説明

イソブチレン側鎖を有する重縮合物

本発明は、1つのポリイソブチレン側鎖及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(I)と、1つのイオン化可能な官能基及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(II)とを有し、構造単位(I)は構造単位(II)とは異なりかつ使用されたアルデヒドは酸又はエステル官能基を有しない、芳香族化合物及び/又はヘテロ芳香族化合物及びアルデヒドをベースとする重縮合生成物に関する。その製造方法並びに水硬性結合剤用の添加物としての使用も開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのポリイソブチレン側鎖及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位と、1つのイオン性官能基を有する少なくとも1つの他の芳香族又はヘテロ芳香族構造単位を有する重縮合生成物、並びにその製造方法、並びにその使用に関する。
【0002】
芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物及びアルデヒドをベースとする重縮合生成物は、以前から、プラスチック及び塗料として重要である。例えば、フェノール及びホルムアルデヒドからなる重縮合生成物は、発明者のBeakeland (1909)によりベークライトとして名付けられた熱安定性材料である。ベークライトは、工業的に生産された最初のプラスチックであった。さらに、例えば、商品名Wolfatite又はLevatiteとして公知である特別なフェノール−ホルムアルデヒド縮合物は、イオン交換体として使用することができる。
【0003】
DE 2354995は、潤滑剤添加物としての重縮合物の使用を記載している。この製造に関して、アルキルフェノールとアルデヒドとの縮合が開示されていて、この場合使用されるアルデヒドは、酸基又はエステル基を有する。アルキルフェノールとして、ポリイソブチレン置換フェノールも使用される。
【0004】
WO 2006/042709から公知の、5〜10個のC原子を有する芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物又は少なくとも1つのオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を有するヘテロ芳香族化合物及びホルムアルデヒド、グリオキシル酸及びベンズアルデヒドの群から選択されるアルデヒドをベースとする重縮合生成物は、無機結合剤懸濁物用の分散剤として使用される。
【0005】
この種の重縮合生成物は、セメント結合剤系中での水の割合の低減を可能にする。それにより、高い耐圧性及び硬化した結合剤マトリックスの緻密な構造を達成することができる。できる限り緻密な構造は、コンクリート建造物の耐久性のために極めて重要である、それというのも、この結合剤マトリックスにより物質輸送が困難になり、鉄筋は腐食から保護されるためである。先行技術に関して、コンクリート建造物の耐久性の更なる改善が極めて重要である。
【0006】
従って、本発明の課題は、コンクリート建造物の耐久性を更に向上させ、かつ特に鉄筋を腐食から保護するセメント結合剤系の添加剤を開発することであった。
【0007】
前記課題の解決策は、1つのポリイソブチレン側鎖及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(I)と、1つのイオン化可能な官能基及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(II)とを有し、構造単位(I)は構造単位(II)とは異なりかつ使用されたアルデヒドは酸又はエステル官能基を有しない、芳香族化合物及び/又はヘテロ芳香族化合物及びアルデヒドをベースとする重縮合生成物である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】モルタル角柱中の重縮合物の疎水化作用の試験の結果を示すグラフ。
【0009】
本発明による流動化剤は一方で、セメント結合剤系の水必要量を減らし、従って公知のように硬化された結合剤マトリックスのより緻密な構造が生じることが見出された。更に、本発明による重縮合物によって、溶けた、特にイオン性の物質の結合剤マトリックス中への移動能力も意外にも著しく低下し、それにより鉄筋は効果的に腐食から保護される。特に、この場合、フレッシュコンクリートのワーカビリティは、この重縮合生成物のポリイソブチレン側鎖の疎水性の特性によって不利な影響を及ぼされないことが意外であった。
【0010】
この構造単位(I)のポリイソブチレン側鎖は、有利な実施態様の場合に、少なくとも3つのイソブチレン単位、特に3〜200のイソブチレン単位、特に有利に4〜100のイソブチレン単位及び殊に有利に4〜50のイソブチレン単位を有する。
【0011】
有利な実施態様の場合には、本発明による重縮合生成物は、構造単位(I)を0.01〜99.9質量%、有利に1.0〜99.0質量%、特に2.0〜95.0質量%、特に有利に5.0〜90.0質量%の量で、及び構造単位(II)を0.01〜99.9質量%、有利に1.0〜99.0質量%、特に2.0〜95.0質量%、特に有利に5.0〜90.0質量%の量で含有する。
【0012】
この構造単位(I)は、特に次の一般式を表す
(I)
【化1】

