説明

イミドオリゴマー及びこれを加熱硬化させてなるポリイミド樹脂

【課題】優れた熱成形性、及び加熱硬化後のポリイミド樹脂として優れた耐熱性を有するとともに、容易且つ安価に得ることのできるイミドオリゴマーを提供する。
【解決手段】非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有し、下記一般式(1)により表されることを特徴とするイミドオリゴマー。


(上記式(1)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−等であり、Xは軸対称性酸二無水化物残基、Yは軸対称性ジアミン残基、Zは架橋性反応基、nは1〜10である)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性のイミドオリゴマー、特に成形性に優れ、且つ加熱硬化することで耐熱性に優れたポリイミド樹脂を得ることのできるイミドオリゴマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は耐熱性に優れており、非常に高い熱分解温度を示すことから、ロケットや人工衛星分野のカーボンファイバー強化構造材マトリックスとして用いられている(例えば、非特許文献1参照)。また、近年、Siウエハーを利用するLSIの分野では、情報の高密度化高速化に伴いSi−Cを用いた電子部品が盛んに研究されており、Si−Cを用いたLSI等では400℃を超える温度での動作が想定されているものの、耐熱性に優れているといわれる従来のポリイミド樹脂を用いたとしても対応することができない。そこで、ポリイミド樹脂に限らず、様々な耐熱性高分子フィルムの使用も検討されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0003】
一方で、ポリイミド樹脂は高耐熱性であるが故、結晶構造が強固であり、溶解・溶融特性に欠け、成形が困難であるという問題がある。このような問題に対して、近年、熱硬化性を有するイミドオリゴマーの研究開発が進められている。すなわち、4−フェニルエチニルフタル酸無水化物等の架橋反応性官能基をイミドオリゴマーの末端に付加することで、イミドオリゴマーを成形した後に、加熱によりオリゴマー鎖間の架橋反応を進行して樹脂を硬化し、高耐熱性を有するポリイミド樹脂成形体を得ようとするものである。
【0004】
さらに、このようなイミドオリゴマーの溶解・溶融特性、あるいは得られるポリイミド樹脂の物性を改善する目的で、例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水化物のような非軸対称性のビフェニル酸二無水化物を導入したイミドオリゴマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。なお、通常のポリイミド構造は直線性が高く分子間相互作用が非常に大きいのに対して、このような非軸対称性分子を導入することによってポリイミド鎖が螺旋性を示すため、分子間相互作用が小さくなり、熱溶融性や着色性が改善されることが明らかとなっている(例えば、非特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2000−219741号公報
【非特許文献1】柿本雅明監修,「最新ポリイミド材料と応用技術」,シーエムシー出版
【非特許文献2】「SiCパワーエレクトロニクス実用化・導入普及戦略に係る調査研究」,財団法人新機能素子研究開発協会,平成17年3月
【非特許文献3】Masatoshi Hasegawaら,Macromolecules,1999,32,p382
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において用いられているような非軸対称性の酸二無水化物は、合成が難しく比較的高価であることから、このようにして得られた高耐熱性・易熱成形性のイミドオリゴマーを様々な分野へと応用することは、事実上困難であった。
すなわち、本発明は、優れた熱成形性、及び加熱硬化後のポリイミド樹脂として優れた耐熱性を有するとともに、容易且つ安価に得ることのできるイミドオリゴマーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、前記従来技術の課題に鑑み鋭意検討を行った結果、2つのジカルボン酸無水化物基が同一軸上に導入されていない非軸対称性の芳香族テトラカルボン酸二無水化物(例えば、2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物)の1分子を、イミドオリゴマー鎖中の中心部のみに配置することで、得られたイミドオリゴマーが螺旋性を有するため、熱成形性に優れていることを見出し、さらにこのイミドオリゴマーを加熱硬化して得られたポリイミド樹脂が、優れた耐熱性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明にかかるイミドオリゴマーは、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有し、下記一般式(1)により表されることを特徴とするものである。
【化1】

(上記式(1)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−であり、Xは軸対称性酸二無水化物残基、Yは軸対称性ジアミン残基、Zは架橋性反応基、nは各イミド繰り返し構造の平均重合度で1〜10である)
