説明

イムノフュージンとしての新脈管形成インヒビターの発現および輸送

【課題】種々の哺乳動物宿主細胞における新脈管形成インヒビターの効率的な生成および分泌を促進する新規なDNAを提供すること。
【解決手段】免疫グロブリンFc−新脈管形成インヒビター融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列(例えば、DNA配列またはRNA配列)が開示される。この新脈管形成インヒビターは、アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、またはエンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントであり得る。このヌクレオチド配列は、適切な発現ベクター中に挿入され、哺乳動物細胞中で発現され得る。このようなヌクレオチド配列の発現によって生成され得る免疫グロブリンFc−新脈管形成インヒビター融合タンパク質のファミリーも開示される。このようなヌクレオチド配列および融合タンパク質を新脈管形成によって媒介される状態の処置に用いる方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、一般に、新脈管形成インヒビターを含む融合タンパク質を作製および使用するための方法および組成物に関する。より詳細には、本発明は、免疫グロブリンFc領域および新脈管形成インヒビターを含む、イムノフュージン(immunofusin)と呼ばれる融合タンパク質を作製および使用するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
2つの強力な新脈管形成インヒビターであるアンギオスタチン(angiostatin)(O’Reillyら(1994)Cell 79:315)およびエンドスタチン(endostatin)(O’Reillyら(1997)Cell 88:277)が発見され、そして原発性腫瘍によって本来生成されることが見出された。両方のタンパク質は、内皮細胞増殖の特異的なインヒビターであり、そして腫瘍に栄養を与える新規の血管の形成である新脈管形成をブロックすることによって腫瘍増殖を阻害する。研究により、これらの新脈管形成インヒビターが非常に高い用量でさえも非毒性であり、そしてこれらが転移の増殖を抑制し得、そして原発性腫瘍が休眠した顕微鏡状態まで後退し得ることが示された。両方のインヒビターは、ずっと大きなインタクトな分子のタンパク質分解性フラグメントとして同定された。アンギオスタチンは、プラスミノーゲンのフラグメントであり、そしてエンドスタチンはコラーゲンXVIIIのフラグメントであることが見出された。
【0003】
これらの2つのタンパク質は、癌の分野において大きな興味を生じてきた。なぜなら、これらは、明らかな副作用も薬物耐性も伴わずに、マウスにおいて多くの異なる型の腫瘍の増殖を抑制することが示されているからである。伝統的な化学療法は一般に、癌細胞の遺伝的不安定性により主に引き起こされる、後天性薬物耐性をもたらす。癌細胞を標的とするよりも、新脈管形成インヒビターを用いる治療は、腫瘍の増殖を支持する正常な内皮細胞を標的とする。内皮細胞は遺伝的に安定であるので、新脈管形成インヒビター治療がより少ない薬物耐性をもたらし得ることは可能である。研究により、エンドスタチンを用いる長期の抗新脈管形成治療に暴露したマウスにおいて薬物耐性が発達しなかったことが示される。さらに、マウスにおける反復サイクルのエンドスタチン処置は、長期の腫瘍休眠および治療中止後に腫瘍の再発がないことをもたらした(Boehmら(1997)Nature 390:404)。
【0004】
マウスにおける有望な結果にもかかわらず、E.coli、バキュロウイルス、酵母および哺乳動物発現系を用いて商業的品質の、臨床グレードの可溶性の活性なアンギオスタチンおよびエンドスタチンを生成することは可能ではなかった。E.coliにおける発現は、不確定の組成の不溶性のタンパク質凝集物を生じた。このタンパク質凝集物は、ヒト注射できない。他の生成方法(例えば、バキュロウイルスおよび哺乳動物発現系)は、非常に低レベルのこの組換えタンパク質を生じた(O’Reillyら(1997)Cell 88:277)。
【0005】
今日までのこの発現系の乏しい収量は、アンギオスタチンおよびエンドスタチンの両方が、ずっと大きなタンパク質の内部フラグメントであることにより説明され得る。短縮型タンパク質は、前駆体分子から切断される残基がなければ適切には折り畳まれないのかもしれない。例えば、アンギオスタチンは、多数のジスルフィド結合を形成する、26個のシステイン残基を有する。アンギオスタチンの発現は、独力では、これらの多数のジスルフィド結合が、分泌経路において正しく形成するのに最適な環境を提供しないかもしれない。また、E.coliにおいて生成されるこの組換えエンドスタチンタンパク質は、おそらく、エンドスタチンの疎水性に起因して、透析の間に沈澱した(O’Reillyら(1997)Cell 88:277).
それらの現在の形態におけるアンギオスタチンおよびエンドスタチンの使用に関する主要な障害は、所望の臨床結果を達成するためには、比較的多量のタンパク質を、数週間から数ヶ月にわたって毎日注射しなければならないことである。例えば、最近のマウスモデルでは、20mg/kg/日のエンドスタチンの投薬量が、最適な効力を実証するために必要とされる(Boehmら(1997)Nature 390:404)。エンドスタチンおよびアンギオスタチンを臨床的に試験する差し迫った必要性があることを考慮すると、大量の臨床的グレードの物質を生成し得る生成方法が重要である。
【0006】
哺乳動物細胞における融合タンパク質の高レベルの発現を生じるために用いられている1つの発現系は、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域および標的タンパク質をコードする、DNA構築物である。この構築物の融合産物は一般に、「イムノフュージン」と呼ばれる。以下を含むいくつかの標的タンパク質がイムノフュージンとして成功裏に発現されている:IL2、CD26、Tat、Rev、OSF−2、βIG−H3、IgEレセプター、PSMAおよびgp120。これらの発現構築物は、その開示が本明細書中に参考として援用される、米国特許第5,541,087号および米国特許第5,726,044号に開示される。
【0007】
哺乳動物細胞において組換え融合タンパク質を発現する主要な目的は、新規なまたは有用な特性(例えば、適切な折り畳み、溶解度の増加、インビボにおけるサイトカインまたは毒素の標的化、Fcレセプター結合、補体結合、プロテインA結合、循環半減期の増加および血液脳関門を通過する能力の増加)をハイブリッド分子に付与しようとすることであった。哺乳動物細胞において生成された組換え融合タンパク質の例としては、サイトカイン免疫結合体(Gilliesら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1428;Gilliesら(1993)Bioconjugate Chemistry 4:230)、、免疫付着因子(immunoadhesin)(Caponら(1989)Nature 337:525)、イムノトキシン(Chaudharyら(1989)Nature 339:394)、および神経成長因子結合体(Fridenら(1993)Science 259:373)が挙げられる。上記の刊行物の各々は、本明細書中に参考として援用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、種々の哺乳動物宿主細胞における新脈管形成インヒビターの効率的な生成および分泌を促進する新規なDNAを提供することである。本発明の別の目的はまた、非天然の、生合成の、またはそうではない人工のタンパク質(例えば、合理的な設計によって作製されたタンパク質)を含む、新脈管形成インヒビタータンパク質をコードする核酸、または新脈管形成インヒビタータンパク質を規定するアミノ酸配列で哺乳動物を処置するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、新脈管形成インヒビタータンパク質を含む融合タンパク質を作製および使用する際に有用な、方法および組成物を特徴とする。この融合タンパク質は、生物学的に活性な新脈管形成インヒビタータンパク質の高レベルの発現を促進し得る。次いで、この新脈管形成インヒビタータンパク質は、この融合タンパク質から切断され得、そして哺乳動物(例えば、ヒト)への投与の前に薬学的に受容可能なキャリアと合わされ得る。あるいは、新脈管形成インヒビター含有融合タンパク質をコードする核酸配列または新脈管形成インヒビター含有融合タンパク質を規定するアミノ酸配列は、薬学的に受容可能なキャリアと合わされ得、そして哺乳動物に投与され得る。
【0010】
1つの局面では、本発明は、本発明の融合タンパク質をコードする核酸分子(例えば、DNA分子またはRNA分子)を提供する。この核酸分子は、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域、ならびに本明細書中では、アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、エンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本明細書中で新脈管形成インヒビタータンパク質とも呼ばれる、少なくとも1つの標的タンパク質をコードする。好ましい実施態様では、この核酸分子は、5’から3’の方向で連続して、このシグナル配列、この免疫グロブリンFc領域およびこの標的タンパク質配列をコードする。別の好ましい実施態様では、この核酸分子は、5’から3’の方向で連続して、このシグナル配列、この標的配列および免疫グロブリンFc領域をコードする。
【0011】
別の好ましい実施態様では、この免疫グロブリンFc領域は、免疫グロブリンヒンジ領域を含み、そして好ましくは少なくとも1つの免疫グロブリン重鎖定常領域(例えば、免疫グロブリン重鎖定常2(CH2)ドメイン、免疫グロブリン重鎖定常3(CH3)ドメイン)、およびFc領域を生成するために用いられる免疫グロブリンの型に依存して、必要に応じて免疫グロブリン重鎖定常領域4(CH4)ドメインを含む。より好ましい実施態様では、この免疫グロブリンFc領域は、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む。特定の状況下では、この免疫グロブリンFc領域は好ましくは、少なくともこのCH1ドメインを欠く。この免疫グロブリンFc領域は、任意の免疫グロブリンクラス(例えば、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM)に基づき得るが、IgGに基づく免疫グロブリンFc領域が好ましい。
