説明

イコライザ装置

【課題】イコライジング処理を行う前段階においてデジタル音声信号の減衰する際の減衰率を小さくすることで、S/N比の低下を抑えることが可能なイコライザ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係るイコライザ装置50は、増幅設定のイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を増幅するよりも先に、減衰設定のイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号の減衰を行うよう周波数帯域ごとのイコライジングの順が設定される。そのため、アッテネート処理部20の減衰率がイコライザ部30a〜30xのオーバーオール特性に応じた減衰率であればサチュレーションが発生することはない。よって、アッテネート処理部20の減衰率を小さくすることができ、これにより、S/N比の低下を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、S/N比の低下を抑えることが可能なイコライザ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、特定の周波数帯域の音声信号を増幅もしくは減衰させて、ユーザの好みに応じた音質や視聴環境に合った音質にして出力するイコライザ装置を備えた音響・映像機器が多く商品化されている。そして、音響・映像機器のデジタル信号化に伴い、イコライザ装置によるイコライジング処理もデジタル音声信号の段階で行われることが一般的となった。ただし、デジタル音声信号はフルビット、即ち最大音量を超えて増幅を行うことができず、この場合、サチュレーションが発生して波形がクリップし波形歪みが生じることとなる。サチュレーションを防止する一般的な手法としては、イコライジング処理を行う前段階でデジタル音声信号をイコライジング処理によって増幅する分だけ予め全体的に減衰させておくことが挙げられる。しかしながら、イコライジング処理を行う前段階のデジタル音声信号に対する減衰率が大きくなるにつれS/N比が低下するため、デジタル音声信号を必要以上に減衰することは好ましいことではない。
【0003】
ここで、下記[特許文献1]には、デジタル信号段階における音量制御とアナログ信号段階における音量制御とを出力音量のレベルに応じて切換え、S/N比の低下を抑制する音量制御装置に関する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−174574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[特許文献1]で開示された発明により出力音量レベルの増減に伴うS/N比の低下は抑制することができる。しかしながら、イコライジング処理におけるS/N比の低下に関しては依然として解決に至っておらず、この点で更なる改善が望まれる。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、イコライジング処理を行う前段階においてデジタル音声信号を減衰する際の減衰率を小さくすることができ、その結果、S/N比の低下を抑えることができるイコライザ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)入力された第1のデジタル音声信号を減衰して出力するアッテネート処理部と、
前記アッテネート処理部により出力された第2のデジタル音声信号の所定の周波数帯域を増幅ゲインにより増幅するか、又は、前記第2のデジタル音声信号の所定の周波数帯域を減衰ゲインにより減衰するよう設定されるイコライザ部を複数備えて構成され、前記第2のデジタル音声信号を複数の前記イコライザ部によって所定の周波数帯域ごとに順次増幅又は減衰することによってイコライジングするイコライザ処理部と、
複数の前記イコライザ部のうち、少なくとも一つのイコライザ部のゲインを変更する際に、ゲインの変更後に増幅ゲインに設定されるイコライザ部が前記第2のデジタル音声信号を増幅するよりも先に、ゲインの変更後に減衰ゲインに設定されるイコライザ部が前記第2のデジタル音声信号を減衰するように前記イコライザ処理部による前記周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更するイコライザ制御部と、
前記イコライザ制御部が少なくとも一つのイコライザ部のゲインを変更する際に、前記イコライザ処理部の入出力の周波数特性の最大増幅率に応じた減衰率になるよう前記アッテネート処理部の設定を変更するレベル制御部と
を有することを特徴とするイコライザ装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
(2)前記イコライザ処理部がイコライジングしたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するデジタル/アナログ変換部と、
前記デジタル/アナログ変換部が変換したアナログ音声信号を増幅するアナログ信号増幅部と
を有し、
前記レベル制御部は、前記イコライザ制御部が少なくとも一つの前記イコライザ部のゲインを変更する際に、前記最大増幅率に応じた増幅率になるよう前記アナログ信号増幅部の設定を変更することを特徴とする上記(1)記載のイコライザ装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
(3)前記レベル制御部は、前記イコライザ制御部が前記イコライザ処理部による前記周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更するのと略同時に、前記アッテネート処理部及び前記アナログ信号増幅部の設定を変更することを特徴とする上記(2)記載のイコライザ装置50を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るイコライザ装置は、イコライジング処理を行う前段階においてデジタル音声信号を減衰する際の減衰率を小さくすることができる。これにより、S/N比の低下を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係るイコライザ装置を示すブロック図である。
