説明

イオン導電ゲルに基づく高エネルギー非水電池、その製造方法及びその用途

イオン導電ゲルに基づく高エネルギー非水電池、その製造方法及びその用途。
少なくとも1つのイオン液体と、リチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩を少なくとも1つの無機分子前駆体又は重合性モノマーと共に含む媒体を、過剰に注加する工程と、その場で、重縮合又は重合する工程を含む少なくとも1つの複合電極を含む蓄電池又は電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、イオン導電ゲル又はイオノゲルを使用する高エネルギー非水電池、その製造方法及びその用途である。
【背景技術】
【0002】
ゾル-ゲル法が従来から知られており、その方法は、簡単な装置で、温和な条件下で行われ、材料の成形が容易である(Brinker及びScherer,1990)。標準的な方法において、ゾル-ゲル法は、水和と濃縮法からなり、その方法は、ゲルと称される連続した固体骨格の形成のために、分子前駆体(実溶液)から出発し、コロイド状粒子の接続によりコロイド状溶液(又はゾル)の形成を導く。非加水分解性のゾル-ゲル法は、ゾル-ゲル法の中でも特別なケースであり、水の非存在下で行われる(Vioux,1997)。他の有名な特別なケースは、ギ酸を使用することによりシリカゲルを得るゾル-ゲル法からなる(その場での水の形成)(Sharp,1994;Dai,2000)。
【0003】
イオン液体は、カチオンとアニオンとの組み合わせにより形成され、室温に近い温度で液状である。イオン液体は、揮発性ゼロ、高イオン伝導性であると同時に触媒特性のような注目すべき特徴を有する。イオン液体は、現在、多くの分野で使用されており、特に電解質として使用されている(Bonhote等,1996;Olivier-Bourbigou等,2000;Branco等,2002;Doyle等,2000;Noda等,2000;Sun等,2001;Aurbach等,2008 Journal of Power Sources,DOI:10.1016/j.jpowsour.2008.09.099)。
【0004】
国際特許出願WO2005/007746には、モノリシック状の固体の形態で存在するイオン伝導体であり、イオン液体の物理-化学性と、無機又は有機無機固体の物理-化学性とを組み合わせるために、イオン液体が閉じ込められているイオノゲルが記載されている。イオノゲルは、イオン液体の媒体中、1以上のゾル-ゲル前駆体(アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン、アリールアルコキシシラン、ハロゲノシラン、ハロゲノアルコキシシラン、金属アルコキシド、金属アルキルアルコキシド又は金属アリールアルコキシド、金属ハライド等)の単独、又はカルボン酸又は他の酸素ドナー(アルコール、エーテル等)の水溶液(酸、塩基、塩等)の存在下の溶液を均一相に混合することからなる単一工程で製造される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
イオノゲルは多くの有用な性質を有しているが、電解質としてのその使用には、製造中の高い傾向での収縮、イオノゲルが分離すべき2つの電極間に電気的な短絡を導く低硬度、及びリチウムとの使用には高すぎる水含量による課題もある。
【0006】
固体電池は、電極と電解質が固体である電池であり;電解質は、負極から正極を電気的に分離し、同時に2つの電極間のイオン種(Li+, Na+又はMg2+イオン)を通過させうる絶縁化合物である。そのような電池は、従来の液状電解質溶液を使用する電池で観察される液体の漏れ、焼成(calcination)、ガスの発生等のリスクを減少させることが可能であり、結果として、使用上の安全性が改善される。しかし、相対的に低導電性の固体電極と電解質により、得られた電池は、薄層で製造され、結果として単位表面積当たりのエネルギー密度が低くなる。
更に、高エネルギーの全固体状電池を入手可能にすることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
それゆえ、発明者等は、イオノゲルによる高エネルギー全固体状Li、(Li-イオン又はLi-金属)、Na及びMg電池テクノロジーを開発している。
本発明の更なる対象は、
a.- 少なくとも1つのイオン液体及び任意に
- 少なくとも1つの溶媒、又は
- 少なくとも1つのポリマー又は
- 少なくとも1つの溶媒と1つのポリマーの混合物
を含む媒体を複合電極上に、注加する工程と、
前記媒体は、少なくとも1つのリチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩と、
