説明

イノシトールリン酸誘導体及びイノシトール−1−リン酸の検出法

本発明は、イノシトール-リン酸誘導体に関連し、ここでイノシトール-リン酸は、1つもしくは2つの反応基G又は1つもしくは2つの複合した分子Mもしくは物質により置換され、該反応基(複数)G又は該物質(複数)もしくは分子(複数)Mは、IP1へ、結合基Lを介して結合されている。本発明のMは、トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体の群から選択される。本発明は、イノシトール-リン酸サイクルの研究に使用される手段、従って間接的に、ホスホリパーゼCに結合される7回膜貫通型受容体、チロシン-キナーゼ活性を有する受容体、及び一般に様々なIP1細胞内濃度に関連した酵素を研究する手段に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野及び先行技術
本発明の対象は、イノシトールリン酸誘導体であり、イノシトールリン酸サイクルの研究、従って間接的に、ホスホリパーゼC(PLC)に結合した7回膜貫通型受容体(7TM受容体)、チロシンキナーゼ活性を有する受容体、及び一般的に様々な細胞内濃度のIP1に関連した酵素の研究を可能にする新規な手段を提供する。
【背景技術】
【0002】
用語「イノシトールリン酸」は、各炭素上にヒドロキシル基を含むシクロヘキサン型(1,2,3,4,5,6-ヘキサヒドロキシ-シクロヘキサン)のシクリトールファミリーの化合物を意味する。最も広範に表現された天然の化合物は、myo-イノシトールであり、その1、2、3及び5位のヒドロキシル基は、シクロヘキサン環の片側の面に位置し、そして4及び6位の2つのヒドロキシル基は、他側の面に位置している。イノシトールリン酸サイクル時に生成される天然の化合物は、D-myo-イノシトールリン酸であり、ここでリン酸基は、イノシトール環の1、3、4又は5位に存在する。これらの化合物は一般に、例えばIP2(イノシトールビスリン酸)又はIP3(イノシトール三リン酸)との対比で、「IP1」と称される。本明細書の他の部分では、これらの化合物は、各々、以下の略号で指定され:IP1(1)、IP1(3)、IP1(4)、IP1(5)、以下の式を有する:
【0003】
【化1】

【0004】
IP1(1)及びIP1(4)が、最も広範に研究された中間体である。
【0005】
Gタンパク質共役型7回膜貫通型受容体(GPCR, 7TM)は、多くの病理学的プロセスに関連している。これらは特に、細胞外媒体から細胞内媒体への、細胞膜を超えたシグナル伝達の機能を有する。ホルモン、増殖因子、サイトカイン又は神経伝達物質のような、体内でメッセンジャーの役割を果たす分子は、これらの受容体に結合し、細胞内部のカスケード事象引き起こすであろう。
【0006】
これらの受容体の医薬品として使用することが可能な化合物の存在下での挙動の研究は、新規治療の発見を可能にする選択法の1つである。これらの受容体の活性化又は不活性化を研究するために広範に使用される経路の1つは、可能性のある医薬品のこれらの受容体への結合時の細胞内メッセンジャー濃度の変化を測定することからなる。従ってこれらの細胞内メッセンジャーの変化の測定を可能にする手段は、医薬研究において非常に価値があるが、細胞間-/細胞内-シグナル伝達の機構のより良い理解を目指した基礎研究作業においても非常に価値がある。
【0007】
アゴニストリガンドの7TM受容体に対する結合は、その受容体の三次構造を変更し、これは次に、その受容体へ共役されたGタンパク質のコンホメーションの修飾を誘導する。このGタンパク質の活性化は、場合によっては、次にエフェクターの活性化又は阻害のいずれかを引き起こし、このことはcAMP又はIP3のような細胞内セカンドメッセンジャーを生じるであろう。
【0008】
これらのエフェクターの1つは、ホスホリパーゼC(PLC)であり、これは膜ホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)のジアシルグリセロール(DAG)及びイノシトールトリスリン酸(IP3)への加水分解を誘導する。IP3は次に、小胞体上に存在するIP3受容体を活性化することにより、細胞内Ca2+濃度の上昇を引き起こす。このIP3は、非常に短い半減期(1分未満)を有し、その理由はIP3は、直ちにその3位でリン酸化されイノシトール1,3,4,5-テトラキスリン酸(IP4)を生じるか、又は特異的ホスファターゼによりIP2へ分解されるかのいずれかであるからである。次にIP4及びIP2は、一連の酵素(5-、3-、4-又は1-PPASE)により迅速に分解され、主にIP1(1)及びIP1(4)を生じるが、IP1(3)及びIP1(5)も生じる。これらのイノシトール一リン酸は、イノシトールモノホスファターゼ(IMPase)の作用によりイノシトールへ分解される前に蓄積する傾向を有する。この最終分解は、IMPaseを阻害するリチウム塩の使用により、人為的に遅らせることができ[Parthasarathyら、Life Sci. (1994), 54, 1127-1142]、細胞内のIP1の蓄積を可能にし、この中間体の最適なアッセイを促進する。これらのイノシトール誘導体の転換の組合せは、イノシトールサイクルと称されている。イノシトールサイクルの活性化により生成されたIP1は、これらの細胞内メッセンジャーの1つであり、そのアッセイは、ホスホリパーゼCに関連したシグナル伝達経路の修飾を検出することを可能にする。
【0009】
文献[Berridgeら、Biochem J. (1983) 212, 473-82]に説明されたIP1アッセイは、主に放射性同位体法を基にしている。細胞は、トリチウム処理されたイノシトールの存在下(48時間)及び形成されたIP1の酵素分解を避けるための塩化リチウムの存在下で、インキュベーションされる。これらの細胞は、膜受容体を刺激する物質(アゴニスト神経メディエーター)で処理され、次に溶解され、イノシトールに加え、細胞質ゾル画分の全てのイノシトールリン酸(IP3、IP2、IP4、IP1)が、陰イオン交換カラム上に沈着され、このカラムが、ギ酸アンモニウム勾配により溶離され;トリチウム-標識されたIP1が、所定のイオン強度で収集され、こうして測定された放射活性は、細胞の刺激により形成されたIP1の量を概算することを可能にする。この技法は、制御することが極めて困難であり、放射性同位体を使用するという欠点があり、及び形成されたIP1の絶対定量をもたらさず;従って、この方法では、多数を同時にアッセイすることは不可能である。それにもかかわらず、分子のハイスループットスクリーニングのように、部分的に必要性に応じ、これを小型化することは可能である[Chengalvalaら、J Biochem. Biophys. Methods (1999), 38, 163-170]。
【0010】
トリチウム処理されたイノシチドを使用する他の技術[Zheng Wら、J Biomol Screen.(2004) 9(2):132-40]、[Brandish P.E.ら、Anal. Biochem. (2003) 313, 311-318]及び[Liu JJら、Anal Biochem. 2003 Jul 1;318(1):91-9]が提唱されており;これが先行する同位体技術と異なる点は、本質的に測定にある。これらの技法においては、リン酸基に親和性を有する金属錯体でコートされた固相を使用する、シンチレーション近接アッセイ(SPA)を使用することができる[Liuら、Anal Biochem (2003)]。この場合、全てのリン酸化された中間体(IP1、IP2、IP3など)は一緒にアッセイされ、選択性はイノシトールとイノシトールリン酸の間でのみ可能である。この技法は、ハイスループトスクリーニングにより良く適しており、多数の同時アッセイの実施を可能にしているが、選択性を明確に欠いており、IP1単独のアッセイを可能にすることはできない。
【0011】
IP1の非放射性アッセイを実施するためには、規定された立体化学を有するIP1の官能基化されたアナログを有する必要がある。myo-イノシトールは、対称面を有する分子であるので、これは光学活性がなく(その光学活性が対称性の存在により破壊される、いわゆる「meso」化合物)、そのリン酸化は、例えば、D-myo-イノシトール-1-リン酸及びL-myo-イノシトール-1-リン酸である2種の可能性のある鏡像異性体へつながり、D型鏡像異性体がイノシトールサイクルにより細胞内で生成され得る。文献[Prestwichら、J. Amer. Chem. Soc.(1991)]に説明されたIP3誘導体は、リン酸の1位で官能基化され;その結果これらは、IP1に特異的な抗体を生成するためにはほとんど適していない。
【0012】
本発明者らは、IP1をアッセイする先行技術の方法を使用する際に遭遇する障害及び欠点の克服を可能にすることができるIP1誘導体を開発した。
【発明の開示】
【0013】
発明の説明
本発明は、反応基G又は複合した物質もしくは分子Mで置換された、IP1(1)、IP1(3)、IP1(4)及びIP1(5)の官能性アナログを提供し、該反応基G又は該物質もしくは分子Mは、結合基Lを介してIP1へ結合されている。本発明の化合物は、これらと同じ生物学的特性を有するが、加えて分子又は物質と複合することができるという利点を有する、IP1の官能性アナログである。
【0014】
本発明は特に、リン酸基を持たないイノシトール環の炭素のいずれか1つにおいて、1つもしくは2つの反応基G、あるいは1つもしくは2つの物質もしくは分子Mと有利に置換されたIP1誘導体を提供し、該反応基、該物質又は分子は、任意に結合基Lを介してIP1へ結合されている。
【0015】
反応基Gで置換された本発明のIP1誘導体に複合した物質又は分子Mは、複雑な測定媒体中でのIP1の検出を可能にするマーカーであることができる。これらのマーカーは、例えば、放射性同位元素、蛍光又は化学発光化合物、あるいはそれらの基質の存在下でのその活性が容易に測定され得る酵素であってよい。該物質又は分子Mは、例えばこのTAGに対し特異的である抗体により認識されるTAGであってもよい。
【0016】
本発明の誘導体は、更に、固形支持体へ結合され、これはリン酸基を持たないイノシトール環の炭素の位置で共有結合している。
【0017】
本発明は、IP1に特異的な抗体の作出を可能にする免疫原性IP1誘導体も提供する。これらの免疫原は、担体分子に、リン酸基を持たないイノシトール環の炭素の位置で共有結合した本発明のアナログからなる。
【0018】
本発明は加えて、IP1を特異的に認識するリガンド、特に抗-IP1抗体と称されるIP1に特異的な抗体を提供する。
【0019】
本発明は更に、本発明のIP1アナログ又は本発明のIP1に特異的なリガンドを使用する、IP1を検出する方法、並びにこれらの方法を実施するために必要な構成要素を備えるキットを提供する。
【0020】
最後に、本発明は、IP1アナログを合成する方法を提供する。
【0021】
本発明のIP1アナログは、下記の一般式を有する:
【0022】
【化2】

【0023】
(式中、
置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6は、-OH、-OP032-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、但し置換基R1からR6の1つは、基-OP032-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-であり、且つ他の置換基R1からR6の1つ又は2つは、基-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mの1つであり、その他のR1からR6の置換基は、基-OHであり;
ここで:
Lは結合基であり、
Gは反応基であり、
Mは、以下の群から選択される複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体、
qは、0又は1に等しい。)。
【0024】
本発明の化合物の好ましいファミリーは、式(II)のmyo-イノシトール誘導体である:
【0025】
【化3】

【0026】
(式中:
置換基R1、R3、R4又はR5の1つは、基-OP032-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
他の置換基R1-R6の1つ又は2つは、基-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基は、OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【0027】
本発明は、置換基(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mを持つ炭素以外は、myo-イノシトール誘導体と同じ立体構造を有するchiro-、neo-、scyllo-及びepi-イノシトール誘導体にも関する。
【0028】
本発明のchiro-イノシトール誘導体は、1、4又は5位にリン酸基を含み、且つ3位で官能基化されている。これらの誘導体は、式(III)に対応している:
【0029】
【化4】

【0030】
(式中:
置換基R1、R4、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され、
R3は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R4及びR5は、基OH、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mであり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【0031】
本発明のneo-イノシトール誘導体は、1、3又は5位にリン酸基を含み、且つ4位で官能基化されている。これらの誘導体は、式(IV)に対応している:
【0032】
【化5】

【0033】
(式中:
置換基R1、R3、R4の1つは、-OP032-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R5は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3、R4は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【0034】
本発明のscyllo-イノシトール誘導体は、1、3、4又は5位にリン酸基を含み、且つ2位で官能基化されている。これらの誘導体は、式(V)に対応している:
【0035】
【化6】

【0036】
(式中:
置換基R1、R3、R4、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R2は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3、R4、及びR5は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【0037】
最後に、本発明のepi-イノシトール誘導体は、1、3、又は5位にリン酸基を含み、且つ4位で官能基化されている。これらの誘導体は、式(VI)に対応している:
【0038】
【化7】

【0039】
(式中:
置換基R1、R3、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R4は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3、及びR5は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【0040】
1つの置換基がリン酸基-OPO32-又は-OPO(OH)O-である本発明の式(I)から(VI)の化合物は、いずれかの一価又は二価の陽イオンZにより任意に中和される。
【0041】
本発明の目的のための適当な陽イオンの例は、陽イオンLi+、Na+、K+、(CH3CH2)3NH+、(C6H11)-NH3+、Ca2+及びCe2+である。
【0042】
本発明の好ましい化合物ファミリーは、R1が、基-OP032-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-から選択される式(I)から(VI)の化合物からなる。
【0043】
別の本発明の好ましい化合物ファミリーは、R4が、基-OPO32-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-から選択される式(I)から(V)の化合物からなる。
【0044】
式(I)から(VI)の化合物の中で、以下が特に最も好ましい:
1)下記の式(I)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R2、R3、R4、R5、R6が、-OH、-(OCONH)q-L-G、又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、置換基R2からR6の4種はOH基である;
2)下記の式(II)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R2、R3、R4、R5、R6が、-OH、-(OCONH)q-L-G、又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、置換基R2からR6の4種はOH基である;
3)下記の式(III)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R3が、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択される;
4)下記の式(IV)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R5が、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択される;
5)下記の式(V)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R2が、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択される;
6)下記の式(VI)の化合物:
−R1が、基-OPO3Z2、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)OZであり;
−R4が、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択される。
【0045】
先の各定義において、L、M及びqは、式(I)の化合物について先に定義されたものであり、及びZは、Li+、Na+、K+、(CH3CH2)3NH+、(C6H11)-NH3+から選択された陽イオンである。
【0046】
反応基Gを含むIP1アナログは、反応基Gと反応することが可能である官能基を天然に含むか又はこれが導入されている、多くの有機分子又は無機分子と結合することができ、その結果任意に結合基Lを介し、物質又は分子MのIP1への共有結合が可能である。
【0047】
1. 反応基G:
「反応基G」という表現は、別の物質又は分子に存在する官能基と反応し、共有結合を形成することが可能である基を意味すると理解される。この場合に、反応基Gは、IP1と複合することが望ましい分子又は物質に存在する官能基と反応するであろう。
【0048】
典型的には、反応基は、適当な求核基又は求電子基と接触させられた場合に、各々、共有結合を形成することができる求電子基又は求核基である。IP1アナログと複合した物質又は分子Mの間の複合反応は、反応基の1つ又は複数の原子を含む共有結合の形成を引き起こす。例として、求電子基/求核基の対及びそれらが接触した時に形成される共有結合の種類を、以下に列記する:
【0049】
【表1】

【0050】
*:「活性化エステル」という表現は、式COYの基を意味すると理解され、ここで、Yは以下のものである:
・スクシンイミジルオキシ(-C4H4NO2)基、スルホスクシンイミジルオキシ(-C4H3O2-SO3H)基から選択された、脱離基;
・非置換の、又はニトロ、フルオロ、クロロ、シアノ及びトリフルオロメチル基などの少なくとも1つの電子求引置換基で置換されたアリールオキシ基であり、従って活性化されたアリールエステルを形成するもの;
・カルボジイミド基で活性化されたカルボン酸であり、従って混合された酸無水物-OCORa又は-OCNRaNHRbを形成するもの(式中、Ra及びRbは、同一であるか又は異なり、並びにC1-C6アルキル、C1-C6ペルフルオロアルキル、C1-C6アルコキシ及びシクロヘキシル基から選択される。);
・3-ジメチルアミノプロピル、N-モルホリノエチル。
【0051】
非限定的な例として、複合した物質又は分子Mは、それと反応基Gが反応する、下記の官能基の少なくとも1種を含む:アミン、アミド、チオール、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、第2級アミン、ハロゲン化物、エポキシド、カルボン酸エステル、カルボン酸、二重結合、又はこれらの官能基の組合せ。
【0052】
反応基Gと反応する分子Mにより保持される官能基は、例えばアミン、チオール、アルコール、アルデヒド又はケトン基であろう。好ましくは、反応基Gは、アミン又はチオール官能基と反応するであろう。
【0053】
これらの官能基を導入する方法は、特に、C. Kessler、「Nonisotopic probing, Blotting and Sequencing」第2版、L.J. Kricka編集(1995)、Academic press Ltd., ロンドン、p.66-72に記されている。
【0054】
好ましくは、反応基Gは、下記化合物の1つに由来した基である:アクリルアミド、活性化アミン(例えばカダベリン又はエチレンジアミン)、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、酸無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、例えばモノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、又はチオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド、グリオキサール、及び特に以下の式の基:
【0055】
【化8】

【0056】
(式中、nは0〜8で変動し、pは0又は1に等しく、且つArは、任意にハロゲン原子により置換された、1〜3つのヘテロ原子を含む、5又は6員のヘテロ環である。)。
【0057】
好ましくは、反応基Gは、カルボン酸、カルボン酸スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアネート、マレイミド基、脂肪族アミンである。
【0058】
2. 結合基L:
反応基G又は複合した物質もしくは分子MをIP1へ結合している結合基Lは、単結合、又は炭素、窒素、リン、酸素及びイオウの原子から選択された、水素とは異なる1〜20個の原子を含む、スペーサーアームであってよく、この結合基は、線状又は分枝した、環式又はヘテロ環式の、飽和又は不飽和であり、且つ一重、二重、三重又は芳香族性であることができる炭素-炭素結合;炭素-窒素結合;窒素-窒素結合;炭素-酸素結合;炭素-イオウ結合;リン-酸素結合;リン-窒素結合;エーテル結合;エステル結合;チオエーテル結合;アミン結合;アミド結合;カルボキシアミド結合;スルホンアミド結合;尿素結合;ウレタン結合;ヒドラジン結合;カルバモイル結合から選択される結合の組合せからなる。
【0059】
好ましくは、結合基Lは、C、N、0、P及びSから選択される、水素とは異なる1〜20個の原子を含み、並びにエーテル、チオエーテル、カルボキシアミド、スルホンアミド、ヒドラジン、アミン及びエステル結合、及び芳香族又はヘテロ芳香族結合の組合せを含むことができる。
【0060】
好ましくは、Lは、炭素-炭素単結合及びカルボキシアミド又はチオエーテル結合の組合せからなる。
【0061】
例として、Lは、ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル、又はアリールチオの鎖から選択され得る。
【0062】
有利な局面において、結合基Lは、任意に1つもしくは複数の二重結合もしくは三重結合を含み、並びに/又は任意に1つもしくは複数の酸素、窒素、イオウ、リンなどのヘテロ原子、又は1つもしくは複数のカルバモイルもしくはカルボキシアミド基を含む、線状又は分枝したC1-C20アルキレン基から選択された二価の有機ラジカル;C5-C8シクロアルキレン基及びC6-C14アリーレン基からなり、該アルキレン、シクロアルキレン又はアリーレン基は、任意にアルキル、アリール又はスルホネート基で置換されている。
【0063】
特に、結合基Lは、以下の群から選択される:
【0064】
【化9】