式中、
Gは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する、置換された又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物、有利にフェノール、ベンゼン、メチルベンゼン、クレゾール、レゾルシノール、ノニルフェノール、メトキシフェノール、ナフトール、メチルナフトール、ブチルナフトール、ビスフェノールA、アニリン、メチルアニリン、ヒドロキシアニリン、メトキシアニリン、フルフリルアルコール及びサリチル酸を表し、
q=0〜4
Fは、相互に無関係に同じ又は異なり、かつOH、OR1、NH2、NHR1、NR12、C1〜C10−アルキル、SO3H、COOH、PO32、OPO32を表し、この場合、C1〜C10−アルキル基は、フェニル基又は4−ヒドロキシフェニル基を有していてもよく、R1は、C1〜C4−基を表し、
Jは、同じ又は異なり、かつポリイソブチレン側鎖、特に少なくとも3つのイソブチレン単位、特に3〜200のイソブチレン単位、特に有利に4〜100のイソブチレン単位及び殊に有利に4〜50のイソブチレン単位を表す。
【0013】
式(I)中の構造Gの、4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する、置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物とは、単数又は複数の芳香族環系又はヘテロ芳香族環系中に存在する炭素原子の数であると解釈される。置換された芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物において場合により存在する、構造単位Gの置換基は、C原子の数の計算には考慮されない。例えば、上記の定義により、C原子の数は、ノニルフェノール及びメトキシフェノールの場合に6であり、ビスフェノールAの場合に12であり、フルフリルアルコールの場合に4である。
【0014】
特に有利な代表例として、構造単位(I)は、4−ポリイソブチレンフェノールである。
【0015】
この重縮合生成物の構造単位(II)のイオン化可能な官能基は、有利に、SO3H、COOH、PO32、ジアルキルアミン、トリアルキルアンモニウム及びOPO32の群から選択される少なくとも1つ、特に有利にSO3H、OPO32及び/又はリン酸ジエステルである。
【0016】
有利な実施態様の場合に、この構造単位(II)は、次の一般式を表す
(II) L−Q−O−M
Qは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Lは、同じ又は異なり、SO3H、COOH、PO32、OPO32、ジアルキルアミン又はトリアルキルアンモニウムの群からなるイオン化可能な官能基を表し、
Oは、酸素であり、
Mは、同じ又は異なり、かつH、C1〜C10−アルキル基、C1〜C10−ヒドロキシアルキル基、C1〜C10−カルボン酸、アリール基又はヘテロアリール基を表す。
【0017】
構造単位(II)中の構造Qの、4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する、置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物とは、単数又は複数の芳香族環系又はヘテロ芳香族環系中に存在する炭素原子の数であると解釈される。
【0018】
置換された芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物において場合により存在する、構造単位Qの置換基は、C原子の数の計算には考慮されない。
【0019】
更に有利な実施態様の場合に、この構造単位(II)は、有利に次の一般式を表す
(II)
【化2】

式中、
Dは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Eは、同じ又は異なり、N、NH又はOを表し、
E=Nの場合にm=2、E=NH又はOの場合にm=1であり、
3及びR4は、相互に無関係に、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表し、
bは、同じ又は異なり、かつ0〜300の整数を表す。
【0020】
一般式(II)中の構造Dの、4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する、置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物とは、単数又は複数の芳香族環系又はヘテロ芳香族環系中に存在する炭素原子の数であると解釈される。
【0021】
置換された芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物において場合により存在する、構造単位Dの置換基は、C原子の数の計算には考慮されない。
【0022】
特に、構造単位(II)は、フェノキシエタノールホスファート、N−フェニルジエタノールアミンジホスファート、アニソールスルホン酸、フェノキシエタノールスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェノキシ酢酸又はフェノキシプロピオン酸であることができる。
【0023】
本発明による生成物の特性をそれぞれの使用目的に適合させるために、他の構造単位を重合により組み込むことも有利である。特に、これは、1つのポリエーテル側鎖及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(III)であることができる。
【0024】
この構造単位(III)は、特に次の一般式を表す
(III)
【化3】

