説明

イオン除去装置

【課題】 流体中の複数種類のイオンを効率的に除去できるようにするとともに、複数のイオン除去ユニットを寿命まで使用できるようにする。
【解決手段】 本発明は、ハウジング22の入口Eから流入した流体のみが通過できるように、ハウジング22内に収納されており、流体中の所定のイオンを除去する第1イオン除去ユニット24と、第1のイオン除去ユニット24を通過した流体のみが通過できるように、ハウジング22内に収納されており、流体中の別種類のイオンを除去する第2イオン除去ユニット26とを有し、第2イオン除去ユニット26を通過した流体の液体成分が排液口Dから排出され、第2イオン除去ユニット26を通過した流体の気体成分が排気口Hから排出される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体中に含まれる複数種類のイオンを除去するイオン除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したイオン除去装置としては種々のものが提案されている。
例えば、特許文献1に記載されたイオン除去装置50は、燃料電池51の排出流体からイオンを除去する装置であり、図4に示すように、水が溜められた容器52と、水に漬かるように容器52内に収納されたイオン交換樹脂54とを備えている。燃料電池51の排出流体は、容器52内の水に通されることで液体成分が水中に残留し、気体成分が泡となって容器52から排出される。そして、水中に残留した液体成分中のイオンがイオン交換樹脂54に吸着されることで、燃料電池51の排出流体からイオンが除去される。
【0003】
【特許文献1】特開2002−313404号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したイオン除去装置50では、流体中の複数種類のイオン(例えば、陰イオン、陽イオン)を効率的に除去するのは難しい。例えば、イオン交換樹脂54の交換性を考慮して、陰イオン用のイオン交換樹脂54(樹脂A)と、陽イオン用のイオン交換樹脂54(樹脂B)を分離して配置する場合を考える。この場合、樹脂A(陰イオン用)の位置にある陽イオンは樹脂B(陽イオン用)に吸着され難くなり、樹脂Bの位置にある陰イオンは樹脂Aに吸着され難くなる。このため、総合的に、陰イオン、陽イオンの除去効率が低下する。
この点を改善するために、樹脂Aと樹脂Bとを均等に混合して設置すると、例えば、樹脂Bがまだ使用できる状態で樹脂Aが使用不能となった場合に、樹脂Aと樹脂Bとを共に交換しなければならず経済的でない。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、流体中の複数種類のイオンを効率的に除去できるようにするとともに、複数のイオン除去ユニットを寿命まで使用できるようにして経済性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。
請求項1の発明は、流体が流入する入口、前記流体の液体成分が排出される排液口、及び前記流体の気体成分が排出される排気口を備えるハウジングと、前記ハウジングの入口から流入した流体のみが通過できるように、そのハウジング内に収納されており、前記流体中の所定のイオンを除去する第1のイオン除去ユニットと、前記第1のイオン除去ユニットを通過した流体のみが通過できるように、前記ハウジング内に収納されており、前記流体中の別種類のイオンを除去する第2のイオン除去ユニットとを有しており、前記第2のイオン除去ユニットを通過した流体の液体成分が前記排液口から排出され、前記第2のイオン除去ユニットを通過した流体の気体成分が前記排気口から排出される構成であることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、流体が第1のイオン除去ユニットを通過する際にその流体中の所定のイオンが除去され、さらに第2のイオン除去ユニットを通過する際に別種類のイオンが除去される。そして、第2のイオン除去ユニットを通過した流体の液体成分が排液口から排出され、前記流体の気体成分が排気口から排出される。このように、流体は直列に設置された第1のイオン除去ユニットと第2のイオン除去ユニットを通過する構成のため、所定のイオンと別のイオン(複数種類のイオン)を効率的に除去できるようになる。
また、例えば、第2のイオン除去ユニットが使用できる状態で、第1のイオン除去ユニットが寿命となった場合でも、第1のイオン除去ユニットのみを交換できるようになる。したがって、各々のイオン除去ユニットを寿命まで使用できるようになり、経済性が向上する。
【0008】
請求項2の発明によると、イオン除去ユニットは、流体用の入口開口と出口開口とを備える容器と、前記容器内に充填された粒状のイオン交換樹脂とを有している。
