説明

イヌ膵リパーゼ

イヌ膵リパーゼポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子、そのアレル変異体、およびフラグメント。ポリヌクレオチド配列を含有するベクターおよびホスト細胞、並びにポリペプチドを発現させる方法。イヌ膵リパーゼポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体。モノクローナル抗体を分泌する細胞系。生体サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を測定する方法。方法はイヌ膵リパーゼポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を使用することを含む。方法は組換えイヌ膵リパーゼの標準物質を使用することを含む。生体サンプル中のイヌ膵リパーゼの検出法を実施するための装置およびキット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する出願の参照
本出願は米国特許仮出願第60/562,836号(2004年4月16日出願)および米国特許仮出願第60/564,333号(2004年4月22日出願)に基づく優先権を主張する。
【0002】
発明の背景
本発明は膵リパーゼの検出に関する。更に特定すれば、本発明は膵リパーゼポリペプチド、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ポリペプチドに特異的な抗体、およびポリペプチドおよび抗体を使用して生体サンプル中の膵リパーゼを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
関連する技術分野の記載
本明細書に著者名および日付で記載する参考文献の完全な引用を本明細書巻末の参考文献の項に記載する。
【0004】
リパーゼは、不溶性物質を加水分解してより極性の高い脂肪分解産物にする水溶性酵素である(PetersenおよびDrablos, 1994)。リパーゼの過多(plethora)が微生物、植物、および動物で同定されている(Linら, 1986;Jaegerら, 1994;PetersenおよびDrablos, 1994;MukherieeおよびHills, 1994;Lawsonら, 1994)。リパーゼはその活性部位に共通の3つ組のアミノ酸(セリン、アスパラギン酸またはグルタミン酸、およびヒスチジン)を共有しており、これはセリンプロテアーゼとも共有されている(Syendsen, 1994)。ほとんど全てのリパーゼに共通する別の特徴はグリコシル化部位モチーフである(Antonian, 1988)。多くのリパーゼは系統発生論的に関連していることが明らかになっている。膵リパーゼ遺伝子ファミリーは9つのサブファミリーを有する大きな遺伝子ファミリーである(PetersenおよびDrablos, 1994;Carriereら, 1997;Carriereら, 1998;Hirataら, 1999)。更に、系統発生論的に関連のあるリパーゼの他の群、そして定義された遺伝子ファミリーに属さない更に別のリパーゼもある(AndersonおよびSando, 1991)。
【0005】
リパーゼの主たる機能は脂質の加水分解である。リパーゼは、無極性脂質が生体膜を通過する必要がある時はいつも必要とされる。トリグリセリドは無極性脂質の主な例である。従ってリパーゼはトリグリセリドが腸管から吸収されるために必要とされる。ほとんどの脊椎動物種には2つの消化リパーゼ、すなわち前十二指腸(preduodenal)リパーゼおよび古典的膵リパーゼがある(Carriereら, 1994)。前十二指腸リパーゼはこれまで試験された全ての種において、単一の組織に由来していることが明らかになっている(Moreauら, 1988)。咽頭リパーゼがウシおよびヒツジで、舌リパーゼがラットおよびマウスで、そして腸リパーゼがヒト、サル、ウマ、ブタ、モルモット、ネコ、およびイヌで同定された(Moreauら, 1988)。前十二指腸リパーゼはニワトリでは同定されなかった(Moreauら, 1988)。ヒトおよびイヌでは腸リパーゼは食物トリグリセリドの消化に有意に寄与していることが明らかになっている(Carriereら, 1993a;Carriereら, 1993b)。しかしながら、膵リパーゼ(古典的膵リパーゼとも呼ばれる)は食物トリグリセリドの消化に最も重要な酵素である(Carriereら, 1991;Carriereら, 1993a)。
【0006】
近年、免疫局在性によって明らかになったところによれば、膵リパーゼは臨床的に健常なイヌでは膵腺房細胞にのみ存在し、これは古典的膵リパーゼが膵外分泌の機能および病理のための理想的なマーカーであり得ることを示唆している(Steinerら, 2002)。この仮定は臨床試験で確認されており、それによれば血清中の膵リパーゼ免疫活性の測定は膵外分泌機能の特異的マーカーであり、また、イヌにおける膵炎に対して高い感度を示すことが明らかになっている(Steinerら, 2001a;Steinerら, 2001b;Steinerら, 2001c)。
【0007】
膵リパーゼの分子量は約50キロドルトンである。古典的膵リパーゼの精製は多くの種で報告されている(VandermeersおよびChroistophe, 1968;Rathelotら, 1981;Bosc-Biemeら, 1984;Giesegら, 1992;Mejdoubら, 1994;SteinerおよびWilliams, 2003)。
【0008】
膵炎の臨床症状は明確ではなく、疾病を診断するのは困難である。膵炎は血流に漏出する消化酵素および酵素前駆体の量の増加を伴う。これらの酵素の一つは膵リパーゼである。触媒アッセイの使用により血清中のリパーゼの存在を検出するための多くのアッセイが開発されてきた。しかしながらこれらのアッセイはヒトにおいてもイヌにおいても、膵炎に対する感度および特異性のいずれも欠如したものである。従って、膵リパーゼを高感度で特異的に検出するための簡便かつ迅速な方法が必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
ある観点では、本発明はイヌ膵リパーゼポリペプチド、そのアレル変異体またはフラグメントをコードするヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子に関する。本発明はこの配列を含有するベクターおよびホスト細胞、並びにポリペプチドを発現させる方法に関する。
【0010】
本発明はまた、イヌ膵リパーゼポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体に関する。本発明は更にモノクローナル抗体を分泌する細胞系も提供する。
【0011】
本発明の別の観点は、生体サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を測定する方法に関する。方法はサンプル中のイヌ膵リパーゼポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体の使用を含む。方法は組換えイヌ膵リパーゼの標準物質の使用を含む。
【0012】
本発明の更なる観点は、生体サンプル中のイヌ膵リパーゼを検出する方法を実施するための装置およびキットに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図面の簡単な説明
図1は、イヌ膵リパーゼの同定および増幅のためのプライマー設計を示す。3' RACE(UPM-ユニバーサルプライマーミックス, Clonthech)およびnested PCRのための一連の変性プライマー(1、2、3、5)、並びに5' RACEに使用されるプライマー(4、6)を示す。既に公開されているN-末端アミノ酸配列の領域を示す。
【0014】
図2は、1.429 Kbのイヌ膵リパーゼ遺伝子を示す(cPL1(SEQ ID NO:2))。
【0015】
図3は、翻訳されたイヌ膵リパーゼタンパク質を示す(cPLP1(SEQ ID NO:3))。アミノ酸配列はcDNA配列分析から推論した。
【0016】
図4は、多くのイヌ膵リパーゼペプチドを示す(SEQ ID NO:10-52)。これは一般に、SEQ ID NO:3を網羅する10個のアミノ酸配列が重複した一連の20量体ペプチドである。
【0017】
図5は、6x Hisタグを含有する精製した組換えイヌ膵リパーゼを示す。タンパク質はクマシー染色もしくはHis染色ゲル上(A)または抗Hisモノクローナル抗体もしくは7E11モノクローナル抗体を用いるウェスタンブロット(B)のいずれかで、約55kDaの精製された形態で同定できる。
【0018】
図6は、標準的な競合ELISAを免疫血清と共に用いたDNA免疫化マウス(A)、または発現させた組換えタンパク質を免疫原として用いたニワトリ(B)におけるcPLP1に対する抗体価を示す。
【0019】
図7は、2つのモノクローナル抗体、4G11および7E11の、イヌ血清中のイヌ膵リパーゼと反応する能力を示す。
【0020】
図8は、モノクローナル抗体4G11のcPLP1の酵素活性を阻害する能力を示す。
【0021】
図9は、モノクローナル抗体4G11および7E11はcPLP1への結合に関して互いに競合しないことを示すELISAデータである。
【0022】
図10は、cPLP1への結合に関して抗ヒト膵リパーゼ抗体と競合するモノクローナル抗体7E11の能力を示す。
【0023】
図11は、モノクローナル抗体7E11および4G11を用いるイヌ膵リパーゼに関するELISAサンドイッチアッセイの結果を示す。
【0024】
発明の詳細な説明
本明細書で使用する単数形の“a”、“an”、および“the”は、特に明記しない限り複数の対象物を含む。
【0025】
精製されたイヌ膵リパーゼ由来のN-末端アミノ酸配列が報告されている(SteinerおよびWilliams, Biochimie, 2002):
KEVCFPRLGCFSDDSPWAGIVERPL(SEQ ID NO:1)
【0026】
この公表されたアミノ酸配列および他の種の膵リパーゼ間での配列類似性に基づいて、一連の変性プライマーを設計し、3' RACE(Rapid Amplification of cDNA Ends)およびネステッドPCRに使用し(図1)、これから完全長の遺伝子3'末端を得た。同様に、5' RACEを用いて遺伝子の5'末端を得た。完全な遺伝子配列(cDNA)および翻訳されたアミノ酸配列を図2および3に示す。
【0027】
従ってある観点では、本発明はイヌリパーゼタンパク質、例えばイヌ膵リパーゼタンパク質(例えば本明細書にはcPLP1(SEQ ID NO:3)と記載)をコードするイヌcDNA分子(例えば本明細書ではcPL1(SEQ ID NO:2)と記載)に関する。cPLP1タンパク質、そのフラグメント、その誘導体、およびその変異体を、本明細書では集合的に本発明のポリペプチド、または本発明のタンパク質と呼ぶ。
【0028】
従って、ある観点では、本発明は本発明のポリペプチドまたは生物学的に活性なその一部をコードする単離された核酸分子に関する。本発明は、タンパク質のリパーゼファミリーのメンバーであることが同定されているタンパク質分子をコードし、膵リパーゼサブファミリーに関係する核酸配列を提供する(タンパク質配列を図3に、転写物/cDNA配列を図2に示す)。図3に示すペプチド配列、並びに本明細書に記載する明確な変異体、特に本明細書で同定し図3の情報を用いるところのアレル変異体を、本明細書では本発明のリパーゼペプチド、リパーゼペプチド、または本発明のペプチド/タンパク質と呼ぶ。
【0029】
本発明は(図2に示す核酸分子にコードされる)図3に開示するリパーゼペプチドのアミノ酸配列からなる、本質的に同配列からなる、または同配列を含む単離されたペプチドおよびタンパク質分子、並びにその生成および使用が当該分野の範囲内であるこれらのペプチドの全ての明確な変異体を提供する。これらの変異体のいくつかを以下に詳述する。
【0030】
本明細書での使用では、ペプチドが実質的に細胞性物質を含有しないか、または化学前駆体もしくは他の化学物質を含有しない場合、“単離された”または“精製された”と記述する。本発明のペプチドは均一性または他の純度の程度まで精製できる。精製の程度は意図する使用に基づく。決定的な特徴は、調製物が、かなりの量の他の成分の存在下であっても、ペプチドの所望の機能を可能とすることである(単離された核酸分子の特徴は以下に記載する)。
【0031】
ある場合の使用では、“実質的に細胞性物質を含有しない”とは、他のタンパク質(すなわち混入タンパク質)を約30%(乾燥重量)未満、約20%未満、約10%未満、または約5%未満含有するペプチド標品を含む。ペプチドが組換えによって生成される場合には、実質的に培養液を含有しないことも可能であり、すなわち培養液はタンパク質標品の容量の約20%未満であることを意味する。
【0032】
“実質的に前駆体または他の化学物質を含有しない”という用語は、その合成に関与する前駆体または他の化学物質から分離されたペプチドの調製物を含む。ある態様では、“実質的に前駆体または他の化学物質を含有しない”という用語は、約30%(乾燥重量で)未満の前駆体もしくは他の化学物質、約20%未満の前駆体もしくは他の化学物質、約10%未満の前駆体もしくは他の化学物質、または約5%未満の前駆体もしくは他の化学物質を含有するリパーゼペプチドの調製物を含む。
【0033】
単離されたリパーゼペプチドは、本来それを発現する細胞から精製するか、それを発現するように変化させた細胞から精製するか(組換え)、または既知のタンパク質合成法を使用して合成することができる。例えばリパーゼペプチドをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングし、発現ベクターをホスト細胞に導入し、ホスト細胞でタンパク質を発現させる。その後、標準的なタンパク質精製法を用いて好適な精製スキームで細胞からタンパク質を単離することができる。これらの技術の多くについて以下に詳述する。
【0034】
従って、本発明は図3に示すアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)からなるタンパク質、例えば図2に示す転写物/cDNA核酸配列(SEQ ID NO:2)にコードされるタンパク質を提供する。それらのタンパク質のアミノ酸配列を図3に示す。アミノ酸配列がタンパク質の最終的なアミノ酸配列である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列からなる。
【0035】
本発明は更に、本質的に図3に示すアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)からなるタンパク質、例えば図2に示す転写物/cDNA核酸配列(SEQ ID NO:2)にコードされるタンパク質を提供する。最終的なタンパク質中でアミノ酸配列がわずかな数の追加のアミノ酸残基、例えば約1から約100個程度の追加の残基、典型的には1から約20個の追加の残基と共に存在する場合、タンパク質は本質的にそのアミノ酸配列からなる。
【0036】
本発明は更に、図3に示すアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を含むタンパク質、例えば図2に示す転写物/cDNA核酸配列(SEQ ID NO:2)にコードされるタンパク質を提供する。アミノ酸配列がタンパク質の最終的なアミノ酸配列の少なくとも一部である場合、タンパク質はそのアミノ酸配列を含む。このように、タンパク質はペプチドのみであるか、または更なるアミノ酸分子、例えば天然にこのペプチドと関連しているアミノ酸残基(コードされた連続した配列)もしくは異種のアミノ酸残基/ペプチド配列を含有してもよい。それらのタンパク質は少数の追加のアミノ酸残基を有していてもよく、または数百もしくはそれ以上の追加のアミノ酸を含んでもよい。本発明のリパーゼペプチドを含むタンパク質の好ましい種類は天然型成熟タンパク質である。いかにして多様な型のタンパク質を合成/単離できるかについて、以下に簡潔に記載する。
【0037】