式中、
Aは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Bは、同じ又は異なり、N、NH又はOを表し、
B=Nの場合にn=2、B=NH又はOの場合にn=1であり、
1及びR2は、相互に無関係に、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表し、
aは、同じ又は異なり、かつ1〜300の整数を表し、
Xは、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、分枝又は非分枝のC1〜C10−カルボン酸エステル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表す。
【0025】
一般式(III)の構造Aの、4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物は、単数又は複数の芳香族環系又はヘテロ芳香族環系中に存在する炭素原子の数であると解釈される。
【0026】
置換された芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物において場合により存在する、構造単位Aの置換基は、C原子の数の計算には考慮されない。
【0027】
構造単位(II)及び(III)の芳香族基又はヘテロ芳香族基は、有利にフェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル、2−ヒドロキシナフチル、4−ヒドロキシナフチル、2−メトキシナフチル、4−メトキシナフチル、有利にフェニルであり、この場合、これらの基は場合により相互に無関係に選択されていてもよく、かつそれぞれ上記の化合物の混合形からなることもできる。
【0028】
構造単位(II)及び(III)中のこれらの基R3、R4及び場合によりR1及びR2は、相互に無関係に選択されていてもよく、有利にH、メチル、エチル又はフェニル、特に有利にH又はメチル、殊に有利にHを表す。
【0029】
有利に、構造単位(III)中のaは、5〜280、特に10〜160、特に有利に12〜120の整数を表し、構造単位(II)中のbは、0〜10、有利に1〜7、特に有利に1〜5の整数を表す。a及びbにより長さが定義されるそれぞれの基は、この場合、均一な構造基からなることができるが、有利に異なる構造基からなる混合形であることもできる。さらに、構造単位(II)及び場合により(III)の基は、相互に無関係に、それぞれ同じ鎖長を有することができ、その際、a又はbはそれぞれ1つの数を表す。しかしながら、原則として、場合によりそれぞれ異なる鎖長を有する混合形であるのが有利であるので、重縮合生成物中の構造単位の基は、aについて及び独立してbについて異なる数値を有する。
【0030】
重縮合の場合に使用されるアルデヒドとして、特にホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、トリクロロアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、イソノニルアルデヒド及びドデカナール、芳香族アルデヒド、例えばベンズアルデヒド及びナフチルアルデヒド及び、反応条件下でアルデヒドを遊離することができる化合物、例えばトリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン又はパラホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのトリマー又はテトラマーの形態、及びジアルキルアセタールである。特に、パラホルムアルデヒドが適している。
【0031】
有利な実施態様の場合に、この重縮合生成物は、従って、次の式を表す他の構造単位(IV)を含有する
(IV)
【化4】