【図2】信号入力順序の並び替えを説明する図である。
【図3】本発明に係るイコライザ装置の設定変更画面の一例を示す図である。
【図4】本発明に係るイコライザ装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明に係るイコライザ装置の動作を示す第2のフローチャートである。
【図6】本発明の設定変更処理における変更パターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るイコライザ装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。尚、以下の説明において、増幅率と減衰率とを総称する場合にはゲインと称することとする。図1に示す本実施の形態に係るイコライザ装置50は、入力端10に入力されたデジタル音声信号をイコライジング処理を行う前段階で減衰するアッテネート処理部20を有している。また、図1に示す本実施の形態に係るイコライザ装置50は、さらに、所定の周波数帯域のデジタル音声信号を設定されたゲインに応じて順次増幅又は減衰する複数のイコライザ部30a〜30xを備え、このイコライザ部30a〜30xによってアッテネート処理部20で減衰したデジタル音声信号をイコライジングするイコライザ処理部32と、イコライザ処理部32でイコライジングしたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するデジタル/アナログ変換部22と、変換したアナログ音声信号を増幅して出力端12に出力するアナログ信号増幅部24と、イコライザ部30a〜30xのそれぞれに対するゲイン設定を入力する操作部26と、イコライザ処理部32を制御するイコライザ制御部34と、イコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率に応じてアッテネート処理部20の減衰率とアナログ信号増幅部24の基準増幅率とを設定するレベル制御部36と、を有している。なお、最大増幅率とは周波数特性におけるゲインが最大となる周波数における増幅率である。
【0011】
次に、本発明に係るイコライザ装置50の特徴であるイコライザ部30a〜30xに対する信号入力順序(イコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を増幅又は減衰する順序)の並び替えに関して説明する。尚、ここではイコライザ処理部32が、低周波側の周波数帯域を増幅又は減衰するイコライザ部30aと、高周波側の周波数帯域を増幅又は減衰するイコライザ部30bとで構成される例を用いて説明する。尚、ここでの高周波側の周波数帯域とは、低周波側の周波数帯域を増幅又は減衰するイコライザ部30aが増幅又は減衰する低周波側の周波数帯域の中心周波数よりも高い周波数を中心周波数とする周波数帯域とする。
【0012】
先ず、低周波側のイコライザ部30aのゲインと高周波側のイコライザ部30aのゲインとをともに+10dB(10dBの増幅)とした場合を例に、イコライザ部30aとイコライザ部30bとがともに、入力されたデジタル音声信号を増幅する際のイコライザ装置50の動作について説明する。
【0013】
このときのイコライザ部30aの周波数特性は例えば図2(a)に示す周波数特性A1となり、イコライザ部30bの周波数特性は例えば図2(a)に示す周波数特性B1となる。そして、イコライザ処理部32の全体周波数特性であるオーバーオール特性は、図2(a)に示すように、周波数特性A2と周波数特性B2とが合わさったオーバーオール特性C1のようになる。なお、このように、イコライザ処理部32に入力する前のデジタル音声信号を入力とし、イコライザ処理部32が有する複数のイコライザ部がデジタル音声信号を増幅又は減衰した後のイコライザ処理部32が出力するデジタル音声信号を出力としたときの入出力の周波数特性をオーバーオール特性と称することとする。
【0014】
このオーバーオール特性C1は、イコライザ部30aによる周波数特性A1とイコライザ部30bによる周波数特性B1とが合わさったものであり、その最大増幅率は13.85dBである。そして、このときのイコライザ処理部32全体としての最大増幅率はオーバーオール特性C1の最大増幅率と等しい13.85dBとなる。この場合、アッテネート処理部20において13.85dB以上の減衰を行い十分なヘッドルームを確保しないと、イコライザ処理部32にフルビットのデジタル音声信号が入力したときにサチュレーションが発生し波形に歪みが生じる。従って、図2(a)の例の場合、アッテネート処理部20はイコライザ処理部32の最大増幅率、即ちオーバーオール特性C1の最大増幅率である13.85dBに応じた減衰率でデジタル音声信号に対する減衰を行う。
【0015】
次に、イコライザ部30aのゲインを−10dB(10dBの減衰)とし、イコライザ部30bのゲインを+10dB(10dBの増幅)とした場合を例に、イコライザ部30aが入力されたデジタル音声信号を増幅させ、イコライザ部30bが入力されたデジタル音声信号を減衰させる際のイコライザ装置50の動作について説明する。尚、初期設定における増幅又は減衰を行う順序をイコライザ部30a→イコライザ部30bとする。
【0016】