本発明のリパーゼペプチドを異種配列に結合させてキメラまたは融合タンパク質を形成することができる。それらのキメラおよび融合タンパク質は、リパーゼペプチドと実質的に相同でないアミノ酸配列を有する異種タンパク質に機能的に結合したリパーゼペプチドを含む。“機能的に結合した”とは、リパーゼペプチドと異種タンパク質とがインフレームで融合していることを示す。異種タンパク質はリパーゼペプチドのN-末端またはC-末端に融合させることができる。
【0038】
ある使用では、融合タンパク質は本質的にリパーゼペプチドの活性に影響を与えない。例えば融合タンパク質には、それらに限定される訳ではないが酵素融合タンパク質、例えばベータガラクトシダーゼ融合体、酵素ツーハイブリッドGAL融合体、ポリHis融合体、MYCタグ、HIタグ、およびIg融合体がある。それらの融合タンパク質、特にポリHis融合体によって、組換えリパーゼペプチドの精製が容易になりうる。ある種のホスト細胞(例えば哺乳動物ホスト細胞)では、タンパク質の発現および/または分泌が異種シグナル配列の使用によって向上されうる。
【0039】
キメラまたは融合タンパク質は標準的な組換えDNA技術によって生成できる。例えば異なるタンパク質配列をコードするDNAフラグメントを慣例的な技術に従ってインフレームでライゲートする。別の態様では、慣例的な技術(自動DNA合成装置を含む)によって融合遺伝子を合成することができる。あるいはまた、遺伝子フラグメントのPCR増幅を行うために、アンカープライマーを用い、これによって2つの連続する遺伝子フラグメント間に相補的なオーバーハングを生じさせ、次いでそれらをアニーリングおよび再増幅させてキメラ遺伝子配列を生成することができる(Ausubelら, Current Protocols in Molecular Biology, 1992参照)。更に、既に融合部分がコードされている多くの発現ベクターが市販されている(例えばGSTタンパク質)。リパーゼペプチドをコードする核酸をそれらの発現ベクターにクローニングし、融合部分をインフレームでリパーゼペプチドに結合させることができる。
【0040】
上記のように、本発明は本発明のタンパク質のアミノ酸配列の明確な変異体、例えば天然型成熟ペプチド、ペプチドのアレル/配列変異体、天然に存在しない、組換えによって誘導されたペプチドの変異体、およびペプチドのパラログを提供し、また、それらを可能とする。それらの変異体は組換え核酸技術およびタンパク質生化学の分野で知られる技術を用いて容易に生成できる。しかしながら理解されるように、変異体は本発明以前に開示されたいずれのアミノ酸配列も除外する。
【0041】
それらの変異体は本明細書に開示する分子技術および配列情報を用いて容易に同定/生成できる。更に、それらの変異体を配列および/または本発明のリパーゼペプチドに対する構造上の相同性に基づいて他のペプチドと容易に区別することができる。存在する相同性/同一性の程度は主に、ペプチドが機能性変異体であるか非機能性変異体であるか、およびパラログファミリー内に存在する相違性の程度に基づく。
【0042】
2つのアミノ酸配列または2つの核酸配列の同一性%を測定するために、最適な比較を目的としてアラインメントする(例えば、最適なアラインメントのためには第1および第2のアミノ酸または核酸配列の一方または両方にギャップを導入してもよく、非相同配列は比較目的のために無視してもよい)。好ましい態様では、参照配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%以上が比較目的でアラインメントされる。次いで相当するアミノ酸位置またはヌクレオチド位置のアミノ酸残基またはヌクレオチドを比較する。第1の配列中のある位置を第2の配列中の相当する位置と同じアミノ酸残基またはヌクレオチドが占有する場合、分子はその位置で同一性を有する(本明細書で使用するアミノ酸または核酸の“同一性”はアミノ酸または核酸の“相同性”と等しい)。2つの配列の同一性%は、2つの配列の最適なアラインメントのために導入する必要のあるギャップ数および各ギャップの長さを考慮した、配列間で共有される同一性を有する位置の数の関数である。
【0043】
配列の比較、並びに2つの配列間の同一性および類似性%の測定は数学的アルゴリズムを用いて行うことができる(Computational Molecular Biology, Lesk, A. M.編, Oxford University Press, New York, 1988;Biocomputing: Informatics and Genome Projects, Smith, D. W.編, Academic Press, New York, 1993;Computer Analysis of sequence Data, Part 1, Griffin, A. M.およびGriffin, H.G.編, Humana Press, New Jersey, 1994;Sequence Analysis in Molecular Biology, von Heinje, G., Academic Press, 1987;およびSequence Analysis Primer, Gribskov, M. およびDevereux, J.編, M Stockton Press, New York, 1991)。好ましい態様では、2つのアミノ酸配列間の同一性%の測定は、GCGソフトウェアパッケージ(http://www.gcg.comで入手可)のGAPプログラムに導入したNeedleman-Wunschアルゴリズム(J. Mol. Biol. (48):444-453(1970))を使用し、Blossom 62マトリクスまたはPAM250マトリクス、並びに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6の長さウエイトを用いて行う。更に別の好ましい態様では、2つのヌクレオチド配列間の同一性%の測定は、GCGソフトウェアパッケージ(Devereux, J.ら, Nucleic Acids Res. 12(1):387(1984))(http://www.gcg.comで入手可)のGAPプログラムを使用し、NWSgapdna.CMPマトリクス、並びに40、50、60、70、または80のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6の長さウエイトを用いて行う。別の態様では、2つのアミノ酸またはヌクレオチド配列間の同一性%の測定は、ALIGNプログラム(version 2.0)に導入したE. MyersおよびW. Millerのアルゴリズム(CABIOS, 4:11-17(1989))を使用し、PAM120 weight residue table、12のギャップ長ペナルティー、4のギャップペナルティーを用いて行う。
【0044】
更に本発明の核酸およびタンパク質配列を“クエリー配列”として用いて配列データベースに対して検索し、例えば他のファミリーメンバーまたは関連する配列を同定することができる。それらの検索はAltschulら(J. Mol. Biol. 215:403-10 (1990))のNBLASTおよびXBLASTプログラム(バージョン2.0) を用いて実施できる。BLASTヌクレオチド検索はNBLASTプログラム(スコア=100、ワード長=12)で行い、本発明の核酸分子と相同なヌクレオチド配列を得ることができる。BLASTタンパク質検索はXBLASTプログラム(スコア=50、ワード長=3)で行い、本発明のタンパク質と相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較の目的でギャップ付きアラインメントを得るために、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402 (1997))に記載されるようにGapped BLASTを用いることができる。BLASTおよびgapped BLASTプログラムを使用する場合、それぞれのプログラム(例えばXBLASTおよびNBLAST)のデフォルトパラメーターを使用できる。
【0045】
本発明のペプチドの一つを含む、完全長のプロセシング前の形並びに成熟したプロセシングされた形のタンパク質は、本発明のリパーゼペプチドの一つと完全な配列同一性を有し、本明細書に記載するリパーゼペプチドと同じ遺伝子座にコードされるタンパク質として容易に同定することができる。
【0046】
リパーゼペプチドのアレル変異体は、リパーゼペプチドの少なくとも一部と高度な(有意な)配列相同性/同一性を有し、本明細書に記載するリパーゼペプチドと同じ遺伝子座にコードされるイヌタンパク質として容易に同定することができる。本明細書での使用では、アミノ酸配列は典型的には約70-80%、80-90%、およびより典型的には少なくとも約90-95%またはそれ以上の相同性を有する場合、2つのタンパク質(またはタンパク質の領域)は有意な相同性を有する。本発明にかかる有意な相同性を有するアミノ酸配列は、リパーゼペプチドをコードする核酸分子にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸配列にコードされるが、これについては以下に更に詳細に記載する。
【0047】
リパーゼペプチドのパラログは、リパーゼペプチドの少なくとも一部とある程度有意な配列相同性/同一性を有し、イヌ由来の遺伝子にコードされ、そして同様の活性または機能を有するペプチドとして容易に同定することができる。アミノ酸配列が所定の領域またはドメインにわたって典型的には少なくとも約60%以上、より典型的には少なくとも約70%以上の相同性を有する場合、2つのタンパク質は典型的にパラログであると見なされる。それらのパラログは中度からストリンジェントな条件下でリパーゼペプチドをコードする核酸分子とハイブリダイズする核酸配列にコードされるが、これについては以下に更に詳細に記載する。
【0048】
本発明のリパーゼペプチドの非天然型変異体は組換え技術を用いて容易に生成できる。それらの変異体には、限定されるわけではないが、リパーゼペプチドのアミノ酸配列における欠失、添加、および置換がある。例えばあるクラスの置換は保存的アミノ酸置換である。それらの置換はリパーゼペプチド中の所定のアミノ酸を同様の特性を有する別のアミノ酸で置換するものである。典型的に保存的置換と見なされるものは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIle間の1対1の置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの相互置換;酸性基AspおよびGluの置換;アミド残基AsnおよびGln間の置換;塩基性基LysおよびArgの置換;そして芳香族残基PheおよびTyr間の置換がある。アミノ酸置換が表現型的にサイレントである見込みに関する手引きはBowieら(Science 247:1306-1310 (1990))に報告されている。
【0049】
変異体リパーゼペプチドは完全に機能的であってもよく、または一つ以上の活性(例えば基質と結合する能力、基質を加水分解する能力など)の機能を喪失していてもよい。完全に機能的な変異体は、典型的には、保存的変異または重要でない残基もしくは重要でない領域における変異のみを含有する。機能性変異体は機能に全く変化を与えないか、または有意な変化を与えない類似のアミノ酸の置換を含んでもよい。あるいはまた、それらの置換はある程度まで機能にポジティブまたはネガティブな影響を与えてもよい。
【0050】
機能に必須のアミノ酸の同定は当該分野で知られる方法、例えば部位特異的変異導入またはアラニンスキャニング変異導入(Cunninghamら, Science 244:1081-1085 (1989))で、特に図2に示す結果を用いて行うことができる。後者の方法は分子中の全ての残基位置に1個のアラニン変異を導入する。次いで、得られる変異体分子を生体活性(例えばリパーゼ活性)に関して、またはインビトロにおける増殖活性のようなアッセイで試験する。結合パートナー/基質の結合に重要な部位の確認は結晶化、核磁気共鳴、または光親和性標識のような構造分析によって行う(Smithら, J. Mol. Biol. 224:899-904 (1992);de Vosら, Science 255:306-312 (1992))。
【0051】
本発明は更に、リパーゼペプチドのフラグメントを、それらのフラグメントを含むタンパク質およびペプチド並びにそれらのフラグメントからなるタンパク質およびペプチドに加えて提供する。ある観点では、本発明は図4に示す残基を提供する。しかしながら、本発明が関係するフラグメントは本発明以前に公に開示された可能性のあるフラグメントを含まないと解釈される。
【0052】
本明細書における使用では、フラグメントはリパーゼペプチド由来の少なくとも8、10、12、14、16、またはそれ以上の連続するアミノ酸残基を含む。それらのフラグメントはリパーゼペプチドの1つ以上の生体活性を保持する能力に基づいて選択するか、または(例えば基質と結合する、または免疫原として作用する)機能を果たす能力で選択してもよい。特に重要なフラグメントは、生物学的に活性なフラグメント、例えば約8以上のアミノ酸長のペプチドである。それらのフラグメントは、典型的にはリパーゼペプチドのドメインまたはモチーフ、例えば活性部位、膜貫通ドメイン、または基質結合ドメインを含む。更に、可能なフラグメントには、それに限定されるわけではないが、ドメインまたはモチーフ含有フラグメント、可溶性ペプチドフラグメント、およびフラグメント含有免疫原性構造がある。予測されるドメインおよび機能性部位は、当該分野で周知かつ容易に入手できるコンピュータープログラム(例えばPROSITE分析)によって容易に同定される。
【0053】
ポリペプチドは多くの場合、一般に天然20アミノ酸と呼ばれる20のアミノ酸以外のアミノ酸を含む。更に、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸を、天然のプロセス(例えばプロセシングおよび他の翻訳後修飾)または当該分野で周知の化学修飾技術によって修飾してもよい。リパーゼペプチドにおいて天然に生じる一般的な修飾は基礎的なテキスト、詳細な論文、および研究文献に記載されており、それらは当該分野で周知である(これらの特徴のいくつかを図3に示す)。
【0054】
既知の修飾には、それらに限定されるわけではないがアセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合形成、ジメチル化、共有架橋結合の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク分解性のプロセシング、ホルホリル化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化のようなトランスファーRNA介在型のタンパク質へのアミノ酸添加、およびユビキチン化がある。
【0055】
それらの修飾は当業者に周知であり、科学系の文献に非常に詳細に報告されている。特に一般的な修飾、例えばグリコシル化、脂質付加、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマカルボキシル化、ヒドロキシル化、およびADP-リボシル化はほとんどの基礎的なテキスト、例えばProteins--Structure and Molecular Properties, 第2版, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993)に記載されている。この問題については例えば以下のような多くの詳細な報告がある:Wold, F., Posttranslational Covalent modification pf Proteins, B. C. Jhonson,編, Academic Press, New York 1-12 (1983);Seifterら(Meth. Enzymol. 182:626-646 (1990))、およびPattanら(Ann. N. Y. Acad. Sci. 663:48-62 (1992))。
【0056】
従って、本発明のリパーゼペプチドは、以下のような誘導体または類似体も含む:置換されたアミノ酸残基が遺伝子コードにコードされるものではない、置換基を含む、成熟リパーゼペプチドが別の化合物(例えばリパーゼペプチドの半減期を増加させる化合物(例えばポリエチレングリコール)に融合している、または更なるアミノ酸が成熟リパーゼペプチドに融合している(例えばリーダーもしくは分泌配列、または成熟リパーゼペプチドもしくは前タンパク質配列の精製のための配列)。
