説明

イソインドリン化合物

【課題】S1P1受容体アゴニスト作用を有し、免疫性疾患として有用な化合物を提供する。
【解決手段】本発明者らは、S1P1受容体アゴニスト作用を有する化合物について検討し、イソインドリン化合物がS1P1受容体アゴニスト作用を有することを確認し、本発明を完成した。本発明のイソインドリン化合物はS1P1受容体アゴニスト作用を有し、免疫性疾患、すなわち、(1)望ましくないリンパ球浸潤によって引き起こされる疾患(例えば臓器、骨髄もしくは組織の移植片拒絶または移植片対宿主病、自己免疫疾患、多発性硬化症など)、あるいは(2)細胞の異常増殖または集積によって引き起こされる疾患(例えば癌等)、の予防及び/又は治療剤として使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬組成物、殊に免疫性疾患治療用医薬組成物の有効成分として有用なイソインドリン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴシン1-リン酸は活性化した血小板から分泌される生理活性物質であるスフィンゴ脂質の代謝物である(非特許文献1)。スフィンゴシン1-リン酸の受容体はG蛋白結合型であり、内皮分化遺伝子であるEdgファミリーに属し、今までにS1P1(Edg1)、S1P2(Edg5)、S1P3(Edg3)、S1P4(Edg6)、S1P5(Edg8)の5つの受容体が発見されている。いずれの受容体も全身の細胞および組織に広範囲にわたり分布しているが、S1P1、S1P3およびS1P4はリンパ球および血管内皮細胞に、S1P2は血管平滑筋細胞に、S1P5は脳および脾臓に多く発現し、ヒトとげっ歯類ではそれらのアミノ酸配列が良く保存されている(非特許文献1)。スフィンゴシン1-リン酸の刺激により各種受容体はG蛋白へ結合する。S1P1はGi/0へ、S1P2およびS1P3は、Gi/0、Gq、G12/13、Gsへ、S1P4はGi/0、G12/13、Gsへ、S1P5はGi/0、G12/13へ結合し、MAPKの活性化による細胞増殖、Rac(および/またはRho)の活性化による細胞骨格系の変化と細胞浸潤、さらにはPLCの活性化と細胞内へのカルシウム流入によるサイトカインおよびメディエーター産生等が誘導される(非特許文献1)。スフィンゴシン1-リン酸のS1P1からの刺激作用により、リンパ球の遊走、アポトーシスの抑制、サイトカイン産生、胸腺およびその他の2次リンパ組織へのリンパ球の隔離を誘導し、血管内皮細胞においては血管形成を促進することが知られている(非特許文献2)。一方、S1P3は心筋細胞上にも発現が見られ、スフィンゴシン1-リン酸の刺激により一過性の心拍数の低下(徐脈)および血圧の低下が観察され(非特許文献3)、S1P3を遺伝的に欠損させたノックアウトマウスではスフィンゴシン1-リン酸刺激による徐脈は観察されない(非特許文献4)。現在臨床試験中のFTY720の活性本体であるFTY720リン酸エステルはS1P1、S1P3、S1P4およびS1P5への非選択的なアゴニスト作用を有し(非特許文献5)、中でも、S1P3を介する刺激作用によって誘導される徐脈は好ましくない副作用として高い頻度で発現することが臨床試験でも報告されている(非特許文献6)。よってスフィンゴシン1-リン酸受容体を介するリンパ球の隔離にはS1P1からの刺激は必須であるが(非特許文献7)、S1P3からの刺激は必ずしも必要なく、むしろ好ましくない副作用の誘発に関連すると考えられる。すなわち、副作用の少ない免疫抑制剤の開発にはS1P3に対する選択性の高いS1P1アゴニストの開発が望まれる。また、受容体選択性との因果関係は証明されていないが、FTY720は臨床試験にて黄斑浮腫、腎機能低下および肺機能低下の副作用も報告されており、これらの副作用を回避する薬剤が望まれている(非特許文献8)。
【0003】
S1P1アゴニスト作用を有する化合物として、いくつかの化合物が報告されている。例えば、下記式で示されるカルボン酸誘導体が知られている(特許文献1)。
【化2】


また、下記式で示されるインダン誘導体が知られている(特許文献2)。
【化3】


また、下記に示されるオキサジアゾール誘導体が知られている(特許文献3及び4)。
【化4】

【0004】
【非特許文献1】Annual Review Biochemistry, 2004, 73, pp.321-354
【非特許文献2】Nature Review Immunology, 2005, 5, pp.560-570
【非特許文献3】Japanese Journal of Pharmacology, 2000, 82, pp.338-342
【非特許文献4】Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics, 2004, 309, pp.758-768
【非特許文献5】Science, 2002, 296, pp.346-349
【非特許文献6】Journal of the American Society of Nephrology, 2002, 13, pp.1073-1083
【非特許文献7】Nature, 2004, 427, pp.355-360
【非特許文献8】Transplantation,2006,82,pp.1689-1697
【特許文献1】国際公開第WO 2005/058848号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO 2004/058149号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO 2004/103279号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO 2005/032465号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医薬組成物、特に免疫性疾患治療用医薬組成物の有効成分として有用な化合物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、S1P1アゴニストについて鋭意検討した結果、イソインドリン化合物が、S1P1アゴニストとして有用であり、例えば、いくつかの化合物はS1P3アゴニストへの選択性もすぐれていることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、式(I)の化合物又はその塩、並びに、式(I)の化合物又はその塩、及び賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【化5】