【0009】
また、前記イミドオリゴマーにおいて、一般式(1)におけるWが−O−、又は−CH−であることが好適である。
また、前記イミドオリゴマーにおいて、各イミド繰り返し構造の平均重合度nがそれぞれ1〜6であり、且つイミドオリゴマー全体の平均分子量が8000以下であることが好適である。
【0010】
また、前記イミドオリゴマーにおいて、軸対称性酸二無水化物残基Xが、ピロメリット酸二無水化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水化物、4,4’−ビフタリック酸二無水化物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォン酸、4,4’−オキシジフタル酸二無水化物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水化物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水化物、2,2−ビス(4−カルボン酸フェニル)プロパン酸二無水化物から選ばれる少なくとも1種以上の酸二無水化物に由来することが好適である。
【0011】
また、前記イミドオリゴマーにおいて、軸対称性ジアミン残基Yが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル,1、3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン,3,3’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンから選ばれる少なくとも1種以上のジアミンに由来することが好適である。
【0012】
また、前記イミドオリゴマーにおいて、末端の架橋性反応基Zが、4−フェニルエチニルフタル酸無水化物、無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物、2,5−ノルボルナジエン−2,3−ジカルボン酸無水化物、マレイン酸無水物、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリン、ビニルアニリンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物に由来することが好適である。
【0013】
また、本発明にかかるアミック酸オリゴマーは、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有し、下記一般式(2)により表されることを特徴とするものである。
【化2】

(上記式(2)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−であり、Xは軸対称性酸二無水化物残基、Yは軸対称性ジアミン残基、Zは架橋性反応基、nは各イミド繰り返し構造の平均重合度で1〜10である)
【0014】
また、本発明にかかるポリイミド樹脂は、前記イミドオリゴマー又は前記アミック酸オリゴマーを加熱硬化させてなることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明にかかるイミドオリゴマーの製造方法は、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有するイミドオリゴマーの製造方法であって、(A)下記一般式(3)により表される非軸対称性テトラカルボン酸二無水化物と、これに対して大過剰量の軸対称性ジアミンとを反応させて、オリゴマー前駆体を調製する工程と、(B)前記工程で得られたオリゴマー前駆体及び未反応の軸対称性ジアミンと、軸対称性酸二無水化物とを重縮合反応させて、イミドオリゴマー又はアミック酸オリゴマーを調製する工程を備えることを特徴とするものである。
【化3】

(上記式(3)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−である)
【0016】
また、前記イミドオリゴマーの製造方法において、さらに(C)前記工程で得られたイミドオリゴマー又はアミック酸オリゴマーの末端に、架橋性反応基を有する化合物を付加する工程を備えることが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つのジカルボン酸無水化物基が同一軸上に導入されていない非軸対称性の芳香族テトラカルボン酸二無水化物(例えば、2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物)の1分子をイミドオリゴマー鎖の中心部のみに配置することによって、得られたイミドオリゴマーが螺旋性を有し、この結果、熱成形性に優れ、且つ加熱硬化後のポリイミド樹脂として優れた耐熱性を有するイミドオリゴマーを、容易且つ安価に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明にかかるイミドオリゴマーは、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有することを特徴とするものである。
ここで、本発明に用いられる非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物は、下記一般式(3)により表される。