式中、
Yは、相互に無関係に、同じ又は異なり、(I)、(II)又は重縮合生成物の他の成分を表し、
5は、同じ又は異なり、かつH、CH3又は5〜10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族又はヘテロ芳香族化合物を表し、
6は、同じ又は異なり、かつH、CH3又は5〜10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表す。
【0032】
この場合、構造単位(IV)中のR5及びR6は、相互に無関係に、有利にH及び/又はメチルを表す。
【0033】
一般に、本発明による重縮合生成物は、水2〜90質量%及び溶解した乾燥材料98〜10質量%、有利に水40〜80質量%及び溶解した乾燥材料60〜20質量%、特に有利に水45〜75質量%及び溶解して乾燥材料55〜25質量%を有する水溶液の形で存在する。この乾燥材料は、主に、水不含の重縮合生成物からなるが、この場合、有利に、他の成分、例えば消泡剤及び他の助剤を含有することができる。
【0034】
本発明による重縮合生成物の加水分解安定性は、使用目的に応じて調節することができる。このために、ポリイソブチレン側鎖の鎖長の選択の他に、縮合により組み込まれる構造単位(II)及び場合による(III)に対するモル比が適している。全体として、本発明による重縮合生成物の構造単位(I)、(II)、(IV)及び場合による(III)のモル比は、広範囲に可変であることができる。構造単位[(I)+(II)+(III)]:(IV)のモル比は、1:0.8〜3、有利に1:0.9〜2、特に有利に1:0.95〜1.2であることが適切であることが判明していて、この場合、(III)はゼロの値をとることができる。
【0035】
構造単位(I):[(II)+(III)]のモル比は、特に1:100〜100:1、有利に1:7〜5:1、特に有利に1:5〜3:1であり、この場合、(III)はゼロの値をとることもできる。
【0036】
他の実施態様の場合に、構造単位(II):(III)のモル比は、1:0.005〜1:10、更に1:0.01〜1:1、特に1:0.01〜1:0.2、特に有利に1:0.01〜1:0.1に調節することができる。
【0037】
頻繁に、本発明による重縮合生成物は、4000g/mol〜150000g/mol、有利に10000〜100000g/mol、特に有利に20000〜75000g/molの重量平均分子量を有する。本発明は、少なくとも1つのポリイソブチレン側鎖を有する少なくとも1つの芳香族モノマー及び/又はヘテロ芳香族モノマー、芳香族基及び/又はヘテロ芳香族基及び少なくとも1つのイオン化可能な官能基を有する少なくとも1つのモノマー、及びアルデヒド基を有する少なくとも1つのモノマーを有する反応混合物を触媒の存在で重縮合させ、この重縮合後に得られた生成物の水含有量は、有利に30質量%未満、有利に20質量%未満、特に有利に6質量%未満である、重縮合生成物の製造方法にも関する。
【0038】
この反応混合物の水含有量は、重要なパラメータであることが明らかであり、その際低い水含有量は重縮合の際の改善された結果を生じさせる。高い水含有量は、それどころか、重縮合を完全に妨害しかねない。従って、水を含まないモノマー、例えばパラホルムアルデヒドを使用するのが有利である。他の可能性は、使用された水又は縮合の際に生じた水を共沸蒸留により除去することにあり、この場合、共沸剤として特にトルエン及びベンゼンが適している。
【0039】
一般に、この重縮合は酸性触媒の存在で実施され、その際、この酸性触媒は、有利に、スルホン酸、特に飽和及び不飽和のアルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸、オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、ビニルスルホン酸及び/又はアリルスルホン酸並びに芳香族スルホン酸、例えばパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及び/又はドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0040】
この重縮合は、有利に20〜140℃の温度で、かつ1〜10barの圧力で実施される。特に、50〜120℃の温度範囲が有利であることが判明した。この反応時間は、温度、使用したモノマーの化学的性質及び目標とされる架橋度に応じて、0.1〜24時間であることができる。所望の架橋度(これは例えば反応混合物の粘度を測定することにより決定することができる)が達成された場合に、反応混合物を冷却する。
【0041】
特別な実施態様によると、この反応混合物を、縮合反応の完了後に、pH8〜13でかつ60〜130℃の温度で熱的後処理にさらす。有利に5分〜5時間の間で行われる熱的後処理により、反応溶液中のアルデヒド含有量、特にホルムアルデヒド含有量を明らかに低減することができる。
【0042】
