説明

イソブテンを含有する炭化水素混合物からt−ブタノールを製造する方法

【課題】イソブテンを含有する炭化水素混合物からt−ブタノールを製造する方法を提供する。
【解決手段】イソブテンを含有する炭化水素混合物と水とを固体の酸性触媒を用いて反応器カスケード中で反応させることによりt−ブタノール(TBA)を製造する方法において、少なくとも1つの反応器に2つの異なったイソブテン含有炭化水素混合物を交互に送入し、その際、該混合物の一方が、他方の混合物よりも高いt−ブタノール含有率および高い含水率を有する。
【効果】イソブテンの反応率ひいてはt−ブタノールの収率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なったt−ブタノール含有率および含水率を有する混合物を交互に少なくとも1つの反応器へ供給することにより、反応器カスケード中で酸性のイオン交換体の存在下に水をイソブテンに付加することによりt−ブタノールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
t−ブタノール(TBA)は重要な、大工業的に製造される製品であり、かつ溶剤として、およびメタクリル酸メチルエステルを製造するための中間生成物として使用される。これは少なくとも1つの第三ブチル基を有する過酸化物、たとえばペルオキシケタール、ペルエステルもしくはジアルキルペルオキシドを製造するための中間生成物である。これらの化合物は酸化剤として、およびラジカル反応、たとえばオレフィンの重合またはプラスチックの架橋のための開始剤として使用される。t−ブタノールはイソブテン混合物から純粋なイソブテンを取得するための中間生成物として役立つ。これはさらに第三ブチル基を導入するための反応試薬である。そのアルカリ塩は強塩基であり、多くの合成において使用される。
【0003】
第三ブタノールは酸性触媒によりイソブテンに水を付加することにより得ることができる。工業的なイソブテン混合物はしばしばその他のオレフィン、たとえば2−ブテンを含有する。これらのエダクトを使用する場合、工業的な方法は、ほぼイソブテンのみを水和するが、しかしその他のオレフィンを水和せず、かつオレフィンのホモオリゴマー化またはヘテロオリゴマー化のような副反応をほぼ完全に抑制する条件を適用する。このようなプロセスは通常、液相中で作業し、かつ2つのグループに分けることができる:a)水を含有する触媒溶液中で反応を行う、およびb)固体の、反応相中で不溶性の触媒を使用する不均一系触媒による方法。
【0004】
固体の、エダクト中にも生成物中にも溶解しない酸性触媒を用いたイソブテンからt−ブタノールへの水和は、反応混合物が酸を含有せず、かつ再分解による損失がないか、またはその他の副反応によりt−ブタノールへと後処理することができるという利点を有する。反応は触媒の表面で進行する。反応が実施されるために、両方の反応体は同時に触媒の活性な箇所に存在していなくてはならない。このことは、水およびイソブテンもしくはイソブテンを含有する炭化水素混合物が相互に混和可能でないことによって困難になる。認容可能な状況を得るために、水とイソブテンの出発混合物からなる均一な混合物を可能にする溶剤を使用する。
【0005】
DE3031702A1には、この目的のために、水ならびにイソブテンのため、もしくはイソブテンを含有する炭化水素混合物のための溶剤として、メタノールが記載されている。生成物としてt−ブタノールおよびメチル−t−ブチルエーテルが同時に得られる。
【0006】
EP0010993A1では、1〜6個の炭素原子を有する脂肪族カルボン酸が、両方のエダクトのための溶剤として使用されている。その際、副生成物としてこれらの酸の第三ブチルエステルが生じる。これらをt−ブタノールおよびカルボン酸へと加水分解しなくてはならない。
【0007】
DE3031702A1ではスルホランが、およびUS4,327,231にはネオタイプの多価アルコール、たとえばネオペンチルグリコールが使用されている。これらの溶剤をt−ブタノールから分離しなくてはならない。さらに使用される溶剤がこのような装置の継続運転中に分解する危険が生じる。
【0008】
これらの欠点を回避するために、いくつかの方法では、目的生成物であるTBAを可溶化剤として使用している。このような方法はたとえばWO99/33775、DE3025262またはDE10259413.9に記載されている。その際、イソブテンを含有する炭化水素フラクション、TBAおよび水からなる混合物を反応器カスケード中で、酸性の、固定床に配置された触媒を用いて反応させる。第一の反応器は多くの場合、再循環式の運転方法で、およびその他の反応器は単流式で運転される。それぞれの別の反応器の前で、反応水を計量供給することができる。最後の反応器の搬出物を蒸留により、未反応のイソブテンを含有する炭化水素混合物と、粗製TBAとに分離する。粗製TBAの一部を第一の反応器へ返送する。他方の部分はそのままで使用するか、またはTBAおよび/またはTBA/水の共沸混合物へと後処理することができる。
【0009】
この方法の場合、反応の進行に基づいて反応器から反応器へとTBAの含有率が増大し、かつイソブテン含有率が低減する。その際、反応混合物の組成は速度の低下と共に水、イソブテンおよびTBAの間の熱力学的な平衡状態に近づくので、完全な反応は達成され得ない。その際、長い反応時間では、約93%の反応率を得ることができる。しかし、より高い空時収率が所望される場合には、反応率を制限することが有利である。たとえば工業用イソブテン流、たとえばラフィネートIから出発して反応率を80〜85%に限定することが有利な場合がある。
【0010】
未公開の出願DE10338581には、イソブテンを含有する炭化水素混合物と水とを複数の反応器中で酸性の固体触媒により反応させることによりt−ブタノールを製造することが記載されており、その際、反応率を向上するために最後の反応器の前で、反応混合物中に存在するTBAの一部を分離する。このような改善にもかかわらず、全イソブテン反応率はほぼ同じ空時収率の場合、5〜10%の差で約90%に上昇するにすぎない。
【0011】
未公開の出願DE10260991には、比較的高価な反応性蒸留を使用するTBAの製造方法が記載されており、かつほぼ完全なイソブテン反応率でイソブテンから高沸点物質も生じている。
【0012】
固体の、酸性で反応媒体中に溶解しない物質を触媒として使用する公知の方法はたしかに簡単な後処理を提供しているが、しかし空時収率および/または収率および/または選択率に関しては満足できるものではない。
【特許文献1】DE3031702A1
【特許文献2】EP0010993A1
【特許文献3】DE3031702A1
【特許文献4】US4,327,231