【0065】
(式中、
−n及びmは、2〜16、好ましくは2〜8の整数であり;
−p及びrは、1〜16、好ましくは1〜5の整数である。)。
【0066】
結合基Lの1)〜5)、7)及び10)〜12)は、結合基をIP1アナログである分子へつなぐことを可能にする官能基が、カルバモイル又はエーテル基であり、並びに物質又は分子M上の官能基が、アミド基である場合に、特に適している。
【0067】
結合基Lの6)及び9)は、結合基をIP1アナログである分子へつなぐことを可能にする官能基が、カルバモイル又はエーテル基であり、並びに物質又は分子M上の官能基が、アミド又はチオエーテル基である場合に、特に適している。
【0068】
3. 合成法:
本発明のアナログを合成する方法は、本明細書に添付された図面1から9に示されており、以下に説明される。
【0069】
2又は3位に反応基Gを含むmyo-イノシトールアナログ(化合物1)の合成法(図1)
本発明は、下記工程を含む、myo-イノシトール(化合物1)の合成する方法にも関する:
(i)cis位のジオール官能基の保護基による保護:
隣接し且つcis立体配置であるジオール官能基は、D-カンファージメチルアセタールのような、光学活性ケトンのアセタール誘導体により保護され得る。
【0070】
イノシトールはcis位に2つのジオールを持つので、イノシトールの保護基との反応は、当業者に公知の通常の技術により分離され得る2種のジアステレオ異性体の形成をもたらすであろう。
【0071】
(ii)リン酸化:
そのcisジオール官能基が保護されているmyo-イノシトール(化合物2)はその後、当業者に公知の通常の条件下でリン酸化される。好ましくは、ジベンジルホスホクロリデートが、この目的のために、下記実施例において説明された条件下で使用されることが好ましい。
【0072】
(iii)ヒドロキシル官能基の保護:
イノシトールのヒドロキシル官能基及びリン酸基のヒドロキシル官能基は、合成有機化学の分野で一般に使用される通常の保護基により保護され得る。この作用に関して、Greenの著書[Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, N.Y. (1981)]を参照することができる。
【0073】
ピバロイル、ベンゾイル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンジルオキシカルボニルなどの、エステル残基、トリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシなどのシリルエーテル残基、ベンジルオキシ、p-メトキシベンジルオキシ、3,4-ジメトキシベンジルオキシ、アリルオキシ、アリルオキシカルボキシである。
【0074】
好ましくは、保護基は、フェニルメチルオキシカルボニル(=ベンジルオキシカルボニル)基である。
【0075】
(iv)2-3位でのヒドロキシル官能基の選択的脱保護
工程1で保護された2-3位のヒドロキシル官能基は、当業者に公知の通常の脱保護試薬を用い、脱保護される。例として、使用される保護試薬がD-カンファージメチルアセタールである場合、先の工程で得られた化合物は、TFA/H2O(トリフルオロ酢酸)混合液と反応することができる。
【0076】
この工程は、以下の式の中間体を得ることが可能である:
【0077】
【化10】

【0078】
(式中、
R1は、基-OPO(OR7)2であり;
R7、R8、R9、R10は、同一であるか又は異なり、先に定義されたヒドロキシル官能基を保護するための保護基を表す。)。
【0079】
好ましくは、R8、R9、R10は、同一であって、ベンジルオキシカルボニル基を表し、且つR7は、ベンジル(Bn)基であるか、あるいは2つの基R7は、一緒にキシリレン基を形成する。
【0080】
これらの中間体は有利なことに、本発明のIP1アナログを生成するために、使用することができる。
【0081】
(v)環状カルボキシラートの形成
先行する工程で得られた化合物上に基L-Gをグラフトすることができるように、環状カルボキシラート官能基が、イノシトールの2-3位で炭素上に導入される。例として、この官能基は、下記実施例に説明された条件下での、先行する工程で得られた化合物の、ホスゲンとの反応により生成することができる。
【0082】
得られた化合物は、以下の式を有する:
【0083】
【化11】

【0084】
(式中、
R1は、基-OPO(OR7)2であり;
R7、R8、R9、R10は、同一であるか又は異なり、先に定義されたヒドロキシル官能基を保護する基を表す。)。
【0085】
好ましくは、R8、R9、R10は、同一であって、ベンジルオキシカルボニル基を表し、且つR7は、ベンジル(Bn)基であるか、あるいは2つの基R7は、一緒にキシリレン基を形成する。
【0086】
(vi)工程(iii)で保護されたヒドロキシル官能基の脱保護
この工程は、当業者に周知の通常の方法に従い実施され、下記実施例において例証されている。
【0087】
(vii)環状カルボキシラートの開環及びL-G基の導入
この工程は、当業者に周知の通常の方法に従い実施され、下記実施例において例証されている。
【0088】
従ってこの方法の主要工程は、以下の通りである:
(i)cis位のジオール官能基を保護基で保護する工程;
(ii)リン酸化する工程;
(iii)ヒドロキシル官能基を保護する工程;
(iv)2-3位のヒドロキシル官能基を脱保護する工程;
(v)環状カルボキシラートを形成する工程;
(vi)工程(iii)で保護されたヒドロキシル官能基を脱保護する工程;
(vii)環状カルボキシラートを開環し、先に定義したような基L-Gを導入する工程。
【0089】
この一般的な方法は、下記実施例1〜10に例証されている。
【0090】
4及び5位に反応基Gを含むmyo-イノシトール-1-Pアナログの合成法(図2):
この方法は、下記の一般式の合成中間体の使用を基にしている:
【0091】
【化12】

【0092】
(式中、
R1は、基-OPO(OR7)2であり;
R7、R8、R9、R10は、同一であるか又は異なり、先に定義されたヒドロキシル官能基を保護する基を表す。)。
【0093】
好ましくは、R8、R9、R10は、同一であって、ベンジルオキシカルボニル基を表し、且つR7は、ベンジル(Bn)基であるか、あるいは2つの基R7は、一緒にキシリレン基を形成する。
【0094】
文献(Gigg, Jら、Chem. Soc. Perkin trans I, 1987, 423)に説明された方法により調製された誘導体(化合物14)は、ピリジン中においてホスゲンにより処理され、対応する環状カーボネート(化合物15)を形成する。この環状1,3,4-トリ-O-ベンジル-myo-イノシトール-4,5-0-カーボネートのリン酸化は、オキシ塩化リンによるか、ジベンジルホスホロクロリダイトによるか、又はジ-O-ベンジル-N,N-ジイソプロピル-ホスホロアミダイトによる処理(この場合、直ぐに得られる亜リン酸塩は、過酸化物、ヨウ素又過ヨウ素酸ナトリウムの助けにより、リン酸へ酸化される)により実施することができる。使用されるリン酸化法とは関わりなく、こうして得られたmyo-イノシトール-1-リン酸の保護された誘導体(化合物16)に、触媒的水素化(炭素に担持されたパラジウム)が施され、この合成経路の重要な中間体を示している、4,5位に環状カーボネートを有するmyo-イノシトール-1-リン酸誘導体(化合物17)が得られる。4-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸が、ジアミンのモノベンジルオキシカルボニル誘導体の助けによる環状カーボネートの開環、それに続く触媒的水素化により得られ;4-位(化合物18)又は5-位(化合物19)のいずれかにアミノペンチルカルバモイルアームを持つ2種の位置異性体の混合物が得られ、これらの2種の異性体はその後、酢酸トリエチルアンモニウム水溶液中でのアセトニトリル勾配を使用する逆相HPLCにより、分離される。
【0095】
4-位に反応基Gを含むmyo-イノシトール-1-Pアナログの合成法(図3):
文献(Watanabeら、Tetr.Lett. 1993, 34, 497)に説明された方法により調製された2,3:5,6-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール誘導体(化合物20)は、Watanabeにより説明されたリン酸化プロトコール(前記参照)に従い、ジクロロメタン中の過臭化ピリジニウム及びトリエチルアミンの存在下で、リン酸トリベンジルで処理され、主に1-(ジベンジルリン酸)誘導体(化合物21)を得;所望の化合物は、シリカ上のクロマトグラフィーにより、C-4位がリン酸化された少量の異性体などの副産物から分離される。その後リン酸化された誘導体は、ジメチルホルムアミド中のカルボニルジイミダゾールで処理され、中間体イミダゾリル誘導体は単離されず、依然DMF溶液中の生成物は、過剰な(5当量)ジアミンのモノベンジルオキシカルボニル誘導体で処理される。保護された形で得られる4-位にアミノペンチルカルバモイル鎖を持つイノシトール-1-リン酸アナログ(化合物23)(R2=ベンジルオキシカルボニル)は、引き続きシクロヘキシリデン保護基が加水分解されるように、酸媒体において処理され、その後触媒的水素化が施され、「脱保護された」形(R2=H)の所望の4位にアミノペンチルカルバモイル鎖を持つイノシトール-1-リン酸アナログ(化合物24)を得る。
【0096】
6-位に反応基Gを含むchiro-イノシトール-1-Pアナログの合成法(図4):
文献(Jaramillo, C.ら、J. Org. Chem. 1994, 59, 3135)に説明された方法に従い調製された1-O-アリル-2,3,4-トリ-O-ベンジル-5-O-(p-メトキシベンジル)-D-chiro-イノシトール誘導体(この生成物はmyo-イノシトール-1-リン酸との構造相関を示すために、2-O-アリル-3,4,5-トリ-O-ベンジル-6-O-(4-メトキシベンジル)-D-chiro-イノシトール(化合物25)とも称される;この番号付けは、図4及び以下の説明において使用される)は、クロロクロム酸ピリジニウムにより酸化され、対応するケトンを生成し、これはシリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製される。このケトンは、キラル水素化物により立体選択的に還元される。還元生成物は、所望のmyo-イノシトール誘導体をchiro立体配置を有する副産物から分離するために、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製される。こうして得られた2-0-アリル-3,4,5-トリ-O-ベンジル-6-0-(4-メトキシベンジル)-D-myo-イノシトール誘導体(化合物26)は、テトラゾールの存在下でジ-O-ベンジル-N,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトによりリン酸化され;過ヨウ素酸ナトリウムによる酸化後、生成物は、抽出され、シリカゲル上で精製される。こうして得られた2-0-アリル-3,4,5-トリ-O-ベンジル-1-O-(ジベンジルホスホノ)-6-O-(p-メトキシベンジル)-D-myo-イノシトール(27)は、ジクロロメタン中の2%トリフルオロ酢酸により処理され、2-0-アリル-3,4,5-トリ-O-ベンジル-1-O-(ジベンジルホスホノ)-D-myo-イノシトール(化合物28)を得る。この化合物は次に、ジメチルホルムアミド中のカルボニルジイミダゾールにより処理され、中間体イミダゾール誘導体は、単離されず、DMF溶液中の生成物は、過剰な(5当量)ジアミンのモノベンジルオキシカルボニル誘導体で処理される。こうして保護された形((化合物29)、R2=ベンジルオキシカルボニル)で得られた6-位にアミノペンチルカルバモイル鎖を持つイノシトール-1-リン酸アナログは、シリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製され、その後触媒的水素化が施され、「脱保護された」形の所望の6位にアミノペンチルカルバモイル鎖を持つイノシトール-1-リン酸アナログ((化合物 30), R2=H)を得る。
【0097】
4又は5-位に反応基Gを含むmyo-イノシトール-1-Pアナログの合成法(図6):
4又は5-位に反応基Gを含むD-myo-イノシトール-1-リン酸[IP1(1)]アナログ(各々化合物18及び19)は、合成スキーム(図2)及び図2に関連した前記本文に説明されており、この合成経路は、市販のmyo-イノシトールから文献において説明された方法(Gigg, Jら、J. Chem. Soc. Perkintrans I, 1987, 423)に従い調製された化合物14で出発する。光学的分割工程を導入することにより、鏡像異性的に純粋な形で誘導体18及び19(18D及び19D)を得るために、鏡像異性的に純粋な形で誘導体14を調製することは可能である。酵素的分割を使用し、これらと同じ化合物18D及び19Dを鏡像異性的に純粋な形でより容易に得ることを可能にする代替合成が提唱されている。この合成スキームは、図6に示されており、2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール(化合物34)から出発し、異性体の1種は、Gareggらのプロトコール(Carbohydr. Chem. 130, 1984, 322-326)に従い、市販のmyo-イノシトールの2つのシクロヘキシ基による保護の間に得られた。
【0098】
図6において、D立体配置を有する鏡像異性体は、ラセミ化合物を意味するように任意に使用されており、これらの鏡像異性体のただ1つ(例えばD立体配置を有するもの)が指定される場合には、化合物番号は、文字Dに従う。
【0099】
従って、例えば、2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール(ラセミ化合物)(化合物34)及び対応する鏡像異性体L及びD(化合物34L及び34D)は、以下のように記される:
【0100】
【化13】

