説明

イオン注入方法、及び炭化シリコンの製造方法

【課題】安定的に高効率で、10mA以上の炭素イオン注入電流を実現することができるイオン注入方法、及びそれを利用した炭化シリコンの製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロ波イオン源を有するイオン注入装置を用いて対象物にイオンを注入するイオン注入方法であって、イオン源のガスチャンバーに導入した一酸化炭素ガスにマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力するステップと、導入した一酸化炭素ガスの密度を、所定のマイクロ波電力を供給したときに得られる炭素イオン電流が飽和する領域まで高くするステップと、ガス密度を高くして所定のマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力させている状態で、マイクロ波電力を増加させるステップと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素基を含んだガスからCイオンを分解して利用するイオン注入方法、及びこのイオン注入方法を用いた炭化シリコンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化シリコンは、高いショットキー障壁、高い降伏電界強度及び高い伝熱性を併せ持っているため、パワーデバイス用の材料に適している。また、炭化シリコンは、その格子定数が典型的なオプトエレクトロニクス用半導体材料である窒化物化合物半導体の格子定数と近く、窒化物化合物半導体を低欠陥でエピタキシャル成長させることができるため、オプトエレクトロニクスデバイス用の材料に適している。このような事情から、シリコン基板の表層部に単結晶炭化シリコン層を有する半導体基板(以下、「SiCウエハ」と記す。)を製造するための技術開発がなされている(例えば、特許文献1〜8、及び非特許文献1参照)。
【0003】
SiCウエハの製造において、IBS−SiC(Ion−Beam−synthesized−Silicon Carbide)は、大変魅力的な特徴を有している。このIBS−SiCの生産性と品質は、イオン注入プロセスに強く依存しており、生産性と品質を向上させるためには、大電流炭素イオン源が必要とされる。この大電流炭素イオン源としては、炭素基を含んだガス、例えばCO、CO、CH、C4F8などを用いることができ、その中でも、CO、COガスの取り扱いが比較的に容易である。
【0004】
また、炭素イオン電流効率は、(Cイオン電流(Ccurrent))/(イオン源からの総イオン電流(EXT current))の計算によって導かれる。この効率を向上させるためには、Cイオン(炭素イオン)電流(イオン注入電流)を大きくすることが好ましい。
【0005】
【特許文献1】US2007/176210A1
【特許文献2】特開2006−327931
【特許文献3】US2006/267024A1
【特許文献4】特表2005−506699
【特許文献5】US2004/0248390A1
【特許文献6】WO03/034485
【特許文献7】WO03/071588
【特許文献8】US2005/0020084A1
【特許文献9】特開2006−528423
【特許文献10】US7060620B2
【非特許文献1】“Organometallicvapor phase epitaxial growth of GaN on a 3c-SiC/Si(111) template formed by C+-ion implantation into Si(111) subs”, A. Yamamoto et al., Journal of Crystal Growth 261 (2004) 266-270,
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、炭素イオン電流は、上述した特許文献5にも示されるように、従来において10μA程度の電流量しか実現することができなかった。
【0007】
本願発明の目的は、安定的に高効率で、10mA以上の炭素イオン注入電流を実現することができるイオン注入方法、及びそれを利用した炭化シリコンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述課題を解決するため、本発明は、マイクロ波イオン源を有するイオン注入装置を用いて対象物にイオンを注入するイオン注入方法であって、イオン源のガスチャンバーに導入した一酸化炭素ガスにマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力するステップと、導入した前記一酸化炭素ガスの密度を、所定のマイクロ波電力を供給したときに得られる炭素イオン電流が飽和する領域まで高くするステップと、ガス密度を高くして前記所定のマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力している状態で、前記マイクロ波電力を増加させるステップと、を有することを特徴とする。