i.酸の非存在下、及び任意に触媒の存在下及び任意に重縮合時間を減少させうる触媒の存在下、少なくとも1つの加水分解性基を含む少なくとも1つの無機分子前駆体、
ii.又は少なくとも1つの重合性モノマー、
iii.又は2つの混合物
も含み、
電極の多孔(porosity)に含浸させ、かつ前記電極の表面に膜を形成させるための前記媒体が過剰であり、
b.イオン液体及び上記リチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩と任意に溶媒又はポリマー又は2つの混合物を含むゲルが得られるまで数日に延長しうる期間放置することにより、少なくとも1つの無機分子前駆体のその場(in situ)重縮合工程、又は少なくとも1つの重合性モノマー又はモノマー混合物の重合工程、前記ゲルは、電極内に含まれる電解質と電極と接するように位置するイオノゲル電解質との間で連続マトリックスを得るために、前記複合電極の多孔内と前記複合電極と接する層の型枠内の両方に位置し、及び任意に、
c.イオン導電ゲルの水含量が50ppm以下になるまでの水の除去工程
を含む複合電極の製造方法である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、イオン液体とリチウム塩から本発明による方法によりえられ得る本発明による電極を示している。領域Aは電極に対応し、孔がイオノゲルで満たされている(より明るい色でグレインの形成で現れている)。領域Bは電極の表面で堆積したイオノゲルに対応し、蓄電池を形成するための他の電極と共に組み立てられた場合、セパレータと電極として機能し、Cは硬構造で閉じ込められたイオン液体/リチウム塩媒体を含むイオノゲルの構造を示している。
【図2】図2は、従来技術の状態を表し、正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面が連続でない場合に得られる比容量を示している。
【図3】図3は、正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面が、シリコンに対するイオン液体の可変モル比(---):モル比=0.25、(------):モル比=0.5及び(−):モル比=1の存在で、本発明(実施例2)により最適化された場合に得られた容量を示す。
【図4】図4は、正極の充電/放電反応(Li+イオンの抽出/挿入)の繰り返し性を示している。●は放電;▲は充電。
【図5】図5は、実施例2(------):基準重量=2mg.cm-2;(−)基準重量=42mg.cm-2により製造された電極の電気化学性能を基準重量で所望しない効果が存在しないことを示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
電気化学センサー、又はLi4Ti5O12のような又は他の複合負極を備えたリチウム空気電池において、イオノゲルを含浸させた電極を使用することを望むのであれば、水除去工程は、この段階で実施される。
【0010】
本発明による方法で使用される原料の複合電極は、市場において入手可能な、又は当業者により知られた技術により製造されるいずれの正極又は負極ともなりうる。正極の例として、特にLiFePO4又はLiNi1/3Mn1/3Co1/3O2を、負極の例として、特にグラファイトカーボン又はリチウム-金属電極を挙げることができる。
それゆえ、本発明によれば、単一工程(「ワンポット」:one pot)で方法を実施できる。
【0011】
表現「イオノゲル」は、任意に溶媒又はポリマー又は2つの混合物を含むイオン液体を閉じ込める連続固体骨格を意味する。
表現「イオン液体」は、室温付近の温度で液状、例えば-20及び+100℃の間に含まれる温度で液体であるカチオンとアニオンの組み合わせを意味する。
【0012】
本発明によれば、使用されるリチウム、ナトリウム又はマグネシウムの塩が、この分野で一般的に使用される塩から選択される。例として、リチウム塩は、LiPO6、LiAsO6、LiClO4、LiBF4、LiC4BO8、Li(C2F5SO2)2N、Li[(C2F5)3PF3]、LiCF3SO3、LiCH3SO3、LiN(SO2CF3)2及びLiN(SO2F)2から選択しうる。
【0013】
本発明によれば、溶媒は、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート又はジエチルカーボネートのような線状カーボネート類、環状カーボネート類、線状や環状エーテル類、エチルアセテートのような線状エステル類、環状エステル類、線状や環状スルホン類、スルファミド類及びニトリル類、又はそれらの混合物から選択される1以上の化合物を含む液状溶媒としうる。溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート及びメチルとエチルカーボネートから選択される少なくとも2つのカーボネート類により構成されるのが好都合である。