【0101】
ラセミ化合物の形の2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール誘導体34は、Gouらにより説明されたように(Carbohydr. Res. 234, 1992, 51-64)、酸化ジブチルスズで処理され、その後塩化n-ブチリルで処理される。Gouらの論文に説明されたものとは対称的に、NMRデータ(H1プロトンは、化合物36については4.98ppmで、化合物の37については3.89で共鳴し、並びにH6プロトンは、化合物36については4.09ppmで、化合物37については5.21ppmで共鳴する)は、Gouらの論文(Carbohydr. Res. 234, 1992, 51-64)に説明されたように、優勢な異性体は、1-位にブチリル基を持つ誘導体(化合物36)であり、6-位にブチリル基を持つ誘導体 (化合物37)ではないことを示している。
【0102】
モノブチリルエステル36(ラセミ化合物)は、Gouらの刊行物(Carbohydr.Res. 234, 1992, 51-64)に説明された方法に従う酵素的分割工程が施され、これは膵リパーゼが、L異性体を選択的に加水分解し、2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-L-myo-イノシトール(34L)を得、36D異性体(1-ブチリル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-D-myo-イノシトール)は変化せず、このことは鏡像異性的に純粋な形で36D生成物を得ることを可能にする。36D生成物は、ケン化され、34Dジオールを得、これは酸化ジブチルスズで、次に臭化ベンジルにより処理され、モノベンジル化された37D誘導体を得;これは次に、o-キシリレンN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイト(Watanabeら、 Tetrahedron Letters, 1990, 31, 255-256、及び以下の文書:WO 9100258 A1及びTetrahedron Letters, 1995, 36, 8023-8026に従い、o-キシリレンN,N-ジエチルホスホロアミダイト(1,5-ジヒドロ-N,N-ビス(1-メチルエチル)-2,4,3-ベンゾジオキサホスフェピン-3-アミンとも称される)に類似の方法で調製される)により処理され、不安定な中間体リン酸を得、これはその場(in situ)でtert-ブチルヒドロペルオキシドにより酸化され、結果的に6-O-ベンジル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-5-O-(o-キシリデンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール38Dを得る。化合物38Dの4及び5位のヒドロキシルをブロックするシクロヘキシリデン保護基は、酸媒体中での処理(エチレングリコールの存在下でのアセタール交換反応)により選択的に除去され、ジオール39Dを得、これは次に1,1'-カルボニルジイミダゾールで処理され、環状カーボネート40Dを得る。実施例7に説明された方法に類似した方法で、40Dの環状カーボネートが、ペンチルアミンのモノ保護された誘導体(保護基Z=ベンジルオキシカルボニル)により開環され、2種の位置異性体41D(4-位にアームを持つ異性体)及び42D(5-位にアームを持つ異性体)を得る。次にこれらの異性体41D及び42Dの各々は、脱保護され、各々、化合物18Dのイノシトール環の4-位に反応基を持つD-myo-イノシトール-1-リン酸のアナログ、及び化合物19Dのイノシトール環の5-位に反応基を持つD-myo-イノシトール-1-リン酸のアナログを得る。実施例19は、化合物18D及び19Dの合成を説明しており、これは、実施例8の化合物10及び11に類似した方法で使用することができる(図1に説明された合成経路において、光学分割は第一工程と早期に起こることから、化合物2から出発する全ての誘導体は、D型であり、光学活性があるので、化合物10及び11は、鏡像異性的に純粋であることに留意)。化合物10に関して実施例9に説明された方法に類似したように、化合物18D及び19Dは、myo-イノシトール-1-リン酸骨格の4-位及び5-位に各々保持される反応基により、ビオチンと複合することができ;その結果化合物18D及び19Dは、各々ビオチン化された複合体43D及び44Dへ転換される。
【0103】
5又は6位に反応基Gを含むmyo-イノシトール-4-リン酸アナログの合成法(図7参照):
D-myo-イノシトール-1-リン酸以外の及びイノシトールリン酸サイクルの活性化時に蓄積が可能であるイノシトールモノリン酸型の1つは、D-myo-イノシトール-4-リン酸であり(D-myo-イノシトール-4-リン酸の形成に関するRaganらの論文(Biochem J. (1988) 249(1)143-148)、並びに細胞に存在する様々なmyo-イノシトール誘導体の命名法概要に関するBillingtonらの論文(J. Chem. Soc. Perkin Trans. 1, (1989) 8,1423-1429)参照)、従って1、2、5又は6位に反応性アームを持つD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログを有することは利点である。図7は、6位に反応性アームを持つD-myo-イノシトール-4-リン酸の合成経路を示す。Vaccaらのプロトコールにより調製されたラセミ化合物型の1,2:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール20(これは、D-myo-イノシトール-4-リン酸とのその構造相関を示すために、2,3:5,6-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトールとも称される、図3参照)は、Vaccaらにより説明されたようにモノベンジル化された誘導体45を得るために、臭化ベンジルで処理される[Vacca, J.P. Tetrahedron,1989, 45(17), 5679-5702]。誘導体45(ラセミ化合物)は、S(-)ショウノウ酸クロリドにより処理され、2種のジアステレオマー(ショウノウ酸塩)46D及び46Lの混合物を得、並びに化合物46D(最も極性がある)は、結晶化及び再結晶により単離される[Vacca, J.P. Tetrahedron, 1989, 45(17), 5679-5702]。化合物46Dは、エタノール中の水酸化カリウムでケン化され、4-ヒドロキシル誘導体45Dを得、これは37Dに関して説明されたプロトコール(図6及び実施例19参照)に従い、o-キシリレンN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトによりリン酸化され、中間体リン酸を得、これは、tert-ブチルヒドロペルオキシドによりその場で酸化され、1-0-ベンジル-2,3:5,6-ジ-O-シクロヘキシリデン-4-O-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール46Dを得る。化合物46Dは、酸媒体での処理により、ヒドロキシル4及び5をブロックしているシクロヘキシリデン保護基を選択的に除去するために、誘導体38Dと同じプロトコール(図6及び実施例19参照)に従い処理され、ジオール47Dを得る。
【0104】
化合物47Dは次に、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)により、その後ペンチルアミンのモノ保護された誘導体(保護基Z=ベンジルオキシカルボニル)により連続して処理され、2種の位置異性体を得る:48D(6-位にアームを持つ異性体)及び49D(5-位にアームを持つ異性体)。化合物48D及び49Dは、クロマトグラフィーにより分離され、化合物48D及び49Dは独立して、化合物41D及び42Dについて説明されたような(図6及び実施例19参照)触媒的水素化により脱保護され、各々、化合物50Dのイノシトール環の6-位に反応基を持つD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログ、及び化合物51Dのイノシトール環の5-位に反応基を持つD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログを得る(6-位にアームを有する化合物48D及び50Dのみが図7に記されている)。
【0105】
1-位に反応基Gを含むmyo-イノシトール-4-リン酸アナログの合成法(図8参照):
Vaccaらのプロトコール[Vacca, J.P. Tetrahedron,1989, 45(17), 5679-5702]により調製されたラセミ化合物型の1,2:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール20(これは、D-myo-イノシトール-4リン酸との構造相関を示すために、2,3:5,6-di-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトールとも称される、図3参照)は、モノPMB誘導体(保護基PMB=p-メトキシベンジル=4-メトキシベンジル時にはMPM=p-メトキシフェニルメチルと称される)52を得るために、Wangらにより説明されたプロトコール[J. Org. Chem., 1996, 61, 5905-5910]に従い、4-メトキシ臭化ベンジルで処理される。この誘導体52(ラセミ化合物)は、S(-)ショウノウ酸クロリドにより処理され、2種のジアステレオマー(ショウノウ酸塩)53D及び53Lの混合物を得、並びに化合物53Dは、化合物46Dについて説明された方法に類似した様式の手法が実施され、単離される(図7及び対応する本文参照)。同様の様式で、鏡像異性的に純粋な化合物53Dがケン化され、化合物52Dを得る。化合物52Dは、37Dに関して説明されたプロトコール(図6及び実施例19参照)に従い、o-キシリレンN,N-ジイソプロピルホスホロアミダイトによりリン酸化され、中間体リン酸を得、これは、tert-ブチルヒドロペルオキシドによりその場で酸化され、誘導体2,3:5,6-ジ-O-シクロヘキシリデン-4-O-(o-キシリデンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール54Dを得、これは、Wrightらのプロトコール[Tetrahedron Lett. 2001, 42, 4033]に従い、アセトン-水混合液中のCAN(硝酸アンモニウムセリウム)により処理され、保護基PMBを除去し、その結果イノシトール環の1位に遊離のヒドロキシルを有する化合物55Dを得る。次に化合物55Dは、1,1'-カルボニルジイミダゾール(CDI)により処理され、イミダゾリド中間体56Dを得、これは次にペンチルアミンのモノ保護された誘導体(保護基Z=ベンジルオキシカルボニル)で処理され、イノシトール環の1-位にアームを持つカルマメート(carmamate)57Dを得る。化合物57Dは次に、化合物41D及び42Dに類似した触媒的還元により脱保護され、化合物58Dのイノシトール環の1-位に反応基を持つD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログを得る。
【0106】
2又は3位に反応基Gを含むD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログの合成法(図9参照):
1-0-ベンジル-2,3-O-シクロヘキシリデン-4-O-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトールである化合物47D(図7及び対応する本文参照)を、5及び6位のヒドロキシルを保護するために、臭化ベンジルで処理し、化合物59Dを得、これは次に、酸媒体で処理し、2,3-シクロヘキシリデン基を除去し、化合物60Dを得た。前記化合物は、ホスゲン(実施例5のように)によるか、又は1,1'-カルボニルジイミダゾール(実施例19のように)により処理し、環状カーボネート61Dを得、次にこれを、ペンチルアミンのモノ保護された誘導体(保護基Z=ベンジルオキシカルボニル)で処理し、2種の位置異性体:62D(2-位にアームを持つ異性体)及び63D(3-位にアームを持つ異性体)を得た。化合物62D及び63Dは、クロマトグラフィーにより分離し、化合物62D及び63Dは独立して、化合物41D及び42Dについて説明されたような触媒的水素化により脱保護され(図6及び実施例19参照)、各々、化合物64Dのイノシトール環の2-位に反応基を持つD-myo-イノシトール4-リン酸アナログ、及び化合物65Dのイノシトール環の3-位に反応基を持つD-myo-イノシトール4-リン酸アナログを得る。
【0107】
4及び5位に反応基Gを含むD-myo-イノシトール-4-リン酸アナログの合成法(図10参照):
4及び5位に反応基Gを含むD-myo-イノシトール-1-リン酸[IP1(1)]アナログ(68D)は、図10に表された合成スキームで説明される。これらの二置換されたアナログD-myo-イノシトール-1-リン酸合成の一般的原則は、先に説明された一置換されたアナログの合成経路を基にしており、これはその保護された形(ベンジルエステル又はo-キシリルエステル)でリン酸を有し、並びに3つの保護されたヒドロキシル及び2つの遊離ヒドロキシルを有する中間体を使用する。説明された合成経路(図10)は、実施例19に説明された方法により調製された、化合物41D又は化合物42Dで、又はこれら2種の化合物の混合物で始まる。化合物41Dの5-位のヒドロキシル又は化合物42Dの4位のヒドロキシルのいずれかは、カルボニルジイミダゾール(CDI)による処理により活性化され、各々、対応するイミダゾリル誘導体66D及び67Dを形成する。その後各化合物は、ペンチルアミンのモノ保護された誘導体(保護基Z=ベンジルオキシカルボニル)(実施例7)により処理され、4及び5位に2つのアームを有する同じ化合物68Dを得る。化合物68Dは、クロマトグラフィーにより分離され、その後化合物41D又は42Dについて説明されたような(図9及び実施例19参照)触媒的水素化により脱保護され、イノシトール環の4及び5位に2つの反応基を持つD-myoイノシトール-l-リン酸のアナログである4,5-ジ-O-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸69Dを得る。このアナログは次に、実施例9に説明されたビオチン又は実施例10に説明された蛍光マーカーなどのマーカーと複合されてもよい。
【0108】
4. 複合体:Mの性質
イノシトールの2〜6位の1つに反応基Gを含むIP1誘導体は、物質又は分子Mと結合され得る。
【0109】
トレーサー
この物質又は分子Mは、トレーサーであってよく、この場合、得られたIP1誘導体は、関心のある生物学的試料に存在するIP3を検出するために使用することができる。
【0110】
生物学的又は生化学的現象の研究に通常使用されるトレーサーは、蛍光トレーサー、放射性トレーサー、あるいはパートナー分子にそれら自身親和性を有するか又はパートナー分子により認識される分子である。着色物質又は化学発光シグナルの出現を促進する、各々、ペルオキシダーゼ又はルシフェラーゼのようなある種の酵素も、使用することができる。
【0111】
従って物質又は分子Mは、放射性元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収性発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にする任意の他の分子もしくは物質の群から選択され、但しMが放射性元素であり且つLが単結合である場合、Mはトリチウムではない。
【0112】
従って本発明のIP1アナログは、125I、32P、35Sなどの放射性同位体へ、又は125I、32P、35S又は3Hの同位体の1つで標識された分子へ、複合され得る。
【0113】
本発明者らは実際当業者へ、通常の放射標識技術を用い、放射性同位体へ又は標識された分子へ容易に結合することができるIP1アナログを提供する。
【0114】
例えば高度に求電子性であるヨウ素-125は、その反応基Gが例えば活性化されたアリール基などの求核基を含むような本発明のアナログと反応するであろう。特に、その反応基Gが、電子-供与置換基で置換された芳香族構造を含む本発明のアナログは、芳香核上の求電子置換反応によりIP1を標識することができる。例として、第1級又は第2級アミン又はアルコール官能基を含むフェノール、アニリン又はアルキルアニリン誘導体は、ヨウ素-125で標識することが可能である。
【0115】
本発明のアナログは、それら自身放射標識された分子へ結合されてもよい。この間接的放射標識法において、複合した物質又は分子Mは、本発明のIP1アナログの反応基Gと反応することが可能である放射性同位体及び官能基を含む。
【0116】
IP1アナログは、IP1アナログにより保持される反応基Gと反応することが可能である官能基を含む蛍光分子又は化学発光分子に結合することもできる。これらの蛍光分子は、例えば、ローダミン、シアニン、スクアライン、BODIPYの名称で公知の発蛍光団、フルオレセイン、AlexaFluorの名称で公知の化合物、希土類キレート、希土類クリプテート、量子ドット、グリーン蛍光タンパク質(GFP)又はその変種のような蛍光タンパク質、サンゴから抽出された蛍光タンパク質、フィコビリタンパク質、例えばB-フィコエリスリン、R-フィコエリスリン、C-フィコシアニン、アロフィコシアニン、特にXL665の名称で公知のものである。その中に反応基又は官能基を導入することが可能であるこれらの化合物及び方法は、文献において広範に説明されており、例えば「Bioconjugate Techniques」、Greg T. Hermanson, Academic press, 1996, p.298-364を参照のこと。
【0117】
IP1アナログは、各々、それらの基質の存在下で発光生成物又は着色生成物を生成する、ルシフェラーゼ又はペルオキシダーゼなどの酵素へ結合されてもよい。
【0118】
本発明のIP1アナログは、結合パートナーのペアの一員に結合されてもよい。このような結合パートナーは、アビジン又はストレプトアビジン/ビオチン、ハプテン/抗体、例えば6HIS/抗-6HIS抗体、FLAG/抗-FLAG抗体、DNP/抗-DNP抗体、GST/抗-GST抗体、Cmyc/抗Cmyc抗体、HA/抗-HA抗体、1本鎖オリゴヌクレオチド/相補的1本鎖オリゴヌクレオチドの対であることができる。この場合、こうして標識されたIP1は、例えば放射性又は蛍光性であるトレーサーによるそれ自身標識された結合パートナーのペアのセカンドメッセンジャーの添加により、間接的に検出されてもよい。
【0119】
ビオチン基による本発明のアナログを標識することを可能にする試薬は、例えば「Bioconjugate Techniques」、Greg T. Hermanson, Academic press, 1996, p. 373-398に説明されている。
【0120】
固相支持体
本発明のIP1アナログは、特に不均質相におけるIP1の検出法を実施するために有用である固相支持体へIP1が結合することを可能にする。
【0121】
この場合、基Mは、磁性又は非磁性マイクロビーズ、マイクロプレートウェル、チューブ、蛍光マイクロビーズ、又は検出システムに必要な他の固相システムであってよい。
【0122】
免疫原
本発明のIP1アナログは、IP1に特異的な抗体を作出するために使用することができる免疫原性複合体を調製することも可能にする。それに関して、本発明のアナログは、高度に免疫原性の担体分子へ結合される。これらの分子は、以下から選択される:ウシ血清アルブミン(BSA)又は陽イオン性BSA(cBSA)、KLH(キーホールリムペットヘモシアニン)、チログロブリン、オボアルブミン。これらの担体分子は、リポソーム、又は合成担体分子、例えばL-リシンもしくはL-グルタミン酸のポリマー、フィコール、デキストラン、あるいはポリエチレングリコールであってもよい。
【0123】
これらの担体分子は一般に、本発明のIP1アナログの反応基Gと反応する官能基を含むか、あるいはそのような基が、通常の技術により導入されて良い。
【0124】
IP1及びイノシトールの間の唯一の差異であるイノシトールのリン酸官能基は、担体分子との結合時に無傷であり続けるので、本発明の免疫原は、IP1に特異的な抗体を得ることを可能にすることに留意することは重要である。
【0125】
5. IP1に特異的なリガンド
本発明のIP1アナログ又はIP1免疫原は、IP1を特異的に認識するリガンドを選択又は作出するために使用することができる。これらのリガンドの作出は、本発明のIP1誘導体の提供(provision)により可能であり、従ってこれらのリガンドは、本発明の不可欠な部分を形成している。
【0126】
これらのリガンドは、特にアプタマー、ペプチド又はタンパク質、特に抗体又は抗体断片(Fab又はFab')であってよい。IP1アナログ又はIP1免疫原の使用に必要な選択システムは、特にファージ又はリボソームを用いる選択システムである(「ファージディスプレイ」又は「リボソームディスプレイ」)。これらのシステムは全て、本発明のIP1誘導体の使用を必要としている。
【0127】
本発明は特に、抗-IP1モノクローナル又はポリクローナル抗体に関する。このような抗体の作出は、本発明者らにより開発されたIP1アナログにより可能である。これらのIP1に特異的な抗体は、特にIP1を特異的に検出するための有用な手段である。細胞培地は概して多くの他のイノシトール誘導体(PIP2、PIP3、IP3、IP2、IP4、イノシトール)を含むので、抗-IP1抗体は、できる限り弱く、これらの誘導体と交差-反応しなければならない。本発明の抗-IP1抗体は、イノシトール誘導体(PIP2、PIP3、IP3、IP2、IP4、イノシトール)と5%未満である交差-反応を示す。これらのイノシトール誘導体と抗体の交差-反応が1%未満である抗-IP1抗体が、特に好ましい。
【0128】
