説明

イットリウムを含有する電着浴

【課題】電着塗装された金属基板、特に未処理のスチールに改良された腐食耐性を与えること。
【解決手段】水性媒体中に分散された樹脂相を含む改良された電着浴組成物が開示され、この樹脂相は、活性水素を含有するイオン性電着可能樹脂および硬化剤から構成され、ここで改良点は、電着浴重量に基づき、100万重量部あたり約10重量部〜約10,000重量部の全イットリウムの少なくとも1種のイットリウム供給源の電着浴への添加を含む。この電着浴組成物は、好ましくはカチオン性であり、未処理の鋼を含む種々の金属基板上に優れた腐食耐性を提供する。本発明の改良された電着浴組成物を使用して導電性基板を電着塗装する方法もまた、開示される。本発明の方法を使用してコートされる金属性基板もまた、開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、改良されたコーティング組成物、特に、水性媒体中に分散された樹脂相、イオン電着可能な樹脂からなる樹脂相、その硬化剤、イットリウム供給源を含む、電着浴;ならびに電着の方法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
電着は、コーティング適用方法として、適用される電圧の影響下で、伝導物質上にフィルム形成組成物を沈着する方法を含む。電着は、コーティング産業において益々重要になっている。なぜならば、非電気泳動コーティング手段と比較して、電着は、増加した塗装利用、改良された腐食保護および低い環境汚染を提供するからである。
【0003】
当初、電着は、アノードとして役立つ、コーティングされたワークピース(workpiece)と共に処理された。これは、俗にアニオン性電着と呼ばれた。しかし、1972年にカチオン性電着が、商業的に導入された。この時から、カチオン性電着は、確実に人気を得、今日では、はるかに最も普及した電着方法である。世界中で生産される全自動車の80%を超えるものが、カチオン性電着によって、1次コーティングされる。
【0004】
代表的に、電着可能なコーティングは、電着可能なフィルム形成ポリマーおよび硬化剤を、特に色素と組み合わせて含む。、クロム酸珪酸鉛(lead silica chromate)、塩基性の珪酸鉛、クロム酸鉛、および硫酸鉛のような鉛含有色素は、しばしば、電着可能なコーティングに使用される。なぜならば、この銅含有色素は、電着塗装された物質に、優れた腐食耐性を与えるからである。しかし、カチオン電着浴に使用される酸は、しばしば、電着浴の水相において溶解性である、鉛塩を形成する鉛色素の一部を可溶化する。これらの鉛塩は、しばしば、それらの方法をこの浴の限外濾過に見出す、従って、金属鉛および/またはイオン性または有機鉛含有物質の除去および引き続く付着を必要とする。
【0005】
近年、環境への考慮に起因して、欧州および日本において特に、鉛を含まないコーティングの使用が、指定されている。過剰の量の表面コーティングが、鉛を含まないコーティングのカチオン性電着により達成され得るが、腐食阻止鉛色素の除去は、特に、未処理または不充分に前処理されたスチール基板に適用される場合、これらのコーティングの腐食耐性を下げる結果となり得る。
特許文献1は、ニッケル、コバルトまたは鉄の金属マトリクスの複合体電着によって適用される、基板上での金属コーティングを開示する。これは、CrAlM2の一部を含み
、ここで、M2は、イットリウム、シリコン、またはチタンである。この複合体電着金属
コーティングは、基板に、腐食耐性を与える。これは、活性媒体に使用され、特にガスタービンブレードをコーティングするために有用である。この「コーティング」は、天然の完全な金属であり、そして基板に付着した金属の拡散を達成するために、700℃、好ましくは、1100℃を超える温度で、基板を融合しなければならない。このようなコーティングは、普通の工業的な塗装での一般的な使用は、適切ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,789,441号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の有機コーティングの腐食耐性を改良するためにイットリウムを使用することは、当該分野において公知ではない。従来のカチオン性電着可能なコーティングにおいて、イットリウムの腐食防止剤としての効果もまた、公知でない。従って、イットリウム供給源を含み、鉛を含有しない電着浴を提供することは、利点があり、このイットリウムにより、電着塗装された金属基板、特に未処理のスチールに改良された腐食耐性を与える。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明に従って、コーティング組成物は、以下:(a)活性水素基を含有する樹脂、および(b)上記(a)の活性水素基と反応する官能基を有する硬化剤を含む。この組成物は、全樹脂固体の重量に基づき、約0.005重量%〜約5重量%、好ましくは、2.5重量%以下、そしてより好ましくは1.0重量%以下のイットリウムの量(イットリウム元素として測定)で存在する少なくとも1種のイットリウム化合物を含む。
【0009】
特定の実施形態において、本発明は、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、改良された腐食耐性を有する、電着浴に関する。この樹脂相が、以下の成分:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂、および
(b)上記(a)の活性水素基と反応する官能基を有する硬化剤を含む。少なくとも1種のイットリウム化合物が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約10重量部〜約10,000重量部の全イットリウムの量(イットリウム元素として測定)で電着浴中に存在する。
【0010】
電気回路内の荷電した電極として作用する導電性基板を電着塗装する方法がまた提供される。この電気回路は、上記の水性電着浴組成物中に浸漬される、電極および反対に荷電した対極、ならびにこの方法によってコーティングされる金属基板を含む。
【0011】
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)電着可能コーティング組成物であって、該コーティング組成物が、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、該樹脂相が、以下:
(a)活性水素を含有するイオン性電着可能樹脂、および
(b)該(a)の該活性水素と反応性の官能基を有する硬化剤、
を含有し、
改良点が、該組成物において、該電着可能コーティング組成物の全樹脂固体の重量に基づき、約0.005重量%〜約5重量%のイットリウムの量で存在する少なくとも1種のイットリウム供給源を含有することを含む、電着可能コーティング組成物。
(項目2)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、存在するイットリウムの量が、該電着可能コーティング組成物中の全樹脂固体の重量に基づき約1.0重量%以下である、電着可能コーティング組成物。
(項目3)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、該組成物が実質的に鉛を含まない、電着可能コーティング組成物。
(項目4)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記樹脂相が少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、電着可能コーティング組成物。