【0019】
【化4】

上記一般式(3)により表される化合物は、直接あるいは特定の官能基を介して結合した2つのベンゼン環上のそれぞれ2,3位と3’,4’位にジカルボン酸無水化物基が結合したものであり、各ジカルボン酸無水化物基の結合位置がWを中心とした軸対称位置をとらない、すなわち、非軸対称性の芳香族テトラカルボン酸二無水化物である。
【0020】
上記一般式(3)中、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−である。
【0021】
上記一般式(3)により表される非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物は、より具体的には、2,3,3’4’−ビフタル酸二無水化物(Wが直接結合)、2,3,3’4’−オキシジフタル酸二無水化物(Wが−O−)、2,3,3’4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−CH−)、2,3,3’4’−ジフェニルエタンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−C−)、2,3,3’4’−イソプロピリデンジフタル酸二無水化物(Wが−C(CH−)、2,3,3’4’−ジフルオロジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−CF−)、2,3,3’4’−テトラフルオロジフェニルエタンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−C−)、2,3,3’4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水化物(Wが−C(CF−)、2,3,3’4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−C(=O)−)、2,3,3’4’−ジフェニルアミンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−NH−)、3,4,2’3’−N−フェニル安息香酸アミドテトラカルボン酸二無水化物(Wが−NH−C(=O)−)、2,3,3’4’−N−フェニル安息香酸アミドテトラカルボン酸二無水化物(Wが−C(=O)−NH−)、2,3,3’4’−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水化物(Wが−S−)、2,3,3’4’−ジフェニルスルフォキシドテトラカルボン酸二無水化物(Wが−S(=O)−)、2,3,3’4’−ジフェニルスルフォンテトラカルボン酸二無水化物(Wが−S(=O)−)となる。これらのうち、2,3,3’4’−オキシジフタル酸二無水化物、又は2,3,3’4’−ジフェニルメタンテトラカルボン酸二無水化物を特に好適に用いることができる。なお、これらの非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0022】
すなわち、本発明にかかるイミドオリゴマーは、上記一般式(3)により表される非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子のそれぞれの末端ジカルボン酸基に、任意の酸二無水化物とジアミンとの重縮合により形成したイミドオリゴマー鎖がそれぞれ等量(等モル)付加した化合物であって、これにより、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有することになる。
【0023】
本発明にかかるイミドオリゴマーは、下記一般式(1)により表される。
【化5】

【0024】
上記一般式(1)において、Wは、上記一般式(3)と同一であり、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−である。
【0025】
上記一般式(1)において、Xは軸対称性酸二無水化物残基である。本発明のイミドオリゴマーに用いる酸二無水化物は、軸対称性であって、ジアミンと縮合反応してポリイミド構造を形成し得るものであればよく、特に限定されるものではない。本発明に用いる酸二無水化物としては、例えば、ピロメリット酸二無水化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水化物、4,4’−ビフタリック酸二無水化物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォン酸、4,4’−オキシジフタル酸二無水化物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水化物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水化物、2,2−ビス(4−カルボン酸フェニル)プロパン酸二無水化物等が挙げられる。これらのうち、特に4,4’−オキシジフタル酸二無水化物、4,4’−ビフタリック酸二無水化物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォン酸、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水化物を好適に用いることができる。
【0026】