他の特別な実施態様の場合に、本発明は、アルデヒド含有量の低減のために、反応混合物を縮合反応の完了後に10〜900mbarの間の圧力で真空後処理することが考慮される。更に、ホルムアルデヒド含有量の低減のために当業者に公知の他の方法を使用することもできる。この例は、少量の亜硫酸水素ナトリウム、エチレン尿素及び/又はポリエチレンイミンの添加である。
【0043】
この得られた重縮合生成物は、水硬性結合剤の用の添加剤として直接使用することができる。良好な貯蔵安定性及び良好な生成物特性を得るために、この反応溶液を塩基性化合物で処理するのが有利である。従って、この反応混合物に、反応の完了後に、塩基性ナトリウム化合物、カリウム化合物、マグネシウム化合物、アルミニウム化合物、亜鉛化合物、アンモニウム化合物又はカルシウム化合物と反応させるのが有利であるとみなされる。水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、水酸化アンモニウム又は水酸化カルシウムは、この場合、特に有利であることが判明していて、この場合、この反応混合物を中和することが有利であるとみなされている。リン酸化された重縮合生成物の塩として、しかしながら、他のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩並びに有機アミンの塩も挙げることができる。
【0044】
この重縮合生成物が塩基性化合物で処理される、特に有利に中和されることを特徴とする重縮合生成物が有利である。この重縮合生成物を、塩基性化合物で処理した後に、完全に又は部分的に、その塩の形で存在する、特に有利にそのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形で存在することが特に有利である。更に、本発明は、リン酸化された重縮合生成物の混合塩を製造することも考慮する。これは、この重縮合生成物を少なくとも2種の塩基性化合物と反応させることにより適切に製造することができる。
【0045】
中和による適したアルカリ金属水酸化物及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の適切な選択によって、無機結合剤の、特にコンクリートの水性懸濁物のワーカビリティの期間に影響を及ぼすことができる本発明による重縮合生成物の塩を製造することができる。ナトリウム塩の場合にはこの時間にわたりワーカビリティの低下が観察されるが、同じポリマーのカルシウム塩の場合には、完全に逆の挙動が生じ、その際、初めに僅かな減水(僅かなスランプ)が生じ、この減水は時間と共に増大する。このことは、リン酸化された重縮合生成物のナトリウム塩は、この時間にわたり結合剤含有材料、例えばコンクリート又はモルタルのワーカビリティの低下を引き起こすが、相応するカルシウム塩は時間と共にワーカビリティの改善を引き起こす。従って、リン酸化された重縮合生成物の使用されたナトリウム塩及びカルシウム塩の量の適切な選択により、時間にわたる結合剤含有材料のワーカビリティの展開を調節することができる。ナトリウム塩及びカルシウム塩からなる相応するリン酸化された重縮合生成物は、塩基性カルシウム化合物及びナトリウム化合物、特に水酸化カルシウム及び水酸化ナトリウムからなる混合物との反応により製造するのが適切である。
【0046】
本発明による重縮合生成物の場合に、極めて低コストの方法により製造することができ、中間体の更なる精製が必要ないことが特に有利であることが判明している。特に、本発明による方法の場合に、廃棄しなければならない廃棄物が生じない。従って、特許請求の範囲に記載された方法は、環境的な観点からも先行技術の更なる進歩を示す。この得られた反応混合物は、使用目的に直接供給することができる。コンクリート建造物の耐久性を更に高めかつ特に鉄骨を腐食から保護する、セメント結合剤系用の添加剤を開発するという基礎となる課題設定は、従って、全面的に解消される。
【0047】
本発明を、次に実施例を用いて詳細に説明する。
【0048】
実施例
重縮合物を製造するための一般的規定
撹拌機を備えた反応器を、95℃の内部温度に加熱し、出発材料1及び2及び場合により表1によるポリイソブチレン−フェノール(PiB−フェノール)を満たし、前記撹拌機を始動させる(100回転/分)。この反応混合物が90℃の温度に達したらすぐに、触媒を添加する。この反応器のジャケット温度を130℃に高める。この反応混合物が100℃の温度に達したらすぐに、出発材料3を添加する。120℃の内部温度で撹拌しながら4時間さらに反応させ、この場合に明らかな粘度上昇が確認される。引き続き、この反応混合物を冷却する。100℃の内部温度が達成されたらすぐに、全体質量に対して、水10質量%を添加し、更に30分間撹拌する。引き続き、出発材料2に対して、3モル当量までの50%の苛性ソーダ液を添加する。(下記の実施例の場合に、それぞれ2モル当量の50%の苛性ソーダ液が使用される。)。苛性ソーダ液を均質に混合した後に、水で固体含有量を50質量%に希釈する。この本発明による重縮合体は、白色の〜黄白色のエマルションとして存在する。対照として、WO 2006/042709による流動化剤を使用し、これはPiB−フェノールを含有していない。
【0049】
表1
【表1】