このときのイコライザ部30aの周波数特性は図2(b)に示す周波数特性A2となり、イコライザ部30bの周波数特性は周波数特性B2となる。そして、イコライザ処理部32のオーバーオール特性は、周波数特性A2と周波数特性B2とが合わさったオーバーオール特性C2となる。尚、このときのオーバーオール特性C2の最大増幅率は8.65dBであり、イコライザ部30bの増幅率(+10dB)よりも小さい。前述したように、初期設定におけるイコライザ部30aとイコライザ部30bの増幅又は減衰を行う順序はイコライザ部30a→イコライザ部30bの順であるから、イコライザ処理部32に入力したデジタル音声信号は先ずイコライザ部30aで10dB減衰され、次にイコライザ部30bで10dBの増幅がされる。つまり、増幅設定のイコライザ部30bに入力するデジタル音声信号は、その前段においてアッテネート処理部20とイコライザ部30aとで減衰されることとなる。従って、イコライザ処理部32全体としての最大増幅率は、イコライザ部30bの増幅率(+10dB)ではなくオーバーオール特性C2の最大増幅率と等しい8.65dBとなる。よって、アッテネート処理部20はオーバーオール特性C2の最大増幅率である8.65dBに応じた減衰率で減衰を行えば、イコライザ処理部32に対する十分なヘッドルームを確保することができる。つまり、イコライザ部30bがデジタル音声信号を増幅するよりも先に、イコライザ部30aがデジタル音声信号を減衰するため、オーバーオール特性C2の最大増幅率である8.65dBに応じた減衰率で減衰を行えば、サチュレーションの発生を防ぐことができる。
【0017】
次に、イコライザ部30aのゲインを+10dB(10dBの増幅)とし、イコライザ部30bのゲインを−10dB(10dBの減衰)とした場合を例に、イコライザ部30aが入力したデジタル音声信号を増幅させ、イコライザ部30bが入力したデジタル音声信号を減衰させる際のイコライザ装置50の動作について説明する。このときのイコライザ部30aの周波数特性は図2(c)に示す周波数特性A3となり、イコライザ部30bの周波数特性は周波数特性B3となる。そして、イコライザ処理部32のオーバーオール特性は周波数特性A3と周波数特性B3とが合わさったオーバーオール特性C3となる。尚、このときのオーバーオール特性C3の最大増幅率は8.65dBである。ここで、初期設定の増幅又は減衰を行う順序であるイコライザ部30a→イコライザ部30bの順序でデジタル音声信号の増幅と減衰を行った場合、イコライザ処理部32に入力したデジタル音声信号は先ずイコライザ部30aで10dB増幅される。従って、オーバーオール特性C3の最大増幅率が8.65dBであってもイコライザ処理部32の処理の途中で10dB増幅されることとなる。よってこの場合、アッテネート処理部20の減衰率はイコライザ処理部32における処理の途中の最大増幅率、即ちイコライザ部30aの増幅率である10dBに応じて設定する必要がある。つまり、アッテネート処理部20は、イコライザ部30aの周波数特性A3の最大増幅率である10dBに応じた減衰率で減衰を行う必要がある。
【0018】
しかしながら、デジタル音声信号を、ゲインが減衰設定のイコライザ部30bから先に入力するようにすれば、増幅設定のイコライザ部30aによってデジタル音声信号を増幅するよりも先にアッテネート処理部20とイコライザ部30bとで減衰することができる。つまり、デジタル音声信号を、ゲインが減衰設定のイコライザ部30bから先に入力するようにすれば、アッテネート処理部20はオーバーオール特性C3の最大増幅率である8.65dBに応じた減衰率で減衰を行うことで、イコライザ処理部32の処理に対する十分なヘッドルームを確保することができ、サチュレーションの発生を防ぐことができる。つまり、信号入力順序の並び替えを行わない場合にはアッテネート処理部20の減衰率は10dB分必要であったのに対し、信号入力順序の並び替えを行えばアッテネート処理部20の減衰率を8.65dBに低減することができる。そして、その低減分、S/N比の低下を抑制することができる。以上が、信号入力順序の並び替えによるS/N比低下の抑制原理である。
【0019】
次に、図4を用いてイコライザ装置50の動作を各部の設定変更処理を中心にさらに詳しく説明する。尚、ここでは便宜的に、アッテネート処理部20はイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率で増幅される分だけ、事前にデジタル音声信号を減衰する減衰率になるよう設定され、アナログ信号増幅部24はイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率と等しい増幅率に設定されるものとして説明を行う。つまり、イコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率が8.65dBであれば、アッテネート処理部20の減衰率も8.65dB(−8.65dB)となり、アナログ信号増幅部24の基準増幅率も8.65dB(+8.65dB)となる。ただし、イコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率に所定の係数を乗算したゲインを、アッテネート処理部20の減衰率及びアナログ信号増幅部24の基準増幅率にしてもよい。
【0020】
先ず、イコライザ装置50が起動した状態で、ユーザが操作部26を操作してイコライザ部30a〜30xに対するゲインの変更を指示する操作入力を行う(ステップS102)。この操作入力は、増幅又は減衰する周波数帯域がそれぞれ設定されているイコライザ部30a〜30xのゲインの変更を指示する操作入力であり、イコライザ部30a〜30xに設定されている周波数帯域ごとにゲインを指定する操作入力である。
【0021】
操作部26の例としては、イコライザの設定変更画が表示されたタッチパネルやイコライザ部30a〜30xと対応するボリュームやスイッチ等が挙げられる。この操作部26の一例として、図3にイコライザの設定変更画が表示されたタッチパネルを示す。尚、図3はイコライザ処理部32を5つのイコライザ部30a〜30eで構成した例である。なお、ユーザの操作入力によらず自動的にイコライザ設定変更処理をスタートする構成としてもよい。例えば、本実施形態のイコライザ装置を用いる音響装置周囲の視聴空間の音響特性を検出し、その音響特性に応じたゲインを算出するゲイン算出部を設け、イコライザ制御部32は、そのゲイン算出部が算出したゲインとなるようイコライザ部30a〜30xのゲインを変更するようにしても良い。