上記一般式(1)において、Yは軸対称性ジアミン残基である。本発明のイミドオリゴマーに用いるジアミンは、軸対称性であって、酸二無水化物と縮合反応してポリイミド構造を形成し得るものであればよく、特に限定されるものではない。本発明に用いるジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、3,3’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等が挙げられる。これらのうち、特に4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス(4−アミノフェニル)スルフォン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを好適に用いることができる。
【0027】
上記一般式(1)において、Zは架橋性反応基である。本発明のイミドオリゴマーにおいて、架橋性反応基を有する化合物により末端を修飾することで、熱硬化性が付与される。本発明に用いる架橋性反応基を有する化合物としては、例えば、4−フェニルエチニルフタル酸無水化物、無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物、2,5−ノルボルナジエン−2,3−ジカルボン酸無水化物、マレイン酸無水物、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリン、ビニルアニリン等が挙げられる。これらのうち、特に4−フェニルエチニルフタル酸無水化物、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物を好適に用いることができる。
【0028】
上記一般式(1)において、nは各イミド繰り返し構造の平均重合度で1〜10である。なお、この平均重合度は、イミドオリゴマーの製造に用いる非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物、あるいは軸対称性酸二無水化物及び軸対称性ジアミンの比率を変化させることで適宜調整することが可能である。本発明のイミドオリゴマーにおいて、各イミド繰り返し構造の平均重合度nが10を超えると、熱溶融性に劣り、成形が困難になる場合がある。イミドオリゴマーの成形性の観点から、各イミド繰り返し構造の平均重合度は1〜6であることが好ましく、さらに好ましくは2〜5である。各イミド繰り返し構造の平均重合度が前記範囲内であると、特に成形性に優れたイミドオリゴマーが得られる。
【0029】
本発明にかかるイミドオリゴマーにおいては、上記一般式(1)に示されるように、上記非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位がオリゴマー鎖の中心部のみにしか存在しないにもかかわらず、例えば、図1,2に示すようにオリゴマー鎖は全体として螺旋構造を示している。そして、この結果、本発明にかかるイミドオリゴマーは比較的低い温度で熱溶融するため、熱成形が容易であり、また、370℃程度で加熱硬化した後のポリイミド樹脂の5%熱分解温度は500℃以上、ガラス転移温度は約300℃以上に達し、耐熱性においても非常に優れている。
【0030】
なお、例えば、特許文献1に記載されているような従来の螺旋性のイミドオリゴマーは、熱成形性及び加熱硬化後のポリイミド樹脂の耐熱性に優れてはいるものの、比較的高価な非軸対称性芳香族テトラカルボン酸をオリゴマー鎖全体にわたって有しているため、製造において多大なコストがかかってしまうという問題があった。これに対し、本発明にかかる螺旋性のイミドオリゴマーは、オリゴマー鎖中に非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物を1分子有するだけでよく、高価な非軸対称化合物の使用を大幅に削減できるため、優れた熱成形性及び加熱硬化後のポリイミド樹脂の耐熱性を有するイミドオリゴマーを、容易且つ安価に得ることができる。
【0031】
また、本発明にかかるイミドオリゴマーは、例えば、下記(A)〜(C)の工程によって調製することができる。
(A)まず最初に、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物と、これに対して大過剰量の軸対称性ジアミンとを反応させることによって、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子を中心とした両側鎖に軸対称性ジアミンを縮合したオリゴマー前駆体を調製する。
ここで、軸対称性ジアミンの添加量は、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1モルに対して大過剰量であればよいが、より具体的には、例えば、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物に対して2〜20倍モル程度であればよい。なお、ここで用いる軸対称性ジアミンの残基が、上記一般式(2)中、Yに相当する。また、反応に用いる溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド、N−N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、γ−ブチロラクタム等の非プロトン性溶媒が挙げられる。
【0032】