(式中、
Xは、NまたはO;
Yは、N、O、またはS、
ただし、XとYとは、同時にOであることはない;
Aは、それぞれ低級アルキルで置換されていてもよいシクロアルカンまたはシクロアルケン;
R1は、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、-O-低級アルキル、
-O-低級アルケニル、-O-アリール または、含窒素ヘテロシクロアルキ
ルであり、
ここで、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、-O-低級アルキル、
-O-低級アルケニル、-O-アリール または、含窒素ヘテロシクロアルキ
ルは、それぞれハロゲンで置換されていてもよく
さらに、シクロアルキルはオキソ(=O)で置換されていてもよく;
R2は、-H、-CN、ハロゲンまたはハロ低級アルキル;
nは、0または1である。)
なお、特に記載がない限り、本明細書中のある化学式中の記号が他の化学式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
【0007】
また、本発明は、式(I)の化合物又はその塩を含有する免疫性疾患治療用医薬組成物、即ち、式(I)の化合物又はその塩を含有する免疫性疾患治療剤に関する。
また、本発明は、免疫性疾患治療用医薬組成物の製造のための式(I)の化合物又はその塩の使用、並びに、式(I)の化合物又はその塩の有効量を患者に投与することからなる免疫性疾患治療方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
式(I)の化合物又はその塩は、S1P1受容体アゴニスト作用を有し、免疫性疾患、すなわち、(1)望ましくないリンパ球浸潤によって引き起こされる疾患(例えば臓器、骨髄もしくは組織の移植片拒絶または移植片対宿主病、自己免疫疾患、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、脳髄膜炎、重症筋無力症、膵炎、肝炎、腎炎、糸球体硬化症、糖尿病、肺障害、喘息、アトピー性皮膚炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血再潅流障害)、あるいは(2)細胞の異常増殖または集積によって引き起こされる疾患(例えば癌、白血病)等の予防及び/又は治療剤として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
本明細書において、「低級アルキル」とは、直鎖又は分枝状の炭素数が1から6(以後、C1-6と略す)のアルキル、例えばメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル等である。別の態様としては、C1-4アルキルであり、さらに別の態様としては、C1-2アルキルである。
【0011】
本明細書において、「低級アルケニル」とは、直鎖又は分枝状のC2-6のアルケニル、例えばビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、1-メチルビニル、1-メチル-2-プロペニル、1,3-ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル等である。別の態様としては、C2-4アルケニルである。
【0012】
本明細書において、「ハロゲン」は、F、Cl、Br、Iを意味する。
【0013】
本明細書において、「シクロアルカン」とは、C3-10の飽和炭化水素環であり、架橋を有していてもよい。例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、アダマンタン等である。別の態様としては、C3-10シクロアルカンであり、さらに別の態様としては、C5-6シクロアルカンである。
【0014】
本明細書において、「シクロアルケン」とは、C3-10の不飽和炭化水素環であり、架橋を有していてもよい。例えば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等である。別の態様としては、C3-8シクロアルケンであり、さらに別の態様としては、C5-6シクロアルケンである。
【0015】
本明細書において、「シクロアルキル」とは、C3-10の飽和炭化水素環基であり、架橋を有していてもよい。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル等である。別の態様としては、C3-8シクロアルキルであり、さらに別の態様としては、C5-6シクロアルキルである。
【0016】
本明細書において、「含窒素ヘテロシクロアルキル」とは、1個から複数個の窒素原子を有する飽和または不飽和ヘテロ環を意味する。該へテロ環はさらに、酸素原子、硫黄原子からなるヘテロ原子を1または2個含んでいてもよい。具体的には、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピリジル、ジヒドロピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル等が挙げられる。別の態様としては、ピロリルが好ましい。
【0017】
本明細書において、「アリール」とは、C6-10の単環から三環式芳香族炭化水素環基であり、例えばフェニル、ナフチルであり、別の態様としてはフェニルである。
【0018】
「ハロ低級アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換された、C1-6アルキルである。別の態様としては、1〜5個のハロゲンで置換されたC1-6アルキルであり、さらに別の態様としては、1〜2個のハロゲンで置換されたC1-3アルキルである。
【0019】
本明細書において、「置換されていてもよい」とは、無置換、若しくは置換基を1〜5個有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0020】
本発明のある態様を以下に示す。
(1)R1が、ハロゲンで置換されていてもよい低級アルキルである化合物、またはFで置換されていてもよい低級アルキルである化合物、
(2)R2がハロゲン又は、ハロ低級アルキルである化合物、
(3)Aがシクロヘキサンである化合物、
(4)X=NかつY=Sである化合物、
(5)上記(1)〜(4)のうち二以上の組み合わせである化合物。
【0021】
本発明に包含される具体的化合物の例として、以下の化合物が挙げられる。
(1)シス-4-(5-{5-[3-クロロ-4-(2,2-ジフルオロエトキシ)フェニル]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩、
(2)シス-4-(5-{5-[3-クロロ-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル}]-1,3,4-チアジアゾール-2-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩、
(3)シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩、
(4)シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩、
(5)シス-4-(5-{5-[4-(2,2-ジフルオロエトキシ)-3-(トリフルオロメチル) フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩、
(6)3-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ] フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)- ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩。
【0022】
式(I)の化合物には、置換基の種類によって、互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、式(I)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明は、それ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、式(I)の化合物には、不斉炭素原子を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、式(I)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0023】
さらに、本発明は、式(I)で示される化合物の製薬学的に許容されるプロドラッグも包含する。製薬学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシル基等に変換されうる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161(1985)や、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0024】
また、式(I)の化合物の塩とは、式(I)の化合物の製薬学的に許容される塩であり、置換基の種類によって、酸付加塩又は塩基との塩を形成する場合がある。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、マンデル酸、酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩、アセチルロイシン等の各種アミノ酸及びアミノ酸誘導体との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。
【0025】
さらに、本発明は、式(I)の化合物及びその塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0026】
また、本明細書において、以下の略号を用いることがある。
【0027】
brine:飽和食塩水
CDI:1,1’-カルボニルジイミダゾール、
Cs2CO3:炭酸セシウム、
DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、
DCC:ジシクロヘキシルカルボジイミド、
DCE:1,2-ジクロロエタン、
DCM:ジクロロメタン、
DEAD:ジエチルアゾジカルボキシレート、
DIBAL:水素化ジイソブチルアルミニウム、
DIBOC:ジ-tert-ブチル ジカーボネート、
DIPEA: N,N-ジイソプロピルエチルアミン、
DMA: ジメチルアセトアミド、
DMAP: N,N-4-(ジメチルアミノ)ピリジン、
DME:ジメトキシエタン、
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、
DMI:1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、
DMSO:ジメチルスルホキシド、
DPPA:ジフェニルリン酸アジド、
dppf:1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、
EDCI:1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド、
EDCI・HCl:1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、
EtOAc:酢酸エチル、
EtOH:エタノール、
HCl/ジオキサン:塩化水素/ジオキサン溶液、
HOBt:1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、
IPA:イソプロパノール、
iPrOH:2-プロパノール、
K2CO3:炭酸カリウム、
KCN:シアン化カリウム、
KOBut:カリウムt-ブトキシド、
KOH:水酸化カリウム、
LAH:水素化リチウムアルミニウム、
LiOH:水酸化リチウム、
MCPBA:m-クロロ過安息香酸、
MeCN:アセトニトリル、
MeOH:メタノール、
MgSO4:無水硫酸マグネシウム、
Na2CO3:炭酸ナトリウム、
NaCNシアン化ナトリウム、
NaH:水素化ナトリウム、
NaHCO3:炭酸水素ナトリウム、
NaOH:水酸化ナトリウム、
NH4Cl:塩化アンモニウム、
NMM:N-メチルモルホリン、
NMP:N-メチルピロリドン、
Pd(PPh3)4:テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム、
Pd2dba3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、
PEG:ポリエチレングリコール、
TEA:トリエチルアミン、
TFA:トリフルオロ酢酸、
THF:テトラヒドロフラン、
TMEDA:N,N,N'N'-テトラメチルエチレンジアミン、
Zn(CN)2:シアン化亜鉛、
Prot:保護基
【0028】
(製造法)
式(I)の化合物及びその塩は、その基本構造あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料から中間体へ至る段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような保護基としては、例えば、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらの反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行なった後、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
また、式(I)の化合物のプロドラッグは、上記保護基と同様、原料から中間体へ至る段階で特定の基を導入、あるいは得られた式(I)の化合物を用いてさらに反応を行なうことで製造できる。反応は通常のエステル化、アミド化、脱水等、当業者に公知の方法を適用することにより行うことができる。
以下、式(I)の化合物の代表的な製造法を説明する。各製法は、当該説明に付した参考文献を参照して行うこともできる。なお、本発明の製造法は以下に示した例には限定されない。
【0029】
(第一製法)
【化6】

【0030】
[式中、R11は、R1またはLvを示し、Lvは脱離基を示し、R0はカルボキシ基の保護基をそれぞれ示す。]
式(I)の化合物は、化合物(1a)を原料にして、化合物(1b)を経由して製造できる。
化合物(1b)は、対応するアルコール、フェノールやアミンを反応させて得ることができる。ここで、Lvの脱離基の例には、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ基等が含まれる。この反応では、化合物(1a)と、対応するアルコールやアミン化合物とを等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、塩基の存在下、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱還流下、好ましくは0℃〜80℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。溶媒としては、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、THF、DME等)、ハロゲン化炭化水素類(DCM、DCE、CHCl3等)、DMF、DMSO、EtOAc、MeCN及びこれらの混合物が挙げられる。塩基は、有機塩基(TEA、DIPEA、DBU、n-ブチルリチウム等)、無機塩基(Na2CO3、K2CO3、NaH、KOBut等)が含まれる。塩化テトラ-n-ブチルアンモニウム等の相間移動触媒の存在下で反応を行うことが有利な場合がある。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0031】
次に、式(I)の化合物は、化合物(1b)を脱保護することにより製造できる。当該脱保護は、加水分解、加水素分解または触媒的脱保護等により製造することができる。アルカリ加水分解の場合、無機塩基(例えばNaOH、KOH、NaHCO3、Cs2CO3等)を用いる事ができる。酸加水分解の場合、塩酸等を用いることができる。いずれも反応温度は氷冷下から還流条件下で、基質が分解しない条件で反応を行うことができる。溶媒としては、アルコール(MeOH、EtOH等)、DMFまたはDMSO等の有機溶媒や、水あるいはそれらの混合溶媒を用いることができる。加水素分解の場合、通常パラジウム触媒の存在下、水素雰囲気下で反応させることができる。DMF、MeOH等の溶媒中、室温から還流までの反応温度で製造できる。触媒的脱保護の場合、パラジウム等の触媒の存在下と塩基性条件下で製造できる。
ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」を参照して実施することができる。
【0032】
また、式(I)の化合物は、(1a)の化合物をstep1-2の方法で脱保護した後、step1-1の方法でイプソ置換することによっても得られる。
【0033】
(原料合成1):化合物(1a)の製法
【化7】