【0009】
また、前記マイクロ波電力を増加させるステップの後に、ガス密度を減少させてイオン注入を行うようにすることもできる。
【0010】
さらに、前記マイクロ波電力を増加させるときの前記一酸化炭素ガスの密度が0.013cc/cm・min以上であってもよい。
【0011】
さらにまた、炭素イオン電流効率が0.24%以上となる範囲で炭素イオン注入を行うようにしてもよい。
【0012】
他方、上述したイオン注入方法を用いて炭素イオン注入を行うことで、SiCウエハを製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るイオン注入方法では、イオン源のガスチャンバーに導入した一酸化炭素ガスにマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力するステップと、導入した前記一酸化炭素ガスの密度を、所定のマイクロ波電力を供給したときに得られる炭素イオン電流が飽和する領域まで高くするステップと、ガス密度を高くして前記所定のマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力させている状態で、前記マイクロ波電力を増加させるステップと、を有しているので、従来のようにマイクロ波電力を供給して得られていた炭素イオン電流と比較して、大きな炭素イオン電流を得ることができる。そのため、従来と比較して炭素イオン電流効率を向上させることができる。その結果、安定的に高効率で、10mA以上のイオン注入電流を得ることができ、この高い炭素イオン電流を用いてイオン注入を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
イオン注入は、物質のイオンを固体に注入し、固体の特性を変化させるものであり、例えば、シリコン基板の表層部に単結晶炭化シリコン層を有する半導体基板(以下、「SiCウエハ」という)を製造するために用いられている。
【0016】
イオン注入に用いられるイオン注入装置は、例えば、CO(一酸化炭素ガス)などの大電流炭素イオン源を供給したり或いは炭素イオンを発生させるためのチャンバーと、炭素イオンを高エネルギーまで電気的に加速する加速器と、対象となる物質(本実施の形態では、ウエハ)にイオンを打ち込むチャンバーとから構成されている。
【0017】
SiCウエハの製造は、例えば、シリコン基板内に炭素イオンを注入することによりシリコンと炭素の混在した炭素含有層を形成した後に、シリコン基板をアニールして炭素含有層を単結晶化させることにより単結晶炭化シリコン層を形成し、シリコン基板を乾燥した酸素雰囲気中で加熱して単結晶炭化シリコン層上に犠牲層を形成し、シリコン基板から犠牲層をエッチングにより選択的に除去することにより単結晶炭化シリコン層を露出させ、及び、露出させた単結晶炭化シリコン層の表面をCMP(Chemical Mechanical Polishing,化学的機械的研磨)処理して平滑化することにより行われる。
【0018】
炭素のイオン注入に用いられる大電流炭素イオン源としては、炭素基を含んだガス、例えばCO、CO、CH、C4F8などを用いることができる。その中でも、CO、COガスの取り扱いが比較的に容易である。
【0019】
図1は、COガスを用いて炭素イオンを注入する場合における、COガス密度と炭素イオン電流効率(Cイオン電流の効率。図1の縦軸で示す)との関係を、イオン源に供給されるマイクロ波電力(MWP)ごとにプロットしたグラフである。
【0020】
炭素イオン電流効率は、(Cイオン電流(Ccurrent))/(イオン源からの総イオン電流(EXT current))の計算によって導かれる。
図1からも理解されるように、COガスを用いた場合の炭素イオン電流効率は、COガスの密度が約0.013cc/cm・min以下では、密度の高さにほぼ比例して高くなるが、約0.013cc/cm・min以上では、密度によらずほぼ一定の状態(炭素イオン電流が飽和した状態)になる。また、供給するマイクロ波電力との関係では、2.5、3.0、3.5W/cmの3種類で比較した結果、ほぼ同じ約20%程度の効率となり、効率に大差はない。
【0021】
なお、ここで、ガス密度の単位をcc/cm・minで表記しているが、これは、単位時間(min)あたりにイオン源のガスチャンバーに供給されるガス量(cc)をガスチャンバー体積(cm)で割ったものである。