【0050】
A=約1000g/molの平均分子量を有するPiB−フェノール(CAS番号:112375−88−9)
B=約2000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(CAS番号:9004−78−8)
C=約5000g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(CAS番号:9004−78−8)
D=約350g/molの平均分子量を有するポリエチレングリコールモノフェニルエーテル−リン酸エステル(CAS番号:39464−70−5)
E=トリオキサン、F=パラホルムアルデヒド、G=メタンスルホン酸、H=硫酸。
【0051】
フレッシュコンクリート中の重縮合物の流動化作用の試験
この試験の実施は、DIN EN 206−1、DIN EN 12350−2及びDIN EN 12350−5により行った。セメント:CEM I 42.5 R Bernburg(コンクリート330kg/m3)。この流動化剤の配量は、フレッシュコンクリートが60±2cmの初期スランプ値を有するように選択した。この配量表示は、セメントの使用量当たりの作用物質含有量に関する。この結果は表2にまとめられている。
【0052】
表2
【表2】

【0053】
本発明によるポリマーは原則として、ポリイソブチレン側鎖なしの対照流動化剤と同等の流動化作用を発揮することができることが認められる。
【0054】
モルタル角柱中の重縮合物の疎水化作用の試験
1. この方法の簡単な説明
コンクリートを水中に浸した場合に、水はコンクリート中に存在する毛管孔を通してコンクリート内に吸収される。「毛管吸水」の試験により、建材が吸水性及び物質輸送に関してどのように挙動するかを評価することができる。
【0055】
DIN EN ISO 15148、2003−03「Bestimmung des Wasseraufnahmekoeffizienten bei teilweisem Eintauchen(一部浸漬する際の吸水係数の測定)」及びドイツ鉄筋コンクリート委員会(DAfStb)のノート422の「Pruefung von Beton - Empfehlungen und Hinweise als Ergaenzung zu DIN 1048(コンクリートの試験−DIN1048の補足としての推奨及び示唆)」、1991に、方法、この結果の評価及び査定の更なる記載がなされている。
【0056】
吸水及びそれによる物質輸送も結合剤マトリックスにより困難となる場合、これは使用の際に実際に建造物中の鉄筋を腐食に対して保護することも生じる。
【0057】
2. 試験体
型枠を用いて、40mm×40mm×160mmの寸法のモルタル角柱を製造した。誤差を最小とするために、それぞれの流動化剤を用いてそれぞれ6本のモルタル角柱を製造した。この角柱の製造のために、Karlstadt CEM I 42, 5Rからのモルタル及びw/z=0.5及びs/z=2.8の標準砂を使用した。この流動化剤を、セメントに対してそれぞれ0.2質量%の作用物質の配量で使用した。
【0058】
3. 前貯蔵
製造後(24±2)時間の期間で、この試験体をこの形で加湿庫中で(20.0±2.0)℃で貯蔵した。型を外した後に、この角柱を1面当たり10秒間320グレードの研磨紙で乾式で研磨した。この粉塵をその後で吹き払うか又は刷毛で払った。この試験体を、まず20℃で7日間水中で、その後で13日間50℃で乾燥炉中で高い空気交換率で貯蔵した。この試験体を、次いで20℃/65%r.h.で24時間冷却した。
【0059】
4. 対照測定(mkd
前貯蔵後に、試験体を秤量した(mkd)。この対照測定は、冷却直後に行う。
【0060】
5. 主貯蔵
この試験体を、水で満たした槽中の三角形ストリップ上に置いた。この角柱の浸漬深さは、この場合5±1mmであった。この水位は、全体の観察期間にわたり一定に保たれた。
【0061】
6. 試験
毛管吸水を測定するための測定開始は、この角柱を水浴中へ浸漬した時点である。このサンプルを、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、22時間後、23時間後及び24時間後に試験した。試験のために、この角柱を湿って光らないように拭き取り、秤量し、再びこの水浴中に戻した。流動化剤当たり6本の角柱の測定値を平均し(表3参照)、図1中に時間(平方根)に対してプロットした。
【0062】
表3
【表3】

【0063】
表3及び図1から明らかに解るように、本発明による重縮合体を使用する場合に、対照剤を用いて製造された角柱と比べて毛管吸水が明らかに低下する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) 1つのポリイソブチレン側鎖及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(I)並びに
b) 1つのイオン化可能な官能基及び1つの芳香族基又はヘテロ芳香族基を有する少なくとも1つの構造単位(II)を有し、
構造単位(I)は構造単位(II)とは異なりかつ使用されたアルデヒドは酸又はエステル官能基を有しないことを特徴とする、芳香族化合物及び/又はヘテロ芳香族化合物及びアルデヒドをベースとする重縮合生成物。
【請求項2】
前記構造単位(I)を0.01〜99.9質量%及び構造単位(II)を0.01〜99.9質量%含有することを特徴とする、請求項1記載の重縮合生成物。
【請求項3】
前記構造単位(I)は、次の一般式
【化1】

[式中、
Gは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
q=0〜4
Fは、相互に無関係に同じ又は異なり、かつOH、OR1、NH2、NHR1、NR12、C1〜C10−アルキル、SO3H、COOH、PO32、OPO32を表し、この場合、C1〜C10−アルキル基は、フェニル基又は4−ヒドロキシフェニル基を有していてもよく、R1は、C1〜C4−基を表し、
Jは、同じ又は異なり、ポリイソブチレン側鎖を表す]を表すことを特徴とする、請求項1又は2記載の重縮合生成物。
【請求項4】
前記構造単位(I)は、4−ポリイソブチレンフェノールであることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項5】
前記構造単位(II)のイオン化可能な官能基は、SO3H、COOH、PO32、ジアルキルアミン、トリアルキルアンモニウム及びOPO32の群からの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項6】
前記構造単位(II)が次の一般式
(II)
L−Q−O−M
[式中、
Qは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Lは、同じ又は異なり、SO3H、COOH、PO32、OPO32、ジアルキルアミン又はトリアルキルアンモニウムの群からなるイオン化可能な官能基を表し、
Oは、酸素であり、
Mは、同じ又は異なり、かつH、C1〜C10−アルキル基、C1〜C10−ヒドロキシアルキル基、C1〜C10−カルボン酸、アリール基又はヘテロアリール基を表す]を表すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項7】
前記構造単位(II)が次の一般式
(II)
【化2】