【0014】
ポリマーは、この分野で従来使用されており、当業者に知られているもの、即ち、多孔質構造を支持及び維持しうる固体又は半固体材料(ゲル)であり、材料の孔は圧縮可能である。ポリサッカライドも使用しうる。
重合性モノマーもこの分野で従来使用されており、当業者に知られているものである。
イオン液体/溶媒、イオン液体ポリマー、又はイオン液体/溶媒/ポリマー混合物の割合は、使用される化合物の種類により当業者により確定され、かつ一般知識の一部を形成する。
【0015】
表現「無機分子前駆体」は、塩基元素又はゲルを形成する塩基元素の1つを含む試薬を意味し;前駆体は先行の元素又はリガンド(塩基元素又は元素を含まない付加物)により囲まれた元素を有する。それは「ゾル-ゲル前駆体」とも呼ばれる。
表現「加水分解性基」は、分子本体に結合しかつ加水分解により分子から分離しうる化学基を意味する。本発明の枠組みの範囲で使用される分子前駆体は、少なくとも3つの加水分解性基を含むか、1つ又は2つの加水分解性基がゲルの形成に十分である寸法(多少の分岐ポリマー鎖)を既に有している。
【0016】
本発明の意味内において、重縮合時間を減少しうる触媒は、この性質を有するいかなる化合物、特に金属、金属複合体、特に金属塩、及び金属酸化物から選択しうる。好都合な触媒は、ラウリン酸スズである。
【0017】
本発明によれば、リチウム、ナトリウム又はマグネシウムの塩の濃度は、イオン液体やイオン液体/溶媒やイオン液体/ポリマーやイオン液体/溶媒/ポリマー混合物に対して、0.1モル/L及び2モル/Lの間に含まれる。
本発明によれば、イオン液体、溶媒又はポリマーは、乾燥させて使用でき(50ppm以下の水)、又は前もって水和させてもよい(通常10重量%以下の水を含む)。それらがかなり乾燥している場合、それらは重縮合又は重合反応間、次第に水和されるようになる。
【0018】
本発明による方法の有利な実施の形態において、イオン液体のみが使用される。
本発明による方法の他の有利な実施の形態において、媒体に含まれる塩はリチウム塩である。
本発明の有利な方法によれば、イオン液体は、イミダゾリウム又はピリジニウム、ピロリジニウム又はピペリジニウム環をカチオンとして含むものから選択され、この環は窒素原子において、特に、炭素原子数1〜8である1以上のアルキル基で置換可能であり、炭素原子において、特に、炭素原子数1〜30である1以上のアルキル基で置換可能である。
本発明の意味の範囲内で、炭素原子数1〜30であるアルキル基は、1〜30の炭素原子、有利には1〜18の炭素原子、更により有利には1〜8の炭素原子を含み、飽和炭化水素鎖又は1以上の二重結合を有する鎖であり;例示のために、メチル、エチル、プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ペンチル、イソペンチル、2,2-ジメチル-プロピル、ヘキシル、2,3-ジメチル-2-ブチル、ヘプチル、2,2-ジメチル-3-ペンチル、2-メチル-2-ヘキシル、オクチル、4-メチル-3-ヘプチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシル基を挙げることができる。
本発明の有利な実施の形態において、カチオンは、以下の式(I):
【化1】

(式中、R1及びR2は、互いに独立で、炭素原子数1〜8のアルキル基を意味し、
R3〜R6は、互いに独立で、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基であり、有利には炭素原子数1〜18、更により有利には炭素原子数1〜8のアルキル基を意味する)
のピロリジニウム環又は、
以下の式(II):
【0019】
【化2】

【0020】
(式中、R1及びR2は、互いに独立で、炭素原子数1〜8のアルキル基を意味し、
R3〜R7は、互いに独立で、水素原子又は炭素原子数1〜30のアルキル基であり、有利には炭素原子数1〜18、更により有利には炭素原子数1〜8のアルキル基を意味する)
のピペリジニウム環である。
特に有利な実施の形態において、カチオンは、
【0021】
【化3】

及び
【0022】
【化4】

から選択される。
【0023】
本発明の有利な方法によれば、イオン液体は、アニオンとして、ハロゲン化物、ペルフルオロ化アニオン及びホウ酸塩から選択されるものを含むものから選択される。
ハロゲン化物アニオンは、特に、次のアニオン:塩化物、臭化物、フッ化物又はヨウ化物から選択される。
本発明の特に有利な実施の形態において、アニオンは:
- 式:
【0024】
【化5】

【0025】
のビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、