【特許文献5】WO99/33775
【特許文献6】DE3025262
【特許文献7】DE10259413.9
【特許文献8】DE10338581
【特許文献9】DE10260991
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って本発明の課題は、高いイソブテン反応率で高い空時収率および高い選択率により優れているt−ブタノールの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
意外なことに、イソブテンを含有する炭化水素混合物、TBAおよび水からなる混合物と、水およびTBAがより少なく、イソブテンを含有する炭化水素混合物とを反応器に交互に送入する場合に、固体の酸性の物質を充填した反応器中で、イソブテンと水とをブタノールへと反応させる際に、良好な選択率で高い空時収率が達成されることが判明した。
【0015】
従って本発明の課題は、イソブテンを含有する炭化水素混合物と水とを固体の酸性触媒を用いて反応器カスケード(少なくとも2つ以上の、直列に接続された反応器を有する)中で反応させることによりt−ブタノール(TBA)を製造する方法であり、この方法の特徴は、少なくとも1つの反応器に、2つの異なったイソブテン含有炭化水素混合物を送入し、その際、該混合物の一方は他方の混合物より高いt−ブタノール含有率ならびに高い含水率を有することである。
【0016】
本発明の対象はさらに、本発明による方法により、特に特許請求の範囲において請求されている本発明による方法により得られるt−ブタノールを含有する混合物である。
【0017】
オレフィンの反応における酸性のイオン交換樹脂の反応性は特にその水和シェルの大きさに依存する。乾燥した、もしくはほぼ乾燥したイオン交換樹脂は反応性が高いが、しかし選択性が低い。該樹脂は水がイソブテンへ付加してTBAを生じることを触媒するのみではなく、イソブテンの、およびその他の、反応混合物中に存在するオレフィンのオリゴマー化ならびに線状ブテンから2−ブタノールへの反応を触媒する。水により飽和した酸性のイオン交換樹脂はこれに対してそれほど反応性ではないので、イソブテンへの水の付加はほとんど触媒されない。水和シェルの大きさひいてはイオン交換樹脂の触媒活性は特に循環する媒体中の含水率に依存する。従ってイソブテンを含有する炭化水素混合物と水との反応は一定の濃度範囲において実施される。たとえばDE10259413.9には、三成分混合物がTBAおよびイソブテン含有炭化水素混合物の混合物中の水の溶解度により可能な最大の水の量の30〜80%を含有していると、イソブテンを含有する炭化水素混合物、TBAおよび水からなる混合物をTBAへと反応させることが特に有利であることが記載されている。
【0018】
従って反応器に2つの異なった使用物質混合物を交互に供給し、その際、使用物質混合物の少なくとも1つが従来技術で提供された最適な範囲外の組成を有する場合に、高い反応率が達成されることは極めて意外であった。水およびTBAの少ない、もしくは実質的に水およびTBAを含有していない炭化水素混合物を供給するにもかかわらず、TBAの形成(両方の運転状態を考慮して)の選択率の低下が確認されなかったことはまったく意外であった。
【0019】
TBAを製造するための公知の工業的な方法では、反応混合物中での反応の進行に基づいて反応器から反応器へとイソブテンの濃度およびTBAの濃度が低下する。反応器から反応器へと低下する速度と共に反応混合物の組成はイソブテン、水およびTBAの間の熱力学的な平衡に近づく。
【0020】
TBAへのイソブテンの反応率を高めるために、本発明による方法では最後の反応器から排出される反応混合物から未反応のイソブテンを含有する炭化水素フラクションを分離し、かつこのフラクションを完全に、もしくは部分的に少なくとも1つの、有利には最後の反応器へ返送するが、ただしその際、この反応器は先行する反応器の反応混合物および場合により付加的な水または返送されるイソブテン含有の炭化水素混合物がエダクト混合物として交互に送入される。返送されるイソブテン含有流は実質的にTBAを含有していないので、TBA、イソブテンおよび水の間の平衡からははるかに離れている。従ってイソブテンの大部分がTBAへと反応することができる。反応水として酸性触媒の水和シェルの一部が役立つ。従ってイソブテンを含有する炭化水素フラクションの反応により触媒は部分的に脱水され、このことによりその活性が向上する。反応器の切り替えおよび水と、先行する反応器の反応搬出物とからなる混合物の送入後に、イソブテンと水との、TBAへの反応のための反応速度はまず大きく、かつ触媒が水を吸収するのに従って通常の値に低下する。両方の運転状態を平均して、この反応器に関して従来の運転方法より高い空時収率が生じる。
【0021】
本発明の利点は、選択率は同じままで、イソブテンの反応率ひいてはTBAの収率が向上することである。
【0022】
以下では本発明による方法を実施例に基づいて記載するが、その際、その保護範囲が請求項および詳細な説明から生じる本発明は実施例に限定されるべきではない。請求項自体もまた本発明の開示内容に属する。以下の本文に範囲および有利な範囲が記載されている場合には、これらの範囲に存在する、理論的な可能な全ての部分的な範囲もまた本発明の開示内容に属しており、その際、これらの範囲はより良好な明瞭性の理由から明示的に挙げられていない。
【0023】
本発明によるTBAの製造方法は従来技術、たとえばWO99/33775、DE3025262またはDE10259413に記載されてるTBAの製造方法に基づいており、その際、本発明による方法では少なくとも1つの反応器に、水およびTBAの異なった含有率を有する2つの異なったイソブテンを含有する炭化水素混合物を交互に供給する。従って記載した従来技術で挙げた、TBAの製造のための方法パラメータは明示的に記載されていなくても本発明の記載の構成要素である。
【0024】
イソブテンを含有する炭化水素混合物と水との反応によるt−ブタノール(TBA)の、固体の酸性触媒を用いた、少なくとも2つの反応器を有する反応器カスケード中での本発明による製造方法は、少なくとも1つの反応器に、2つの異なったイソブテン含有炭化水素混合物を交互に送入し、その際、混合物(I)の一方は、他方の混合物(II)よりも高いt−ブタノール含有率および高い含水率を有することにより優れている。有利には2つの異なったイソブテンを含有する炭化水素混合物が送入され、その際、該混合物の一方が他方の混合物よりも高いt−ブタノール含有率および高い含水率を有する反応器は、反応器カスケードの最後の反応器であるか、または反応器カスケードの2つ以上の並列接続された反応器からなる最後の反応器ユニットである。
【0025】