更に本発明の抗-IP1抗体は、IP1の付着に関する選択性を示し、これはPIP2、PIP3、IP3、IP2、IP4、イノシトールのようなその他のイノシトール誘導体への付着よりも少なくとも10倍高い。その他のイノシトール誘導体に対する選択性よりも少なくとも100倍高いIP1に対する選択性を有する抗体が、好ましい。別の表現をすると、本発明の抗-IP1抗体がIP1と共にインキュベーションされる場合、それらのIP1に対する結合は、該誘導体がインキュベーション媒体へ添加されると安定であり続ける。これは、通常の生化学技術により、該誘導体の1種の存在又は非存在下でのIP1/抗-IP1抗体複合体の量を決定することにより、容易に測定することができる。特に、本発明の抗-IP1抗体のIP1に対する結合は、PIP2、PIP3、IP3、IP2、IP4、イノシトールの1つの化合物の50μMの存在下では置き換えられない。
【0129】
本発明の抗体は、IP1、すなわち1-位が1つのリン酸基で置換されたイノシトールに特異的な独自のモチーフを免疫系へ提示する特異特性を有する、前述の本発明の免疫原性複合体による哺乳動物の免疫処置の工程を含む方法により作出される。
【0130】
抗-IP1ポリクローナル抗体は、免疫原の哺乳動物への注射、並びに免疫誘起に必要な期間の経過後の、動物からの血清の収集、及び例えば親和性クロマトグラフィーによる、ポリクローナル抗体の精製により得られる。
【0131】
抗-IP1モノクローナル抗体は、当業者に公知の様々な技法を用いて作出することができる。例として、Kohler及びMilsteinの研究から得られた技法が挙げられる。これは、例えばマウスのような哺乳動物の抗原による免疫処置からなる。IP1の場合のように、抗原のサイズが小さい場合、これは免疫原性担体分子と結合されなければならない。従って当業者は、本発明のIP1-担体分子複合体を有利に使用するであろう。免疫処置の数週間後、この抗原で免疫処置されたマウスの脾臓を摘出する。この脾臓由来のリンパ球及び形質細胞の混合物が、骨髄腫細胞と、ポリエチレングリコールのような細胞融合促進物質の存在下で、in vitro融合される。ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT)を欠損している変異体骨髄腫細胞株を使用し、このハイブリッド細胞は容易に選択することができる。これらの細胞は、融合されない骨髄腫細胞の除去及び関心のあるハイブリドーマの選択のために、ヒポキサンチン、アミノプテリン(メトトレキサート)及びチミンを含有する培地(HAT培地)において培養される。非融合脾細胞はin vitro増殖することが不可能であるので、これらは死滅する。他方で、ハイブリッド細胞は生存する。こうして得られたハイブリドーマは、細胞培養プレートのウェルにおいて培養される。これらのウェルの上清を、以下に説明されるように、ELISA又はRIAなどのスクリーニング試験において、IP1に特異的な抗体の存在について試験する。その後ハイブリドーマはクローニングされ、腹水中に大量に抗-IP1抗体を分泌する骨髄腫を誘導するために、哺乳動物へ注射することができる。
【0132】
IP1を特異的に認識する抗体の存在の検出を可能にするELISA試験(酵素結合免疫吸着試験)
間接的フォーマット:抗-IP1ポリクローナル抗体を含有する血清試料(又は抗-IP1モノクローナル抗体の場合はハイブリドーマ培養上清)は、希釈後、ストレプトアビジンでコートされたマイクロタイタープレートのウェルにおいてインキュベーションし、ビオチン-IP1複合体の溶液(本発明のIP1アナログから得られる)と共に予めインキュベーションし、その後洗浄する。希釈した血清の存在下でインキュベーションした後、ウェルを洗浄し、ペルオキシダーゼ-標識した抗-種抗体(Ac-HRP複合体)の存在下でインキュベーションする。過剰な複合体Ac-HRPの洗浄後、基質を添加することにより、顕在化工程を行う。血清又は培養上清中の抗-IP1抗体の存在を示す450nmでの光学濃度値を、光度計測光により測定する。450nmで測定されたOD強度は、ウェル中に存在する抗-IP1抗体の量に比例する。
【0133】
IP1を特異的に認識する抗体の存在の検出を可能にするRIA試験(放射性免疫試験):
半間接的フォーマット:血清試料(又はハイブリドーマクローン培養上清)を、希釈後、放射性同位体(トレーサー)で標識した本発明の官能基化したIP1アナログの存在下で、抗-種抗体(例えば抗-IP1抗体がマウスの免疫処置により作出された場合は、抗-マウス抗体)でコートしたプラスチック製チューブ又はマイクロタイタープレートウェル内でインキュベーションする。インキュベーション及び洗浄後、支持体に結合した放射活性を測定し、放射性同位体で標識した官能基化IP1アナログを、血清又は培養上清中に存在する抗-IP1抗体により認識されることを示す。
【0134】
6. IP1に特異的な複合体及びリガンドの使用:
先に説明したIP1アナログ及びIP1に特異的な様々なリガンドを、生物学的試料中に存在するIP1の検出法において使用することができる。先に示したように、IP1アッセイは、イノシトールリン酸シグナル伝達経路に関連する生化学的機構を研究することを可能にする。本発明者らにより提供された手段は、例えばGPCR-型受容体、チロシンキナーゼ活性を有する受容体に対し作用を有する分子を同定するため、又はIP1の生成に寄与する酵素(ホスホリパーゼ、イノシトールホスファターゼ)に対し調節(活性化又は阻害)活性を有する化合物を研究するために、化合物ライブラリーをスクリーニングする方法において使用することができる。これらの方法は常に、被験分子(例えば化合物ライブラリーから得られる)を生物学的試料へ導入し、引き続き該生物学的試料において生成されたIP1の定性的又は定量的変動を検出する工程を含む。
【0135】
本発明に従い、試料中に含まれるIP1を検出する方法は、下記の工程を含む:
−試料を、IP1に特異的なリガンドと接触させる工程;
−該リガンドと試料中に存在するIP1の間に形成された複合体を検出する工程。
【0136】
「生物学的試料」という表現は、例えば、膜調製物、細胞浮遊液、細胞培養物、あるいはGPCR、Gタンパク質及びホスホリパーゼを含有する調製物を意味すると理解される。
【0137】
「IP1に特異的なリガンド及び試料中に存在するIP1により形成された複合体の検出」という表現は、これらの複合体の直接的検出、あるいはその濃度が試料中のリガンド/IP1複合体の濃度に相関する別の種の検出に関わる間接的検出を意味すると理解される。競合的アッセイ法は、試料中のIP1の存在を間接的に決定する良い例である。これらの方法において、IP1に特異的なリガンドへの結合に関して、試料中に存在するIP1と、滴定されたIP1又は標識されたIP1の間には競合が存在する。これらの方法において、測定媒体へ導入されたリガンド/標識されたIP1複合体の量の変動が検出される。リガンド/標識されたIP1複合体の形成は、試料中のリガンド/IP1複合体の量が増加する場合には低下するであろう。
【0138】
このIP1検出法の具体的実施において、IP1に特異的なリガンドは、トレーサーにより標識される。
【0139】
別の具体的実施において、この方法は、既知量の滴定されたIP1又はトレーサーで直接もしくは間接的に標識されたIP1の試料への添加を含む。別の表現をすると、この方法は、下記の工程を含む:
−試料を、IP1に特異的なリガンドと接触させる工程;
−試料を、既知量の滴定されたIP1又はトレーサーで直接もしくは間接的に標識されたIP1と接触させる工程。
−該リガンドと試料中に存在するIP1の間に形成された複合体を検出する工程。
【0140】
「直接的標識」という表現は、任意に前述の結合基Lなどのスペーサーアームを介した共有標識を意味すると理解される。
「間接的標識」という表現は、先に定義された結合パートナーの対を介した標識を意味すると理解される。IP1に特異的なリガンド又はIP1アナログが結合パートナーのペアの一員と結合する場合、及びトレーサーで標識されたこの対の二番目のメンバーが測定媒体に添加される場合には、これらは間接的に標識され得る。例えばアロフィコシアニン(APC)へ結合されたストレプトアビジンが媒体へ添加される場合、IP1は、ビオチンに結合され、APCで間接的に標識され、ストレプトアビジンは、ビオチンに関して非常に高い親和性を有する。
【0141】
IP1又はIP1に特異的なリガンドと複合することができるトレーサーは、放射性元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にする任意の他の分子もしくは物質から選択される。
【0142】
別の特定の態様において、IP1に特異的なリガンド及びIP1は、両方ともトレーサーにより直接的又は間接的に標識される。これは、例えばドナー蛍光化合物とアクセプター蛍光化合物の間のエネルギー転移を基にした検出法(FRET)の場合である。
【0143】
この方法の特定の実施において、IP1に特異的なリガンドは、ドナー化合物と直接又は間接的に複合され、試料は、アクセプター化合物と直接又は間接的に複合したIP1と接触され、アクセプター化合物により放出されたシグナルが測定され、このシグナルは、ドナーとアクセプター間の近接転移から生じ、試料中に存在するIP1量に反比例する。
【0144】
別の実施において、IP1に特異的なリガンドは、アクセプター化合物と直接又は間接的に複合され、試料は、ドナー化合物により直接又は間接的に複合したIP1と接触され、アクセプター化合物により放出されたシグナルが測定され、このシグナルは、ドナーとアクセプター間の近接転移から生じ、試料中に存在するIP1量に反比例する。
【0145】
ドナー化合物及びアクセプター化合物は、蛍光化合物であり、近接転移は、エネルギー転移であり、放出されたシグナルは、蛍光シグナルであることが、好ましい。
【0146】
蛍光ドナー化合物は、希土類クリプテート又はキレートであり、蛍光アクセプター化合物は、シアニン、ローダミン、スクアライン、BODIPY、フルオレセイン、AlexaFluors、量子ドット、フィコビリタンパク質、例えばB-フィコエリスリン、R-フィコエリスリン、C-フィコシアニン、アロフィコシアニン、GFP及びその誘導体、サンゴ蛍光タンパク質から選択される。
【0147】
本発明のIP1検出法で使用されるIP1に特異的なリガンドは、先に説明されたIP1誘導体を用いて得られ:これらのIP1に特異的なリガンドは、哺乳動物の本発明のIP1誘導体による免疫処置により作出されたポリクローナル又はモノクローナル抗体、あるいはIP1を特異的に認識し、前述の「ファージディスプレイ」又は「リボソームディスプレイ」技法により選択される、タンパク質、アプタマー、もしくはペプチドであることができる。好ましくは使用されるIP1に特異的なリガンドは、そのIP1に関する選択性が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2、PIP3の各化合物に関する選択性よりも、少なくとも10倍高い、好ましくは100倍高いモノクローナル又はポリクローナル抗体である。
【0148】
本発明のIP1検出法の特定の態様において、IP1に特異的なリガンド又は標識されたIP1は、固相支持体へ直接的又は間接的に結合される。これは、例えば、SPA(シンチレーション近接アッセイ)技法が使用される場合であり:IP1に特異的なリガンドは、SPAビーズに共有結合されるであろう。これは、実施例17に説明されたELISAアッセイの場合でもある。
【0149】
IP1アナログが、固相支持体へ結合される場合、これは先に説明されたように共有結合する。IP1アナログは、固相支持体へ間接的に結合されてもよく:これは、例えばIP1アナログがIP1-ビオチンであり、固相支持体がストレプトアビジンでコートされている場合である。このIP1アッセイ法の特定の実施において、IP1に特異的なリガンドは、IP1アナログ/IP1に特異的なリガンドの複合体の検出を可能にするトレーサー(放射活性、蛍光又は酵素的トレーサーなど)により標識される。IP1に特異的なリガンドが抗-IP1抗体である場合、これは、試料への、トレーサーで標識された抗-種抗体の添加によっても検出することができる。
【0150】
従って本発明のIP1検出法の特定の実施は、試料を、固相支持体に付着したIP1に特異的な抗体及びIP1アナログに接触させること、並びに下記の工程を追加的に実施することからなる:
−固相支持体を洗浄する工程;
−抗-IP1抗体を認識する抗-種抗体を添加する工程であって、該抗-種抗体が、トレーサーにより標識される工程;
−抗-種抗体を検出する工程であり、抗-種抗体の量は、試料中に存在する抗-IP1抗体/IP1複合体の量に反比例する。
【0151】
IP1に特異的なリガンドは、固相支持体へ共有結合するか、或いは抗-種抗体、例えばIP1に特異的なリガンドがラットの免疫処置により得られた抗-IP1抗体である場合には抗-ラット抗体により固相支持体がコートされている場合には間接的に結合することもできる。この特定の実施において、IP1アナログは、IP1アナログ/IP1に特異的なリガンドの複合体の検出を可能にするトレーサー(放射活性、蛍光又は酵素的トレーサーなど)により標識されるであろう。
【0152】
従ってこの方法の変形は、試料を、固相支持体に付着したIP1に特異的な抗体及びトレーサーで標識されたIP1アナログと接触させることにあり、その後下記の工程を実施する:
−試料を、固相支持体に付着した抗-IP1抗体及びトレーサーで標識されたIP1アナログと接触させ、その後追加的に以下の工程を含む:
−固相支持体を洗浄する工程;
−標識されたIP1を検出する工程;
標識されたIP1の量は、試料中に存在する抗-IP1抗体/IP1複合体の量に反比例する。
【0153】
当業者に公知の他の技術を使用し、本発明のIP1を検出する方法を実施することができる。特に偏光あるいは蛍光相関分光法技術を挙げることができる。いずれの場合にも、これらの技術は、IP1に特異的なリガンド-IP1の複合体の形成、それに続く形成された複合体の検出の工程を基礎としている。
【0154】
下記の試験の実施例は、本発明のIP1のアッセイ法を例示している。
【0155】
IP1アッセイを使用するELISA試験:
ELISAアッセイの進行の間、2つのアッセイフォーマットが想定される:
−第一のフォーマットにおいて、本発明の官能基化されたIP1アナログは、予め固相に付着させる。次にアッセイされるべきIP1を含有する生物学的試をは、一次抗-IP1抗体により固相上に形成された複合体の存在下でインキュベーションする。固相へ付着しなかった種を除去する洗浄工程の後、抗-IP1抗体に対するHRP-型酵素で標識された二次抗-種抗体を、反応ウェルに添加する。過剰な未結合の二次抗体を除去する洗浄工程の後、二次抗体により保持されるHRP酵素の基質が、反応ウェルへ添加され、その結果比色シグナルの出現をもたらす。分光計により測定されたこのシグナルの強度は、生物学的試料に含まれるIP1量に反比例するであろう。
【0156】
−第二のフォーマットにおいて、抗-IP1抗体を、予め固相に付着する。この付着は、2つの方法で得ることができる:受動的吸着又は抗-種二次抗体を持つ免疫学的反応性の固相の使用のいずれか。次にアッセイされるべきIP1を含有する生物学的試料を、本発明の官能基化されたIP1アナログの存在下でインキュベーションする。このフォーマットにおいて、IP1アナログ-ビオチンの使用は好ましいであろう。固相へ付着しなかった種を除去する洗浄工程の後、HRP-型酵素で標識されたストレプトアビジンを反応ウェルに添加する。過剰な未結合のストレプトアビジンを除去する洗浄工程の後、ストレプトアビジンにより保持されるHRP酵素の基質を反応ウェルに添加し、その結果比色シグナルが出現する。分光計により測定されたこのシグナルの強度は、生物学的試料に含まれるIP1量に反比例するであろう。
【0157】
競合によりIP1を検出するHTRF試験(均一時間分解蛍光試験)
これらの試験は、様々なフォーマットで実施することができる:
直接的フォーマット:アッセイされるべきIP1を含有する試料を、マイクロタイタープレートのウェルにおいて、IP1-シアニン複合体(又はより一般にIP1-FRETアクセプター複合体)及びユーロピウムクリプテートで標識された抗-1P1抗体複合体(又はより一般には、FRETドナーとして使用することができるランタニド複合体)の存在下でインキュベーションする。FRETアクセプターという表現は、その励起スペクトルとFRETドナーとして使用されるランタニドの発光スペクトルの間にスペクトルの重複を示す蛍光分子を意味すると理解される。
【0158】
IP1-シアニン複合体及び抗-IP1ユーロピウムクリプテート複合体のみを含む陽性対照、並びに抗-IP1ユーロピウムクリプテート複合体のみを含む陰性対照も、マイクロタイタープレートのウェル中でインキュベーションする。
【0159】
FRETアクセプターの発光波長(シアニンの場合665nm)及びFRETドナーの発光波長(FRETアクセプターの場合620nm)で発光した蛍光は、FRETドナーの励起(ユーロピウムクリプテートの場合337nm)後に、時間分解式に検出される。その後、(アクセプター由来の蛍光)/(ドナー由来の蛍光)の比を、アッセイされる試料又は陽性対照又は陰性対照を含む全てのウェルについて算出する。陽性対照と陰性対照の間で観察された比の差異(参照DR)は、抗-IP1抗体とIP1アナログの間の特異的相互作用の存在を示す。試料がIP1を含む場合、これは、抗体-ユーロピウムクリプテート複合体への結合において、アクセプター-IP1アナログと競合し始めるであろう。そのような試料の存在下で得られたDR値(試料DR)は、参照DRのそれよりも低いであろう。参照DRと試料DRの間の差異が大きいと、試料に含まれるIP1はより多くなる。
【0160】
同様のタイプのHTRF試験を、ドナー-IP1複合体及びアクセプター-抗体複合体を用いて行ってもよい。
【0161】
半直接的フォーマット:アッセイされるべきIP1を含有する試料は、IP1-ビオチン複合体、ストレプトアビジンXL665(又はより一般にFRETアクセプター複合体)、並びにユーロピウムクリプテート複合体で標識された抗IP1抗体(又はより一般にはFRETドナーとして使用することができるランタニド複合体)の存在下で、マイクロタイタープレートのウェル内でインキュベーションする。
【0162】
FRETアクセプターという表現は、その励起波長とFRETドナーとして使用されるランタニドの発光波長間でスペクトルの重複を示す蛍光分子を意味すると理解される。
【0163】
IP1-ビオチン複合体、ストレプトアビジン-XL665及び抗-IP1ユーロピウムクリプテート複合体のみを含む陽性対照、並びに複合体抗-IP1ユーロピウムクリプテート及びストレプトアビジン-XL665を含む陰性対照も、マイクロタイタープレートのウェル中でインキュベーションする。
【0164】
FRETドナー及びアクセプターにより発光される蛍光の検出、並びに結果の計算は、直接的フォーマットに関して先に説明されたものと同一である。
【0165】
「XL665」は、Cis Bio Internationalから販売されている交差-結合されたアロフィコシアニンを意味する。
【0166】
間接的フォーマット:アッセイされるべきIP1を含有する試料を、IP1-ビオチン複合体、ストレプトアビジン-XL665(又はより一般にFRETアクセプター複合体)の存在下、並びに抗-IP1抗体及び抗-IP1抗体を認識しユーロピウムクリプテートで標識された抗-種抗体(又はより一般にはFRETドナーとして使用することができるランタニド複合体)の存在下で、マイクロタイタープレートのウェル内でインキュベーションする。
【0167】
FRETアクセプターという表現は、その励起波長とFRETドナーとして使用されるランタニドの発光波長間でスペクトルの重複を示す蛍光分子を意味すると理解される。
【0168】
IP1-ビオチン複合体、ストレプトアビジン-XL665及び抗-IP1抗体及び抗-種-ユーロピウムクリプテート複合体のみを含む陽性対照、並びに抗-IP1抗体、抗-種-ユーロピウムクリプテート複合体及びストレプトアビジン-XL665のみを含む陰性対照も、マイクロタイタープレートのウェル中でインキュベーションする。
【0169】
FRETドナー及びアクセプターにより発光される蛍光の検出、並びに結果の計算は、直接的フォーマットに関して先に説明されたものと同一である。
【0170】
これらの直接、半直接又は間接的HTRF試験は、例えば、その活性化が細胞内IP1レベルの上昇を引き起こすような所定の膜受容体に対する、アゴニスト作用、アンタゴニスト作用又は逆アゴニスト作用について試験することが望まれる化学的化合物ライブラリーのスクリーニングに特に適している。これらの試験は、本発明のIP1アナログ及び抗-IP1抗体を用いて、細胞上で行ってもよい。
【0171】
従って本発明は、その活性化が細胞におけるIP1の生成を引き起こす膜受容体に対してアゴニストである化合物をスクリーニングする方法を提供し、この方法は:
(i)被験化合物を、その活性化がIP1生成を引き起こす受容体を発現している細胞を含有する培養培地へ添加する工程;
(ii)本発明の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iii)この化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1の量の増加は、被験化合物を、該受容体のアゴニストとして同定することを可能にする。
【0172】
この方法の好ましい実施において、工程(ii)は、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1の量決定は、2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iii)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの減少はこの化合物を該受容体のアゴニストとして同定することを可能にする。
【0173】
本発明は、その活性化が細胞内でのIP1生成を引き起こす膜受容体のアンタゴニストである化合物のスクリーニング法も提供し、この方法は:
(i)被験化合物を、その活性化がIP1生成を引き起こす受容体を発現している細胞を含有する培養培地へ添加する工程;
(ii)該受容体の公知のアゴニストを添加する工程;
(iii)本発明の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iv)被験化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1の量の減少は、被験化合物を、該受容体のアンタゴニストとして同定することを可能にする。
【0174】
