説明

イソシアネート残渣の処理方法

【課題】カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣を、アミンに分解することができるイソシアネート残渣の処理方法を提供すること。
【解決手段】カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を、溶媒存在下、高圧高温水に接触させて、アミンに分解する。このようにイソシアネート残渣を処理すれば、カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣を、アミンに分解することができる。また、このようなイソシアネート残渣の処理方法によれば、イソシアネート残渣を、カルバメートの製造原料となるアミンに分解できるため、イソシアネートの製造におけるコストを低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート残渣の処理方法に関し、詳しくは、カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣を、アミンに分解するイソシアネート残渣の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは、少なくとも1つのイソシアネート基(−NCO)を有する化合物であって、ポリウレタン、ポリ尿素などの原料として、工業的に広く用いられている。
従来より、イソシアネートは、アミンとホスゲンとの反応(ホスゲン法)から工業的に製造されているが、ホスゲンは毒性が強く、その取り扱いが煩雑であり、しかも、大量の塩酸を副生するので、装置の腐食に配慮する必要があるなど、種々の不具合があり、これに代わるイソシアネートの工業的な製造方法の開発が望まれている。
【0003】
ホスゲンを使用しないイソシアネートの製造方法として、例えば、アミンをジアルキルカーボネートでカルバメート化した後、得られたカルバメートを熱分解する方法(カーボネート法)や、アミンを尿素やN−無置換カルバミン酸エステルなどでカルバメート化した後、得られたカルバメートを熱分解する方法(尿素法)などが、知られている。
このような方法によれば、ホスゲンを用いることなく、カルバメートを製造して、それをイソシアネートとアルコールとに分解することができる。
【0004】
一方、カーボネート法や尿素法では、生成するカルバメートやイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起することが、知られている。
このような場合において、カルバメートの分解液からイソシアネートおよびアルコールを分離回収すると、例えば、尿素誘導体(ビウレット体)、カルバメート誘導体(アロファネート体)などの副生物が、イソシアネート残渣として得られる。
【0005】
一方、ホスゲン法では、アミンとホスゲンとの反応によりイソシアネートを製造できるが、この方法においても、イソシアネートが多量化するなどの好ましくない重合反応を惹起し、その結果、多量体などの副生物がイソシアネート残渣として得られる。
このようなイソシアネート残渣は、通常、廃棄処理されているが、近年では、地球環境などの観点から廃棄処理物を低減することが要求されているため、回収されたイソシアネート残渣を有効利用する方法が、種々検討されている。そのような方法としては、例えば、ホスゲン法でイソシアネート化合物を製造したときに副生する残渣を、溶融状態または溶液状態で反応器に連続的に供給するとともに、高圧高温水を反応器へ連続的に供給し、反応器内の温度を190〜300℃にして、残渣をポリアミンに分解して回収する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−279539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、特許文献1に記載の方法では、ホスゲン法において副生するイソシアネート残渣をアミンに分解できるものの、その一方で、ホスゲン法では副生せず、かつ、カーボネート法や尿素法において副生するイソシアネート残渣(例えば、尿素誘導体、カルバメート誘導体など)を分解できないという不具合がある。
本発明の目的は、カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣を、アミンに分解することができるイソシアネート残渣の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のイソシアネート残渣の処理方法は、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を、溶媒存在下、高圧高温水に接触させて、アミンに分解することを特徴としている。
また、本発明のイソシアネート残渣の処理方法では、溶媒が、沸点が250℃以上の芳香族炭化水素類であることが好適である。
【0009】
また、本発明のイソシアネート残渣の処理方法では、カルバメートが、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により生成されるカルバメートであることが好適である。
また、本発明のイソシアネート残渣の処理方法では、カルバメートの生成に用いられるアミンが、イソシアネート残渣を分解して得られるアミンであり、カルバメートの生成に用いられるアルコールが、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコールであることが好適である。
【0010】
また、本発明のイソシアネート残渣の処理方法では、イソシアネート残渣を分解した後、溶媒を回収し、カルバメートを、イソシアネート残渣を分解した後に回収される溶媒の存在下において熱分解することが好適である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のイソシアネート残渣の処理方法によれば、カルバメートの分解液から得られるイソシアネート残渣を、アミンに分解することができる。
また、本発明のイソシアネート残渣の処理方法によれば、イソシアネート残渣を、カルバメートの製造原料となるアミンに分解できるため、イソシアネートの製造におけるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のイソシアネート残渣の処理方法が採用されるプラントの一実施形態を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のイソシアネート残渣の処理方法において、イソシアネート残渣は、詳しくは後述するが、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネート(後述)およびアルコール(後述)を分離することにより、得ることができる。
カルバメートは、分子内に少なくとも1つのウレタン結合(−NHCOO−)を有する化合物であって、例えば、下記一般式(1)で示される。
【0014】
−(NHCOOR)n (1)
(式中、Rは、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基、または、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基を、Rは、総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、または、総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基を、nは、1〜6の整数を示す。)
上記式(1)中、Rは、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基、および、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基から選択されるが、Rは、その炭化水素基中に、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含んでいてもよく、また、安定な官能基(後述)で置換されていてもよい。
【0015】
において、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、直鎖状または分岐状の総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
より具体的には、総炭素数1〜15のアルキル基、総炭素数1〜15のアルケニル基、総炭素数1〜15のアルキリデン基などが挙げられる。
アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、iso−プロピル、ブチル、iso−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−ペンチル、sec−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、イソデシル、ドデシル、テトラデシルなどが挙げられる。
【0016】
アルケニル基としては、例えば、プロペニル、ブテニル、ペンテニルなどが挙げられる。
アルキリデン基としては、例えば、エチリデン、プロピリデン、ブチリデン、ペンチリデン、ヘキシリデンなどが挙げられる。
において、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
【0017】
なお、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよく、例えば、その脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、カルバメートにおけるウレタン結合(−NHCOO−)は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0018】
より具体的には、例えば、総炭素数3〜15のシクロアルキル基などが挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロオクチル、ジメチルシクロヘキシル、イソホロン、ノルボルネン、デカリン、アダマンタン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキサン)、2,4’−メチレンビス(シクロヘキサン)、1,4−シクロヘキシリデンなどが挙げられる。
【0019】
において、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基としては、例えば、1〜6価の、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
なお、芳香環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の芳香族炭化水素を含有していればよく、例えば、その芳香族炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、カルバメートにおけるウレタン結合(−NHCOO−)は、芳香族炭化水素に直接結合していてもよく、芳香族炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0020】