(項目5)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記イットリウム供給源が、酸化イットリウム、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるイットリウム化合物である、電着可能コーティング組成物。
(項目6)項目5に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記イットリウム化合物が、酸化イットリウムである、電着可能コーティング組成物。
(項目7)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの可溶塩である、電着可能コーティング組成物。
(項目8)項目1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記活性水素を含有するイオン性樹脂がカチオン性である、電着可能コーティング組成物。
(項目9)電着浴であって、該電着浴が、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、該樹脂相が、以下:
(a)活性水素を含有するイオン性電着可能樹脂、および
(b)該(a)の該活性水素と反応性の官能基を有する硬化剤、
を含み、
改良点が、該電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約10重量部〜約10,000重量部のイットリウムの量で存在する少なくとも1種のイットリウムの供給源を含有する電着浴を含む、電着浴。
(項目10)項目9に記載の電着浴であって、ここで、イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約1000重量部以下である、電着浴。
(項目11)前記浴が実質的に鉛を含まない、項目9に記載の電着浴。
(項目12)前記樹脂相が、少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、項目9に記載の電着浴。
(項目13)項目9に記載の電着浴であって、ここで、前記イットリウム供給源が、酸化イットリウム、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される、電着浴。
(項目14)項目13に記載の電着浴であって、ここで、前記イットリウム化合物が、酸化イットリウムである、電着浴。
(項目15)項目9に記載の電着浴であって、ここで、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの可溶塩である、電着浴。
(項目16)項目9に記載の電着浴であって、前記活性水素を含有するイオン性樹脂がカチオン性である、電着浴。
(項目17)コーティング組成物であって、以下:
(a)活性水素を含有する樹脂、および
(b)(a)の該活性水素と反応性の官能基を有する硬化剤、
の成分を含有し、
ここで、該コーティング組成物が、該コーティング組成物中の全樹脂固体の重量に基づき、約0.005重量%〜約5.0重量%の、水性媒体に可溶なイットリウム化合物を含有する、コーティング組成物。
(項目18)電気回路内の荷電した電極として作用する導電性基板を電着塗装する方法であって、該電気回路が該電極および反対に荷電した対電極を含み、該電極が水性電着塗装組成物中に浸漬される、方法であり、該方法は、該電極間に電流を通し、実質的に連続したフィルムとして該基板上に該電着塗装組成物の堆積を生じる工程を包含し、該水性電着塗装組成物が、以下:
(a)活性水素を含有するイオン性電着可能樹脂、および
(b)該(a)の該活性水素と反応性の官能基を有する硬化剤、
を含有し、
ここで、改良点が、該電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約10重量部〜約10,000重量部の全イットリウムの量で存在する少なくとも1種のイットリウム化合物を含有する電着浴を含む、方法。
(項目19)項目18に記載の方法であって、前記全イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約1000重量部以下である、方法。
(項目20)項目18に記載の方法であって、前記全イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり約500重量部以下である、方法。
(項目21)前記電着浴が実質的に鉛を含まない、項目18に記載の方法。
(項目22)前記樹脂相が、少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、項目18に記載の方法。
(項目23)項目18に記載の方法であって、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの可溶塩である、方法。
(項目24)項目18に記載の方法であって、前記イットリウム化合物が、酸化イットリウムである、方法。
(項目25)前記基板がカソードである、項目18に記載の方法。
(項目26)前記基板が未処理の鋼からなる、項目18に記載の方法。
(項目27)前記基板が亜鉛めっきされた鋼である、項目18に記載の方法。
(項目28)前記基板がアルミニウムから構成されている、項目18に記載の方法。
(項目29)項目26に記載の方法によってコーティングされた未処理の鋼基板。
(項目30)項目27に記載の方法によってコーティングされた亜鉛めっきされた鋼基板。
(項目31)項目28に記載の方法によってコーティングされたアルミニウム基板。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明の詳細な説明)
一般に、本発明の電着浴は、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、この樹脂相が、以下の成分:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂、および
(b)上記(a)の活性水素基と反応する官能基を有する硬化剤を含み、ここで、この改良体は、100万重量部あたり約10重量部〜約10,000重量部、好ましくは、約5,000重量部以下、そしてより好ましくは、約1,000重量部以下の全イットリウムの量(イットリウム元素として測定)で存在するイットリウムを含む、電着浴を含有する。
【0013】
電着浴の重量に基づく、100万重量部あたり約10重量部の全イットリウムより少ないレベルにおいて、電着塗装された基板の腐食耐性における識別可能な改良は、観測されない。10,000ppmを超えるイットリウムのレベルにおいて、電着塗装浴組成物の安定性および適用特性は、否定的な効果を示し得る。
【0014】
可溶および不溶のイットリウム化合物の両方は、本発明の電着浴でのイットリウム供給源として役立ち得る。本発明の鉛を含まない電着浴に使用するのに適切なイットリウム供給源の例は、可溶有機イットリウム塩および無機イットリウム塩(例えば、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、ギ酸イットリウム、炭酸イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、および硝酸イットリウム)である。イットリウムが、水溶液として電着塗装浴に添加される場合、硝酸イットリウム、(容易に利用可能なイットリウム化合物)が、好ましいイットリウム供給源である。本発明の電着浴において使用するのに適切である他のイットリウム化合物は、有機イットリウム化合物および無機イットリウム化合物(例えば、酸化イットリウム、臭化イットリウム、水酸化イットリウム、モリブデン酸イットリウム、硫酸イットリウム、珪酸イットリウム、およびシュウ酸イットリウムである。有機イットリウム錯体およびイットリウム金属がまた、使用され得る。このイットリウムが、この色素ペーストの成分として電着塗装浴に取り込まれる場合、酸化イットリウムが、好ましいイットリウムの供給源である。