【0012】
別の実施態様では、本発明の核酸は、複製可能な発現ベクター中に作動性に連結して組み込まれ得、次いでこれは、哺乳動物宿主細胞中にトランスフェクトされ得る。別の好ましい実施態様では、本発明は、本発明のこのような核酸配列を保有する宿主細胞を提供する。
【0013】
別の局面では、本発明は、アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、エンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される標的タンパク質に、ポリペプチド結合を介して直接、またはポリペプチドリンカーによってのいずれかで連結された免疫グロブリンFc領域を含む融合タンパク質を提供する。この標的タンパク質は、そのC末端を介してこの免疫グロブリンFc領域のN末端へと融合され得る。しかし、さらに好ましい実施態様では、この標的タンパク質は、そのN末端を介して免疫グロブリンFc領域のC末端へと融合される。
【0014】
別の実施態様では、この融合タンパク質は、アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメントおよびエンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントからなる群より選択される第2の標的タンパク質を含み得る。この型の構築物では、第1および第2の標的タンパク質は、同一のタンパク質または異なるタンパク質であり得る。例えば、好ましい実施態様では、この融合タンパク質は、アンギオスタチンという第1の標的タンパク質、免疫グロブリンFc領域およびエンドスタチンという第2の標的タンパク質を含む。第1および第2の標的タンパク質は、直接またはポリペプチドリンカーによってのいずれかで一緒に連結され得る。あるいは、両方の標的タンパク質は、直接またはポリペプチドリンカーによってのいずれかで、この免疫グロブリンFc領域に連結され得る。後者の場合、この第1の標的タンパク質は、この免疫グロブリンFc領域のN末端に連結され、そしてこの第2の標的タンパク質は、この免疫グロブリンFc領域のC末端に連結される。
【0015】
別の実施態様では、2つの融合タンパク質は、共有結合的に(例えば、ジスルフィド結合もしくはペプチド結合によって)または非共有結合的にのいずれかで会合して、多量体タンパク質を生成し得る。好ましい実施態様では、2つの融合タンパク質は、(好ましくは、両鎖の免疫グロブリンFc領域内に配置された免疫グロブリンヒンジ領域内に位置する)システイン残基を介する1以上のジスルフィド結合によって共有結合される。
【0016】
好ましい実施態様では、この標的タンパク質は、約40kDの分子量を有し、そして必要に応じて配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、プラスミノーゲンフラグメントを含む。別の好ましい実施態様では、この標的タンパク質は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するコラーゲンXVIIIフラグメントを含む。
【0017】
さらに、この標的タンパク質は、全長アンギオスタチンもしくは全長エンドスタチン、またはそれらの生物活性のあるフラグメントであり得る。特定の融合タンパク質を作製する際のこの標的タンパク質の供給源は、この標的タンパク質の意図される使用に依存する。例えば、この標的タンパク質がヒトに投与されるべきである場合、この標的タンパク質は好ましくは、ヒト起源のものである。
【0018】
別の局面では、本発明は、免疫グロブリンFc領域、ならびにアンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、およびエンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントからなる群より選択される標的タンパク質を含む融合タンパク質を生成する方法を提供する。この方法は、以下の工程を含む:(a)シグナル配列を有するかまたは有さないかのいずれかのこのような融合タンパク質をコードするDNA分子を含む哺乳動物細胞を提供する工程、および(b)この哺乳動物細胞を培養して、この融合タンパク質を生成する工程。次いで、得られる融合タンパク質は、収集され得、再折り畳みされ得、そして必要な場合、当該分野で周知であり、そして当該分野で用いられる従来の精製技術を用いて精製され得る。この融合タンパク質が、免疫グロブリンFc領域とこの標的タンパク質との間に配置されたタンパク質分解性切断部位を含むと仮定して、この標的は、従来のタンパク質分解性酵素を用いて融合タンパク質から切断され得、そして必要な場合使用の前に精製され得る。
【0019】
別の局面では、本発明は、新脈管形成インヒビターに基づく治療を必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)を処置するための方法を提供する。例えば、本発明の新脈管形成インヒビターが、腫瘍に罹患したヒトに投与され得ることが意図される。新脈管形成インヒビターでの処置は、腫瘍増殖を減速または停止させ得、そして特定の状況下では、腫瘍後退を引き起こし得る。処置は、この哺乳動物に、腫瘍増殖を減速または停止させるのに充分な量の新脈管形成インヒビターを投与する工程を含み得る。この新脈管形成インヒビターは、融合タンパク質の形態で、または(好ましくは発現ベクターと作動可能に連結された)核酸として、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて提供され得る。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1) 融合タンパク質をコードするDNA分子であって、以下:
(a)シグナル配列;
(b)免疫グロブリンFc領域;ならびに
(c)アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、エンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメント、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される標的タンパク質配列、
を含む、DNA分子。
(項目2) 前記シグナル配列、前記免疫グロブリンFc領域および前記標的タンパク質配列が、5’から3’の方向で連続してコードされる、請求項1に記載のDNA。
(項目3) 前記シグナル配列、前記標的配列および前記免疫グロブリンFc領域が、5’から3’の方向で連続してコードされる、項目1に記載のDNA。
(項目4) 前記免疫グロブリンFc領域が、免疫グロブリンヒンジ領域を含む、項目1に記載のDNA。
(項目5) 前記免疫グロブリンFc領域が、免疫グロブリンヒンジ領域および免疫グロブリン定常重鎖ドメインを含む、項目1に記載のDNA。
(項目6) 前記免疫グロブリンFc領域が、ヒンジ領域およびCH3ドメインを含む、項目1に記載のDNA。
(項目7) 前記免疫グロブリンFc領域が、少なくとも前記CH1ドメインを欠く、項目1に記載のDNA。
(項目8) 前記免疫グロブリンFc領域が、少なくとも免疫グロブリンγの一部をコードする、項目1に記載のDNA。
(項目9) 哺乳動物細胞をトランスフェクトするための複製可能な発現ベクターであって、該ベクターが、項目1に記載のDNAを含む、ベクター。
(項目10) 項目1に記載のDNAを保有する、哺乳動物細胞。
(項目11) 融合タンパク質であって、免疫グロブリンFc領域、ならびにアンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメント、エンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される標的タンパク質を含む、融合タンパク質。
(項目12) 前記プラスミノーゲンフラグメントが、約40kDの分子量を有し、そして配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目13) 前記標的タンパク質が、配列番号3に示されるアミノ酸配列を含む、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目14) 前記コラーゲンXVIIIフラグメントが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目15) 前記標的タンパク質が、アンギオスタチン、エンドスタチン、プラスミノーゲンフラグメントおよびコラーゲンXVIIIフラグメントからなる群より選択される少なくとも2つの分子を含み、該2つの分子が、ポリペプチドリンカーによって連結される、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目16) 前記標的タンパク質が、前記免疫グロブリンFc領域のN末端に連結される、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目17) 前記標的タンパク質が、前記免疫グロブリンFc領域のC末端に連結される、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目18) 多量体タンパク質であって、ジスルフィド結合を介して連結される、項目11に記載の少なくとも2つの融合タンパク質を含む、多量体タンパク質。
(項目19) 少なくとも1つの前記融合タンパク質の前記標的タンパク質がアンギオスタチンであり、そして少なくとも1つの前記融合タンパク質の前記標的タンパク質がエンドスタチンである、項目18に記載の多量体タンパク質。
(項目20) 両方の前記融合タンパク質の前記標的タンパク質がアンギオスタチンである、項目18に記載の多量体タンパク質。
(項目21) 両方の前記融合タンパク質の前記標的タンパク質がエンドスタチンである、項目18に記載の多量体タンパク質。
(項目22) アンギオスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン活性を有するプラスミノーゲンフラグメントおよびエンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントからなる群より選択される第2の標的タンパク質をさらに含む、項目11に記載の融合タンパク質。
(項目23) 前記第2の標的タンパク質が、ポリペプチドリンカーによって第1の標的タンパク質に連結されている、項目22に記載の融合タンパク質。