- 式PF6-のヘキサフルオロホスフェート、
- 式BF4-のテトラフルオロボレート及び
- 式
【0026】
【化6】

のオキサロボレートから選択される。
【0027】
本発明によれば、無機分子前駆体は、有利には、周期表の3、4及び5周期の元素から選択される。
周期表の3、4及び5周期の元素の誘導体により、特にシリコン及び他の有機金属化合物、特にチタン、亜鉛、ジルコニウム、銀、スズ又はアルミニウムに基づく、例えば、TiCl4、Ti(OCH(CH3)2)4、Al(OCH(CH3)2)3Si(OCH3)4、SnCl4のような化合物、が意味される。
【0028】
本発明の特に有利な実施の形態において、無機分子前駆体は、一般式:
R'x(RO)4-xSi
(式中、
- xは0〜4の間で変化する整数であり、
- Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を意味し、及び
- R'は:
* 1〜4の炭素原子を含むアルキル基、又は
* 6〜30の炭素原子、有利には6〜10の炭素原子を含むアリール基又は
* ハロゲン原子を意味する)
の化合物であり、この化合物は、特に、テトラメトキシシランやメチルトリメトキシシラン又はこれら化合物の混合物である。
【0029】
本発明の意味の範囲内で、6〜30の炭素原子を含むアリール基は、6〜30の炭素原子を含む単環-又は多環芳香族化合物を意味し、特にフェニル、トリル、キシリル、ナフチル、アンスリル、及びフェナントリル基を意味する。
【0030】
本発明の特に有利な実施の形態において、媒体中での、イオン液体/無機分子前駆体又は溶媒/無機分子前駆体又はポリマー/無機分子前駆体又は溶媒/イオン液体)/無機分子前駆体の混合物又はポリマー溶媒/無機分子前駆体の混合物又はイオン液体ポリマー/無機分子前駆体の混合物又はイオン液体溶媒ポリマー/無機分子前駆体の混合物のモル比は、0.25と1との間に含まれる。このモル比の選択は、良好な機械特性(取り扱い可能な程度の非脆性)を有する化合物を得ることが可能なようにされる。
【0031】
本発明の有利な実施の形態において、混合物は、大気雰囲気及び大気温度下で、2〜9日間保持したままにされる。
本発明によれば、水の除去工程c)は、当業者に知られたあらゆる技術により実施でき、特に、減圧(vacuum)下、50及び100℃の間に含まれる温度で、1h及び5日の間に含まれる期間、オーブン中に置くことにより実施できる。
【0032】
以下の工程:
a.:
- 少なくとも1つのイオン液体及び任意に、
- 少なくとも1つの溶媒、又は
- 少なくとも1つのポリマー又は
- 2つの混合物
を含む媒体を注加する工程、前記媒体は、少なくとも1つのリチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩と、
i.酸の非存在下及び任意に重縮合時間を短縮させうる触媒の存在下、少なくとも1つの加水分解性基を含む少なくとも1つの無機分子前駆体、
ii.又は少なくとも1つの重合性モノマー、
iii.又は2つの混合物のいずれか
とも含み、
b.:イオン液体及び前記リチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩、及び任意に溶媒やポリマー又は2つの混合物と、それとを含み、成形可能、特に、透明一体状固体の形状であるゲルが得られるまで、工程a)で得られた混合物を、数日(several days)間保持したままにし、
c.:イオン伝導ゲルの水含量が50ppm以下となるまで、水を除去する工程
を含む方法は、固体形状で「イオノゲル」とも呼ばれるイオン-伝導ゲルの製造を許容する。
【0033】
それゆえ得られたイオノゲルは、以下の特性:
- それらは連続膜である、
- それらは約250℃、特に約100℃の温度まで安定である、
- それらは透明である、
- それらはイオン伝導体であり、イオン伝導度は、特に室温で10-4及び10-3S.cm-1の間、230℃で10-2及び10-1の間に含まれ、
- それらは電気絶縁体であり及び
- それらは水の排除後に20体積%以下の収縮量を示す
を有する。
それらは連続イオノ-共結合性マトリックスの存在により特徴付けられる。
【0034】
既に記載した方法を行うことにより得られたこのようなイオノゲルは、先に規定したように少なくとも1つの無機分子前駆体から形成された固体連続マトリックス内に閉じ込められた、イオン液体及び任意に溶媒又はポリマー又は溶媒とポリマーの混合物と、先に規定したリチウム又はナトリウム又はマグネシウム塩を含む。
【0035】
表現「連続膜」は、断裂なしに材料を、1〜100μmの少なくとも1つの寸法で、終始延伸できる固体骨格を意味する。
表現「閉じ込める」は、イオン液体又は溶媒又はポリマーが材料中に含まれ、材料から流れず、材料から蒸発せずに残ることを意味する。