反応器カスケードの第一の反応器中へ、有利には25質量%より高いイソブテンの含有率を有する炭化水素混合物を供給する。本発明による方法では、反応器カスケードの第一の反応器に供給されるイソブテンを含有するエダクト混合物として、イソブテンを含有する炭化水素混合物、あるいは場合により純粋なイソブテンを使用することができる。有利にはイソブテンを含有する炭化水素混合物はアセチレン誘導体を含有しない、および/または5000ppmより少ないジエンを含有する、および/またはオレフィン系二重結合において1つもしくは2つの分岐を有するその他のオレフィンを含有していない。特に有利にはイソブテンを含有する出発物質は25〜100質量%、有利には30〜99質量%およびとりわけ有利には30〜80質量%のイソブテンの含有率を有する。
【0026】
イソブテンを含有する工業用混合物はたとえば精油所からの易揮発性ベンジンフラクション、FCCユニットまたは蒸気分解装置からのC−フラクション、フィッシャー・トロプシュ合成からの混合物、ブタンの脱水素からの混合物、線状ブテンの骨格異性化(skeletal isomerization)からの混合物またはオレフィンのメタセシスまたはその他の工業的な方法により生じる混合物である。
【0027】
これらの混合物は場合によりポリ不飽和化合物を除去した後で本発明による方法において使用することができる。たとえば蒸気分解装置のC−フラクションからの適切なイソブテン混合物の取得はブタジエンの抽出により、または線状ブテンへのその選択的水素化により行うことができる。この使用物質(ラフィネートIもしくは選択的水素化されたクラッカーC)はn−ブタン、イソブタン、3つの線状ブテンおよびイソブテンからなり、かつ本発明による方法のための有利なエダクトである。有利に使用されるラフィネートI中のイソブテン含有率は一般に30〜60%の範囲である。
【0028】
場合によりラフィネートI、水素化したクラッカーCまたは類似の組成を有する炭化水素混合物を反応塔中で水素異性化することができる。このことによりイソブテン、(および場合により1−ブテン)およびイソブタンからなる混合物が得られ、該混合物を次いで原料として本発明によるTBA合成においてエダクト混合物(流(2))として使用することができる。
【0029】
炭化水素混合物中のイソブテンの濃度はすでに記載したように、広い範囲で変化することができる。しかし方法の経済性のためには、30質量%より高い、有利には40質量%より高いイソブテン濃度を有する炭化水素混合物をエダクト混合物として使用することが有利である。
【0030】
触媒として有利には、使用物質混合物中にも生成物混合物中にも溶解しない酸性イオン交換体を使用する。触媒は反応条件下で加水分解によってもその他の反応によっても酸性の物質を生成物混合物へ放出してはならない。というのも、これは反応混合物の後処理の際に収率の損失につながりうるからである。
【0031】
適切な触媒の活性は、反応条件下でイソブテンの水和を生じるが、しかし分岐のないオレフィンはほとんど水和しない。さらに触媒はオレフィンのオリゴマー化もほとんど触媒してはならない。
【0032】
触媒の適切なグループはスルホン酸基を有する固体のイオン交換樹脂である。特に適切なイオン交換樹脂はたとえばフェノール/アルデヒド−縮合物または芳香族ビニル化合物のコオリゴマーのスルホン化により製造することができる。コオリゴマーを製造するための芳香族ビニル化合物のための例は次のものである:スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタリン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、ビニルキシレンおよびジビニルベンゼン。特にスチレンとジビニルベンゼンとの反応により生じるコオリゴマーはスルホン基を有するイオン交換樹脂を製造するための前駆物質として使用される。該樹脂はゲル形、マクロポーラス形もしくはスポンジ状に製造することができる。スチレン−ジビニルベンゼンタイプの適切な樹脂は特に次の商品名で市販されている:Duolite (R) C-20、Duolite (R) C-26、Amberlyst (R) 15Wet、Amberlyst (R) 35Wet、Amberlite (R) IR-120、Amberlite (R) 200C、Dowex (R) 50、Lewatit (R) K2621、Lewatit (R) K2629またはLewatit (R) VP OC 1505。
【0033】
該樹脂の特性、特に比表面積、多孔度、安定性、膨潤性もしくは収縮および交換能は、可変であり、かつ製造法により変更することができる。
【0034】
本発明による方法ではイオン交換樹脂を有利にそのH型で使用する。イオン交換能は2〜7、特に3〜6eq/kg(湿った市販の樹脂に対する)である。有利にはマクロポーラス形の樹脂、たとえばAmberlyst (R) 15Wet、Amberlyst (R) 35Wet、Lewatit (R) K2621、Lewatit (R) K2629またはLewatit (R) VP OC 1505を使用する。樹脂の平均粒径は有利には0.5〜2mmであってよい。粒径分布は狭く選択することも、または広く選択することもできる。有利には極めて均一な粒径を有するイオン交換樹脂(単分散樹脂)を使用する。複数の反応器を使用する際には、該反応器は同一または異なった粒径(もしくは粒径分布)の樹脂により充填されていてよい。
【0035】
場合によりイオン交換樹脂は球体としてのみではなく、成形体、たとえば円筒体、リングまたは球体として、または成形体上にグラフト重合して使用することもできる。
【0036】
高い線速度で貫流される反応器中で、圧力差を低減するために、比較的大きな粒子のイオン交換樹脂を使用し、かつ、低い線速度で貫流される反応器中で、最適な反応率を達成するために、比較的小さい粒子のイオン交換樹脂を使用することが有利な場合がある。有利には本発明による方法の反応器中で、特に有利には1〜60m/hの線速度で運転される反応器中で、0.1〜5mm、有利には0.25〜2mmおよびとりわけ有利には0.75〜1mmの平均粒径を有するイオン交換樹脂を使用する。10〜60m/hの線速度の場合、有利には0.5〜5mmの平均粒径を使用する。1〜25m/hの線速度の場合、有利には0.1〜1mmの平均粒径を使用する。0.70〜1mmの範囲にある平均粒径を有するイオン交換樹脂はたとえばRohm and Haas社のAmberlyst (R) 35Wetである。
【0037】
樹脂が運転の間に酸基を分離し、ひいては方法の後処理部分における障害が生じうることを回避するため、および触媒の高い活性を長い期間にわたって維持するために、イオン交換樹脂を、たとえば水、TBAまたはTBA/水の混合物により、有利には40〜120℃の温度範囲で洗浄することにより前処理することができる。