請求項3の発明によると、容器の入口開口及び出口開口は、イオン交換樹脂の寸法よりも大きな寸法で形成されており、前記イオン交換樹脂の寸法よりも目が細かい網状シートにより覆われていることを特徴とする。
このように、容器の入口開口及び出口開口を網状シートで覆う構成のため、網状シートでイオン交換樹脂を保持でき、入口開口及び出口開口のサイズをイオン交換樹脂のサイズに関わり無く自由に設定できる。また、流体中の異物が容器内に入り込み難くなるため、イオン交換樹脂の保護、及びイオン交換樹脂の粒子空間を確保して目詰まりを防止できる。
【0009】
請求項4の発明によると、第1のイオン除去ユニットの容器である第1容器は、中央に貫通孔を備える環状に形成されており、第2のイオン除去ユニットの容器である第2容器は、同じく中央に貫通孔を備える環状に形成された容器本体と、その容器本体の一端から前記貫通孔と同軸の状態で軸方向に突出する管体とを有しており、第1容器の貫通孔に第2容器の管体が下方から通されることで、前記第1容器と第2容器とが上下同軸に配置されて、前記第1容器の下端部の出口開口と前記第2容器の上端部の入口開口とが接続される構成であることを特徴とする。
上記構成により、第1のイオン除去ユニットと第2のイオン除去ユニットとの分離あるいは組付けが容易になり、それらのイオン除去ユニットの交換が簡単になる。
請求項5の発明によると、第1容器及び第2容器の内部空間は、網状シートによって周方向に仕切られていることを特徴とする。
このため、第1、第2容器の内部でイオン交換樹脂が周方向に移動し難くなり、振動等でイオン交換樹脂が周方向の一部分に偏って配置されるような不具合が生じない。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、複数のイオン除去ユニットを直列に配置することで、流体中の複数種類のイオンを効率的に除去することができる。また、複数のイオン除去ユニットを寿命まで使用できるため、経済性が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜図3に基づいて、本発明の実施形態1に係るイオン除去装置について説明する。本実施形態に係るイオン除去装置は、燃料電池システムにおいて燃料電池の排出流体中に含まれるイオンを除去する装置である。図1は、本実施形態に係るイオン除去装置の縦断面図等であり、図2は、イオン除去装置で使用されるイオン除去ユニットの平面図(A図)及び縦断面図(B図)である。また、図3は燃料電池システムの模式図である。
本実施形態に係るイオン除去装置20の説明を行う前に、先ず、図3に基づいて燃料電池システム1の説明を行う。
<燃料電池システム1の概要>
燃料電池システム1は、図3に示すように、燃料電池10と、その燃料電池10に燃料ガスを供給するガス供給設備18及び空気(酸素)を供給する空気供給設備(図示省略)等とにより構成されている。
燃料電池10は、燃料ガスである水素と空気中の酸素との化学反応を発電に利用する電池であり、電解質膜12を挟んでアノード電極14(陰極)とカソード電極16(陽極)とを備えている。アノード電極14には、前記ガス供給設備18によって水素ガスが供給される。また、カソード電極16には、前記空気供給設備によって空気(酸素)が供給される。
【0012】
燃料電池10のアノード電極14とカソード電極16に、それぞれ水素ガスと空気(酸素)とが供給されると、水素と酸素との化学反応により両電極14,16間に電圧が発生する。さらに、反応副産物として生成水が発生する。
前記生成水はアノード電極14で消費されなかった水素ともに気液分離機能を備えるイオン除去装置20に導かれ、このイオン除去装置20内で後記するように複数のイオンが除去される。そして、イオンの除去後、イオン除去装置20から排出された液体(生成水)が生成水タンク(図示省略)に導かれる。また、イオン除去装置20から排出された気体(水素)は再び燃料ガスとしてアノード電極14に送られる。
なお、カソード電極16で消費されなかった空気(酸素)は大気に放出される。
【0013】
<イオン除去装置20について>
イオン除去装置20は、燃料電池10から排出された排出流体、即ち、生成水、水素、水蒸気、ミスト等の混合流体を水素と生成水等とに気液分離させる過程で、所定の陽イオンと陰イオンとを除去できるように構成されている。
イオン除去装置20は、図1(A)に示すように、陰イオンを除去する第1イオン除去ユニット24と、陽イオンを除去する第2イオン除去ユニット26と、それらのイオン除去ユニット24,26を収納するとともに、気液分離を行うためのハウジング22とから構成されている。
ハウジング22は、有底(天井)円筒形状のアッパハウジング221と、同じく有底円筒形状のロアハウジング222とを備えており、アッパハウジング221とロアハウジング222との開口部周縁にそれぞれ接続フランジ部221f,222fが形成されている。そして、アッパハウジング221の接続フランジ部221fとロアハウジング222の接続フランジ部222fとがパッキン22pを介して相互に連結されることで、ハウジング22が閉じられた状態に保持される。