(項目24) 前記第1の標的タンパク質が前記免疫グロブリンFc領域のN末端に連結されており、そして前記第2の標的タンパク質が該免疫グロブリンFc領域のC末端に連結されている、項目22に記載の融合タンパク質。
(項目25) 項目11に記載の少なくとも2つの融合タンパク質を含む多量体融合タンパク質であって、該融合タンパク質が、ポリペプチド結合によって連結されている、多量体融合タンパク質。
(項目26) 融合タンパク質を生成する方法であって、該方法が以下の工程:
a)項目10に記載の哺乳動物細胞を提供する工程;および
b)該哺乳動物細胞を培養して該融合タンパク質を生成する工程、
を包含する、方法。
(項目27) 前記融合タンパク質を収集するさらなる工程を包含する、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記免疫グロブリンFc領域を前記標的タンパク質から切断するさらなる工程を包含する、項目26に記載の方法。
(項目29) 新脈管形成によって媒介される状態を処置する方法であって、項目1に記載のDNAを、新脈管形成インヒビターを必要とする哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目30) 新脈管形成によって媒介される状態を処置する方法であって、項目9に記載のベクターを、新脈管形成インヒビターを必要とする哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目31) アンギオスタチンまたはエンドスタチンの投与によって緩和される状態を処置する方法であって、項目11に記載の融合タンパク質の有効量を、該状態を有する哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【0020】
本発明の上記および他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明、図面および特許請求の範囲からさらに明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1A〜1Fは、本発明に従って構築された例示的な新脈管形成インヒビター融合タンパク質の模式図である(実施例10〜15を参照のこと)。これらの図はそれぞれ、以下を描く:図1A、Fc−アンギオスタチンKringle1;図1B、Fc−アンギオスタチン内側Kringle1;図1C、Fc−エンドスタチン−GlySerリンカー−アンギオスタチン内側Kringle1;図1D、Fc−エンドスタチン−GlySerリンカー−アンギオスタチンKringle1;図1E、Fc−エンドスタチン−GlySerリンカー−アンギオスタチン;図1F、アンギオスタチン−Fc−エンドスタチン。垂直の線は、このFc分子のヒンジ領域内に配置されたシステイン残基(C)を連結する任意のジスルフィド結合を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、商業的量の臨床グレードの新脈管形成インヒビターの生成に有用であった、本明細書中でイムノフュージンと呼ばれる、融合タンパク質を提供する。この新脈管形成インヒビターは、イムノフュージンタンパク質構築物から使用前に切断され得る。しかし、イムノフュージンまたはこのイムノフュージンをコードする核酸が、新脈管形成インヒビターで処置する必要がある哺乳動物に直接投与され得ることが意図される。
【0023】
従って、本発明は、免疫グロブリンFc領域、および本明細書中で新脈管形成インヒビターと呼ばれる、少なくとも1つの標的タンパク質を含む融合タンパク質を提供する。この新脈管形成インヒビターは好ましくは、アンギオスタチン、エンドスタチン、プラスミノーゲンフラグメントアンギオスタチン活性、エンドスタチン活性を有するコラーゲンXVIIIフラグメントからなる群より選択される。しかし、現在公知かまたは後で発見される新脈管形成インヒビター活性を有する他のポリペプチドが、本明細書中に記載される型の融合タンパク質として発現され得ることが意図される。
【0024】
本発明を具体化したタンパク質構築物の6つの例示的な実施態様を、図1A〜図1Fとして図面に例示する。二量体構築物が好ましいので、全てを、隣接するサブユニット上のシステイン間での一対のジスルフィド結合によって架橋される二量体として例示する。この図面では、ジスルフィド架橋は、2つの免疫グロブリンFc領域の一部を、免疫グロブリンヒンジ領域を介して一緒に連結するとして表され、従って、これらの分子のネイティブな形態に特有である。Fcのヒンジ領域を含む構築物が好ましく、そして治療剤として有望であると示されているが、本発明は、他の位置での架橋が、所望により選択され得ることを意図する。さらに、いくつかの状況下では、本発明を実施する際に有用な二量体または三量体は、非共有結合によって、例えば、疎水性相互作用によって生成され得る。
【0025】
ホモ二量体構築物は本発明の重要な実施態様であるので、図1は、このような構築物を例示する。ヘテロ二量体構造もまた有用であるが、当業者に公知であるように、しばしば精製することが困難であり得ることが理解されるべきである。しかし、ホモ二量体とヘテロ二量体との混合物を含む、ヒトを含む種々の哺乳動物種において新脈管形成を阻害するために有用な存続可能な構築物が構築され得る。例えば、ヘテロ二量体構造の一方の鎖はエンドスタチンを含み得、そして他方の鎖はアンギオスタチンを含み得る。
【0026】
図1Aは、実施例10に示される手順に従って生成される二量体構築物を例示する。この二量体の各単量体は、ヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む免疫グロブリンFc領域1を含む。Fc領域1のC末端には、内側環および外側環の両方に、アンギオスタチン2の第1のKringle領域が直接結合される。図1Bは、図1AのFc領域と同じFc領域を含み、この場合は、Fc領域1のC末端に結合されたアンギオスタチン3のKringle1の内側環のみを有する、本発明の第2の実施態様を示す(実施例11を参照のこと)。図1C〜図1Eは、標的タンパク質として、タンデムに配置され、そしてリンカーによって連結された複数の新脈管形成インヒビターを含む、本発明のタンパク質構築物の種々の実施態様を示す。図1Cでは、この標的タンパク質は、全長エンドスタチン4、ポリペプチドリンカー5、およびアンギオスタチン3のKringle1の内側環を含む。図1Dは、図1AのFc領域と同じFc領域、ならびに全長エンドスタチン4、ポリペプチドリンカー5、およびアンギオスタチン2の全長Kringle1領域(内側環および外側環の両方)を含む標的タンパク質を含むタンパク質を表す。図1Eは、最もC末端側のタンパク質ドメインが、アンギオスタチン7の全長コピーをを含むという点で図1Dの構築物とは異なる。
【0027】
図1A〜図1Eは、Fc−X型構築物を表し、ここでXが標的タンパク質であるが、X−Fc型構築物もまた本発明の実施の際に有用であり得ることが意図される。さらに、本発明の有用なタンパク質もまた、式X−Fc−Xによって表され得、ここでXは、同じ標的タンパク質または異なる標的タンパク質を表し得ることが意図される。図1Fは、N末端からC末端の方向で、全長ヒトアンギオスタチン7、ヒンジ領域領域を含むヒト免疫グロブリンFc領域6、および全長ヒトエンドスタチンドメイン4を含む、このような構築物を表す。
【0028】
用語「新脈管形成インヒビター」は、本明細書中で使用される場合、哺乳動物における新規の血管の形成を低減または阻害する、任意のポリペプチド鎖をいう。癌治療に関して、この新脈管形成インヒビターは、腫瘍内または腫瘍上の、好ましくは固形腫瘍内または固形腫瘍上の新規の血管の形成を低減または阻害する。有用な新脈管形成インヒビターが、当該分野で周知であり、そして当該分野で用いられる種々のアッセイを用いて同定され得ることが意図される。このようなアッセイとしては、例えば、ウシ毛細管内皮細胞増殖アッセイ、ヒナ絨毛尿膜(chick chorioallantoic membrane)(CAM)アッセイまたはマウスの角膜アッセイが挙げられる。しかし、このCAMアッセイが好ましい(例えば、その開示が本明細書中に参考として援用される、O’Reillyら(1994)Cell 79:315−328およびO’Reillyら(1997)Cell 88:277−285を参照のこと)。手短には、インタクトな卵黄を有する胚を、受精した3日齢の白色卵から取り出し、そしてペトリ皿に入れる。37℃にて、3% CO2で3日間インキュベーションした後、推定の新脈管形成インヒビターを含むメチルセルロースディスクを、個々の胚の絨毛尿膜に適用する。約48時間インキュベーションした後、この絨毛尿膜を、阻害帯の証拠について顕微鏡下で観察した。
【0029】
本発明の実施において有用な好ましい新脈管形成インヒビターとしては、例えば、アンギオスタチン(O’Reillyら(1994)Cell 79:315−328、および米国特許第5,733,876号;同第5,837,682号;および同第5,885,795号)、ならびにエンドスタチン(O’Reillyら(1997)Cell 88:277−285および米国特許第5,854,205号)が挙げられる。以前に述べたように、アンギオスタチンおよびエンドスタチンは、内皮細胞増殖の特異的インヒビターであり、そして腫瘍に栄養を与える新規の血管の形成である新脈管形成をブロックすることにより腫瘍増殖を阻害し得る。
【0030】
アンギオスタチンは、プラスミノーゲンのタンパク質分解性フラグメントとして同定された(O’Reillyら(1994)Cell 79:315−328、および米国特許第5,733,876号;同第5,837,682号;および同第5,885,795号、そしてこの開示は、本明細書中に参考として援用される)。詳細には、アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの少なくとも3つのKringle領域を含む、プラスミノーゲンの38kDaの内側フラグメントである。エンドスタチンは、コラーゲンXVIIIのタンパク質分解性フラグメントとして同定されている(O’Reillyら(1997)Cell 88:277−285(その開示は、本明細書中に参考として援用される))。詳細には、エンドスタチンは、コラーゲンXVIIIの20kDaのC末端フラグメントである。用語「アンギオスタチン」および「エンドスタチン」は、本明細書中で使用される場合、全長タンパク質だけでなく、それらの改変体および生物活性フラグメント、ならびにそれぞれ、プラスミノーゲンおよびコラーゲンXVIIIの生物活性フラグメントもまたいう。アンギオスタチンに関して用語「生物活性フラグメント」は、CAMアッセイによって決定した場合に、全長アンギオスタチンの少なくとも30%、より好ましくは少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも90%の活性を有する、プラスミノーゲンまたはアンギオスタチンの任意のタンパク質フラグメントをいう。エンドスタチンに関して用語「生物活性フラグメント」は、CAMアッセイによって決定した場合に、全長エンドスタチンの少なくとも30%、より好ましくは少なくとも70%、そして最も好ましくは少なくとも90%の活性を有する、コラーゲンXVIIIまたはエンドスタチンの任意のタンパク質フラグメントをいう。