【0038】
反応器カスケードの反応器中で、そのつど同一の触媒もしくは触媒混合物または異なった触媒もしくは触媒混合物を使用することができる。有利には反応器カスケードの全ての反応器は同一の触媒もしくは触媒混合物を装備している。
【0039】
交互に運転される反応器に供給される、低いt−ブタノール含有率および含水率を有する炭化水素混合物(II)は、有利には1質量%以下のt−ブタノールを含有する。有利には該混合物中のTBAの含有率は0.5質量%以下、特に有利には0.1質量%以下である。この水が少ない混合物の水濃度は、相応する混合物中で最大溶液濃度(溶解度)よりも、最大で10%、より大きいか、同じであるか、またはより少ない。有利には本発明による方法において均一な溶液を混合物として使用する。つまり使用される混合物(II)中の水濃度は、最大で可能な溶液濃度と同じであるか、またはより小さい。低いt−ブタノール含有率を有する炭化水素混合物(II)が1〜30質量%のイソブテンの含有率を有する場合には有利でありうる。水が少ない混合物(II)として有利には、交互に運転される1つもしくは複数の反応器の反応器搬出物を塔頂生成物として反応器排出物からTBAを分離する際に、蒸留による分離により生じる混合物を使用し、その際、蒸留の際にTBAもしくは粗製TBAが塔底生成物として得られる。
【0040】
交互に反応器に供給される、水が富化された混合物(I)は、水、TBAおよびイソブテンを含有する炭化水素混合物を含有している。該混合物(I)は本発明による方法では均一に、または不均一に存在していてよい。不均一な混合物の場合、水の一部は第二の水相中に存在する。反応器に、水が少ないイソブテン含有炭化水素流を送入する際に、触媒はその水和シェルの一部を失うので、水が富化されたエダクト混合物(I)により、通常の運転方法の場合よりも多くの水が反応器に導入され、ことにより十分に水が水和シェルの構築のため、および反応水として利用される。従って炭化水素混合物対TBAの比率に応じて、およびその他の運転パラメータに応じて、不均一な混合物を供給することが有利な場合がある。エダクト中の最適な水濃度は容易な前試験により確認することができる。有利には混合物(I)中の水の濃度は、相応する混合物中の最大の溶液濃度(溶解度)よりも少なくとも11%、有利には少なくとも15%、および特に有利には少なくとも25%大きい。とりわけ有利には混合物(I)中の水の濃度は、相応する混合物中の最大溶液濃度(溶解度)の125〜175%である。水が富化された混合物(I)として、たとえば反応器カスケード中で前方接続された反応器の反応器搬出物を使用することができ、その際、これに有利には同様に付加的な水を添加することもできる。
【0041】
1つもしくは複数の反応器に交互に2つの異なったイソブテンを含有する混合物を送入することができる。1つの反応器のみに2つの異なった混合物(I)または(II)を交互に送入する場合、障害のない、連続的な運転を可能にするために、混合物(I)および(II)がその中で製造される貯蔵容器または緩衝容器を準備することが必要である。従って有利には少なくとも2つの反応器または反応器ユニットを交互に運転する。2つ以上の反応器に2つの異なったイソブテンを含有する混合物を交互に送入する場合、該反応器は直列もしくは並列で接続されていてよい。その際、2つもしくは複数の反応器はそのつど同時に両方もしくは全てにTBAの少ない混合物(II)またはTBAが富化された混合物(II)を送入することができる。大きさを最小化するため、または貯蔵容器もしくは緩衝容器を回避するために、少なくとも2つの、相互に並列接続され、反応器ユニットを形成する反応器が特に有利であると考えられ、その際、反応器ユニットの反応器には2つの異なったイソブテンを含有する混合物が交互に供給され、その際、少なくともそれぞれの交替のサイクルの開始時に並行して運転される反応器の1つに混合物(I)および別の反応器に同時に混合物(II)を供給する。2つより多くの並列に接続された反応器が反応器ユニット中に存在する場合、混合物(I)から混合物(II)への切り替え、またはその逆の切り替えは所望のサイクル時間(反応器中で1つの混合物から他方の混合物に切り替えられる時間)に依存する(図1に記載された実施態様の変法に関する例示的な説明を参照のこと)。
【0042】
両方の異なった、1つもしくは複数の反応器の交互の送入により得られる、交互に運転される反応器の反応器搬出物は、一緒に蒸留ユニット中で、特に未反応のオレフィンおよび飽和炭化水素を含有していてもよい炭化水素を含有する流と、粗製t−ブタノールとに分離することができる。この分離の際に得られる炭化水素を含有する流は有利には少なくとも部分的に水およびTBAの少ない混合物(II)としてふたたび1つもしくは複数の、交互に運転される反応器の送入のために使用される。同様に、両方の異なった、交互に運転される反応器の、交互の送入により得られる反応器搬出物を別々に2つの蒸留ユニット中で、炭化水素を含有する流と、粗製t−ブタノールとに分離することができる。この場合、有利には塔頂生成物として得られた、比較的高いイソブテン含有率を有する炭化水素を含有する流を少なくとも部分的に、交互に運転される反応器の送入のために使用する。塔頂生成物として得られ、交互に運転される反応器に返送されるTBAおよび水の少ない混合物(II)は、有利には1〜30質量%、有利には3〜20質量%、特に有利には5〜12質量%のイソブテン含有率を有する。TBAを含有するそのつどの塔底フラクション、いわゆる粗製TBAは後処理、たとえば蒸留に供給することができる。塔底フラクションの一部は原料混合物に添加することもでき、該混合物を反応器カスケードの第一の反応器に送入する。
【0043】
以下において交互に送入される反応器を話題にする場合には、これは複数の反応器、特に2つもしくは複数の並列に接続された反応器を有する反応器ユニットでもあると理解すべきである。
【0044】
本方法は有利には、混合物の交換が0.5〜10時間のサイクルで行われるように反応器を交互に送入して実施する。有利には両方の運転状態のためのサイクル時間は有利に0.5〜5時間であり、かつ特に有利には1〜2.5時間である。明らかに10時間以上の交換時間を超える場合には、水の少ない混合物(II)を送入する際に触媒の活性の向上が大きくなりすぎ、このことによって副生成物の形成の増加が生じうる。0.5時間のサイクル時間を明らかに下回る場合、触媒の周囲の水和シェルの形成もしくは分解により達成される活性の効果はもはや観察されない。
【0045】