【0014】
アッパハウジング221の上部側面には、接線方向から短管221eが接続されており、この短管221eの先端にハウジング22の入口Eが形成されている。このように、短管221eが接線方向かアッパハウジング221に接続される構成のため、入口Eからハウジング22内に入り込んだ流体はハウジング22の側壁面に沿って旋回するようになる。
また、アッパハウジング221の天井部221uの中心には、短管状の突起221tが同軸に形成されており、この突起221tの先端(上端)にハウジング22の排気口Hが形成されている。
ロアハウジング222は、底部222rが漏斗状に形成されており、その漏斗の短管部分222dの先端(下端)に排液口Dが設けられている。
ハウジング22の材料としては、例えば、強度が高く及び耐蝕性に優れたステンレス等が使用される。
【0015】
<第1イオン除去ユニット24について>
第1イオン除去ユニット24は、燃料電池10から排出された排出流体中の陰イオンを除去するユニットであり、図2(A)(B)に示すように、第1容器241と、その第1容器241に収納されたイオン交換樹脂248とから構成されている。
第1容器241は、中央に貫通孔241hを備える環状の容器である。第1容器241は、貫通孔241hを構成する管状の内周壁241eと、筒状の外周壁241rと、円板状の天井壁241u及び底面壁241bとにより、内部空間が断面略角形となるように形成されている。そして、第1容器241の外周壁241rの外径寸法が、アッパハウジング221の内径寸法とほぼ等しい値に設定されている。
第1容器241の天井壁241uは、図2(B)に示すように、中心の貫通孔241hの部分が最も低くなるように、凹円錐面状に形成されている。また、天井壁241uには円周方向に等間隔(例えば、45°間隔)で排出流体(以下、流体という)が流入するための入口開口243が形成されており、それらの入口開口243がメッシュフィルタ244で外側から覆われている。ここで、本実施形態の第1容器241では、天井壁241uの面積に対する入口開口243の開口率は10%〜50%に設定されている。また、メッシュフィルタ244は、径寸法が約25μmの樹脂繊維により格子状(網状)に編まれたフィルタであり、格子目の寸法が約40μmに設定されている。
【0016】
第1容器241の底面壁241bは、内周壁241e及び外周壁241rに対して直角に形成されている。底面壁241bには円周方向に等間隔(例えば、45°間隔)で流体の出口開口245が形成されており、それらの出口開口245が第1容器241の内側から上記したメッシュフィルタ244によって覆われている。ここで、底面壁241bの面積に対する出口開口245の開口率は10%〜50%に設定されている。
また、第1容器241の外周壁241rの上部外周には、図1(B)に示すように、アッパハウジング221の内周面と第1容器241間をシールするオーリング23を収納するリング溝23mが形成されている。ここで、図1(B)は、図1(A)のB部拡大図である。
このため、ハウジング22に流入した排出流体が第1容器241とそのハウジング22の内周面との隙間から下方に漏れるようなことがない。
【0017】
また、第1容器241の貫通孔241hの上部内周には、その貫通孔241hに通される管体27(後記する)と第1容器241間をシールするオーリング28を収納するリング溝28m(図2(B)参照)が形成されている。このため、同様にハウジング22に流入した排出流体が第1容器241の貫通孔241hと管体27との隙間から下方に漏れるようなことがない。
さらに、第1容器241の内部空間は、図2(A)の二点鎖線に示すように、区画用メッシュフィルタ247によって円周方向に複数区画(例えば、4区画)に仕切られている。区画用メッシュフィルタ247には、上記したメッシュフィルタ244よりも目の粗いフィルタが使用される。
ここで、メッシュフィルタ244及び区画用メッシュフィルタ247に使用される樹脂繊維としては、ポリアリレート樹脂の回りをポリエチレンナフタレート樹脂等で覆った二層構造の繊維が使用される。即ち、メッシュフィルタ244及び区画用メッシュフィルタ247が本発明の網状シートに相当する。
また、第1容器241の材料としてはポリプロピレン樹脂が好適に使用される。
【0018】