【0031】
用語改変体は、本明細書中に開示されるエンドスタチンまたはアンギオスタチンのいずれかの天然に存在する配列に少なくとも70%類似または60%同一であり、より好ましくは少なくとも75%類似または65%同一であり、そして最も好ましくは80%類似または70%同一である、種(specifies)改変体および対立遺伝子改変体、ならびに他の天然に存在するかまたは天然に存在しない改変体(例えば、従来の遺伝子操作プロトコルによって生成される)を含む。
【0032】
参照ポリペプチドに対して候補ポリペプチドが必要な類似性百分率または同一性百分率を有するか否かを決定するために、この候補アミノ酸配列およびこの参照アミノ酸配列は、HenikoffおよびHenikoff(1992),「Amino acid substitution matrices from protein blocks」,Proc.Natl.Acad Sci.USA 89:10915−10919の図2に記載されるBLOSUM62置換行列と組み合わせた、SmithおよびWaterman(1981),J.Mol.Biol.147:195−197に記載されるダイナミックプログラミングアルゴリズムを用いて最初に整列される。本発明については、ギャップ挿入ペナルティについて適切な値は−12であり、そしてギャップ伸長ペナルティについて適切な値は−4である。Smith−WatermanおよびBLOSUM62行列のアルゴリズムを用いる整列を行うコンピュータプログラム(例えば、GCGプログラムソフト(Oxford Molecular Group,Oxford,England)は、市販され、そして当業者に広範に使用される。
【0033】
一旦、候補配列と参照配列との間の整列がなされると、類似性パーセントスコアが算出され得る。各配列の個々のアミノ酸は、互いにそれらの類似性に従って順次比較される。2つの整列されるアミノ酸に対応するBLOSUM62行列における値が0または負の数字である場合、対の様式の(pair−wise)類似性スコアは0である;さもなければ、この対の様式の類似性スコアは1.0である。生の類似性スコアは、整列されたアミノ酸の対の様式の類似性スコアの合計である。次いで、生のスコアを、候補配列または参照配列のうちのより小さいアミノ酸数によって除算することにより、生のスコアが正規化される。正規化された生のスコアは、類似性パーセントである。あるいは、同一性パーセントを算出するために、各配列の整列されたアミノ酸が再度順次比較される。アミノ酸が同一でない場合、対の様式の同一性スコアは0である;さもなければ、この対の様式の同一性スコアは、1.0である。生の同一性スコアは、同一の整列されたアミノ酸の合計である。次いで、生のスコアを、候補配列または参照配列のうちのより小さいアミノ酸数によって除算することにより、生のスコアが正規化される。正規化された生のスコアは、同一性パーセントである。挿入および欠失は、類似性および同一性のパーセントを算出する目的で無視される。従って、ギャップペナルティは、この算出では用いられないが、これらは最初の整列においては用いられる。
【0034】
本明細書中に開示される標的タンパク質は、免疫グロブリンのFc領域を有する融合タンパク質として発現される。公知であるように、各免疫グロブリン重鎖定常領域は、4個または5個のドメインから構成される。これらのドメインは、順番に以下の通りに命名される:CH1−ヒンジ−CH2−CH3(−CH4)。重鎖ドメインのDNA配列は、免疫グロブリンクラスの間で、交差相同性を有する。例えば、IgGのCH2ドメインは、IgAおよびIgDのCH2ドメインに、ならびにIgMおよびIgEのCH3ドメインに類似である。
【0035】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫グロブリンFc領域」は、免疫グロブリン鎖定常領域(好ましくは、免疫グロブリン重鎖定常領域)のカルボキシル末端部分、またはその一部を意味すると理解される。例えば、免疫グロブリンFc領域は、1)CH1ドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン、2)CH1ドメインおよびCH2ドメイン、3)CH1ドメインおよびCH3ドメイン、4)CH2ドメインおよびCH3ドメイン、または5)2以上のドメインおよび免疫グロブリンヒンジ領域の組み合わせを含み得る。好ましい実施態様では、DNA構築物において用いられるFc領域は、少なくとも1つの免疫グロブリンヒンジ領域、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含み、そして好ましくは少なくともこのCH1ドメインを欠く。
【0036】
重鎖定常領域を誘導する、現在好ましいクラスの免疫グロブリンは、IgG(Igγ)(γサブクラス1、2、3または4)である。他のクラスの免疫グロブリン(IgA(Igα)、IgD(Igδ)、IgE(Igε)およびIgM(Igμ))が用いられ得る。適切な免疫グロブリン重鎖定常領域の選択は、米国特許第5,541,087号および同第5,726,044号に詳細に考察される。特定の結果を達成するための、特定の免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスからの特定の免疫グロブリン重鎖定常領域配列の選択は、当業分野の技術レベルの範囲内であると考えられる。免疫グロブリンFc領域をコードするDNA構築物の一部は、好ましくは、ヒンジドメインの少なくとも一部を含み、そして好ましくはFcγのCH3ドメインまたはIgA、IgD、IgEもしくはIgMのいずれかの相同ドメインの少なくとも一部を含む。
【0037】
適用に依存して、ヒト以外の種(例えば、マウスまたはラット)由来の定常領域遺伝子が用いられ得る。イムノフュージンDNA構築物における融合パートナーとして用いられるFc領域は、一般に、任意の哺乳動物種由来であり得る。宿主の細胞または動物においてこのFc領域に対する免疫応答を誘発することが望ましくない場合、このFc領域は、宿主の細胞または動物と同じ種に由来し得る。例えば、ヒトFcは、宿主の動物または細胞がヒトである場合に用いられ得;同様に、マウスFcは、宿主の動物または細胞がマウスである場合に用いられ得る。さらに、定常領域ドメインの1以上のアミノ酸残基が置換または欠失される、これらの定常領域の構築物の置換または欠失もまた有用である。一例は、アミノ酸置換を上流CH2領域に導入して、Fcレセプターについての親和性が低減したFc改変体を作製することである(Coleら(1997)J.Immunol.159:3613)。当業者は、周知の分子生物学技術を用いてこのような構築物を調製し得る。
【0038】
Fc領域配列としてのヒトFcγ1の使用は、いくつかの利点を有する。例えば、この新脈管形成インヒビターFc融合タンパク質が生物薬剤として用いられる場合、このFcγ1ドメインは、この融合タンパク質に対してエフェクター機能活性を付与し得る。このエフェクター機能活性としては、補体結合、抗体指向性細胞傷害性、胎盤移入および血清半減期の増加のような生物学的活性が挙げられる。このFcドメインはまた、抗Fc ELISAによる検出およびStaphylococcus aureusプロテインA(「プロテインA」)への結合を介した精製を提供する。しかし、特定の適用では、Fc領域から特異的エフェクター機能(例えば、Fcレセプター結合または補体結合)を欠失させることが所望され得る。
【0039】
新脈管形成インヒビターイムノフュージンの場合、免疫グロブリンFc融合パートナーの1つの機能は、新脈管形成インヒビタータンパク質の適切な折り畳みを促進して、活性な新脈管形成インヒビタータンパク質を生じること、および少なくとも細胞外培地中での、活性部分に対する溶解度に影響を与えることである。Fc融合パートナーは親水性であるので、この新脈管形成インヒビターイムノフュージンは、例えば、E.coliにおいて生成される組換えエンドスタチン(O’Reilly(1997)Cell 88:277)とは異なり、容易に可溶性である。本明細書中に開示される実施例の全てにおいて、イムノフュージンの高レベルの生成が得られた。この新脈管形成インヒビターイムノフュージンは、代表的には約30μg/ml〜約100μg/mlの濃度で培地中に分泌された。そしてプロテインAクロマトグラフィーによって均質になるまで容易に精製され得る。さらに、この新脈管形成インヒビターイムノフュージンは切断され得、そして例えば、ヘパリンセファロース、リジンセファロースまたはアフィニティー精製を用いる従来の精製プロトコルを用いてさらに精製され得る。
【0040】
高レベルの発現に加えて、本発明の融合タンパク質はまた、おそらく、それらのより大きな分子サイズに起因して、より長い血清半減期を示す。例えば、ヒトFc−ヒトアンギオスタチンは、ヒトアンギオスタチンについての4〜6時間の血清半減期と比較して、マウスにおいて33時間の血清半減期を有する(O’Reillyら(1996)Nature Medicine 2:689)。40kDの分子量を有するアンギオスタチンおよび20kDの分子量を有するエンドスタチンは、腎臓濾過によって効率的にクリアランスされるのに充分に小さいと考えられる。対照的に、二量体形態のFcアンギオスタチンおよび二量体Fc−エンドスタチンは、それぞれ、145kDおよび100kDである。これは、2つのアンギオスタチン分子または2つのエンドスタチン分子のいずれかに結合した2つの免疫グロブリンFc領域が存在するからである。このような二価構造は、アンギオスタチンレセプターまたはエンドスタチンレセプターに対して、より高い結合親和性を示し得る。この新脈管形成阻害活性がレセプターによって媒介される場合、このFc融合タンパク質は、一価のアンギオスタチンまたは一価のエンドスタチン単独よりも、腫瘍を抑制するために潜在的により効果的である。さらに、アンギオスタチンおよび/またはエンドスタチンが、二量体タンパク質リガンドのクラスに属する場合、このFcによってアンギオスタチンまたはエンドスタチンに与えられる物理的制約は、二量体化を分子内プロセスにし、従って、平衡をこの二量体に有利にシフトさせ、そしてそのレセプターに対する結合を増強する。システイン残基はまた、標準的な組換えDNA技術によって単量体へと適切な位置で導入されて、共有結合的なジスルフィド結合形成を介して二量体を安定化し得る。