【0057】
抗体
本発明は本発明のペプチド、それらのペプチドを含むタンパク質、並びにその変異体およびフラグメントの一つに選択的に結合する抗体も提供する。本明細書における使用では、抗体が標的ペプチドには結合するが関係しないタンパク質には有意に結合しない場合、抗体は標的ペプチドに選択的に結合する。抗体は、たとえ標的ペプチドと実質的に相同でない他のタンパク質にも結合する場合でも、それらのタンパク質が抗体のペプチド標的のフラグメントまたはドメインと相同性を共有している限り、ペプチドに選択的に結合すると見なされる。この場合、ペプチドへの抗体の結合はある程度の交差反応性があってもなお選択的であると理解される。
【0058】
本明細書における使用では、抗体は当該分野で認識されるものと一致した用語で定義される。すなわち抗原への暴露に応答して哺乳動物が産生するマルチサブユニットタンパク質である。本発明の抗体にはポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、並びにそれらの抗体のフラグメントがあり、例として、それに限定されるわけではないが、FabまたはF(ab')2、およびFvフラグメントがある。
【0059】
所定の標的ペプチドに対する抗体の産生および/または同定のための多くの方法が知られている。それらの方法のいくつかはHarlow, Antibodies, Cold Spring Harbor Press (1989)に記載されている。
【0060】
一般に、抗体を産生させるために、単離したペプチドを免疫原として使用し、哺乳動物、例えばラット、ウサギ、またはマウスに投与する。完全長のタンパク質、抗原性ペプチドフラグメント、または融合タンパク質を使用できる。特に重要なフラグメントは機能性ドメインをカバーするもの、およびファミリー間で相同な、または相違する配列のドメイン、例えばタンパク質アラインメント法を用いて容易に同定できるものおよび図に示すものである。
【0061】
抗体は好ましくはリパーゼタンパク質の領域または別個のフラグメントから調製する。抗体は本明細書に記載するペプチドの任意の領域から調製できる。しかしながら、好ましい領域には機能性/活性および/またはリパーゼ/結合パートナー相互作用に関係するものがある。
【0062】
抗原性フラグメントは、典型的には少なくとも8個の連続するアミノ酸残基を含む。しかしながら、抗原性ペプチドは少なくとも10、12、14、16、またはそれ以上のアミノ酸残基を含みうる。それらのフラグメントは物理的特性に基づいて選択するか(例えばタンパク質の表面上に位置する領域(例えば親水性領域)に相当するフラグメント)、または配列独自性に基づいて選択できる。
【0063】
ある観点では、本発明の抗体はマウス骨髄腫細胞系から産生されるモノクローナル抗体である。この細胞系の生成は、マウス骨髄腫細胞系を完全長のイヌ膵リパーゼタンパク質またはその抗原性部分を投与したマウス由来の脾細胞と融合させて行うことができる。以下の実施例でより完全に記載するように、2つのそれらの細胞系がAmerican Tissue Culture Collection (ATCC) に寄託されている(10801 University Boulevard, Manassas Va.(2005年3月30日))。これらの細胞系には特許寄託番号PTA-6652およびPTA-6653が当てられている。寄託物はthe International Recognition of the Deposit of Microorganismsのthe Budapest Treatyの約定下に保存されている。寄託物は当業者の便宜のために提供されるものであり、寄託物が35 U.S.C.112条の下にある必要があるという認めるものではない。細胞系から分泌される抗体には4G11および7E11の名称が与えられている。
【0064】
どちらの抗体も、精製された天然型イヌ膵リパーゼまたは組換えcPLP1のいずれかに結合する。抗体はcPLP1上の同じエピトープに関して競合せず、サンドイッチELISAに使用できる。どちらの抗体もイヌ血清中の天然型イヌ膵リパーゼに結合する。抗体4G11はcPLP1の酵素活性を部分的に阻害するが、7E11は阻害しない。抗体7E11ではウェスタンブロットでcPLP1タンパク質が検出されるが、4G11では検出されない。7E11はcPLP1への結合に関して抗ヒト膵リパーゼ抗体と競合するが、4G11は競合しない。サンドイッチELISAから得られるODによれば、抗体4G11はcPLP1に対して、7E11より高い親和性を有すると考えられる。
【0065】
抗体を使用して、標準的な技術、例えばアフィニティークロマトグラフィーまたは免疫沈降により本発明のタンパク質の1つを単離することができる。抗体によって、細胞由来の天然型タンパク質およびホスト細胞で発現される組換えによって生成したタンパク質の精製を容易にすることができる。更に、それらの抗体は細胞、組織、または体液中の本発明のタンパク質の1つの存在を検出し、ある生物における種々の組織間での、および正常な発生過程にわたっての、タンパク質の発現パターンを確認するのに有用である。更に、それらの抗体を使用してインシツゥーで、インビトロで、または細胞ライセートもしくは上清中のタンパク質を検出し、発現の量およびパターンを評価することができる。また、それらの抗体を使用して発生または生物学的状態の進行の際の異常な組織分布または異常な発現を評価することもできる。循環している完全長タンパク質のフラグメントを抗体で検出することによって、ターンオーバーの同定ができる。
【0066】
更に、抗体を使用して疾病状態、例えば疾病の活性期において、またはタンパク質の機能に関係する疾病の素因を有する個体において、発現を評価することができる。障害が、不適切な組織分布、発生過程における不適切な発現、タンパク質の不適切な発現レベル、または不適切な発現/プロセシングされた型によって起こる場合、正常なタンパク質に対する抗体を調製できる。障害がタンパク質における特定の変異を特徴とする場合、この変異タンパク質に特異的な抗体を使用して特定の変異タンパク質の存在についてアッセイを行うことができる。
【0067】
ポリヌクレオチド
本発明はイヌ膵リパーゼをコードする単離されたポリヌクレオチドを提供する。“リパーゼポリヌクレオチド”または“リパーゼ核酸”という用語はSEQ ID NO:2で示す配列をさす。更に、“リパーゼポリヌクレオチド”または“リパーゼ核酸”という用語はリパーゼポリヌクレオチドの変異体およびフラグメントも含む。
【0068】
“単離された”リパーゼ核酸は天然のリパーゼ核酸源中に存在する他の核酸から分離されたものである。好ましくは“単離された”核酸は、核酸の誘導源である生物のゲノムDNAにおいて元来リパーゼ核酸に隣接する配列(すなわち核酸の5'および3'末端に位置する配列)を含有しない。しかしながら、(例えば約5KBまでの)いくつかの隣接するヌクレオチド配列が存在してもよい。重要な点は、リパーゼ核酸が隣接する配列から単離されて、本明細書に記載する特定の操作(例えば組換え発現、プローブおよびプライマーの調製)およびリパーゼ核酸配列に特異的な他の使用に施与できることである。
【0069】
更に、“単離された”核酸分子、例えばcDNAまたはRNA分子は、組換え法によって生成する場合は他の細胞性物質もしくは細胞培養液、または化学的に合成する場合は化学前駆体もしくは他の化学物質を実質的に含有しないものでありうる。しかしながら、核酸分子を他のコード配列または調節配列に融合させることもでき、その場合でもこれは単離されていると見なされる。
【0070】
ある場合には、単離された物質は組成物(例えば他の物質を含有する粗抽出物)、バッファー系、または試薬混合物の一部をなす。他の場合には、例えばPAGEまたはカラムクロマトグラフィー(例えばHPLC)で測定し、物質を本質的に均質になるまで精製してもよい。好ましくは単離された核酸は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50、80、または90%(モルベースで)含有される。
【0071】
例えばベクターに含まれる組換えDNA分子は単離されていると見なされる。単離されたDNA分子の更なる例には異種ホスト細胞中に保持された組換えDNA分子、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたDNA分子がある。単離されたRNA分子には、インビボまたはインビトロにおける本発明の単離されたDNA分子のRNA転写物がある。更に本発明にかかる単離された核酸分子には、合成によって生成されたそれらの分子がある。
【0072】
ある場合には、単離された物質は組成物(例えば他の物質を含有する粗抽出物)、バッファー系、または試薬混合物の一部をなす。他の場合には、例えばPAGEまたはカラムクロマトグラフィー(例えばHPLC)での測定で、物質を本質的に均質になるまで精製してもよい。好ましくは単離された核酸は、存在する全ての高分子種の少なくとも約50、80、または90%(モルベースで)含有される。
【0073】
リパーゼポリヌクレオチドは、成熟タンパク質に加えて更なるアミノもしくはカルボキシ末端アミノ酸をコードするか、または成熟ポリペプチドの内部にアミノ酸をコードしてもよい(例えば成熟型が1つより多いポリペプチド鎖を有する場合)。それらの配列は、とりわけタンパク質の前駆体から成熟型へのプロセシングにおける役割、タンパク質輸送の促進、タンパク質の半減期の延長もしくは短縮、またはアッセイもしくは生成のためのタンパク質操作の簡便化を果たしうる。一般にインシツゥーの場合のように、更なるアミノ酸は細胞酵素によるプロセシングによって成熟タンパク質から除去されうる。
【0074】
リパーゼポリヌクレオチドには、それらに限定されるわけではないが以下がある:成熟ポリペプチドのみをコードする配列、成熟ポリペプチドおよび更なるコード配列(例えばリーダーまたは分泌配列)をコードする配列(例えばプレプロまたはプロタンパク質配列)、成熟ポリペプチド(更なるコード配列を含有または未含有)に加えて更なる非コード配列、例えばイントロンおよび非コード5'および3'配列、例えば転写されたが翻訳されていない配列で転写、mRNAプロセシング(スプライシングおよびポリアデニル化シグナルを含む)、リボソーム結合、およびmRNAの安定性に役割を果たすものをコードする配列。更に、ポリヌクレオチドを例えば精製を容易にするペプチドをコードするマーカー配列に融合させてもよい。
【0075】
リパーゼポリヌクレオチドはRNAの形態(例えばmRNA)またはDNAの形態(例えばcDNAおよびゲノムDNA)であってもよく、クローニングによって得る、化学合成法によって生成する、またはそれらの組み合わせによって得てもよい。核酸、特にDNAは2本鎖または1本鎖であってもよい。1本鎖核酸はコード鎖(センス鎖)または非コード鎖(反対鎖またはアンチセンス鎖)であってもよい。
【0076】
リパーゼ核酸はイヌcDNAに相当するSEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列を含んでもよい。ある態様では、リパーゼ核酸はコード領域のみを含む。
【0077】
本発明は更に、遺伝コードの縮重によってSEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列と異なり、したがってSEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列にコードされるタンパク質と同じものをコードする変異体リパーゼポリヌクレオチドおよびそのフラグメントを提供する。
【0078】
本発明はまた、本明細書に記載する変異体ポリペプチドをコードするリパーゼ核酸分子も提供する。それらのポリヌクレオチドは、天然に存在するもの、例えばアレル変異体(同じ遺伝子座)、相同体(異なる遺伝子座)であってもよく、または組換えDNA法もしくは化学合成によって構築してもよい。それらの非天然型変異体は変異誘発法(ポリヌクレオチド、細胞、または生物に適用されるものを含む)によって生成してもよい。従って上記のように、変異体はヌクレオチドの置換、欠失、逆位、および挿入を含んでもよい。
【0079】
典型的には、変異体はSEQ ID NO:2の核酸分子およびその相補体と実質的な同一性を有する。変異はコード領域および非コード領域の一方または両方に存在してもよい。変異によって保存的および非保存的アミノ酸置換のいずれが生じてもよい。相同体およびアレル変異体は当該分野で周知の方法で同定できる。これらの変異体は、SEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列と少なくとも約60-65%、65-70%、典型的には少なくとも約70-75%、より典型的には少なくとも約80-85%、そして最も典型的には少なくとも約90-95%以上の相同性を有するリパーゼをコードするヌクレオチド配列を含む。それらの核酸分子は、ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:2に示すヌクレオチド配列またはその配列のフラグメントにハイブリダイズできることを容易に確認できる。理解されるように、ストリンジェントなハイブリダイゼーションは、一般的な相同性、例えばポリA配列、あるいは、全てもしくはほとんどのタンパク質または全てのリパーゼ酵素に共通する配列による実質的な相同性を示すものではない。更に理解されるように、変異体は本発明以前に開示された可能性のある核酸配列のいずれも含まない。
【0080】
本明細書で使用する“ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする”という用語は、互いに少なくとも約60-65%の相同性を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列が典型的には互いにハイブリダイズしたままであるようなハイブリダイゼーションおよび洗浄条件を表すことを意図する。条件は互いに少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、またはそれ以上の同一性を有する配列が互いにハイブリダイズしたままであるようなものであってもよい。そのようなストリンジェントの条件は当該分野で知られており、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989), 6.3.1-6.3.6(参照により本明細書に組み込まれる)に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の一例は、6x塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でハイブリダイズさせた後、0.2x SSC、0.1% SDS、50-65℃で1回以上洗浄するものである。別の非制限的な例では、核酸分子を6x 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中、約45℃でハイブリダイズさせた後、0.2x SSC/0.1% SDS中、室温で低ストリンジェント洗浄を1回以上行うか、または0.2x SSC/0.1% SDS中、42℃で中ストリンジェント洗浄を1回以上行うか、または0.2x SSC/0.1% SDS中、65℃で高ストリンジェント洗浄を行う。ある態様では、ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:2の配列にハイブリダイズする単離された核酸分子は天然型核酸分子に相当する。本明細書で使用する“天然型”核酸分子とは、天然に存在する(例えば天然型タンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNAまたはDNA分子をいう。
【0081】
当業者に理解されるように、厳密な条件は実験によって決定され、イオン強度、温度、および不安定化試薬(例えばホルムアミド)または変性試薬(例えばSDS)の濃度に依存する。所望のハイブリダイゼーション条件の決定に考慮される他の因子には、核酸配列の長さ、塩基組成、ハイブリダイズさせる配列間のミスマッチ%、および他の非同一配列内の配列のサブセットの存在頻度がある。従って、相当する条件は、2つの核酸分子間の同一性または類似性を同程度に保持しつつ、これらのパラメーターのうちの1つ以上を変化させて決定できる。