【0034】
原料化合物(1a)、(1a-1)または(1a-2)は、それぞれ、(i)、(ii)または(iii)のいずれかの方法で合成できる。
(i)において、化合物(1a)は、化合物(2a)を直接アルキル化反応に付すか(step3)、または、化合物(2a)から窒素原子が保護されたイソインドリン化合物(2b)を経て、保護基を除去後、還元的アミノ化する(step4-1からstep4-3)ことにより得られる。
(ii)は、N-ヒドロキシカルボキシイミダミド化合物(3a)から化合物(1a)を製造する方法である。
(iii)は、化合物(4a)からジアシルヒドラジン化合物(4b)を経て、化合物(1a)を製造する方法である。
【0035】
Step3および4-1は、通常のアルキル化の条件を使用することができる。
脱離基Lvの例には、ハロゲン、メタンスルホニルオキシ、p-トルエンスルホニルオキシ基等が含まれる。この反応では、化合物(2a)と対応するアミン化合物とを等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、好ましくは0℃から80℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、ジオキサン、THF、DME等)、ハロゲン化炭化水素類(DCM、DCE、クロロホルム等)、DMF、DMSO、EtOAc、MeCN及びこれらの混合溶媒が挙げられる。有機塩基(TEA、DIPEA若しくはNMM等)、又は無機塩基(K2CO3、Na2CO3若しくはKOH等)の存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
Step4-2は、脱保護であり、ウッツ(P. G. M. Wuts)及びグリーン(T. W. Greene)著、「Greene's Protective Groups in Organic Synthesis(第4版、2006年)」を参照して実施することができる。
【0036】
Step4-3は、化合物(2a)から還元的アミノ化により化合物(1a)を得る反応である。この反応では、化合物(2a)と対応するカルボニル化合物とを等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、還元剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、-45℃〜加熱還流下、好ましくは0℃〜室温において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定されないが、アルコール類(MeOH、EtOH等)、エーテル類、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。還元剤としては、シアン化水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム等が挙げられる。モレキュラーシーブス等の脱水剤、又は酢酸、塩酸、チタニウム(IV)イソプロポキシド錯体等の酸存在下で反応を行うことが好ましい場合がある。反応によっては、反応中間体であるイミンが生成し、単離できる場合がある。その場合には、このイミン中間体の還元反応により化合物(1a)を得ることができる。また、前記還元剤での処理の代わりに、MeOH、EtOH、EtOAc等の溶媒中、酢酸、塩酸等の酸の存在下又は非存在下で、還元触媒(例えば、パラジウム炭素、ラネーニッケル等)を用いて反応を行うこともできる。この場合、反応を常圧から50気圧の水素雰囲気下で、冷却下から加熱下で行うことが好ましい。
〔文献〕
A. R. Katritzky及びR. J. K. Taylor著、「Comprehensive Organic Functional Group Transformations II」、第2巻、Elsevier Pergamon、2005年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0037】
Step5は、化合物(3a)からオキサジアゾール環を形成させ、化合物(1a)を得る反応である。ヒドロキシアミジンのアシル化と、それに続く環化の2段階で構成される。
アシル化において、化合物(3b)は、遊離酸または反応性誘導体として反応に用いることもできる。反応性誘導体としては、酸ハライド(酸クロリド、酸ブロミド等)、通常のエステル(メチルエステル、ベンジルエステル等)、酸アジド;HOBt、p-ニトロフェノール、NCS等との活性エステル、アルキル炭酸ハライド等のハロカルボン酸アルキルエステル、ピバロイルハライド、p-トルエンスルホン酸クロリド等との混合酸無水物;塩化ジフェニルホスホリル、とNMMを反応させて得られるようなリン酸系混合酸無水物等の混合酸無水物;等を挙げることができる。
化合物(3b)を遊離酸で反応させる場合、あるいは活性エステルを単離せずに反応させる場合等は、DCC、CDI、DPPA、ジエチルホスホリルシアニド、EDCI・HCl等の縮合剤を使用するのが好適である。
溶媒としては、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類、EtOAc等のエステル類、MeCN、DMFやDMSO等の反応に不活性な有機溶媒、または、それらの混合溶媒中、冷却下、冷却から室温下、あるいは室温から加熱下に行うことができる。
NMM、TEA、DIPEA、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、DMAP、ピコリン、ルチジン等の塩基の存在下に反応させた場合に、反応が円滑に進行することがある。なお、ピリジンは溶媒を兼ねることもできる。
中間体であるアシル体を単離精製し、EtOH、ジオキサン、トルエン、水等の反応に不活性な有機溶媒中加熱することにより環化反応を行うこともできる。通常アシル化後、そのまま反応混合物を加熱もしくはマイクロウェーブ照射下反応させることによって、この2段階反応は1回の操作で行う。
溶媒の具体例としては、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、MeCN、DMF、DMA、DMI、NMP、DMSO等、水、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。反応温度は、原料化合物の種類、反応条件等により異なるが、室温から加熱下に行うことができる。
【0038】
Step6-1は、カルボン酸からジアシルヒドラジドへの反応である。化合物(4a)と対応する酸ヒドラジドとの反応により得ることができる。
この反応では、化合物(4a)と対応する酸ヒドラジドとを等量若しくは一方を過剰量用い、これらの混合物を、縮合剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは-20℃〜60℃において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。ここで用いられる溶媒の例としては、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、DMF、DMSO、EtOAc、MeCN又は水、及びこれらの混合溶媒が挙げられる。縮合剤の例としては、EDCI、DCC、CDI、DPPA、オキシ塩化リンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。添加剤(例えばHOBt)を用いることが反応に好ましい場合がある。塩基としては、有機塩基(TEA、DIPEA若しくはNMM等)、又は無機塩基(K2CO3、Na2CO3若しくはKOH等)の存在下で反応を行うことが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
また、化合物(4a)を反応性誘導体へ変換した後に酸ヒドラジンと反応させる方法も用いることができる。反応性誘導体の例としては、オキシ塩化リン、塩化チオニル等のハロゲン化剤と反応して得られる酸ハロゲン化物、クロロギ酸イソブチル等と反応して得られる混合酸無水物、HOBt等と縮合して得られる活性エステル等が挙げられる。これらの反応性誘導体と対応する酸ヒドラジドとの反応は、ハロゲン化炭化水素類、芳香族炭化水素類、エーテル類等の反応に不活性な溶媒中、冷却下〜加熱下、好ましくは、-20℃〜60℃で行うことができる。
〔文献〕
S. R. Sandler及びW. Karo著、「Organic Functional Group Preparations」、第2版、第1巻、Academic Press Inc.、1991年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」16巻(2005年)(丸善)
【0039】
Step6-2は、ジアシルヒドラジンからジアゾール環を構築する反応である。オキシ塩化リン、P2S5などの脱水剤の存在下、反応に不活性な溶媒中、又は無溶媒下、冷却下から加熱還流下、好ましくは80℃から還流条件下において、通常0.1時間〜5日間撹拌する。溶媒は、特に限定はされないが、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、DMI、EtOAc、MeCN及びこれらの混合溶媒が挙げられる。
【0040】
(原料合成2):化合物(2a)の製法
【化8】