【0015】
上記のイットリウム化合物の加えて、本発明の電着浴はまた、主なフィルム形成ポリマーとして、活性水素含有イオン性(好ましくは、カチオン性)電着可能樹脂を含む。広範の電着可能なフィルム形成ポリマーが公知であり、そしてこのポリマーが、「水分散性」、すなわち水中で可溶化、分散またはエマルジョン化するのに適用される限り、本発明の電着浴において使用され得る。この水分散性ポリマーは、天然においてイオン性であり、すなわち、このポリマーは、負電荷を与えるためにアニオン性官能基を含み、または好ましくは、正電荷を与えるためにカチオン性官能基を含む。
【0016】
アニオン電着浴組成物に使用するために適切なフィルム形成樹脂の例は、塩基可溶化カルボン酸含有ポリマー(例えば、乾燥油脂または半乾燥脂肪酸エステルと、ジカルボン酸または酸無水物との反応生成物または付加物;および脂肪酸エステル、不飽和酸または酸無水物と、さらに多価アルコールと反応する任意のさらなる不飽和修飾物質との反応生成物)である。不飽和カルボン酸のヒドロキシ−アルキルエステル、不飽和カルボン酸および少なくとも1つの他のエチレン不飽和モノマーの、少なくとも部分的に中和されたインターポリマーもまた、適切である。さらに別の適切な電着可能な樹脂は、アルキド−アミノプラスト(aminoplast)ベヒクル(すなわち、アルキド樹脂およびアミン−アルデヒド樹脂を含むベヒクル)を含む。なお別のアニオン電着樹脂組成物は、樹脂状多価アルコールの混合エステルを含む。これらの組成物は、詳細に、米国特許第3,749,657号(9段、1〜75行および10段1〜13行)(この全てが本明細書中に参考として援用される)に記載される。他の酸官能化ポリマーはまた、当業者に周知のように、リン酸化ポリエポキシドまたはリン酸化アクリルポリマーのように使用され得る。
【0017】
上述のように、活性水素含有イオン電着樹脂(a)が、カチオン性であり、かつカソード上で堆積し得ることが好ましい。このようなカチオン性フィルム形成樹脂の例としては、ポリエポキシドと一級または二級アミンとの酸可溶化反応生成物のようなアミン塩基含有樹脂(例えば、米国特許第3,663,389号;同第3,984,299号;同第3,947,338号および同第3,947,339号に記載される)が挙げられる。通常、これらのアミン塩含有樹脂は、ブロックされたイソシアネート硬化剤と組合せて使用される。このイソシアネートは、上述の米国特許第3,984,299号に記載されるように、完全にブロックされ得るか、またはイソシアネートは、部分的にブロックされ得、そして樹脂骨格(例えば、米国特許第3,947,338号に記載される)と反応し得る。また、米国特許第4,134,866号およびDE−OS第2,707,405号に記載されるような単成分組成物は、フィルム形成樹脂として使用され得る。エポキシ−アミン反応生成物に加えて、フィルム形成樹脂はまた、米国特許第3,455,806号および同第3,928,157号に記載されるようなカチオン性アクリル樹脂から選択され得る。
【0018】
アミン塩基含有樹脂に加えて、四級アンモニウム塩基含有樹脂もまた使用され得る。これらの樹脂の例は、有機ポリエポキシドと三級アミン塩との反応から形成される樹脂である。このような樹脂は、米国特許第3,962,165号;同第3,975,346号;および同第4,001,101号に記載される。他のカチオン性樹脂の例は、それぞれ米国特許第3,793,278号および同第3,984,922号に記載されるような、三級スルホニウム塩基含有樹脂および四級ホスホニウム塩基含有樹脂である。また、欧州特許出願第12463号に記載されるようなエステル交換を介して硬化するフィルム形成樹脂が使用され得る。さらに米国特許第4,134,932号に記載されるような、Mannich塩基から調製されるカチオン性組成物が、使用され得る。
【0019】
本発明が特に有効な樹脂は、一級および/または二級アミン基を含む正に荷電した樹脂である。このような樹脂は、米国特許第3,663,389号;同第3,947,339号;および同第4,116,900号に記載される。米国特許第3,947,339号において、ジエチレントリアミンまたはトリエチレンテトラアミンのようなポリアミンのポリケチミン誘導体は、ポリエポキシドと反応される。反応生成物を、酸で中和し、そして水に分散すると、遊離の一級アミン基が生成する。また、ポリエポキシドが、過剰のポリアミン(例えば、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラアミン)と反応し、そして過剰のポリアミンが真空で反応混合物から減圧で除去される場合、等価な生成物が形成される。このような生成物は、米国特許第3,663,389号および同第4,116,900号に記載される。
【0020】
上記の活性水素含有イオン電着可能な樹脂は、本発明の電着浴中に、電着浴の総重量に基づいて約1〜約60重量%の量で、好ましくは約5〜約25重量%の量で存在する。
【0021】
本発明の電着浴の樹脂相は、直前に記載されるイオン電着可能樹脂(a)の活性水素基と反応するように適合された硬化剤(b)を含む。ブロックされた有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤の両方は、本発明における使用に適切であるが、ブロックされたイソシアネートは、本明細書中でカソード電着のために好ましい。
【0022】
アミノプラスト樹脂(これは、アニオン電着に好ましい硬化剤である)は、アミンまたはアミドとアルデヒドとの縮合生成物である。適切なアミンまたはアミドの例は、メラミン、ベンゾグアナミン、尿素および類似化合物である。一般に、使用されるアルデヒドは、ホルムアルデヒドであるが、生成物は、他のアルデヒド(例えば、アセトアルデヒドおよびフルフラール)から製造され得る。縮合生成物は、使用される特定のアルデヒドに依存して、メチルオール基または同様のアルキルオール基を含む。好ましくは、これらのメチルオール基は、アルコールとの反応によってエーテル化される。使用される種々のアルコールとしては、1〜4個の炭素原子を含む一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびn−ブタノール)が挙げられ、メタノールが好ましい。アミノプラスト樹脂は、American Cyanamid Co.からCYMELの商標で、そしてMonsanto Chemical Co.からRESIMENEの商標で市販されている。
【0023】
アミノプラスト硬化剤は、代表的には活性水素含有アニオン電着可能樹脂と組合せて、約5重量%〜約60重量%の範囲の量で、好ましくは約20重量%〜約40重量%の範囲の量で、利用される(パーセントは、電着浴中の樹脂固体の総重量に基づく)。
【0024】
カソード電着における使用のために好ましい硬化剤は、ブロックされた有機ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、米国特許第3,984,299号、1段1〜68行、2段および3段1〜15行に記載されるように、完全にブロックされ得、または米国特許第3,947,338号2段65〜68行、3段および4弾1〜30行(これらは、本明細書中に参考として援用される)に記載されるように、部分的にブロックされてそしてポリマー骨格と反応する。「ブロックされる」とは、イソシアネート基が、化合物と反応して、その結果生じたブロックされたイソシアネート基が、周囲温度で活性水素に対して安定であるが、通常90℃と200℃との間の高温でフィルム形成ポリマー中の活性水素に対して反応性であるということを意味する。