(B)つづいて、以上で得られたオリゴマー前駆体(未反応の軸対称性ジアミンを含む)に軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物を添加し、重縮合反応を行なうことによって、オリゴマー前駆体の両側にポリアミック酸構造を付加したアミック酸オリゴマーを調製する。
なお、ここで用いる軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物の残基が、上記一般式(2)中、Xに相当する。また、軸対称性芳香族テトラカルボン酸とともに適当量の軸対称性ジアミンをさらに添加してもよい。オリゴマー前駆体に対する軸対称性ジアミン及び軸対称性酸二無水化物の添加割合を変化させることで、一分子当りのイミド繰り返し構造の付加モル数を適宜調整することができる。本発明においては、上記一般式(2)中、nで表される各イミド繰り返し構造の平均重合度が1〜10となるように、上記各成分の添加割合を調整する必要がある。
【0033】
また、上記(B)工程の反応は(A)工程と連続して行うことができるが、以上に例示したような非プロトン性溶媒中で重合反応を行なった場合、通常、分子内にアミド部位とカルボン酸部位とを有するアミック酸オリゴマーとして得られる。このアミック酸オリゴマーは、例えば、低温でイミド化剤を添加するか、あるいは高温で加熱還流することによって、前記アミド部位とカルボン酸部位とを脱水・環化(イミド化)させ、イミドオリゴマーとすることができる。
【0034】
(C)さらに、以上で得られたイミドオリゴマー又はアミック酸オリゴマーの末端に、架橋性反応基を有する化合物を付加する。
この架橋性反応基は加熱によって反応基同士が架橋構造を形成するため、これにより、イミドオリゴマーに熱硬化性を付与することができる。
なお、ここで用いる架橋性反応基含有化合物の残基が、上記一般式(2)中、Zに相当する。ここで、架橋性反応基含有化合物は、酸二無水化物における未反応カルボン酸基、ジアミンにおける未反応アミノ基のいずれかと反応し得るものであればよい。架橋性反応基含有化合物の添加量は、反応可能なカルボン酸基あるいはアミノ酸基の当量に合わせて適宜調整すればよいが、通常の場合、非軸対称性芳香族テトラカルボン酸1モルに対して約2モル程度であればよい。
【0035】
上記(C)工程の反応は(A)〜(B)工程と連続して行なうことができ、通常、(A)〜(C)の全工程をアミック酸オリゴマーの状態で行い、最後にイミドオリゴマーへと変換させる。すなわち、(B)工程により得られたアミック酸オリゴマーの状態で(C)工程による架橋性反応基含有化合物の付加を行い、つづいて、例えば、低温でイミド化剤を添加するか、あるいは高温で加熱還流することによって、アミド部位とカルボン酸部位とを脱水・環化(イミド化)させ、分子末端に架橋性反応基を有するイミドオリゴマーを得る。
【0036】
なお、上記(A)〜(C)工程において、イミド化を行っていないアミック酸オリゴマーについても、本発明の範疇である。このようなアミック酸オリゴマーは、加熱による脱水・環化反応によって、容易にイミドオリゴマーへと変換することができる。例えば、本発明のアミック酸オリゴマー溶液を、150〜245℃程度の高温で加熱還流することによって、本発明のイミドオリゴマーとすることができる。あるいは、例えば、アミック酸オリゴマー溶液を、ガラス板等の剥離性の良好な支持体上へと塗布し、250〜350℃程度に加熱することによってイミド化し、本発明のイミドオリゴマーを得ることもできる。
【0037】
また、上記(A)〜(C)の反応工程においては、いずれもアルゴンあるいは窒素のような不活性ガスの存在下、又は真空中で行うことが好ましい。
【0038】
以下に、本発明にかかるイミドオリゴマーの製造例として、2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物(非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(軸対称性ジアミン)、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物(軸対称性酸二無水化物)、及び4−フェニルエチニルフタル酸無水化物(架橋性反応基含有化合物)を用いた場合の、上記(A)〜(C)工程の反応を図示する。
【0039】
【化6】

【0040】
以上のようにして得られたイミドオリゴマーは、反応後の溶液をそのまま用いることも可能であるが、例えば、反応終了後の溶液を多量の水中に攪拌しながら投入し、ろ過により単離した後、100℃程度で乾燥させることで、粉末状のイミドオリゴマーとして用いるができる。また。このようにして得られたイミドオリゴマー粉末は、必要に応じて適当な溶媒中に溶解した溶液として使用することもできる。
【0041】
また、以上のようにして得られたイミドオリゴマーは、オリゴマー単独で、あるいは炭素繊維等の繊維状補強材に含浸させた状態で加熱硬化することで、耐熱性に優れたポリイミド樹脂とすることができる。加えて、本発明にかかるイミドオリゴマーは、螺旋構造を示すため、成形性に優れていることから、例えば、金型等により容易に成形することが可能であり、あるいは繊維状補強材等への含浸も比較的容易に行うことができる。
【0042】