【0041】
本明細書中で使用される場合、用語「多価」は、2以上の生物学的に活性なセグメントを組み込む組換え分子をいう。この多価分子を形成するタンパク質フラグメントは、フレームシフトを引き起こすことなく構成要素部分を結合させ、かつ各々が独立に機能するのを可能にする、ポリペプチドペプチドリンカーによって連結され得る。
【0042】
本明細書中で使用される場合、用語「二価」は、本発明の融合構築物において2つの標的タンパク質を有する、多価組換え分子(例えば、Fc−X分子、ここで、Xは独立して、アンギオスタチン、エンドスタチン、またはそれらの改変体から選択される)をいう。免疫グロブリンFc領域(代表的には、それ自体が、ヒンジ領域およびCH3ドメイン(および必要に応じてCH2ドメイン)の少なくとも一部を含む重鎖フラグメントの二量体である)に融合された2つのX部分が存在するので、この分子は二価である(例えば、図1Aを参照のこと)。本発明の融合構築物がFc−X−X形態を有する場合、得られるFc二量体分子は四価である。このFc−X−X分子を形成する2つのタンパク質は、ペプチドリンカーを介して連結され得る。二価分子は、分子とそのレセプターとの間の見かけの結合親和性を増加させ得る。例えば、Fc−エンドスタチンの第1のエンドスタチン部分が特定の親和性で細胞上のレセプターに結合し得る場合、同じFc−エンドスタチンの第2のエンドスタチン部分は、ずっと高いアビディティ(見かけの親和性)で同じ細胞上の第2のレセプターに結合し得る。これは、第1のエンドスタチン部分が既に結合した後では、第2のエンドスタチン部分がこのレセプターに対して物理的に近いことによる。抗原に対する抗体結合の場合、見かけの親和性は、少なくとも104増加する。
【0043】
本明細書中で使用される場合、用語「多量体」および「多量体性」は、例えば、共有結合的相互作用による(例えば、ジスルフィド結合による)共有結合的、または例えば、疎水性相互作用による非共有結合的のいずれかの、2以上のポリペプチド鎖の安定な会合をいう。用語多量体は、ポリペプチドが同じであるホモ多量体、およびポリペプチドが異なるヘテロ多量体の両方を含むことが意図される。
【0044】
本明細書中で使用される場合、用語「二量体」は、共有結合的または非共有結合的な相互作用によって2つのタンパク質ポリペプチド鎖が安定に会合している特異的多量体分子をいう。免疫グロブリンFc領域のFcフラグメント自体は代表的には、ヒンジ領域およびCH3ドメイン(および必要に応じてCH2ドメイン)の少なくとも一部を含む、重鎖フラグメントの二量体であることが理解されるべきである。多くのタンパク質リガンドは、それらのレセプターに二量体として結合することが公知である。タンパク質リガンドXが天然で二量体化する場合、Fc−X分子内のこのX部分は、ずっと大きな程度で二量体化する。なぜなら、二量体化プロセスは、濃度依存性であるからである。会合した免疫グロブリンFc領域連結された2つのX部分が物理的に近位にあることによって、二量体化を分子内プロセスとし、平衡をこの二量体に有利になるように大いにシフトさせ、そしてそのレセプターに対するその結合を増強する。
【0045】
本発明が、本発明の実施において有用なFc融合タンパク質を作製するために従来の組換えDNA方法論を利用することが理解される。このFc融合構築物は好ましくは、DNAレベルで作製され、そして得られるDNAは、発現ベクター中に組み込まれ、そしてイムノフュージンを生成するために発現される。本明細書中で使用される場合、用語「ベクター」は、宿主細胞に取り込まれ、そして宿主細胞のゲノムと組換わり、そして宿主細胞のゲノム中に組み込まれる能力、またはエピソームとして自律複製する能力があるヌクレオチド配列を含む任意の核酸を意味することが理解される。このようなベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。本明細書中で使用される場合、用語、標的タンパク質の「遺伝子発現」または「発現」は、DNA配列の転写、mRNA転写物の翻訳およびFc融合タンパク質産物の分泌を意味することが理解される。
【0046】
有用な発現ベクターは、Fc−X遺伝子の転写に、ヒトサイトメガロウイルスのエンハンサー/プロモーターおよびSV40ポリアデニル化シグナルを利用する、pdCs(Loら(1988)Protein Engineering 11:495(この開示は、本明細書中に参考として援用される))である。使用されるヒトサイトメガロウイルスのエンハンサーおよびプロモーター配列は、Boshartら,1985,Cell 41:521(この開示は、本明細書中に参考として援用される)に提供される配列のヌクレオチド−601から+7に由来した。このベクターはまた、変異体ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子を選択マーカーとして含む(SimonsenおよびLevinson(1983)Proc.Nat.Acad.Sci.USA 80:2495(この開示は、本明細書中に参考として援用される))。
【0047】
適切な宿主細胞を、本発明のDNA配列で形質転換またはトランスフェクトし得、そして標的タンパク質の発現および分泌のために利用し得る。現在、本発明における使用のために好ましい宿主細胞としては、不死ハイブリドーマ細胞、NS/O骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞、Hela細胞、およびCOS細胞が挙げられる。
【0048】
本発明の融合タンパク質を、好ましくは、従来の組換えDNA方法論によって生成する。融合タンパク質を、好ましくは、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域、および標的タンパク質(本明細書中で、新脈管形成インヒビターともいう)をコードするDNA分子の、宿主細胞における発現により生成する。好ましい構築物は、5’から3’方向で、シグナル配列、免疫グロブリンFc領域、および標的タンパク質をコードし得る。あるいは、構築物は、5’から3’方向で、シグナル配列、標的タンパク質、および免疫グロブリンFc領域をコードし得る。
【0049】
本明細書中で使用される場合、用語「シグナル配列」は、新脈管形成インヒビターイムノフュージン(immunofusin)タンパク質の分泌を指向し、その後で翻訳後に宿主細胞において切断される、ペプチドセグメントを意味すると理解される。本発明のシグナル配列はポリヌクレオチドであり、このポリヌクレオチドは、小胞体の膜を横切るタンパク質の輸送を開始させるアミノ酸配列をコードする。本発明において有用なシグナル配列としては、以下が挙げられる:抗体軽鎖シグナル配列(例えば、抗体14.18(Gilliesら、1989、Jour.of Immunol.Meth.125:191−202))、抗体重鎖シグナル配列(例えば、MOPC141抗体重鎖シグナル配列(Sakanoら、1980、Nature 286:5774))、および当該分野において公知の任意の他のシグナル配列(例えば、Watson、1984、Nucleic Acids Research 12:5145を参照のこと)。これらの各参考文献は、本明細書中で参考として援用される。
【0050】
シグナル配列は当該分野において十分に特徴付けられている。そして代表的に、16〜30アミノ酸残基を含むことが公知であり、そしてそれより多いかまたはそれより少ないアミノ酸残基を含み得る。代表的なシグナルペプチドは、以下の3つの領域から構成される:塩基性N末端領域、中央疎水性領域、およびより極性のC末端領域。中央疎水性領域は、新生ポリペプチドの輸送の間に膜脂質二重層を横切ってシグナルペプチドを固定する4〜12個の疎水性残基を含む。開始後、シグナルペプチドは通常、シグナルペプチダーゼとして公知の細胞性酵素によって、小胞体の内腔内で切断される。シグナルペプチドの潜在的切断部位は、一般的に、「(−3,−1)ルール」に従う。従って、代表的なシグナルペプチドは、−1位および−3位に小さな中性アミノ酸残基を有し、そしてこの領域においてプロリン残基を欠く。シグナルペプダーゼは、−1アミノ酸と+1アミノ酸との間のそのようなシグナルペプチドを切断する。従って、シグナル配列をコードするDNAの部分は、分泌の間に、イムノフュージンタンパク質のアミノ末端から切断され得る。これは、Fc領域および標的タンパク質から構成されるイムノフュージンタンパク質の分泌を生じる。シグナルペプチド配列の詳細な考察は、von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.、14:4683(この開示は、本明細書中で参考として援用される)により提供される。
【0051】
当業者に明らかなように、本発明における使用のための特定シグナル配列の適合性は、いくつかの慣用的な実験を必要とし得る。このような実験としては、シグナル配列がイムノフュージンの分泌を指向する能力を決定すること、およびまた、イムノフュージンの効率的な分泌を達成するために使用されるべき配列の最適な立体配置(ゲノムまたはcDNA)の決定が挙げられる。さらに、当業者は、von Heijne(上記に言及)により提示されたルールに従って合成シグナルペプチドを作製し得、そして慣用的な実験によってそのような合成シグナル配列の有効性を試験し得る。シグナル配列を、「シグナルペプチド」、「リーダー配列」、または「リーダーペプチド」としてもまた言及し得る。
【0052】
シグナル配列と免疫グロブリンFc領域との融合物は、時折、本明細書中で分泌カセットとして言及される。本発明の実施において有用な例示的な分泌カセットは、5’から3’方向で、免疫グロブリン軽鎖遺伝子のシグナル配列、およびヒト免疫グロブリンγ1遺伝子のFcγ1領域をコードするポリヌクレオチドである。免疫グロブリンFcγ1遺伝子のFcγ1領域は好ましくは、ヒンジドメインの少なくとも一部分およびCH3ドメインの少なくとも一部分を含むか、あるいはヒンジドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインの少なくとも部分を含む。分泌カセットをコードするDNAは、そのゲノム立体配置内またはそのcDNA立体配置内にあり得る。
【0053】