【0025】
適切なポリイソシアネートとしては、芳香族および脂肪族のポリイソシアネート(環状脂肪族ポリイソシアネートを含む)が挙げられ、そして代表的な例としては、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、2,4−トルエンジイソシアネートまたは2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)(これらの混合物を含む)、p−フェニレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネートおよびヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、フェニルメタン−4,4’−ジイソシアネートとポリメチレンポリフェニルイソシアネートとの混合物が挙げられる。より高次のポリイソシアネート(例えば、トリイソシアネート)が使用され得る。例としては、トリフェニルメタン−4,4’,4’’−トリイソシアネートが挙げられる。多価アルコール(例えば、ネオペンチルグリコール)およびトリメチルオールプロパンとのイソシアネート()−プレポリマーならびにポリマー多価アルコール(例えば、ポリカプロラクトンジオールおよびトリオール(NCO/OH等量比が1より大きい)とのイソシアネート()−プレポリマーはまた、使用され得る。
【0026】
ポリイソシアネート硬化剤は、代表的には活性水素含有カチオン電着可能樹脂と組合せて、約5重量%〜約60重量%の範囲、好ましくは、約20重量%〜約50重量%の範囲(パーセントは、電着浴の樹脂固体の総重量に基づく)の量で利用される。
【0027】
本発明の水性組成物は、水性分散の形態である。用語「分散」は、二相の透明な、半透明な、または不透明な樹脂系であると考えられ、この系において、樹脂は分散相であり、水は、連続相である。樹脂相の平均粒子サイズは、一般的に1.0ミクロン未満であり、そして通常0.5ミクロン未満であり、好ましくは0.15ミクロン未満である。
【0028】
水性媒体中の樹脂相の濃度は、水性分散の総重量に基づいて、少なくとも1重量%であり、そして通常約2〜約60重量%である。本発明の組成物が、樹脂濃縮物の形態である場合、これらは、一般的には、水性分散の重量に基づいて約20〜約60重量%の樹脂固体含有量を有する。
【0029】
本発明の電着浴は、代表的には以下の2つの成分として供給される:(1)クリア樹脂フィード(clear resin feed)、これは、一般的に活性水素含有イオン電着可能樹脂、すなわち、主要なフィルム形成ポリマー、硬化剤。および任意のさらなる水に分散可能な非着色成分を含む;(2)顔料ペースト、これは、一般的には1つ以上の顔料、水に分散可能な粉砕樹脂(これは、主要なフィルム形成ポリマーと同じであっても異なっていてもよい)および必要に応じて添加剤(例えば、湿潤剤または分散補助剤)を含む。電着浴成分(1)および(2)は、水および通常合体溶媒を含む水性媒体中に分散される。
【0030】
イットリウム化合物が電着浴中に組み込まれ得る種種の方法が存在するということが理解されるべきである。可溶性のイットリウム化合物は、「ニート」で添加され得る。すなわち、前混合または他の成分と反応することなしに直接浴に添加される。あるいは、可溶性イットリウム化合物は、イオン性樹脂、硬化剤および/または任意の他の非着色成分を含み得る、前分散されたクリア樹脂フィードに添加され得る。好ましくは、可溶性イットリウム化合物は、「ニート」で電着浴へ添加される。他方では、不溶性イットリウム化合物および/またはイットリウム顔料は、好ましくは電着浴ヘのペーストの混合の前に、顔料ペースト成分と前混合される。
【0031】
本発明の電着浴は、唯一の腐蝕を抑制する無機成分としてイットリウムを含有し得るか、または他の腐蝕を抑制する無機もしくは有機成分(例えば、カルシウム、ビスマス、またはフェノール官能化ポリマーのようなポリフェノール)を補充され得る。好ましくは、電着浴は、実質的に無鉛である。
【0032】
本発明の電着浴は、電着浴の総重量に基づいて、通常約5〜25重量%の範囲内の樹脂固体含有量を有する。
【0033】
上記のように、水に加えて、水性媒体は、合体溶媒を含み得る。有用な合体溶媒としては、炭化水素、アルコール、エステル、エーテルおよびケトンが挙げられる。好ましい合体溶媒としては、アルコール、多価アルコールおよびケトンが挙げられる。特定の合体溶媒としては、イソプロパノール、ブタノール、2−エチルヘキサノール、イソホロン、2−メトキシペンタノン、エチレングリコールおよびプロピレングリコールならびにエチレングリコールのモノエチルエーテル、モノブチルエーテルおよびモノヘキシルエーテルが挙げられる。合体溶媒の量は、一般的には、水性媒体の総重量に基づいて、約0.01重量%と25重量%との間であり、使用される場合、好ましくは約0.05重量%〜約5重量%である。
【0034】
上記で議論したように、顔料成分および、所望されるならば、種々の添加剤(例えば、表面活性剤、湿潤剤)または触媒が、分散中に含まれ得る。顔料成分は、顔料(例えば、酸化鉄、クロム酸ストロンチウム、カーボンブラック、炭塵、二酸化チタン、滑石、硫酸バリウム)、ならびに着色顔料(例えば、カドミウムイエロー,カドミウムレッド、クロムイエローなど)を含む従来の型の顔料であり得る。分散の顔料の含有量は、通常樹脂に対する顔料の比で表される。本発明の実施において、顔料が使用される場合、樹脂対顔料比は、通常約0.02〜1:1の範囲である。上記の他の添加剤は、通常分散中に、樹脂固体の重量に基づいて、約0.01〜3重量%の量である。
【0035】
本発明の電着コーティング組成物は、電着によって種々の導電性基板、特に金属(例えば、未処理鋼、亜鉛メッキ鋼、アルミニウム、銅、マグネシウム)および導電性炭素被覆材料に適用され得る。電着のために印加されるボルト数は、変化し得、そして例えば、わずか1ボルトから数千ボルトであり得るが、代表的には50ボルトと500ボルトとの間である。電流密度は、通常0.5アンペア/平方フィートと5アンペア/平方フィートとの間であり、そして電着の間に減少する傾向があり、これは、絶縁フィルムの形成を示す。
【0036】
コーティングが電着により塗布された後、通常約90℃〜約260℃のような高温で、約1分から40分間焼成することにより硬化される。
【0037】
以下の実施例は本発明の例示であるが、本発明をその詳細に限定するとはみなされない。他に示されない限り、以下の実施例ならびに明細書の全体を通して、全ての割合および百分率は、重量による。
【実施例】
【0038】
(実施例)
実施例AおよびBは、カチオン性の電着可能な樹脂の調製を記載し、実施例Aはまた、ポリウレタン架橋剤を含む。実施例CおよびDの各々は、四級アンモニウム塩を含む色素粉砕樹脂の調製を記載する。
【0039】
実施例AAおよびBBは、本発明の電着浴組成物における使用に適切な色素ペーストの調製を記載する。実施例CCおよびDDは、それぞれ実施例1および2、ならびに実施例3および4の電着浴組成物における使用のための電着浴プレミックスの調製を記載する。実施例EEは、実施例2および4の浴組成物における使用のための可溶性イットリウム溶液の調製を記載する。表1は、本発明の鉛非含有電着浴組成物において、可溶性イットリウム溶液の包含によって観測された、スクライブクリープ(scribe creep)腐食耐性における改善を例証する。
【0040】
(実施例A)
ポリウレタン架橋剤を、以下の成分の混合物から調製した:
【0041】
【表1】

