説明

イオン性基礎構造を有するVR1バニロイド受容体アンタゴニスト

本発明は、式(I)の化合物(式中Y、R、nおよびXは明細書中に定義されるとおりである)、これらの調製のための方法およびこれらを含む薬学的組成物を提供する。式(I)の化合物は、炎症後痛覚過敏症の進行において極めて重要な役割を果たす一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)を阻害し、従って、これらは鎮痛薬および抗炎症薬として使用できる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バニロイド受容体のアンタゴニスト、特にTRPV1アンタゴニストに関する。
【背景技術】
【0002】
一過性受容体電位バニロイド1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)(TRPV1)は、炎症後痛覚過敏症の進行において極めて重要な役割を果たす。従って、TRPV1リガンドは鎮痛薬および抗炎症薬として臨床的に有用である。
【0003】
天然物由来のカプサイシノイドおよびレシニフェロノイド(resiniferonoid)と称される化合物は、TRPV1リガンドとして公知である。これらの中でレチノイン酸のバニルアミドであるレトバニル(retvanil)は強力なアゴニストである1
【0004】
【化1】

【0005】
Ber. der Deutschen Chem. Gesellschaft, vol.70, pp.1009-1012は、以下の化合物:
【0006】
【化2】

【0007】
の合成を開示しているが、これらの生物学的特性について言及していない。
【0008】
WO03/024920は、関節炎および炎症性皮膚疾患の処置のためのレチノイドの使用について言及している。
【0009】
Chem.Pharm.Bull. 43(1) 100-107 (1995)は、特に以下の化合物:
【0010】
【化3】

【0011】
[式中、Rは水素であり、R’は水素またはメチルである]およびこれらのレチノイド活性を開示している。
【0012】
WO03/049702、JOC vol.48, no.1, 2005, pp.71-90およびNeuropharmacology, vol.46, no.1, 2004, pp.133-149は、以下:
【0013】
【化4】

【0014】
[式中、Aは置換されたアリールである]のように示されうる部分を含むN−アリールシンナミドを開示している。これらの化合物は、バニロイド受容体のアンタゴニストであり、いくつかの炎症性状態の処置のために使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開第03/024920号パンフレット
【特許文献2】国際公開第03/049702号パンフレット
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Ber. der Deutschen Chem. Gesellschaft, vol.70, pp.1009-1012
【非特許文献2】Chem.Pharm.Bull. 43(1) 100-107 (1995)
【非特許文献3】JOC vol.48, no.1, 2005, pp.71-90
【非特許文献4】Neuropharmacology, vol.46, no.1, 2004, pp.133-149
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、式(I):
【0018】
【化5】

【0019】
のTRPV1阻害剤
[式中、
Yは式
【0020】
【化6】

【0021】
の基であり:
R’は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C3〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルアミノ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフトキシまたはフェニルアミノから選択され、その芳香環は1つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシおよびトリフルオロメチル基で場合により置換されており;
Rはメチルまたは水素であり;
nは0または1であり;
Xは、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシおよびトリフルオロメチルから選択される1つまたは複数の基で場合により置換されているフェニル、ピリジル、ナフチル、キノリニルおよびイソキノリニルから選択される]であって、
以下の化合物:
【0022】
【化7】

【0023】
を除く阻害剤に関する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明は、nが0であり、Xが5−イソキノリニルである式(I)の化合物に関する。これらのうち、特に好ましくは、Rが水素であり、Yが式:
【0025】
【化8】