反応器の送入の時間的な比(サイクル時間相互の比、つまり水が富化された混合物(I)が反応器に供給される時間対水およびTBAが少ない混合物(II)が供給される時間の比)は、1であるか、または1より大または1より小であってよい。有利には反応器の、水およびTBAが富化された混合物(I)による送入対水およびTBAが少ない混合物(II)による送入の時間的な比は1.5対1〜2.5対1に調節する。サイクル時間の比率が、両方の異なったエダクト混合物IもしくはIIがその中で並行して反応する、少なくとも2つの並列接続された反応器からなる反応器ユニット中で1以外に調節される場合、これを実現するためには種々の可能性が存在し、そのうちの3つを以下に例として記載する:
a)第一の反応器に期間aの間に混合物(I)を送入する。同時に第二の反応器に、期間bの間に混合物(II)を送入し、かつ引き続き、期間cの間に混合物(I)を送入し、その際、期間bおよびcの合計は、期間aに相応する。ここから全サイクル時間aの場合、(a+c)/bのサイクル時間の比が生じる。
【0046】
b)相応するエダクト(I)および(II)を交換する場合、相応して送入の時間的な比率に関して相関的な値が生じる。
【0047】
c)少なくとも3つの反応器を有する反応器ユニットの場合、たとえば、期間aの間にそのつど2つの反応器に混合物(I)を送入し、かつ1つの反応器に混合物(II)を送入することができる。ここから2対1の送入の時間的な比率が生じる。サイクル時間の終了後、最後のサイクルで混合物(II)が送入された反応器に今度は混合物(I)が送入されるように送入を切り替える。最後のサイクルで混合物(I)が送入された反応器の1つ、しかも最後から二番目のサイクルで同様に混合物(I)が送入された反応器に今度は混合物(II)を送入し、その一方で、最後から二番目のサイクルで混合物(II)が送入された別の反応器に、もう1サイクル分の長さで混合物(I)を送入する。次のサイクル交換の際に、送入をふたたび相応して変更する。
【0048】
サイクル時間およびサイクル時間の比に関する最適な条件は、LHSV、温度および両方の反応器供給流の組成に依存し、かつ前実験により容易に確認することができる。
【0049】
水およびTBAが富化された混合物(I)を反応器に供給する場合、交互に運転される反応器中のLHSVを0.1〜5、有利には0.4〜3h−1(毎時の触媒1リットルあたりの使用混合物1リットル)に調節すると有利であることが判明した。イソブテンを含有する、TBAおよび水の少ない炭化水素混合物(II)に関するLHSVは、有利には0.1〜4.5h−1の範囲、特に0.3〜3h−1の範囲に調節する。
【0050】
イソブテンの水和により水が消費されるので、反応混合物中の含水率は常に低下する。できる限り高い収率および反応速度を維持するために、水を後から供給することが有利である。これはたとえば管型反応器中、異なった箇所で水を供給することにより行うことができる。しかし実地では、必要とされる水の量を正確に導入し、かつ直ちに均一な溶液を生じることは困難である。技術的には複数の反応器を直列に接続し、かつ必要な水の量をそのつど、反応器混合物が反応器に導入される前に、つまりたとえば反応器同士の間に供給することがより容易であり、従って有利である。交互に運転されない反応器カスケードの反応器の場合、反応混合物がそれぞれの反応器へ導入される前に、有利には水を供給する。水の添加はそれぞれの反応器の前で行うことができ、その際、少なくとも反応器に水およびTBAが少ない混合物を送入する場合には交互に運転される1つもしくは複数の反応器への水の添加は行わない。
【0051】
エダクト混合物中の水の量は有利には、始動段階以外は、プロセス中で自体、炭化水素の、たとえば蒸留による分離により、つまり反応器搬出物を一部、返送することにより生じるt−ブタノール−水−溶液に由来する。この水の量が十分でない場合、付加的に水(新鮮水、反応水またはt−ブタノールとの混合物)を供給することができる。反応器に供給される混合物中の水の量はTBA対C−炭化水素混合物の比に依存する。有利には、交互に運転される反応器を除外して、最大でTBA/C−炭化水素混合物中に溶解するような量の水を使用するので、均質な溶液が存在する。特に、場合により最後の反応器で、そのつどの最大の溶解度より少ない含水率をTBA/C−炭化水素混合物中で調節する。とりわけ有利には、未公開の特許文献DE10259413.9もしくはDE10330710.9において請求されているような水の濃度を調節する。前記のとおり、純粋な水またはt−ブタノールとの混合物もまた反応器中に導入することができる。反応により得られたTBAの一部もまた水およびイソブテンを含有する炭化水素混合物との均質な混合物の製造のために返送することができる。
【0052】
本発明による方法が実施される温度は、有利には30〜120℃である。これより低い温度の場合、反応速度は低くなりすぎ、かつこれより高い温度の場合、副反応、たとえばオレフィンのオリゴマー化が増大する。有利には反応器を35〜80℃の温度範囲で運転する。異なった反応器中での温度は同じであるか、または記載した範囲内で異なっていてもよい。有利な変法では、連続する反応器をそのつど先行する反応器よりも低い温度で運転する。温度の低下と共に、平衡状態が有利になるので、より高い反応率を達成することができる。しかし、温度が35℃より低くなることは有利ではない。というのも、この場合、反応は工業的な方法にとって長すぎるからである。交互に運転される反応器、または交互に運転される反応器ユニットは使用混合物に応じてそのつどの交換の後に同じ温度または異なった温度で運転することができる。
【0053】
それぞれの反応器は断熱で、またはいわゆる等温で、つまり10Kより小さく、有利には5Kより小さく、かつ特に有利には1Kより小さい反応器入口から反応器出口の温度差で運転することができる。高すぎる温度上昇は不利な平衡の影響(再分解)および副反応の増加により回避しなくてはならない。有利には反応器カスケードの全ての反応器を10Kより小さい反応器入口から反応器出口の反応混合物の温度差で運転する。温度は適切な装置、たとえば熱交換器として構成された壁を有する反応器による熱の供給または除去により調節するか、またはいわば一定に維持することができる。
【0054】
本発明による反応は、そのつどの反応温度で使用炭化水素混合物の蒸気圧と同じか、またはこれを上回る圧力で、有利には40barを下回る圧力で実施することができる。反応器中で気化の問題を回避するために、圧力は反応混合物の蒸気圧よりも2〜4bar高いほうがよい。
【0055】
本方法はバッチ式または連続式で運転され、通常、固体/液体の接触反応の際に使用される反応器中で実施することができる。連続的に運転される流通反応器を使用する場合、有利には固定床を使用するが、しかし必ずしも使用する必要はない。固定床−流通反応器を使用する場合、液体は上昇または下降して流れることができる。多くの場合、液体の下降流が有利である。交互に運転される反応器もしくは交互に運転される反応器ユニットは有利には同様に上から下へと貫流される。