別の実施態様では、DNA配列は、分泌カセットと新脈管形成インヒビタータンパク質との間に挿入されたタンパク質分解性切断部位をコードする。切断部位は、コードされた融合タンパク質のタンパク質分解性切断を提供し、このようにして新脈管形成インヒビタータンパク質からFcドメインを分離させる。本明細書中で使用される場合、「タンパク質分解性切断部位」は、タンパク質分解性酵素または他のタンパク質分解性切断剤によって優先的に切断される、アミノ酸配列を意味すると理解される。有用なタンパク質分解性切断部位としては、トリプシン、プラスミン、またはエンテロキナーゼKのようなタンパク質分解性酵素によって認識されるアミノ酸配列が挙げられる。多くの切断部位/切断剤の対が公知である。例えば、米国特許第5,726,044号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。標的タンパク質配列がアンギオスタチン(angiostatin)、エンドスタチン(endostatin)、またはそれらの活性な改変体に対する前駆体分子である場合、所望されるタンパク質産物を、エラスチンまたはプラスミンまたはウロキナーゼのような内因性タンパク質分解性酵素での切断により生成し得る。
【0054】
本発明はまた、大量に作製され得る組換えアンギオスタチンおよび組換えエンドスタチンまたはそれらのフラグメントの種々の組み合わせを含む融合タンパク質を包含する。腫瘍増殖を抑制する際の、実証された有効性にもかかわらず、どのようにアンギオスタチンおよびエンドスタチンが新脈管形成をブロックするかについての機構は、完全には知られていない。アンギオスタチンは、いくつかのKringle構造を有し、そしてエンドスタチンは、種々の構造モチーフ(これらの各々は、単独で、内皮細胞へのタンパク質の結合および抗新脈管形成効果の発揮を担い得るか、またはこれらを補助し得る)を有する。従って、本発明は、天然に存在する全長アンギオスタチンおよびエンドスタチンに対して生理学的に類似した挙動を示す、アンギオスタチンの生物活性フラグメント(例えば、Kringle1、Kringle2、Kringle3、およびそれらの組み合わせ)、およびエンドスタチンの生物活性フラグメントである標的タンパク質を含む。
【0055】
本発明の別の実施態様は、新脈管形成インヒビターの二機能性ハイブリッド構築物を提供する。本明細書中で使用される場合、二機能性ハイブリッド分子または構築物は、2つのタンパク質サブユニット(ここで、この2つのサブユニットは、異なるタンパク質に由来し得る)を組合わせることによって生成されるタンパク質を意味する。各タンパク質サブユニットはそれ自身の独立した機能を有し、その結果、ハイブリッド分子では、この2つのサブユニットの機能は付加的または相乗的であり得る。そのような機能的ハイブリッドタンパク質は、動物モデルにおいて調査されるアンギオスタチンおよびエンドスタチンの相乗効果を可能にする。好ましい二機能性ハイブリッドは、直接的またはポリペプチドリンカーによってのいずれかで直列に連結された、少なくとも2つの異なる新脈管形成インヒビターを含み得る。例えば、好ましい実施態様では、標的配列は、エンドスタチンの少なくとも一部分とインフレームで連結されたアンギオスタチンの少なくとも一部分をコードし、そしてアンギオスタチンドメインおよびエンドスタチンドメインの両方は、抗新脈管形成活性または新脈管形成阻害を示す。2つのユニットは、ポリペプチドリンカーによって連結され得る。
【0056】
本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を一緒に、またはタンパク質とFc領域とを連結し得るペプチド配列を意味すると理解される。ポリペプチドリンカーは、好ましくは、グリシンおよび/またはセリンのような複数のアミノ酸を含む。好ましくは、ポリペプチドリンカーは、約10〜15残基長の一連のグリシンおよびセリンのペプチドを含む。例えば、米国特許第5,258,698号(この開示は、本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。しかし、最適なリンカーの長さおよびアミノ酸組成を、慣用的な実験によって決定し得ることが意図される。
【0057】
アンギオスタチンの種々の部分がFc融合タンパク質分子として発現される場合に、高レベルの発現が得られることが見出されている。これはおそらく、Fc領域がキャリアとして作用し、ポリペプチドがC末端で正確に折りたたまれるのを補助するからである。さらに、Fc領域は、生理的pHでグリコシル化および高度に荷電化され得、このようにしてFc領域は疎水性タンパク質を可溶化させるのを補助し得る。
【0058】
本発明はまた、Fc融合タンパク質としての非ヒト種のアンギオスタチンおよびエンドスタチンの生成のための方法を提供する。非ヒト新脈管形成インヒビター融合タンパク質は、新脈管形成インヒビターの前臨床的研究のために有用である。なぜなら、タンパク質薬物の有効性および毒性の試験が、ヒトにおいて試験する前に動物モデル系で実施されなければならないからである。ヒトタンパク質は、マウスモデルでは作用しないかもしれない。なぜなら、このタンパク質は免疫応答を誘発し得、そして/または試験結果を歪める異なった薬物動態を示し得るからである。従って、等価なマウスタンパク質が、マウスモデルにおいて試験するためのヒトタンパク質の最良な代用物である。
【0059】
マウスにおける標準的なルイス肺がん腫モデル(O’Reillyら(1997)Cell 88:277)を使用して、可溶性huFc−huアンジオスタチン、huFc−huエンドスタチン、muFc−muアンジオスタチン、muFc−muエンドスタチンを、E.coli発現系において生成されたその不溶性タンパク質と比較した。可溶性Fc融合タンパク質は、E.coliにおいて生成された対応タンパク質よりも、ルイス肺モデルにおいて腫瘍増殖を抑制する際により有効であった。さらに、実験室マウスを同系交配し、そしてそれらの腫瘍を自然発生的ではなく誘導した。従って、マウスモデルにおける有効性は、ヒト腫瘍に対する、ありそうな有効性に相関しないかもしれない。イヌにおける前臨床的研究は、自然発生的腫瘍に対するこれらの新脈管形成インヒビターの有効性に関するより正確な情報を提供する。なぜなら、多くの自然に起こる自然発生的なイヌの腫瘍が存在するからである。本発明のマウス(mu)Fc−muアンギオスタチン、muFc−muエンドスタチン、およびイヌ(ca)Fc−caアンギオスタチン、caFc−caエンドスタチンを生成する方法は、マウス系およびイヌ系の両方における新脈管形成インヒビターの前臨床的研究を容易にする。
【0060】
本発明は、本発明のDNA、RNA、またはタンパク質を投与することによって、新脈管形成により媒介される状態を処置する方法を提供する。新脈管形成により媒介される状態としては、例えば、以下が挙げられる:固形腫瘍;血液媒介性腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍(血管腫、聴神経腫、神経線維腫、トラコーマ、および発熱性肉芽腫を含む);慢性関節リウマチ;乾癬;眼球の新脈管形成疾患(糖尿病性網膜症、未熟児の網膜障害、黄斑変性、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障)、水晶体後線維増殖症、ルベオーシス、オースラー−ウェーバー症候群(Osler−Webber Syndrome);心筋新脈管形成;斑新生血管形成(plaque neovascularization);毛細管拡張症;血友病関節血管線維腫;および創傷肉芽形成;ならびに、内皮細胞、腸接着、動脈硬化症(artherosclerosis)、強皮症および過形成性瘢痕(すなわち、ケロイド)の過剰刺激または異常刺激。
【0061】
本明細書中に開示されるDNA構築物は、遺伝子治療手順において有用であり得る。ここでは、エンドスタチン遺伝子およびアンギオスタチン遺伝子を、種々の手段(例えば、プロモーターと結合されたネイティブなDNA、またはウイルスベクター内におけるDNA)のうちの1つによって細胞に送達する。一旦、細胞内になると、アンギオスタチンおよび/またはエンドスタチンの遺伝子または遺伝子フラグメントが発現され、そしてこのタンパク質がインビボで生成されて、その正常な生物学的機能を果たす。本発明のDNA構築物は、融合タンパク質の高レベルの発現を生じる。本発明の融合タンパク質はまた、新脈管形成により媒介される状態を処置する際に有用であり得、そしてネイティブな新脈管形成インヒビターおよび他の組換え新脈管形成インヒビターよりも高い臨床的有効性を有し得る。なぜなら、本発明の新脈管形成インヒビターイムノフュージンは、他の組換え新脈管形成インヒビターまたはネイティブな新脈管形成インヒビター単独よりも長い血清半減期を有するからである。本発明の二価形態および二量体形態は、その二価構造および二量体構造に起因して、より高い結合親和性を有するはずである。本発明の二機能性ハイブリッド分子は、融合Fc領域または可撓性ポリペプチドリンカーによって連結された2つの異なる新脈管形成インヒビターについてのあり得る相乗効果に起因して、より高い臨床的有効性を有し得る。
【0062】
本発明の組成物を、任意の適切な手段によって、直接的に(例えば、局所的に、組織位置への注射、移植、または局所的投与によるような)か、または全身的に(例えば、非経口的または経口的に)、動物に提供し得る。組成物が非経口的に提供される場合(例えば、静脈内、皮下、眼、腹腔内、筋内、口内、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、頭蓋内、脊椎内、脳室内、鞘内、槽内、嚢内、鼻腔内、またはエアロゾル投与による)、好ましくは、組成物は、水性の部分か、または生理的に適合性の流体の懸濁物もしくは溶液を含む。従って、キャリアまたはビヒクルは生理的に受容可能であり、その結果、所望の組成物の患者への送達に加えて、これは他の点で患者の電解質および/または容量均衡に有害に作用しない。従って、この薬剤のための流体の培地は、正常生理食塩水(例えば、9.85%水性NaCl、0.15M、pH7〜7.4)を含み得る。
【0063】
投与あたりのイムノフュージンの好ましい投薬量は、50ng/m2〜1g/m2、より好ましくは5μg/m2〜200mg/m2、そして最も好ましくは0.1mg/m2〜50mg/m2の範囲内である。投与あたりのイムノフュージンをコードする核酸の好ましい投薬量は、1μg/m2〜100mg/m2、より好ましくは20μg/m2〜10mg/m2、そして最も好ましくは400μg/m2〜4mg/m2の範囲内である。しかし、投与の最適な様式および投薬量を、当該分野の技術レベルの十分範囲内にある慣用的実験によって決定し得ることが意図される。
【0064】