また、イミドオリゴマーの加熱硬化に際し、加熱温度及び加熱時間については、所望のポリイミド樹脂の物性に合わせて適宜調整することができる。なお、本発明にかかるイミドオリゴマーは、架橋性反応基含有化合物の種類等によっても異なるが、通常、約300〜370℃程度で熱硬化を生じる。より具体的には、例えば、予備的に210〜320℃程度の温度で一定時間加熱することでイミドオリゴマーを熱溶融し、その後、350〜400℃の温度で一定時間加熱して架橋反応を行い、ポリイミド樹脂硬化物を得る。それぞれの加熱工程における加熱温度を高くするか、あるいは加熱時間を長くすることによって、通常、ポリイミド樹脂硬化物の耐熱性が向上する。
【0043】
なお、本発明のイミドオリゴマーを用いたポリイミド樹脂成形体の製造は、公知の方法にしたがって行なえばよい。例えば、本発明のイミドオリゴマーの粉末を金型内に充填し、250〜370℃、0.5〜5MPa程度で、1〜5時間程度加熱圧縮成形して、ポリイミド樹脂成形体を得ることができる。また、例えば、本発明のイミドオリゴマー溶液を炭素繊維等の繊維状補強材に含浸させ、180〜260℃で1〜5時間程度加熱乾燥した後、さらに加圧下、250〜370℃で1〜5時間程度加熱して、ポリイミド樹脂の繊維含有複合体を得ることができる。また、例えば、本発明のイミドオリゴマー溶液を、ガラス板等の剥離性の良好な支持体上へと塗布し、250〜350℃で1〜5時間程度加熱して、ポリイミド樹脂フィルムを得ることができる。
【実施例】
【0044】
実施例1
【化7】

2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物3.333gをアルゴン気流下N,N−ジメチルアセトアミド27mLに溶解させ、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル4.005gを加え約30分間室温下撹拌した。その後、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸4.136gを加え約1時間撹拌し、粘調な溶液を得た。4−フェニルエチニルフタル酸無水化物1.655gを加え、室温下約1時間撹拌後、約12時間溶媒を還流させた。イオン交換水400mLに反応液を投入し、濾過後水洗を数回繰り返し、メタノールで洗浄濾過後、120℃で一晩乾燥させ、黄色い粉末状のイミドオリゴマーを得た。得られたイミドオリゴマー粉末は、レオメーター(TA社製AR−2000)により測定したところ、120℃で溶融可能であった。このイミドオリゴマー粉末をポリイミドフィルムに所要量を取り、ホットプレス上で300℃30分脱泡・加圧を繰り返し、370℃1時間加熱し(昇温速度5℃/分)、黄色い透明な硬化物を得た。窒素気流下、TG−DTA(SII社製EXSTAR TG/DTA6000)による分析の結果、5%熱分解温度が545.5℃(昇温速度10℃/分)、TMA(SII社製EXSTAR TMA/SS6000)によるTgが296.5℃(昇温速度10℃/分)CTEは21ppmであることを確認した。また、厚さ約50μmのフィルムの初期弾性率は2.6Gpa、破断強度118.7MPa、破断伸度13.1%であった。
【0045】
実施例2
【化8】

2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物2.95gをアルゴン気流下N,N−ジメチルアセトアミド17mLに溶解させ、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン2.339gを加え約30分間室温下撹拌した。その後、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸2.947gを加え約1時間撹拌し、粘調な溶液を得た。4−フェニルエチニルフタル酸無水化物0.497gを加え、室温下約1時間撹拌後、約12時間溶媒を還流させた。イオン交換水400mLに反応液を投入し、濾過後水洗を数回繰り返し、メタノールで洗浄濾過後、120℃で一晩乾燥させ、黄色い粉末状のイミドオリゴマーを得た。得られたイミドオリゴマー粉末は、レオメーター(TA社製AR−2000)により測定したところ、80℃で溶融可能であった。このイミドオリゴマー粉末をポリイミドフィルムに所要量を取り、ホットプレス上で300℃30分脱泡・加圧を繰り返し、370℃1時間加熱し(昇温速度5℃/分)、黄色い透明な硬化物を得た。窒素気流下、TG−DTA(SII社製EXSTAR TG/DTA6000)による分析の結果、5%熱分解温度が508.5℃(昇温速度10℃/分)、TMA(SII社製EXSTAR TMA/SS6000)によるTgが375.5℃(昇温速度10℃/分)CTEは28ppmであることを確認した。また、厚さ約50μmのフィルムの初期弾性率は2.6Gpa、破断強度118.7MPa、破断伸度13.1%であった。
【0046】
上記結果から、非軸対称性部位となる2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物の1分子のみがオリゴマー鎖の中心に位置するように設計した実施例1,2のイミドオリゴマーは、80〜120℃程度で溶融を開始することから、熱成形が容易であることがわかった。さらに、これを熱硬化して得られたポリイミド樹脂硬化物の5%熱分解温度(τ)は500℃以上、ガラス転移温度(Tg)は約300℃以上であり、耐熱性にも非常に優れていることが確認された。また、得られたポリイミド樹脂硬化物の機械的特性も良好なものであることがわかった。
【0047】