【0026】
の基[式中、R’は上に定義されたとおりであり、より好ましくは水素、メトキシまたは上に示されるとおり場合により置換されているフェノキシである]である化合物である。
【0027】
式(I)の化合物の例は、以下:
(2E)−N−(4−クロロフェニル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(4−クロロベンジル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(4−クロロフェニル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−2−エニル)アクリルアミド;
(2E)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(ナフタレン−1−イル)アクリルアミド;
(2E)−N−(4−クロロフェニル)−3−(2,6,6−トリメチル−3−フェノキシシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(3−メトキシフェニル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(5−クロロピリジン−2−イル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(4−クロロフェニル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1,3−ジエニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(4−(トリフルオロメチル)フェニル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(キノリン−3−イル)アクリルアミド;
(2E)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(キノリン−5−イル)アクリルアミド;
(2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(3−メトキシ−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(2,6,6−トリメチル−3−フェノキシシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(3−(3−メトキシフェニル)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド;
(2E)−3−(3−(4−クロロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド;
(2E)−3−(3−(4−フルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド;
(2E)−3−(3−(3−フルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド;
(2E)−3−(3−(3,4−ジフルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミドである。
【0028】
式(I)の化合物は、従来の方法、例えば、式(II)の化合物
【0029】
【化9】