[式中、
Dは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Eは、同じ又は異なり、N、NH又はOを表し、
E=Nの場合にm=2、E=NH又はOの場合にm=1であり、
3及びR4は、相互に無関係に、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表し、
bは、同じ又は異なり、かつ0〜300の整数を表す]を表すことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項8】
前記構造単位(II)は、フェノキシエタノールホスファート、N−フェニルジエタノールアミンジホスファート、アニソールスルホン酸、フェノキシエタノールスルホン酸、フェノールスルホン酸、フェノキシ酢酸又はフェノキシプロピオン酸であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項9】
少なくとも1つの他の構造単位(III)を含有し、
前記構造単位(III)は次の一般式
(III)
【化3】

[式中、
Aは、同じ又は異なり、かつ4〜12個のC原子、有利に5〜10個のC原子を有する置換された又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
Bは、同じ又は異なり、N、NH又はOを表し、
B=Nの場合にn=2、B=NH又はOの場合にn=1であり、
1及びR2は、相互に無関係に、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表し、
aは、同じ又は異なり、かつ1〜300の整数を表し、
Xは、同じ又は異なり、かつ分枝又は非分枝のC1〜C10−アルキル基、C5〜C8−シクロアルキル基、分枝又は非分枝のC1〜C10−カルボン酸エステル基、アリール基、ヘテロアリール基又はHを表す]を表すことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項10】
構造単位(II)及び(III)の芳香族基又はヘテロ芳香族基は、フェニル、2−ヒドロキシフェニル、3−ヒドロキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、ナフチル、2−ヒドロキシナフチル、4−ヒドロキシナフチル、2−メトキシナフチル、4−メトキシナフチルであることを特徴とする、請求項1から7及び9のいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項11】
少なくとも1つの構造単位(IV)を含有し、
前記構造単位(IV)は次の一般式
(IV)
【化4】

[式中、
Yは、相互に無関係に、同じ又は異なり、(I)、(II)又は重縮合生成物の他の成分を表し、
5は、同じ又は異なり、かつH、CH3又は5〜10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表し、
6は、同じ又は異なり、かつH、CH3又は5〜10個のC原子を有する置換又は非置換の芳香族化合物又はヘテロ芳香族化合物を表す]を表すことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項12】
前記重縮合生成物は、水2〜90質量%及び乾燥材料98〜10質量%を含有する水性系の形で存在することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項13】
前記重縮合生成物を塩基性化合物で処理することを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の重縮合生成物。
【請求項14】
a) 少なくとも1つのポリイソブチレン側鎖を有する、少なくとも1種の芳香族モノマー及び/又はヘテロ芳香族モノマー、
b) 1つの芳香族基及び/又はヘテロ芳香族基と、少なくとも1つのイオン化可能な官能基とを有する少なくとも1種のモノマー、及び
c) 1つのアルデヒド基を有する少なくとも1つのモノマーとを有する反応混合物を、触媒の存在で重縮合させることを特徴とする、
請求項1から13までのいずれか1項記載の重縮合生成物の製造方法。
【請求項15】
前記触媒は、少なくとも1つのスルホン酸であることを特徴とする、請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1から13までのいずれか1項記載の重縮合生成物の、水硬性及び/又は潜在水硬性結合剤の水性懸濁物用の添加材料としての使用。

【図1】
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【公表番号】特表2013−503925(P2013−503925A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527263(P2012−527263)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061286
【国際公開番号】WO2011/026701
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503343336)コンストラクション リサーチ アンド テクノロジー ゲーエムベーハー (139)
【氏名又は名称原語表記】Construction Research & Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Dr.−Albert−Frank−Strasse 32, D−83308 Trostberg, Germany
【Fターム(参考)】