1ビスフェノールAおよび6つのエチレンオキシドを含むジオールの付加物、BASF
Corp.からMACOL 98A MOD1として市販。
2Dow Chemical Co.から入手可能な重合体メチレンジフェニルジイソシ
アネート。
【0042】
適切に備え付けられた12リットルの丸底フラスコに、充填Iの成分を添加した。穏やかな攪拌下で、これらの成分を、窒素ブランケット下で50℃の温度まで加熱した。PAPI 2940を、約2時間かけて徐々に添加し、温度を110℃まで上げ、続いて約176.6グラムのメチルイソブチルケトンでリンスした。この反応混合物を、赤外分光法でイソシアネートが検出されなくなるまで110℃で保持した。次いで、残りの1072.7グラムのメチルイソブチルケトンを、この反応混合物に添加し、これは約83%の最終固体成分を有した(110℃で1時間)。
【0043】
カチオン性樹脂を、以下の成分の混合物から調製した:
【0044】
【表2】

1Shell Oil and Chemical Co.から市販のビスフェノールA
のジグリシジルエーテル。
2付加物を、1:2のモル比のエトキシ化されたビスフェノールA(ビスフェノールAの
1モル当たり9モルのエチレンオキシド)および無水ヘキサヒドロフタル酸を、0.05%のトリエチルアミン触媒の存在下で混合し、そして100℃で3.5時間保持して調製した。
3BASF Corp.から市販の界面活性物質。
42モルのジチレングリコール(dithylene glycol)モノブチルエーテ
ルおよび1モルのホルムアルデヒドの反応生成物、98%活性、McCollumらの米国特許第4,891,111号に記載のように調製した。
5Huntsman Corporationから市販。
【0045】
適切に備え付けられた12リットルの丸底フラスコに、充填Iの成分を添加した。この反応混合物を穏やかに攪拌し、そして窒素ブランケット下で約75℃の温度まで加熱し、続いて充填IIを添加した。この反応混合物を発熱させ、そしてこの発熱の終了後に、反応温度を約120℃〜123℃に調節し、そしてこの温度で約2時間保持した。この反応混合物は、固体に基づいて20,000より大きなエポキシ当量、固体に基づいて1グラム当たり0.77ミリ当量のアミン含有量、およびS/TのGardner−Holdt気泡粘度(1−メトキシ−2−プロパノールで50%固体まで減少した場合)を有した。
【0046】
上記で調製したカチオン性樹脂の水分散物を、以下の成分の混合物から調製した:
【0047】
【表3】

1メチルイソブチルケトン中のガム・ロジン(Aldrich Chemical Co
mpany,Inc.から市販)の30%溶液。
【0048】
充填Iを、攪拌器を備えた浴に添加し、そして50℃の温度まで加熱した。この温度で、このカチオン性樹脂を添加し、そして完全に分散するまで約30分間混合し、この時点でガム・ロジン(充填III)を徐々に添加した。このカチオン性樹脂およびガム・ロジンを15分間混合し、この時点で充填IVの脱イオン水を添加した。この分散物を約60℃〜65℃の温度まで加熱し、そして約20インチ水銀の減圧に約2時間供し、この時間の間に、減圧蒸留によってメチルイソブチルケトンを除去した。得られた分散物は、41.9%の固体を有した(110℃で1時間)。
【0049】
(実施例B)
カチオン性樹脂を、以下の成分の混合物から調製した:
【0050】
【表4】