【0082】
本発明はまた、ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:2の相補体にハイブリダイズする1本鎖または2本鎖フラグメントまたは部分を含む単離された核酸を提供する。ある態様では、核酸はSEQ ID NO:2のヌクレオチド配列またはSEQ ID NO:2の相補体の一部からなる。
【0083】
理解されるように、単離されたフラグメントは、本発明以前に開示されていない任意の連続する配列、並びに実質的に同一であって開示されていない配列を含む。従って、フラグメントが本発明以前に開示されている場合、そのフラグメントは本発明に含まれないとみなされる。配列が本発明以前に開示されていない場合、単離された核酸フラグメントは少なくとも約6、好ましくは少なくとも約10、13、18、20、23、または25ヌクレオチド長であり、30、40、50、100、200、500、またはそれ以上のヌクレオチド長であってもよい。本明細書に記載する抗原性タンパク質またはポリペプチドをコードする、より長いフラグメント、例えば30ヌクレオチド長以上のものは有用である。
【0084】
更に、本発明は完全長のリパーゼポリヌクレオチドのフラグメントを含むポリヌクレオチドを提供する。フラグメントは1本鎖または2本鎖であってもよく、DNAまたはRNAを含んでもよい。フラグメントはコード配列または非コード配列のいずれから誘導してもよい。
【0085】
別の態様では、単離されたリパーゼ核酸は全コード領域をコードする。他のフラグメントは図4に示すアミノ酸フラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0086】
従って、リパーゼ核酸フラグメントは、本明細書に記載するドメイン、本明細書に記載するサブ領域、および特定の機能性部位に相当する配列を更に含む。また、リパーゼ核酸フラグメントは上記のドメイン、セグメント、および他の機能性部位を組み合わせたものも含む。可能な多くの順列が当業者に認識される。
【0087】
コンピューター分析でドメインまたは部位の位置が予測された場合、当業者に認識されるように、これらのドメインを構成するアミノ酸残基はドメインを規定するのに使用される基準によって変化しうる。しかしながら、理解されるように、リパーゼフラグメントは全遺伝子を含まない任意の核酸配列を含む。本発明はまた、本明細書に記載するリパーゼタンパク質のエピトープ保有領域をコードするリパーゼ核酸フラグメントを提供する。本発明によれば、核酸フラグメントは本発明以前に開示された可能性のあるフラグメントを含まないものと解釈される。
【0088】
本発明の核酸フラグメントは以下に記載するようなアッセイにおけるプローブまたはプライマーを提供する。“プローブ”は核酸の相補鎖に塩基特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドである。それらのプローブにはNielsenら(1991) Science 254:1497-1500に記載されるポリペプチド核酸がある。典型的には、プローブは高ストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:2に示す核酸配列およびその相補体の少なくとも約15、典型的には約20-25、そしてより典型的には約40、50、または75個の連続するヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列の領域を含む。更に典型的には、プローブは標識、例えば放射性同位元素、蛍光物質、酵素、または酵素補助因子を更に含む。
【0089】
本明細書で使用する“プライマー”という用語は、周知の方法(例えばPCR、LCR)を用いるテンプレート特異的(template-directed)DNA合成の開始点として作用する1本鎖オリゴヌクレオチドをいい、それらには、限定されるわけではないが、本明細書に記載するものがある。プライマーの好適な長さは、特定の使用法によって異なるが、典型的には約15から30ヌクレオチドの範囲である。“プライマー部位”という用語は、標的DNAのプライマーがハイブリダイズする領域をいう。“プライマー対”という用語は、増幅を行う核酸配列の5'末端とハイブリダイズする5'(上流)プライマーおよび増幅を行う配列の相補鎖とハイブリダイズする3'(下流)プライマーを含む1組のプライマーをいう。
【0090】
例えば本明細書に記載するアッセイにおけるように、ポリヌクレオチドを使用してリパーゼの特性または機能を評価する場合、完全長cDNAの全てまたは全てよりは少ないものは有用でありうる。リパーゼ機能を特に目的とするアッセイ、例えばアゴニストまたはアンタゴニスト活性の評価は既知のフラグメントの使用を含む。更に、リパーゼ機能を評価するための診断方法は、任意のフラグメント(本発明以前に知られていた可能性のあるフラグメントを含む)を用いて実施してもよい。同様に、リパーゼ機能障害の治療を伴う方法では、当該分野で既に知られている可能性のあるものを含む全てのフラグメントが含まれる。
【0091】
リパーゼポリヌクレオチドは、SEQ ID NO:3に示すポリペプチドをコードする完全長のcDNAおよびゲノムクローンを単離し、SEQ ID NO:3に示す同じポリペプチドを生成する変異体または本明細書に記載する他の変異体に相当するcDNAおよびゲノムクローンを単離するためのcDNAおよびゲノムDNAのハイブリダイゼーションプローブとして有用である。変異体はSEQ ID NO:3に示すポリペプチドを単離したものと同じ組織および生物、同じ生物の異なる組織、または異なる生物から単離できる。この方法は、発生学的に制御されており、このため生物の発生の異なる時点で同じ組織または異なる組織から発現されうる遺伝子およびcDNAを単離するのに有用である。
【0092】
プローブはリパーゼをコードする完全長の遺伝子に沿った配列のいずれに相補的であってもよい。従って5'非コード領域、コード領域、および3'非コード領域から誘導してもよい。核酸プローブは、例えばSEQ ID NO:2の完全長cDNA、またはストリンジェントな条件下でmRNAもしくはDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なそのフラグメントであってもよい。
【0093】
リパーゼポリヌクレオチドは組換えベクターの構築にも有用である。それらのベクターにはリパーゼポリペプチドの一部または全部を発現する発現ベクターがある。またベクターには、別のポリヌクレオチド配列、例えば細胞ゲノムに組み込んでリパーゼ遺伝子のインシツゥー発現および遺伝子産物を変更させるのに使用される挿入ベクターがある。例えば内在性リパーゼコード配列を、1つ以上の特異的に導入した変異を含むコード領域の全てまたは一部と、相同組換えを介して置換できる。リパーゼポリヌクレオチドはリパーゼタンパク質の抗原性部分の発現にも有用である。リパーゼポリヌクレオチドはリパーゼポリペプチドの一部または全部を発現するベクターの生成にも有用である。リパーゼポリヌクレオチドはリパーゼ核酸の発現レベルを測定するためのハイブリダイゼーションプローブとしても有用である。従ってプローブを使用して細胞、組織、および生体におけるリパーゼ核酸の存在の検出またはそのレベルの測定を行うことができる。レベルを測定する核酸はDNAであってもRNAであってもよい。従って、本明細書に記載するポリペプチドに相補的なプローブを使用して、所定の細胞、組織、または生体における遺伝子コピー数を評価できる。これはリパーゼ遺伝子が増殖されている場合に特に好適である。
【0094】
ベクター/ホスト細胞
本発明はリパーゼポリヌクレオチドを含むベクターも提供する。“ベクター”という用語は、リパーゼポリヌクレオチドを運搬できる媒体、好ましくは核酸分子をいう。ベクターが核酸分子である場合、リパーゼポリヌクレオチドはベクター核酸に共有結合する。本発明のこの観点では、ベクターにはプラスミド、1もしくは2本鎖ファージ、1もしくは2本鎖RNAもしくはDNAウィルスベクター、または人工染色体、例えばBAC、PAC、YAC、もしくはMACがある。
【0095】
ベクターは染色体外要素としてホスト細胞に保持され、リパーゼポリヌクレオチドの更なるコピーを複製および生成してもよい。あるいはまた、ベクターはホスト細胞ゲノムに組み込まれ、ホスト細胞の複製の際にリパーゼポリヌクレオチドの更なるコピーを生成してもよい。
【0096】
本発明はリパーゼポリヌクレオチドの保持のためのベクター(クローニングベクター)または発現のためのベクター(発現ベクター)を提供する。ベクターは原核もしくは真核細胞、またはその両方(シャトルベクター)で機能できる。
【0097】
発現ベクターはベクター中でリパーゼポリヌクレオチドに機能的に結合したシス作動性調節配列を含み、これによってホスト細胞におけるポリヌクレオチドの転写が可能となる。ポリヌクレオチドを、転写に影響を与える能力のある別のポリヌクレオチドと共にホスト細胞に導入してもよい。従って、第2のポリヌクレオチドはシス調節制御領域と相互に作用するトランス作動性因子を提供し、これによってベクターからのリパーゼポリヌクレオチドの転写を可能としてもよい。あるいはまた、トランス作動性因子はホスト細胞から提供されてもよい。最後に、トランス作動性因子はベクターそのものから生成されてもよい。
【0098】
しかしながら理解されるように、ある態様では、リパーゼポリヌクレオチドの転写および/または翻訳を無細胞系で行ってもよい。
【0099】
本明細書に記載するポリヌクレオチドが機能的に結合できる調節配列には、mRNA転写のためのプロモーターが含まれる。これらには、限定されるわけではないがバクテリオファージラムダ由来の左側(left)プロモーター、E. coli由来のlac、TRP、およびTACプロモーター、SV40由来の初期および後期プロモーター、CMVのIEプロモーター、アデノウィルスの初期および後期プロモーター、そしてレトロウィルスのLTRがある。
【0100】
転写を促進する制御領域に加えて、発現ベクターは転写を調節する領域(例えばリプレッサー結合部位およびエンハンサー)を含んでもよい。例としてSV40エンハンサー、サイトメガロウィルスIEエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、アデノウィルスエンハンサー、およびレトロウィルスLTRエンハンサーがある。
【0101】
転写の開始および制御のための部位を含むことに加え、発現ベクターは転写終結に必要な配列、および転写された領域に翻訳のためのリボソーム結合部位を含んでもよい。他の発現のための調節制御領域には開始および終結コドン、並びにポリアデニル化シグナルがある。当業者に認識されるように、発現ベクターに有用な多くの調節配列がある。それらの調節配列は、例えばSambrookら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されている。
【0102】
種々の発現ベクターを使用してリパーゼポリヌクレオチドを発現させることができる。それらのベクターには染色体、エピソーム、およびウィルス誘導ベクター、例えば細菌プラスミド由来、バクテリオファージ由来、酵母エピソーム由来、酵母染色体要素(酵母人工染色体を含む)由来、ウィルス(例えばバキュロウィルス、SV40のようなパポバウィルス、ワクシニアウィルス、アデノウィルス、ポックスウィルス、仮性狂犬病ウィルス、およびレトロウィルス)由来のベクターがある。ベクターは、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝的要素(例えばコスミドおよびファージミド)から誘導されたもののように、これらの供給源を組み合わせたものから誘導されたものであってもよい。原核および真核細胞ホストに好適なクローニングおよび発現ベクターはSambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.に記載されている。
【0103】
調節配列は1つ以上のホスト細胞における(すなわち組織特異的)構成的発現を提供するか、または1つ以上の細胞型における、例えば温度、栄養性添加剤、または外来性因子(例えばホルモンまたは他のリガンド)による、誘導的発現を提供してもよい。原核および真核細胞ホストにおいて構成的および誘導的発現を提供する種々のベクターが当該分野でよく知られている。
【0104】
リパーゼポリヌクレオチドはよく知られる方法でベクター核酸に挿入することができる。一般に、DNA配列および発現ベクターを1つ以上の制限酵素で開裂し、その後フラグメントを合わせてライゲートさせることによって、最終的に発現されるDNA配列を発現ベクターに結合させる。制限酵素消化およびライゲーションの方法は当該分野で周知である。
【0105】
周知の方法を用いて、好適なポリヌクレオチドを含むベクターを好適なホスト細胞に導入し、増殖または発現させることができる。細菌細胞には、それに限定されるわけではないが、E. coli、ストレプトミセス、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)がある。真核細胞には、それに限定されるわけではないが、酵母、昆虫細胞(例えばショウジョウバエ)、動物細胞(例えばCOSおよびCHO細胞)、および植物細胞がある。
【0106】
本明細書に記載するように、ポリペプチドを融合タンパク質として発現させることが所望されうる。従って、本発明はリパーゼポリペプチドの生成を可能とする融合ベクターを提供する。融合ベクターによって組換えタンパク質の発現を増加させ、組換えタンパク質の溶解度を高め、例えばアフィニティー精製のリガンドとして作用させることによってタンパク質の精製を容易にすることができる。タンパク分解開裂部位を融合部分の連結部に導入し、所望されるポリペプチドを最終的に融合部分から分離できるようにしてもよい。タンパク分解酵素には、それに限定されるわけではないが、Xa因子、トロンビン、およびエンテロキナーゼがある。典型的な融合発現ベクターにはpGEX(Smithら, (1988) Gene 67:31-40)、pMAL(New England Biolabs, Beverly, Mass.)、およびpRIT5(Pharmacia, Piscataway, N.J.)があり、これらはそれぞれグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、マルトースE結合タンパク質、またはプロテインAを標的組換えタンパク質に融合させる。好適な誘導性非融合E. coli発現ベクターの例にはpTrc(Amannら (1988) Gene 69:301-315)およびpET 11d(Studierら (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185:60-89)がある。
【0107】
組換えタンパク質発現は、ホスト細菌において、組換えタンパク質をタンパク分解的に切断するホスト細胞の能力が損なわれるような遺伝的背景を提供することによって最大化できる(Gottesman, S. (1990) Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. 119-128)。あるいはまた、目的のポリヌクレオチドの配列を変更して、コドンの使用法を特定のホスト細胞(例えばE. coli)に好適なものとしてもよい(Wadaら (1992) Nucleic Acids Res. 20:2111-2118)。
【0108】
リパーゼポリヌクレオチドは、酵母において機能的である発現ベクターによって発現させてもよい。酵母(例えばS. cerevisiae)における発現のためのベクターの例にはpYepSec1(Baldariら (1987) EMBO J. 6:229-234)、pMFa (Kujanら (1982) Cell 30:933-943)、pJRY88(Schultzら(1987) Gene 54:113-123)、およびpYES2(Invitrogen社, San Diego, Calif.)がある。
【0109】