より具体的には、例えば、総炭素数6〜15のアリール基などが挙げられる。
アリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、ナフチル、ビフェニル、アントリル、トリメチルフェニル、4,4’−メチレンビスフェニレン、フェナントリルなどが挙げられる。
上記式(1)において、Rに置換していてもよい官能基としては、例えば、ニトロ基、水酸基、メルカプト基、オキソ基、チオキソ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシ−カルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの総炭素数2〜4のアルコキシカルボニル基)、スルホ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素など)、低級アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、iso−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基など)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基など)、ハロゲノフェノキシ基(例えば、o−、m−またはp−クロロフェノキシ基、o−、m−またはp−ブロモフェノキシ基など)、低級アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基、iso−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基など)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基など)、低級アルキルスルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基など)、低級アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基など)、アリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニルなど)、低級アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基など)、アリールカルボニル基(例えば、ベンゾイル基など)などが挙げられる。
【0021】
これらの官能基は、上記式(1)において、Rに複数置換していてもよく、また、官能基がRに複数置換する場合には、各官能基は、互いに同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
上記式(1)中、Rにおいて、総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基としては、例えば、総炭素数1〜16のアルキル基などが挙げられる。
【0022】
アルキル基としては、例えば、上記したアルキル基などが挙げられる。
上記式(1)中、Rにおいて、総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基としては、例えば、総炭素数6〜16のアリール基などが挙げられる。
アリール基としては、上記したアリール基などが挙げられる。
上記式(1)において、nは、1〜6の整数を示し、好ましくは、1または2を示し、より好ましくは、2を示す。
【0023】
このようなカルバメートとして、具体的には、例えば、メチルヘキシルカルバメート、メチルオクチルカルバメート、メチルドデシルカルバメート、メチルオクタデシルカルバメート、1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ブタン、1,5−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ペンタン、1,5−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ペンタン、1,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,8−ビス(メトキシカルボニルアミノ)オクタン、1,8−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)オクタン、1,8−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)−4−(フェノキシカルボニルアミノメチル)オクタン、1,9−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ノナン、1,9−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ノナン、1,10−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−デカン、1,12−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)−ドデカン、1,12−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−ドデカン、1,12−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)−ドデカン、2,2’−ビス(4−プロポキシカルボニルアミノフェニル)プロパン、1,3,6−トリス(メトキシカルボニルアミノ)ヘキサン、1,3,6−トリス(フェノキシカルボニルアミノ)ヘキサンなどの脂肪族系カルバメート、例えば、1,3−または1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、1,3−または1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)シクロヘキサン、2,4’−または4,4’−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキサンメタン、2,4’−または4,4’−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,4’−または4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,4’−または4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ジシクロヘキシルメタン、2,5−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,5−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、1−(メトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(メトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン、1−(ブトキシカルボニルアミノ)−3,3,5−トリメチル−5−(ブトキシカルボニルアミノメチル)−シクロヘキサン、3−メトキシカルボニルアミノメチル−3,5,5−トリメチル−1−メトキシカルボニルアミノシクロヘキサン、4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)−2,2’−ジシクロヘキシルプロパン、4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)−2,2’−ジシクロヘキシルプロパンなどの脂環族系カルバメート、例えば、1,3−または1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−または1,4−ビス(エトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−または1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノメチル)ベンゼン、1,3−または1,4−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ベンゼン、1,3−または1,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ベンゼン、2,4’−または4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,4’−または4,4’−ビス(エトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、2,4’−または4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、4,4’−ビス(フェノキシカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、1,5−または2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ナフタレン、1,5−または2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ナフタレン、4,4’−ビス(メトキシカルボニルアミノ)ビフェニル、4,4’−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)ビフェニル、2,4−または2,6−ビス(メトキシカルボニルアミノ)トルエン、2,4−または2,6−ビス(エトキシカルボニルアミノ)トルエン、2,4−または2,6−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエンなどの芳香族系カルバメートなどが挙げられる。これらカルバメートは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
【0024】
また、このようなカルバメートは、特に制限されないが、上記の具体的な化合物に準じて、例えば、カーボネート法、尿素法などにより生成される。好ましくは、尿素法、すなわち、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、生成される。
アミンとしては、例えば、1級アミンが挙げられる。
【0025】
1級アミンは、1級のアミノ基を1つ以上有するアミノ基含有有機化合物であって、例えば、下記一般式(2)で示される。
−(NH)n (2)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