1ビスフェノールAおよび6つのエチレンオキシドを含むジオールの付加物、BASF
Corp.からMACOL 98A MOD1として市販。
22モルのジエチレングリコールモノブチルエーテルおよび1モルのホルムアルデヒドの
反応生成物、98%活性、McCollumらの米国特許第4,891,111号に記載のように調製した。
3ジエチレントリアミンおよびメチルイソブチルケトンから誘導されるジケチミン(メチ
ルイソブチルケトン中の73%固体)、Jerabekらの米国特許第3,947,339号に記載のように調製した。
【0051】
適切に備え付けられた5リットルのフラスコに、充填Iの成分を、上記に示す順序で、穏やかな攪拌下で添加した。この混合物を、窒素ブランケット下で125℃の温度まで加熱し、次いで約145℃〜160℃の温度まで発熱させ、続いて約145℃の温度で1時間保持した。次いで、この反応混合物を、約125℃の温度まで冷却し、この時点で、充填IIの成分を添加し、そしてこの反応混合物をその温度でさらに2時間保持した。この保持時間の後、約85%の反応生成物を、酢酸溶液(28.9g(0.481当量)および190.0グラムの脱イオン水)にゆっくりと注ぎ、そして30分間混合した。さらなる脱イオン水を、分散固体を36%まで減少させるために添加した(110℃で1時間)。次いで、このカチオン性分散物を、メチルイソブチルケトンを除去するために吸引除去(vacuum strip)した。
【0052】
(実施例C)
この実施例は、四級アンモニウム塩を含む色素粉砕樹脂の調製を記載する。実施例C−1は、アミン−酸塩四級化剤の調製を記載し、そして実施例C−2は、エポキシ基含有ポリマーの調製を記載し、これは続いて実施例C−1のアミン−酸塩で四級化される。
【0053】
(実施例C−1)
アミン−酸塩四級化剤を、以下の手順を使用して調製した:
適切に備え付けられた5リットルのフラスコに、445重量部のN,N−ジメチルエタノールアミンを添加した。穏やかな攪拌下で、660重量部のPAPI2940(Dow
Chemical Co.から市販の重合体ジイソシアネート)を、1.5時間かけてゆっくりと添加し、続いて、実施例AおよびBについて上記で記載した溶媒22.1重量部でリンスした。この添加の間に、この反応混合物を約89℃の温度まで発熱させ、そして赤外分光法によってイソシアネートの反応の完了が決定されるまで、この温度で約1時間保持した。この時点で、512重量部の88%の乳酸水溶液を25分間かけて添加し、続いて約2136.11重量部の脱イオン水を添加した。この反応温度を、70.6の行き詰まった(stalled)酸価が得られるまで、約80℃で約6時間保持した。
【0054】
(実施例C−2)
この四級アンモニウム塩の基を含有するポリマーを、以下の手順を使用して調製した。
【0055】
適切に備え付けられた5リットルのフラスコに、穏やかな攪拌下で、528.8重量部のEPON 828(Shell Oil and Chemical Co.から市販のビスフェノールAのポリグリシジルエーテル);224.9重量部のビスフェノールA;実施例AおよびBについて上記で記載した溶媒83.7重量部;ならびに0.5重量部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを添加した。この反応混合物を、約140℃まで加熱し、約180℃まで発熱させ、次いで約160℃まで冷却し、そしてこの温度で約1時間保持した。この時点で、この重合体生成物は、982.9のエポキシ当量を有した。次いで、この反応混合物を約130℃の温度まで冷却し、このときに、実施例AおよびBの溶媒約164.9重量部を添加し、そして温度を約95℃〜100℃まで低下させ、続いて約418.4重量部の実施例C−1のアミン−酸四級化剤を、約15分かけて添加し、続いて約1428.1重量部の脱イオン水を添加した。この反応温度を、この反応生成物の酸価が1.0未満になるまで、約80℃で約6時間保持した。得られた四級アンモニウム塩の基を含有する色素粉砕樹脂を、約334.7重量部の実施例AおよびBの溶媒でさらに減少させた。
【0056】
(実施例D)
この実施例は、第2の四級アンモニウム塩の基を含有する色素粉砕樹脂の調製を記載する。実施例D−1は、アミン−酸塩四級化剤の調製を記載し、そして実施例D−2は、エポキシ基含有ポリマーの調製を記載し、これは続いて実施例D−1のアミン−酸塩で四級化される。
【0057】
(実施例D−1)
このアミン−酸塩四級化剤を、以下の手順を使用して調製する。
【0058】
適切に備え付けられた5リットルのフラスコに、攪拌下で、267.4重量部のN,N−ジメチルエタノールアミンを添加した。約23℃の温度で、396重量部のPAPI 2940を、1.0時間かけてゆっくりと添加し、続いて約13.9重量部の実施例AおよびBにおいて上記で記載した溶媒でリンスした。この添加の間に、この温度を約90℃まで発熱させ、続いて赤外分光法でイソシアネートの消失が決定されるまで、この温度で約45分間保持した。この時点で、112.8重量部のジメチルココアミン(dimethylcocoamine)を添加し、続いて約361.3重量部の88%乳酸水溶液を15分かけて添加した。次いで、約695.0重量部の脱イオン水を添加し、そしてこの反応温度を、行き詰まった酸価が得られるまで、約85℃で約3時間保持した。
【0059】
(実施例D−2)
この四級アンモニウム塩の基を含有するポリマーを、以下の手順を使用して調製した。
【0060】
適切に備え付けられた5リットルのフラスコに、631.7重量部のEPON828;268.7重量部のビスフェノールA;10.0重量部の実施例AおよびBの溶媒;ならびに0.6部のエチルトリフェニルホスホニウムヨージドを添加した。この反応混合物を約140℃まで加熱し、そして約180℃の温度まで発熱させ、その時点でこの反応混合物を160℃まで冷却し、そして991.0のエポキシ当量まで約1時間保持した。この反応物を、約130℃までさらに冷却し、そして421.2重量部のエトキシル化ビスフェノールA(ビスフェノールAの1モル当たり6モルのエチレンオキシド)を添加した。次いで、約80℃の温度が得られるまで冷却を続け、その時点で346.4重量部の実施例D−1のアミン−酸塩四級化剤を、約30〜35分かけて添加し、続いて404.8重量部の脱イオン水を添加した。この反応混合物を、酸価が1.0未満に下がるまで約80℃の温度で約6時間保持した。得られた四級アンモニウム塩の基を含有する色素粉砕樹脂を、2232.2重量部の脱イオン水でさらに減少させた。
【0061】
(実施例AA)
この実施例は、本発明の電着浴組成物における使用に適切な色素ペーストの調製を記載する。この色素ペーストを、以下の成分の混合物から調製した:
【0062】
【表5】

1Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能な非
イオン性界面活性物質。
2E.I.Dupont de Nemours & Co.(Inc.)から入手可能
な二酸化チタン色素。
3Cabot Corp.から入手可能なカーボンブラックビーズ。
4以下の成分の混合物から調製した触媒ペースト:
【0063】
【表6】

1Sankyo Organic Chemicals Co.,Ltd.から入手可能
なジ−n−ブチルスズオキシド触媒。
【0064】
高剪断攪拌下で、示される順序で上記の成分を添加した。この成分を完全に混合した後、この色素ペーストを垂直サンドミルに移し、そして約7.25のHegman値まで粉砕した。
【0065】
(実施例BB)
この実施例は、本発明の電着浴組成物における使用に適切な色素ペーストの調製を記載する。この色素ペーストを、以下の成分の混合物から調製した:
【0066】
【表7】

1Air Products and Chemicals,Inc.から入手可能な非
イオン性界面活性物質。
2E.I.Dupont de Nemours & Co.(Inc.)から入手可能
な二酸化チタン色素。
3Cabot Corp.から入手可能なカーボンブラックビーズ。
4Aldrich Chemical Company,Inc.から市販のシュウ酸カ
ルシウム水和物。
5以下の成分の混合物から調製した触媒ペースト:
【0067】
【表8】

高剪断攪拌下で、続けて上記の成分を添加した。この成分を完全に混合した後、この色素ペーストを垂直サンドミルに移し、そして約7.25のHegman値まで粉砕した。
【0068】
(実施例CC)
この実施例は、以下の実施例1および2の電着浴組成物における使用のための電着浴プレミックスの調製を記載する。この電着浴プレミックスを、以下の成分の混合物から調製した:
【0069】
【表9】

1JEFFAMINE D400(Huntsman Corporationから入手
可能なポリオキシプロピレンジアミン)およびDER−732(Dow Chemical Coから市販の脂肪族エポキシド)の反応生成物、Moriarityらの米国特許第4,423,166号に記載のように調製した。
2米国特許第5,348,578号に記載の、メチルアミン;プロピレンオキシド;およ
びトルエンジイソシアネートの反応生成物。
3Aldrich Chemical Company,Inc.から市販のフェニルホスホン酸。
【0070】
(実施例DD)
この実施例は、以下の実施例3および4の電着浴組成物における使用のための電着浴プレミックスの調製を記載する。この電着浴プレミックスを、以下の成分の混合物から調製した:
【0071】
【表10】

1Aldrich Chemical Company,Inc.から市販のフェニルホ
スホン酸。
【0072】
(実施例EE)
この実施例は、以下の実施例2および4の電着浴組成物における使用のための可溶性イットリウム溶液の調製を記載する。この可溶性イットリウム溶液を、以下の成分の混合物から調製した:
【0073】
【表11】

1Aldrich Chemical Company,Inc.から市販。
【0074】
(実施例1〜4)
実施例2および4は、実施例EEの可溶性イットリウム溶液を500ppm含む本発明の電着浴組成物の調製を記載する。比較例1および3は、可溶性イットリウム溶液を含まない。この電着浴組成物を、以下の成分の混合物から調製した:
【0075】
【表12】

(電着浴の調製:)
攪拌下で、実施例Bのカチオン性樹脂を約15%の合計脱イオン水で希釈した。次いで、この希釈した樹脂を、実施例Aのカチオン性樹脂中に攪拌した。この柔軟剤樹脂を、攪拌下で、溶媒で別々に希釈し、次いで、カチオン性樹脂ブレンドを添加する前に、約30%の合計脱イオン水でさらに希釈した。次いで、フロー制御添加剤を添加した。このフェニルホスホン酸を、カチオン性樹脂ブレンドを添加する前に、約5%の合計脱イオン水で希釈した。この色素ペーストを、残りの脱イオン水で別々に希釈し、そして上記の樹脂ブレンドに添加した。最終浴固体は約22.5%であり、色素対樹脂の割合は0.12:1.0であった。試験浴を20%限外濾過し、そして電着の前に、比較例1および3については新たな脱イオン水のみで満たし、そして実施例2および4においては新たな脱イオン水および所定量の可溶性イットリウム溶液で満たした。
【0076】
(電着手順:)
上記の実施例1〜4の各電着浴組成物を、ACT Laboratoriesから市販の非リン酸処理の冷間圧延鋼パネル上に電着した。各々のカチオン性電着の条件は、以下のようであった:90°F、160〜180ボルトで2分間により、0.6〜0.8ミルの厚さの硬化フィルムを得た。このコーティングされた基板を、340°Fで20分間、電気オーブンで硬化した。
【0077】
(試験手順:)
このコーティングした、未処理の鋼試験パネルの各々をスクライブ(scribe)し、「X」パターンに、コーティングから金属基板を通って切断した。次いで、この試験パネルを、ASTM B117に従って、塩スプレー試験(salt spray testing)に供した。試験パネルを、「スクライブクリープ」腐食および外見について評価した。スクライブクリープを、スクライブマークからの腐食の平均距離(ミリメートル)として報告する。試験の結果を、以下の表1において報告する。
【0078】
【表13】