リパーゼポリヌクレオチドは、例えばバキュロウィルス発現ベクターを使用して、昆虫細胞で発現させることもできる。培養昆虫細胞(例えばSf9およびSf21細胞)でのタンパク質発現に使用できるバキュロウィルスベクターにはpAcシリーズ(Smithら(1983) Mol. Cell Biol. 3:2156-2165)およびpVLシリーズ(Lucklowら(1989) Virology 170:31-39)がある。
【0110】
本発明のある態様では、本明細書に記載するポリヌクレオチドは哺乳動物細胞において哺乳動物発現ベクターを用いて発現させる。哺乳動物発現ベクターの例にはpCDM8(Seed, B. (1987) Nature 329:840)、pMT2PC(Kauffmanら(1987) EMBO J. 6:187-195)がある。
【0111】
本明細書に記載する発現ベクターは、リパーゼポリヌクレオチドの発現に有用な当業者が使用できる周知のベクターの例としてのみ提供するものである。本明細書に記載するポリヌクレオチドの維持増殖または発現に好適な他のベクターは当業者に知られている。それらは例えばSambrookら (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Yに記載されている。
【0112】
本発明は、本明細書に記載する核酸配列を逆向きにベクターにクローニングし、かつ作動可能なように調節配列に結合させることによってアンチセンスRNAの転写を可能としたベクターも含む。従って、本明細書に記載するポリヌクレオチド配列の全部または一部(コード領域および非コード領域を含む)にアンチセンス転写物を生成させることができる。このアンチセンスRNAの発現には、センスRNAの発現(調節配列、構成的または誘導的発現、組織特異的発現)に関して記載した各パラメーターがあてはまる。
【0113】
本発明は、本明細書に記載するベクターを含む組換えホスト細胞にも関する。従ってホスト細胞は原核細胞、下等真核細胞(例えば酵母)、他の真核細胞(例えば昆虫細胞)、および高等真核細胞(例えば哺乳動物細胞)を含む。
【0114】
組換えホスト細胞の調製は、当業者が容易に使用できる技術によって、本明細書に記載するベクターコンストラクトを細胞に導入することによって行う。これらには、それに限定されるわけではないが、以下がある:リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン介在トランスフェクション、カチオン脂質介在トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染、リポフェクション、および他の技術、例えばSambrookら(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor Laboratory=Press, Cold Spring Harbor, N.Y.)に記載されるものがある。
【0115】
ホスト細胞は1つ以上のベクターを含んでもよい。従って、異なるヌクレオチド配列を同じ細胞の異なるベクター上に導入してもよい。同様に、リパーゼポリヌクレオチドは単独で導入しても、またはリパーゼポリヌクレオチドに関係しない他のポリヌクレオチド、例えば発現ベクターにトランス作用因子を与えるものと共に導入してもよい。1つ以上のベクターを細胞に導入する場合、ベクターをリパーゼポリヌクレオチドベクターに独立して導入するか、共導入するか、または結合させてもよい。
【0116】
バクテリオファージおよびウィルスベクターの場合、これらは感染および形質導入に関する標準的な方法によって、封入または内包されたウィルスとして細胞に導入できる。ウィルスベクターは複製競合または複製欠損であってもよい。ウィルスの複製が欠損している場合、複製は欠損を補完する機能を提供するホスト細胞で起こる。
【0117】
一般にベクターは、組換えベクターコンストラクトを含む細胞の亜集団の選択を可能とする選択可能なマーカーを含む。マーカーは本明細書に記載するポリヌクレオチドを含むもの同じベクターに含有されてもよいし、あるいは別のベクター上にあってもよい。マーカーには、原核ホスト細胞ではテトラサイクリンまたはアンピシリン耐性遺伝子、および真核ホスト細胞ではジヒドロ葉酸還元酵素またはネオマイシン耐性遺伝子がある。しかしながら、表現型に関する選択を与えるマーカーが効果的である。
【0118】
成熟タンパク質は細菌、酵母、哺乳動物細胞、および他の細胞において、好適な調節配列の制御下で生成できるが、無細胞転写および翻訳系を使用し、本明細書に記載するDNAコンストラクトから誘導したRNAを用いてこれらのタンパク質を生成することもできる。
【0119】
ポリペプチドの分泌が所望される場合、好適な分泌シグナルをベクターに導入する。シグナル配列はリパーゼポリペプチドの内在配列であるか、またはこれらのポリペプチドと異種のものであってもよい。
【0120】
ポリペプチドが培地に分泌されない場合、標準的な破壊法(例えば凍結融解、超音波処理、機械的破壊法、溶解剤の使用など)によってタンパク質をホスト細胞から単離できる。その後ポリペプチドを回収し、以下のような周知の精製方法によって精製できる:硫酸アンモニウム沈殿、酸抽出、アニオンまたはカチオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、または高速液体クロマトグラフィー。
【0121】
また理解されるように、本明細書に記載するポリペプチドの組換え生成においては、ホスト細胞により、ポリペプチドは細胞によって種々のグリコシル化パターンを有することが可能であり、また、細菌で生成される場合にはグリコシル化されないであろう。更にポリペプチドは、場合によって、ホストが介在するプロセシングの結果として修飾された開始メチオニンを含んでもよい。
【0122】
理解されるように、“ホスト細胞”および“組換えホスト細胞”は特定の被験体細胞のみならず、それらの細胞の子孫または子孫の可能性のあるものもさす。ある種の修飾が変異または環境の影響によって次世代で起こりうるため、それらの子孫は事実上親細胞とは同一ではない可能性もあるが、それでもなお、本明細書で使用する用語の範囲内に含まれる。
【0123】
それらのポリペプチドが示すcPLP1の代表的な抗原性および酵素的特性には、リパーゼ活性、cPLP1が結合できる分子と結合する能力、およびcPLP1タンパク質の表面またはその付近で起こるエピトープと特異的に結合する抗体物質の生成を誘導する能力がある。本発明のポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分を異種アミノ酸配列と作動可能なように結合させて融合タンパク質を生成してもよい。更に、1つ以上の本発明のポリペプチドまたはその生物学的に活性な部分を医薬組成物に組み込むことができ、これは必要により医薬的に許容できるキャリアーを含んでもよい。それらの医薬組成物を使用して本明細書に記載する1つ以上の傷害を治療または予防することができる。本発明は本発明のポリペプチド(例えばcPLP1タンパク質およびそのフラグメント)と特異的に結合する抗体物質を含む。本発明の範囲内に含まれる代表的な抗体物質はモノクローナルおよびポリクローナル抗体、抗体フラグメント、1本鎖抗体、遊離および細胞表面結合型抗体、およびT細胞受容体である。これらの抗体物質は、例えば本発明のポリペプチドを免疫適格状態の脊椎動物に提供し、その後、脊椎動物から血液または血清を回収することによって生成できる。あるいはまた、ファージライブラリーをスクリーニングし、cPLP1またはそのエピトープと結合するサブユニットを提示するファージ粒子を同定することによって抗体物質を生成してもよい。
【0124】
別の観点では本発明は、生体サンプルを以下と接触させることによって生体サンプル中での本発明のポリペプチドの活性または発現を検出する方法を提供する:それらの活性を検出する能力のある物質(例えば本発明の活性なポリペプチドによる作用後に検出できる標識された物質または別の化合物)、本発明のポリペプチドと特異的に結合する物質(例えば本発明の抗体物質)、または本発明のポリペプチドをコードするRNAの生成を検出するための物質(例えばポリペプチドをコードするmRNAの一部に相補的な逆転写プライマー)。
【0125】
イヌ膵リパーゼの検出
ある観点では、本発明は生体サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を検出するための免疫学的方法に関する。本発明は1つ以上のイヌリパーゼモノクローナル抗体を使用する方法、装置、およびキットを提供する。別の観点では、方法は1つ以上のイヌ膵リパーゼポリペプチドを含むキャリブレーターおよび標準物質を含む。
【0126】
“結合特異性”または“特異的結合”とは、第一の分子の第二の分子に対する実質的な認識をいい、これは例えばポリペプチドとそのポリペプチドに特異的なポリクローナルもしくはモノクローナル抗体、または抗体フラグメント(例えばFv、1本鎖Fv、Fab’、またはF(ab’)2フラグメント)である。
【0127】
“特異的結合対”は2つの異なる分子の組であり、一方の分子はその表面上または腔内に、他方の分子上の領域に特異的に結合する、すなわちそれに相補的である領域を有する。“特異的結合パートナー”とはこれら2つの相補的結合分子の1つを言う。“特異的結合対”は、例えばリガンドおよび受容体をさす場合もある。別の例では、特異的結合対は免疫学的対、例えば抗原および抗体をさす場合もある。
【0128】
“実質的な結合”または“実質的に結合する”とは、特定のアッセイ条件下、アッセイ混合液中での、分子間のある量の特異的結合または認識をいう。その最も広い観点では、実質的な結合は、第1の分子が第2の分子に結合または認識する能力の欠如の程度と、第1の分子が第3の分子に結合または認識する能力の大きさとの差異に関係し、その差異は、特定のアッセイ条件(例えば分子の相対濃度、並びにインキュベーションの時間および温度)下で意味のあるアッセイを実施して特異的結合を識別するのに十分なものである。別の観点では、ある分子は交差反応性の意味で別の分子に結合または認識する能力を実質的に欠失しており、第1の分子は特定のアッセイ条件(例えば分子の相対濃度およびインキュベーション)下で第2の分子に対して第3の分子に対する反応性の25%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満の反応性を示す。特異的結合は多くの周知の方法、例えば免疫組織化学的アッセイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、またはウェスタンブロットアッセイを用いて試験することができる。
【0129】
“生体サンプル”とは被験動物由来のサンプル、例えば全血、血清、血漿、組織、腹腔液(腹水)、尿、またはイヌ膵リパーゼを含有することが知られている、もしくはその疑いのある他のサンプルをいう。
【0130】
“標識”とは別の分子または固相支持体に(共有結合または非共有結合を介して単独で、または封入されて)結合し、標識された分子の検出が可能となるような特定の性質を得るために選択される分子である。一般に標識には、それに限定されるわけではないが、以下のタイプがある:粒子金属および金属誘導体、放射性同位元素、触媒または酵素に基づく反応体、色素生産性物質および発色団、蛍光および化学発光分子、およびリン光体。標識の利用によりシグナルが生成され、これを電磁波照射または直接可視化のような方法によって検出し、必要によりこれを測定してもよい。
【0131】
本発明で使用される標識には、それに限定される訳ではないが以下がある:アルカリホスファターゼ;グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ(“G6PDH”);ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP);化学発光物質(例えばイソルミノール)、蛍光物質(fluorescer)(例えばフルオレセインおよびローダミン化合物);リボザイム;および色素。
【0132】
標識は直接シグナルを生成して、シグナルを生成するための更なる成分を必要としなくてもよい。あるいはまた、標識はシグナルを生成するための更なる成分、例えば基質または補酵素を必要としてもよい。シグナルの生成に有用な標識の好適性および使用については米国特許第6,489,309号および第5,185,243号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されている。例えば標識は特異的結合パートナーに非共有結合でコンジュゲートしてもよい。あるいはまた、標識は特異的結合パートナーに共有結合でコンジュゲートしてもよい。米国特許第3,817,837号および第3,996,345号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)は標識が特異的結合パートナーに非共有結合または共有結合でコンジュゲートしてもよいという種々の例について詳細に記載している。
【0133】
固相とは多孔性または非多孔性の水に不溶な物質を意味する。それらの物質には支持体または表面、例えば反応容器の壁がある。支持体は親水性であるか、または親水性とすることができ、それらには無機粉末、例えばシリカ、硫酸マグネシウム、およびアルミナ;天然重合体物質、特にセルロース物質およびセルロースから誘導された物質、例えば繊維含有紙、例えば濾紙、クロマトグラフィー用紙など;合成または修飾した天然型ポリマー、例えばニトロセルロース、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリルアミド、架橋デキストラン、アガロース、ポリアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4-メチルブテン、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリビニルブチレートなどがあり;それらをそれ自体で使用するか、または他の物質;Bioglassとして入手できるガラス、セラミック、金属などと共に使用する。天然または合成構築物(assemblies)、例えばリポソーム、リン脂質媒体、および細胞を使用してもよい。
【0134】
sbpメンバーの支持体または表面への結合は一般に文献に報告されている周知の方法で行ってもよい。例えば"Immobilized Enzymes," Ichiro Chibata, Halsted Press, New York (1978)およびCuatrecasas, J. Biol. Chem., 245:3059 (1970)を参照されたい。表面は多くの形状、例えば帯状(strip)、棒状(rod)、粒子(例えばビーズ)などのうちの任意のものであってよい。ある観点では、本発明のポリペプチドは、ポリペプチドの固相への結合を補助するためにN-末端システイン残基を含有する。
【0135】
本発明の方法は多くの方法で最適化することができ、当業者はイヌ膵リパーゼの検出を行う方法に使用するサンプル希釈度、試薬濃度、インキュベーション温度および時間を同時に調整できる。
【0136】
本発明の検出方法に有用であるように、ポリペプチドは実質的に純粋な、すなわち典型的には約50% w/w以上の純度で、干渉するタンパク質および混入物を実質的に含有しない形態で得る。好ましくはポリペプチドを少なくとも80% w/wの純度、より好ましくは少なくとも約95% w/wの純度で単離または合成する。慣例的なタンパク質精製法を使用し、少なくとも約99%の純度の均質なポリペプチド組成物を得ることができる。例えば以下に記載する抗体を使用し、前記の免疫吸着アフィニティーカラムを使用して、タンパク質を精製してもよい。
【0137】
本発明の方法は当業者に周知の免疫アッセイ法(それに限定されるわけではないが、マイクロプレートおよび側方流動装置の使用がある)を用いて実施してもよい。ある態様では、イヌ膵リパーゼタンパク質に特異的な抗体を固相支持体上の特定の位置に固定化する。サンプル添加後、固相支持体上のタンパク質-抗体複合体の検出を当該分野で知られる任意の方法によって行うことができる。例えば米国特許第5,726,010号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)には本発明に有用な側方流動装置、SNAP(登録商標)イムノアッセイ装置(IDEXX Laboratories)の例が報告されている。別の観点では、固相支持体はマイクロタイタープレートのウェルである。