【0030】
[式中、YおよびRは上に定義されたとおりであり、カルボキシ基はアミド化反応に適切に活性化されている]と市販の式(III)の化合物
X(CH2nNH2 (III)
[式中、Xは上に定義されたとおりである]との反応により調製できる。
【0031】
本発明は以下の実施例およびスキームによりここで例示される。
【実施例】
【0032】
すべての市販化合物は、Aldrichから購入し、さらに精製することなしに使用した。反応経路は、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(プレコートされたF254 Merckプレート)によりモニターし、スポットをUV光で観察し、KMnO4水溶液で可視化した。フラッシュクロマトグラフィーは、Merckシリカゲル(230〜240メッシュ)を用いて実施した。1H−NMRスペクトルは、内部標準としてTMSを用いてVarian 400MHz分光計にて記録した。質量スペクトルは、Waters−Micromass ZMD分光計により得た。融点は、Buchi−Tottoli機器で測定し、未修正である。
【0033】
実施例1 (2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド Ia(スキーム1)
酸1を、文献2に記載されるとおりハロギ酸反応(haloformic reaction)により市販のβ−イオノンから調製した。1.0mmol(194mg)の酸1を8mlの無水DMF中に溶解した。EDCl(1.2当量、1.2mmol、230mg)、HOBt(1.2当量、1.2mmol、162mg)および5−アミノイソキノリン(1.2当量、1.2mmol、173mg)を0℃で連続して添加した。この反応混合物を室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧除去し、残留物を50ml酢酸エチルに溶解した。有機相を水(2×20ml)、飽和塩化ナトリウム溶液(1×10ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、3/7酢酸エチル/ヘキサンに次いで酢酸エチル)により精製し、最終的にジエチルエーテルから再結晶し、150mgのベージュの固体を得た。収率=47%。融点:(ジエチルエーテル)131〜133℃。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.10(6H,s)、1.49(2H,m)、1.62(2H,m)、1.81(3H,s)、2.05(2H,m)、6.18(1H,d)、7.62(2H,m)、7.70(2H,m)、7.81(1H,d)、8.38(1H,bs)、8.53(1H,d,J=5.6Hz)、9.25(1H,s);[M+1]321.7(C21242O 計算値 320.43)。
【0034】
実施例2 (2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(3−メトキシ−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド Ib(スキーム2)
調製1
(2E)−3−(3−メトキシ−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリル酸メチル3の合成3
エステル2(8mmol、1.66g)およびN−ブロモスクシンイミド(1.1当量、8.8mmol、1.56g)のCCl4(30ml)中の懸濁液を、1時間還流した。セライト(Celite)による濾過後、溶媒を蒸発させた。残留物をMeOH(20ml)に溶解し、反応物を一晩還流した。溶媒を蒸発させ、この粗製物をジエチルエーテル(30ml)に溶解し、水(1×20ml)で洗った。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。溶離剤として1/9酢酸エチル/石油エーテルを用いるクロマトグラフィーカラムによる粗残留物の精製により、715mgの無色油状物を得た。収率=37.5%(2段階)。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.02(3H,s)、1.04(3H,s)、1.38(2H,m)、1.62(2H,m)、1.79(3H,s)、3.37(3H,s)、3.51(1H,m)、3.75(3H,s)、5.84(1H,d,J=16Hz)、7.33(1H,d,J=16Hz);[M+1]239.1(C14223 計算値 238.32)。
【0035】
(2E)−3−(3−メトキシ−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)アクリル酸4の合成
LiOH(5当量、630mg)を、エステル3(3mmol、715mg)の3:1:1THF/MeOH/水(15ml)中溶液に0℃で添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残留物を水(20ml)で希釈した。酸を10%HClの添加により沈殿させ、次いでAcOEt(3×15ml)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下蒸発させ、600mgの油状生成物を得た。収率=89%。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.03(3H,s)、1.05(3H,s)、1.39(2H,m)、1.62(2H,m)、1.80(3H,s)、3.38(3H,s)、3.52(1H,m)、5.86(1H,d,J=16Hz)、7.45(1H,d,J=16Hz);[M+1]225.5(C13203 計算値 224.3)。
【0036】
調製2
1.0mmol(224mg)の酸4を、10mlの無水DMF中に溶解した。EDCl(1.2当量、1.2mmol、230mg)、HOBt(1.2当量、1.2mmol、162mg)および5−アミノイソキノリン(1.2当量、1.2mmol、173mg)を、0℃で連続的に添加した。この反応混合物を、室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧下蒸発させ、残留物を50ml酢酸エチルに溶解した。有機相を水(3×20ml)、飽和塩化ナトリウム溶液(1×10ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)により精製し、最終的にジエチルエーテルから再結晶し、160mgの黄色の無定形固体を得た。収率=45%。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.07(6H,s)、1.42(2H,m)、1.66(2H,m)、1.86(3H,s)、3.40(3H,s)、3.48(1H,m)、6.18(1H,d)、7.51(1H,m)、7.65(3H,m)、7.84(1H,d)、8.38(1H,bs)、8.55(1H,d,J=6Hz)、9.26(1H,s);[M+1]351.2(C222622 計算値 350.45)。
【0037】
実施例3−(2E)−N−(イソキノリン−5−イル)−3−(2,6,6−トリメチル−3−フェノキシシクロヘキス−1−エニル)アクリルアミド 1c(スキーム3)
調製1
(2E)−3−(2,6,6−トリメチル−3−フェノキシシクロヘキス−1−エニル)アクリル酸メチル5c4の合成