本発明を、以下の限定されない実施例によってさらに例証する。
【実施例】
【0065】
(実施例)
(実施例1.huFc−huエンドスタチンの発現)
ヒトエンドスタチンを、Loら(1998)(Protein Engineering 11:495)の教示に従って、ヒトFc−ヒトエンドスタチン(huFc−huEndo)融合タンパク質として発現させた。Fcは、ヒト免疫グロブリンγのFcフラグメントをいう(配列番号1に示されるDNA配列;配列番号2に示されるアミノ酸配列)。(ポリメラーゼ連鎖反応PCR)を使用して、Fc−Endo融合タンパク質における発現に、エンドスタチンcDNA(配列番号3;このアミノ酸配列は、配列番号4に開示される)を合わせた。正方向プライマーは、5’−CC CCG GGT AAA CAC AGC CAC CGC GAC TTC C(配列番号5;配列番号6に開示されるアミノ酸をコードした)、または5’−C AAG CTT CAC AGC CAC CGC GAC TTC C(配列番号7;コードされるアミノ酸を配列番号8に開示する)のいずれかであって、ここでXmaI部位またはHindIII部位にはエンドスタチンのN末端をコードする配列が続いた。XmaI部位を有するプライマーは、IgG Fc領域のCH3ドメインの末端でのXmaI部位への連結に、エンドスタチンcDNAを合わせた。HindIII部位を有するプライマーは、融合タンパク質の連結部にエンテロキナーゼ認識部位であるAsp4−Lys(La Vallieら(1993)J.Biol.Chem.268:23311−23317)を含むpdCs−Fc(D4K)ベクターのHindIII部位への連結に、エンドスタチンcDNAを合わせた。逆方向プライマーは、5’−C CTC GAG CTA CTT GGA GGC AGT CAT G(配列番号9)(これは、エンドスタチンのC末端の直後に翻訳終止コドン(アンチコドン、CTA)を置くように設計された)であり、これにはXhoI部位が続く。PCR産物をクローン化および配列決定し、そして得られたXmaIおよびXhoI消化pdCs−FcベクターにXmaI−XhoIフラグメントを連結させた。同様に、エンドスタチンをコードするHindIII−XhoIフラグメントを、適切に消化したpdCs−huFc(D4K)ベクター内に連結した。Fc−endoまたはFc(D4K)−エンドスタチンを発現する安定なクローンを、NS/0細胞のエレクトロポレーション、次いで、100nMメトトレキサートを含有する増殖培地における選択によって得た。タンパク質発現レベルを、抗ヒトFcELISA(実施例3)によってアッセイし、SDS−PAGEによって確認した。SDS−PAGEによって、約52kDのタンパク質産物が示された。最良の産生クローンを、限界希釈によってサブクローニングした。
【0066】
(実施例2.細胞培養およびトランスフェクション)
一過性トランスフェクションについて、リン酸カルシウムとプラスミドDNAとの沈降によって(Sambrookら(1989)Molecular Cloning−A Laboratory Manual、Cold Spring Harbor、NY)か、またはLipofectAMINE Plus(Life Technologies、Gaithersburg、MD)を製造業者の指示に従って用いたリポフェクションによって、プラスミドをヒト腎臓293細胞内に導入した。
【0067】
安定的にトランスフェクトされたクローンを得るために、プラスミドDNAをエレクトロポレーションによってマウス骨髄腫NS/0細胞内に導入した。NS/0細胞を、10%胎仔ウシ血清を補充したダルベッコ改変イーグル培地内で増殖させた。約5×106細胞をPBSで1回洗浄し、そして0.5mlのPBS中に再懸濁した。次いで、10μgの直鎖化プラスミドDNAを、細胞と共にGene Pulser Cuvette(0.4cm電極ギャップ、BioRad、Hercules、CA)中で氷上にて10分間インキュベートした。エレクトロポレーションを、0.25Vおよび500μFの設定で、Gene Pulser(BioRad、Hercules、CA)を用いて実施した。細胞を、氷上で10分間で回復させ、その後この細胞を増殖培地中に再懸濁し、次いで、2つの96ウェルプレート上にプレーティングした。安定的にトランスフェクトされたクローンを、トランスフェクションの2日後に導入された100nMのメトトレキサート(MTX)の存在下での増殖によって選択した。細胞に、3日おきにさらに3回補給し、そして2〜3週間でMTX耐性クローンが現れた。クローン由来の上清を、高産生株を同定するために、抗Fc ELISAによってアッセイした。抗産生クローンを単離し、そして100nMのMTXを含有する増殖培地中で増殖させた。
【0068】
(実施例3.ELISA手順)
3つの異なるELISAを使用して、MTX耐性クローンおよび他の試験サンプルの上清におけるタンパク質産物の濃度を決定した。抗ヒトFc(huFc)ELISAを使用して、ヒトFc含有タンパク質の量を測定した。抗マウスFc(muFc)抗体および抗イヌ(caFc)抗体をELISAで使用して、それぞれ、マウスFc含有タンパク質およびイヌFc含有タンパク質の量を測定した。抗huFc ELISAについての手順は、本明細書中で以下に詳細に記載される。
【0069】
(A.プレートのコーティング)
ELISAプレートを、AffiniPure ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch Laboratories、West Grove、PA)(PBS中で5μg/ml)で、96ウェルプレート(Nunc−Immuno Plate MaxiSorpTM、Nalge Nunc International、Rochester、NY)において100μl/ウェルにてコーティングした。コーティングされたプレートを被覆し、そして4℃で一晩インキュベートした。次いで、プレートをPBS中の0.05%Tween20で4回洗浄し、そしてPBS中の1%BSA/1%ヤギ血清(200μl/ウェル)でブロックした。37℃で2時間のブロッキング緩衝液とのインキュベーションの後、プレートをPBS中の0.05%Tweenで4回洗浄し、そしてペーパータオルで軽く叩いて乾かした。
【0070】
(B.試験サンプルおよび2次抗体とのインキュベーション)
試験サンプルを、PBS中の1%BSA/1%ヤギ血清/0.05%Tweenを含有するサンプル緩衝液において適切な濃度に希釈した。濃度が既知であったキメラ抗体(ヒトFcを有する)を用いて、検量線を作成した。検量線を作成するために、サンプル緩衝液中に連続希釈を作製して、125ng/ml〜3.9ng/mlの範囲にわたる検量線を得た。希釈サンプルおよび基準物をプレートに添加し(100μl/ウェル)、次いで、このプレートを37℃で2時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートをPBS中の0.05% Tweenで8回洗浄した。次いで、各ウェルに、サンプル緩衝液中で約1:120,000で希釈された100μlの2次抗体である西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体化抗ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories、Inc.West Grove、PA)を添加した。2次抗体の正確な希釈は、HRP結合体化抗ヒトIgGの各ロットについて決定されなければならない。37℃での2時間のインキュベーションの後、このプレートをPBS中の0.05% Tweenで8回洗浄した。
【0071】
(C.呈色)
基質溶液を、0.03%の新たに添加されたH22を含有する15mlの0.025Mクエン酸/0.05M Na2HPO4緩衝液(pH5)中に、30mg(1錠)のo−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(OPD)を溶解することによって調製した。この基質溶液を、100μl/ウェルでプレートに添加した。色は、暗黒下にて室温で、30分間で呈色が可能であった。呈色時間は、コーティングされたプレート、2次抗体などのロット毎の変動性に依存して、変更され得る。この反応を、100μl/ウェルで4NのH2SO4を添加することによって停止させた。このプレートを、プレートリーダー(これを、490nmおよび650nmの両方に設定し、そして490nmでのODから650nmでのバックグラウンドODを差し引くようにプログラムした)で読み取った。
【0072】
抗muFc ELISAについての手順は、ELISAプレートを、AffiniPureヤギ抗マウスIgG(H+L)(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)(PBS中で5μg/ml)で、100μl/ウェルにてコーティングすること;そして、2次抗体が、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化ヤギ抗muIgG(Fcγ)(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)(5000中で1の希釈率で使用)であったことを除いて、同様であった。同様に、抗caFc ELISAについて、ELISAプレートを、AffiniPureウサギ抗イヌIgG(Fcフラグメント特異的)(Jackson Immuno Research,West Grove、PA)(PBS中で5μg/ml)で100μl/ウェルにてコーティングし;そして、2次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ結合体化AffiniPureウサギ抗イヌIgG(Fcフラグメント特異的)であった(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)(5000中で1の希釈率で使用)。
【0073】
(実施例4.huFc−huアンギオスタチンの発現)