【0138】
1つ以上の分析物捕捉剤(例えばイヌ膵リパーゼに対する抗体)を装置または固相支持体上に固定化し、分析物捕捉剤がサンプル、希釈剤、および/または洗浄操作によって除去されないようにしてもよい。物理的吸着(すなわち化学リンカー未使用)または化学結合(すなわち化学リンカー使用)によって1つ以上の分析物捕捉剤を表面に結合させてもよい。化学結合により、表面上の特異的結合物質の結合をより強力にし、表面結合分子を所定の配位およびコンフォメーションにすることができる。
【0139】
別の観点では、本発明は標識された特異的結合剤を1つ以上含み、これを試験サンプルと混合した後、本発明の装置に適用できる。この場合、標識された特異的結合剤を装置の特異的結合剤パッド上に沈着および乾燥させる必要はない。標識された特異的結合剤は、試験サンプルに添加する場合でもあらかじめ装置に沈着させる場合でも、例えば標識されたイヌ膵リパーゼモノクローナル抗体であってもよい。
【0140】
分析物捕捉剤および標識された特異的結合剤がイヌ膵リパーゼに特異的に結合する抗体である場合、抗体は同一のものであっても異なるものであってもよい。ある観点では、抗体は4G11および7E11抗体から選択される。
【0141】
検出法には組換えイヌ膵リパーゼポリペプチドのような標準物質の使用が含まれていてもよい。標準物質をサンプルと同様の方法でモノクローナル抗体(単数または複数)と混合できる。モノクローナル抗体(単数または複数)と標準物質との結合量をサンプル中のタンパク質への抗体の結合量と比較できる。このようにして、標準物質中のイヌ膵リパーゼの量は既知であるので、サンプル中のタンパク質の量を測定できる。
【0142】
上記の実施態様の任意のもの、または全てをキットとして提供することができる。ある特定の例では、それらのキットは特異的結合剤(例えば固定化されていない標識された特異的結合剤および固定化された分析物捕捉剤)および洗浄剤、並びに検出剤とポジティブおよびネガティブコントロール試薬(必要により)を装備した装置を含む。更に、他の添加剤、例えば安定化剤、バッファーなどを含んでもよい。種々の試薬の相対量は、アッセイの感度を実質的に最適化するような溶液中の試薬濃度となるように変化させることができる。特に、試薬を(一般的に凍結乾燥した)乾燥粉末として提供し、溶解して、サンプルと混合するのに好適な濃度の試薬溶液を提供してもよい。
【0143】
装置は未結合の物質(例えば未反応の液体サンプルおよび未結合の特異的結合剤)を反応領域(固相)から除去する液体試薬を含んでもよい。液体試薬は洗浄剤であって未結合の物質を反応領域から除去するためのみに機能してもよく、または検出剤を含んで未結合の物質の除去および分析物検出の促進の両方を行ってもよい。例えば酵素にコンジュゲートした標識された特異的結合剤の場合、検出剤は、反応領域での酵素-抗体コンジュゲートとの反応の際に検出可能なシグナルを生成する基質を含む。放射性、蛍光、または光吸収分子にコンジュゲートした特異的結合剤の場合、検出剤は単に洗浄溶液として作用し、未結合の標識された試薬を除去することによって反応領域での複合体形成の検出を容易にする。
【0144】
2つ以上の液体試薬が装置に存在してもよく、例えば装置は洗浄剤として作用する液体試薬および検出剤として作用して分析物の検出を容易にする液体試薬を含んでもよい。
【0145】
液体試薬は限定量の“阻害剤”、すなわち検出可能な最終産物の発生を阻害する物質を更に含んでもよい。限定量とは、ほとんどまたは全ての過剰な未結合の物質が第2の領域から除去されるまで最終産物の生成を阻害するのに十分な量をいう(その時点で検出可能な最終産物が生成される)。
【0146】
別の観点では、本発明はイヌ膵リパーゼの検出のためのキットに関する。例えばキットは上記の装置と共に本明細書に記載する抗体を含む。1つ以上の本発明のペプチドがキャリブレーターおよびコントロールとして含まれてもよい。それらのキットは1つのタンパク質またはエピトープの検出のために提供されてもよいし、あるいは抗体検出アレイのように多数のエピトープのうちの1つを検出するために形成されてもよい。ある観点では、キットは固相(例えばイヌ膵リパーゼに特異的な固定化された抗体を有するマイクロタイタープレートまたは側方流動装置)、イヌ膵リパーゼに特異的な第2の標識された抗体を含む試薬、および標識の検出に使用するための試薬を含む。またキットは好適な包装および説明書も含む。
【0147】
本発明の他の特徴および利点は以下の実施例から明白となる。以下は例証の目的のためのみに提供するものであり、上記で広義に記載した本発明の範囲を制限することを意図するものではない。本開示で引用した全ての文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0148】
実施例1 膵臓組織由来のイヌ膵リパーゼ(cPL)遺伝子のクローニングおよびキャラクタリゼーション
報告されている精製されたイヌ膵リパーゼのN-末端アミノ酸配列(SteinerおよびWilliams, Biochimie 2002)(SEQ ID NO:1)および他の種の膵リパーゼ間での配列同一性に基づいて、一連の変性プライマーを設計し、これを用いて3'RACEおよびネステッドPCRを行った(図1)。これらのプライマーは、膵リパーゼファミリー、すなわち膵リパーゼ関連タンパク質の他のメンバーとは異なる膵リパーゼアミノ酸配列の特定の領域を標的とするものとした。TRIZOL(登録商標)試薬(Invitrogen)を用いて総RNAをイヌ膵臓から精製した後、市販のキット(SMARTTMRACE cDNA増幅キット, Clontech)を用いてcDNAに逆転写した。3'RACE反応およびnested PCRにより、好適な終止コドンまでにわたるイヌ膵リパーゼ遺伝子の1.4kbのセグメントを得ることができた。完全な遺伝子配列を得るために、図1に示すように5'RACEのcDNAを生成し、イヌ遺伝子内の特定のプライマーをRACE反応のために設計した。この増幅により、遺伝子の完全な5'末端を得た。完全長の遺伝子配列(cDNA、SEQ ID NO:2)および翻訳されたアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を図2および3に示す。
【0149】
実施例2 イヌ膵リパーゼの発現
High Fidelity Taqを用い、製造者の取扱説明書(Roche)に従ってイヌ膵リパーゼの遺伝子をPCRによりイヌ膵cDNAから増幅し、バキュロウィルス発現ベクター(pBlueBac4.5, Invitrogen)にライゲートした。PCRの逆転写プライマーはタンパク質の最終アミノ酸のコドンの直後に続く6x Hisタグのヌクレオチド配列を含有する。標準的なリン酸カルシウム法により、精製したベクターを用いてトランスファーDNAと共にSf9昆虫細胞(Invitrogen)に共トランスフェクトした。標準的なバキュロウィルスプロトコールに従ってSf21昆虫細胞の感染およびタンパク質生成のための組換えウィルスの高力価ストックを生成した(Invitrogen)。Sf21昆虫細胞を約500mlの血清未含有EX-CELLTM420培養液(JRH Biosciences)中で7-8x108細胞の濃度まで増殖させ、10mlのウィルスストック液に感染させた。MOIは1.0-2.0であった。培養の4日後、標準的なリパーゼ酵素アッセイ(VITROS(登録商標) Chemistry System, Ortho-Clinical Diagnostics)を用いて培養液上清中の組換えcPLP1タンパク質の活性を測定した。
【0150】
文献に報告されている標準的なプロトコール(Thirstrup, K.ら, FEBS, 1993)に従って、または6x His融合タグ金属キレートアフィニティークロマトグラフィー(HISTRAPTM HPアフィニティーカラム, Amersham Biosciences)によって、組換えcPLP1タンパク質を昆虫細胞培養液上清から精製した。標準的な脱塩カラム(PD-10, Amersham Biosciences)を用いて、精製したタンパク質をリン酸バッファー(pH 7.2)にバッファー交換した。標準的な酵素アッセイ(Vitros(登録商標) Chemistry System)を用いて、精製した組換えcPLP1タンパク質がリパーゼ活性を有することが明らかになった。
【0151】
図6Aに示すように、精製したcPLP1タンパク質のキャラクタライズを、SDS-PAGEゲルでクマシータンパク質染色およびin-gel Hisタグ染色(Pierce)を用いて行った(図6A、レーン1)。前精製画分をレーン5に示す分子量マーカーと共にレーン2-4に示す。図6Bに示すように、精製したcPLP1タンパク質は抗Hisモノクローナル抗体(1:200、抗-6Hisペルオキシダーゼ、Roche)または7E11モノクローナル抗体(1:250、IDEXX Laboratories社)を用いるウェスタンブロットでも同定された。
【0152】
実施例3 免疫化および抗体産生のためのイヌ膵リパーゼDNAおよびポリペプチド配列の使用
イヌ膵リパーゼの遺伝子をPCR(High Fidelity Taq, Roche)でイヌ膵cDNAから増幅し、哺乳動物発現ベクター(pCMV-Tag4a, Stratagene)に複数のクローニング部位でライゲートした。このベクターはC末端タグを有するようにまたは有しないように構築することができる。得られたベクターをLIPOFECTAMINETM Transfection Reagent(Invitrogen)を用いてCOS7L細胞に一時的にトランスフェクトし、イヌ膵リパーゼタンパク質の発現を確認した。
【0153】
精製したベクターDNA(MaxiPrep Kit, Qiagen)を用い、報告されているプロトコール(Ulmer, J.B.ら Science, 1993)に従ってマウスのDNA免疫化を行った。2回目の免疫化の2週間後、個々のマウスからの抗体価を評価した。96ウェルマイクロタイタープレート(Immulon 2HB, Dynatech)を4℃で一晩、10μg/mlの抗ヒト膵リパーゼ抗体(Fitzgerald #M410139a)/リン酸バッファー(PBS、pH 7.4)でコーティングした。次いでプレートを3% BSA/50mM Tris(pH 7.5)で1時間ブロッキングし、PBS-T(0.05% Tween-20含有0.01M PBS(Sigma))で4回洗浄した。未免疫化(ネガティブコントロール)、免疫化(ポジティブコントロール)、およびDNAを2回接種したマウス由来の血清を、1:1000希釈の精製した組換えcPLPタンパク質/抗体希釈液(50mM Tris(pH 7.2)、 0.05% Tween-20、(50%ウシ胎仔血清および10%マウス血清を含有))と共に5分間、プレインキュベートした後、これをサンドイッチELISAに添加し、競合フォーマットを創製した。プレートを室温で1時間インキュベートした後、PBS-Tで4回洗浄した。捕捉したcPLP1の検出を、1:1000希釈のウサギポリクローナル抗体(Texas A&M大学, College Station, Tex)および1:2500希釈のHRPO-コンジュゲート・ヤギ抗ウサギ抗体(Jackson ImmunoResearch)/抗体希釈液を用いて室温で1時間ずつ行った。プレートをPBS-Tで6回洗浄し、TMB基質(Moss社)で発色させた。図6Aに示すように、ネガティブコントロールに比較したシグナル(O.D.)の低下により、抗体がcPLP1抗原と反応したことが示された(図6A)。
【0154】
精製した組換えcPLPタンパク質をニワトリにおける抗体産生のための免疫原としても使用した。当業者に周知の標準的なプロトコールに従って2検体の雌ニワトリを免疫化した。一連の4回の注射後、抗体価の測定をサンドイッチELISAにより、抗ニワトリHRPコンジュゲート(1:2500、Jackson ImmunoResearch)および組換えcPLP1を用いて、上記のELISAと同様に行った。図6Bに示すように、いずれの雌ニワトリもcPLP1に対する有意な力価を示した。
【0155】
実施例4 免疫化および抗体産生のための精製した天然型イヌ膵リパーゼの使用
精製した天然型イヌ膵リパーゼ(SteinerおよびWilliams, Biochimie. 2002 12月;84(12): 1245-53)を使用し、当業者に周知の方法を用いて、Balb/Cマウスを免疫化した(Antibodies, a Laboratory Manual, by Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988, pp 53-135参照)。2検体のマウスのそれぞれに、フロイント完全アジュバントを使用し、約63μgのcPLを0日目に腹腔内(I.P.)接種した。25日目にフロイント不完全アジュバントを用い、同じ手順でマウスに追加免疫を行った。50日目にRibiアジュバントを用い、同じ手順でマウスに追加免役を行った。
【0156】
69日目に尾部から血液を採取し、以下の実施例5に記載するように抗cPL ELISAアッセイを用いて抗cPL価を測定した。
【0157】
98日目に30μgの天然型cPLをRibiアジュバントと共にマウスに皮下(S.C.)接種した。114日目に同じプロトコールを用いてマウスに追加免役を行った。123日目に尾部から血液を採取し、抗cPL ELISAアッセイを用いて抗cPL価を測定した。143日目に10μgの天然型cPLをマウスの後肢に筋肉内接種した。147日目に脾臓を回収し、当業者に周知の方法で骨髄腫細胞系FOと融合させた(Antibodies, a Laboratory Manual, by Harlow and Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988, pp 139-238参照)。
【0158】
実施例5 イヌ膵リパーゼのELISA
マウス尾部血液の初期スクリーニングに使用した方法はSteinerらによって報告されている(Can. J. Vet. Res. 67:175-82)。簡潔に記載すると、イヌ膵リパーゼを96ウェルマイクロタイタープレートに0.3μg/mlの濃度で1時間、37℃でコーティングさせた。プレートをSuper Block(Pierce)で1時間ブロッキングし、PBSで洗浄した。マウス血清サンプルを1% BSA含有PBSで1:10に希釈し、プレートの横一列に連続的に希釈した。プレートを37℃で1時間インキュベートした後、PBS/0.05% tween20で4回洗浄した。1:3000に希釈したヤギ抗マウスHRPコンジュゲート(Jackson Immuno Research)を用いて結合した抗体を検出した。プレートをTMB試薬(Pierce)で発色させた。
【0159】
実施例6 CaPLモノクローナル抗体のスクリーニングおよび単離
ハイブリドーマ細胞系を実施例4に記載するように増殖させ、個々のモノクローナル抗体生成クローンを有限希釈のプロセスを用いて単離した。サンドイッチELISAを発色させて、ハイブリドーマが分泌するcPL特異的抗体をスクリーニングした。
【0160】
細胞上清からマウスモノクローナル抗体を、ロバ抗マウス抗体(Jackson Immuno Research)を10μg/mlの濃度でコーティングしたImmulon 2 HBプレート上に捕捉した。上清をプレート上で、室温で2時間(または4℃で一晩)インキュベートし、捕捉を起こさせた。次いでプレートをPBS/0.1% Tween 20で6回洗浄し、イヌ膵リパーゼ(0.5μg/ml、50μl/ウェル)と共に1時間インキュベートし、再び洗浄した。コンジュゲート希釈液(50mM Tris(pH 7.2)、0.05% Tween-20、50% ウシ胎児血清)で1:1000に希釈した抗ウサギcPL(Texas A&M 大学, College Station, Tx)をウェルに添加し、1時間インキュベートした。コンジュゲート希釈液で1:2500に希釈したロバ抗ウサギ:HRPコンジュゲート(Jackson Immuno Research)を用いて、結合した抗体を検出した。プレートを8回洗浄した後、TMB試薬で発色させた。発色は5分間行った。
【0161】