【0036】
透明性、イオン伝導性及び絶縁能力により、本発明によるイオノゲルは、多くの用途を有しうる。透明性に基づく用途として、例えば、カラーインジケータの取り込み、又はエレクトロクロミックシステム、例えばディスプレイ中でのそれらの使用を挙げうる。イオン伝導性に基づく用途として、100℃オーダーの温度で良好に挙動する導電性イオン膜を必要とする電気化学蓄電池及び光電池セルの製造中での例示使用を挙げうる。
【0037】
本発明の利点の1つは、後者が、薄膜として成形でき、安定であり及び少なくとも100℃のオーダーの温度まで良好に機能しうる固体イオン伝導体の提供が可能であることを実際に含むことである。
それらは高エネルギー全固体電池の構成に特に有用である。
本発明の更なる目的は、本発明による方法により得られうる複合電極である。
全固体リチウム、ナトリウム又はマグネシウム蓄電池又は電池は、本発明により製造された負極や正極、又は両極のいずれかを含む連続電極-電解質界面を有する。
【0038】
本発明による蓄電池又は電池は、本発明による2つの電極を組み立てることにより、又は従来の負極と本発明による正極の組み立てにより、又は従来の正極と本発明による負極の組み立てにより、当業者に知られたあらゆる技術により製造しうる。全ての場合において、全固体蓄電池又は電池は、イオノゲルが、2つの電極と電解質との間にセパレータとして機能することで得られる。
本発明による蓄電池又は電池は、電池の従来用途、特にリチウム電池、特に例えば携帯電話、ラップトップ、コンピュータ及びカムコーダのような携帯電子機器の、全てで使用できる。
【実施例】
【0039】
以下の実施例1〜3及び図1〜5は発明を説明している。
図1は、イオン液体とリチウム塩から本発明による方法によりえられ得る本発明による電極を示している。領域Aは電極に対応し、孔がイオノゲルで満たされている(より明るい色でグレインの形成で現れている)。領域Bは電極の表面で堆積したイオノゲルに対応し、蓄電池を形成するための他の電極と共に組み立てられた場合、セパレータと電極として機能し、Cは硬構造で閉じ込められたイオン液体/リチウム塩媒体を含むイオノゲルの構造を示している。
図2は、従来技術の状態を表し、正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面が連続でない場合に得られる比容量を示している。
図3は、正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面が、シリコンに対するイオン液体の可変モル比(---):モル比=0.25、(------):モル比=0.5及び(−):モル比=1の存在で、本発明(実施例2)により最適化された場合に得られた容量を示す。
図4は、正極の充電/放電反応(Li+イオンの抽出/挿入)の繰り返し性を示している。●は放電;▲は充電。
図5は、実施例2(------):基準重量=2mg.cm-2;(−)基準重量=42mg.cm-2により製造された電極の電気化学性能を基準重量で所望しない効果が存在しないことを示している。
【0040】
実施例1:分離-合成されたイオノゲルが堆積した複合電極
1.1.操作方法
1.1.1.イオノゲルの一般的合成
a)電極をイオン液体である1-メチル-1-プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(Py13-TFSI)又はイオン液体である1-メチル-1-プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(PP13-TFSI)及びリチウム塩(LiTFSI)の混合物を使用して合成する。LiTFSIの濃度は、0.1及び2モルL-1の間に設定する。この混合物を溶液1と呼ぶ。
b)テトラメトキシシラン(TMOS)量とメチルトリメトキシシラン(MTMS)量との混合物を作る。この混合物を溶液2と呼ぶ。
c)ゾルの合成:電解質(溶液1)をシリカ前駆体(溶液2)と、以下の表1及び表2で示される重量による割合により混合する。
【0041】
表1:イオノゲルPy13-TFSI-LiTFSI(Py13-TFSI+0.5モル/L LiTFSI)の合成に使用した重量割合
【表1】

【0042】
表2:イオノゲルPP13-TFSI-LiTFSI(PP13-TFSI+0.5モル/L LiTFSI)の合成に使用した重量割合
【表2】

【0043】
1.1.2.電極の製造
従来技術で知られた技術により、電極上にイオノゲルの単純堆積により電極を製造する。
【0044】
1.2.結果
これらは図2に示す。
この場合、正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)界面が連続的ではない。結果として、得られた比容量は、非常に低く(2、3(few)mAh.g-1)、装置が使用可能でないことを意味する。