【0056】
さらに部分的に生成物を返送しながら(再循環式の運転法)、または単流式で反応器を運転することが可能である。生成物を返送しながら反応器の1つもしくは複数を運転する場合、有利には再循環比(循環してポンプ輸送される量対新鮮な供給流の比)を0.1〜10に調節する。その際、第一の反応器のための再循環比は、有利には1〜5、特に2〜3.5である。本発明による方法の有利な実施態様では、第一の反応器を生成物を返送しながら、およびその他の反応器もしくは反応器ユニットを単流式で運転することができ、その際、特に最後の反応器(反応器ユニット)を交互に運転する。使用される反応器の数は有利には2〜10、特に有利には3〜5である(この場合、反応器ユニットは1つの反応器として数える)。
【0057】
管型反応器を使用する場合、触媒堆積物の長さ対直径の比は、反応器の形状寸法により、またはその充填度により変更することができる。従って同一の触媒量および負荷(LHSV)の場合、異なった見かけ流速(Leerrohrgeschwindigkeiten)を達成することができる。反応混合物の一部が返送される反応器はたとえば12〜60m/h、有利には12〜30m/hの見かけ流速で運転することができる。単流式の反応器中では、0.8〜55m/hの範囲、および特に1〜25m/hの範囲の見かけ流速が存在していてよい。
【0058】
触媒負荷(LHSV)は、生成物を返送しながら運転される反応器の場合、有利には0.3〜10h−1、好ましくは1〜6h−1、および特に有利には2〜5h−1である。単流式の反応器の場合、負荷は有利には0.1〜5.0h−1の範囲、好ましくは0.4〜3h−1の範囲および特に有利には0.6〜2h−1の範囲である。
【0059】
本発明による方法は、そのつど、同じか、または異なった反応器温度を有していてもよい、交互に運転される少なくとも1つの反応器または交互に運転される少なくとも1つの反応器ユニットを有する反応器カスケード中で実施する。反応器ユニットとはこの関連において、2つの異なった物質混合物が交互に送入されうる、1つ、もしくは2つの並列接続された反応器であると理解する。有利には本方法を流れの方向へ向かって低下する温度を有する、複数の、直列接続された反応器または反応器ユニット中で実施する。
【0060】
本発明による方法は種々の実施態様で実施することができる。本発明の2つの有利な実施態様はブロック図として図1および図2に例示されている。これらの図は3つの反応器または反応器ユニットを有する。本発明によるTBAを製造するための方法は、2つもしくは3つ以上の反応器(または反応器ユニット)を使用しても実施することができることは明らかである。
【0061】
図1に記載されている、本発明による方法の第一の実施態様では反応水(1a)、イソブテンを含有する使用炭化水素混合物(2)、粗製TBA(19)および反応器(3)の反応搬出物(4)の一部(5)が反応器(3)に導入される。搬出物(4)の一部(6)を反応水(1b)と一緒に第二の反応器(7)中で反応させる。反応器(7)の搬出物(8)は、反応水(1c)と一緒に、反応器(9a)中へ、または切り替え後に反応器(9b)中へ導入される。塔(13)からの塔頂生成物(14)の一部(15)は、反応器(9b)へ、または切り替え後に反応器(9a)へ供給する。場合により流(15)中の水の一部を図面には記載されていない装置中で除去する。たとえば不均一に存在する水をデカンターにより分離することができる。両方の反応器(9a)および(9b)からの両方の搬出物(10)および(11)を合し、かつ流(12)として蒸留塔(13)に供給し、かつここで、イソブテンおよびその他の易揮発性炭化水素を含有する塔頂生成物(14)と、粗製TBA(17)とに分離する。塔頂生成物(14)の一部(16)は炭化水素の排出のために分離する。粗製TBA(17)の一部(19)を反応器(3)へ返送する。他方の一部(18)を図面には記載されてない装置中で、純粋なTBAおよび/またはTBA/水の共沸混合物へと後処理することができる。後処理はたとえば蒸留または抽出により行うことができる。流(12)の組成を均一にするために、該流中に緩衝容器(図面には記載されていない)が備えられていることが有利な場合があり、ここから混合された反応器からの搬出物を蒸留塔(13)へ供給する。
【0062】
図1に記載されている本発明による方法の実施態様では、1変法において両方の反応器(9a)および(9b)を単一の反応器(9)により置き換えることができる。該反応器に、流(8)および反応水からなる混合物または蒸留液(15)を交互に送入する。図1に記載されたこの変法の場合、障害のない連続的な運転を可能にするために、流(8)、(10)、(11)および(15)のための付加的な緩衝容器(図1には記載されていない)が必要である。1以外のサイクル比を調節することができるためには、同様にこの変法により運転するか、またはさらに第三の反応器9cが存在する、図1に記載されている装置のための別の変法を想定することができる。まず反応器9aおよび9bへ水および流8からなる混合物を供給し、かつ同時に反応器9cへ蒸留液15を供給して、そのつど適切に切り替えることにより、2対1のサイクル比を調節することができる。サイクル時間の経過後、蒸留液を反応器9bのみに供給し、その一方で反応器9aおよび9cはこのサイクルの間に水および流8からなる混合物を供給する。サイクル時間の経過後にふたたび切り替えて、今度は反応器9aに蒸留液を供給し、その一方で別の反応器に水および流8を供給する。このサイクル時間の終了後、ふたたび第一のサイクルに従って切り替える。1とは異なるサイクル比を調節することができるためには、2つ以上の反応器が存在しているかどうかとは無関係に、実際のサイクルの終了前に、少なくとも1つの反応器をすでに別のエダクトに切り替えることができる。このやり方で全ての比率を調節することができる。2つ以上の存在する反応器におけるサイクル比の変更のための前記の可能性は図1に記載の装置またはその変法には限定されず、本発明による方法に一般に適用することができる。
【0063】