この方法を使用してcPLに特異的に結合するモノクローナル抗体を同定した。例えば2つのマウスモノクローナル抗体(4G11および7E11)を、この方法を使用して単離した。これらのモノクローナル抗体は、cPL ELISAアッセイの発色に好適な親和性でcPLに結合する。これらの抗体を分泌する細胞系はATCCに寄託されている(Manassas Virginia, 2005年3月30日)。株名はCPL 7E11クローン2/A5およびCPL 4G11/14Dで、ATCC特許寄託番号はそれぞれPTA 6653およびPTA 6652である。
【0162】
実施例7 モノクローナル抗体のキャラクタリゼーション
同定されたモノクローナル抗体、7E11および4G11はいずれも、イヌ血清中のcPLと反応する。本実施例に記載するELISAフォーマットを用い、cPLP1の代わりに2つのイヌ血清サンプル(3% BSA、50mM Tris(pH7.5)中の1:2または1:10希釈液)を使用して反応性を測定した。結果を図7に示す。
【0163】
同定されたモノクローナル抗体、4G11および7E11の両者を、リパーゼアッセイ(VITROS(登録商標) Chemistry System, Ortho-Clinical Diagnostics)においてcPLP1の酵素活性に干渉するその能力について評価した。4G11および7E11のいずれか由来のハイブリドーマ上清を、cPLP1を含有する濾過した昆虫細胞培養液上清と混合して1:10希釈液を得た。リパーゼ活性をPBSコントロールおよび無関係のハイブリドーマ上清と比較した。4G11由来のハイブリドーマ上清を添加した場合のみ、リパーゼアッセイで酵素活性が低下した(図8)。
【0164】
同定されたモノクローナル抗体、4G11および7E11はcPLP1への結合に関して、互いに競合しない。本実施例に記載するELISAプロトコールを用いて、4G11または7E11抗体のいずれかをハイブリドーマ上清からプレートに捕捉させた。組換えcPLP1(7E11では1:250、4G11では1:1000)を10μlの3% BSA、10μlの4G11のハイブリドーマ上清、または10μlの7E11のハイブリドーマ上清のいずれかの存在中、抗体希釈液(実施例3参照)で希釈した後、マイクロタイタープレートに添加した。抗原を他方の(alternate)モノクローナルと共にプレインキュベートすると、いずれのモノクローナル抗体でもシグナル(O.D.)の低下は観察されなかった(図9)。
【0165】
同定されたモノクローナル抗体、4G11および7E11の両者を、cPLP1と反応することが明らかになっている市販のヒト膵リパーゼに対するモノクローナル抗体と競合するその能力について試験した。抗ヒト膵リパーゼ抗体(Fitzgerald M410139a)をマイクロタイタープレート上にコーティングし、実施例3に記載したようにELISAを実施した。ウェルをTrisベースのSuperblock(Pierce)+0.1% Tween-20でブロッキングした。PBS-Tで4回洗浄した後、抗体希釈液(実施例3)で1:500または1:1000に希釈したcPLP1を、それぞれ7E11または4G11の1:2、1:5、または1:10希釈液のいずれかと共に10分間プレインキュベートし、その後ウェルに添加した。サンプルを1時間インキュベートした後,PBS-Tで5回洗浄した。cPLに対するポリクローナル抗体での検出を、実施例6に記載するように実施した。図10に示すように、抗ヒト膵リパーゼ抗体はcPLP1に結合し、モノクローナル抗体7E11はcPLP1の結合に関してこの抗体と競合するが、抗体4G11は競合しない。
【0166】
精製したモノクローナル抗体、4G11および7E11の反応性を同濃度で比較した場合、同濃度のcPLP1でのO.D.(650nm)測定値は抗体7E11より抗体4G11の方が高い。例えば、ELISA(実施例3に記載するように各抗体をPBS中、10μg/mlの濃度でImmulon 2HBプレートに4℃で一晩コーティングさせ、cPLP1の1:500希釈液で処理)において、4G11のO.D.測定値は1.747であるのに対し、7E11では1.383である。同様に、精製したモノクローナル抗体を実施例6に記載するようにELISAに捕捉させた場合、cPLP1の1:4000希釈液の4G11でのO.D.測定値は1.010であるのに対し、cPLP1の1:400希釈液の7E11でのO.D.測定値は1.140である。このデータは、これら2つのモノクローナル抗体がcPLP1抗原に対して異なる親和性を有していることを示唆している。
【0167】
生化学的に比較した場合、2つのモノクローナル抗体、4G11および7E11は異なる等電点を有する。4G11のpIは6.7であり、7E11のpIは6.1である。
【0168】
実施例8 イヌ膵リパーゼへの反応性を有する抗体の使用
イヌ膵リパーゼを認識する抗体を定量的および非定量的アッセイに用いて、イヌ血清または他の生体サンプル中の膵リパーゼの検出を行ってもよい。ある例では、イヌ膵リパーゼアッセイはサンドイッチフォーマットを用いるELISAから成る。このフォーマットでは、モノクローナル抗cPL(クローン7E11)をマイクロタイタープレートウェル(Immulon 4 HBXプレート; Thermo Electron社; カタログ番号S25-343-04)上に約5μg/mLの濃度でコーティングさせる。コーティング法は以下の通りである:7E11モノクローナル抗体を10mMリン酸バッファー(PBS)(pH7.4)で希釈し、5μg/mLとする。各ウェルにこのコーティング溶液を100μL負荷し、4℃で8時間インキュベートする。次いでコーティング溶液を吸引し、0.1M PBS/0.05% Tween 20を用いてプレートを3回洗浄する。その後プレートに200μL/ウェルのBSAベースのブロッキング溶液を負荷する;プレートを25℃で4時間インキュベートする。プレートを吸引し、0.1M PBS/0.05% Tween20で3回洗浄する。血清サンプルまたはキャリブレーターに含有される膵リパーゼを固相抗体で捕捉させる。キャリブレーターの調製は、組換えcPL抗原を希釈してBSAベースの希釈液とし、μg/Lレベルのキャリブレーターを得ることから成る。次に、HRPOをコンジュゲートさせた抗cPL(クローン4G11)を添加し、サンドイッチを完成させる。HRPO-SMCCおよびジスルフィド低下型抗体を用いてHRPO-抗体コンジュゲートを調製する。
【0169】
このアッセイでは、膵リパーゼ含有キャリブレーターおよびイヌ被験体サンプルをHRPO-コンジュゲートmAb 4G11と共に各試験管中で前混合する。サンプルまたはキャリブレーターとコンジュゲートとの比は1:3(v/v)である。1:3000のコンジュゲート希釈率をアッセイに使用した。前混合にはインキュベート時間は必要ない。その後キャリブレーターおよびサンプル前混合物を、抗体をコーティングしたマイクロタイタープレートウェルに負荷し(100μl)、25℃で1時間インキュベートする。インキュベート時間の終了時に、プレートを洗浄して未結合の成分を除去する。TMB基質をウェルに添加し、プレートを室温で5分間インキュベートする。1% SDS溶液を添加して呈色反応を停止させ、マイクロタイタープレート測定器で650nmでの吸光度を測定する。mAB 7E11およびmAB 4G11サンドイッチ、並びに前混合プロトコールを用いた結果を図11に示す。
【0170】
あるいはまた、前混合をしないプロトコールに従ってもよい。キャリブレーターまたはサンプルを、抗体をコーティングしたマイクロタイタープレートウェルに負荷し、25℃で1時間インキュベートする。プレートを洗浄し、未結合の物質を除去する。次いでウェルにHRPO-コンジュゲートmAB 4G11を負荷し、25℃で1時間インキュベートする。インキュベート時間の終了時に、プレートを洗浄して未結合の物質を除去する。TMB基質をウェルに添加し、プレートを室温で5分間インキュベートする。1% SDS溶液を添加して呈色反応を停止させ、マイクロタイタープレート測定器で650nmでの吸光度を測定する。
【0171】
本発明の種々の特定の態様を本明細書に記載したが、理解されるように、本発明はそれらの詳細な態様に限定されるものではなく、種々の変更または修飾が当業者によって、本発明の範囲および意図から逸脱することなく行われる。
【0172】
参考文献一覧
1. Petersen, S.B., Drablos, F., 1994. A sequence analysis of lipases, esterases, and related proteins. In: Woolley, P., Petersen, S.B. (Eds.), Lipases--their structure, biochemistry, and application, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 23-48.
2. Lin, Y.H., Yu, C., Huang, A.H., 1986. Substrate specificities of lipases from corn and other seeds. Arch. Biochem. Biophys. 244, 346-356.
3. Jaeger, K.E., Ransac, S., Dijkstra, B.W., Colson, C., van Heuvel, M., Misset, O., 1994. Bacterial lipases. FEMS Microbiology Reviews 15, 29-63.
4. Mukherjee, K.D., Hills, M.J., 1994. Lipases from plants. In: Woolley, P., Petersen, S.B. (Eds.), Lipases--their structure, biochemistry and application, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 49-75.
5. Lawson, D.M., Brzozowski, A.M., Dodson, G.G., Hubbard, R.E., Huge-Jensen, B., Boel, E., Derewenda, Z.S., 1994. Three-dimensional structures of two lipases from filamentous fungi. In: Woolley, P., Petersen, S.B. (Eds.), Lipases--their structure, biochemistry and application, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 77-94.
6. Svendsen, A., 1994. Sequence comparisons within the lipase family. In: Woolley, P., Petersen, S.B. (Eds.), Lipases--their structure, biochemistry, and application, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 1-21.
7. Antonian, E., 1988. Recent advances in the purification, characterization and structure determination of lipases. Lipids 23, 1101-1106.
8. Carriere, F., Bezzine, S., Verger,R., 1997. Molecular evolution of the pancreatic lipase and two related enzymes towards different substrate selectivities. Journal of Molecular Catalysis B: Enzymatic 3, 55-64.
9. Carriere, F., Withers-Martinez, C., Van Tilbeurgh, H., Roussel, A., Cambillau, C., Verger, R., 1998. Structural basis of the substrate selectivity of pancreatic lipases and some related proteins. Biochim. Biophys. Acta Rev. Biomembr. 1376, 417-432.
10. Hirata, K., Dichek, H.L., Cioffi, J.A., Choi, S.Y., Leeper, N.J., Quintana, L., Kronmal, G.S., Cooper, A.D., Quertermous, T., 1999. Cloning of a unique lipase from endothelial cells extends the lipase gene family. J. Biol. Chem. 274, 14170-14175.
11. Anderson, R.A., Sando, G.N., 1991. Cloning and expression of cDNA encoding human lysosomal acid lipase/cholesteryl ester hydrolase. Similarities to gastric and lingual lipases. J. Biol. Chem. 266, 22479-22484.
12. Carriere, F., Gargouri, Y., Moreau, H., Ransac, S., Rogalska, E., Verger, R., 1994. Gastric lipases: cellular, biochemical and kinetic aspects. In: Woolley, P., Peterson, S.B. (Eds.), Lipases--their structure, biochemistry, and application, Cambridge University Press, Cambridge, pp. 181-205.
13. Moreau, H., Gargouri, Y., Lecat, D., Junien, J.L., Verger, R., 1988. Screening of preduodenal lipases in several mammals. Biochim. Biophys. Acta 959, 247-252.
14. Carriere, F., Barrowman, J.A., Verger, R., Laugier, R., 1993a. Secretion and contribution to lipolysis of gastric and pancreatic lipases during a test meal in humans. Gastroenterol. 105, 876-888.
15. Carriere, F., Laugier, R., Barrowman, J.A., Douchet, I., Priymenko, N.,
Verger, R., 1993b. Gastric and pancreatic lipase levels during a test meal in dogs. Scand. J. Gastroenterol. 28, 443-454.
16. Carriere, F., Moreau, H., Raphel, V., Laugier, R., Benicourt, C., Junien, J.-L., Verger,R., 1991. Purification and biochemical characterization of dog gastric lipase. Eur. J. Biochem. 202, 75-83.
17. Steiner, J.M., Berridge, B.R., Wojcieszyn, J., Williams, D.A., 2002. Cellular immunolocalization of gastric and pancreatic lipase in various tissues obtained from dogs. Am. J. Vet. Res. 63, 722-727.