【0022】
一例として、ステップS102にて、ユーザが操作部26を操作してイコライザ部30a〜30xのゲインを、例えば図3に示すように変更する操作入力を入力したとする。つまり、イコライザ部30a〜30eのゲインを図3におけるハッチングで示すゲインと対応するゲインになるよう指示する操作入力を入力したとする。これは、イコライザ部30aのゲインを−5dB、イコライザ部30bのゲインを+10dB、イコライザ部30cのゲインを0dB、イコライザ部30dのゲインを−10dB、イコライザ部30eのゲインを+5dBと変更するよう指示する操作入力である。また、一例として操作入力が行われた時点でのゲイン変更前の各イコライザ部30a〜30eのゲインは0dBであるとする。以上がユーザによるイコライザ部30a〜30xへのゲイン変更を指示する操作の例である。
【0023】
イコライザ部30a〜30xのゲインの変更を指示する信号が入力することにより、イコライザ設定変更処理がスタートする。尚、ここではユーザが全てのイコライザ部30a〜30xに対する設定変更を行った後に次のステップに進む例を示すが、一つのイコライザ部30a〜30xに対してゲインの変更を指示する操作入力が入力される度に随時、一連のイコライザ設定変更処理を行うことが好ましい。
【0024】
イコライザ部30a〜30xに対するゲインの変更を指示する操作入力が入力されると、イコライザ制御部34は、操作入力に対応してゲインを変更した後のイコライザ部30a〜30xに設定されるゲインそれぞれを比較する(ステップS103)。
【0025】
次に、イコライザ制御部34はステップS103でのゲインの比較結果に応じて、後述の並び替え処理に則してイコライザ部30a〜30xに対する信号入力順序の並び替え処理を行う(ステップS104)。このように複数のイコライザ部の並び替え処理が発生した場合、複数のイコライザ部の並び替え処理はデジタル音声信号のサンプリング周波数に対応した時間内に行うことが好ましい。そのようにすればデジタル音声信号の連続性が保たれる。
【0026】
信号入力順序の並び替え処理としては、例えば以下の処理が考えられる。第1の並び替え処理は、イコライザ部30a〜30xのゲインを変更した後のゲインが小さい順に並び替える処理である。この第1の並び替え処理は最も単純であり、イコライザ部30a〜30xの個数が少ない場合に特に有効である。
【0027】
また、第2の並び替え処理は、設定変更が行われるイコライザ部30a〜30xの変更前後のゲインを確認して、減衰設定への変更であれば信号入力順序を最初に、増幅設定への変更であれば信号入力順序を最後にするように並び替える処理である。第2の並び替え処理によれば、特にイコライザ部30a〜30xの個数が多い場合に並び替え処理の所要時間を比較的短縮することができる。
【0028】
また、第3の並び替え処理は、設定変更が行われるイコライザ部30a〜30xのゲインを確認して、その設定変更が行われるイコライザ部30a〜30xの変更後のゲインが減衰設定であれば信号入力順序を最初に、変更後のゲインが増幅設定であれば信号入力順序を最後にする処理である。第3の並び替え処理によれば、変更前後のゲインの比較がないため、変更後のゲインに基づいて並び替え処理の判定が可能で、第2の並び替え処理よりも判定処理を簡素化することができる。
【0029】
また、第4の並び替え処理は、設定変更が行われるイコライザ部30a〜30xの変更前後のゲインを確認して、その設定変更が行われるイコライザ部30a〜30xの設定変更が減衰設定への変更であればそのイコライザ部30xの信号入力順序を、その時点で増幅設定のイコライザ部30a〜30xのうち、入力順序が最初のイコライザ部30a〜30xと入れ替え、増幅設定への変更であればイコライザ部30xの信号入力順序を、その時点で減衰設定のイコライザ部30a〜30xのうち、入力順序が最後のイコライザ部30a〜30xと入れ替える処理である。第4の並び替え処理によれば、ゲインを変更するイコライザ部30xを減衰設定と増幅設定の境界のイコライザ部30a〜30xと入れ替えるため、イコライザ部30a〜30xの並び替えを最小限に抑えることができる。
【0030】
上記の並び替え処理は、いずれも、ゲイン変更後に減衰設定となるイコライザ部がゲイン変更後に増幅設定となるイコライザ部よりも先に信号が入力されるよう信号入力順序を並び替えるものである。つまり、複数のイコライザ部30a〜30xに対するゲインを変更する際に、イコライザ制御部34は、ゲインの変更後にデジタル音声信号を増幅するイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を増幅するよりも先に、ゲインの変更後にデジタル音声信号を減衰するイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を減衰するような設定にイコライザ処理部32を設定するものである。言い換えると、イコライザ部30a〜30xそれぞれには増幅又は減衰する周波数帯域が設定されているため、イコライザ制御部34は、イコライザ処理部30a〜30xそれぞれに設定されている周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更する。
【0031】