第1容器241に収納されるイオン交換樹脂248は、陰イオンを吸着するアニオン交換樹脂であり、0.1mm〜0.5mm程度の粒状体である。アニオン交換樹脂248は、第1容器241の天井壁241uが開かれた状態で、その第1容器241内に充填される。そして、アニオン交換樹脂248の充填後に、第1容器241の天井壁241uが溶着等により塞がれる。前述のように、第1容器241の入口開口243及び出口開口245は格子目の寸法が約40μmのメッシュフィルタ244で覆われているため、第1容器241に収納されたアニオン交換樹脂248及びその破片が入口開口243及び出口開口245からこぼれ落ちることがない。また、第1容器241の内部空間は区画用メッシュフィルタ247によって仕切られているため、第1容器241内に充填されたアニオン交換樹脂248が振動等で円周方向に移動することがない。このため、第1容器241内でアニオン交換樹脂248が周方向一方に偏るようなことがない。
【0019】
<第2イオン除去ユニット26について>
第2イオン除去ユニット26は、燃料電池10から排出された排出流体中の陽イオンを除去するユニットであり、図2(A)(B)に示すように、第2容器262と、管体27と、その第2容器262に収納されたイオン交換樹脂268とから構成されている。なお、管体27は後記するように第2容器262と一体化されているため、第2容器262の本体と管体27とを含めて第2容器262と呼ぶことにする。
第2容器262は、中央に貫通孔262hを備える環状の容器であり、その貫通孔262hに前述の管体27が通されている。管体27は、第2容器262を通過した流体の気体成分(水素)をハウジング22の排気口Hまで導く管であり、その管体27の基端部27m(下端部27m)が第2容器262の底面壁262bの内周端に固定されている。そして、第2容器262の貫通孔262hから上方に突出している管体27の中央部分が第1容器241の貫通孔241hに通され、その管体27の先端部27fがアッパハウジング221の短管状の突起221tに内側から嵌り込むようになっている(図1参照)。なお、管体27の先端部27fとハウジング22の突起221tとの間には、オーリング27xが装着されている。
【0020】
第2容器262は、図2(B)に示すように、貫通孔262hを構成する管状の内周壁262eと、筒状の外周壁262rと、円板状の天井壁262u及び底面壁262bとにより、内部空間が断面略角形となるように形成されている。そして、第2容器262の外周壁262rの外径寸法が、アッパハウジング221の内径寸法とほぼ等しい値に設定されている。
また、第2容器262の外周壁262rの外周面には、高さ方向ほぼ中央位置にフランジ部262fが形成されている。第2容器262のフランジ部262fは、第2容器262及び第1容器241をハウジング22に取付けるための部分であり、弾性体Md(図1(A)参照)に覆われた状態でロアハウジング222の接続フランジ部222fに設けられたリング凹部Mに収納される。そして、アッパハウジング221の接続フランジ部221fとロアハウジング222の接続フランジ部222fとが連結された状態で、第2容器262のフランジ部262f、弾性体Mdは両接続フランジ部221f,222f間に挟まれるようになる。
【0021】
第2容器262の天井壁262uは、図2(B)示すように、第1容器241の底面壁241bと面接触可能なように、内周壁262e及び外周壁262rに対して直角に形成されている。さらに、第2容器262の天井壁262uには、第1容器241の底面壁241bの出口開口245と重複する位置に入口開口265が形成されている。このため、第1容器241の出口開口245から流出した流体はそのまま第2容器262内に流入するようになる。第2容器262の入口開口265は、第2容器262の内側からメッシュフィルタ244によって覆われている。ここで、第2容器262の天井壁262uの面積に対する入口開口265の開口率は10%〜50%に設定されている。
第2容器262の底面壁262bは、図2(B)に示すように、中心の貫通孔262h及び管体27の基端部27mの部分が最も高くなるように、凹円錐面状に形成されている。さらに、底面壁262bには円周方向に等間隔(例えば、45°間隔)で流体の出口開口263が形成されており、それらの出口開口263が第2容器262の内側からメッシュフィルタ244で覆われている。
【0022】
ここで、第2容器262の底面壁262bの面積に対する出口開口263の開口率は10%〜50%に設定されている。また、底面壁262bの出口開口263は、管体27の基端部27mから可能な限り離れた位置に設置するのが好ましい。
第2容器262及び管体27の材料には、第1容器241と同様にポリプロピレン樹脂が好適に使用される。
第2容器262に収納されるイオン交換樹脂268は、陽イオンを吸着するカチオン交換樹脂であり、0.1mm〜0.5mm程度の粒状体である。カチオン交換樹脂268は、第2容器262の天井壁262uが開かれた状態で、その第2容器262内に充填される。そして、カチオン交換樹脂268の充填後に、第2容器262の天井壁262uが溶着等により塞がれる。ここで、第2容器262の内部空間は、第1容器241と同様に、区画用メッシュフィルタ247によって仕切られている。