上記の表1に報告されるデータは、本発明の電着浴において、可溶性イットリウム溶液の含有で観察された、スクライブクリープ腐食耐性における改善を例証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電着可能コーティング組成物であって、該電着可能コーティング組成物が、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、該樹脂相が、以下:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂であって、該樹脂が、アミン塩基含有樹脂、三級スルホニウム塩基含有樹脂、および四級アンモニウム塩基含有樹脂からなる群より選択される樹脂、ならびに
(b)該(a)の該活性水素基と反応性の官能基を有する硬化剤であって、該硬化剤が、ブロックされた有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤からなる群から選択される硬化剤、
を含有し、
さらに、該組成物中に、少なくとも1種のイットリウム供給源を含有し、イットリウムの量が該電着可能コーティング組成物の全樹脂固体の重量に基づき、0.005重量%〜5重量%の量で存在することを含む、電着可能コーティング組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、存在するイットリウムの量が、該電着可能コーティング組成物中の全樹脂固体の重量に基づき1.0重量%以下である、電着可能コーティング組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、該組成物が鉛を含まない、電着可能コーティング組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記樹脂相が少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、電着可能コーティング組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記イットリウム供給源が、酸化イットリウム、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるイットリウム化合物である、電着可能コーティング組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの塩である、電着可能コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の電着可能コーティング組成物であって、ここで、前記活性水素を含有するイオン性樹脂がカチオン性である、電着可能コーティング組成物。
【請求項8】
電着浴であって、該電着浴が、水性媒体中に分散した樹脂相を含有し、該樹脂相が、以下:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂であって、該樹脂が、アミン塩基含有樹脂、三級スルホニウム塩基含有樹脂、および四級アンモニウム塩基含有樹脂からなる群より選択される樹脂、ならびに
(b)該(a)の該活性水素基と反応性の官能基を有する硬化剤であって、該硬化剤が、ブロックされた有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤からなる群から選択される硬化剤、
を含み、そして
該電着浴が、少なくとも1種のイットリウム供給源を含有し、イットリウムの量が該電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり10重量部〜10,000重量部の量で存在する、電着浴。
【請求項9】
請求項8に記載の電着浴であって、ここで、イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり1000重量部以下である、電着浴。
【請求項10】
前記浴が鉛を含まない、請求項8に記載の電着浴。
【請求項11】
前記樹脂相が、少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、請求項8に記載の電着浴。
【請求項12】
請求項8に記載の電着浴であって、ここで、前記イットリウム供給源が、酸化イットリウム、硝酸イットリウム、酢酸イットリウム、塩化イットリウム、スルファミン酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよびそれらの混合物からなる群から選択されるイットリウム化合物である、電着浴。
【請求項13】
請求項8に記載の電着浴であって、ここで、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの塩である、電着浴。
【請求項14】
請求項8に記載の電着浴であって、前記活性水素基を含有するイオン性樹脂がカチオン性である、電着浴。
【請求項15】
電着可能コーティング組成物であって、以下:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂であって、該樹脂が、アミン塩基含有樹脂、三級スルホニウム塩基含有樹脂、および四級アンモニウム塩基含有樹脂からなる群より選択される樹脂、ならびに
(b)(a)の該活性水素基と反応性の官能基を有する硬化剤であって、該硬化剤が、ブロックされた有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤からなる群から選択される硬化剤、
の成分を含有し、
ここで、該コーティング組成物が、該コーティング組成物中の全樹脂固体の重量に基づき、0.005重量%〜5.0重量%のイットリウムを含有する、電着可能コーティング組成物。
【請求項16】
電気回路内の荷電した電極として作用する導電性基板を電着塗装する方法であって、該電気回路が該電極および反対に荷電した対電極を含み、該電極が水性電着塗装組成物中に浸漬される、方法であり、該方法は、該電極間に電流を通し、実質的に連続したフィルムとして該基板上に該電着塗装組成物の堆積を生じる工程を包含し、該水性電着塗装組成物が、以下:
(a)活性水素基を含有するイオン性電着可能樹脂であって、該樹脂が、アミン塩基含有樹脂、三級スルホニウム塩基含有樹脂、および四級アンモニウム塩基含有樹脂からなる群より選択される樹脂、ならびに
(b)該(a)の該活性水素基と反応性の官能基を有する硬化剤であって、該硬化剤が、ブロックされた有機ポリイソシアネートおよびアミノプラスト硬化剤からなる群から選択される硬化剤、
を含有し、そして
ここで、該組成物が、少なくとも1種のイットリウム化合物を含有し、該電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり10重量部〜10,000重量部の量で存在し、該組成物が、電着浴に含まれる、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、前記全イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり1000重量部以下である、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、前記全イットリウムの量が、電着浴の重量に基づき、100万重量部あたり500重量部以下である、方法。
【請求項19】
前記電着浴が鉛を含まない、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記樹脂相が、少なくとも1種の鉛でない顔料をさらに含有する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、前記イットリウム化合物が、スルファミン酸イットリウム、酢酸イットリウム、乳酸イットリウム、ギ酸イットリウムおよび硝酸イットリウムからなる群から選択されるイットリウムの塩である、方法。
【請求項22】
前記基板がカソードである、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記基板が未処理の鋼からなる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記基板が亜鉛めっきされた鋼である、請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2011−132607(P2011−132607A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−83202(P2011−83202)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【分割の表示】特願2000−614331(P2000−614331)の分割
【原出願日】平成12年4月7日(2000.4.7)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】