上記式(2)中、Rは、上記式(1)のRと同意義、すなわち、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基、および、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基から選択される。なお、Rは、その炭化水素基中に、例えば、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合などの安定な結合を含んでいてもよく、また、上記した安定な官能基で置換されていてもよい。
【0026】
において、総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記した、1〜6価の、直鎖状または分岐状の総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基などが挙げられる。
上記式(2)において、Rが総炭素数1〜15の脂肪族炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数1〜15の脂肪族アミンなどが挙げられる。
【0027】
そのような脂肪族アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、iso−プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミンなどの直鎖状または分岐状の脂肪族1級モノアミン、例えば、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン(1,4−テトラメチレンジアミン)、1,5−ジアミノペンタン(1,5−ペンタメチレンジアミン)、1,6−ジアミノヘキサン(1,6一ヘキサメチレンジアミン)、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンなどの脂肪族1級ジアミン、例えば、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノヘキサン、トリアミノノナン、トリアミノドデカン、1,8−ジアミノ−4−アミノメチルオクタン、1,3,6−トリアミノヘキサン、1,6,11−トリアミノウンデカン、3−アミノメチル−1,6−ジアミノヘキサンなどの脂肪族1級トリアミンなどが挙げられる。
【0028】
において、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基としては、例えば、上記した、1〜6価の、総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基などが挙げられる。
なお、上記と同様、脂環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の脂環式炭化水素を含有していればよく、例えば、その脂環式炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、1級アミンにおけるアミノ基は、脂環式炭化水素に直接結合していてもよく、脂環式炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0029】
上記式(2)において、Rが総炭素数3〜15の脂環含有炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数3〜15の脂環族アミンなどが挙げられる。
そのような脂環族アミンとしては、例えば、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、水添トルイジンなどの脂環族1級モノアミン、例えば、ジアミノシクロブタン、イソホロンジアミン(3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン)、1,2−ジアミノシクロへキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、水添2,4−トリレンジアミン、水添2,6−トリレンジアミンなどの脂環族1級ジアミン、例えば、トリアミノシクロヘキサンなどの脂環族1級トリアミンなどが挙げられる。
【0030】
において、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基としては、例えば、上記した、1〜6価の、総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基などが挙げられる。
なお、上記と同様、芳香環含有炭化水素基は、その炭化水素基中に1つ以上の芳香族炭化水素を含有していればよく、例えば、その芳香族炭化水素に、例えば、脂肪族炭化水素基などが結合していてもよい。このような場合には、1級アミンにおけるアミノ基は、芳香族炭化水素に直接結合していてもよく、芳香族炭化水素に結合される脂肪族炭化水素基に結合していてもよく、その両方であってもよい。
【0031】
上記式(2)において、Rが総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基である1級アミンとしては、例えば、総炭素数6〜15の芳香族アミン、総炭素数6〜15の芳香脂肪族アミンなどが挙げられる。
そのような芳香族アミンとしては、例えば、アニリン、o−トルイジン(2−メチルアニリン)、m−トルイジン(3−メチルアニリン)、p−トルイジン(4−メチルアニリン)、2,3-キシリジン(2,3−ジメチルアニリン)、2,4−キシリジン(2,4−ジメチルアニリン)、2,5−キシリジン(2,5−ジメチルアニリン)、2,6−キシリジン(2,6−ジメチルアニリン)、3,4−キシリジン(3,4−ジメチルアニリン)、3,5−キシリジン(3,5−ジメチルアニリン)、1−ナフチルアミン、2−ナフチルアミンなどの芳香族1級モノアミン、例えば、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、4,4’−ジフェニルエーテルジアミン、2−ニトロジフェニル−4,4’−ジアミン、2,2’−ジフェニルプロパン−4,4’−ジアミン、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジアミン、4,4’−ジフェニルプロパンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、ナフチレン−1,4−ジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、3,3’−ジメトキシジフェニル−4,4’−ジアミンなどの芳香族1級ジアミンなどが挙げられる。
【0032】
そのような芳香脂肪族アミンとしては、例えば、ベンジルアミンなどの芳香脂肪族1級モノアミン、例えば、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン(1,3−ジ(2−アミノ−2−メチルエチル)ベンゼン)、1,4−テトラメチルキシリレンジアミン(1,4−ビス(2−アミノ−2−メチルエチル)ベンゼン)などの芳香脂肪族1級ジアミンなどが挙げられる。
【0033】
上記式(2)において、nは、上記式(1)のRと同意義、すなわち、例えば、1〜6の整数を示し、好ましくは、1または2を示し、より好ましくは、2を示す。
これら1級アミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
1級アミンとして、好ましくは、上記式(2)において、Rが総炭素数6〜15の芳香環含有炭化水素基である1級アミンが挙げられ、より具体的には、総炭素数6〜15の芳香族アミンが挙げられる。
【0034】
また、1級アミンとして、工業的に用いられるイソシアネートの製造原料となるものも好ましく、そのような1級アミンとして、例えば、1,6−ジアミノヘキサン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロへキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロへキシルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2,2,1]ヘプタン、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン、1,4−テトラメチルキシリレンジアミンなどが挙げられ、とりわけ好ましくは、イソホロンジアミン、2,4−トリレンジアミン(2,4−ジアミノトルエン)、2,6−トリレンジアミン(2,6−ジアミノトルエン)、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,4’−ジフェニルメタンジアミン、2,2’−ジフェニルメタンジアミン、ナフチレン−1,5−ジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,4−ビス(アミノメチル)ベンゼン、1,3−テトラメチルキシリレンジアミン、1,4−テトラメチルキシリレンジアミンが挙げられる。
【0035】
さらに、詳しくは後述するが、このようなカルバメートの生成に用いられるアミンとして、好ましくは、イソシアネート残渣(後述)を分解して得られるアミン(後述)が挙げられる。
N−無置換カルバミン酸エステルは、カルバモイル基における窒素原子が官能基により置換されていない(すなわち、窒素原子が、2つの水素原子と、1つの炭素原子とに結合する)カルバミン酸エステルであって、例えば、下記一般式(3)で示される。
【0036】
O−CO−NH (3)
(式中、Rは、総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、または、総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基を示す。)
上記式(3)中、Rにおいて、総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基としては、例えば、上記したアルキル基などが挙げられる。
【0037】
上記式(3)において、Rが総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸メチル、カルバミン酸エチル、カルバミン酸プロピル、カルバミン酸iso−プロピル、カルバミン酸ブチル、カルバミン酸iso−ブチル、カルバミン酸sec−ブチル、カルバミン酸tert−ブチル、カルバミン酸ペンチル、カルバミン酸iso−ペンチル、カルバミン酸sec−ペンチル、カルバミン酸ヘキシル、カルバミン酸ヘプチル、カルバミン酸オクチル、カルバミン酸2−エチルヘキシル、カルバミン酸ノニル、カルバミン酸デシル、カルバミン酸イソデシル、カルバミン酸ドデシル、カルバミン酸テトラデシル、カルバミン酸ヘキサデシルなどが挙げられる。
【0038】
上記式(3)中、Rにおいて、総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基としては、例えば、上記したアリール基などが挙げられる。