なお、上記実施例1のイミドオリゴマーの化学構造の模式図を図1に、分子軌道計算に基づく上記実施例1のイミドオリゴマーの立体構造図を図2に示す。同図に示すように、上記イミドオリゴマーにおいては、非軸対称性部位となる2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物がオリゴマー鎖の中心に1分子のみ有していることによって、オリゴマー鎖が全体として螺旋性を示していることがわかる。そして、以上のようにオリゴマー鎖が螺旋性を示す結果、本発明にかかるイミドオリゴマーは、例えば、直線性(結晶性)の高いイミドオリゴマーと比較して、より低い温度で容易に熱成形を行なうことが可能となる。また、加熱硬化後、すなわち、上記イミドオリゴマー末端の反応性基が架橋して形成されたポリイミド樹脂は、上記螺旋構造が複雑に絡み合い架橋した高次構造を形成しており、この結果、優れた耐熱性が得られるものと考えられる。
【0048】
比較例1
3,4,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物10.38gをアルゴン気流下N,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解させ、2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物3.36gを加え約30分間室温下撹拌した。その後、1,3-ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン9.78gを加え約1時間撹拌し、粘調な溶液を得た。4−フェニルエチニルフタル酸無水化物8.30gを加え、室温下約1時間撹拌後、約12時間溶媒を還流させた。イオン交換水400mLに反応液を投入し、濾過後水洗を数回繰り返し、メタノールで洗浄濾過後、120℃で一晩乾燥させ、黄色い粉末状のイミドオリゴマーを得た。得られたイミドオリゴマー粉末は、レオメーター(TA社製AR−2000)により測定したところ、150℃程度で溶融を開始した。このイミドオリゴマー粉末をポリイミドフィルムに所要量とり、ホットプレス上で185℃30分脱泡・加圧を繰り返し、350℃1.5時間加熱し(昇温速度5〜8℃/分)、茶褐色透明な硬化物を得た。窒素気流下、TG−DTA(SII社製EXSTAR TG/DTA6000)による分析の結果、5%熱分解温℃が508.5℃(昇温速度10℃/分)、TMA(SII社製EXSTAR TMA/SS6000)によるTgが355.0℃(昇温速度10℃/分)CTEは23ppmであることを確認した。また、厚さ約50μmのフィルムの初期弾性率は3.7GPaであった。
【0049】
比較例2
3,4,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物10.38gと1,3-ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン9.78gをアルゴン気流下N,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解させ、2,3,3’,4’−オキシジフタル酸二無水化物3.36gを加え約30分間室温下撹拌した。その後、4−フェニルエチニルフタル酸無水化物8.30gを加え、室温下約1時間撹拌後、約12時間溶媒を還流させた。イオン交換水400mLに反応液を投入し、濾過後水洗を数回繰り返し、メタノールで洗浄濾過後、120℃で一晩乾燥させ、黄色い粉末状のイミドオリゴマーを得た。得られたイミドオリゴマー粉末は、レオメーター(TA社製AR−2000)により測定したところ、160℃程度で溶融を開始した。このイミドオリゴマー粉末ををポリイミドフィルムに所要量とり、ホットプレス上で185℃30分脱泡・加圧を繰り返し、350℃1.5時間加熱し(昇温速度5〜8℃/分)、茶褐色透明な硬化物を得た。窒素気流下、TG−DTA(SII社製EXSTAR TG/DTA6000)による分析の結果、5%熱分解温度が512.5℃(昇温速度10℃/分)、TMA(SII社製EXSTAR TMA/SS6000)によるTgが225.3℃(昇温速度10℃/分)CTEは43ppmであることを確認した。また、厚さ約50μmのフィルムの初期弾性率は1.7GPaであった。
【0050】
上記結果から、非軸対称性の芳香族テトラカルボン酸をオリゴマー鎖中にランダムに配置した比較例1のイミドオリゴマーでは、溶融開始温度が150℃であり、熱成形性に劣っていた。また、軸対称性化合物を中心とし、非軸対称性の芳香族テトラカルボン酸をその両側に配置した比較2のイミドオリゴマーでは、溶融開始温度が160℃であり、熱成形性に劣っており、また、加熱硬化後のポリイミド樹脂のガラス転移温度も225.3℃と低く、耐熱性の点でも十分でなかった。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1のイミドオリゴマーの化学構造の模式図である。
【図2】実施例1のイミドオリゴマーの分子軌道計算に基づく立体構造図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有し、下記一般式(1)により表されることを特徴とするイミドオリゴマー。
【化1】

(上記式(1)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−であり、Xは軸対称性酸二無水化物残基、Yは軸対称性ジアミン残基、Zは架橋性反応基、nは各イミド繰り返し構造の平均重合度で1〜10である)