工程(iii)は、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1の量の決定は、2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iv)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの増加はこの化合物を該受容体のアンタゴニストとして同定することを可能にする。
【0175】
本発明は更に、構成的に活性な膜受容体の逆アゴニストである化合物のスクリーニング法も提供する。受容体は、固有かつ基本的Gタンパク質結合活性を有する場合に構成的に活性化すると考えられ、及び/又はそのアゴニストによる刺激が存在しない場合にセカンドメッセンジャーの生成と関連付けられる。この場合、逆アゴニストは、この基本的反応の大きさを減少するように、別の表現をすると、そのアゴニストによる刺激が存在しない場合に、この受容体によるIP1の永久的生成を減少もしくは廃止するように作用するであろう。
【0176】
この構成的活性の低下を引き起こす化合物のスクリーニング法は、新規医薬品の同定を可能にすることができる。
【0177】
構成的活性のある膜受容体の逆アゴニストである化合物をスクリーニングする方法は:
(i)被験化合物を、構成的に活性な受容体を発現し、その活性がIP1の生成を引き起こす細胞を含有する培養培地に添加する工程;
(ii)本発明の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iii)被験化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1の量の減少は、被験化合物を、該受容体の逆アゴニストとして同定することを可能にする。
【0178】
この方法の好ましい実施において、工程(ii)は、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1量の決定は、これら2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iii)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの増加は、この化合物を該受容体の逆アゴニストとして同定することを可能にする。
【0179】
当業者は、これらの方法を、アゴニスト作用を増強する陽性アロステリックモジュレーターのような、膜貫通受容体の活性のレギュレーターの他の種類を明らかにするために適合させることが可能である。
【0180】
7. キット
本発明は、これらのIP1アッセイ技術の実施を可能にするキットにも関する。これらのキットは、(i)本発明のIP1アナログ又は滴定されたIP1、及び(ii)IP1に特異的なリガンドを備え、これらの構成要素の少なくとも1種は、放射性元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にするいずれか他の分子もしくは物質などのトレーサーにより、直接的又は間接的に標識されている。
【0181】
本発明のキットは、ドナー化合物、及びドナー化合物との近接転移から生じたシグナルを放出するアクセプター化合物を含んでよく、ドナー化合物は、IP1アナログと直接又は間接的に結合され、且つアクセプター化合物は、IP1に特異的リガンドと直接又は間接的に結合されている。別のこれらのキットの態様において、アクセプター化合物は、IP1アナログと直接又は間接的に結合され、且つドナー化合物は、IP1に特異的なリガンドと直接又は間接的に結合される。有利なことに、ドナー化合物及びアクセプター化合物は蛍光化合物であり、その近接転移はエネルギー転移であり、及び放出されたシグナルは蛍光シグナルである。
【0182】
ドナー蛍光化合物は、所定の波長で励起後、蛍光シグナルを放出し、これはエネルギー転移を行うことにより、アクセプター蛍光化合物を励起する、蛍光化合物である。多くのドナー蛍光化合物を、本発明の状況において使用することができる。例として、EP 180 492、EP 321 353、EP 601 113に開示された希土類(ユーロピウム、テルビウム)クリプテート、並びに希土類キレートが挙げられる。
【0183】
アクセプター蛍光化合物は、ドナー化合物からのエネルギー転移による励起後、所定の波長で蛍光シグナルを放出する、蛍光化合物である。本発明の方法を実施するために使用することが可能である多くのアクセプター化合物が存在し、中でも以下が挙げられる:アロフィコシアニン、交差-結合されたアロフィコシアニン、例えばXL665(CIS bio international)、シアニン、例えばCY5、ローダミン、スクアライン、BODIPY、フルオレセイン、AlexaFluors。
【0184】
好ましくは、これらのキットに含まれるIP1に特異的なリガンドは、哺乳動物のIP1担体分子複合体による免疫処置で得られた抗-IP1ポリクローナル又はモノクローナル抗体である。
【0185】
本発明のキットは、イノシトールサイクルの特定の酵素をブロックし、その結果試料中のIP1の蓄積を促進することを可能にする、塩化リチウム又は他の生成物も含むことができる。
【0186】
これらのキットは、使用されるアッセイ技術の種類に応じて、追加の通常の構成要素、すなわち固相支持体、抗-種抗体又は公知でありこの種の生成物において広範に使用されるいずれか他の構成要素を含むであろう。
【0187】
下記実施例は、本発明の化合物の合成経路及びそれらの使用を例示している。
【0188】
実施例1:2,3-O-[(1R,4R)-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-イリデン]-D-myo-イノシトール(イノシトール-カンファー)(化合物2)の合成:
市販のmyo-イノシトール(化合物1)(4.2g)を、D-カンファージメチルアセタール(9.3g)を含有する無水DMSO(50ml)中に懸濁した。この混合物を、50℃で3時間攪拌し、トリエチルアミンで中和し、真空下で濃縮した。残渣を、メタノール及びクロロホルムの混合液中にpara-トルエンスルホン酸水和物18mgを含有する溶液に溶解した。一晩20℃で攪拌した後、トリエチルアミンを添加し、得られた沈殿を濾過し、クロロホルムで洗浄し、その後水中に懸濁し、15分間攪拌し、その後濾過した。沈殿を、水及びクロロホルムで洗浄し、その後乾燥した。
収量 4.8g (65%)。
TLC(シリカ) Rf=0.51 (10% MeOH/AcOEt)。
MS-ESI(+):m/z=315 [M+H]+, 337 [M+Na]+
[α]D =+19.3 (c=1, DMSO)。
【0189】
実施例2:[1R-(1α,2α,4α)-2,3-O-[(1R,4R)-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-イリデン]-1-[ビス(フェニルメチル)リン酸]-D-myo-イノシトール(化合物3)の合成
実施例1の化合物2(2.5g)を、酸無水物として得、これを無水ピリジン(30ml)に溶解した。この溶液を窒素雰囲気下で冷却し(4℃)、撹拌しながらジベンジルホスホクロリデート(3.5g)を滴下した。3時間攪拌後、混合物を酢酸エチルで希釈し、その後飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄した。有機相を濃縮し、次にトルエンと共沸し、残渣をシリカカラム上のクロマトグラフィーにより精製した(2〜15% MeOH/CH2Cl2)。次に所望の化合物を、AcOEt/ヘプタン(1:4)混合液から結晶化した。
収量 1.4g (30%)。
TLC(シリカ) Rf=0.25 (5% MeOH/AcOEt)。
[α]D=-8.3 (c=1, CHCl3)。
31P NMR (CDCl3):δ(ppm)=-1.61。
【0190】
実施例3:4,5,6-トリ-O-フェニルメチルオキシカルボニル-[1R-(1α,2α,4α)-2,3-O-[(1R,4R)-1,7,7-トリメチルビシクロ[2.2.1]-ヘプト-2-イリデン]-1-[ビス(フェニル-メチル)リン酸]-D-myo-イノシトール(化合物4, Z=ベンジルオキシカルボニル)の合成
実施例2の化合物3(0.7g)を、ジクロロメタンに溶解し、次にトリエチルアミン(340μl)及びDMAP(6mg)を添加し、この攪拌溶液を窒素下で冷却した(0℃)。塩化ベンジルオキシカルボニル1.04mlを、30分間かけて添加し、その後この混合物を、室温で18時間攪拌し続けた。反応混合物を、炭酸水素ナトリウム水溶液(10%)、次に飽和NaCl溶液で洗浄し;有機相を、真空下で濃縮し、残渣を、シリカカラム上のクロマトグラフィーにより精製した(2〜10% AcOEt/トルエン)。所望の化合物を、ゴムの形状で得た。
収量 0.7g (57%)。
TLC(シリカ) Rf=0.49 (20% AcOEt/トルエン)。
[α]D=-19.6 (c=1, CHCl3)。
【0191】
実施例4:4,5,6-トリ-O-フェニルメチルオキシカルボニル-1-[ビス(フェニルメチル)-リン酸]-D-myo-イノシトール(化合物5)の合成
実施例3の化合物4(0.2g)を、ジクロロメタンに溶解し、この溶液を冷却し(0℃)、 TFA/H2O 95/5 混合液400μlを添加した。3時間0℃で攪拌後、混合物を蒸発させ、トルエンの存在下で4回共沸した。残渣を、シリカカラム上のクロマトグラフィーにより精製した(AcOEt/トルエン、その後MeOH/トルエン)。所望の化合物を、泡の形状で得た。
収量 0.16g (57%)。
TLC(シリカ) Rf=0.41 (MeOH/AcOEt/トルエン, 1/2/7)。
[α]D=-7.69 (c=1, CHCl3)。
【0192】
実施例5:2,3-O-カーボネート-4,5,6-トリ-O-フェニルメチルオキシカルボニル-1-[ビス(フェニルメチル)リン酸]-D-myo-イノシトール(化合物6)の合成
実施例4の化合物5(0.42g)を、トリエチルアミン(210μl)の存在下で無水ジクロロメタンに溶解し、この溶液を冷却し(0℃)、その後ホスゲン430μlを添加し、この混合物を室温で18時間攪拌し続けた。この反応混合物を、ジクロロメタンで希釈し、希HCl溶液で、次に水で洗浄した。有機相を濃縮し、残渣をシリカカラム上のクロマトグラフィーにより精製した(15〜50% AcOEt/ヘキサン)。
収量 0.33g (76%)。
TLC(シリカ) Rf=0.46 (50% AcOEt/ヘキサン)。
[α]D=-16.3 (c=1, CHCl3)。
【0193】
実施例6:2,3-O-カーボネート-1-リン酸D-myo-イノシトール(化合物7)の合成
THE/EtOH/H2O混合液中の実施例5の化合物6(0.2g)を、炭素触媒に担持された10%パラジウム(0.2g)の存在下で、室温で5時間水素化した。セライトで濾過後、濾液を凍結乾燥した。
収量 65mg (100%)。
HPLC (ODS;勾配(10分間) 0〜2% ACN/TEAAc 30mM pH6.8):Rt=4.52分。
MS-ESI(-):m/z=285 [M-H]-
31P NMR (D2O): δppm)=3.54。
【0194】
実施例7:誘導体3-0-(5-ベンジルオキシカルバミドペンチル)-カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物8)(異性体3)及び2-O-(5-ベンジルオキシカルバミドペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物9)(異性体2)の合成
実施例6の化合物7(60mg)を、1.8mlの無水DMF中の5-ベンジルオキシカルバミドペンチルアミン(ペンチルアミンのモノBoc誘導体)150mgと反応させた。48時間後、溶媒を蒸発させ、生成物を、分取HPLCにより精製し、化合物8及び9を分離した。
収量:化合物8(異性体3):40mg (35%)、化合物9(異性体2):37mg(34%)。
HPLC (ODS;勾配 (10分間) 0〜2%、その後(15分間) 2〜60% ACN/TEAAc 30mM pH6.8):Rt=18.6分 (異性体2)。
31P NMR (D2O): δppm)=2.35。
【0195】
実施例8:誘導体3-0-(5-アミノペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物10)又は2-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物11)の合成
実施例7の化合物8又は化合物9の21gを、エタノール/水(1/1)混合液2mlに溶解し、炭素触媒上に担持された10%パラジウム(0.2g)の存在下で、室温において5時間水素化した。セライトで濾過後、濾液を凍結乾燥した。
化合物10又は11の収量:15mg (90%)。
化合物10:HPLC (ODS;勾配(10分間) 0〜2% ACN/TEAAc 30mM pH6.8):Rt=3.75分。
【0196】
化合物10は、3-O-(5-アミノペンチルカルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(トリエチルアンモニウム塩の形)である。
HPLC (ODS;勾配(10分間) 0〜2% ACN/TEAAc 30mM pH6.8):Rt=3.75分。
MS-ESI(-):m/z=387 [M-H]-。MS-ESI(+):m/z=389 [M-H]+
31P NMR (D2O):δppm)=3.79。
1H NMR:(D2O, 400MHz, (ppm)):5.21 (dd, 1H, H2); 3.97 (ddd, 1H, H1); 3.76-3.57(m, 2H, H3+H6); 3.50 (dd, 1H, H4); 3.29 (m, 1H, H5); 3.19-2.96 (m, 8H, CH2 (arm)+CH2 (Et3N)); 2.90 (dd, 2H, CH2(arm)); 1.59 (m, 2H, CH2(arm)); 1.47 (m, 2H, CH2(arm)); 1.34 (m, 2H, CH2(arm)); 1.18 (t, 9H, CH3 (Et3N))。
13C NMR:(D2O, 62.9MHz, (ppm)):161.0 (C=O); 77.2 (C2); 76.9 (C5); 76.0 (C1);75.3 (C3); 75.1 (C4); 72.5 (C6); 42.8, 42.2, 31.0, 29.1及び25.5 (CH2 アーム)。
【0197】
化合物11は、2-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸(トリエチルアンモニウム塩の形)である。
HPLC (ODS;無勾配 5%で2分間、その後勾配(20分間) 5〜45% ACN/TEAAc 30mM pH6.8):Rt=3.84分。
MS-ESI(-):m/z=387 [M-H]-。MS-ESI(+):m/z=389 [M+H]+。
1H NMR: (D2O, 400MHz, (ppm)):4.52 (dd, 1H, H3); 4.24 (dd, 1H, H2); 3.88 (ddd,1H, H1); 3.71-3.68 (m, 2H, H4及びH6); 3.33 (m, 1H, H5); 3.11-2.06 (m, 5H, CH2(arm) + CH2 (Et3N)); 2.90 (dd, 2H, CH2 (arm)); 1.58 (m, 2H ,CH2(arm)); 1.46 (m,2H, CH2 (arm)); 1.31 (m, 2H, CH2 (arm)); 1.18 (t, 9H, CH3 (Et3N))。
13C NMR:(D2O, 62.9MHz, (ppm)):160.4 (C=O); 77.2-76.6-75.7-74.8-73.1-72.5 (C イノシトール);42.8, 42.1, 31.0, 29.1及び25.4 (CH2アーム)。
31P NMR (D2O): δppm)=2.31。
【0198】
実施例9:誘導体3-O-(5-ビオチンアミドペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物12)の合成
リン酸緩衝液(pH8)500μl中の実施例8に従い調製された3-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル-1リン酸D-myo-イノシトール(化合物10)の2.35mg(5.23μmol)の溶液へ、リン酸緩衝液200μl及びアセトニトリル300μlの混合液中のビオチン-NHSエステル(Aldrich)の1.92mg(5.6μmol)を添加した。HPLCにより、出発生成物のピーク(tR=16.5分)の新規化合物(tR=16.9分)への転換を観察した[Lichrospher Merck RP18 E (5μm) 125 x 4 mm、1ml/分、A:0.05%TFAを含有する水、B:アセトニトリル、勾配10分間にBの0〜2%、5分間にBの2%〜15%、8分間にBの15%〜100%、190nmで検出]。この化合物は、RP-HPLCにより精製し、真空下で蒸発乾燥後、IP1-ビオチン誘導体(化合物)2.29mg(70%)を得た。MS (ES+)[MH]+=615 (100%)(計算値:C22H39N4O12PS)。
【0199】
実施例10:3-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸のCY5による標識:CY5-IP1複合体 (化合物13)
実施例8に従い調製した3-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物10)0.96mg(1.96μmol)を、エッペンドルフチューブ内で秤量し、炭酸塩緩衝液(pH9)400μlを添加し、その後DMF 163μl中のスルホネートdCY5-モノNHS(Amersham Pharmacia)2当量を添加した。この混合物を、分析し、RP-HPLCにより精製し(Vydac RP18;1ml/分;勾配(30分間)10〜27%のACN/H2O中1%TFA);このピークは、tR 17分以内で収集した。化合物13の0.64μmolを得た。収率=32%。
【0200】
実施例11:3-O-(4-カルボキシブチルアミド-5-ペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物31)及びN-ヒドロキシスクシンイミド誘導体(化合物32)(図5)の調製
実施例8で調製された3-O-(5-アミノペンチル)カルバミド-1-リン酸D-myo-イノシトール(化合物10) 2mg (4.0μmol)を、エッペンドルフチューブ内で秤量し、0.1M炭酸水素トリエチルアンモニウム緩衝液(pH8)200μl及びジメチルホルムアミド中の無水グルタル酸溶液(12mg/ml)200μl(これは5当量である)を添加し、1時間インキュベーションした後、トリエチルアミンを添加しそのpHを10とし、15分後、この混合物を蒸発させ、酢酸水溶液(20%, V/V)で中和した(pH7)。この混合物を分析し、光散乱検出器を備えたRP-HPLCにより精製した(Vydac RP18;1ml/分;勾配(20分間) 0〜10% ACN/50mM炭酸水素トリエチルアンモニウム)。主要ピークに相当する画分を収集し、この画分を蒸発乾固させ(speedvac)、その後数回共沸し、各回水200μlを添加した。化合物31の3.0μmolを得た。収率=75%。
【0201】
こうして得た化合物31は、エッペンドルフチューブ内で蒸発乾固し、ジイソプロピルエチルアミン1.75μlを含有するDMF(200μl)に溶解し、DMF 200μlに溶解したTSTU [0-(N-スクシンイミジル)-N,N,N',N'-テトラメチルウロニウムテトラフルオロホウ酸]1.3mgを添加した。NHS誘導体の形成は、RP-HPLCによりモニタリングした(Vydac RP18;1ml/分;勾配(20分間) 0〜10% ACN/水中0.1%トリフルオロ酢酸、検出190nm)。4時間反応した後、DMFの一部を蒸発させ(speed-vac)、反応媒体を、0.1%トリフルオロ酢酸水溶液(約3ml)で希釈し、分析と同じ条件を使用するRP-HPLCにより精製した。主要画分を収集し、これを蒸発させ、真空下で乾燥させた。NHS誘導体(32) 1.5μmolを得た。この化合物は、最小の水で溶解し、スクリューキャップ付きのエッペンドルフチューブ中にアリコートとし、蒸発乾固させた。これらのチューブを、-20℃で、使用時まで貯蔵した。
【0202】
実施例12:3-O-[5-(3-マレイミドプロピオンアミド)ペンチル]カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸誘導体(化合物33)の合成(図5)
氷浴中で冷却した0.1Mリン酸緩衝液(pH7) 2ml中の実施例8に従い調製された3-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル1-リン酸-D-myo-イノシトール(化合物10)の4.04mg(9μmol)の溶液に、アセトニトリル400μlに溶解したN-ヒドロキシスクシンイミジル3-マレイミドプロピオン酸エステル(Aldrich) 5.54mg(20μmol)を、100μl画分で5分毎に添加し、この混合物を20℃に戻し、その後この混合物を2時間放置し、反応させた。出発材料ピークの新規化合物(tR=12.7分)への転換をHPLCで観察した[Lichrospher Merck RP18 E(5μm) 125 x 4mm, 1ml/分, A:0.05%TFAを含有する水、B:アセトニトリル、勾配10分間にBの0〜2%、5分間にBの2%〜15%、8分間にBの15%〜100%、190nmで検出]。この化合物を、同じ溶媒を使用するRP-HPLCにより精製し、蒸発及び真空下で乾燥後、IP1マレイミド誘導体(化合物33) 1.15mg(21%)を得た。MS (ES+)[MH]+=420 (30%) [M+Na]+=562 (50%) (計算:C19H30N3O13P)。生成物は、アリコートとし、使用時まで-20℃で貯蔵した。
【0203】
実施例13:IP1-マレイミドのXL665との結合
アロフィコシアニンXL665(CIS BIO INTERNATIONAL)を、0.1Mリン酸緩衝液(pH=7)中の5当量SPDP(N-ヒドロキシスクシンイミジル3-[2-ピリジルチオ]プロピオン酸エステル)により、室温で30分間予め活性化した。その後反応混合物を、同じ緩衝液中の20mM DTT(ジチオスレイトール)で還元した。次に活性化されたXL665 (XL665-SH)を、Amersham Biosciences G25スーパーファインHR10/30カラムを使用する排除クロマトグラフィーにより精製した。精製工程の溶離緩衝液は、0.1Mリン酸緩衝液(pH=7)である。