図2に記載された本発明による方法の第二の実施態様では反応水(1a)、イソブテンを含有する使用炭化水素混合物(2)、粗製TBA(23)および反応器(3)の反応搬出物(4)の一部(5)を反応器(3)へ導入する。搬出物(4)の一部(6)を反応水(1b)と一緒に第二の反応器(7)中で反応させる。反応器(7)の搬出物(8)を反応水(1c)と一緒に反応器(9a)へ、または切り替え後に反応器(9b)へ導入する。塔(20)からの塔頂生成物(21)を反応器(9b)へ、または切り替え後に反応器(9a)へ供給する。反応器搬出物(10)または(11)は、流(8)と反応水(1c)との反応により生じた場合には、塔(20)へ導入する。反応搬出物(10)または(11)は、塔(20)の蒸留液(21)の反応により生じている場合、塔(25)へ供給する。塔(20)中で搬出物(10)または(11)は、場合により図面に記載されていない装置中で、たとえば不均一に存在する水を分離するためのデカンター中で、水を除去した後に、反応器(9a)または(9b)へ返送される、イソブテンを含有する炭化水素混合物と、粗製TBA(27)とに分離する。生じた粗製TBA(流(22)または流(27)または流(22)と流(27)とからなる混合物)の一部(23)を反応器(3)へ返送する。別の部分(28)は、図面に記載されていない装置中で、純粋なTBAおよび/またはTBA/水−共沸混合物へと後処理することができる。流(26)は排出し、かつ別の装置中で公知の方法、たとえば蒸留により後処理することができる。
【0064】
交互に運転される反応器または交互に運転される反応器ユニットの、両方の異なった搬出物が2つの異なった蒸留ユニット中で後処理される実施態様2の場合、反応器供給流の切り替え後に、反応器搬出物の、両方の蒸留ユニットへの切り替えを一定の時間遅らせて実施することは有利である。供給流と排出流との切り替えの間の時間差の最適なパラメータは特に反応器の負荷(LHSV)に依存し、かつ反応器搬出物の組成を追跡することにより容易に決定することができる。従って有利には排出流の切り替えを自動的に、または半自動的に行い、かつそれも供給流の切り替えに依存して時間的に制御するか、または排出流の組成のオンライン測定もしくは成分の濃度、特に水またはTBAの濃度のオンライン測定により行う。
【0065】
前記の供給流および排出流の遅延された切り替えは図2に記載された実施態様に限定されず、一般に、反応器搬出物が交互に運転される反応器から分離のための2つの異なった蒸留塔へと移される場合に、常に想定することができる。
【0066】
図2に記載されている方法の場合、連続的な運転を容易にするために、塔(20)および(25)の供給流のために緩衝容器を備えることは有利である。
【0067】
この第二の実施態様の場合にも、図1に記載されている実施態様と同様に、反応器(9a)および(9b)を1変法では単一の反応器に置き換えることができるか、または1つもしくは複数の別の反応器により補うことができることを指摘すべきである。
【0068】
図2に記載されている本発明による方法の実施態様は、図1に記載されている実施態様とは実質的に、図2に記載されている実施態様が蒸留段階をより多く有し、かつ交互に運転される1つもしくは複数の反応器の両方の異なった生成物搬出物を2つの異なった塔中で分離することができることによって異なるのみである。このことにより図2に記載されている実施態様による方法を用いて、図1に記載されている方法よりも高いイソブテン反応率を達成することができる。しかし図2に記載されている実施態様による方法は、より高い資本の投入およびより高い運転コストを要求する。
【0069】
場合により、図2に記載されている実施態様による方法よりも高いイソブテンのTBAへの反応率を所望する場合、イソブテンを含有する蒸留液(図2の26)を別の反応器(たとえば図2の反応器7)に交互に送入するために使用し、かつここから生じる生成物を第三の塔(図2には記載されていない)中で分離することができる。
【0070】
本発明を以下の実施例において例示的に記載するが、しかし本発明は実施例に記載された実施態様に限定されるべきものではない。
【実施例】
【0071】
内径2.1cmおよび長さ40cmを有する管型反応器中で試験を実施した。該反応器は全ての試験においてH型のイオン交換樹脂Amberlyst (R) 35 Wetを120ml含有していた。全ての試験において反応器は上から下へと貫流された。反応器はそのつど等温で55℃および反応圧力15barで運転したので、使用混合物または生成物混合物はほぼもっぱら液相として存在していた。
【0072】
試験のために以下の組成を有するイソブテンが少ないラフィネート流(X)を使用した:
n−ブタン 15.4質量%、
イソブタン 1.4質量%、
1−ブテン 31.3質量%、
2−ブテン(シスおよびトランス) 46.6質量%、
イソブテン 5.3質量%。
【0073】
より良好な明瞭性のために、以下の本文ではイソブテンではないC−炭化水素を残りのCと記載する。混合物(X=Xa)からTBAと水との混合により使用混合物(Xb)を製造した。混合物(Xa)と混合物(Xb)とを47対61.6の比で混合することにより使用混合物(Xc)が生じた。
【0074】
【表1】

【0075】
使用混合物および/または生成物混合物の組成の分析をガスクロマトグラフィーによりDB1カラム(Agilent J&W)で行った。異なったC−成分をDB1カラムで分離することができないので、C−成分の分離はChrompack社のAl/NaSOカラムで分析した。
【0076】
例1(本発明による)
反応器に混合物(Xa)および(Xb)を交互に送入した。サイクル時間は4時間であった。つまり最初の4時間で混合物(Xa)を供給し、次の4時間で混合物(Xb)を、その後の4時間でふたたび混合物(Xa)を、などと供給した。供給速度は混合物(Xa)に関して47g/hであり、かつ混合物(Xb)に関しては61.6g/hであった。混合物を48時間(混合物(Xa)を6サイクル時間および混合物(Xb)を6サイクル時間)回収し、かつその後、この混合物から平均的な分析が得られた。
【0077】
不均一な試料は次の組成を有していた(質量%):
イソブテン 4.19、
残りのC 81.95、
TBA 10.62、
水 3.04、
その他の物質 0.2。
【0078】
ここから9.2%のイソブテンの反応率が算出された。
【0079】
例2(比較例):
反応器中に使用混合物(Xc)を供給した。供給速度は54.3g/hであった。48hの反応搬出物を回収し、かつ平均的な分析が得られた。
【0080】
反応搬出物は次の組成を有していた(質量%):
イソブテン 4.40、
残りのC 81.95、
TBA 10.33、
水 3.11、
その他の物質 0.21。
【0081】
ここから4.6%のイソブテンの反応率が算出された。
【0082】
両方の試験において48時間でそれぞれの成分から同一の物質量を反応器に供給した。それにもかかわらず、本発明による例1における試験は比較例(例2)における試験のようなイソブテン反応率の2倍の値であった。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の有利な1実施態様を示すブロック図
