な実施形態の1つの例示的な利用に対する電位図である。図7に示すように、電位図の電圧はポテンシャル井戸105を生成するために選択され、ポテンシャル井戸105は、イオンを捕捉し、イオン間反応を促進するための別個の領域をもたらす。また、図7は、電圧勾配110を提供し、イオンのポテンシャル井戸105への誘導を容易にすることを示す。DC及びRF回路によって、タイミングシーケンスにしたがって電圧を選択的に、かつ制御可能に調整することができるようになり、たとえば、勾配110、又はポテンシャル井戸105を生成、移動、除去することができる。したがって、勾配110の存在、ポテンシャル井戸105の存在、勾配110の位置、ポテンシャル井戸105の位置、ポテンシャル井戸105に関連付けられるエネルギー、勾配110に関連付けられるエネルギー等のような変数は、分析の過程において(たとえば、イオン処理セル10を利用してイオンを処理する間に)調整可能であり、変更可能である。この制御可能な選択性は、たとえば、被分析物イオンを位置決めするのを容易にすることによって、及び/又は処理中のイオンのエネルギーを調整することによって、イオン間反応のための条件を最適化するための自由度を提供する。随意的に、これらの変化は、所定のタイミングシーケンスによって行うことができる。所定のタイミングシーケンスは、所望により自動化することができる。
【0038】
図7の電位図に示すように、イオン処理中の特定の時間に、電圧V2が複数のセグメント30に適用され、一方それよりも高い電圧V1及びV4がそれぞれ、セグメント31及び32に適用される。この電圧の組み合わせは、イオン処理セル10内に被分析物イオン及び/又は反応試薬イオンを収集するトラップを形成する。同時に、V2よりも低い電圧V3を中間セグメント34に適用することができる。より低い電圧V2を適用することにより、イオン捕捉領域内にポテンシャル井戸105が形成される。イオンが、電位のより低い領域、たとえば井戸105内に移動し、イオン密度の高められたイオン雲が形成される。被分析物イオンをセル内に閉じ込めることによって、被分析物イオンと反応試薬との反応が促進され、ポテンシャル井戸105内に被分析物イオンを収集することによって、被分析物イオンと反応試薬との効率的な相互作用及び反応がさらに促進される。セル内で断片化しない程度にイオンと不活性ガスとを衝突させてエネルギーを吸収することによって、イオン処理セル内にイオンを捕捉するのをさらに容易にすることができる。不活性ガスは、ガス注入口89を介して、セルに導入することができる。
【0039】
図7の図は、イオン処理セル10において確立することができる電位分布の多数の組み合わせの一例にすぎない。さらに、その電位分布は、タイミングシーケンスによって、容易に変更することができる。イオンがイオン処理セル10内に捕捉されるのに応じて、そのタイミングシーケンスを実施できるだけでなく、イオン処理セル10内の滞留時間が一定にならないように、シーケンス又はシーケンスの任意の部分に割り当てられる時間を自在に変更することができる。したがって、イオン処理セル10は、たとえば、一定の滞留時間を有するデバイスと比べて、反応時間を最適化するための自由度をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、被分析物イオン及び反応試薬イオンが、電荷移動又は電荷交換反応を受ける。電荷移動反応は、数多くの応用形態を有する。例示的な応用形態は、電荷還元及び/又は解離を含む。電荷還元及び解離の応用形態は、多くの種類の分子の分析、特にタンパク質のような大きな分子の分析において有用である場合がある。
【0041】
たとえば、タンパク質のような大きな分子は、通常、従来のエレクトロスプレー又は大気圧化学イオン化(APCI)分析物イオン源から質量分析器に放出されるときに、多数の正の電荷を帯びる。m/z、すなわち質量対電荷比が検出される特性であるので、多数の電荷を有するイオン種は、その分子イオン種に関連付けられる一連のイオンを生成する。たとえば、4個までの電荷及び1000の中性質量mを有するイオンは、1001((m+1)/1)、501((m+2)/2)、334.3((m+3)/3)及び251((m+4)/4)のイオンを示す質量スペクトルを生成し、それらは全て、被分析物イオンの分子イオン種のm/zに直に関連付けられる。飛行時間質量分析器では、複数の電荷状態に起因して複数のイオンが生成される結果として、種々の電荷状態からのスペクトル寄与と、他の成分及び/又は断片のスペクトル寄与との区別が付かなくなる可能性がある。しかしながら、高い電荷数の正の電荷を有するイオンが、反対の極性の適切な反応試薬イオンに曝される場合には、陽子又は電子の移動が生じ、それにより高い電荷数のイオン上の電荷数が減少する。タンパク質又はペプチドのような、高い電荷数の正の電荷を有する種の場合、電荷移動反応において、高い電荷数の正の電荷を有するイオンから負の電荷を有する反応試薬イオンに陽子が移動する。実施形態によっては、正の電荷数を、被分析物イオン及び/又は被分析物イオンの断片上で、特に望ましい1つの正電荷まで減らすことができる。しかしながら、スペクトルを単純化できる可能性があるので、応用形態によっては部分電荷還元が有益な場合もある。従来の分析では、被分析物イオンは高い電荷数の正の電荷を有するのが通例であるが、正の電荷を有する反応試薬イオンから陽子を移動させる負の電荷を有する被分析物も同様に使用することができる。
【0042】
別の応用形態では、イオン処理セル10において、反応試薬イオンから被分析物イオンに電子を移動させることができる。このように、正の電荷を有する被分析物イオンに電子が移動する結果として、被分析物イオンの電荷還元及び/又は電子移動解離を引き起こすことができる。たとえば、フルオランテンのような反応試薬イオンを使用することにより適する電子が与えられ、電子移動後に、高い電荷数の正の電荷を有するペプチドイオンの断片化を引き起こすことができる。このような電子移動解離は、ペプチド及びタンパク質を特徴付ける際に特に有用である。通常、このような衝突は、不活性ガスによる従来の衝突の活性化とは異なり、少なくともいくつかの断片化をもたらす。たとえば、タンパク質の場合、電子移動解離から結果生じる断片化は、たとえばc及びzのイオン配列を特定することによって、及び/又は翻訳後修飾を特徴付けることによって、特定の重要な配列情報を得るのに特に有用である。