得られた低比容量(Py13-TFSI+0.35モル/kg LiTFSIのイオン液体の電解質で得られた約1%の比容量)は、恐らく複合電極の表面グレインにより、固体電解質との界面で直接接するもののみであることによる。
【0045】
実施例2:本発明により製造された電極
1.1.操作方法
電解質は、Py13-TFSIを8.0709gとLiTFSIを0.8119gの混合物、即ちPy13-TFSI+0.35モル/kg LiTFSI(即ち、約0.5モル/L)から予め合成したものを使用する。
この電解質の0.4645gを、ガラスタブレットボトル中で、TMOS-MTMSの0.2948gと混合して使用する。このようにしてシリコンに対するイオン液体のモル比0.5を有するゾルを得る。それを磁気撹拌棒を使用して1時間混合する。
次いで、この混合物200μLを移動し、Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2型の(多孔)複合電極上に注ぐ。残ったイオノゲルをガラスタブレットボトル中に残し、ゲル化時間を確認する。この場合、ゲル化時間は30時間である。
30時間後、ゲル化複合電極をT=100℃で、減圧下に24時間、オーブン中に置く。
この手順でイオノゲル化され、連続正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面(又は接合)を有する複合電極は、リチウム蓄電池中で使用できる。かくしてリチウム金属補助電極は、固体電解質(イオノゲル)上に、下降圧力(downward pressure)(1kg/cm2のオーダー)を介して添加される。
【0046】
1.2.結果
これらを図3及び4に示す。
正極(Li1N1/3Mn1/3Co1/3O2)/固体電解質(イオノゲル)の界面が最適化された場合、得られた電気化学性能はLi1N1/3Mn1/3Co1/3O2/イオン液体(Py13-TFSI+0.35モル/kg LiTFSI)半セルで得られた容量と同一である。即ち、20時間で、1つのLi+イオンの抽出/挿入の充電/放電率において110mAh.g-1の比容量である。極性は、全固体電解質及びイオン液体電解質と同一である。更に、シリコンに対するイオン液体のモル比は、電気化学性能に影響しない(図3参照)。この実施例中、副電極はリチウム金属電極である。Li金属/電解質界面は、Li金属電極と固体電解質との間の圧(1kg/cm2のオーダー)により規定される。
正極の充電/放電反応(Li+イオンの抽出/挿入)は、図4に示すように、可逆性である。循環が対Li+/Liで4.5Vに達する電位まで可能であること明らかである。
新たな電気化学還元や酸化工程は、定電流(galvanostatic)曲線(ここで示さない)に生じておらず、電解質が対Li+/Liで4.5Vまで電気化学的に安定であることが示されている。
【0047】
実施例3:電気化学性能への基準重量の影響の測定
3.1.操作方法
実施例2で製造されたLi1N1/3Mn1/3Co1/3O2/固体電解質(イオノゲル)/Li蓄電池を、封止されたスワゲロク(Swagelok)(商標)型電気化学セル中に置く。この工程は湿度と酸素レベルを5ppm以下とするグローブボックス中で行う。充電-放電実験は、コンピュータに接続されかつEC-Lab(Bio-Logic)ソフトウェアにより制御されたVMP(Bio-Logic)マルチ-ウェイポテンシオスタット/ガルバノスタットを使用して行う。
蓄電池での充電-放電実験を定電流で行う。電流はユーザーにより計算されセットされる。1モルのリチウムイオンがユーザーによりセットされた時間(通常20時間)で挿入(又は抽出)される。この時間は蓄電池の充電-放電率を規定する。循環が対Li+/Liで2.7Vと4.5Vの間に含まれる電位窓内で行われる。循環温度を、調節しうるオーブン中にスワゲロク(商標)セルを置くことにより、ユーザーによりセットする。
【0048】
3.2.結果
これらを図5に示す。
複合電極の基準重量(単位表面積当たり活物質の質量による量に対応する)は、固体イオノゲル電解質で得られた電気化学性能に影響しない。
従って、イオノゲル技術を、配合を変更することなく、既に商業的に発達した複合電極に使用可能である。同様に、現在開発されている全固体電池の主たる課題が、低い基準重量:活物質40質量%のみ(最大値)を含む複合電極である。現在、イオノゲル電解質の場合、市販の複合電極の多孔率がイオノゲルにより完全に吸収され:質量による活物質90%が複合電極中に保持され、得られた電気化学性能がイオン液体型の電解質で得られた性能と同一である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.- 少なくとも1つのイオン液体及び任意に