【0041】
化合物(2a)は、化合物(5a)から、ジアゾール化合物(5c)および(5e)を経由し、還元することにより化合物(5f)を得て、化合物(5f)のOHを脱離基に置換することにより製造できる。
【0042】
Step7-1は、化合物(5a)に対し、遊離のヒドロキシルアミン、またはヒドロキシルアミン塩酸塩を塩基の存在下作用させることにより化合物(5b)を製造する反応である。反応に不活性な溶媒の存在下で反応させることができ、具体例としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、MeCN、DMF、DMI、DMSO等水、あるいはこれらの混合溶媒が挙げられる。通常、アルコール類が反応に用いられる。上述のように、本反応において、ヒドロキシルアミン塩酸塩を用いる場合には、塩基の存在下が好ましく、塩基の具体例としては、炭酸アルカリ(Na2CO3、K2CO3等)、炭酸水素アルカリ(NaHCO3、KHCO3等)、アルコキシド(ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、KOBut等)、 3級アミン(TEA、DIPEA等)、有機塩基(DBU、ピリジン、ルチジン等)を挙げることができる。反応温度は、原料化合物の種類、反応条件等により異なるが、通常室温から溶媒の還流温度で行うことができる。
【0043】
Step7-3は、加水分解反応であり、Step1-2に記載した条件のうち、酸またはアルカリをを用いることができる。
【0044】
Step7-2は、Step5の条件で行うことができる。Step7-4は、Step6-1とStep6-2の条件で行うことができる。
【0045】
Step8-1は、化合物(5c)または(5e)を還元して、化合物(5f)を得る反応である。
反応に不活性な溶媒中、冷却下から加熱下、好ましくは-20℃から80℃で、化合物(5c)または(5e)を等量若しくは過剰量の還元剤で、通常0.1時間〜3日間処理する。溶媒の例としては、特に限定されないが、エーテル類、アルコール類、芳香族炭化水素類、DMF、DMSO、EtOAc及びこれらの混合溶媒が挙げられる。還元剤としては、LAH等のヒドリド還元剤、ナトリウム、亜鉛、鉄等の金属還元剤、その他、下記文献中の還元剤が好適に用いられる。
〔文献〕
M. Hudlicky著、「Reductions in Organic Chemistry, 2nd ed (ACS Monograph :188)」、ACS、1996年
R. C. Larock著、「Comprehensive Organic Transformations」、第2版、VCH Publishers, Inc.、1999年
T. J. Donohoe著、「Oxidation and Reduction in Organic Synthesis (Oxford Chemistry Primers 6)」、Oxford Science Publications、2000年
日本化学会編「実験化学講座(第5版)」14巻(2005年)(丸善)
【0046】
Step8-2は、化合物(5f)の-OHを脱離基を有する化合物(2a)変換する反応である。溶媒の例としては、特に限定されないが、EtOAcなどの反応を妨げない溶媒中、リン系のハライドなどハロゲン化試薬を用いて、ハロゲンに変換することができる。また、有機塩基の存在下、メタンスルホニルハライドやトルエンスルホニルハライドなどを用いて、メタンスルホニルオキシや、トルエンスルホニルオキシへ変換することもできる。反応温度は、冷却下〜加熱下、好ましくは、-20℃〜60℃で行うことができる。
【0047】
(原料合成3):化合物(3a)および(4a)の製法
【化9】

【0048】
化合物(3a)および(4a)は、化合物(6a)と化合物(6b)を用いて化合物(6c)を製造し、さらに化合物(6d)を経由して製造できる。
【0049】
Step9-1は、アルキル化反応であり、Step3の条件で行うことができる。Step9-3とStep9-4はそれぞれStep7-1とStep7-3と同じ条件を用いることができる。
【0050】
Step9-2は、ハロゲン等の脱離基をニトリル基に変換する、いわゆるSandmeyer反応である。反応条件としては、CuCNとPd(PPh3)4との存在下、ZnCN2を反応させる方法、DMA中Na2CO3の存在下、TMEDAとPd触媒との存在下、Zn(CN)2を作用させる方法、Zn(CN)2の代わりにKCN、NaCN等を作用させる方法がある。通常、化合物(6c)と、Pd2dba3、dppfとZnCN2を反応させることにより、化合物(6d)を得ることができる。
【0051】
式(I)の化合物は、遊離化合物、その塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。式(I)の化合物の塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等、通常の化学操作を適用して行なわれる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより製造でき、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は、ラセミ体の一般的な光学分割法(例えば、光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導く分別結晶化や、キラルカラム等を用いたクロマトグラフィー等)により得られ、また、適当な光学活性な原料化合物から製造することもできる。
【0052】
式(I)の化合物の薬理活性は、以下の試験により確認した。
【0053】
試験例1:S1P1またはS1P3アゴニスト作用確認試験(ヒトS1P1またはS1P3発現細胞の膜を用いたGTP[γ-35S]結合アッセイによる受容体アゴニスト作用の評価)
本発明化合物のin vitro S1P1またはS1P3アゴニスト作用は、ヒトS1P1またはS1P3発現細胞の膜を用い、GTP[γ-35S]のG蛋白への機能的結合活性の上昇により評価した。ヒトS1P1およびS1P3をコードするcDNAはヒト大腸cDNAライブラリーおよびヒトゲノムDNAからそれぞれクローニングし、pcDNA3.1に導入し、S1P1-pcDNA3.1およびS1P3-pcDNA3.1を作製した。次にリポフェクトアミン2000(GIBCO)により、S1P1-pcDNA3.1またはS1P3-pcDNA3.1をCHO細胞にトランスフェクションし、10% 牛胎児血清、100 U/mLペニシリン、100 μg/mLストレプトマイシン、1 mg/mL G418二硫酸塩含有Ham's F-12培地にて培養し、G418に耐性な安定株を得た。培養したヒトS1P1またはS1P3発現細胞は1 mM EDTA・2Na含有PBSにて剥離し、0.1 mM EDTAおよびプロテンインインヒビター含有1 mM Tris HCl(pH7.4)緩衝液中で、ガラス製のホモジナイザーにて氷冷しながら破壊した。1,400×gで10分間遠心分離し、更に上清を4℃、60分間、100,000×gで遠心分離し、1 mM EDTA含有 10 mM Tris HCl(pH7.4)緩衝液に懸濁し膜を精製した。ヒトS1P1またはS1P3発現細胞から得られた膜(0.13 mg/mL)および50 pM GTP[γ-35S](NEN;非活性1250Ci/mmol)を本発明化合物(10-12〜10-5M)と共に100 mM NaCl、10 mM MgCl2、0.1% 脂肪酸非含有BSA、5μM GDPを含む20 mM HEPES(pH7.0)緩衝液中(全量150 μL)で1時間反応させて、セルハーベスター(パッカード、フィルターメート)にてGF-Cフィルタープレート上に膜を回収した。フィルタープレートは50℃で60分間乾燥し、マイクロシンチ0(パッカード)を加えてマイクロプレート用液体シンチレーションカウンター(パッカード、TOP count)にて測定した。本発明化合物のヒトS1P1またはS1P3アゴニスト作用の評価は化合物存在下でのGTP[γ-35S]の結合の飽和状態となる最大反応を100%、化合物非存在下でのGTP[γ-35S]の結合反応を0%とした際の100分率を用い、非線形回帰曲線をプロットし、最大反応の50%を作動するアゴニスト作用を誘導する濃度をEC50値(nM)として定義した。
【0054】
その結果、本発明化合物中、例えば、表1に示す化合物は、表1に示す活性、選択性を示した。
【0055】
【表1】