上記式(3)において、Rが総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基であるN−無置換カルバミン酸エステルとしては、例えば、カルバミン酸フェニル、カルバミン酸トリル、カルバミン酸キシリル、カルバミン酸ビフェニル、カルバミン酸ナフチル、カルバミン酸アントリル、カルバミン酸フェナントリルなどが挙げられる。
【0039】
これらN−無置換カルバミン酸エステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
N−無置換カルバミン酸エステルとして、好ましくは、上記式(3)において、Rが総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であるN−無置換カルバミン酸エステル、より好ましくは、Rが総炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基であるN−無置換カルバミン酸エステルが挙げられる。
【0040】
アルコールは、例えば、1〜3級の1価のアルコールであって、例えば、下記式(4)で示される。
−OH (4)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を示す。)
上記式(4)において、Rが総炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、iso−プロパノール、ブタノール(1-ブタノール)、iso−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、ペンタノール、iso−ペンタノール、sec−ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール(1−オクタノール)、2−エチルヘキサノール、ノナノール、デカノール、イソデカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノールなどが挙げられる。
【0041】
また、上記式(4)において、Rが総炭素数6〜16の芳香族炭化水素基であるアルコールとしては、例えば、フェノール、ヒドロキシトルエン、ヒドロキシキシレン、ビフェニルアルコール、ナフタレノール、アントラセノール、フェナントレノールなどが挙げられる。
これらアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
アルコールとして、好ましくは、上記式(4)において、Rが炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基であるアルコール、より好ましくは、Rが炭素数2〜12の脂肪族炭化水素基であるアルコールが挙げられる。
また、詳しくは後述するが、カルバメートの生成に用いられるアルコールとして、好ましくは、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコール(後述)が挙げられる。
【0043】
そして、この方法では、上記した1級アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとを配合し、好ましくは、液相で反応させる。
1級アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの配合割合は、特に制限はなく、比較的広範囲において適宜選択することができる。
通常は、尿素およびN−無置換カルバミン酸エステルの配合量、および、アルコールの配合量が、1級アミンのアミノ基に対して等モル以上あればよく、そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールそのものを、この反応における反応溶媒として用いることもできる。
【0044】
なお、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルや、アルコールを反応溶媒として兼用する場合には、必要に応じて過剰量の尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルやアルコールが用いられるが、過剰量が多いと、反応後の分離工程での消費エネルギーが増大するので、工業生産上、不適となる。
そのため、尿素および/または上記したN−無置換カルバミン酸エステルの配合量は、カルバメートの収率を向上させる観点から、1級アミンのアミノ基1つに対して、0.5〜20倍モル、好ましくは、1〜10倍モル、さらに好ましくは、1〜5倍モル程度であり、アルコールの配合量は、1級アミンのアミノ基1つに対して、0.5〜100倍モル、好ましくは、1〜20倍モル、さらに好ましくは、1〜10倍モル程度である。
【0045】
また、この反応において、反応溶媒は必ずしも必要ではないが、例えば、反応原料が固体の場合や反応生成物が析出する場合には、反応溶媒を配合することにより操作性を向上させることができる。
このような反応溶媒は、反応原料である1級アミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、および、アルコールと、反応生成物であるカルバメートなどに対して不活性であるか反応性に乏しいものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサン、ペンタン、石油エーテル、リグロイン、シクロドデカン、デカリン類など)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、ブチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、メチルナフタレン、クロロナフタレン、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニルなど)、エーテル類(例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなど)、カーボネート類(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネートなど)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、アジポニトリル、ベンゾニトリルなど)、脂肪族ハロゲン化炭化水素類(例えば、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、1,4−ジクロロブタンなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)、ニトロ化合物類(例えば、ニトロメタン、ニトロベンゼンなど)や、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
【0046】
これら反応溶媒のなかでは、経済性、操作性などを考慮すると、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類が好ましく用いられる。また、このような反応溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、反応溶媒の配合量は、目的生成物のカルバメートが溶解する程度の量であれば特に制限されるものではないが、工業的には、反応液から反応溶媒を回収する必要があるため、その回収に消費されるエネルギーをできる限り低減し、かつ、配合量が多いと、反応基質濃度が低下して反応速度が遅くなるため、できるだけ少ない方が好ましい。より具体的には、1級アミン1質量部に対して、通常、0〜500質量部、好ましくは、0〜100質量部の範囲で用いられる。
【0047】
また、この反応においては、反応温度は、例えば、100〜350℃、好ましくは、150〜300℃の範囲において適宜選択される。反応温度がこれより低いと、反応速度が低下する場合があり、一方、これより高いと、副反応が増大して目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。
また、反応圧力は、通常、大気圧であるが、反応液中の成分の沸点が反応温度よりも低い場合には加圧してもよく、さらには、必要により減圧してもよい。
【0048】
また、反応時間は、例えば、0.1〜20時間、好ましくは、0.5〜10時間である。反応時間がこれより短いと、目的生成物であるカルバメートの収率が低下する場合がある。一方、これより長いと、工業生産上、不適となる。
また、この方法においては、触媒を用いることもできる。
触媒としては、特に制限されないが、例えば、リチウムメタノラート、リチウムエタノラート、リチウムプロパノラート、リチウムブタノラート、ナトリウムメタノラート、カリウム−tert−ブタノラート、マグネシウムメタノラート、カルシウムメタノラート、塩化スズ(II)、塩化スズ(IV)、酢酸鉛、リン酸鉛、塩化アンチモン(III)、塩化アンチモン(V)、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウム−イソブチラート、三塩化アルミニウム、塩化ビスマス(III)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)、硝酸銅(II)、ビス−(トリフェニル−ホスフィンオキシド)−塩化銅(II)、モリブデン酸銅、酢酸銀、酢酸金、酸化亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、亜鉛アセトニルアセタート、オクタン酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、ヘキシル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、ウンデシル酸亜鉛、酸化セリウム(IV)、酢酸ウラニル、チタンテトライソプロパノラート、チタンテトラブタノラート、四塩化チタン、チタンテトラフェノラート、ナフテン酸チタン、塩化バナジウム(III)、バナジウムアセチルアセトナート、塩化クロム(III)、酸化モリブデン(VI)、モリブデンアセチルアセトナート、酸化タングステン(VI)、塩化マンガン(II)、酢酸マンガン(II)、酢酸マンガン(III)、酢酸鉄(II)、酢酸鉄(III)、リン酸鉄、シュウ酸鉄、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、酢酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、ナフテン酸コバルト、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。
【0049】
さらに、触媒としては、例えば、Zn(OSOCF(別表記:Zn(OTf)、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSO、Zn(OSOCH(p−トルエンスルホン酸亜鉛)、Zn(OSO、Zn(BF、Zn(PF、Hf(OTf)(トリフルオロメタンスルホン酸ハフニウム)、Sn(OTf)、Al(OTf)、Cu(OTf)なども挙げられる。