【0022】
COガスを使用した場合、1molのCOガスは、理論的に1molのCイオンと2molのOイオンに分解する。そのため、Cイオン電流は、イオン源から出力される総イオン電流の3分の1しか利用できない。実際には、Cイオン、Oイオンの他にCOイオンやOイオンなどとして出力される電流が存在するため、C+イオン電流は3分の1以下しか利用することができず、炭素イオン電流効率は、さらに低いものとなる。
【0023】
図2は、図1のCOガスの代わりにCOガスを用いて炭素イオンを注入する場合における、COガス密度と炭素イオン電流効率との関係を、イオン源に供給されるマイクロ波電力ごとにプロットしたグラフである。
【0024】
COガスを使用した場合、1molのCOガスは、理論的に1molのCイオンと1molのOイオンに分解する。そのため、Cイオン電流は、イオン源から出力される総イオン電流の2分の1を利用できることになる。しかしながら、図2に示すように、COガスを使用した場合の炭素イオン電流効率は、COガスを用いた場合とほぼ同じ特性を有し、効率についてもほとんど差がない。
【0025】
図3は、図2において、炭素イオン源に供給されるマイクロ波電力を急激に増加させたときの炭素イオン電流効率をプロットしたグラフである。
COガスをイオンガス源として用いる場合、COガス密度を約0.013cc/cm・min以上となる領域(炭素イオン電流効率が飽和する領域。図3において、領域Aで示す)で、炭素イオン電流(炭素イオンビーム)を出力させている状態でマイクロ波電力を急激に増加させること(2.5W/cmから3.0W/cm或いは3.5W/cmに増加させること)により、炭素イオン電流効率が著しく向上(約20%程度から約25%以上の効率に向上)するようになる(図3において、領域Bで示す)。これにより、従来では、SiCウエハを製造するために、10μA程度の電流量で炭素イオン注入を行っていたものを、安定的に10mA超の大電流で行うことができるようになる。
【0026】
このようなイオン電流の増加は、ガス密度が0.013cc/cm・min未満の領域C(図3参照)では見られない。すなわち、この領域でマイクロ波電力を急激に増加させても、著しい炭素イオン電流効率の向上は見られない。
【0027】
一方、密度が約0.013cc/cm・min以上となる領域でマイクロ波電力を増加させて炭素イオン電流効率を向上させると、この向上させた状態から密度を0.013cc/cm・min未満に小さくしたとしても、従来のこの領域(領域C)での効率と比較して、より高い効率を得ることができる(図3において、領域Dで示す)。
【0028】
また、Cイオン以外のイオン電流は、質量分離部(炭素イオンを発生させるためのチャンバー)において分離されるが、10mA以上の大電流イオン注入機においては、この電流による機器への損傷がきわめて甚大なものとなり、炭素イオン電流効率を上げることは非常に重要となる。さらに、炭素イオン電流効率を向上させることで相対的にCイオン以外の不純物イオンの混入比抑えることとなり、この結果、炭素イオン注入によって作られたSiC膜の品質を向上させることが可能となる。
【0029】
さらには、この炭素イオン電流効率が高い領域(効率が0.24%以上。図3において、境界線Eよりも上側の領域をいう)で炭素イオン注入を行うことで、SiCウエハに形成される炭化シリコンの表面粗さを向上させることができる。特に、マイクロ波電力を増加させた後に一酸化炭素のガス密度を減少させても、上述のように高い効率を得ることができるので、ガス密度を必要以上に高くすることなく、高効率で10mA超の大電流でイオン注入を行うことができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
[イオン源としてCO(一酸化炭素ガス)を用いた場合の効率]
100cmの体積を有するマイクロ波イオン源に0.005cc/cm・minのガス密度で二酸化炭素ガスを導入し、引き続き2.5W/cmのマイクロ波電力を供給した後、二酸化炭素ガス密度をそれぞれ0.005cc/cm・min、0.009cc/cm・min、0.011cc/cm・min、0.013cc/cm・min、および0.018cc/cm・minに増加させた。
このときの炭素イオン電流効率を求めると、それぞれ、0.097、0.182、0.191、0.202、0.193であった。
【0032】
一方、一酸化炭素ガス密度を0.013cc/cm・minにしたところで、マイクロ波電力を5秒以内に3W/cm3に増加させたときの炭素イオン電流効率は、0.268であった。
また、引き続き、一酸化炭素ガス密度を0.011cc/cm・min、0.009cc/cm・minに減少させたときの炭素イオン電流効率は、0.240、0.215であった。