【0204】
結合工程は、5当量の実施例12のIP1-マレイミドを、1当量のXL665-SHへ添加し、この混合液を一晩4℃で反応させることにより行った。
【0205】
次にIP1-XL665複合体を、G25スーパーファインHR10/30カラム(Amersham Biosciences)を使用する排除クロマトグラフィーにより精製した。精製工程の溶離緩衝液は、0.1Mリン酸緩衝液(pH=7)である。
【0206】
実施例14:BSA及び3-O-(5-アミノペンチル)カルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸の間の結合による免疫原の調製
BSA(ウシ血清アルブミン)の10mg/ml溶液を、PBS(リン酸緩衝された生理食塩水:11mMリン酸、140mM NaCl、pH7.2)中に調製した。エッペンドルフチューブ中で、BSA溶液240μl(すなわち2.4mg)及び実施例8で調製した3-O-(5-アミノペンチル)カルバミド-1-リン酸-D-myo-イノシトールアナログ300μl、その後グルタルアルデヒド60μl(すなわち最終容積の1%)を、混合した。この混合物を、20℃で2時間、攪拌しながらインキュベーションし、その後新たに調製したNaBH4(水素化ホウ素ナトリウム)水溶液600μlを添加し、引き続きPBS緩衝液に対し4℃で一晩透析した。次にこの複合体を、アリコートとし、-20℃で貯蔵した。
【0207】
実施例15:免疫処置
マウスを免疫処置した(6回の皮下注射は各々、同量のフロイントのアジュバントで乳化された実施例14で調製された免疫原溶液50μlを用いて行った)。血液試料を定期的に採取し、その後得られた血清を-20℃で貯蔵した。
【0208】
実施例16:検出されるIP1を特異的に認識する抗体の存在をもたらすELISA試験
ストレプトアビジン(13pmol/ウェル)でコートされたNUNC96-ウェルマイクロタイタープレートを使用した。実施例9で調製されたIP1-ビオチン複合体100μlを、0.3%BSAを含有するPBS緩衝液中に濃度0.25μg/mlで分配した。20℃で1時間30分間インキュベーションし、その後0.1% Tween20のPBSにより3回洗浄した。1/10、1/100... 1/10000に希釈した抗血清を収集し、マイクロタイタープレートに分配し(100μl/ウェル);対照ウェル「ブランク」も、緩衝液のみを分配して調製した。4℃で16時間インキュベーションし、その後0.1% Tween20のPBSにより3回洗浄した。0.3% BSAを含むPBS中に1/60000希釈した複合抗-IgG(マウス)-ペルオキシダーゼ(Sigma # A0168)100μlを分配した。この混合物を、室温で1時間、撹拌しながらインキュベーションし、その後0.1% Tween20を含むPBSにより3回洗浄した。TMB(Sigma # T 8665)100μlを分配し、この混合物を、室温で30分間、撹拌しながらインキュベーションし、その後停止試薬(Sigma # S5814)100μlを分配し、光学濃度を450nmで測定した。
【0209】
1/10000未満の血清希釈物を含有するウェルにおいて、OD450nm値>0.5が認められ、このことは、これらの血清中に、IP1アナログに対するマウス抗体が存在することを示している。
【0210】
実施例17:ELISAにより評価された抗-IP1抗体の特異性(図10)
ストレプトアビジン(13pmol/ウェル)でコートされたNUNC96-ウェルマイクロタイタープレートを使用した。実施例9で調製されたIP1-ビオチン複合体100μlを濃度0.25μg/ml分配し、この混合物を、室温で2時間30分間インキュベーションした。この混合物を、0.1% Tween20を含有する水により3回洗浄した。競合物質の溶液50μlを添加し、以下の最終濃度範囲に調製した:myo-イノシトール(10nM〜1mM)、IP1 Sigma (1nM〜100μM)、IP2(1nM〜100μM)、IP3(1nM〜100μM)、PiP2(1nM〜100μM)、更には抗-IP1抗体を分泌する培養上清50μl。この混合物を、4℃で16時間インキュベーションし、その後0.1% Tween20を含有する水により3回洗浄した。0.3% BSAを含むPBS中に1/60000希釈した複合抗-IgG(マウス)-ペルオキシダーゼ(Sigma# A 0168)100μlを添加した。この混合物を、室温で1時間、撹拌しながらインキュベーションし、その後0.1% Tween20を含むPBSによる3回の洗浄を続けた。TMB基質(Sigma # T 8665)100μlを分配し、混合物を、室温で30分間、撹拌しながらインキュベーションし、その後停止試薬(Sigma # S5814)100μlを分配し、光学濃度を450nmで測定した。
【0211】
450nmでの光学濃度を、その競合について試験することが望ましい化合物の濃度の対数に対しプロットした。競合について試験した全ての化合物について、最大光学濃度OD450 〜1.5が、最低濃度(1nM)で認められた。myo-イノシトールは、例え濃度1mMであってもシグナルの減少を引き起こさないのに対し、IP1は、マイクロモル範囲を下回る濃度についてシグナル減少を誘導することが認められ、これは血清中に含まれた抗体が、アッセイにおいて使用されるのに十分な親和性を発揮することにより、IP1分子を特異的に認識することが可能であることを示している。同様に、PIP2などの様々な代謝産物が試験され、これらはこの抗体により認識されず、抗-IP1抗体によるIP1認識の特異性を確認した。
【0212】
図11のグラフは、ELISA試験に使用された抗-IP1抗体の特異性を示している。実際、競合物質としてのIP1の使用のみが、シグナルの阻害の測定を可能にしている。
【0213】
実施例18:HTRF試験によるIP1のアッセイ:抗-IP1抗体の特異性
全ての溶液を、0.1% BSA及び0.4M KF.NBを含有する100mM HEPES緩衝液(pH7)中に調製した。競合物質の溶液50μlを、以下の最終濃度を得るように、底が黒いマイクロタイタープレートのウェルに分配した:myo-イノシトール(10nM〜1mM)、IP1 Sigma (1nM〜1mM)、IP2 (1nM〜100μM)、IP3 (1nM〜100μM)、PiP2 (1nM〜100μM)。次に実施例10のIP1-CY5複合体の10nM溶液を50μl、予めユーロピウムクリプテートで標識された1.5nM抗-IP1抗体を含有する溶液50μlを、示された順番で分配した。ブランク(陰性対照)を構成するために、2つのウェルには、競合物質50μlを緩衝液50μlと共に入れた。この混合物を、4℃で2時間インキュベーションし、Rubystar(登録商標)装置(BMG Labtech)上で620nm及び665nmで時間分解蛍光測定を行った(td=50μs, tg=400μs)。ΔF値を、参照としてブランク値を用いて計算した。次に様々な競合物質で得られた阻害率を、過剰なIP1競合物質の存在下で得られたシグナルを100%値とし、ΔF値から計算した。
【0214】
図12のグラフは、使用された抗-IP1抗体の高い特異性を示している。実際、競合物質としてのIP1の使用のみが、シグナル阻害の測定を可能にしている。
【0215】
実施例13の複合体を、HTFR試験において、IP1-CY5複合体と同じ様式で使用することができる。
【0216】
実施例19:誘導体4-O-(5-アミノペンチルカルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物18D)又は5-O-(5-アミノペンチルカルバモイル-D-myo-イノシトール-1-リン酸(化合物19D)の合成
市販のmyo-イノシトール(化合物1)を、Dreefらのプロトコール(Tetrahedron, 1991, 47(26), 4709-4722)に従い、1,1-ジエトキシシクロヘキサンで処理し、反応混合物を直接及び追加の酸処理を実施せずに精製し(1,2:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデンmyo-イノシトール異性体の割合を増加するようデザイン)、1,2:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール異性体28%、2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール異性体(34)47%、及び1,2:5,6-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール異性体18%を得た。
【0217】
1-O-ブチリル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール(36)及び6-0-ブチリル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール(37):
化合物34(37g, 11mmol)を、トルエン(250ml)に懸濁し、その後酸化ジブチルスズ(30g, 12mmol)を添加した。この混合物を、Dean-Stark装置において還流温度で3時間加熱した。その後溶液を、真空下で濃縮した。次に残渣を、無水DMF 200mlに溶解した。この溶液を、-40℃に冷却し、フッ化セシウム(34g, 22mmol)及び塩化ブチリル(12ml, 11.6mmol)を添加した。反応媒体を、室温で12時間攪拌した。反応混合物を、ジクロロメタン600mlで希釈し、水400mlで洗浄した。有機相を、Na2SO4上で乾燥し、濾過し、その後濃縮した。純粋な化合物36(27.6g, 62%)及び37(3.6g, 8%)を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより得た(ヘキサン/酢酸エチル, 4/1)。
Rf=0.33 (37)及び0.21 (36) (ヘキサン/酢酸エチル, 4/1)。
36: 1H NMR (CDCl3, 400 MHz, δ(ppm)):4.98 (t, 1H, H1, J1-2=Jl-6=4.6 Hz); 4.59(dd, 1H, H2, J2-3=6.1 Hz); 4.36 (dd, 1H, H3, J3-4=8.1 Hz); 4.09 (dd, 1H, H6, J5-6= 9.0 Hz); 3.87 (dd, 1H, H4, J4-5=10.5 Hz); 3.47 (dd, 1H, H5); 2.44-2.32 (m,4H, 2*CH2); 1.78-1.33 (m, 20H, 10*シクロヘキシリデンのCH2); 0.99 (t, 3H, CH3, J=7.4 Hz).
37: 1H NMR (CDCl3, 400 MHz, δ(ppm)):5.21 (dd, 1H, H6, J1-6=2.9, J5-6=8.7 Hz);4.46 (dd, 1H, H2, J1-2=3.9, J2-3= 7.1 Hz); 4.39 (dd, 1H, H3, J3-4=7.7 Hz); 4.20 (dd,1H, H4, J4-5=10.6 Hz); 3.89 (dd, 1H, H1); 3.61 (dd, 1H, H5); 2.40-2.32 (m, 4H,2*CH2); 1.79-1.24 (m, 20H, 10*シクロヘキシリデンのCH2); 0.99 (t, 3H, CH3)。
【0218】
1-0-ブチリル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-D-myo-イノシトール(36D)
1-ブチリル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-myo-イノシトール36(18g, 43.9mmol)を、ヘキサン/エーテル(200ml 10/1)及び0.1Mリン酸緩衝液(pH〜7,90ml)の混合液中に溶解した。ブタ膵リパーゼ(PLL)(54g)を添加し、反応媒体を37℃で1週間攪拌した。この媒体を、デカントすることにより残し、分離した。上清を除去し、残余を遠心した。上清を、ペレットから分離した。上清を一緒にし、MgSO4上で乾燥し、濾過し、その後濃縮した。ジオール34L(4.7g, 65%)及びエステル36D(8.9g, 98%)を分離し、純粋な形をシリカゲル上のクロマトグラフィーにより得た(オープンカラム, ヘキサン/酢酸エチル, 4/1−>1/1)。
Rf=0.73 (36D)及び0.35 (34L)(ヘキサン/酢酸エチル, 1/1)。
[α]D=-8.3 (c=1.06, CHCl3) (36D)。
[α]D=-16.47 (c=0.61, CHCl3) (34L)。
【0219】
2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-D-myo-イノシトール(34D)
化合物36D(8.9g, 21.7mmol)を、メタノール(70ml)中に溶解した。5M水酸化ナトリウム溶液45mlを滴下した。反応混合物を、室温で18時間攪拌した。メタノールを、減圧下で蒸発させ、残渣を、ジクロロメタン200mlで希釈した。水相を、酢酸エチル200mlで抽出した。有機相を一緒にし、濃縮した。純粋な化合物34D(6.8g, 92%)を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより得た(オープンカラム:固相沈着, H/E, 1/1)。収率=92%。Rf=0.35(ヘキサン/酢酸エチル, 1/1)。
【0220】
6-O-ベンジル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-D-myo-イノシトール(37D)
化合物34D(1g, 2.9mmol)を、トルエン(28ml)に懸濁し、その後酸化ジブチルスズ(0.8g, 3.2mmol)を添加した。混合物を、Dean-Stark装置において3時間還流加熱した。その後溶液を、真空下で濃縮した。次に残渣を、無水DMF 16mlに溶解した。この溶液を、-20℃に冷却し、フッ化セシウム(0.9g, 5.8mmol)及び臭化ベンジル(0.25ml, 2.9mmol)を添加した。反応媒体を、室温で12時間攪拌した。反応混合物を、ジクロロメタン60mlで希釈し、水30mlで洗浄した。有機相を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、その後高真空下で濃縮した。純粋な化合物37D(0.96g, 76%)を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより得た(オープンカラム、ヘキサン/酢酸エチル, 1/1)。収率=76%。
【0221】
6-O-ベンジル-2,3:4,5-ジ-O-シクロヘキシリデン-5-O-(o-キシレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール(38D)
化合物37D(0.83g, 1.93mmol)を、無水ジクロロメタン45mlに溶解した。o-キシリレン-N,N'-ジイソプロピルホスホロアミダイト(1.03g, 3.86mmol)及び1-H-テトラゾール(0.338g, 4.83mmol)を添加した。媒体を、アルゴン下で室温で1時間攪拌した。その後媒体を0℃に冷却し、tert-ブチルヒドロペルオキシド0.36mlを滴下した。反応混合物を、室温に戻し、その後水20mlで洗浄した。有機相を、硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、濃縮した。純粋な生成物38D(980mg)を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより得た(オープンカラム、ヘキサン/酢酸エチル, 7/3−>1/1)。収率=83%。Rf=0.45 (ヘキサン/酢酸エチル, 1/1)。融点:59℃。
31P NMR (CDCl3, 161.98 MHz, δ(ppm)):-1.48
13C NMR (CDCl3, 100.62 MHz, δ(ppm)):138.2 + 135.7 (Cipso); 129.6-128.1 (Caro);113.7 + 112.4 (Cipso); 79.6(C6); 78.6(C5); 77.9 (C1); 77.6 (C4); 76.5(C3); 74.4(C2, Jc-p=5.1 Hz); 72.4 (CH2Ph); 68.9 (CH2Ph, Jc-p =3.7 Hz); 37.0 + 36.9 + 36.7 +34.6 + 25.5 + 25.4 + 24.3 + 24.2 + 24.1 + 23.9(Ccyclo)。
【0222】
6-O-ベンジル-2,3-O-シクロヘキシリデン-5-O-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール(39D)
生成物38D(0.98g, 1.6mmol)を、ジクロロメタン中の0.1Mエチレングリコール溶液20mlに溶解した。para-トルエンスルホン酸(0.13g)を添加した。反応媒体を、トリエチルアミン添加の2時間後に中和し、減圧下で濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製し(オープンカラム、CH2Cl2/MeOH,95/5中析出、CH2Cl2/MeOH, 99/1−>95/5で溶離)、ゴムの形状の化合物39D(0.357g,42%)を得た。Rf=0.6 (純粋な酢酸エチル)。
1H NMR (アセトン D6, 400 MHz, δ(ppm)):7.50-7.17 (m, 9H, ハロ); 5.46 (dd, 1H, CH2OP, JAB=13.5, JH-P=16.5 Hz); 5.42 (dd, 1H, CH2OP, JAB=13.5, JH-P =16.5 Hz); 5.14-4.90 (m, 3H, 2* CH2OPのH + CH2PhのH); 4.82 (d, 1H, CH2Ph, J= 11.1 Hz); 4.80 (ddd, 1H, H1, J1-2=4.2, J1-6=8.4, J1-P=7.8 Hz); 4.66 (dd, 1H, H2, J2-3=5.5 Hz); 4.20 (dd, 1H, H3, J3-4=7.0 Hz); 3.91 (dd, 1H, H6, J5-6=J1-6=8.4 Hz); 3.78 (dd, 1H, H4, J4-5=9.2 Hz); 3.58 (dd, 1H, H5); 1.81-1.36 (m, 10H,5*シクロヘキシリデンのCH2)。
31P NMR (アセトン D6, 161.98 MHz, 6 (ppm)):-4.11。
【0223】
6-O-ベンジル-4,5-カーボネート-2,3-O-シクロヘキシリデン-5-0-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール(40D)
ジオール(39D)(0.13g, 0.24mmol)を、無水ジクロロメタン3mlに溶解した。1,1'-カルボニルジイミダゾール(120mg, 0.72mmol)を添加した。反応混合物を、アルゴン下で一晩攪拌した。この溶液を濃縮した。得られた残渣を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製し(オープンカラム、ヘキサン/酢酸エチル、7/3−>100%酢酸エチル)、白色のゴムの形状の化合物40Dを得た(118mg, 87%)。Rf=0.63(ヘキサン/酢酸エチル, 3/7)。
[α]D=-6.1 (c= 0.97, CHCl3) (40D)。
1H NMR (CDCl3, 400 MHz, δ(ppm)): 7.47-7.22 (m, 9H, Haro); 5.30 (dd, 1H, CH2OP,JAB=13.6, JH-P=16.6 Hz); 5.25 (dd, 1H, CH2OP, JAB=13.6, JH-P=16.6 Hz); 5.24(dd, 1H, CH2OP); 5.10 (dd, 1H, CH2OP); 4.84 (td, 1H, H1, J1-2=3.0, J1-6=2.2, J1-p= 8.8 Hz); 4.79 (d, 1H, ベンジルのCH2, JAB=11.8 Hz); 4.71 (d, 1H, ベンジルのCH2);4.65-4.52 (m, 3H, H2 +H3 + H4); 4.26 (dd, 1H, H6, J5-6=8.0, J1-6=2.2 Hz); 4.15 (m,1H, H5); 1.80-1.21 (m, 1OH, 5*シクロヘキシリデンのCH2)。
31P NMR (CDCl3, 161.98 MHz, δ (ppm)): -1.49
IR: 1812-1840 (C=O); 1284 (P=O); 1007-1021-1091 (P-O)。
【0224】
4-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-6-O-ベンジル-2,3-O-シクロヘキシリデン-1-O-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール「保護された形の異性体4」(41D)及び5-O-(5-アミノペンチルカルバモイル)-6-O-ベンジル-2,3-O-シクロヘキシリデン-1-O-(o-キシリレンジオキシホスホリル)-D-myo-イノシトール「保護された形の異性体5」(42D):
化合物40D(115mg, 0.21mmol)を、無水ジクロロメタン3mlに溶解し、その後5-ベンジルオキシカルバミドペンチルアミン(実施例7のペンチルアミンのモノBoc誘導体)(153mg, 0.65mmol)を、無水ジクロロメタン2mlに溶解し、その後滴下した。反応を、室温で12時間進行させた。この溶液を濃縮した。残渣を、シリカゲル上のクロマトグラフィーにより精製し(オープンカラム、ヘキサン/酢酸エチル、1/4−>100%酢酸エチル)、化合物41D(78mg, 40%)及び42D(78mg, 40%)を得た。
41D: 1H NMR (CDCl3, 400 MHz, δ(ppm)):7.43-7.17 (m, 19H, Haro); 5.36 (dd, 1H, CH2OP, JAB=13.6, JH-P=12.1 Hz); 5.27 (dd, 1H, CH2OP, JAB=13.6, JH-P=16.6 Hz); 5.18-4.80 (m, 8H, 2* CH2OPのH +4* CH2PhのH +H4+H1); 4.71-4.66(m, 1H, H2); 4.15 (dd, 1H, H3, J2-3=J3-4=6.8 Hz); 3.97 (dd, 1H, H6, J5-6=8.1 Hz);3.60 (dd, 1H, H5, J4-5=8.1 Hz); 3.31-3.11 (m, 4H, 2*CH2N); 1.92-1.31 (m, 16H, 3*アームのCH2 + 5*シクロヘキシリデンのCH2)。