【0050】
これら触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、触媒の配合量は、アミン1モルに対して、例えば、0.000001〜0.1モル、好ましくは、0.00005〜0.05モルである。触媒の配合量がこれより多くても、それ以上の顕著な反応促進効果が見られない反面、配合量の増大によりコストが上昇する場合がある。一方、配合量がこれより少ないと、反応促進効果が得られない場合がある。
【0051】
なお、触媒の添加方法は、一括添加、連続添加および複数回の断続分割添加のいずれの添加方法でも、反応活性に影響を与えることがなく、特に制限されることはない。
そして、この反応は、上記した条件で、例えば、反応容器内に、1級アミン、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、アルコール、および、必要により触媒、反応溶媒を仕込み、攪拌あるいは混合すればよい。そうすると、温和な条件下において、短時間、低コストかつ高収率で、例えば、上記式(1)で示される目的生成物であるカルバメートが生成する。
【0052】
この反応によるカルバメートの生成量は、アミン1モルに対して、カルバメートが、例えば、0.8モル以上、好ましくは、0.85モル以上である。すなわち、アミン1モルに対して、カルバメートは、例えば、80モル%以上、好ましくは、85モル%以上の割合で生成する。
また、この反応においては、アンモニアが副生される。
【0053】
また、この反応において、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、例えば、下記一般式(5)で示されるアルコールが副生される。
−OH (5)
(式中、Rは、上記式(3)のRと同意義を示す。)
なお、この反応において、反応型式としては、回分式、連続式いずれの型式も採用することができる。
【0054】
また、この反応は、好ましくは、副生するアンモニアを系外に流出させながら反応させる。さらには、N−無置換カルバミン酸エステルを配合する場合には、副生するアルコールを系外に留出させながら反応させる。
これにより、目的生成物であるカルバメートの生成を促進し、その収率を、より一層向上することができる。
【0055】
また、得られたカルバメートを単離する場合には、例えば、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、触媒、カルバメート、反応溶媒、副生するアンモニア、場合により副生するアルコールなどを含む反応液から、公知の分離精製方法によって、カルバメートを分離すればよい。
そして、この方法では、得られたカルバメートを熱分解し、イソシアネートおよびアルコールを生成させる。
【0056】
すなわち、この方法では、例えば、上記の方法によって得られたカルバメートを熱分解し、上記した1級アミンに対応する下記一般式(6)で示されるイソシアネート、および
−(NCO)n (6)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
副生物である下記一般式(7)で示されるアルコールを生成させる。
【0057】
−OH (7)
(式中、Rは、上記式(4)のRと同意義を示す。)
この熱分解は、特に限定されず、例えば、液相法、気相法などの公知の分解法を用いることができる。
気相法では、熱分解により生成するイソシアネートおよびアルコールは、気体状の生成混合物から、分別凝縮によって分離することができる。また、液相法では、熱分解により生成するイソシアネートおよびアルコールは、例えば、蒸留や、担持物質としての溶剤および/または不活性ガスを用いて、分離することができる。
【0058】
熱分解として、好ましくは、作業性の観点から、液相法が挙げられる。
このような方法において、カルバメートは、好ましくは、不活性溶媒の存在下において、熱分解される。
不活性溶媒は、少なくとも、カルバメートを溶解し、カルバメートおよびイソシアネートに対して不活性であり、かつ、熱分解時に反応しなければ(すなわち、安定であれば)、特に制限されないが、熱分解反応を効率よく実施するには、生成するイソシアネートよりも高沸点であることが好ましい。このような不活性溶媒としては、例えば、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジドデシルなどのエステル類、例えば、ジベンジルトルエン、トリフェニルメタン、フェニルナフタレン、ビフェニル、ジエチルビフェニル、トリエチルビフェニルなどの熱媒体として常用される芳香族系炭化水素や脂肪族系炭化水素などが挙げられる。
【0059】
また、不活性溶媒として、好ましくは、イソシアネート残渣(後述)の分解において用いられる溶媒(後述)と同種の溶媒も挙げられ、より好ましくは、イソシアネート残渣(後述)を分解した後に、分離および回収される溶媒(後述)が挙げられる。
すなわち、好ましくは、イソシアネート残渣(後述)を分解した後に回収される溶媒(後述)の存在下において、カルバメートを熱分解する。
【0060】
不活性溶媒の配合量は、カルバメート1質量部に対して0.001〜100質量部、好ましくは、0.01〜80質量部、より好ましくは、0.1〜50質量部の範囲である。
また、液相法におけるカルバメートの熱分解反応は、可逆反応であるため、好ましくは、熱分解反応の逆反応(すなわち、上記一般式(6)で示されるイソシアネートと、上記一般式(7)で示されるアルコールとのウレタン化反応)を抑制するため、カルバメートを熱分解するとともに、反応混合物から上記一般式(6)で示されるイソシアネート、および/または、上記一般式(7)で示されるアルコールを公知の方法により抜き出し、それらを分離する。
【0061】
熱分解反応の反応条件として、好ましくは、カルバメートを良好に熱分解できるとともに、熱分解において生成したイソシアネート(上記一般式(6))およびアルコール(上記一般式(7))が蒸発し、これによりカルバメートとイソシアネートとが平衡状態とならず、さらには、イソシアネートの重合などの副反応が抑制される反応条件が挙げられる。
【0062】
このような反応条件として、より具体的には、熱分解温度は、通常、350℃以下であり、好ましくは、80〜350℃、より好ましくは、100〜300℃である。80℃よりも低いと、実用的な反応速度が得られない場合があり、また、350℃を超えると、イソシアネートの重合など、好ましくない副反応を生じる場合がある。また、熱分解反応時の圧力は、上記の熱分解反応温度に対して、生成するアルコールが気化し得る圧力であることが好ましく、設備面および用役面から実用的には、0.133〜90kPaであることが好ましい。
【0063】
また、この熱分解に用いられるカルバメートは、精製したものでもよいが、上記反応(すなわち、1級アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応)の終了後に、過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、触媒、反応溶媒、副生するアンモニア、場合により副生するアルコールを回収して、分離されたカルバメートの粗原料を用いて、引き続き熱分解してもよい。
【0064】
なお、上記カルバメートを除く各成分(過剰(未反応)の尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル、過剰(未反応)のアルコール、触媒、反応溶媒、副生するアンモニア、場合により副生するアルコールなど)の回収方法としては、特に制限されないが、例えば、減圧蒸留などが挙げられる。このような場合には、例えば、上記各成分を軽沸分として回収するとともに、カルバメートを重沸分として分離することができる。
【0065】
さらに、この方法では、必要により、触媒を添加することもできる。
触媒は、それらの種類により異なるが、上記反応時、反応後の蒸留分離の前後、カルバメートの分離の前後の、いずれかに添加すればよい。
熱分解に用いられる触媒としては、イソシアネートと水酸基とのウレタン化反応に用いられる、Sn、Sb、Fe、Co、Ni、Cu、Cr、Ti、Pb、Mo、Mnなどから選ばれる1種以上の金属単体またはその酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、リン酸塩、有機金属化合物などの金属化合物が用いられる。これらのうち、この熱分解においては、Fe、Sn、Co、Sb、Mnが副生成物を生じにくくする効果を発現するため、好ましく用いられる。
【0066】
Snの金属触媒としては、例えば、酸化スズ、塩化スズ、臭化スズ、ヨウ化スズ、ギ酸スズ、酢酸スズ、シュウ酸スズ、オクチル酸スズ、ステアリン酸スズ、オレイン酸スズ、リン酸スズ、二塩化ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシジスタノキサンなどが挙げられる。
Fe、Co、Sb、Mnの金属触媒としては、例えば、それらの酢酸塩、安息香酸塩、ナフテン酸塩、アセチルアセトナート塩などが挙げられる。
【0067】
なお、触媒の配合量は、金属単体またはその化合物として、反応液に対して0.0001〜5質量%の範囲、好ましくは、0.001〜1質量%の範囲である。
また、この熱分解反応は、カルバメート、触媒および不活性溶媒を一括で仕込む回分反応、また、触媒を含む不活性溶媒中に、減圧下でカルバメートを仕込んでいく連続反応のいずれでも実施することができる。
【0068】
また、カルバメートの熱分解反応により得られる分離液からは、カルバメートの生成に用いられるアルコール(上記一般式(4))と同種のアルコール(上記一般式(7))が得られる場合がある。このような場合において、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコール(上記一般式(7))は、上記したように分離および回収された後、好ましくは、カルバメートの生成において、原料のアルコール(上記一般式(4))として、用いられる。
【0069】
また、熱分解では、イソシアネートおよびアルコールが生成するとともに、副反応によって、例えば、アロファネート、アミン類、尿素、炭酸塩、カルバミン酸塩、二酸化炭素などが生成する場合があるため、必要により、得られたイソシアネートは、公知の方法により精製される。
なお、これにより得られるイソシアネート(上記一般式(6))としては、製造プラントによって製造されるイソシアネート(分解対象化合物としてのカルバメート(上記式(1))や、製造原料としてのアミン(上記式(2))の種類)に応じて、例えば、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)などが挙げられる。
【0070】
そして、このような方法において、カルバメートの熱分解反応で得られた分解液から、イソシアネートおよびアルコールを除去すると、イソシアネート残渣が得られる。