【0023】
<イオン除去装置20の組立について>
イオン除去装置20を構成する第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26との組付けは、次のようにして行う。先ず、第1イオン除去ユニット24の第1容器241の貫通孔241hに対して、第2イオン除去ユニット26の第2容器262の管体27が挿入される。ここで、第1容器241の貫通孔241hと第2容器262の管体27との間には、円周方向の位置決め用に凹凸(図示省略)が形成されている。このため、第2容器262の管体27を第1容器241の貫通孔241hに挿入する際に、第1容器241に対して第2容器262が円周方向に位置ずれすることはない。また、第1容器241の貫通孔241hと第2容器262の管体27との間はオーリング28によって確実にシールされる。そして、第1容器241の貫通孔241hに対する第2容器262の管体27の挿入が完了した段階で、図2(B)に示すように、第1容器241の出口開口245と第2容器262の入口開口265とが接続される。この状態で、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26との組付が終了する。
なお、第1容器241の貫通孔241hから第2容器262の管体27を引き抜けば、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とを分離できる。
【0024】
次に、組付け後の第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とがロアハウジング222にセットされる。即ち、第2イオン除去ユニット26のフランジ部262fに弾性体Mdが装着された状態で、そのフランジ部262fがロアハウジング222の接続フランジ部222fのリング凹部Mにセットされる。
次に、アッパハウジング221の突起221tに対して第2イオン除去ユニット26の管体27の先端部27fが内側から嵌め込まれ、そのアッパハウジング221が第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とに被せられる。そして、アッパハウジング221の接続フランジ部221fがロアハウジング222の接続フランジ部222fにボルト等で連結されることで、ハウジング22が閉じられる。このとき、両接続フランジ部221f,222f間に第2イオン除去ユニット26のフランジ部262fが弾性体Mdを介した状態で挟持されるため、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とはハウジング22に対して固定される。この状態で、イオン除去装置20の組立が完了する。
なお、アッパハウジング221とロアハウジング222との接続を解除することで、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とをハウジング22から取外すことができる。
即ち、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とは相互に組付け、分離可能であり、ハウジング22に対して取付け、取外し可能に構成されている。
【0025】
<イオン除去装置20の動作について>
次に、本実施形態に係るイオン除去装置20の動作について説明する。
図1の白矢印で示すように、入口Eからハウジング22内に流入した燃料電池10の排出流体、即ち、生成水、水素、水蒸気、ミスト等の混合流体(以下、流体という)は、アッパハウジング221の側壁面に沿って旋回しながら第1イオン除去ユニット24の入口開口243まで到達し、それらの入口開口243から第1容器241内に流入する。ここで、第1イオン除去ユニット24の第1容器241とアッパハウジング221の側壁面との間はオーリング23によってシールされているため、流体の一部がアッパハウジング221の側壁面を伝って排液口D側に落下するようなことがない。
また、第1イオン除去ユニット24の入口開口243はメッシュフィルタ244によって覆われているため、流体中の異物はこのメッシュフィルタ244で除去され、第1容器241内に入り込むことがない。これによって、アニオン交換樹脂248が保護されるとともに、アニオン交換樹脂248間の空間が確保されて目詰まり等を防止できるようになる。なお、前記メッシュフィルタ244は入口開口243を第1容器241の外側から覆う構成のため、交換が容易である。
【0026】
第1イオン除去ユニット24の第1容器241内に流入した流体は、第1容器241内のアニオン交換樹脂248間を通過する過程で、その流体内の陰イオンがアニオン交換樹脂248に吸着される。即ち、流体の液体成分はアニオン交換樹脂248間を流れる過程で陰イオンが除去される。また、流体中のミスト等はアニオン交換樹脂248の粒子に衝突して凝集することで液化し、この状態で陰イオンが除去される。