31P NMR (CDCl3, 161.98 MHz, δ(ppm)):-1.76。
【0225】
4-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸(18D)
メタノール/クロロホルム(v/v)混合液16ml中の化合物41D(75mg, 0.094mmol)の溶液を、炭素に担持された10%パラジウム(80mg)の存在下、水素雰囲気下、室温で68時間、10barで攪拌した。セライト上で濾過後、水で洗浄し、濾液を蒸発させ、その後水に溶解し、凍結乾燥して、化合物18D(18mg, 53%)を得た。
1H NMR (D2O, 400 MHz, δ(ppm)):4.81 (dd, 1H, H4); 4.20 (bs, 1H, H2); 3.87 (dd,1H, H1); 3.78 (dd, 1H, H6); 3.68 (dd, 1H, H3); 3.43 (dd, 1H, H5); 3.20-3.05 (m, 2H,2*H of CH2-N); 2.91 (t, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.4 Hz); 1.63 (q, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.5 Hz); 1.50 (q, 2H, 2* CH2-NのH, J=6.9 Hz); 1.37 (m, 2H, 2* CH2-NのH)。
31P NMR (D2O, 161.98 MHz, δ(ppm)):3.98。
MS-ESI (-):m/z 387 [M-H]-
【0226】
5-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸(19D)
メタノール/クロロホルム(v/v)混合液16ml中の化合物13D(58mg, 73μmol)の溶液を、炭素に担持された10%パラジウム(60mg)の存在下で、室温において68時間、10barで攪拌した。セライト上で濾過後、水で洗浄し、濾液を蒸発させ、その後水に溶解し、凍結乾燥して、化合物16Dを得た。
1H NMR (D2O, 400 MHz, δ(ppm)):4.50 (dd, 1H, H5, J4-5=9.8, J5-6=9.6 Hz); 4.17(bs, 1H, H2); 3.91 (dd, 1H, H1, J1-6=9.6 Hz); 3.78 (dd, 1H, H6); 3.67 (dd, 1H, H4, J3-4=10.0 Hz); 3,57 (dd, 1H, H3, J2-3=2.1 Hz); 3.20-3.05 (m, 2H, 2* CH2-NのH);2.91 (t, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.4 Hz); 1.59 (q, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.7 Hz); 1.47(q, 2H, 2* CH2-NのH, J=6.9 Hz); 1.32 (m, 2H, 2* CH2-NのH)。
31P NMR (D2O, 161.98 MHz, δ(ppm)):3.75。
MS-ESI (-):m/z387 [M-H]-
【0227】
5-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸(19D)
メタノール/クロロホルム(v/v)混合物16ml中の化合物42D(58mg, 73μmol)の溶液を、10%パラジウムに担持された炭素(60mg)の存在下で、室温において68時間、10barで攪拌した。セライト上で濾過後、メタノールで、その後水で洗浄し、濾液を蒸発させ、その後水に溶解し、凍結乾燥して、化合物19Dを得た。
1H NMR (D2O, 400 MHz, δ(ppm)):4.50 (dd, 1H, H5, J4-5=9.8, J5-6=9.6 Hz); 4.17(bs, 1H, H2); 3.91 (dd, 1H, H1, J1-6=9.6 Hz); 3.78 (dd, 1H, H6); 3.67 (dd, 1H, H4, J3-4=10.0 Hz); 3.57 (dd, 1H, H3, J2-3=2.1 Hz); 3.20-3.05 (m, 2H, 2*H of CH2-N); 2.91 (t, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.4 Hz); 1.59 (q, 2H, 2* CH2-NのH, J=7.7 Hz); 1.47(q, 2H, 2* CH2-NのH, J=6.9 Hz); 1.32 (m, 2H, 2* CH2-NのH)。
31P NMR (D2O, 161.98 MHz, δ(ppm)):3.75。
MS-ESI (-):m/z387 [M-H]-
【0228】
実施例20:4-0-(5-ビオチンアミドペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸誘導体(化合物43D)の合成
HEPES緩衝液(pH8)400μl中の4-O-(5-アミノペンチルカルバモイル)-1-リン酸D-myo-イノシトール(実施例19で調製された化合物18D)の1mg(2.58μmol)溶液へ、DMF 50μl中のビオチン-NHSエステル(Aldrich) 1.75mg(5.16μmol)を添加した。沈殿を形成し、これは、アセトニトリル450μlの添加後、再溶解し、この混合物を室温で30分間攪拌し続けた。出発材料ピークの消失後、保持時間29.2分を有する新規化合物の出現が、HPLCにより認められた[Chromolith Merck, 1.5ml/分、A:0.1%TFA含有する水、B:アセトニトリル、勾配5分間Bの0〜0%、15分間Bの2%、30分間Bの15%、40分間Bの30%、190nmで検出]。この化合物を、RP-HPLCにより精製し、蒸発し、真空下で乾燥し、化合物43D 1.2mg(63%)を得た。
【0229】
実施例21:5-0-(5-ビオチンアミドペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸誘導体(化合物44D)の合成
5-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-1-リン酸D-myo-イノシトール(実施例19で調製した化合物19D)の溶液を、ビオチン-NHSエステルで処理し、その後この反応混合物を、実施例20に説明したようなRP-HPLCにより精製し、化合物44Dを得た。
【0230】
実施例22:BSAと4-O-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸の間の結合による免疫原の調製
実施例14のプロトコールに従い、BSA(ウシ血清アルブミン)と実施例19に従い調製された4-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸アナログ18D(PBS中1mg/ml溶液)の間の複合体を調製した。その後この複合体をアリコートとし、-20℃で貯蔵した。
【0231】
実施例23:BSAと5-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸の間の結合による免疫原の調製
実施例14のプロトコールに従い、BSA(ウシ血清アルブミン)と実施例19に従い調製された5-0-(5-アミノペンチルカルバモイル)-D-myo-イノシトール-1-リン酸アナログ19D(PBS中1mg/ml溶液)の間の複合体を調製した。その後この複合体をアリコートとし、-20℃で貯蔵した。
【0232】
実施例24:アセチルコリン(M1受容体のアゴニスト)によるM1受容体を発現しているCHO細胞の刺激後のIP1アッセイ
10%FCS、ペニシリン-ストレプトマイシン及び非必須アミノ酸を補充したF12培地200μl中の80000個のムスカリン様受容体M1を発現しているCHO細胞を、96-ウェルの不透明な培養プレートに分配し、5%CO2下で37℃で一晩インキュベーションした。培養培地を除去し、KREBS緩衝液(10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 4.2mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1mM CaCl2, 1g/lグルコース, 30mM LiCl)中に希釈したアセチルコリン溶液(アゴニストLM1, 1nM〜100μM)50μlを分配した。一方で、バックグラウンドノイズに相当する負のシグナルを決定し(3ウェル)、他方で、本アッセイに関する「基礎」シグナル、すなわち刺激の非存在下でのTR-FRETシグナルも決定する(3ウェル)ために、6個のウェルにも同じように、アセチルコリンを緩衝液と交換して分配した。インキュベーションは、5%CO2下で37℃で30分間行った。次に予めユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体の4nM溶液体25μl(アッセイにおいて最終的に1nM)を分配し、引き続きフルオロフォアd2で標識されたIP1(以後IP1-d2)の12nM溶液25μlを分配し、これはアッセイにおいて最終的には3nMとした。これらの2種の試薬は、0.2%BSA、0.8M KF及び1%トリトンX100を含有する50mM HEPES緩衝液(pH7)に希釈した。負シグナルを決定するために使用したウェルにおいては、IP1-d2を緩衝液と交換した。インキュベーションを、室温で1時間行い、Rubystar(登録商標)装置(BMG Labtech)において、時間分解蛍光測定(td=50μs, tg=400μs)を、620nm及び665nm(各々E620及びE665)で行った。E620及びE665蛍光強度値から、E665/E620強度比を計算し、便宜上これを10000倍した。ΔF値は、バックグラウンドノイズに相当する、IP1-d2を伴わないウェル(基礎シグナル、G. Mathis, Clin. Chem. 39 (1993) 1953、及び国際公開公報第92/13264号参照)において測定された比に対して計算した。受容体刺激の関数として得られた阻害率は、ΔF値から計算し、薬物非含有の「基礎シグナル」ウェルで測定されたΔFは0%阻害と等しい。
【0233】
アセチルコリンの非存在下で、ユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体とIP1-d2の間のエネルギー転移から生じる測定されたシグナルは高い。M1受容体がアセチルコリンにより刺激されると、IP1がその細胞において生成され、このシグナルは、アセチルコリン濃度の関数として減少するであろう(図13A)。
この結果は、漸増濃度のアセチルコリンの添加により誘導される、基礎シグナル(アセチルコリン非存在下で測定された)の阻害率の計算により示すこともできる(図13B)。
【0234】
実施例25:アトロピン(M1受容体のアンタゴニスト)の存在下でのアセチルコリンによるM1受容体を発現しているCHO細胞の刺激後のIP1アッセイ
10%FCS、ペニシリン-ストレプトマイシン及び非必須アミノ酸を補充したF12培地200μl中の80000個のムスカリン様受容体M1を発現しているCHO細胞を、96-ウェルの不透明な培養プレートに分配し、5%CO2下で37℃で一晩インキュベーションした。培養培地を除去し、KREBS緩衝液(10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 4.2mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1mM CaCl2, 1g/lグルコース, 30mM LiCl)中に希釈したアトロピン溶液(0.125nM〜12.5μM)40μlを分配し、5%CO2下で37℃で15分間インキュベーションした。次に、同じKREBS緩衝液中の3μMアセチルコリン溶液10μlを分配した。一方で、バックグラウンドノイズに相当する負のシグナルを決定し(3ウェル)、他方で、本アッセイに関する「基礎」シグナル、すなわち刺激の非存在下でのTR-FRETシグナルも決定する(3ウェル)ために、6個のウェルにも同じようにアトロピン及びアセチルコリンを緩衝液と交換して分配した。インキュベーションは、5%CO2下で37℃で30分間行った。次に予めユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体を4nM含有する溶液25μl(アッセイにおいて最終的に1nM)を分配し、引き続きIP1-d2の12nMを含有する溶液25μlを分配した(アッセイにおいて最終的に3nMとするため)。これらの2種の試薬は、0.2%BSA、0.8M KF及び1%トリトンX100を含有する50mM HEPES緩衝液(pH7)に希釈した。負シグナルを決定するために使用したウェルにおいては、IP1-d2を緩衝液と交換した。インキュベーションを、室温で1時間行い、Rubystar(登録商標)装置(BMG Labtech)において、時間分解蛍光測定(td=50μs, tg=400μs)を、620nm及び665nm(各々E620及びE665)で行った。E620及びE665蛍光強度値から、E665/E620強度比を計算し、便宜上これを10000倍した。ΔF値は、IP1-d2を伴わないウェル(負シグナル、G. Mathis, Clin. Chem. 39 (1993) 1953、及び国際公開公報第92/13264号参照)において測定された比に対して計算した。受容体刺激の関数として得られた阻害率は、ΔF値から計算し、薬物非含有の基礎点のΔFは0%阻害と等しい。漸増濃度のM1アンタゴニスト(アトロピン)の存在は、M1アゴニスト(アセチルコリン)による活性化を阻害するであろう。従ってこの細胞は、より少ないIP1を生じ、及びユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体とIP1-d2の間のエネルギー転移により生じるシグナルも増大するであろう(図14A)。
【0235】
この結果は、漸増濃度のアトロピンの存在下での、アセチルコリンによるシグナルの阻害の変動の計算によっても表される(図14B)。
【0236】
実施例26:mGlu1受容体を一過性に発現するHEK-293細胞におけるIP1アッセイ、陽性アロステリックモジュレーター(PAM)の作用
10%FCS、ペニシリン-ストレプトマイシン及び非必須アミノ酸を補充したDMEM培地100μlにおいて、mGluR1受容体を発現するために、電気穿孔により予め形質移入されたHEK-293細胞100000個を、96-ウェルの不透明な培養プレートに分配した。水蒸気で飽和した5%CO2下で37℃で3時間インキュベーションし、その後培地をグルタマックス(グルタミン酸塩へ分解しないグルタミン)を含み血清を含まないDMEM 100μlと交換した。インキュベーションを、5%CO2を含み水蒸気で飽和されたインキュベーターにおいて37℃で一晩行った。培養培地を吸引除去し、KREBS緩衝液(10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 4.2mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1mM CaCl2, 1g/lグルコース, 50mM LiCl、1%DMSO)中に希釈した陽性アロステリックモジュレーター(PAM) Ro 01-6128 (100nM〜3mM)30μlを分配した。一方で、バックグラウンドノイズに相当する負のシグナルを決定し(3ウェル)、他方で、本アッセイに関する「基礎」シグナル、すなわち刺激の非存在下でのTR-FRETシグナルも決定する(3ウェル)ために、6個のウェルにも同じように、PAMを緩衝液と交換して分配した。インキュベーションは、5%CO2下で37℃で30分間行った。予めユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体4nMを含有する溶液15μl(アッセイにおいて最終的に1nMとする)を分配し、引き続きフルオロフォアd2で標識されたIP1(以後IP1-d2)の12nMを含有する溶液15μlを分配し、アッセイにおいて最終的に3nMとした。これらの2種の試薬は、0.2%BSA、0.8M KF及び1%トリトンX100を含有する50mM HEPES緩衝液(pH7)に希釈した。負シグナルを決定するために使用したウェルにおいては、IP1-d2を緩衝液と交換した。インキュベーションは、4℃で2時間行い、Rubystar(登録商標)装置(BMG Labtech)において、時間分解蛍光測定(td=50μs, tg=400μs)を、620nm及び665nm(各々E620及びE665)で行った。E620及びE665蛍光強度値から、E665/E620強度比を計算し、便宜上これを10000倍した。
【0237】
ΔF値は、IP1-d2を含まないウェル(負シグナル、G. Mathis, Clin. Chem. 39 (1993) 1953、及び国際公開公報第92/13264号参照)において測定された比により計算した。受容体刺激の関数として得られた阻害率は、ΔF値から計算し、薬物非含有の「基礎シグナル」ウェルにおいて測定されたΔFは、0%阻害と等しい。
【0238】
PAMの非存在下で、ユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体とIP1-d2の間のエネルギー転移から生じる測定されたシグナルは高い。mGlul受容体がPAMで活性化される時、IP1がその細胞において生成され、このシグナルは、PAM濃度の関数として減少するであろう。このシグナルは、強度比E665/E620、又はΔFのいずれかであることができる。
【0239】
この結果は、漸増濃度のPAMの添加により誘導された基礎シグナル(PAM非存在下で測定される)の阻害率の計算によっても表される。
【0240】
図15A及び15Bは、強度比又はΔFのいずれかとして表されたPAM濃度の関数としての、シグナル変調を示している。
【0241】
実施例27:mGlu5受容体を発現する(一過性形質移入)HEK-293細胞におけるIP1アッセイ、mGluR5への逆アゴニストの作用
10%FCS、ペニシリン-ストレプトマイシン及び非必須アミノ酸を補充したDMEM培地100μlにおいて、mGluR1受容体を発現するために、電気穿孔により予め形質移入されたHEK-293細胞100000個を、96-ウェルの不透明な培養プレートに分配した。
【0242】
水蒸気で飽和された5%CO2下で37℃で3時間インキュベーションし、その後培地をグルタマックス(グルタミン酸塩へ分解しないグルタミン)を含み血清を含まないDMEM 100μlと交換した。
【0243】
インキュベーションを、5%CO2を含み水蒸気で飽和されたインキュベーターにおいて37℃で一晩行った。培養培地を吸引除去し、KREBS緩衝液(10mM HEPES(pH7.4), 150mM NaCl, 4.2mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1mM CaCl2, 1g/lグルコース, 50mM LiCl、1%DMSO)中に希釈した逆アゴニストである2-メチル-6-(フェニルエチニル)ピリジン(MPEP)30μl(5nM〜100μM)を分配した。一方で、バックグラウンドノイズに相当する負のシグナルを決定し(3ウェル)、他方で、本アッセイに関する「基礎」シグナル、すなわち刺激の非存在下でのTR-FRETシグナルも決定する(3ウェル)ために、6個のウェルにも同じように、MPEPを緩衝液と交換して分配した。
【0244】
インキュベーションは、5%CO2下で37℃で30分間行った。ユーロピウムクリプテートで予め標識された抗-IP1抗体4nMを含有する溶液15μlを分配し(アッセイの最終を1nMとするため)、その後フルオロフォアd2で標識されたIP1(以後IP1-d2)の12nMを含有する溶液15μlを分配し、アッセイにおいて最終的に3nMとした。これらの2種の試薬は、0.2%BSA、0.8M KF及び1%トリトンX100を含有する50mM HEPES緩衝液(pH7)に希釈した。負シグナルを決定するために使用したウェルにおいては、IP1-d2を緩衝液と交換した。インキュベーションは、4℃で1時間行い、Rubystar(登録商標)装置(BMG Labtech)において、時間分解蛍光測定(td=50μs, tg=400μs)を、620nm及び665nm(各々E620及びE665)で行った。E620及びE665蛍光強度値から、E665/E620強度比を計算し、便宜上これを10000倍した。
【0245】
ΔF値は、IP1-d2を含まないウェル(負シグナル、G. Mathis, Clin. Chem. 39 (1993) 1953、及び国際公開公報第92/13264号参照)において測定された比により計算した。受容体刺激の関数として得られた阻害率は、ΔF値から計算し、薬物非含有の「基礎シグナル」ウェルにおいて測定されたΔFは、0%阻害と等しい。
【0246】
逆アゴニストが存在しない場合は、ユーロピウムクリプテートで標識された抗-IP1抗体とIP1-d2の間のエネルギー転移から生じる測定されたシグナルは、比較的低く、その理由は、mGluR5受容体は、TR-FRETシグナルを阻害する細胞内IP1の中等度の生成を誘導する構成的活性を有するからである。mGluR5受容体の構成的活性がMPEP添加によりブロックされる場合、これは細胞内IP1生成の減少につながるであろう。結果的に、アッセイのシグナルは、逆アゴニストの濃度の関数として増加するであろう。このシグナルは、強度比E665/E620、又はΔFのいずれかであることができる。
【0247】
この結果は、漸増濃度のMPEPの添加により誘導された基礎シグナル(PAM非存在下で測定される)の阻害率の計算によっても表現される。
【0248】
図16A及び16Bは、強度比又はΔFのいずれかとして表されたMPEP濃度の関数としての、シグナル変調を与える。
【図面の簡単な説明】
【0249】
(原文に記載無し)
【図1−1】