【0033】
[イオン源としてCO2(二酸化炭素ガス)を用いた場合の効率]
100cmの体積を有するマイクロ波イオン源に0.005cc/cm・minのガス密度で一酸化炭素ガスを導入し、引き続き2.5W/cmのマイクロ波電力を供給した後、一酸化炭素ガス密度をそれぞれ0.005cc/cm・min、0.009cc/cm・min、0.011cc/cm・min、0.013cc/cm・min、および0.018cc/cm・minに増加させた。
このときの炭素イオン電流効率を求めると、それぞれ、0.087、0.175、0.187、0.180、0.179であった。
【0034】
一方、二酸化炭素ガス密度を0.013cc/cm・minにしたところで、マイクロ波電力を5秒以内に3W/cm3に増加させたときの炭素イオン電流効率は、0.193であった。
また、引き続き、二酸化炭素ガス密度を0.011cc/cm・min、0.009cc/cm・minに減少させたときの炭素イオン電流効率は、0.186、0.178であった。
【0035】
[COとCOとの比較結果]
これらのことから、イオン源としてCOを用いた場合にのみ、密度を0.013cc/cm・minにしたところで、マイクロ波電力を5秒以内に3W/cm3に増加させたときの炭素イオン電流効率が向上する。
また、COガス密度が約0.013cc/cm・minで炭素イオン電流を出力させ、マイクロ波電力を急激に増加させた状態から、ガス密度を0.011cc/cm・min、0.009cc/cm・minに減少させたとしても、この領域で従来得られていた効率と比較して、より高い効率を得ることができる。
【0036】
(実施例2)
[約0.24の炭素イオン電流効率で注入したときの表面粗さ]
100cmの体積を有するマイクロ波イオン源に0.005cc/cm・minのガス密度で一酸化炭素ガスを導入し、引き続き2.5W/cmのマイクロ波電力を供給した後、一酸化炭素ガス密度を0.013cc/cm・minに増加させ、引き続き、マイクロ波電力を5秒以内に3W/cm3に増加させ、引き続き、一酸化炭素ガス密度を0.011cc/cm・minに減少させた。
このときの炭素イオン電流効率は、約0.24に保たれたままであった。
【0037】
この炭素イオン電流効率を約0.24に保ったままでイオン注入を行った。
直径150mmの[111]方位のn型フロートゾーンシリコンウェハを用意し、1100℃のドライ酸化雰囲気中で熱処理して、ウエハ上に400nmの表面酸化膜を形成し、このウエハに、ウエハ加熱温度550℃、加速エネルギー180keV、ドーズ量7.0×1017/cmで炭素イオン注入を行い、シリコン基板内部に炭素含有層を形成した。注入後、サンプル上に形成された酸化膜を、希釈フッ酸で除去した。引き続き、各サンプルを縦型高温熱処理炉によって1350℃、Ar+0.5体積%O雰囲気中で10時間高温アニールし、その後、サンプル表面に形成された表面酸化膜を希釈フッ酸で除去した。その後、サンプルのSiC表面の粗さ(RMS)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.35nmとなった。
【0038】
[約0.19の炭素イオン電流効率で注入したときの表面粗さ]
100cmの体積を有するマイクロ波イオン源に0.005cc/cm・minのガス密度で一酸化炭素ガスを導入し、引き続き2.5W/cmのマイクロ波電力を供給した後、一酸化炭素ガス密度を0.011cc/cm・minに増加させると、炭素イオン電流効率は0.19であった。
【0039】
この炭素イオン電流効率を約0.19に保ったままでイオン注入を行った。
直径150mmの[111]方位のn型フロートゾーンシリコンウェハを用意し、1100℃のドライ酸化雰囲気中で熱処理して、ウエハ上に400nmの表面酸化膜を形成し、このウエハに、ウエハ加熱温度550℃、加速エネルギー180keV、ドーズ量7.0×1017/cmで炭素イオン注入を行い、シリコン基板内部に炭素含有層を形成した。注入後、サンプル上に形成された酸化膜を、希釈フッ酸で除去した。引き続き、各サンプルを縦型高温熱処理炉によって1350℃、Ar+0.5体積%O雰囲気中で10時間高温アニールし、その後、サンプル表面に形成された表面酸化膜を希釈フッ酸で除去した。その後、サンプルのSiC表面の粗さ(RMS)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.60nmとなった。
【0040】
[約0.21の炭素イオン電流効率で注入したときの表面粗さ]