エステル2(3.12mmol、650mg)およびN−ブロモスクシンイミド(1.1当量、3.43mmol、611mg)のCC14(15ml)中懸濁液を、1時間還流した。セライトによる濾過後、溶媒を蒸発させた。残留物をMeOH(5ml)に溶解し、ナトリウムフェノキシド(6.24mmol)のメタノール(10ml)中溶液に滴下した。生じた混合物を室温で一晩撹拌した。この反応物を冷5%水酸化ナトリウム水溶液(15ml)に注ぎ、生成物をエーテル(2×20ml)で抽出した。有機層を水(1×10ml)、ブライン(1×5ml)で洗い、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。溶離剤として1/9酢酸エチル/石油エーテルを用いるクロマトグラフィーカラムによる粗残留物の精製により、350mgの無色油状物を得た。収率=37.5%(2段階)。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.07(3H,s)、1.12(3H,s)、1.42(2H,m)、1.78(2H,m)、1.86(3H,s)、3.78(3H,s)、4.57(1H,m)、5.92(1H,d,J=16.4Hz)、6.95(3H,m)、7.29(2H,m)、7.44(1H,d,J=16.4Hz);[M+1]301.2(C19243 計算値 300.39)。
【0038】
(2E)3−(2,6,6−トリメチル−3−フェノキシシクロヘキス−1−エニル)アクリル酸6cの合成
LiOH(5当量、243mg)を、エステル5(1.16mmol、350mg)の3:1:1THF/MeOH/水(12.5ml)中溶液に0℃で添加し、この混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を減圧下蒸発させ、残留物を水(20ml)で希釈した。酸を10%HClの添加により沈殿させ、次いでAcOEt(3×15ml)で抽出した。合わせた有機層をNa2SO4で乾燥させ、真空下蒸発させ、300mgの白色固体を得た。収率=90%。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.08(3H,s)、1.13(3H,s)、1.44(2H,m)、1.78(2H,m)、1.87(3H,s)、4.58(1H,m)、5.94(1H,d,J=16.4Hz)、6.96(3H,m)、7.29(2H,m)、7.52(1H,d,J=16.4Hz);[M+1]287.5(C18223 計算値 286.37)。
【0039】
調製2
0.5mmol(143mg)の酸6cを、5mlの無水DMF中に溶解した。EDCl(1.2当量、0.6mmol、115.2mg)、HOBt(1.2当量、0.6mmol、81mg)および5−アミノイソキノリン(1.2当量、0.6mmol、86.51mg)を、0℃で連続的に添加した。この反応混合物を、室温で20時間撹拌した。溶媒を減圧下蒸発させ、残留物を30ml酢酸エチルに溶解した。有機相を水(2×10ml)、飽和塩化ナトリウム溶液(1×10ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗残留物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル/石油エーテル 8:2)により精製し、最終的にジエチルエーテルから再結晶し、100mgの白色固体を得た。収率=48.5%。融点:(ジエチルエーテル)141〜143℃。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.14(3H,s)、1.17(3H,s)、1.47(2H,m)、1.78(2H,m)、1.95(3H,s)、4.60(1H,m)、6.41(1H,d)、6.97(2H,d,J=7.2Hz)、7.26(4H,m)、7.59(1H,d,J=16Hz)、7.80(1H,t,J=8Hz)、7.92(1H,d,J=8Hz)、8.17(1H,m)、8.37(1H,m)、8.52(1H,bs)、9.26(1H,s);[M+1]413.6(C272822 計算値 412.52)
実施例4−(2E)−3−(3−(4−クロロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド Id (スキーム3)
調製2に従って、0.5mmolの酸6dから開始し、150mgの化合物Idを白色固体として得た。収率=67%。融点:(ジエチルエーテル)168℃。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.11(3H,s)、1.14(3H,s)、1.45(2H,m)、1.66(2H,m)、1.86(3H,s)、4.76(1H,m)、6.61(1H,d)、7.06(2H,d,J=8.8Hz)、7.31(2H,m)、7.34(2H,d,J=8.8Hz)、7.69(1H,t,J=8Hz)、7.95(1H,d,J=8Hz)、8.04(1H,m)、8.27(1H,bs)、8.58(1H,d,J=6Hz)、9.33(1H,s);[M+1]448.4(C2727ClN22 計算値 446.97)。
【0040】
実施例5−(2E)−3−(3−(4−フルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド le(スキーム3)
調製2に従って、0.5mmolの酸6eから開始し、100mgの化合物Ieを白色固体として得た。収率=46%。融点:(ジエチルエーテル)135〜137℃。1H NMR(CDCl3,400MHz)δ 1.11(3H,s)、1.15(3H,s)、1.44(2H,m)、1.71(2H,m)、1.92(3H,s)、4.50(1H,m)、6.21(1H,d)、6.91(2H,m)、6.98(2H,m)、7.54(1H,d,J=15.6Hz)、7.72(3H,m)、7.87(1H,d)、8.41(1H,bs)、8.55(1H,d,J=6.4Hz)、9.28(1H,s);[M+1]431.6(C2727FN22 計算値 430.51)。
【0041】
実施例6 (2E)−3−(3−(3−フルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド If(スキーム3)
調製2に従って、0.5mmolの酸6fから開始し、90mgの化合物Ifを白色固体として得た。収率=42%。融点:(ジエチルエーテル)147℃。1H NMR(CDCl3,200MHz)δ 1.11(3H,s)、1.14(3H,s)、1.57(2H,m)、1.71(2H,m)、1.88(3H,s)、4.56(1H,m)、6.20(1H,d)、6.70(4H,m)、7.58(1H,d,J=15.6Hz)、7.65(3H,m)、7.85(1H,d)、8.38(1H,bs)、8.59(1H,d,J=5.8Hz)、9.29(1H,s);[M+1]431.5(C2727FN22 計算値 430.51)。
【0042】
(2E)−3−(3−(3,4−ジフルオロフェノキシ)−2,6,6−トリメチルシクロヘキス−1−エニル)−N−(イソキノリン−5−イル)アクリルアミド Ig(スキーム3)
調製2に従って、0.5mmolの酸6gから開始し、90mgの化合物Igを白色固体として得た。収率=40%。融点:(ジエチルエーテル)155℃。1H NMR(CDCl3,200MHz)δ 1.11(3H,s)、1.14(3H,s)、1.53(2H,m)、1.75(2H,m)、1.89(3H,s)、4.55(1H,m)、6.20(1H,d)、6.68(3H,m)、7.50(1H,d,J=15.6Hz)、7.65(3H,m)、7.85(1H,d)、8.40(1H,bs)、8.60(1H,d,J=5.8Hz)、9.29(1H,s);[M+1]449.7(C2726222 計算値 448.51)。
【0043】
スキーム1
【0044】
【化10】