【0043】
種々の電位の領域を選択的に生成し、その電位を選択的に変更できることにより、反応試薬イオンで処理し、イオン処理セルから質量分析器に移送するためにイオンを捕捉できるだけでなく、随意的に、細長い空間21内の特定の領域にイオンを捕捉し、イオンのエネルギーを変調することもできる。たとえば、イオン処理セル内の交流勾配内で捕捉されたイオンを動かすことにより、イオンエネルギーを高めることができる。交流勾配は、ロッドのセグメントに沿って場の勾配をもたらし、タイミングシーケンスによって場の勾配を反転することによって生成することができる。交流勾配にイオンを曝すことによって、イオンエネルギーが増し、及び/又は断片化が全体として、及び/又はある特定の種類の断片化が促進される。
【0044】
イオンは、イオン処理セル10において単一の処理ステップを受け、又は何度も処理ステップを受ける。多数の処理ステップは、同じ種類の処理ステップの繰返し、1つもしくは複数の異なる処理ステップ又はそれらの組み合わせを含む。使用すべき1つ又は複数の処理ステップの選択は、求められる情報、被分析物イオン及び反応試薬の化学的特性及び物理的特性によって決定される。実験の設計及びパラメータの最適化は、通常、実験的に決定される。
【0045】
多数のステップの処理は、先行する処理ステップにおいて形成される生成物又は断片イオンの衝突による活性化を含む。衝突による活性化を実施するために、対象のm/zのイオンが選択され、他のm/z値を有するイオンが、イオン処理セル10内の細長い空間21から径方向に放出される。径方向への放出は、米国特許第5,672,870号においてFloryらが記述するように実施することができる。
【0046】
その後、選択されたイオンを含むイオン処理セル10において不活性ガスを利用することによって、衝突による活性化が実施される。処理セル10内の選択されたイオンは、不活性ガスと衝突し、衝突によって引き起こされる断片化(たとえば衝突による活性化)を受ける。通常、アルゴン又はクリプトン等のような不活性ガスが衝突ガスとして使用される。約0.6666パスカル(5mTorr)のガス圧及び20〜40 eVの衝突エネルギーが、イオン処理セル10内の衝突による活性化のための一般的なパラメータの例示である。これらのパラメータは例示であり、他のパラメータが同様に適している場合もある。衝突ガスを、反応試薬イオンオリフィス80を介して、又は径方向に配置されている別個のオリフィスを介して導入することができる。
【0047】
衝突による活性化が完了すると、収集されたイオン及び断片を質量分析器に移送して質量スペクトルを得ることができ、又はさらに別の1つ又は複数の処理ステップにかけて、その後、イオン処理セル10から質量分析器に移送して、質量スペクトルを得ることができる。さらに別の処理は、特定のイオンの選択、選択されたイオンと反応試薬イオンとの反応、選択されたイオンの衝突による活性化の1つもしくは複数の別のステップ(たとえばMSn)、場を変更することによる選択されたイオンの操作等、あるいはそれらの組み合わせを含む。処理されたイオンを質量分析器に移送することは、先に議論したように、出口オリフィス14にあるイオンゲート18の電位を変更することによって達成される。質量分析器において分析することにより、質量スペクトルを得ることができる。
【0048】
これまでの議論は、本発明の数多くの例示的な方法及び実施形態を開示し、説明するものである。本発明が、その精神又は不可欠な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現できることは当業者には理解されよう。したがって、本発明の開示は、添付の特許請求の範囲に述べられ、本発明の範囲を例示することを意図しており、その範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】イオン処理セルの斜視図である。
【図2】イオン処理セルの断面図である。
【図3】セグメント化ロッドの概略図である。
【図4】イオン処理セルの斜視図である。
【図5】イオン処理セルの斜視図である。
【図6】イオン処理セルの一実施形態の概略図である。
【図7】イオン処理セルのための1つの例示的な電位図である。
【符号の説明】
【0050】
10 イオン処理セル
12 入口オリフィス
14 出口オリフィス
16、18 シールド電極
20、22、24、26 セグメント化ロッド
21 空間
30 セグメント
31、32 端部セグメント
34 中間セグメント
40 ギャップ
50 チップ抵抗
60 キャパシタ
62、64 イオンガイド多重極
70 電気リード線
80 反応試薬オリフィス
81 レンズ
82 試薬イオン源
89 ガス注入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを処理するためのセグメント化ロッド多重極装置(10)であって、
その間に細長い空間(21)を画定する1組の細長いセグメント化ロッド(20、22、24、28)と、該空間(21)が長手方向の軸を有し、各細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)が複数のセグメント(30、31、32、34)を有し、
前記細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)にRF電圧を適用して、前記空間(21)内にRF電界をもたらす回路と、