【請求項2】
請求項1に記載のイミドオリゴマーにおいて、一般式(1)におけるWが−O−、又は−CH−であることを特徴とするイミドオリゴマー。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれかに記載のイミドオリゴマーにおいて、各イミド繰り返し構造の平均重合度nがそれぞれ1〜6であり、且つイミドオリゴマー全体の平均分子量が8000以下であることを特徴とするイミドオリゴマー。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のイミドオリゴマーにおいて、軸対称性酸二無水化物残基Xが、ピロメリット酸二無水化物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水化物、4,4’−ビフタリック酸二無水化物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルフォン酸、4,4’−オキシジフタル酸二無水化物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水化物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水化物、2,2−ビス(4−カルボン酸フェニル)プロパン酸二無水化物から選ばれる少なくとも1種以上の酸二無水化物に由来することを特徴とするイミドオリゴマー。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のイミドオリゴマーにおいて、軸対称性ジアミン残基Yが、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル,1、3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−アミノフェニル)スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、α,α’−ビス(4−アミノフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン,3,3’−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンから選ばれる少なくとも1種以上のジアミンに由来することを特徴とするイミドオリゴマー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のイミドオリゴマーにおいて、末端の架橋性反応基Zが、4−フェニルエチニルフタル酸無水化物、無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水化物、2,5−ノルボルナジエン−2,3−ジカルボン酸無水化物、マレイン酸無水物、フェニルエチニルアニリン、エチニルアニリン、ビニルアニリンから選ばれる少なくとも1種以上の化合物に由来することを特徴とするイミドオリゴマー。
【請求項7】
非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有し、下記一般式(2)により表されることを特徴とするアミック酸オリゴマー。
【化2】

(上記式(2)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−であり、Xは軸対称性酸二無水化物残基、Yは軸対称性ジアミン残基、Zは架橋性反応基、nは各イミド繰り返し構造の平均重合度で1〜10である)
【請求項8】
請求項1から6のいずれかに記載のイミドオリゴマー又は請求項7に記載のアミック酸オリゴマーを加熱硬化させてなることを特徴とするポリイミド樹脂。
【請求項9】
非軸対称性芳香族テトラカルボン酸二無水化物1分子に由来する非軸対称部位をオリゴマー鎖の中心部のみに有するイミドオリゴマーの製造方法であって、
(A)下記一般式(3)により表される非軸対称性テトラカルボン酸二無水化物と、これに対して大過剰量の軸対称性ジアミンとを反応させて、オリゴマー前駆体を調製する工程と、
(B)前記工程で得られたオリゴマー前駆体及び未反応の軸対称性ジアミンと、軸対称性酸二無水化物とを重縮合反応させて、イミドオリゴマー又はアミック酸オリゴマーを調製する工程
を備えることを特徴とするイミドオリゴマーの製造方法。
【化3】

(上記式(3)において、Wは、直接結合、−O−、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C−、−C(CF−、−C(=O)−、−NH−、−NH−C(=O)−、−C(=O)−NH−、−S−、−S(=O)−、又は−S(=O)−である)
【請求項10】
請求項9に記載のイミドオリゴマーの製造方法において、さらに
(C)前記工程で得られたイミドオリゴマー又はアミック酸オリゴマーの末端に、架橋性反応基を有する化合物を付加する工程
を備えることを特徴とするイミドオリゴマーの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−143958(P2010−143958A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−319462(P2008−319462)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】