【0045】
試薬:i)EDCl、HOBt、5−アミノイソキノリン、DMF、rt
スキーム2
【0046】
【化11】

【0047】
試薬:i)NBS/CCl4 ii)MeOH、Rfx;iii)LiOH、THF/MeOH/水、rt;iv)EDCl、HOBt、5−アミノイソキノリン、DMF、rt。
【0048】
スキーム3
【0049】
【化12】

【0050】
試薬:i)NBS/CCl4;ii)R’’PhONa、EtOH、rt;iii)LiOH、THF/MeOH/水、rt;iv)EDCl、HOBt、5−アミノイソキノリン、DMF、rt
生物学的アッセイ
新生仔および成体Sprague−Dawleyラット(約250g)を使用した(Harlam、イタリア)。すべての実験は、国のガイドラインに従い、地域の倫理委員会により承認された。
【0051】
放射性リガンド結合アッセイ
試験時の体重250〜350gの雄性Sprague−Dawleyラットを使用した。結合アッセイのために、ラットを麻酔下、断頭により屠殺し、脊髄を取り出し、ポリトロン組織ホモジナイザーを用いて5mM KCl、5.8mM NaCl、0.75mM CaCl2、2mM MgCl2、320mM スクロース、10mM Hepesを含有するpH8.6の氷冷緩衝液中で破壊した5。ホモジナイズした組織を、1000×gで10分間、4℃にて遠心分離し、上清を再度35000×gで30分間、4℃にて遠心分離した(Beckman Avanti J25)。ペレットを上記と同じ緩衝液中に再懸濁し、結合実験に使用した。飽和実験において、膜懸濁液から150μgタンパク質/サンプルを[3H]−レシニフェラトキシン([3H]−RTX)(0.003〜3nM)と共に、0.25mg/mlの脂肪酸不含のウシ血清アルブミンを含むアッセイ緩衝液中で、37℃にて60分間インキュベートした。競合実験において、膜を[3H]RTX(0.4nM)および0.1nM〜3μMの範囲内で濃度を増大させた試験化合物と共に37℃で60分間インキュベートした。1μM RTXの存在下で、非特異的結合を規定した。インキュベーション後、反応混合物を0℃に冷却し、ウシα1−酸性糖タンパク質(200μg/チューブ)と共に15分間インキュベートして、非特異的RTX結合を減少させた。18500×gで15分間サンプルを遠心分離することにより、膜結合RTXを、遊離RTXから分離した。ペレットを含むミクロ遠心分離管の先端を切り取り、放射活性をシンチレーション計数(Packard 2500 TR)により測定した。ウシ血清アルブミンを標準参照として用いるBio−Rad法(Bradford,1976)によりタンパク質濃度を決定した。飽和および競合試験をLigandプログラムにより解析した6
【0052】
培養ラット三叉神経節内のCa2+の蛍光測定
二日齢の新生仔ラットに致命的な麻酔をかけ、断頭した。三叉神経節を取り出し、速やかに冷リン酸緩衝溶液(PBS)中に置き、コラゲナーゼ/ディスパーゼ(1mg/ml、Ca2+−Mg2+不含のPBS中に溶解した)に移して37℃で35分間保った7。酵素処理後、神経節をCa2+−Mg2+不含のPBSで3回洗い、次いで10%ウシ胎児血清(FBS、熱不活性化)、2mM L−グルタミン、100μ/ml ペニシリンおよび100μg/ml ストレプトマイシンを添加した2mlの冷DMEM中に置いた。この神経節を一連のシリンジ針(23Gから25G)に数回通過させて、単一の細胞に分離した。最後に、培地および神経節細胞を40μmフィルターに通してふるいにかけ、破片を除去し、8mlのDMEM培地で満たし、遠心分離にかけた(200×gで5分間)。最終的な細胞ペレットをDMEM培地[100ng/mlのマウス神経成長因子(マウス−NGF−7S)およびサイトシン−β−D−アラビノフラノシド不含塩基(ARA−C)2.5μMを添加した]中に再懸濁した。細胞をポリ−1−リジン(8.3μM)およびラミニン(5μM)でコートした25mmガラス製カバースリップ上に置いて、5%CO2および空気で満たした加湿インキュベーター内に、37℃で5〜8日間保持した。プレートした神経細胞に、以下の組成(mM):CaCl2 1.4、KCl 5.4、MgSO4 0.4、NaCl 135、D−グルコース 5、HEPES 10およびBSA(0.1%)のCa2+緩衝溶液中のFura−2−AM−エステル(3μM)をpH7.4、37℃で40分間負荷した。次いで、プレートした神経細胞を、Ca2+緩衝溶液で2回洗い、Nikon eclipse TE300顕微鏡のステージ上のチャンバに移した。Fura−2−AM−エステルを340nMおよび380nMで励起させて、動的画像分析システム(Laboratory Automation 2.0,RCS,Florence、イタリア)で記録されたF340/F380比によって、相対的な[Ca2+i変化を示した。プレートした神経細胞をチャンバに移した後、これらを安定な蛍光発光に達するまで放置(少なくとも10分)してから、実験を開始した。Fura−2−AM−エステルおよび決定した濃度の遊離Ca2+を含有する緩衝液を用いて較正曲線を得た。次いで、この曲線を使用してF340/F380比から得られたデータを、[Ca2+i(nM)に変換した8。0.1μMカプサイシンにより引き起こされる[Ca2+iの上昇におけるカプサゼピン(CPZ)、SB366791および式(I)の化合物による前処理の効果を試験した。