18. Steiner, J.M., Broussard, J., Mansfield, C.S., Gumminger, S.R., Williams, D.A. 2001a. Serum canine pancreatic lipase immunoreactivity (cPLI) concentrations in dogs with spontaneous pancreatitis. J. Vet. Int. Med. 15, 274.
19. Steiner, J.M., Gumminger, S.R., Rutz, G.M., Williams, D.A. 2000b. Serum canine pancreatic lipase immunoreactivity (cPLI) concentrations in dogs with exocrine pancreatic insufficiency. J. Vet. Int. Med. 15, 274.
20. Steiner, J.M., Gumminger, S.R., Williams, D.A. 2000 c. Development and validation of an enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA) for the measurement of canine pancreatic lipase immunoreactivity (cPLI) in serum. J. Vet. Int. Med. 15, 311.
21. Vandermeers, A., Chroistophe, J., 1968. Alpha-amylase and lipase of rat pancreas. Chromatographic purification and research on molecular weight and amino acid composition. Biochim. Biophys. Acta 154, 110-129.
22. Rathelot, J., Julien, R., Bosc-Bierne, I., Gargouri, Y., Canioni, P., Sarda, L., 1981. Horse pancreatic lipase. Interaction with colipase from various species. Biochimie 63, 227-234.
23. Bosc-Bierne, I., Rathelot, J., Perrot, C., Sarda, L., 1984. Studies on chicken pancreatic lipase and colipase. Biochim. Biophys. Acta 794, 65-71.
24. Gieseg, S.P., Forrester, I.T., Carne, A., 1992. The purification of ovine pancreatic lipase that is free of colipase using an improved delipidation method. Pancreas 7, 45-51.
25. Mejdoub, H., Reinbolt, J., Gargouri, Y., 1994. Dromedary pancreatic lipase: Purification and structural properties. Biochem. Biophys. Acta. Lipids Lipid Metab. 1213, 119-126.
26. Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, 1992
27. Lesk, A. M., ed., Oxford University Press, New York, 1988; Biocomputing: Informatics and Genome Projects.
28. Smith, D. W., ed., Academic Press, New York, 1993; Computer Analysis of sequence Data, Part 1.
29. Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds., Humana Press, New Jersey, 1994; Sequence Analysis in Molecular Biology.
30. von Heinje, G., Academic Press, 1987; and Sequence Analysis Primer, Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991.
31. Gribskov, M. and Devereux, J., eds., M Stockton Press, New York, 1991
32. Needleman and Wunsch (J. Mol. Biol. (48):444-453 (1970).
33. Devereux, J., et al, Nucleic Acids Res. 12(1 ):387 (1984).
34. E. Myers and W. Miller (CABIOS, 4:11 -17 (1989).
35. Altschul, et al. (J. Mol. Biol. 215:403-10 (1990).
36. Altschul et al. (Nucleic Acids Res. 25(17):3389-3402 (1997).
37. Bowie et al., Science 247:1306-1310 (1990).
38. Cunningham et al., Science 244:1081-1085 (1989)
39. Smith et al., J. Mol. Biol. 224:899-904 (1992)
40. de Vos et al. Science 255:306-312 (1992).
41. Proteins--Structure and Molecular Properties, 2nd Ed., T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993).
42. Wold, F., Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson, Ed., Academic Press, New York 1-12 (1983);
43. Seifter et al. (Meth. Enzymol. 182: 626-646 (1990)).
44. Rattan et al. (Ann. N.Y. Acad. Sci. 663:48-62 (1992).
45. Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, N.Y. (1989).
46. Nielsen, et al, Science 254:1497-1500 (1991).
47. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 2nd. ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., (1989).
48. Smith et al., Gene 67:31-40 (1988)), pMAL (New England Biolabs, Beverly, Mass.) and pRIT5 (Pharmacia, Piscataway, N.J.)
49. Amann et al., Gene 69:301-315 (1988)
50. Studier et al., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185:60-89 (1990).
51. Gottesman, S., Gene Expression Technology: Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, Calif. (1990)119-128).
52. Wada et al., Nucleic Acids Res. 20:2111-2118 (1992).
53. Baldari, et al., EMBO J. 6:229-234 (1987).
54. Kurjan et al., Cell 30:933-943(1982).
55. Schultz et al., Gene 54:113-123 (1987).
56. Smith et al., Mol. Cell Biol. 3:2156-2165 (1983).
57. Lucklow et al., Virology 170:31-39 (1989).
58. Seed, B. Nature 329:840(1987).
59. Kaufman et al., EMBO J. 6:187-195 (1987).
60. Chibata, Ichiro, Halsted Press, NY (1978) Immobilized Enzymes.
61. Cuatrecasas, J. Biol. Chem, 245:3059 (1970).
62. Steiner, J.M., Williams, D.A., 2002. Purification of classical pancreatic lipase from dog pancreas. Biochimie 84 (2002) 1243-1251.
63. Thirstrup, K., et al FEBS, 1993.
64. Ulmer, J.B., et al Science, 1993.
65. Harlow, Antibodies, Cold Spring Harbor Press, (1988) pp. 53-135.
66. Harlow, Antibodies, Cold Spring Harbor Press, (1988) pp. 139-238.
67. Steiner, et al. Can. J. Vet Res. 67:175-82.
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】イヌ膵リパーゼの同定および増幅のためのプライマー設計を示す。
【図2】1.429 Kbのイヌ膵リパーゼ遺伝子を示す(cPL1(SEQ ID NO:2))。
【図3】翻訳されたイヌ膵リパーゼタンパク質を示す(cPLP1(SEQ ID NO:3))。
【図4】多くのイヌ膵リパーゼペプチドを示す(SEQ ID NO:10-52)。
【図5】6x Hisタグを含有する精製した組換えイヌ膵リパーゼを示す。
【図6】標準的な競合ELISAを免疫血清と共に用いた抗体価を示す。
【図7】2つのモノクローナル抗体、4G11および7E11の、イヌ血清中のイヌ膵リパーゼと反応する能力を示す。
【図8】モノクローナル抗体4G11のcPLP1の酵素活性を阻害する能力を示す。
【図9】モノクローナル抗体4G11および7E11はcPLP1への結合に関して互いに競合しないことを示すELISAデータである。
【図10】cPLP1への結合に関して抗ヒト膵リパーゼ抗体と競合するモノクローナル抗体7E11の能力を示す。
【図11】モノクローナル抗体7E11および4G11を用いるイヌ膵リパーゼに関するELISAサンドイッチアッセイの結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)SEQ ID NO:2のヌクレオチド配列、(b)SEQ ID NO:3のポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列、(c)SEQ ID NO:3に示すアミノ酸配列のアレル変異体をコードするヌクレオチド配列、ここで、該ヌクレオチド配列はストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:2の核酸分子の相補鎖にハイブリダイズし、および(d)ヌクレオチド配列(a)、(b)、または(c)のいずれかに相補的なヌクレオチド配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子。
【請求項2】
請求項1記載の核酸配列を含む核酸ベクター。
【請求項3】
請求項2記載のベクターを含むホスト細胞。
【請求項4】
(a)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列 、(b)SEQ ID NO:3のアレル変異体のアミノ酸配列、ここで、アレル変異体はストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:3の核酸分子の相補鎖にハイブリダイズする核酸にコードされ、および(c)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列の抗原性フラグメント、ここで、該フラグメントは抗体4G11および7E11の少なくとも1つに特異的に結合する、からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド。
【請求項5】
請求項4記載のポリペプチドのいずれかを生成する方法であって、アミノ酸配列(a)、(b)、または(c)のいずれかをコードするヌクレオチド配列をホスト細胞へ導入し、そしてペプチドがヌクレオチド配列から発現される条件下でホスト細胞を培養することを含む上記方法。
【請求項6】
請求項4記載のポリペプチドに特異的に結合する、イヌ膵リパーゼに対する単離された抗体。
【請求項7】
4G11/14Dおよび7E11からなる群から選択される、請求項6記載の抗体。
【請求項8】
4G11および7E11からなる群から選択されるモノクローナル抗体。
【請求項9】
請求項8記載のモノクローナル抗体を分泌する細胞系。
【請求項10】
細胞系がATCCに寄託されており、PTA-6652およびPTA-6653からなる群から選択される特許寄託番号を有する、請求項9記載の細胞系。
【請求項11】
生体サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を測定する方法であって、
(a)サンプルをイヌ膵リパーゼに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体と接触させ;
(b)血清サンプル中におけるイヌ膵リパーゼの第1の抗体への結合を検出する、
ことを含む上記方法。
【請求項12】
組換えイヌ膵リパーゼを含む標準物質を第1のモノクローナル抗体と接触させ、第1のモノクローナル抗体への標準物質の結合を検出し、そしてサンプル中のイヌ膵リパーゼへの第1のモノクローナル抗体の結合量を標準物質への第1のモノクローナル抗体の結合量と比較することを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
第1のモノクローナル抗体が標識にコンジュゲートされている、請求項11記載の方法。
【請求項14】
第1のモノクローナル抗体が固相上に固定化されている、請求項11記載の方法。
【請求項15】
検出が、固相をイヌ膵リパーゼに特異的な第2のモノクローナル抗体と接触させ(ここで、第2のモノクローナル抗体は標識にコンジュゲートされている)、そして固相に結合した標識を検出することを含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
組換えイヌ膵リパーゼを含む標準物質を第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体と接触させ、そしてサンプル中のイヌ膵リパーゼに結合した第2のモノクローナル抗体の標識からのシグナルを標準物質に結合した第2のモノクローナル抗体の標識からのシグナルと比較することを更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
第1の抗体および第2の抗体が同一である、請求項15記載の方法。
【請求項18】
第1の抗体および第2の抗体の少なくとも1つが4G11および7E11からなる抗体の群から選択される、請求項15記載の方法。
【請求項19】
生体サンプル中でイヌ膵リパーゼの存在または量を測定する方法であって、
(a)サンプルとイヌ膵リパーゼに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体との混合物を生成し、ここで、第1のモノクローナル抗体は標識にコンジュゲートされており;
(b)サンプル中のイヌ膵リパーゼおよび第1のモノクローナル抗体に複合体を形成させ;
(c)混合物をイヌ膵リパーゼに結合する第2のモノクローナル抗体と接触させ、ここで、第2のモノクローナル抗体は固相に固定化されており;
(d)固相上の標識の存在または量を検出する、
ことを含む上記方法。
【請求項20】
第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体が同一である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体の少なくとも1つが4G11および7E11からなる抗体の群から選択される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
第1および第2のモノクローナル抗体を組換えイヌ膵リパーゼを含む標準物質と接触させ、サンプル中のイヌ膵リパーゼに結合した第1のモノクローナル抗体の標識からのシグナルの量を標準物質に結合した第1のモノクローナル抗体の標識からのシグナルと比較することを更に含む、請求項19記載の方法。
【請求項23】
生体サンプル中でイヌ膵リパーゼの存在または量を測定する方法であって、
(a)サンプルとイヌ膵リパーゼに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体との混合物を生成し、ここで、第1のモノクローナル抗体は標識にコンジュゲートされており;
(b)サンプル中のイヌ膵リパーゼおよび第1のモノクローナル抗体に複合体を形成させ;
(c)混合物をイヌ膵リパーゼに特異的に結合する第2のモノクローナル抗体と接触させ、ここで、第2のモノクローナル抗体は第2の標識にコンジュゲートされており;
(d)標識の結合を検出し、このことによりサンプル中のイヌ膵リパーゼの存在を検出する
ことを含む上記方法。
【請求項24】
第2のモノクローナル抗体上の標識が固相である、請求項23記載の方法。
【請求項25】
第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体が同一である、請求項23記載の方法。
【請求項26】
第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体の少なくとも1つが4G11および7E11からなる抗体群から選択される、請求項23記載の方法。
【請求項27】
第1および第2のモノクローナル抗体を組換えイヌ膵リパーゼを含む標準物質と接触させ、サンプル中のイヌ膵リパーゼに結合した第1のモノクローナル抗体の標識からのシグナルの量を標準物質に結合した第1のモノクローナル抗体の標識からのシグナルと比較することを更に含む、請求項24記載の方法。
【請求項28】
サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を検出するための装置であって、イヌ膵リパーゼに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体が固定化された固相を含む上記装置。
【請求項29】
第1のモノクローナル抗体が4G11および7E11からなる抗体の群から選択される、請求項28記載の装置。
【請求項30】
標準物質として組換えイヌ膵リパーゼを更に含み、第1のモノクローナル抗体が組換え膵リパーゼに特異的に結合する、請求項28記載の装置。
【請求項31】
サンプル中のイヌ膵リパーゼの存在または量を検出するためのキットであって、
(a)請求項28記載の装置、および
(b)イヌ膵リパーゼに特異的に結合する第2のモノクローナル抗体を含む試薬、ここで、第2のモノクローナル抗体は第2の標識にコンジュゲートされている、
を含む上記キット。
【請求項32】
第1のモノクローナル抗体および第2のモノクローナル抗体の少なくとも1つが4G11および7E11からなる抗体の群から選択される、請求項31記載のキット。
【請求項33】
以下:
(a)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列、
(b)SEQ ID NO:3のアレル変異体のアミノ酸配列、ここで、アレル変異体はストリンジェントな条件下でSEQ ID NO:3の核酸分子の反対側の鎖にハイブリダイズする核酸にコードされる、
(c)SEQ ID NO:3のアミノ酸配列の抗原性フラグメント、ここで、フラグメントは抗体4G11および7E11の少なくとも1つに特異的に結合する、
からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチドを含む標準物質を更に含む、請求項31記載のキット。
【請求項34】
標準物質として組換えイヌ膵リパーゼを更に含む、請求項31記載のキット。
【請求項35】
イヌ膵リパーゼとの結合に関して4G11と競合するモノクローナル抗体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公表番号】特表2007−532138(P2007−532138A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508521(P2007−508521)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/012645
【国際公開番号】WO2006/022882
【国際公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願人】(300004500)アイデックス ラボラトリーズ インコーポレイテッド (30)
【Fターム(参考)】