【図2】本発明の有利な1実施態様を示すブロック図
【符号の説明】
【0084】
1a 反応水、 1b 反応水、 1c 反応水、 2 イソブテンを含有する炭化水素混合物、 3 反応器、 4 反応搬出物、 5 部分流、 6 部分流、 7 反応器、 8 搬出物、 9a 反応器、 9b 反応器、 10 搬出物、 11 搬出物、 12 流、 13 蒸留塔、 14 塔頂生成物、 15 部分流、 16 部分流、 17 粗製TBA、 18 部分流、 19 粗製TBA、 20 塔、 21 塔頂生成物、 22 粗製TBA、 23 部分流、 24 部分流、 25 塔、 26 流、 27 粗製TBA、 28 部分流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソブテンを含有する炭化水素混合物と水とを固体の酸性触媒を用いて反応器カスケード中で反応させることによりt−ブタノール(TBA)を製造する方法において、少なくとも1つの反応器に2つの異なったイソブテン含有炭化水素混合物を交互に送入し、その際、該混合物の一方が、他方の混合物よりも高いt−ブタノール含有率および高い含水率を有することを特徴とする、t−ブタノール(TBA)を製造する方法。
【請求項2】
より少ないt−ブタノール含有率を有する炭化水素混合物が1質量%より少ないt−ブタノールを含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
より少ないt−ブタノール含有率を有する炭化水素混合物が0.1質量%より少ないt−ブタノールを含有する、請求項2記載の方法。
【請求項4】
より少ないt−ブタノール含有率を有する炭化水素混合物が1〜30質量%のイソブテンの含有率を有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
より少ないt−ブタノール含有率を有する炭化水素混合物が、炭化水素混合物中で可溶性である含有率を最大で10%超える水の含有率を有する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
イソブテンを含有する2つの異なった混合物を反応器に交互に送入する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
1つの反応器ユニットを形成する2つの、互いに並列接続された反応器に、2つの異なったイソブテンを含有する混合物を交互に送入する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
交互に運転される反応器の、交互の送入により得られる両方の異なった反応搬出物を一緒に蒸留ユニット中で、炭化水素を含有する流と、粗製t−ブタノールとに分離する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
交互に運転される反応器の、交互の送入により得られる両方の異なった反応搬出物を別々に、2つの蒸留ユニット中で、炭化水素を含有する流と、粗製t−ブタノールとに分離し、かつより高いイソブテン含有率を有する塔頂生成物を、交互に運転される反応器の送入のために使用する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2つの反応器または反応器ユニットを交互に運転する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
混合物の交換が0.5〜10時間のサイクルで行われるように、反応器に交互に送入する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
水およびTBAがより少ない混合物による送入に対する、水およびTBAがより富化された混合物による反応器の送入の時間的な比率が、1以上である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
水およびTBAがより富化された混合物による反応器の送入対水およびTBAがより少ない混合物による反応器の送入の時間的な比率を、1.5対1〜2.5対1に調節する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
方法を30〜120℃の温度で実施する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
反応器カスケードの第一の反応器へ、25質量%より大きいイソブテンの含有率を有する炭化水素混合物を供給する、請求項1から14までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
交互に運転されない反応器カスケードの反応器において、それぞれの反応器への反応混合物の導入前に水を供給する、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
反応器カスケードの全ての反応器を、10Kより小さい反応器入口から反応器出口への反応混合物の温度差で運転する、請求項1から16までのいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
触媒として、1〜60m/hの線速度で運転される反応器中で、0.1〜5mmの平均粒径を有するイオン交換樹脂を使用する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
2つの異なったイソブテンを含有する炭化水素混合物が交互に送入され、その際、該混合物の一方は他方の混合物よりも高いt−ブタノール含有率および高い含水率を有する反応器が、反応器カスケードの最後の反応器であるか、または並列接続された2つ以上の反応器からなる最後の反応器ユニットである、請求項1から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
請求項1から19までのいずれか1項記載の方法により得られる、t−ブタノールを含有する混合物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−8689(P2006−8689A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184097(P2005−184097)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(398054432)オクセノ オレフィンヒェミー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】OXENO Olefinchemie GmbH
【Fターム(参考)】