【0053】
ラットにおけるカプサイシン誘導二次性異痛症
カプサイシン(20nmols/50μl/脚)を、ジエチルエーテルで麻酔されたラットの右脚無毛皮膚の足底面に注射した(Chaplanら,1994)。化合物Idを、カプサイシン注射の2時間前に経口投与した(10mg/kg)。接触性異痛症をカプサイシンチャレンジの90分後に評価した。
【0054】
薬物および試薬
薬物および試薬を示した会社より得た:[3H]−レシニフェラトキシン(Perkin Elmer、ボストン、MA)、SB−366791(Tocris、UK)、カプサイシン、カプサゼピン、イオノマイシン、ラミニン、ポリ−1−リジン、サブスタンスP(Sigma、イタリア);マウスNGF−7Sおよびコラゲナーゼ/ディスパーゼ(Roche Diagnostics、イタリア);ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、加熱不活性化胎児ウシ血清(FBS)、L−グルタミン(200mM)、ペニシリン/ストレプトマイシン(10,000IU/ml±10,000UG/ml)、(Gibco、イタリア);Fura−2−AM−エステル(Societa Italiana Chimici、イタリア)。カプサイシン(10mM)、カプサゼピン(10mM)、SB−366791(1mM)および式(I)の化合物の貯蔵濃縮液は、50%DMSOおよび50%Tween80中で調製した。Fura−2−AM−エステルおよびイオノマイシンは、100%DMSOに溶解した。他のすべての薬物は、蒸留水中に溶解した。次いでKrebs緩衝溶液で適切な希釈を行った。
【0055】
結果
放射性リガンド結合アッセイ
ラット脊髄に発現したTRPVlに対する[3H]−RTXの飽和曲線は、0.21(0.16〜0.27)のKD値および57(53〜62)fmol/mgタンパク質のBmax値を示した。スキャッチャードプロットは、基本的に線形であり、データのコンピュータ解析は、1クラスのみの高親和性結合部位が存在することを示した。[3H]−RTXの競合結合実験は、化合物Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Igおよび参照化合物(E)−3−(4−クロロフェニル)−N−3−メトキシフェニル)アクリルアミド(SB−366791)がそれぞれ66(56〜78)nM、26.2(21.1〜32.6)nM、4.93(3.40〜7.16)nM、27(23〜32)nM、14.8(10.2〜21.5)nM、8.14(6.87〜9.65)nM、10.3(7.9〜13.4)nMおよび36(30〜43)nMのKi値を有することを明らかにした。
【0056】
Ca2+蛍光発光
カプサイシン(0.1μM)は、大部分(95%)のラットの三叉神経細胞において[Ca2+]を増大させ、従ってこれらは、TRPV1発現神経細胞として同定された。カプサイシン誘発[Ca2+i動員を阻害するIa、Ib、Ic、Id、Ie、IfおよびIgのIC50値は、それぞれ44(11〜184)nM、28.4(25.2〜31.9)nM、2.12(1.44〜2.82)nM、18.2(4〜98)nM、5.25(4.11〜6.70)nM、0.38(0.36〜0.40)および0.65(0.62〜0.68)nMであった。参照TRPV1アンタゴニスト、カプサゼピンおよびSB−366791はカプサイシン反応を阻害し、それぞれ948(676〜1330)nMおよび8.7(3.4〜17.3)nMのIC50を有した。この結果は、平均および95%信頼限界として表される。
【0057】
ラットにおけるカプサイシン誘導二次性異痛症
カプサイシンチャレンジの90分後、化合物Idは、カプサイシンの異痛症促進作用(pro−allodinic effect)に対して有意な予防効果(54%)を示した。
【0058】
参考文献
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