【0056】
試験例2:ラット末梢血リンパ球減少症の評価
In vivoラット末梢血リンパ球減少症は以下のように経口投与4時間後および24時間後に評価した。6〜10週齢の雄性Lewisラット(日本チャールスリバー)を無作為に群分けし(n=3)、本発明化合物は0.5 %メチルセルロース含有蒸留水に懸濁し、ゾンデにて経口投与した。投与後、4時間および24時間後にエーテル麻酔下で眼窩静脈叢から0.2 mL採血した。血液サンプルは直ちに EDTA・4Kおよびヘパリンを加え、凝固を防ぎ、全自動血球計算器(シスメックス;XT-2000i)にて血液中のリンパ球数を測定した。本発明化合物による末梢血のリンパ球数の減少は、同時に行った0.5%メチルセルロース含有蒸留水投与群のリンパ球数を100 %とした際の100分率を用い、本発明化合物の投与によって末梢血中のリンパ球数を50%減少する投与量をED50値(mg/kg)として定義した。
その結果、本発明化合物の実施例化合物は有効な活性を示した。
【0057】
試験例3:ラット肺重量増加の評価
毒性試験の一つとして、ラットの肺重量増加を評価した。6〜10週齢の雄性LewisまたはSDラット(日本チャールスリバー)を無作為に群分けし(n=3〜4)、本発明化合物を0.5%メチルセルロース含有蒸留水に懸濁し、ゾンデにて経口投与した。単回投与は投与後24時間後にラットの体重を測定し、ペントバルビタール麻酔下に脱血し、肺を摘出し、重量を測定した。反復投与は1日1回7日間反復投与し、最終投与の24時間後に体重および肺重量を測定した。肺重量増加は0.5%メチルセルロース含有蒸留水投与群の体重に対する肺重量の相対重量の平均に対して、本発明化合物の0.5%メチルセルロース含有蒸留水懸濁液投与群の相対重量の平均が増加した割合を100分率で示し、肺重量増加が10%以上を示した投与量を陽性と判断した。
その結果、本発明化合物中、いくつかの実施例化合物は、試験例2のラット末梢血リンパ球減少症の試験において、ED50値で肺重量増加を示さず、有効性と毒性用量に乖離があることが判明した。
【0058】
試験例4:ラット腹部異所性心臓移植における拒絶反応抑制作用の評価
ラット腹部異所性心移植モデルの作製はOnoおよびLindseyの方法に準じて行った(Transplantation,1969,517,pp.225-229)。ドナーとして6〜8週齢の雄性ACIラット(日本SLCまたは日本クレア)を用い、ペントバルビタール麻酔下にて、心臓を露出し、大動脈と肺動脈以外の左右上大静脈、肺静脈および下大静脈を一括して結紮し、大動脈と肺静脈を切り離し、グラフトとして摘出した。6〜8週齢の雄性Lewisラット(日本チャールスリバー)をレシピエントとして用い、ペントバルビタール麻酔下にて、グラフトの大動脈端とレシピエントの腹部大動脈を吻合し、さらにグラフトの肺動脈端とレシピエントの下大静脈を吻合してモデルを作製した(1群当たり6〜10例になるよう体重により群分けした)。移植心の拒絶判定は、移植後29日まで毎日レシピエントの腹部を触診し、グラフトの拍動の有無により拒絶を判定した。本発明化合物は0.5%メチルセルロース含有蒸留水に懸濁し、移植の当日から14日間、1日1回または2回、経口投与した。対照群として0.5%メチルセルロース含有蒸留水を同期間、同回数、経口投与した。同時にすべての群にタクロリムスを0.02 mg/mL/kg筋肉内投与した。
その結果、本発明化合物中、実施例化合物のいくつかはタクロリムスとの併用により、拒絶反応の抑制作用を有することが判明した。
【0059】
上記試験の結果、式(I)の化合物はS1P1受容体アゴニスト作用を有し、医薬として有用であることが確認された。従って、免疫性疾患、すなわち、(1)望ましくないリンパ球浸潤によって引き起こされる疾患(例えば臓器、骨髄もしくは組織の移植片拒絶または移植片対宿主病、自己免疫疾患、関節リウマチ、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、脳髄膜炎、重症筋無力症、膵炎、肝炎、腎炎、糸球体硬化症、糖尿病、肺障害、喘息、アトピー性皮膚炎、ブドウ膜炎、炎症性腸疾患、アテローム性動脈硬化症、虚血再潅流障害)、あるいは(2)細胞の異常増殖または集積によって引き起こされる疾患(例えば癌、白血病等)等の治療等に使用できる。
【0060】
式(I)の化合物又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する医薬組成物は、当分野において通常用いられている賦形剤、即ち、薬剤用賦形剤や薬剤用担体等を用いて、通常使用されている方法によって調製することができる。
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0061】
経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はEtOHを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0062】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、EtOHのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0063】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0064】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0065】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜30 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2回〜4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.01〜10 mg/kgが適当で、1日1回〜複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回〜複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0066】
式(I)の化合物は、前述の式(I)の化合物が有効性を示すと考えられる疾患の種々の治療剤又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、或いは別個に連続して、若しくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づき、式(I)の化合物の製造法をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また、原料化合物の製法を製造例にそれぞれ示す。また、式(I)の化合物の製造法は、以下に示される具体的実施例の製造法のみに限定されるものではなく、式(I)の化合物はこれらの製造法の組み合わせ、あるいは当業者に自明である方法によっても製造されうる。
【0068】
製造例1
N'-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾイル}-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボヒドラジド(330 mg)のオキシ塩化リン(3 mL)溶液を6時間、加熱還流した。反応液を濃縮後、氷水に注ぎ、NaHCO3水溶液で中和し、生じた固体をろ取した。減圧下乾燥することにより、5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(315 mg)を淡黄色固体として得た。
【0069】
製造例2
N'-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾイル}-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボヒドラジド (300 mg)をTHF(2 mL)とDMI(2 mL)の混合溶媒に溶解し、五硫化二リン(235 mg)を加え、100℃で2日間撹拌した。反応溶液を室温に冷却後、1M NaOH水溶液でpH=8に調製し、生じた固体をろ取した。固体をMeOHで洗浄し、5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(355 mg)を黄色固体として得た。
【0070】
製造例2の方法と同様にして、後記表に示す製造例2-1の化合物を製造した。
【0071】
製造例3
5-[5-(2-フルオロビフェニル-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-2-ベゾフラン-1(3H)-オン(480 mg)のTHF溶液(14 mL)に-78℃で1M DIBALのトルエン溶液(3.87 mL)を滴下した。同温で30分攪拌後、0℃で1時間攪拌し、さらに、室温で2時間攪拌した。氷冷下Na2SO4・10H2Oを加え、室温で15時間攪拌した。反応混合物にNa2SO4を加え、固体をろ去し、さらに、固体はTHFで洗浄し、母液を減圧下濃縮した。残渣をIPEに懸濁後固体をろ取し、得られた固体をIPEで洗浄することにより{4-[5-(2-フルオロビフェニル-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-1,2-フェニレン}ジメタノール(392 mg)を白色固体として得た。
【0072】
製造例3の方法と同様にして、後記表に示す製造例3-1から3-9の化合物を製造した。
【0073】
製造例4
シス-4-(5-ブロモ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸(2.36 g)のTHF/tBuOH溶液(20 mL/20 mL)にDIBOC(1.75 g)とDMAP(45 mg)を加え、室温で1時間攪拌後、70℃で14時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=90:10から70:30)で精製することにより、シス-4-(5-ブロモ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(1.57 g)を淡黄色固体として得た。
【0074】
製造例4の方法と同様にして、後記表に示す製造例4-1、4-2の化合物を製造した。
【0075】
製造例5
シス-4-アミノシクロヘキサンカルボン酸(5.24 g)のTHF(30 mL)懸濁液に氷冷下、5M NaOH水溶液(15.8 mL)を加え、ベンジルクロロカーボネート(7.5 mL)を滴下した。室温で15時間攪拌した後、水層を1M塩酸でpH=4付近にし、EtOAcで抽出した。有機層をMgSO4で乾燥後濃縮し、減圧下乾燥することにより、シス-4-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}シクロヘキサンカルボン酸(7.19 g)を無色油状物として得た。
【0076】
製造例6
rel-(1R,2S)-2-メトキシ-4-[(トリメチルシリル)オキシ]シクロヘキセ-3-エン-1-カルボン酸メチルエステル(1673 mg)とrel-(1R,2R)-2-メトキシ-4-[(トリメチルシリル)オキシ]シクロヘキセ-3-エン-1-カルボン酸 メチルエステル(1964 mg)のDCM溶液(16.7 mL)にトリフルオロ(1,1'-オキシジエタン)ボロン(10.84 mL)を0℃で滴下した。0℃で2時間攪拌し、反応溶液を減圧下濃縮した。残渣にEtOAc(5 mL)を加え、0℃に冷却し、K2CO3水溶液(686 mg/20 mL)で中和した。EtOAc(50 mL)で3回抽出した。有機層はまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮し、4-オキソシクロヘキセ-1-エン-1-カルボン酸メチルエステルと4-オキソシクロヘキセ-2-エン-1-カルボン酸メチルエステルの混合物(469 mg, 5:2)を黄色油状物として得た。