そして、アニオン交換樹脂248間を通過した流体が第1容器241の出口開口245から排出され、そのまま第2イオン除去ユニット26の入口開口265から第2容器262内に流入する。ここで、第1容器241の出口開口245及び第2容器262の入口開口265はメッシュフィルタ244で覆われているため、アニオン交換樹脂248の破片等の異物が第2容器262内に流入することはない。
【0027】
第2イオン除去ユニット26の第2容器262内に流入した流体は、第2容器262内のカチオン交換樹脂268間を通過する過程で、上記したように、その流体内の陽イオンがカチオン交換樹脂268に吸着される。
そして、カチオン交換樹脂268間を通過した流体が第2容器262の出口開口263から排出され、その流体の液体成分(生成水等)がロアハウジング222の底部222rに滴下してハウジング22の排液口Dから排出される。また、前記流体の気体成分(水素)が第2容器262の出口開口263から管体27の方向に吸引され、その管体27を通ってハウジング22の排気口Hから排出される。ここで、第2容器262の出口開口263はメッシュフィルタ244で覆われているため、カチオン交換樹脂268の破片等の異物が外部に流出することはない。
ハウジング22の排気口Hから排出された流体の気体成分(水素)は、図3に示すように、水素ポンプP0によって再び燃料電池10のアノード電極14に送られる。このように、イオン除去が行われた後の気体成分(水素)を燃料電池10に送るため、燃料電池10の劣化を抑制できるようになる。
【0028】
<本実施形態に係るイオン除去装置20の作用>
本実施形態に係るイオン除去装置20によると、流体が第1イオン除去ユニット24を通過する際にその流体中の陰イオンが除去され、さらに第2イオン除去ユニット26を通過する際に陽イオンが除去される。そして、第2イオン除去ユニット26を通過した流体の液体成分が排液口Dから排出され、流体の気体成分が排気口Hから排出される。このように、流体は直列に設置された第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26を通過する構成のため、陰イオンと陽イオン(複数種類のイオン)を効率的に除去できるようになる。
また、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とは、相互に組付け、分離可能であり、ハウジング22に対して取付け、取外し可能に構成されている。このため、例えば、第2イオン除去ユニット26が使用できる状態で、第1イオン除去ユニット24が寿命となった場合でも、第1イオン除去ユニット24のみを交換できるようになる。したがって、各々のイオン除去ユニット24,26を寿命まで使用できるようになり、経済性が向上する。
また、第1、第2容器241,262の入口開口243,265及び出口開口245,263をメッシュフィルタ244で覆う構成のため、メッシュフィルタ244でイオン交換樹脂248,268を保持でき、入口開口243,265及び出口開口245,263のサイズをイオン交換樹脂248,268のサイズに関わり無く自由に設定できる。また、流体中の異物が第1、第2容器241,262内に入り込み難くなるため、イオン交換樹脂248,268の保護、及びイオン交換樹脂248,268の粒子空間を確保して目詰まりを防止できる。
【0029】
また、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26との分離あるいは組付けが容易になり、それらのイオン除去ユニット24,26の交換が簡単になる。
また、第1容器241及び第2容器262の内部は、区画用メッシュフィルタ247によって周方向に仕切られているため、第1、第2容器241,262の内部でイオン交換樹脂248,268が周方向に移動し難くなり、振動等でイオン交換樹脂248,268が周方向の一部分に偏って配置されるような不具合が生じない。
さらに、流体の気液分離を行う過程でその流体のイオン除去を行えるため、気液分離器とイオン除去装置とを個別に設ける必要がなくなり、装置の小型化を図ることができる。さらに、ミスト状の流体のイオン除去も可能になる。
【0030】
<変更例>
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、第1イオン除去ユニット24で陰イオンを除去し、第2イオン除去ユニット26で陽イオンを除去する例を示したが、第1イオン除去ユニット24で陽イオンを除去し、第2イオン除去ユニット26で陰イオンを除去する構成でも可能である。