すなわち、例えば、カルバメートを、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により製造し、そのカルバメートを熱分解することによりイソシアネートを製造する場合には、例えば、得られるカルバメートやイソシアネート、あるいは、それらの中間体などが、例えば、多量化、ビウレット化およびアロファネート化などの好ましくない重合反応を惹起する場合がある。そのような場合には、例えば、尿素誘導体(ビウレット体)、カルバメート誘導体(アロファネート体)などの副生物が、イソシアネート残渣として得られる。なお、イソシアネート残渣には、例えば、未反応の尿素やカルバメートなどが、含まれる場合もある。
【0071】
このようなイソシアネート残渣は、通常、廃棄処理されているが、地球環境などの観点から廃棄処理物を低減することが要求され、また、回収されたイソシアネート残渣を有効利用する方法が要求されているため、この方法では、得られたイソシアネート残渣を、溶媒存在下、高圧高温水に接触させて、アミンに分解する。
溶媒としては、イソシアネート基やアミノ基などに対して不活性であるか反応性に乏しく、かつ、耐加水分解性を示す(すなわち、イソシアネート残渣の加水分解時において反応しない)ものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、芳香族炭化水素類などが挙げられる。
【0072】
芳香族炭化水素類としては、例えば、ベンゼン(沸点:80℃)、トルエン(沸点:111℃)、o−キシレン(沸点:144℃)、m−キシレン(沸点:139℃)、p−キシレン(沸点:138℃)、エチルベンゼン(沸点:136℃)、イソプロピルベンゼン(沸点:152℃)、ブチルベンゼン(沸点:185℃)、シクロヘキシルベンゼン(沸点:237〜340℃)、テトラリン(沸点:208℃)、クロロベンゼン(沸点:132℃)、o−ジクロロベンゼン(沸点:180℃)、1−メチルナフタレン(沸点:245℃)、2−メチルナフタレン(沸点:241℃)、1−クロロナフタレン(沸点:263℃)、2−クロロナフタレン(沸点:264〜266℃)、トリフェニルメタン(沸点:358〜359℃(754mmHg))、1−フェニルナフタレン(沸点:324〜325℃)、2−フェニルナフタレン(沸点:357〜358℃)、ビフェニル(沸点:255℃)などが挙げられる。
【0073】
また、このような溶媒は、市販品としても入手可能であり、例えば、バーレルプロセス油B−01(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルプロセス油B−03(芳香族炭化水素類、沸点:280℃)、バーレルプロセス油B−04AB(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルプロセス油B−05(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルプロセス油B−27(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルプロセス油B−28AN(芳香族炭化水素類、沸点:430℃)、バーレルプロセス油B−30(芳香族炭化水素類、沸点:380℃)、バーレルサーム200(芳香族炭化水素類、沸点:382℃)、バーレルサーム300(芳香族炭化水素類、沸点:344℃)、バーレルサーム400(芳香族炭化水素類、沸点:390℃)、バーレルサーム1H(芳香族炭化水素類、沸点:215℃)、バーレルサーム2H(芳香族炭化水素類、沸点:294℃)、バーレルサーム350(芳香族炭化水素類、沸点:302℃)、バーレルサーム470(芳香族炭化水素類、沸点:310℃)、バーレルサームPA(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、バーレルサーム330(芳香族炭化水素類、沸点:257℃)、バーレルサーム430(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、(以上、松村石油社製)、NeoSK−OIL1400(芳香族炭化水素類、沸点:391℃)、NeoSK−OIL1300(芳香族炭化水素類、沸点:291℃)、NeoSK−OIL330(芳香族炭化水素類、沸点:331℃)、NeoSK−OIL170(芳香族炭化水素類、沸点:176℃)、NeoSK−OIL240(芳香族炭化水素類、沸点:244℃)、KSK−OIL260(芳香族炭化水素類、沸点:266℃)、KSK−OIL280(芳香族炭化水素類、沸点:303℃)、(以上、綜研テクニックス社製)などが挙げられる。
【0074】
このような溶媒は、単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、溶媒の配合量は、イソシアネート残渣1質量部に対して、例えば、0.05〜9.00質量部、好ましくは、0.10〜5.00質量部である。
イソシアネート残渣の分解における溶媒として、好ましくは、上記のカルバメートの熱分解において用いられる溶媒と同種の溶媒が挙げられる。このような場合において、より好ましくは、イソシアネート残渣を分解した後、溶媒を回収し、その溶媒を、カルバメートの熱分解に用いる。
【0075】
イソシアネート残渣の分解と、イソシアネート残渣を分解した後、溶媒を回収し、その溶媒を、カルバメートの熱分解に用いれば、コスト性および作業性を向上することができる。
また、このような溶媒として、好ましくは、沸点が250℃以上の芳香族炭化水素類が挙げられる。
【0076】
溶媒として、沸点が250℃以上の芳香族炭化水素類を用いれば、上記カルバメートの熱分解においてイソシアネートの回収率を良好とすることができる。
高圧高温水は、高圧、すなわち、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaに昇圧され、かつ、高温、すなわち、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃に加熱された水であって、公知の方法により加熱および加圧される。
【0077】
なお、イソシアネート残渣の分解圧力は、3〜30MPa、好ましくは、6〜25MPa、さらに好ましくは、6〜20MPaである。また、イソシアネート残渣の分解温度は、190〜350℃、好ましくは、200〜300℃である。
また、高圧高温水としては、加水比(高圧高温水/イソシアネート残渣の質量比)が、例えば、0.5〜10、好ましくは、1〜5に制御される。
【0078】
これによって、イソシアネート残渣が、高圧高温水によって加水分解され、分解生成物として、対応するアミンが生成し、また、二酸化炭素および水などが副生する。
このとき、分解されるイソシアネート残渣が、上記したように、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により生成されるカルバメートを熱分解して得られるイソシアネート残渣である場合には、対応するアミンとして、下記一般式(8)で示されるアミンが生成する。
【0079】
−(NH)n (8)
(式中、Rは、上記式(1)のRと同意義を、nは、上記式(1)のnと同意義を示す。)
なお、このようなアミンは、例えば、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート(MDI)に対応するポリメチレンポリフェニレンポリアミン(MDA)、トリレンジイソシアネート(TDI)に対応するトリレンジアミン(TDA)、キシリレンジイソシアネート(XDI)に対応するキシリレンジアミン(XDA)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)に対応するテトラメチルキシリレンジアミン(TMXDA)、ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン(NBDI)に対応するビス(アミノメチル)ノルボルナン(NBDA)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)に対応する3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミン(IPDA)、4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)に対応する4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)(H12MDA)、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)に対応するビス(アミノメチル)シクロヘキサン(HXDA)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)に対応するヘキサメチレンジアミン(HDA)、ペンタメチレンジイソシアネートに対応するペンタメチレンジアミン(PDA)などが挙げられる。
【0080】
すなわち、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を分解すると、カルバメートおよびイソシアネートの製造に用いられるアミン(上記一般式(2))と同種のアミン(上記一般式(8))が得られる場合がある。このような場合において、イソシアネート残渣を分解して得られるアミンは、分離および回収された後、好ましくは、上記したカルバメートの生成において、原料アミン(上記一般式(2))として用いられる。
【0081】
アミンの分離方法としては、公知の方法でよく、好ましくは、蒸留が挙げられる。
また、この方法では、経済性、操作性などを考慮し、好ましくは、イソシアネート残渣を分解した後、溶媒を分離回収し、カルバメートの熱分解に用いる。すなわち、この方法では、カルバメートを、イソシアネート残渣を分解した後に回収される溶媒の存在下において、熱分解する。
【0082】
そして、この熱分解反応では、上記で得られたカルバメートが熱分解されることによって、上記したように、アミンに対応するイソシアネートを得ることができるので、例えば、ポリウレタンの原料として工業的に用いられるポリイソシアネートを、簡易かつ効率的に製造することができる。
図1は、本発明のイソシアネート残渣の処理方法が採用されるプラントの一実施形態を示す概略構成図である。
【0083】
以下において、上記したイソシアネート残渣の処理方法が工業的に実施される場合におけるプラントの一実施形態について、図1を参照して説明する。
図1において、このプラント1は、尿素法でイソシアネートを製造するとともにイソシアネート残渣を得て、そのイソシアネート残渣に対して、上記したイソシアネート残渣の処理方法を採用するイソシアネートの製造装置であって、反応装置2と、熱分解装置3と、残渣分解装置4とを備えている。
【0084】
反応装置2は、プラント1において、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により、カルバメートを生成するために設備されている。