また、上記の並び替え処理は、イコライザ部30a〜30xの個数、イコライザ制御部34の能力、及びイコライザ装置50や搭載された電気機器の回路構成等により適宜最適なものが採用される。また、イコライザ部30a〜30xが全て減衰設定もしくは増幅設定の場合(全てのイコライザ部30a〜30xのゲインが0dBである場合を含む)には並び替え処理を行う必要は無いため、このようなときには並び替え処理をスキップする処理を加えても良い。尚、ここではイコライザ制御部34が上述した第1の並び替え処理を行うものとする。よって、図3の例の場合、イコライザ制御部34は、信号入力順序を、イコライザ部30d(ゲイン−10dB)→イコライザ部30a(ゲイン−5dB)→イコライザ部30c(ゲイン0dB)→イコライザ部30e(ゲイン+5dB)→イコライザ部30b(ゲイン+10dB) の順序へと変更することとなる。尚、ステップS104の時点では信号入力順序の並び替えが行われるのみで、イコライザ部30a〜30xのゲイン変更は後述のステップS136にて行われる。
【0032】
次に、イコライザ制御部34は信号の入力順序及びゲインを変更後のイコライザ部30a〜30xの全体のオーバーオール特性、即ち信号の入力順序及びゲインを変更後のイコライザ処理部32のオーバーオール特性を算出し、その最大増幅率を示す信号をレベル制御部36に出力する(ステップS106)。ただし、現時点ではイコライザ部30a〜30xのゲイン変更は実際には行われていないから、イコライザ制御部34はオーバーオール特性を演算により算出する。オーバーオール特性の算出には、正弦波の周波数を変化させるスイープ応答、あるいは、DFT、FFTによる周波数解析、あるいは、あらかじめ設定可能なイコライザ設定のパターンをテーブル化し、想定されるオーバーオール特性をメモリーしておいても良い。尚、ここでは、信号の入力順序及びゲインを変更後のイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率を8.65dBと仮定する。
【0033】
レベル制御部36は、イコライザ制御部34からオーバーオール特性の最大増幅率を示す信号が入力すると、そのオーバーオール特性の最大増幅率に応じた減衰率となるようアッテネート処理部20の減衰率の設定変更処理を行う(ステップS132)。つまり、レベル制御部36はイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率で増幅される分だけ、事前にデジタル音声信号を減衰する減衰率となるようアッテネート処理部20の減衰率の設定変更処理を行うこととなる。
【0034】
また、レベル制御部36はこのアッテネート処理部20の減衰率に相当する基準増幅率となるようアナログ信号増幅部24の基準増幅率の設定変更処理を行う(ステップS134)。つまり、レベル制御部36はイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率と等しい増幅率となるようアナログ信号増幅部24の基準増幅率の設定変更処理を行うこととなる。また、イコライザ制御部34はユーザの入力した値となるようイコライザ処理部32の各イコライザ部30a〜30xの設定変更処理(ゲインの変更処理)を行う(ステップS136)。
【0035】
尚、ここではオーバーオール特性の最大増幅率が8.65dBであるから、レベル制御部36は、アッテネート処理部20の減衰率を8.65dB(−8.65dB)へと変更し、アナログ信号増幅部24の基準増幅率を8.65dB(+8.65dB)へと変更する。また、イコライザ制御部34は、イコライザ部30aのゲインを−5dBへ、イコライザ部30bのゲインを+10dBへ、イコライザ部30cのゲインを0dBへ、イコライザ部30dのゲインを−10dBへ、イコライザ部30eのゲインを+5dBへと変更する。以上で各部の設定変更処理は終了する(ステップS200)。
【0036】
尚、アッテネート処理部20の減衰率、及びアナログ信号増幅部24の基準増幅率は、ICの性能、仕様による設定可能なステップのゲインに設定しても良い。例えば、今回のアッテネート処理部20の減衰率8.65dB(−8.65dB)及びアナログ信号増幅部24の基準増幅率8.65dB(+8.65dB)では、ICの設定可能なステップが1dBステップの場合、アッテネート処理部20の減衰率9dB(−9dB)及びアナログ信号増幅部24の基準増幅率9dB(+9dB)としても良い。なお、サチュレーションを防ぐために元のゲインよりも絶対値が大きくなるようにすることが好ましい。
【0037】
また、イコライザ装置50の動作には図5のフローチャートに示す以下の手順を設けても良い。
【0038】
尚、図5のフローチャートに示す手順では、後述するようにイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率とゲイン変更前最大増幅率とを比較する。なお、ゲイン変更前最大増幅率とは、ゲインは変更せずに信号入力順序のみを変更した場合において、各イコライザ部30a〜30xが順次デジタル音声信号を増幅又は減衰したときの、そのイコライザ部30a〜30xによる増幅又は減衰処理の各段階における周波数特性の最大増幅率のうち最も大きい増幅率であるとする。
【0039】
例えばイコライザ処理部32が3つのイコライザ部30a〜30cで構成され、イコライザ部30a〜30cの信号入力順序がイコライザ部30c→イコライザ部30a→イコライザ部30bとする場合、イコライザ部30cのみがデジタル音声信号を増幅又は減衰したときの周波数特性の最大増幅率と、イコライザ部30c及びイコライザ部30aがデジタル音声信号を増幅又は減衰したときの周波数特性の最大増幅率と、全てのイコライザ部30a〜30cがデジタル音声信号を増幅又は減衰したときの周波数特性の最大増幅率の中で最も増幅率の大きいものがゲイン変更前最大増幅率となる。つまり、イコライザ部30cのみの周波数特の最大増幅率と、イコライザ部30cの周波数特性とイコライザ部30aの周波数特性とを合わせた周波数特性の最大増幅率と、全てのイコライザ部30a〜30cの周波数特性を合わせた周波数特性の最大増幅率とのうち、最も増幅率の大きいものがゲイン変更前最大増幅率となる。
【0040】