また、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とを上下に配置し、流体を上から下に流す例を示したが、流体を旋回させながら流す場合には第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26と円周方向に交互に配置することも可能である。
また、第2イオン除去ユニット26の第2容器262と管体27とを第2容器262の下端部で接続する例を示したが、第2容器262の上端部で接続することも可能である。
また、イオン除去ユニット24,26でイオン交換樹脂248,268を使用する例を示したが、イオン交換樹脂248,268の代わりにイオン中和剤(CaCO3等)を使用することも可能である。
また、第1イオン除去ユニット24と第2イオン除去ユニット26とで異なる種類の陰イオンを除去することも可能であるし、同様に異なる種類の陽イオンを除去することも可能である。
さらに、本実施形態では、燃料電池10のアノード電極14側から排出される流体を受ける構成のイオン除去装置20について説明したが、そのイオン除去装置20でカソード電極16側から排出される流体を受けるようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態1に係るイオン除去装置の縦断面図(A図)及びA図のB部拡大図(B図)である。
【図2】イオン除去装置で使用されるイオン除去ユニットの平面図(A図)及び縦断面図(B図)である。
【図3】燃料電池システムの模式図である。
【図4】従来のイオン除去装置の模式図である。
【符号の説明】
【0032】
22 ハウジング
E 入口
H 排気口
D 排液口
24 第1イオン除去ユニット
26 第2イオン除去ユニット
27 管体
241 第1容器
243 入口開口
245 出口開口
244 メッシュフィルタ(網状シート)
247 区画用メッシュフィルタ(網状シート)
262 第2容器
265 入口開口
263 出口開口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流入する入口、前記流体の液体成分が排出される排液口、及び前記流体の気体成分が排出される排気口を備えるハウジングと、
前記ハウジングの入口から流入した流体のみが通過できるように、そのハウジング内に収納されており、前記流体中の所定のイオンを除去する第1のイオン除去ユニットと、
前記第1のイオン除去ユニットを通過した流体のみが通過できるように、前記ハウジング内に収納されており、前記流体中の別種類のイオンを除去する第2のイオン除去ユニットとを有しており、
前記第2のイオン除去ユニットを通過した流体の液体成分が前記排液口から排出され、前記第2のイオン除去ユニットを通過した流体の気体成分が前記排気口から排出される構成であることを特徴とするイオン除去装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたイオン除去装置であって、
イオン除去ユニットは、
流体用の入口開口と出口開口とを備える容器と、
前記容器内に充填された粒状のイオン交換樹脂と、
を有していることを特徴とするイオン除去装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたイオン除去装置であって、
容器の入口開口及び出口開口は、イオン交換樹脂の寸法よりも大きな寸法で形成されており、前記イオン交換樹脂の寸法よりも目が細かい網状シートにより覆われていることを特徴とするイオン除去装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3に記載されたイオン除去装置であって、
第1のイオン除去ユニットの容器である第1容器は、中央に貫通孔を備える環状に形成されており、
第2のイオン除去ユニットの容器である第2容器は、同じく中央に貫通孔を備える環状に形成された容器本体と、その容器本体の一端から前記貫通孔と同軸の状態で軸方向に突出する管体とを有しており、
第1容器の貫通孔に第2容器の管体が下方から通されることで、前記第1容器と第2容器とが上下同軸に配置されて、前記第1容器の下端部の出口開口と前記第2容器の上端部の入口開口とが接続される構成であることを特徴とするイオン除去装置。
【請求項5】
請求項4に記載されたイオン除去装置であって、
第1容器及び第2容器の内部空間は、網状シートによって周方向に仕切られていることを特徴とするイオン除去装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−346581(P2006−346581A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176289(P2005−176289)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】