この反応装置2は、反応槽5と、反応槽5に接続されるアミン供給管6、尿素供給管7およびアルコール供給管8とを備えている。
【0085】
反応槽5は、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとをカルバメート化反応させて、カルバメートを製造するためのカルバメート化反応槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
このような反応槽5には、図示しないが、必要により、例えば、反応槽5に触媒を供給する触媒供給管、反応槽5内を不活性ガス(例えば、窒素ガスなど)で置換するための不活性ガス供給管、反応槽5内を攪拌するための攪拌装置などが備えられている。
【0086】
アミン供給管6は、反応槽5にアミンを供給するためのアミン供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽5に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、アミンが導入されるアミン導入ラインに接続されている。
このようなアミン供給管6には、その流れ方向途中において、アミン還流管30(後述)の下流側端部が接続されている。これにより、残渣分解槽15(後述)において得られたアミンが、アミン供給管6に還流、および、反応槽5に供給可能とされている。
【0087】
尿素供給管7は、反応槽5に尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルを供給するための、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽5に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルが導入される尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステル導入ラインに接続されている。
【0088】
アルコール供給管8は、反応槽5にアルコールを供給するためのアルコール供給ラインであり、その下流側端部が、反応槽5に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、アルコールが導入されるアルコール導入ラインに接続されている。
このようなアルコール供給管8には、その流れ方向途中において、アルコール還流管32(後述)の下流側端部が接続されている。これにより、熱分解槽10(後述)において分離されたアルコールが、アルコール供給管8に還流、および、反応槽5に供給可能とされている。
【0089】
熱分解装置3は、プラント1において、カルバメートをイソシアネートおよびアルコールに分解するとともに、その分解液からイソシアネート残渣を分離するために設備されている。
この熱分解装置3は、熱分解槽10と、熱分解槽10に接続されるカルバメート輸送管11、溶媒第1供給管12およびイソシアネート排出管13とを備えている。
【0090】
熱分解槽10は、反応装置2において得られたカルバメートを加熱して、イソシアネートおよびアルコールに分解する分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
カルバメート輸送管11は、反応装置2において製造されたカルバメートを、熱分解槽10に輸送するためのカルバメート輸送ラインであって、その下流側端部が、熱分解槽10に接続されている。また、その上流側端部が、反応装置2における反応槽5に接続されている。
【0091】
溶媒第1供給管12は、熱分解槽10に溶媒を供給するための溶媒第1供給ラインであり、その下流側端部が、熱分解槽10に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、溶媒が導入される溶媒第1導入ラインに接続されている。
このような溶媒第1供給管12には、その流れ方向途中において、溶媒還流管31(後述)の下流側端部が接続されている。これにより、残渣分解槽15(後述)において用いられ、回収された溶媒が、溶媒第1供給管12に還流、および、熱分解槽10に供給可能とされている。
【0092】
イソシアネート排出管13は、カルバメートの熱分解により得られたイソシアネートを、プラント1の外に排出するためのイソシアネート排出ラインであり、その上流側端部が熱分解槽10に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、イソシアネートが精製などされるイソシアネート精製ラインに接続されている。
残渣分解装置4は、プラント1において、熱分解装置3において得られたイソシアネート残渣を、高圧高温水によりアミンに分解するために設備されている。
【0093】
この残渣分解装置4は、残渣分解槽15と、残渣分解槽15に接続されるイソシアネート残渣輸送管16、溶媒第2供給管17、水供給管18および2次残渣排出管19とを備えている。
残渣分解槽15は、イソシアネート残渣と高圧高温水とを接触させて、イソシアネート残渣を、アミンに加水分解するための加水分解槽であって、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
【0094】
このような残渣分解槽15には、図示しないが、必要により、例えば、残渣分解槽15内を水(例えば、イオン交換水など)で満たすための水導入管、残渣分解槽15内を攪拌するための攪拌装置などが備えられている。
イソシアネート残渣輸送管16は、熱分解装置3において分離されたイソシアネート残渣を、残渣分解槽15に輸送するためのイソシアネート残渣輸送ラインであって、その下流側端部が、残渣分解槽15に接続されている。また、その上流側端部が、熱分解装置3における熱分解槽10に接続されている。
【0095】
また、イソシアネート残渣輸送管16の途中には、必要により、イソシアネート残渣を残渣分解槽15に向けて圧力輸送するための残渣圧送ポンプ(図示せず)が介在され、さらに、必要により、残渣圧送ポンプ(図示せず)の下流側に、イソシアネート残渣を加熱するための残渣加熱器(図示せず)が介在される。
溶媒第2供給管17は、残渣分解槽15に溶媒を供給するための溶媒第2供給ラインであり、その下流側端部が、残渣分解槽15に接続されている。また、その上流側端部が、図示しないが、溶媒が導入される溶媒第2導入ラインに接続されている。
【0096】
また、溶媒第2供給管17の途中には、必要により、溶媒を残渣分解槽15に向けて圧力輸送するための溶媒圧送ポンプ(図示せず)が介在され、さらに、必要により、溶媒圧送ポンプ(図示せず)の下流側に、溶媒を加熱するための溶媒加熱器(図示せず)が介在される。
水供給管18は、高圧高温水を残渣分解槽15に供給するための水供給ラインであり、耐熱耐圧配管からなり、その下流側端部が、残渣分解槽15に接続されている。また、その上流側端部が、図示しない水(プロセス回収水やイオン交換水など)が給水される給水ラインに接続されている。
【0097】
また、水供給管18の途中には、高圧高温水を残渣分解槽15に向けて圧力輸送するための水圧送ポンプ21が介在されている。さらに、水供給管18の途中には、水圧送ポンプ21の下流側に、水を加熱するための水加熱器20が介在されている。
2次残渣排出管19は、イソシアネート残渣を高圧高温水と接触させたときに、アミンなどに分解されることなく残存する成分(2次残渣)を排出するための2次残渣排出ラインであって、その上流側端部が残渣分解槽15に接続されている。また、その下流側端部が、図示しないが、2次残渣が貯留される2次残渣貯留槽に接続されている。
【0098】
また、このようなプラント1は、さらに、アミン還流管30、溶媒還流管31およびアルコール還流管32を備えている。
アミン還流管30は、残渣分解装置4においてイソシアネート残渣を分解して得られたアミンを、反応装置2におけるアミン供給管6に還流するためのアミン還流ラインであって、その上流側端部が残渣分解槽15に接続されるとともに、その下流側端部がアミン供給管6の流れ方向途中に接続されている。
【0099】
溶媒還流管31は、残渣分解装置4においてイソシアネート残渣の分解に用いられ、回収された溶媒を、熱分解装置3における溶媒第1供給管12に還流するための溶媒還流ラインであって、その上流側端部が残渣分解槽15に接続されるとともに、その下流側端部が溶媒第1供給管12の流れ方向途中に接続されている。
アルコール還流管32は、熱分解装置3においてイソシアネートを熱分解して得られたアルコールを、反応装置2におけるアルコール供給管8に還流するためのアルコール還流ラインであって、その上流側端部が熱分解槽10に接続されるとともに、その下流側端部がアルコール供給管8の流れ方向途中に接続されている。
【0100】
次に、このプラント1によって、カルバメートおよびイソシアネートを製造し、その後、得られたイソシアネート残渣を分解する方法について、説明する。
この方法では、まず、反応装置2において、カルバメートを製造する。
このカルバメートの製造においては、反応装置2が連続運転され、カルバメートの原料であるアミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとが、アミン供給管6と、尿素供給管7と、アルコール供給管8とから、それぞれ上記割合で圧力輸送され、反応槽5に対して、連続的に供給される。また、必要により、これら原料成分とともに、触媒が、触媒供給管(図示せず)から供給される。
【0101】
そして、この方法では、反応槽5において、アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとがカルバメート化反応し、カルバメートが製造される。
また、このようにして得られたカルバメートは、反応槽5において分離された後、カルバメート輸送管11に供給され、熱分解装置3に圧力輸送される。
【0102】
次いで、この方法では、熱分解装置3において、カルバメートを熱分解する。
このカルバメートの熱分解においては、熱分解装置3が連続運転され、反応装置2(反応槽5)からカルバメート輸送管11を介して供給されるカルバメートが、熱分解槽10において、上記条件で加熱および熱分解される。
これにより、分解液として、イソシアネートおよびアルコールが得られ、また、分解液からイソシアネートおよびアルコールを分離することにより、イソシアネート残渣が得られる。
【0103】
一方、熱分解槽10において得られたアルコールは、分解液から分離された後、アルコール還流管32に導入され、アルコール供給管8に還流される。これにより、アルコールは、反応槽5に供給される。
そして、熱分解槽10において得られたイソシアネート残渣は、イソシアネート残渣輸送管16に供給され、残渣分解装置4に圧力輸送される。
【0104】
次いで、この方法では、残渣分解装置4において、イソシアネート残渣を分解する。
このイソシアネート残渣の分解においては、残渣分解装置4が連続運転され、熱分解装置3(熱分解槽10)からイソシアネート残渣輸送管16を介して供給されるイソシアネート残渣が、残渣分解槽15において、上記条件で分解される。