【図1−2】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6−1】

【図6−2】

【図6−3】

【図7】

【図7−2】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つもしくは2つの反応基G又は1つもしくは2つの複合した物質もしくは分子Mで置換されることを特徴とし、該反応基(複数)G又は該物質(複数)もしくは分子(複数)Mが、結合基LによりIP1へ結合され、Mは、トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体からなる群より選択される、IP1の官能性アナログ。
【請求項2】
式(I)の、請求項1記載の化合物:
【化1】

(式中、
置換基R1、R2、R3、R4、R5、R6は、-OH、-OP032-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、但し置換基R1からR6の1つは、基-OP032-、-OPO(OH)2、又は-OPO(OH)O-であり、且つ他の置換基R1からR6の1つ又は2つは、基-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mの1つであり、その他のR1からR6の置換基は、基-OHであり;
ここで:
Lは結合基であり、
Gは反応基であり、
Mは、以下の群から選択される複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体、
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項3】
式(II)の、請求項2記載の化合物:
【化2】

(式中:
置換基R1、R3、R4又はR5の1つは、基-OP032-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され、
他の置換基R1-R6の1つ又は2つは、基-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、
その他の置換基は、OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体、
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項4】
式(III)の、請求項2記載の組成物:
【化3】

(式中:
置換基R1、R4、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され、
R3は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され、
その他の置換基R1、R4及びR5は、基OH、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mであり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり、
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項5】
式(IV)の、請求項2記載の化合物:
【化4】

(式中:
置換基R1、R3、R4の1つは、-OP032-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R5は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3及びR4は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項6】
式(V)の、請求項2記載の組成物:
【化5】

(式中:
置換基R1、R3、R4、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R2は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3、R4、及びR5は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項7】
式(VI)の、請求項2記載の化合物:
【化6】

(式中:
置換基R1、R3、R5の1つは、-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択され;
R4は、-(OCONH)q-L-G又は-(OCONH)q-L-Mから選択され;
その他の置換基R1、R3、及びR5は、OH基、-(OCONH)q-L-G基又は-(OCONH)q-L-M基であり、それらの少なくとも1つは、-OH基であり;
ここで:
Lは、結合基であり;
Gは、反応基であり;
Mは、以下の群から選択された複合した物質又は分子であり:トレーサー、免疫原、結合パートナーのペアの一員、固相支持体;
qは、0又は1に等しい。)。
【請求項8】
基R1が、基-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択されることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
基R4が、基-OPO32-、-OPO(OH)2又は-OPO(OH)O-から選択されることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
結合基Lが、単結合、又は炭素、窒素、リン、酸素及びイオウの原子から選択された水素と異なる1〜20個の原子を含むスペーサーアームであり、この結合基は、線状又は分枝した、環式又はヘテロ環式の、飽和又は不飽和であり、且つ一重、二重、三重又は芳香族であることができる炭素-炭素結合;炭素-窒素結合;窒素-窒素結合;炭素-酸素結合;炭素-イオウ結合;リン-酸素結合;リン-窒素結合;エーテル結合;エステル結合;チオエーテル結合;アミン結合;アミド結合;カルボキシアミド結合;スルホンアミド結合;尿素結合;ウレタン結合;ヒドラジン結合;カルバモイル結合から選択される結合の組合せからなることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
結合基Lが、炭素、窒素、リン、酸素及びイオウの原子から選択された水素と異なる1〜20個の原子を含み、追加的にエーテル結合、チオエーテル結合、カルボキシアミド結合、スルホンアミド結合、ヒドラジン結合、アミン結合及びエステル結合、並びに芳香族又はヘテロ芳香族結合から選択される少なくとも1つの結合を含むことを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項12】
結合基Lが、ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキル、又はアリールチオの置換鎖又は非置換鎖から選択されることを特徴とする、請求項10記載の化合物。
【請求項13】
反応基Gが、下記化合物に由来した基から選択されることを特徴とする、請求項1〜9記載の化合物:アクリルアミド、活性化アミン(例えばカダベリン又はエチレンジアミン)、活性化エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、酸無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、例えばモノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、又はチオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド、グリオキサール、及び特に以下の式の基:
【化7】

(式中、nは0〜8で変動し、pは0又は1と等しく、且つArは、任意にハロゲン原子により置換された、1〜3つのヘテロ原子を含む、5又は6員のヘテロ環である。)。
【請求項14】
Lが、C3-C10アルキレニルであり、Gがアミン基であることを特徴とする、請求項1〜9記載の化合物。
【請求項15】
以下の式の、請求項1記載の化合物:
【化8】

【請求項16】
複合した物質又は分子Mがトレーサーであることを特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
複合した物質又は分子Mが、放射性同位体、放射標識された分子、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収性発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にする任意の他の分子もしくは物質から選択されたトレーサーであり、但しMが放射性元素であり且つLが単結合である場合、Mはトリチウムではないことを特徴とする、請求項16記載の化合物。
【請求項18】
複合した物質又は分子Mが、125I、32P、35Sから選択された放射性同位体であるか、又は32Pで標識されたリン酸基を除き、125I、32P、35S又は3Hの同位体の1つで標識された分子であることを特徴とする、請求項17記載の化合物。
【請求項19】
複合した物質又は分子Mは、ローダミン、シアニン、スクアライン、BODIPY、フルオレセイン、AlexaFluorファミリーの化合物、希土類キレート、希土類クリプテート、量子ドット、フィコビリタンパク質、例えばB-フィコエリスリン、R-フィコエリスリン、C-フィコシアニン、アロフィコシアニン、GFP及びその誘導体、サンゴ蛍光タンパク質、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼから選択された、酵素又は蛍光化合物であることを特徴とする、請求項17記載の化合物。
【請求項20】
複合した物質又は分子Mが、アビジン又はストレプトアビジン/ビオチン、ハプテン/抗体、例えば6HIS/抗-6HIS抗体、FLAG/抗-FLAG抗体、ハプテン/抗体、DNP/抗-DNP抗体、GST/抗-GST抗体、Cmyc/抗Cmyc抗体、HA/抗-HA抗体、1本鎖オリゴヌクレオチド/相補的1本鎖オリゴヌクレオチドの対から選択された結合パートナーの対の一員であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
複合した物質又は分子Mが、免疫原性化合物であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の化合物。
【請求項22】
複合した物質又は分子Mが、ウシ血清アルブミン(BSA)、陽イオン性BSA(cBSA)、KLH(キーホールリムペットヘモシアニン)、チログロブリン、オボアルブミン、リポソーム、L-リシン又はL-グルタミン酸のポリマー、フィコール、デキストラン、又はポリエチレングリコールから選択された免疫原性化合物であることを特徴とする、請求項21記載の化合物。
【請求項23】
複合した物質又は分子Mが、固相支持体であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
複合した物質又は分子Mが、磁性又は非磁性マイクロビーズ、マイクロプレートウェル、チューブ、固相、蛍光ミクロスフェアから選択される固相支持体であることを特徴とする、請求項23記載の化合物。
【請求項25】
以下の式の化合物:
【化9】

(式中、
R1は、基-OPO(OR7)2であり;
R7、R8、R9、R10は、同一であるか又は異なり、且つ酸感受性保護基ではない。)。
【請求項26】
以下の式の化合物:
【化10】

(式中、
R1は、基-OPO(OR7)2であり;
R7、R8、R9、R10は、同一であるか又は異なり、且つ酸感受性保護基ではない。)。
【請求項27】
R8、R9、R10は、エステル残基、例えばピバロイル、ベンゾイル、クロロアセチル、フェニルアセチル、ベンジルオキシカルボニル、シリルエーテル残基、例えばトリメチルシリルオキシ、トリエチルシリルオキシ、tert-ブチルジメチルシリルオキシ、tert-ブチルジフェニルシリルオキシ、ベンジルオキシ、p-メトキシベンジルオキシ、3,4-ジメトキシベンジルオキシ、アリルオキシ、アリルオキシカルボキシの基から選択された保護基であり、且つR7は、ベンジル基であるか、あるいは2つの基R7は、一緒にo-キシリレン基を形成することを特徴とする、請求項25及び26のいずれか1項記載の化合物。
【請求項28】
請求項17及び18のいずれか1項記載の化合物による哺乳動物の免疫処置により得られる、抗-IP1ポリクローナル又はモノクローナル抗体。
【請求項29】
IP1に対する結合が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2のイノシトール誘導体の存在下で置き換えられないことを特徴とする、請求項28記載の抗-IP1ポリクローナル又はモノクローナル抗体。
【請求項30】
IP1に対する結合が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2のイノシトール誘導体の各々の50μMの存在下で置き換えられないことを特徴とする、請求項28記載の抗-IP1ポリクローナル又はモノクローナル抗体。
【請求項31】
IP1に対する選択性が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2の化合物の各々に対する選択性よりも、少なくとも10倍高いことを特徴とする、請求項28記載の抗体。
【請求項32】
IP1に対する選択性が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2の化合物の各々に対する選択性よりも、少なくとも100倍高いことを特徴とする、請求項28記載の抗体。
【請求項33】
請求項1〜9記載のIP1アナログ、及び
IP1に特異的なリガンドを含み、
これらの構成要素の少なくとも1種が、トレーサーにより直接又は間接的に標識されている、IP1をアッセイするキット。
【請求項34】
イノシトールサイクルの特定の酵素をブロックする物質、特に塩化リチウムを、追加的に含むことを特徴とする、請求項33記載のキット。
【請求項35】
IP1に特異的なリガンドが、IP1に特異的なモノクローナル又はポリクローナル抗体であることを特徴とする、請求項33記載のキット。
【請求項36】
トレーサーが、放射性元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にする任意の他の分子もしくは物質から選択されることを特徴とする、請求項33記載のIP1をアッセイするキット。
【請求項37】
ドナー化合物、及びドナー化合物との近接転移から生じたシグナルを放出するアクセプター化合物を含み、ドナー化合物は、IP1アナログと直接又は間接的に結合され、且つアクセプター化合物は、IP1に特異的なリガンドと直接又は間接的に結合されていることを特徴とする、請求項33記載のキット。
【請求項38】
ドナー化合物、及びドナー化合物との近接転移から生じたシグナルを放出するアクセプター化合物を含み、アクセプター化合物は、IP1アナログと直接又は間接的に結合され、且つドナー化合物は、IP1に特異的なリガンドと直接又は間接的に結合されていることを特徴とする、請求項33記載のキット。
【請求項39】
ドナー化合物及びアクセプター化合物が、蛍光化合物であること、近接転移がエネルギー転移であること、及び放出されたシグナルが、蛍光シグナルであることを特徴とする、請求項33及び34のいずれか1項記載のキット。
【請求項40】
試料を、IP1に特異的なリガンドと接触させる工程;
該リガンドと試料中に存在するIP1の間に形成された複合体を検出する工程;を含むことを特徴とする、試料中に含まれたIP1を検出する方法。
【請求項41】
IP1に特異的なリガンドが、トレーサーにより直接又は間接的に標識されていることを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項42】
試料へ、滴定されたIP1又はトレーサーで直接もしくは間接的に標識されたIP1の既知量を導入する工程を追加的に含む、請求項40記載の方法。
【請求項43】
トレーサーが、放射性元素、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、蛍光発色団、光-吸収発色団、又は直接もしくは間接的な定量測定を可能にする任意の他の分子もしくは物質から選択されることを特徴とする、請求項41及び42のいずれか1項記載の方法。
【請求項44】
IP1に特異的なリガンドが、ドナー化合物と直接又は間接的に複合され、試料がアクセプター化合物と直接又は間接的に複合したIP1と接触され、アクセプター化合物により放出されたシグナルが測定され、このシグナルは、ドナーとアクセプター間の近接転移から生じ、試料中に存在するIP1量に反比例することを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項45】
IP1に特異的なリガンドが、アクセプター化合物と直接又は間接的に複合され、試料が、ドナー化合物により直接又は間接的に複合したIP1と接触され、アクセプター化合物により放出されたシグナルが測定され、このシグナルは、ドナーとアクセプター間の近接転移から生じ、試料中に存在するIP1量に反比例することを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項46】
ドナー化合物及びアクセプター化合物が、蛍光化合物であること、近接転移がエネルギー転移であること、及び放出されたシグナルが、蛍光シグナルであることを特徴とする、請求項40〜45のいずれか1項記載の方法。
【請求項47】
ドナー蛍光化合物が、希土類クリプテート又はキレートであり、且つ蛍光アクセプター化合物が、シアニン、ローダミン、スクアライン、BODIPY、フルオレセイン、AlexaFluors、量子ドット、フィコビリタンパク質、例えばB-フィコエリスリン、R-フィコエリスリン、C-フィコシアニン、アロフィコシアニン、GFP及びその誘導体、サンゴ蛍光タンパク質から選択され得ることを特徴とする、請求項46記載の方法。
【請求項48】
IP1に特異的なリガンドが、モノクローナル又はポリクローナル抗体、抗体断片、タンパク質、ペプチド又はアプタマーであることを特徴とする、請求項40〜47のいずれか1項記載のIP1の検出法。
【請求項49】
IP1に特異的なリガンドが、IP1に対する選択性が、イノシトール、IP2、IP3、IP4、PIP2、PIP3の化合物の各々に対する選択性よりも少なくとも10倍高い、好ましくは100倍高いポリクローナル又はモノクローナル抗体であることを特徴とする、請求項47記載の方法。
【請求項50】
試料を、固相支持体に付着したIP1に特異的な抗体及びIP1アナログと接触させ、追加的に:
固相支持体を洗浄する工程;
抗-IP1抗体を認識する抗-種抗体を添加する工程であって、該抗種抗体が、トレーサーにより標識されている工程;
抗-種抗体を検出する工程
を含み、抗-種抗体の量は、試料中に存在する抗-IP1抗体/IP1複合体の量に反比例することを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項51】
試料を、固相支持体に付着したIP1に特異的な抗体、及びトレーサーで標識されたIP1アナログと接触させ、追加的に:
−試料を、固相支持体に付着した抗-IP1抗体、及びトレーサーで標識されたIP1アナログと接触される工程を含み、追加的に:
−固相支持体を洗浄する工程;
−標識されたIP1を検出する工程、
を含み;標識されたIP1の量は、試料中に存在する抗-IP1抗体/IP1複合体の量に反比例することを特徴とする、請求項40記載の方法。
【請求項52】
(i)被験化合物を、その活性化がIP1生成を引き起こす受容体を発現している細胞を含有する培養培地へ添加する工程;
(ii)請求項40〜49のいずれか1項記載の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iii)この化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1の量の増加は、被験化合物を、該受容体のアゴニストとして同定することを可能にする、その活性化が細胞内でのIP1生成を引き起こす膜受容体のアゴニストである化合物をスクリーニングする方法。
【請求項53】
工程(ii)が、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1量の決定は、2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iii)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの減少はこの化合物を該受容体のアゴニストとして同定することを可能にすることを特徴とする、請求項52記載の方法。
【請求項54】
(i)被験化合物を、その活性化がIP1生成を引き起こす受容体を発現している細胞を含有する培養培地へ添加する工程;
(ii)該受容体の公知のアゴニストを添加する工程;
(iii)請求項41〜50のいずれか1項記載の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iv)被験化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1の量の減少は、被験化合物を、該受容体のアンタゴニストとして同定することを可能にする、その活性化が細胞内でのIP1生成を引き起こす膜受容体のアゴニストである化合物をスクリーニングする方法。
【請求項55】
工程(iii)が、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1量の決定は、2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iv)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの増加はこの化合物を該受容体のアンタゴニストとして同定することを可能にすることを特徴とする、請求項54記載の方法。
【請求項56】
(i)被験化合物を、構成的に活性な受容体を発現し、その活性がIP1の生成を引き起こす細胞を含有する培養培地へ添加する工程;
(ii)請求項41〜50のいずれか1項記載の方法を使用し、IP1の量を決定する工程;
(iii)被験化合物の存在及び非存在下で決定されたIP1の量を比較する工程、
を含み、IP1量の減少は、被験化合物を、該受容体の逆アゴニストとして同定することを可能にする、構成的に活性な膜受容体の逆アゴニストである化合物をスクリーニングする方法。
【請求項57】
工程(ii)が、培地への、ドナー又はアクセプター蛍光化合物で標識された抗-IP1抗体の添加、及びアクセプター又は各ドナーの蛍光化合物で標識されたIP1の添加を含み、IP1量の決定は、2つの蛍光化合物の間のエネルギー転移から生じる光シグナルの測定からなり、工程(iii)は、被験化合物の存在及び非存在下で測定されたシグナルの比較を含み、被験化合物の存在下で測定されたシグナルの増加はこの化合物を該受容体の逆アゴニストとして同定することを可能にすることを特徴とする、請求項56記載の方法。

【公表番号】特表2008−521867(P2008−521867A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543894(P2007−543894)
【出願日】平成17年12月2日(2005.12.2)
【国際出願番号】PCT/FR2005/051032
【国際公開番号】WO2006/059052
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(507179726)シ ビオ アンテルナショナル (9)
【Fターム(参考)】