【0077】
製造例7
3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]安息香酸(2 g)と触媒量のDMFのDCM溶液 (40 mL)に氷冷下、オキザリルクロリド (1 mL)を加えた。室温で1.5時間撹拌後、溶媒を濃縮した。得られた残渣をヒドラジン1水和物(2 mL)のジオキサン溶液(40 mL)に滴下し、室温で1時間撹拌した。溶媒を濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=97:3から90:10)で2回精製することにより、3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾヒドラジド(1.55 g)を白色アモルファスとして得た。
【0078】
製造例8
シス-4-{5-[アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸 ターシャリーブチルエステル(100 mg)のDCM溶液(2 mL)に0℃でオキサリルクロリド(33.98 μL)とDMF(2.15 μL)を加え、25℃で3時間攪拌した。反応混合物を減圧下溶媒を留去し、残渣をDCM(3 mL)に溶解し、0℃でDIPEA(96.91 μL)と4-(1,1-ジフルオロ-2-メチルプロピル)安息香酸(62.57 mg)を加え、25℃で15時間攪拌した。反応混合物に、水(20 mL)を加え、DCM(20 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄しMgSO4で乾燥後濃縮した。シス-4-{5-[アミノ({[4-(1,1-ジフルオロ-2-メチルプロピル)ベンゾイル]オキシ}イミノ)メチル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(147.3 mg)を白色固体として得た
【0079】
製造例8の方法と同様にして、後記表に示す製造例8-1から8-2の化合物を製造した。
【0080】
製造例9
1,3-ジフルオロプロパン-2-オール(206 mg)のDMF溶液(40 mL)に0℃でNaH (858mg, 60%油状)を加え、同温で1時間攪拌した。反応混合物に4-フルオロベンゾニトリル(200 mg)を加え、1時間攪拌した後、0℃で飽和NH4Cl水溶液を加え、EtOAcで抽出した。有機層をbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥した。減圧を溶媒を留去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=95:5から80:20を経て70:30)により精製し、二種の無色油状物、4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾニトリル(1530 mg)及び4-{[1-(フルオロメチル)ビニル]オキシ}ベンゾニトリル(223 mg)を得た。
【0081】
製造例10
3-[3,4-ビス(ブロモメチル)フェニル]-5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール(500 mg)のDCM(15 mL)溶液に4-アミノシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル 塩酸塩(531.49 mg)とDIPEA(0.57 mL)を25℃で滴下し、25℃で15時間攪拌した。反応液に飽和NH4Cl水溶液(30 mL)を加えた。EtOAc(20 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から90:10)で精製することにより、シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(TLC upper)(234.5 mg)とトランス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(TLC lower)(104.2 mg)を白色固体として得た。
【0082】
製造例10の方法と同様にして、後記表に示す製造例10-1から10-20の化合物を製造した。
【0083】
製造例11
シス-4-{5-[5-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキシジアゾール-3-イル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドリル-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸メチル(672 mg)の水(6 mL)懸濁液に濃塩酸(6 mL)とジオキサン(6 mL)を加え、100℃で24時間攪拌した。固体をろ取し、水で洗浄した。固体に飽和NaHCO3を加え、10分間攪拌した。固体をろ取し、水、IPEで順次洗浄し、シス-4-{5-[5-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキシジアゾール-3-イル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドリル-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸(490 mg)を得た。
【0084】
製造例12
シス-4-(5-ブロモ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(3.13 g)のMeOH/THF(30 mL/30 mL)の混合溶液に1M NaOH溶液(28 mL)を加え、室温で2時間、50℃で1時間撹拌した。溶媒を減圧濃縮し、残渣に水を加え、1M 塩酸で中和した。生じた固体をろ取し、減圧下乾燥することにより、シス-4-(5-ブロモ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸 (2.36 g)を白色固体として得た。
【0085】
製造例13
シス-4-(5-{5-[4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(50 mg)の水懸濁液(0.5 mL)に濃塩酸(0.5 mL)を加え、100℃で15時間攪拌した。氷冷下、1M NaOH水溶液で中和し、析出した固体をろ取した。固体を水、IPEで順次洗浄することにより、シス-4-(5-{5-[4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸(33 mg)を白色固体として得た。
【0086】
製造例13の方法と同様にして、後記表に示す製造例13-1から13-3の化合物を製造した。
【0087】
製造例14
3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]安息香酸(3.72g)のDCM溶液(90 mL)に、オキサリルクロライド(2.04 mL)とDMF(37.8 μL)を0℃で加え、25℃まで昇温した後、1時間攪拌した。酸塩化物の生成を確認した後、有機溶媒を留去した。トルエン共沸(30 mL)を3回繰り返した後、残渣をTHFに溶解した。25℃でN'-ヒドロキシ-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボキシイミドアミド(3.0 g)とDIPEA(6.53 mL)を加えて、25℃で3時間攪拌した。TLCで反応の終了を確認した後、反応溶液に水(50 mL)を加え、EtOAc(30 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から95:5)で精製することにより、5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-2-ベンゾフラン-1(3H)-オン(6.032 g)を得た。
【0088】
製造例14の方法と同様にして、後記表に示す製造例14-1から14-5の化合物を製造した。
【0089】
製造例15
4-(3-オキソシクロペンチル)-3-(トリフルオロメチル)安息香酸(100 mg)、シス-4-{5-[アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(158 mg)とEDCI(85 mg)のジオキサン溶液(4 mL)を室温で2.5時間撹拌した。反応液に水を加え、生じた固体をろ取し、減圧下乾燥した。この固体をジオキサン/水(3 mL/1 mL)に懸濁し、酢酸ナトリウム(33 mg)を加え、100℃で12時間撹拌した。反応液を濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=80:20から50:50)で精製することにより、シス-4-(5-{5-[4-(3-オキソシクロペンチル)-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (82 mg)を白色固体として得た。
【0090】
製造例15の方法と同様にして、後記表に示す製造例15-1の化合物を製造した。
【0091】
製造例16
シス-4-{5-[アミノ({[4-(1,1-ジフルオロ-2-メチルプロピル)ベンゾイル]オキシ}イミノ)メチル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(140 mg)のジオキサン(2.8 mL)と水(0.28 mL)の懸濁液に酢酸ナトリウム(24.80 mg)を加え、100℃で5時間攪拌した。反応の終了を確認後、反応溶液に水(50 mL)を加え、EtOAc(20 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=90:10から50:50)で精製することにより、シス-4-(5-{5-[4-(1,1-ジフルオロ-2-メチルプロピル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸 ターシャリーブチルエステル(96.8 mg)を白色固体として得た。
【0092】
製造例16の方法と同様にして、後記表に示す製造例16-1から16-3の化合物を製造した。
【0093】
製造例17
2M LDA-シクロヘキサン(0.21 mL)のTHF溶液(2 mL)にシス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(150 mg)のTHF溶液(1 mL)を-78℃で加え、同温で1時間攪拌した。-78℃でヨウ化メチル(26.3 μL)を加え、-10℃で3時間攪拌した。TLCで原料の消失を確認した後、NH4Cl水溶液(20 mL)を加え、EtOAc(20 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=100:0から60:40)で精製することにより、シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]-1-メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル(56.3 mg)を無色液体として得た。
【0094】
製造例18