- 少なくとも1つの溶媒、又は
- 少なくとも1つのポリマー又は
- 少なくとも1つの溶媒と1つのポリマーの混合物
を含む媒体を複合電極上に注加する工程と、
前記媒体は、少なくとも1つのリチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩と、
i.酸の非存在下、及び任意に重縮合時間を減少させうる触媒の存在下、少なくとも1つの加水分解性基を含む少なくとも1つの無機分子前駆体、
ii.又は少なくとも1つの重合性モノマー、
iii.又は2つの混合物
も含み、
電極の多孔に含浸させ、かつ前記電極の表面に膜を形成させるために使用される前記媒体が過剰であり、
b.上記イオン液体及びリチウム、ナトリウム又はマグネシウム塩と任意に溶媒又はポリマー又は2つの混合物を含むゲルが得られるまで数日に延長しうる期間放置することにより、少なくとも1つの無機分子前駆体のその場(in situ)重縮合工程、又は少なくとも1つの重合性モノマー又はそれらの混合物の重合工程、前記ゲルは、電極内に含まれる電解質と電極と接するように位置するイオノゲル電解質との両方での連続マトリックスを得るために、前記複合電極の多孔内と前記複合電極と接する層の型枠内の両方に位置し、及び任意に、
c.イオン導電ゲルの水含量が50ppm以下になるまでの水の除去工程
を含む複合電極の製造方法。
【請求項2】
媒体がイオン液体のみを含むことを特徴とする請求項1による方法。
【請求項3】
媒体中に含まれる塩がリチウム塩であることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1つによる方法。
【請求項4】
イオン液体が、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジニウム又はピペリジニウム環をカチオンとして含むものから選択され、この環は窒素原子において、特に、炭素原子数1〜8である1又は2つのアルキル基で置換可能であり、炭素原子において、特に、炭素原子数1〜30である1以上のアルキル基で置換可能であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つによる方法。
【請求項5】
イオン液体が、アニオンとして、ハロゲン化物、ペルフルオロ化アニオン及びホウ酸塩から選択されるものを含むものから選択される請求項4による方法。
【請求項6】
無機分子前駆体は、有利には、周期表の3、4及び5周期の元素から選択されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つによる方法。
【請求項7】
無機分子前駆体は、一般式:
R'x(RO)4-xSi
(式中、
- xは0〜4の間を変化する整数であり、
- Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を意味し、及び
- R'は:
* 1〜4の炭素原子を含むアルキル基、又は
* 6〜30の炭素原子、有利には6〜10の炭素原子を含むアリール基又は
* ハロゲン原子を意味する)
の化合物であることを特徴とする請求項6による方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つの方法により得られうる複合電極。
【請求項9】
請求項8による負極、正極又は両極を含む連続電極-電解質界面を有する全固体リチウム、ナトリウム又はマグネシウム蓄電池又は電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−518248(P2012−518248A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549624(P2011−549624)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000115
【国際公開番号】WO2010/092258
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(509211099)ユニベルシテ・モンペリエ・2・シアンス・エ・テクニク (8)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE MONTPELLIER 2 SCIENCES ET TECHNIQUES
【出願人】(504336294)ユニヴェルシテ デ ナンテス (2)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE NANTES
【住所又は居所原語表記】1,quai de Tourville,F−44000 NANTES,FRANCE
【Fターム(参考)】