尚、ゲイン変更前最大増幅率は、イコライザ部30a〜30xのうち、増幅設定のイコライザ部30a〜30xの周波数特性を全て合わせた周波数特性を算出し、その周波数特性の最大増幅率をゲイン変更前最大増幅率としても良い。また、ゲイン変更前最大増幅率はあらかじめ設定可能なイコライザ設定のパターンをテーブル化するとともに、想定されるゲイン変更前最大増幅率をメモリーしておき、信号入力順序及びイコライザ部30a〜30xの各ゲインに応じて選択し取得するようにしても良い。
【0041】
次に、図5のフローチャートに示すイコライザ装置50の動作を説明する。先ず、図4と同様な、ユーザによるゲインの変更を指示する入力操作(ステップS102)、イコライザ制御部34によるゲインの比較処理(ステップS103)の後、イコライザ制御部34は、前述したゲイン変更前最大増幅率を算出し、そのゲイン変更前最大増幅率と、信号入力順序及びゲインの変更前、即ち、現在におけるイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率とを比較する(ステップS302)。そして、ゲイン変更前最大増幅率よりも現在におけるオーバーオール特性の最大増幅率の方が大きい場合、図4と同様なステップS104以降のフローに従ってイコライザ設定変更処理を行う。また、ゲイン変更前最大増幅率の方が現在におけるオーバーオール特性の最大増幅率よりも大きい場合、イコライザ制御部34はゲイン変更前最大増幅率を示す信号をレベル制御部36に出力する(ステップS306)。
【0042】
レベル制御部36はイコライザ制御部34からゲイン変更前最大増幅率を示す信号が入力すると、このゲイン変更前最大増幅率に応じた減衰率となるようアッテネート処理部20の減衰率の設定変更処理を行う(ステップS332)。また、レベル制御部36はこのアッテネート処理部20の減衰率に相当する基準増幅率となるようアナログ信号増幅部24の基準増幅率の設定変更処理を行う(ステップS334)。次に、ステップS104に移行し、図4と同様なフローに従ってイコライザ設定変更処理を行う。
【0043】
イコライザ部30a〜30xは信号入力順序の並び替えを行った後にゲインの変更を行う場合、信号入力順序の並び替え処理からゲインの変更処理までの間、増幅設定のイコライザ部30a〜30xの信号入力順序が減衰設定のイコライザ部30a〜30xよりも先になる場合がある。このような場合、ゲインの変更処理に有する時間が長いと、ヘッドルームが不足してサチュレーションが発生する可能性がある。
【0044】
しかしながら、図5に示す手順ではイコライザ部30a〜30xに対するゲインが入力されると、現在におけるイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率とゲイン変更前最大増幅率、即ち信号入力順序変更後でゲイン変更前の最大増幅率とを比較し、ゲイン変更前最大増幅率の方が大きい場合、このゲイン変更前最大増幅率に基づいてアッテネート処理部20の減衰率をサチュレーションが発生しない設定に速やかに変更する。従って、ゲイン変更が完了するまでの間に、たとえ増幅設定のイコライザ部の信号入力順序が減衰設定のイコライザ部30a〜30xよりも先になったとしても、サチュレーションが発生することは無い。以上が各部の設定変更をする際のイコライザ装置50の動作例である。
【0045】
次に入力されたデジタル音声信号に対する処理を中心にイコライザ装置50の動作を説明する。
【0046】
図4又は図5に示すような動作を行っている間も、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、ハードディスク、チューナ等の音源からデジタル音声信号が出力され、入力端10を介してイコライザ装置50のアッテネート処理部20に入力している。
【0047】
アッテネート処理部20は入力したデジタル音声信号(第1のデジタル音声信号)をレベル制御部36が設定した減衰率で減衰しイコライザ処理部32に出力する。尚、例えば、イコライザ部30a〜30eが図3に示す設定とされイコライザ設定変更処理が終了した際には、アッテネート処理部20の減衰率は8.65dBとなる。
【0048】
また、イコライザ処理部32はアッテネート処理部20が減衰したデジタル音声信号(第2のデジタル音声信号)を、イコライザ部30a〜30xでイコライジングしてデジタル/アナログ変換部22に出力する。このときのイコライザ部30a〜30xへの信号入力順序は、イコライザ制御部34の並び替え処理により減衰設定のイコライザ部30a〜30xが先となる。つまり、イコライザ部30a〜30xにはそれぞれ増幅又は減衰する周波数帯域が設定されており、イコライザ処理部32は、アッテネート処理部20が減衰したデジタル音声信号を複数のイコライザ部30a〜30xによって所定の周波数帯域ごとに順次増幅又は減衰することによってイコライジングする。
【0049】
デジタル/アナログ変換部22はイコライザ処理部32がイコライジングしたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換してアナログ信号増幅部24に出力する。
【0050】
アナログ信号増幅部24は変換されたアナログ音声信号をレベル制御部36が設定した基準増幅率で増幅し出力端12に出力する。尚、イコライザ部30a〜30eが図3に示す設定とされイコライザ設定変更処理が終了した際には、アナログ信号増幅部24の基準増幅率は8.65dBとなる。
【0051】
そして、出力端12から出力したアナログ音声信号は、例えばアンプ等で増幅された後、スピーカ等の音声出力手段に入力し音声出力として再生される。尚、ユーザが音量ボリューム等を操作するなどした場合、アナログ信号増幅部24の増幅率が基準増幅率から増減しそれに伴って音声出力の音量が増減する。以上が、入力されたデジタル音声信号に対してイコライザ装置50が行う処理である。
【0052】
なお、上記のアッテネート処理部20の設定変更処理(ステップS132)、アナログ信号増幅部24の設定変更処理(ステップS134)は略同時に行うことが好ましい。このようにすれば、総音量は変化しないままイコライジングの設定変更のみが音声出力に反映されることとなる。