(1R,3S)-3-アミノシクロペンタンカルボン酸(500 mg)のMeOH懸濁液(2.5 mL)に0℃でチオニルクロリド(0.56 mL)を滴下した。0℃で1時間攪拌した後、25℃まで昇温し25℃で20時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、残渣にIPEを加えて懸濁させ、ろ取した。固体をIPEで洗浄することにより(1R,3S)-3-アミノシクロペンタンカルボン酸メチルエステル 塩酸塩(687.5mg)を白色固体として得た。
【0095】
製造例18の方法と同様にして、後記表に示す製造例18-1から18-2の化合物を製造した。
【0096】
製造例19
3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾヒドラジド (1.55 g)、1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボン酸(1.57 g)、HOBt(1.19 g)とEDCI(1.68 g)のDMF溶液(50 mL)を室温で20時間撹拌した。反応液を濃縮後、水を加えて、生じた固体をろ取した。この固体をIPAで再結晶することにより、N'-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]ベンゾイル}-1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボヒドラジド(1.63 g)を白色固体として得た。
【0097】
製造例19の方法と同様にして、後記表に示す製造例19-1の化合物を製造した。
【0098】
製造例20
シス-4-(5-ブロモ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(1.57 g)、Pd(PPh3)4 (477 mg)とシアン化亜鉛 (582 mg)のDMF溶液 (40 mL)を窒素置換した後、80℃で2時間撹拌した。室温に冷却後、EtOAcを加え不溶物をセライトろ過した。ろ液を水およびbrineで洗浄した。有機層はMgSO4で乾燥後、濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=100:0から80:20)で精製することにより、シス-4-(5-シアノ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸 ターシャリーブチルエステル(920 mg)を白色固体として得た。
【0099】
製造例20の方法と同様にして、後記表に示す製造例20-1の化合物を製造した。
【0100】
製造例21
{[(2E)-3-メトキシ-1-メチレンプロプ-2-エン-1-イル]オキシ}(トリメチル)シラン(3.0 g)とメチルアクリレート(3.12 mL)をトルエン溶液中(30 mL)で混合し80℃で40時間攪拌した。減圧下溶媒を留去し、rel-(1R,2S)-2-メトキシ-4-[(トリメチルシリル)オキシ]シクロヘキセ-3-エン-1-カルボン酸メチルエステルとrel-(1R,2R)-2-メトキシ-4-[(トリメチルシリル)オキシ]シクロヘキセ-3-エン-1-カルボン酸メチルエステルの混合物(3.63 g, 1:1.2)を無色液体として得た。
【0101】
製造例22
{4-[5-(2-フルオロビフェニル-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-1,2-フェニレン}ジメタノール(385 mg)のEtOAc懸濁液(9 mL)に0℃で三臭化リン(415 mg)を滴下した。室温で15時間攪拌した後に、0℃で飽和NaHCO3を加えた。EtOAc/THF(4:1)で抽出し、有機層をMgSO4で乾燥した。減圧下溶媒を留去し、3-[3,4-ビス(ブロモメチル)フェニル]-5-(2-フルオロビフェニル-4-イル)-1,2,4-オキサジアゾール(380 mg)を白色固体として得た。
【0102】
製造例22の方法と同様にして、後記表に示す製造例22-1から22-9の化合物を製造した。
【0103】
製造例23
1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボニトリル(5 g)の硫酸(50 mL)、酢酸 (50 mL)と水(25 mL)の混合溶液を110 ℃で1時間撹拌した。反応液を100℃に冷却した後、亜硝酸ナトリウム(6.5 g)水溶液(25 mL)をゆっくり滴下し、100℃で2時間撹拌した。室温に冷却後、氷水に注ぎ、生じた固体をろ取し、減圧下乾燥して1-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボン酸 (4.83 g)を白色固体として得た。
【0104】
製造例23の方法と同様にして、後記表に示す製造例23-1から23-2の化合物を製造した。
【0105】
製造例24
シス-4-(5-シアノ-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (816 mg)と50%ヒドロキシルアミン水溶液(0.3 mL)のMeOH溶液を22時間、加熱還流した。反応液を濃縮した後、IPAにて洗浄し、シス-4-{5-[アミノ(ヒドロキシイミノ)メチル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(836 mg)を白色固体として得た。
【0106】
製造例25
5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)イソインドリン(500 mg)のDCM溶液(10 mL)中に、4-オキソシクロヘキサンカルボン酸エチルエステル(298.1 mg)とDIPEA(0.41 mL)を25℃で滴下した。室温で1時間攪拌した後、25℃でトリアセトキシヒドロホウ酸ナトリウム(494.9 mg)を加えて、3時間攪拌した。飽和NaHCO3水(50 mL)を加え、EtOAc(30 ml)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=70:30から50:50)で精製することにより、シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 エチルエステル(232.4 mg)を白色固体として、トランス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(トリフルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 エチルエステル(210.5 mg)を白色固体として得た。
【0107】
製造例25の方法と同様にして、後記表に示す製造例25-1から25-3の化合物を製造した。
【0108】
製造例26
シス-4-{[(ベンジルオキシ)カルボニル]アミノ}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (7.1 g)のEtOH溶液(65 mL)に10% Pd/C(50%含水)(1.4 g)を加え、水素雰囲気下、室温で3時間攪拌した。セライトろ過により固体を除き、ろ液を減圧下濃縮し、シス-4-アミノシクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル(4.19 g)を無色油状物として得た。
【0109】
製造例27
5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-2-(2,4-ジメトキシベンジル)イソインドリン(1.5 g)のDCM溶液(45 mL)に1-クロロエチル クロロカーボネート(0.45 mL)を25℃で滴下した。4.5時間攪拌した後、減圧下濃縮した。残渣をMeOH(45 mL)に溶解し、還流下、3時間攪拌した。反応溶液を減圧下濃縮し、得られた白色固体にEtOAc(30 mL)と飽和NaHCO3水(30 mL)を加え10分間攪拌し、EtOAc(30 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥し、ろ液を濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=50:50から0:100)で精製することにより、無色油状物を得た。ヘキサン(100 mL)を加え、析出した固体をろ取し、5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)イソインドリン(0.93 g)を白色固体として得た。
【0110】
製造例27の方法と同様にして、後記表に示す製造例27-1から27-2の化合物を製造した。
【0111】
製造例28
2-(3-クロロ-4-フルオロベンゾイル)カルバジン酸ターシャリーブチルエステル(7.96 g)のDCM懸濁液(10 mL)にTFA(50 mL)を加え、室温で14時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣にEtOAcと飽和NaHCO3水溶液を加え、分液した。有機層をbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥し、溶媒を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=97:3から90:10)で精製することにより3-クロロ-4-フルオロベンゾヒドラジド(4.60 g)を白色固体として得た。
【0112】
製造例29
(2S)-1,1,1-トリフルオロプロパン-2-オール(300 mg)をDMF (6 mL)に溶解し、0℃で60% 油性NaH(70 mg)を加えて同温で0.5時間攪拌し、0℃でシス-4-{5-[5-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (207 mg)を加えて、50℃で0.5時間撹拌した。LCで反応の終了を確認後、反応溶液に水を加えて反応を停止させた。CHCl3で抽出し、有機層をbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:EtOAc=70:30から40:60)で精製することにより固体を得た。固体をEtOAcで再結晶することによりシス-4-{5-[5-(3-クロロ-4-[(1S)-2,2,2-トリフルオロ-1-メチルエトキシ]フェニル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (100 mg)を淡黄色固体として得た。
【0113】
製造例29の方法と同様にして、後記表に示す製造例29-1から29-4の化合物を製造した。
【0114】
製造例30
3-クロロ-4-フルオロ安息香酸 (5 g)、カルバジン酸ターシャリーブチルエステル(4 g)、EDCI(6 g)とDMAP(50 mg)のMeCN溶液(100 mL)を室温で19時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣を水に注ぎ、EtOAcで抽出した。有機層を0.5M塩酸、brineで順次洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧濃縮し、2-(3-クロロ-4-フルオロベンゾイル)カルバジン酸ターシャリーブチルエステル(7.96 g)を白色固体として得た。
【0115】
製造例化合物の構造および物理化学的データを表2から表18に示す。
略号の意味は以下のとおりである。
Ex:実施例番号。
Pr:製造例番号。
Data:物理化学データ(但し、NMRデータは、特に記述がない限りd6-DMSOを測定溶媒としたδ値を示した)。
Syn:同様の反応で合成できる実施例番号を示し、例えば、実施例8は実施例2と同様に製造したことを意味する。
【0116】
【表2】