100cmの体積を有するマイクロ波イオン源に0.005cc/cm・minのガス密度で一酸化炭素ガスを導入し、引き続き2.5W/cmのマイクロ波電力を供給した後、一酸化炭素ガス密度を0.014cc/cm・minに増加させ、引き続きマイクロ波電力を5秒以内に3W/cmに増加させ、引き続き一酸化炭素ガス密度を0.009cc/cm・minに減少させると、炭素イオン電流効率は0.21であった。
【0041】
この炭素イオン電流効率を約0.21に保ったままでイオン注入を行った。
直径150mmの[111]方位のn型フロートゾーンシリコンウェハを用意し、1100℃のドライ酸化雰囲気中で熱処理して、ウエハ上に400nmの表面酸化膜を形成し、このウエハに、ウエハ加熱温度550℃、加速エネルギー180keV、ドーズ量7.0×1017/cmで炭素イオン注入を行い、シリコン基板内部に炭素含有層を形成した。注入後、サンプル上に形成された酸化膜を、希釈フッ酸で除去した。引き続き、各サンプルを縦型高温熱処理炉によって1350℃、Ar+0.5体積%O雰囲気中で10時間高温アニールし、その後、サンプル表面に形成された表面酸化膜を希釈フッ酸で除去した。その後、サンプルのSiC表面の粗さ(RMS)を原子間力顕微鏡(AFM)で測定したところ、0.58nmとなった。
【0042】
[炭素イオン電流効率と表面粗さとの関係]
これらのことから、炭素イオン電流効率を向上させてイオン注入を行い、同じ表面処理工程を行った場合、効率が高い(炭素イオン電流が大きい)ほど、SiCウエハの表面粗さを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】COガスを用いて炭素イオンを注入する場合における、COガス密度と炭素イオン電流効率との関係を、イオン源に供給されるマイクロ波電力ごとにプロットしたグラフである。
【図2】図1のCOガスの代わりにCOガスを用いて炭素イオンを注入する場合における、COガス密度と炭素イオン電流効率との関係を、イオン源に供給されるマイクロ波電力ごとにプロットしたグラフである。
【図3】図2において、イオン源に供給されるマイクロ波電力を急激に増加させたときの炭素イオン電流効率をプロットしたグラフである。
【符号の説明】
【0044】
A 炭素イオン電流効率が飽和する領域
B 炭素イオン電流効率が著しく向上した領域
C 炭素イオン電流効率が変化しない領域
D 高い炭素イオン電流効率が得られる領域
E 炭素イオン電流効率が高い領域の境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波イオン源を有するイオン注入装置を用いて対象物にイオンを注入するイオン注入方法であって、
イオン源のガスチャンバーに導入した一酸化炭素ガスにマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力するステップと、
導入した前記一酸化炭素ガスの密度を、所定のマイクロ波電力を供給して得られる炭素イオン電流が飽和する領域まで高くするステップと、
ガス密度を高くして前記所定のマイクロ波電力を供給して炭素イオン電流を出力させている状態で、前記マイクロ波電力を増加させるステップと、
を有することを特徴とするイオン注入方法。
【請求項2】
前記マイクロ波電力を増加させるステップの後に、ガス密度を減少させてイオン注入を行うことを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
【請求項3】
前記マイクロ波電力を増加させるときの前記一酸化炭素ガスの密度が0.013cc/cm・min以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のイオン注入方法。
【請求項4】
炭素イオン電流効率が0.24%以上となる範囲で炭素イオン注入を行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載のイオン注入方法。
【請求項5】
請求項1〜4の方法を用いて炭素イオン注入を行うことで、SiCウエハを製造することを特徴とする炭化シリコンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−153272(P2010−153272A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−331708(P2008−331708)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(599119503)ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト (223)
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】