すなわち、この方法では、イソシアネート残渣が、イソシアネート残渣輸送管16を介して、例えば、3〜30MPaの供給圧力に昇圧され、かつ、例えば、190〜350℃の供給温度に加熱された状態で、残渣分解槽15に供給される。
【0105】
また、溶媒が、溶媒第2供給管17を介して、例えば、3〜30MPaの供給圧力に昇圧され、かつ、例えば、190〜350℃の供給温度に加熱された状態で、残渣分解槽15に供給される。
一方、給水ラインから水供給管18に流入される水は、水圧送ポンプ21によって、水供給管18内を、残渣分解槽15に向けて圧力輸送され、また、水加熱器20によって、例えば、190〜350℃に加熱される。これによって、水は、3〜30MPaに昇圧され、かつ、190〜350℃に加熱された高圧高温水となって残渣分解槽15に流入する。
【0106】
残渣分解槽15では、例えば、槽内温度(分解温度)190〜350℃、槽内圧力(分解圧力)3〜30MPaに制御されており、また、残渣圧送ポンプ(図示せず)および水圧送ポンプ21の制御により、加水比(高圧高温水/ポリイソシアネート残渣の質量比)が、例えば、0.5〜10に制御されている。
これによって、残渣分解槽15では、イソシアネート残渣が、高圧高温水によって加水分解され、分解生成物として、対応するアミンが生成し、また、2次残渣、二酸化炭素および水などが副生する。
【0107】
なお、残渣分解槽15において得られた分解生成物は、図示しないが、大気圧まで減圧された後、脱水塔にて、それぞれに分離され、アミンが回収される。
そして、回収されたアミンは、アミン還流管30に導入され、アミン供給管6に還流される。これにより、アミンは、反応槽5に供給される。
また、残渣分解槽15において用いられた溶媒は、公知の方法により回収された後、溶媒還流管31に導入され、溶媒第1供給管12に還流される。これにより、溶媒は、熱分解槽10に供給される。
【0108】
なお、残渣分解槽15において得られた2次残渣は、2次残渣排出管19を介して2次残渣貯留槽(図示せず)に輸送され、その2次残渣貯留槽(図示せず)で一時的に貯留された後、例えば、焼却処理される。
また、このようなプラント1は、必要により、適宜の位置において、蒸留装置、濾過装置、精製装置など公知の処理装置を備えることができる。
【0109】
そして、このようなプラント1によれば、連続的にカルバメートおよびイソシアネートを製造するとともに、イソシアネート残渣を分解し、イソシアネート残渣の分解により得られるアミンや、イソシアネート残渣の分解に用いられる溶媒、さらには、イソシアネートの製造において副生するアルコールを還流させ、効率よく利用することができる。
なお、以上、カルバメートの処理方法について説明したが、本発明の方法においては、脱水工程などの前処理工程、中間工程、または、精製工程および回収工程などの後処理工程など、公知の工程を含んでいてもよい。
【実施例】
【0110】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
<2,4−トリレンジアミンの回収率(mol%)の定義>
2,4−ジアミノトルエン(以下2,4−TDA)の回収率(mol%)は、反応器へ導入した濾残アセトン不溶解分がすべて2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエン(以下2,4−TDC)であるとし、さらにこれがすべて2,4−TDAとして回収されるとしたときの理論回収量(mol)に対する、実際に得られた2,4−TDA(mol)の割合である。
<イソシアネート残渣(尿素および/またはカルバメートおよびその誘導体を含有する化合物)の調製>
(調製例1)
(1)カルバメート化反応
圧力制御弁、還流冷却器、気液分離器、攪拌装置を備えた内容量1LのSUS製オートクレーブに、2,4−TDA(76.5g:0.626mol)、尿素(113g:1.87mol)および1−ブタノール(255g:3.44mol)の混合物を仕込み、さらに、触媒としてのp−トルエンスルホン酸亜鉛(0.64g:1.57mmol)と、1−ブタノール(23.4g:316mmol)との混合物を仕込み、窒素ガスを毎分1L流通、500rpmで攪拌させながら、反応温度215℃で保つように内圧を圧力制御弁で調節し、4時間反応させた。
【0111】
反応液の一部を採取して定量したところ、2,4−ビス(ブトキシカルボニルアミノ)トルエンが、2,4−ジアミノトルエンに対して86.4mol%の収率で生成していることが確認された。また、モノ(ブトキシカルボニルアミノ)アミノトルエンが、3.2mol%の収率で生成していることも確認された。
(2)軽沸分の減圧留去
攪拌装置と冷却管を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記カルバメート化反応により得られた反応液375gを仕込み、230rpmで攪拌させながら真空ポンプで容器内を2kPaまで減圧した。冷却管に25℃の循環水を流した状態で、容器内を100℃まで昇温し濃縮した。その後、循環水温度を80℃に設定し、容器内を180℃まで昇温して濃縮し、褐色の濃縮液193gを得た。
(3)カルバメートの熱分解、および、イソシアネート残渣の分離回収
攪拌装置、上部に還流管の付いた精留塔を備えた内容量500mLのガラス製4つ口フラスコに、上記軽沸分の減圧留去で得た濃縮液を72g、溶媒としてバーレルプロセス油B−05(松村石油社製)を140gそれぞれ仕込み、還流管の循環水温度を90℃として、230rpmで攪拌させながら、真空ポンプにて系内を100hPaに減圧した。
【0112】
次いで、反応器内部温度計の温調設定を250℃に設定し、昇温させることにより、塔頂温度を上昇させた。このとき、還流管内にトリレンジイソシアネート(以下TDI)が凝縮しはじめたことを確認した後、還流比5(=還流10秒/留出2秒)に設定して還流液を留出させた。
1時間後に留出がなくなり、精留塔TOP温度が低下したことを確認した後、加熱を停止させ、反応液を5A濾紙にて濾過し、濾液と濾残とに分離した。
【0113】
その後、濾残を、反応容器の壁に付着した固形物とともに、アセトンで洗浄、乾燥させることにより回収し、黄褐色の濾残アセトン不溶解分7.0gを得た。
<イソシアネート残渣(カルバメート熱分解残渣)の加水分解>
(実施例1)
熱電対、圧力調整弁を備えた内容量36mLのSUS製オートクレーブに、製造例1で得られた濾残アセトン不溶解分を3.0g、バーレルプロセス油B−05を5.8g仕込み、さらに系内をイオン交換水で満たした。反応器を電気炉に入れ、反応温度280℃、内圧20MPaを保つように圧力調整弁で調節しながら20分反応させた。なお、このときの加水比(イオン交換水(高圧高温水)/濾残アセトン不溶解分(イソシアネート残渣)の質量比)は、9に設定した。
【0114】
反応器を室温まで放冷した後、回収した反応液中に固形物は残っておらず、濾残はすべて分解していることが確認された。反応液の一部を採取して、液体クロマトグラフ(UV検出器(254nm)およびRI検出器)にて定量したところ、2,4−TDAの回収率は83.5モル%であることがわかった。
(実施例2)
反応温度を190℃とした以外は、実施例1と同様の方法にてカルバメート熱分解残渣の分解反応を行った。
【0115】
反応器を室温まで放冷した後、回収した反応液中に固形物は残っておらず、反応液のHPLC測定を行った結果、2,4−TDAの回収率は33.9モル%であることがわかった。
(比較例1)
熱電対、圧力調整弁を備えた内容量36mLのSUS製オートクレーブに、製造例1で得られた濾残アセトン不溶解分を3.0gを仕込み、バーレルプロセス油B−05は仕込まずに、系内をイオン交換水で満たした。その結果、濾残アセトン不溶解分は、水をはじき、まったく濡れずに液面に浮上した。その状態のまま反応器を電気炉に入れ、圧力を圧力調整弁により20MPaに保持されるようにした上で、反応器内を260℃まで昇温中に、ラインの閉塞が観察されたために反応を中断した。
<バーレルプロセスオイルB−05の耐加水分解性の確認>
(参考例1)
製造例1の熱分解に使用している溶媒が、熱分解により得られるイソシアネート残渣の加水分解条件下において反応しないことを、以下の操作により確認した。
【0116】
実施例1と同様の反応器にバーレルプロセス油B−05を7.3g仕込み、さらに系内をイオン交換水で満たした。反応器を電気炉に入れ、320℃まで加熱後20分間保持し、加熱を停止した。反応時の圧力は、圧力調整弁により20MPaに保持されるようにした。反応器を室温まで放冷した後、回収した反応液のガスクロマトグラフ測定を行った結果、標品と比較して有意な差は確認されず、分解物と考えられるピークは検出されなかった。
【符号の説明】
【0117】
1 プラント
2 反応装置
3 熱分解装置
4 残渣分解装置
5 反応槽
6 アミン供給管
7 尿素供給管
8 アルコール供給管
10 熱分解槽
11 カルバメート輸送管
12 溶媒第1供給管
13 イソシアネート排出管
15 残渣分解槽
16 イソシアネート残渣輸送管
17 溶媒第2供給管
18 水供給管
19 2次残渣排出管
20 水加熱器
21 圧送ポンプ
30 アミン還流管
31 溶媒還流管
32 アルコール還流管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から、イソシアネートおよびアルコールを分離したイソシアネート残渣を、溶媒存在下、高圧高温水に接触させて、アミンに分解することを特徴とする、イソシアネート残渣の処理方法。
【請求項2】
溶媒が、沸点が250℃以上の芳香族炭化水素類であることを特徴とする、請求項1に記載のイソシアネート残渣の処理方法。
【請求項3】
カルバメートが、
アミンと、尿素および/またはN−無置換カルバミン酸エステルと、アルコールとの反応により生成されるカルバメートであることを特徴とする、請求項1または2に記載のイソシアネート残渣の処理方法。
【請求項4】
カルバメートの生成に用いられるアミンが、イソシアネート残渣を分解して得られるアミンであり、
カルバメートの生成に用いられるアルコールが、カルバメートの熱分解反応により得られる分解液から分離されるアルコールであることを特徴とする、請求項3に記載のイソシアネート残渣の処理方法。
【請求項5】
イソシアネート残渣を分解した後、溶媒を回収し、
カルバメートを、イソシアネート残渣を分解した後に回収される溶媒の存在下において熱分解することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のイソシアネート残渣の処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−132175(P2011−132175A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293387(P2009−293387)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】