【0053】
しかしながら、一般的にアッテネート処理部20はDSP(Digital Signal Processor)内に設けられ、アナログ信号増幅部24はDSPとは別の回路もしくは制御素子に設けられる場合が多い。このためアッテネート処理部20の設定変更処理(ステップS132)とアナログ信号増幅部24の設定変更処理(ステップS134)とを全く同時に行わせるのは困難な場合がある。
【0054】
次に、そのような、アッテネート処理部20の設定変更処理(ステップS132)とアナログ信号増幅部24の設定変更処理(ステップS134)とを全く同時に行わせるのが困難な場合に有効な、各部のゲインの変化のさせ方の一例について図6を用いて説明する。なお図6においてプラス側の特性がアナログ信号増幅部24の増幅率を示し、マイナス側の特性がアッテネート処理部20の減衰率を示している。
【0055】
例えば、図6(a)に示すように、時刻tにおいて、レベル制御部36が、アッテネート処理部20の減衰率を−3dBから−10dBへ変更する設定変更処理(ステップS132)と、アナログ信号増幅部24の基準増幅率を+3dBから+10dBへ変更する設定変更処理(ステップS134)とを略同時に行おうとした場合に、この二つの設定変更処理が行われる時刻に時間差が発生する場合がある。例えば、アッテネート処理部20の設定変更処理を時刻tに行おうとしても、アナログ信号増幅部24の設定変更処理は時刻tよりも遅い時刻t’に行われる場合がある。この時刻tから時刻t’までの時間ではアッテネート処理部20の減衰率とアナログ信号増幅部24の基準増幅率とが著しくアンバランスな状態となり、設定によってはこの間の音量が過度に増減する可能性がある。この音量の過度の増減はユーザに違和感や不快感を生じさせるものであり好ましいものではない。
【0056】
よって、図6(b)に示すように、アッテネート処理部20の設定変更処理とイコライザ処理部32の設定変更処理とを、直線的に徐々に行うことでゲインの変化を時間経過とともに緩やかに変化させるパターンや、図6(c)に示すように、ゲインを指数的に変化させることで、最初はゲインの変化を時間経過とともに緩やかに変化させ、徐々にゲインの変化を時間経過とともに急激に変化させるパターンで、レベル制御部36がアッテネート処理部20及びアナログ信号増幅部24の設定変更処理を略同時に行えば、アッテネート処理部20の設定変更処理とアナログ信号増幅部24の設定変更処理とが完全に同時に行われなくとも、この時刻tから時刻t’までの時間におけるアッテネート処理部20の減衰率とアナログ信号増幅部24の基準増幅率との差を比較的小さく抑えることができる。よって、音量が過度に増減することはなく、ユーザが違和感や不快感を覚えることも無い。尚、このときのパターンの設定は、音声出力がユーザの聴感上違和感の無い範囲で略同時に行われるものであれば良い。また、これらのことは前述のステップS332及びステップS334における設定変更処理時にも適用可能である。
【0057】
また、図6(a)において、アッテネート処理部20及びアナログ信号増幅部24の設定変更をするためにレベル制御部36から、アッテネート処理部20及びアナログ信号増幅部24に入力する制御信号のうち、最初に出力する制御信号を時刻tから時刻t’までの時間だけ遅延して出力することで時刻t’においてアッテネート処理部20及びアナログ信号増幅部24を同時に設定できるような構成にしてもよい。
【0058】
また、イコライザ処理部32の設定変更処理(ステップS136)は段階的に変化させることが音声出力の連続性維持の面から好ましい。例えば イコライザ制御部34が、イコライザ処理部32のゲインを5dBから10dBに変化させる場合、5dBから10dBに一気に変化させるのではなく、1サンプリング時間ごとに5dB→6dB→7dB→8dB→9dB→10dBと段階的に変化させることにより、信号の急激な変化をさせないようにすることが好ましい。このように、アッテネート処理部20の設定変更処理とアナログ信号増幅部24の設定変更処理を前述したゲイン変化のパターンで行うことに加え、イコライザ処理部32の設定変更処理も段階的に変化させるパターンで行い、これら3つの設定変更処理をユーザの聴感上違和感の無い範囲で略同時に開始させ、略同時に完了させることが最も好ましい。
【0059】
以上のように本発明に係るイコライザ装置50は、イコライザ部30a〜30xのうちゲインが減衰設定のイコライザ部30a〜30xから信号入力がされるよう信号入力順序の並び替えを行う。従ってイコライザ処理部32のイコライジング途中での増幅率は、イコライザ部30a〜30xがいくつあっても、常に減衰設定のイコライザ部30a〜30xが先に減衰を行なうため、イコライジングの途中でもオーバーオール特性の最大増幅率を超えることはない。そのため、アッテネート処理部20はこのオーバーオール特性の最大増幅率に応じた減衰率でデジタル音声信号の減衰を行なうことでサチュレーションの発生を防ぐことができる。よって、アッテネート処理部20の減衰率を常に最小限とすることができ、これにより、S/N比の低下を最小限に抑えることができる。
【0060】
つまり、本発明に係るイコライザ装置50は、常に十分なヘッドルームを確保することが可能となり、たとえイコライザ処理部32にフルビットのデジタル音声信号が入力したとしてもサチュレーションが生じることは無い。
【0061】
さらに、アッテネート処理部20の設定変更処理、イコライザ処理部32の設定変更処理、アナログ信号増幅部24の設定変更処理を上述した所定のパターンで略同時に行わせることで、上記の3つの設定変更処理を略同時に開始させ、略同時に完了させることができる。これにより、音声出力の連続性を保つことが可能となりユーザに対し違和感の少ないイコライザ設定変更処理を行うことができる。
【0062】