前記セグメント(30、31、32、34)にDC電圧を適用する回路と、このDC電圧を適用する回路が複数のリード線(70)を有し、各リード線(70)が前記細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)の個々のセグメント(30、31、32、34)に接続され、第1のリード線(70)に接続されている第1の個々のセグメント(30、31、32、34)への電圧が、第2のリード線(70)に接続されている第2の個々のセグメント(30、31、32、34)への電圧とは別個に制御することができ、
前記細長い空間(21)と連通する反応試薬源(82)とを備えている装置。
【請求項2】
イオンを処理するためのセグメント化ロッド多重極装置(10)であって、
端部を有し、その端部間に細長い空間(21)が画定されている1組の細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)と、該空間(21)が長手方向の軸を有し、各細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)が複数のセグメント(30、31、32、34)を有し、
前記細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)にRF電圧を適用して、前記空間(21)内にRF電界をもたらす回路と、
前記セグメント(30)にDC電圧を適用する回路と、この回路が、異なるDC電圧を異なるセグメント(30、31、32、34)に適用して、DC電界を形成することができ、前記細長い空間(21)内の該DC電界が選択的に制御可能な電位領域を含み、
第1のイオンゲート及び第2のイオンゲート(16、18;62、64;31、32、34)と、
前記細長い空間(21)と連通する反応試薬イオン源(82)とを備えている装置。
【請求項3】
前記異なるセグメント(30、31、32、34)に適用される前記異なる電圧が電圧勾配を形成し、当該異なる電圧が、制御可能な反転可能電位勾配を形成するように調整可能である請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記RF電圧及び前記DC電圧が、所定のタイミングシーケンスで選択的に適用され、変更される請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記細長い空間(21)内にイオンを注入するための被分析物イオン源と、
前記細長い空間(21)からイオンを受容する質量分析器とをさらに備え、前記被分析物イオン源及び前記質量分析器が前記細長い空間(21)と連通している請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
イオンを処理する方法であって、
端部を有し、その端部間に細長い空間(21)を画定する1組の細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)を設け、該空間が長手方向の軸を有し、各細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)が複数のセグメント(30、31、32、34)を有し、
前記細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)にRF電圧を適用して、前記細長い空間(21)内にRF電界をもたらす回路を設け、
前記セグメント(30、31、32、34)にDC電圧を適用し、異なるセグメント(30、31、32、34)に異なるDC電圧を適用し、所与のセグメント(30、31、32、34)への該DC電圧がタイミングシーケンスにおいて選択的に変更することができる回路を設け、
前記細長い空間(21)内に被分析物イオンを提供し、
前記空間(21)にRF電界を適用し、
前記細長いセグメント化ロッド(20、22、24、26)の前記セグメント(30、31、32、34)の少なくとも一部にDC電圧を適用し、
前記細長い空間(21)内に反応試薬を提供し、
前記細長い空間(21)において前記被分析物及び前記反応試薬を処理することを含む方法。
【請求項7】
前記被分析物及び前記反応試薬を処理することが、イオン間反応、電子移動反応、陽子移動反応、電子誘起解離、エネルギー変調、交流勾配による断片化、衝突による活性化、光解離、イオン-分子反応、又はそれらの組み合わせからなるグループから選択される反応を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記RF電圧及び前記DC電圧がタイミングシーケンスによって変更される請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記細長い空間(21)内で特定の質量対電荷比を有する処理されたイオンを選択し、
所定の時間にわたって、前記細長い空間(21)内に前記選択された処理されたイオンを保持し、
前記選択されたイオンとは異なる質量対電荷比を有する処理されたイオンを前記細長い空間(21)から放出することをさらに含む請求項6から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記DC電圧を操作することによって、前記処理された被分析物イオンを処理することをさらに含む請求項6から9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−80828(P2007−80828A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−248492(P2006−248492)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】5301 Stevens Creek Boulevard Santa Clara California U.S.A.
【Fターム(参考)】