の化合物
[式中、
Yは式
【化2】

の基であり:
R’は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C3〜C6)アルキニル、(C1〜C6)アルコキシ、(C1〜C6)アルキルアミノ、フェニル、ナフチル、フェノキシ、ナフトキシまたはフェニルアミノから選択され、その芳香環は1つまたは複数のハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシおよびトリフルオロメチル基で場合により置換されており;
Rはメチルまたは水素であり;
nは0または1であり;
Xは、ハロゲン、ヒドロキシ、(C1〜C4)アルキル、(C1〜C4)アルコキシおよびトリフルオロメチルから選択される1つまたは複数の基で場合により置換されているフェニル、ピリジニル、ナフチル、キノリニルおよびイソキノリニルから選択される]であって、以下の化合物:
【化3】

を除く化合物。
【請求項2】
nが0であり、Xが5−イソキノリニルである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが水素であり、Yが式:
【化4】

の基
[式中、R’は請求項1に定義されるとおりである]である請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
R’が、水素、メトキシまたは請求項1で示されたとおり場合により置換されているフェノキシからなる群から選択される請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
医薬としての使用のための請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を1つまたは複数の担体および/または賦形剤と混合して含有する薬学的組成物。
【請求項7】
鎮痛性および/または抗炎症性医薬の調製のための請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−542739(P2009−542739A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518748(P2009−518748)
【出願日】平成19年7月2日(2007.7.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/005844
【国際公開番号】WO2008/006481
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(509009991)ファルメステ ソシエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (3)
【氏名又は名称原語表記】PHARMESTE S.R.L.
【Fターム(参考)】