【0117】
【表3】


【0118】
【表4】

【0119】
【表5】


【0120】
【表6】

【0121】
【表7】


【0122】
【表8】



【0123】
【表9】


【0124】
【表10】


【0125】
【表11】


【0126】
【表12】


【0127】
【表13】


【0128】
【表14】


【0129】
【表15】


【0130】
【表16】

【0131】
【表17】


【0132】
【表18】

【0133】
実施例1
シス-4-(5-{5-[4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸(75 mg)にピロリジン(0.8 mL)を加え、24時間、還流下攪拌した。反応溶液に飽和NH4Cl水溶液を加え、EtOAcで抽出した。有機層をbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧濃縮した。残渣をTHFに溶解し、シリカゲルを加え、減圧下溶媒を留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から90:10)で精製することにより、シス-4-(5-{5-[4-ピロリジン-1-イル-3-(トリフルオロメチル)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸(51 mg)を白色固体として得た。
【0134】
実施例2
2,2,2-トリフルオロエタノール(84 mg)のDMF溶液(4 mL)にNaH(60%油状, 45 mg)を氷冷下加えた。室温で30分間攪拌した後、再び、0℃に冷却し、シス-4-{5-[5-(3,4-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル]-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル}シクロヘキサンカルボン酸(120 mg)を加えた。室温で50分間攪拌した。DMF(5 mL)を加え、65℃で12時間攪拌した。2,2,2-トリフルオロエタノール(80 μL)とNaH(60%油状, 45 mg)を反応混合物に加え、75℃で20時間攪拌した。反応溶液に水を加え、析出した固体をろ取し、水、ヘキサン、IPEで洗浄した。固体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から90:10)で精製することによりシス-4-(5-{5-[3-フルオロ-4-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)フェニル]-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル}-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル) シクロヘキサンカルボン酸(30 mg)を白色固体として得た。
【0135】
実施例3
3-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 メチルエステル (100 mg)の水(1 mL)懸濁液に、濃塩酸(1 mL)を加え、100℃で12時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、IPEを加えると固体が析出した。得られた固体を水、IPEで洗浄し、3-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドル-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩(92.5 mg)を淡緑色固体として得た。
【0136】
実施例4
3-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロペンタンカルボン酸 メチルエステル(40 mg)を50%H2SO4(0.8 mL)に溶解した。100℃で3時間攪拌した。反応溶液を0℃に冷却し、1M NaOH水溶液(16 mL)で中和し、EtOAc(20 mL)で3回抽出した。有機層はまとめて、brineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から90:10)で精製することにより、3-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾル-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロペンタンカルボン酸(20.2 mg)を白色固体として得た。
【0137】
実施例5
トランス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 エチルエステル(100 mg)を50%H2SO4(2 mL)に溶解した。100℃で15時間攪拌した。反応溶液を0℃に冷却し、1M NaOH水溶液(38 mL)で中和し、EtOAc(20 mL)で3回抽出した。有機層をまとめてbrineで洗浄し、MgSO4で乾燥後濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:0から90:10)で精製することにより、白色固体を得た。白色固体をDCM(2 mL)に溶解し、4M HCl/ジオキサン(1 mL)を滴下した。25℃で1時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、トランス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸塩酸塩(78.4 mg)を淡黄色固体として得た。
【0138】
実施例6
シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸(70 mg)のDCM溶液(3 mL)中に4M HCl/ジオキサン(1.01 mL)を25℃で滴下し、同温で1時間攪拌した。反応液を濃縮し、IPEを加えると白色固体が析出し、析出した固体をろ取し、IPEで洗浄して、白色固体を得た。減圧下乾燥し、シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドル-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸 塩酸塩(70 mg)を白色固体として得た。
【0139】
実施例7
シス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)シクロヘキサンカルボン酸ターシャリーブチルエステル (200 mg)に4M HCl/ジオキサン(5 mL)を加え、3日間室温で撹拌した。反応液を濃縮後、残渣をEtOHで再結晶することによりシス-4-[5-(5-{3-クロロ-4-[2-フルオロ-1-(フルオロメチル)エトキシ]フェニル}-1,3,4-チアジアゾール-2-イル)-1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル]シクロヘキサンカルボン酸塩酸塩(102 mg)を白色固体として得た。
【0140】
実施例化合物の構造及び製造法を表19から表25に、物理化学的データを表26から表29にそれぞれ示す。
【0141】
【表19】

【0142】
【表20】


【0143】
【表21】


【0144】
【表22】


【0145】
【表23】


【0146】
【表24】


【0147】
【表25】


【0148】
【表26】


【0149】
【表27】


【0150】
【表28】

【0151】
【表29】


【0152】
【表30】


【0153】
【表31】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物又はその塩。
【化1】


(式中、
Xは、NまたはO;
Yは、N、O、またはS、
ただし、XとYとは、同時にOであることはない;
Aは、それぞれ低級アルキルで置換されていてもよいシクロアルカンまたはシクロアルケン;
R1は、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、-O-低級アルキル、
-O-低級アルケニル、-O-アリール または、含窒素ヘテロシクロアルキ
ルであり、
ここで、低級アルキル、シクロアルキル、アリール、-O-低級アルキル、
-O-低級アルケニル、-O-アリール または、含窒素ヘテロシクロアルキ
ルは、それぞれハロゲンで置換されていてもよく、
さらに、シクロアルキルはオキソ(=O)で置換されていてもよく;
R2は、-H、-CN または、ハロゲンまたはハロ低級アルキル;
nは、0または1である。)
【請求項2】
Aが、シクロヘキサンである請求項1記載の化合物。
【請求項3】
XがNであり、YがSである請求項1記載の化合物。

【公開番号】特開2009−249363(P2009−249363A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−101986(P2008−101986)
【出願日】平成20年4月9日(2008.4.9)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】