以上のように、本発明に係るイコライザ制御部34は、デジタル音声信号を増幅するイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を増幅するよりも先に、デジタル音声信号を減衰するイコライザ部30a〜30xがデジタル音声信号を減衰するような設定にイコライザ処理部32を設定する。このため、アッテネート処理部20はイコライザ処理部32のオーバーオール特性の最大増幅率に応じた減衰率でデジタル音声信号を減衰すればよく、アッテネート処理部20がデジタル音声信号を減衰する際の減衰率を必要最小限まで小さくするできるため、サチュレーションの発生を防ぐとともにS/N比の低下を抑えることができる。
【0063】
尚、上記のイコライザ装置50は一例であるから、各部の構成、動作フロー、設定変更処理時のパターン等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更して実施することが可能である。また、本実施形態におけるゲインの変更を指示する方法は一例であり、これに限らない。本実施形態においては、ユーザがイコライザ部30a〜30xそれぞれのゲインを変更する例について説明したが、イコライザ部30a〜30xのゲインを個々に変更する必要はなく、複数のイコライザ部30a〜30xのゲイン設定のテーブルを記憶する記憶部を有し、ユーザが1のテーブルを指定する操作入力を行うことで、複数のイコライザ部30a〜30xのゲインを一度の操作で変更できる構成としてもよい。また、本実施形態のイコライザ装置を用いる音響装置周囲の視聴空間の音響特性に応じて自動的にイコライザ部30a〜30xのゲインを変更するゲイン変更部を設け、自動的にイコライザ部30a〜30xのゲインを変更するようにしても良い。また、レベル制御部36がアッテネート処理部20及びアナログ信号増幅部24のゲインを設定する構成を例としたが、レベル制御部36はアッテネート処理部20のゲインのみを設定し、アナログ信号増幅部24のゲインを設定する手段を他に設けるようにしてもよい。また、イコライザ部30a〜30xへの信号入力順序を変更した後、イコライザ部30a〜30xのゲインを変更する例について説明したが、ゲインを変更した後に、信号入力順序を変更するようにしてもよい。
【0064】
また、イコライザ部30a〜30xへの信号入力順序を並び替える例を説明したが、これに限らず、イコライザ制御部34は、ゲインが変更された後にデジタル音声信号を増幅するイコライザ部がデジタル音声信号を増幅するよりも先に、ゲインが変更された後にデジタル音声信号を減衰するイコライザ部がデジタル音声信号を減衰するような設定にイコライザ処理部を設定すればよい。例えば、イコライザ制御部34は、信号入力順序を並び替えずに、イコライザ部30a〜30xが増幅又は減衰する周波数帯域の中心周波数や周波数帯域の幅を変更してもよく、それらを組み合わせてもよい。つまり、イコライザ制御部34の動作は、イコライザ部30a〜30xへの信号入力順序を並び替えることに限定されず、イコライザ制御部34は、イコライザ処理部34による周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更すればよい。
【符号の説明】
【0065】
20 アッテネート処理部
22 デジタル/アナログ変換部
24 アナログ信号増幅部
30a〜30x イコライザ部
32 イコライザ処理部
34 イコライザ制御部
36 レベル制御部
50 イコライザ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1のデジタル音声信号を減衰して出力するアッテネート処理部と、
前記アッテネート処理部により出力された第2のデジタル音声信号の所定の周波数帯域を増幅ゲインにより増幅するか、又は、前記第2のデジタル音声信号の所定の周波数帯域を減衰ゲインにより減衰するよう設定されるイコライザ部を複数備えて構成され、前記第2のデジタル音声信号を複数の前記イコライザ部によって所定の周波数帯域ごとに順次増幅又は減衰することによってイコライジングするイコライザ処理部と、
複数の前記イコライザ部のうち、少なくとも一つのイコライザ部のゲインを変更する際に、ゲインの変更後に増幅ゲインに設定されるイコライザ部が前記第2のデジタル音声信号を増幅するよりも先に、ゲインの変更後に減衰ゲインに設定されるイコライザ部が前記第2のデジタル音声信号を減衰するように前記イコライザ処理部による前記周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更するイコライザ制御部と、
前記イコライザ制御部が少なくとも一つのイコライザ部のゲインを変更する際に、前記イコライザ処理部の入出力の周波数特性の最大増幅率に応じた減衰率になるよう前記アッテネート処理部の設定を変更するレベル制御部と
を有することを特徴とするイコライザ装置。
【請求項2】
前記イコライザ処理部がイコライジングしたデジタル音声信号をアナログ音声信号に変換するデジタル/アナログ変換部と、
前記デジタル/アナログ変換部が変換したアナログ音声信号を増幅するアナログ信号増幅部と
を有し、
前記レベル制御部は、前記イコライザ制御部が少なくとも一つの前記イコライザ部のゲインを変更する際に、前記最大増幅率に応じた増幅率になるよう前記アナログ信号増幅部の設定を変更することを特徴とする請求項1記載のイコライザ装置。
【請求項3】
前記レベル制御部は、前記イコライザ制御部が前記イコライザ処理部による前記周波数帯域ごとのイコライジングの順を変更するのと略同時に、前記アッテネート処理部及び前記アナログ信号増幅部の設定を変更することを特徴とする請求項2記載のイコライザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−205184(P2011−205184A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67789(P2010−67789)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】