ヒトアンギオスタチン(配列番号10に示されるDNA配列;配列番号11に示されるアミノ酸配列)を、本質的に実施例1に記載されるように、ヒトFc−ヒトアンギオスタチン(huFc−huAngio)融合タンパク質として発現させた。pdCs−huFcベクターまたはpdCs−huFc(D4K)ベクターにおける発現にアンギオスタチンcDNA(配列番号3)を合わせるために、PCRを使用した。それぞれの正方向プライマーは、5’−CC CCG GGT AAG AAA GTG TAT CTC TCA GAG(配列番号12;配列番号13に開示されるアミノ酸をコードした)、および5’−C CCC AAG CTT AAA GTG TAT CTC TCA GAG(配列番号14;配列番号15に開示されるアミノ酸をコードした)であり、ここでXmaI部位またはHindIII部位の後には、アンギオスタチンのN末端をコードする配列が続いた。逆方向プライマーは、アンギオスタチンのC末端の直後に翻訳終止コドン(アンチコドン、CTA)を配置するように設計された、5’−CCC CTC GAG CTA CGC TTC TGT TCC TGA GCA(配列番号16)であり、そしてこれには、XhoI部位が続いた。このPCR産物をクローニングし、そして配列決定し、そしてアンギオスタチンをコードする得られたXmaI−XhoIフラグメントおよびHindIII−XhoIフラグメントを、それぞれ、pdCs−huFcベクターおよびpdCs−huFc(D4K)ベクターに連結した。huFc−huAngioおよびhuFc(D4K)−huAngioを発現している安定なNS/0クローンを、実施例2および3に記載されるように選択し、そしてアッセイした。
【0074】
(実施例5.muFc−muエンドスタチンの発現)
マウスエンドスタチン(配列番号17に示されるDNA配列;配列番号18に示されるアミノ酸配列)およびマウスFc(配列番号19に示されるDNA配列;配列番号20に示されるアミノ酸をコードした)を、本質的に実施例1に記載されるように、マウスFc−マウスエンドスタチン(muFc−muEndo)融合タンパク質として発現させた。pdCs−muFc(D4K)ベクターにおける発現めにエンドスタチンcDNA(配列番号4)を合わせるために、PCRを使用した。正方向のプライマーは、5’−C CCC AAG CTT CAT ACT CAT CAG GAC TTT C(配列番号21;配列番号22に開示されるアミノ酸をコードした)であり、ここでHindIII部位には、エンドスタチンのN末端をコードする配列が続いた。逆方向プライマーは、エンドスタチンのC末端の直後に翻訳終止コドン(アンチコドン、CTA)を配置するように設計された5’−CCC CTC GAG CTA TTT GGA GAA AGA GGT C(配列番号23)であり、そしてこれには、XhoI部位が続いた。このPCR産物をクローニングし、そして配列決定し、そしてエンドスタチンをコードする得られたHindIII−XhoIフラグメントを、pdCs−muFc(D4K)ベクター中に連結した。muFc(D4K)−muEndoを発現している安定なNS/0クローンを、実施例2および3に記載されるように選択し、そしてアッセイ(抗muFc ELISA)した。
【0075】
(実施例6.muFc−muアンギオスタチンの発現)
マウスアンギオスタチン(配列番号24に示されるDNA配列;配列番号25に示されるアミノ酸配列)を、本質的に実施例1に記載されるように、マウスFc−マウスアンギオスタチン(muFc−muAngio)融合タンパク質として発現させた。PCRを、pdCs−Fs(D4K)ベクターにおける発現にアンギオスタチンcDNA(配列番号6)を合わせるために使用した。正方向プライマーは、5’−C CCC AAG CTT GTG TAT CTG TCA GAA TGT AAG CCC TCC TGT CTC TGA GCA(配列番号26;配列番号27に開示されるアミノ酸をコードする)であり、ここでHindIII部位には、アンギオスタチンのN末端をコードする配列が続いた。逆方向プライマーは、アンギオスタチンのC末端の直後に翻訳終止コドン(アンチコドン、CTA)を配置するように設計された5’−CCC CTC GAG CTA CCC TCC TGT CTC TGA GCA(配列番号28)であり、そしてこれには、XhoI部位(CTCGAG)が続いた。このPCR産物をクローニングし、そして配列決定し、そしてアンギオスタチンをコードするHindIII−XhoIフラグメントを、pdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。muFc(D4K)−muAngioを発現している安定なNS/0クローンを、実施例2および3に記載されるように選択し、そしてアッセイ(抗muFc ELISA)した。
【0076】
(実施例7.イヌFc(caFc)の発現)
イヌの血液から単離されたイヌ末梢血単球細胞(PBMC)を使用して、mRNAを調製した。逆転写酵素およびオリゴ(dT)を用いる第1鎖cDNAの合成後に、正方向プライマー5’−CC TTA AGC GAA AAT GGA AGA GTT CCT CGC(配列番号29;配列番号30に開示されるアミノ酸をコードした)(ここでAfIII部位を、イヌFcのヒンジ領域をコードする配列のすぐ上流に導入した)および逆方向プライマー5’−C CTC GAG TCA TTT ACC CGG GGA ATG GGA GAG GGA TTT CTG(配列番号31)(ここでXhoI部位を、イヌFcの翻訳終止コドン(アンチコドン、TCA)の後に導入した)を使用して、イヌFc(Kazuhikoら、(1992)JP 1992040894−A1)を増幅するために、PCRを実行した。逆方向プライマーはまた、XmaI制限部位を作製するためにサイレント変異を導入し、これによりリンカー−アダプターを通じたpdCs−caFc(D4K)ベクターの構築およびイヌのエンドスタチンまたはアンギオスタチンをコードするDNA構築物への連結が容易になった。Loら(Loら、Protein Engineering(1998)11:495)に詳細に記載されたpdCs−huFcの構築と同様に、pdCs−caFcについての発現ベクターを、以下の通りに構築した。イヌFcをコードするAfIII−XhoIフラグメントを、軽鎖シグナルペプチドをコードするXbaI−AfIIIフラグメントおよびXbaI−XhoIで消化したpdCsベクターに連結した。次いで、得られたpdCs−caFc発現ベクターを使用して、293細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションのおよそ3日後、この上清を、プロテインAクロマトグラフィーにより精製した。イヌFc(配列番号32に示されるDNA配列;配列番号33に示されるアミノ酸配列)の発現を、ペルオキシダーゼ結合体化ウサギ抗イヌIgG(Fcフラグメント特異的)(Jackson ImmunoResearch、West Grove、PA)を使用して、SDS−PAGE、続いてウエスタンブロット分析により確認した。
【0077】
(実施例8.caFc−caエンドスタチンの発現)
イヌエンドスタチンのコード配列(配列番号34に示されるDNA配列;配列番号35に示されるアミノ酸配列)を、本質的に実施例5に記載されるように、Fc融合タンパク質としての発現のために、HindIII−XhoIフラグメントに合わせた。3’末端にて、終止コドンを、例えば、PCRによって、C末端のリジン残基をコードするコドンのすぐ後に導入し、そしてこれには、NotI制限酵素部位が続いた。しかし、5’末端では、再構築に都合のよいDraIII制限部位が存在した。HindIII粘着末端およびDraIII粘着末端からなるオリゴヌクレオチド2重鎖を化学的に合成し、そしてイヌエンドスタチンcDNAの残りをコードするDraIII−XhoI制限フラグメントに連結するために使用した。使用された二重鎖を以下に示す:
【0078】
【化1】

二重鎖における第1のCACは、イヌエンドスタチンのN末端ヒスチジン残基をコードする。従って、全長のイヌエンドスタチンをコードするHindIII−XhoIフラグメントは、発現のためにHindIII−XhoIで消化したpdCs−caFcベクター(実施例7を参照のこと)に連結され得る。caFc−caEndoを発現している安定なNS/0クローンを、実施例2および3に記載されるように選択し、そして抗caFc ELISAによりアッセイした。このタンパク質産物を、SDS−PAGEで分析し、そしてウエスタンブロット分析により確認した。
【0079】
(実施例9.caFc−caアンギオスタチンの発現)
全長のイヌアンギオスタチンをコードするcDNA(配列番号39に示されるDNA配列;配列番号40に示されるアミノ酸配列)を、本質的に前述の実施例に記載されるように、caFc融合タンパク質として、発現に合わせた。簡潔には、3’末端にて、終止コドンを、例えば、PCRによって、C末端のリジン残基をコードするコドンのすぐ後に導入し、そしてこれには、XhoI部位の代わりのNotI制限部位が続いた。なぜなら、イヌアンギオスタチンのcDNAにおいて、内側XhoI制限部位が存在したからであった。5’末端にて、HindIII部位を、アンギオスタチンのN末端のすぐ上流にインフレーム(in−frame)で導入した。次いで、全長のイヌアンギオスタチンをコードするHindIII−NotIフラグメントを、発現のために、HindIII−NotIで消化したpdCs−caFcベクターに連結した(ここでNotI部位を、リンカー連結を通してXhoI部位に導入した)。caFc−caAngioを発現している安定なNS/0クローンを、実施例2および3に記載されるように選択し、そして抗caFc ELISAによりアッセイした。このタンパク質産物を、SDS−PAGEで分析し、そしてウエスタンブロット分析により確認した。
【0080】
(実施例10.muFc−muAngio K1の発現)
アンギオスタチンは、プラスミノーゲンの5つのKringleドメインのうちの初めの4つを含む。いずれか1個または数個のKringleドメインがアンギオスタチンの観察された抗脈管形成活性を担うか否かを決定するために、試験のために、1個のKringleドメインを単独でまたはそれらの組合せで産生することが、可能である。融合タンパク質パートナーとしてのFcの有用性を実証するために、マウスアンギオスタチンの第1のKringleドメイン(K1)の発現を、以下の方法で達成した。第1のKringleドメインは、マウスアンギオスタチン(配列番号25)のGlu−87で終了する。cDNA中のこの位置には、都合のよいNsiI制限部位が存在したので、その結果、NsiIによる消化の後に、4塩基の3’突出をT4ポリメラーゼにより除去して、平滑末端を作製した。翻訳終止停止コドンを、パリンドロームリンカーTGA CTC GAG TCA(配列番号41)への連結を通して、Glu−87をコードするGAAのすぐ下流に導入した。ここで終止コドンTGAには、XhoI部位が続いた。次いで、この短縮型アンギオスタチン(すなわち、第1のKringleのみ)をコードするHindIII−XhoIフラグメントを、発現のためにpdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEにより分析したとき、高レベルの発現が、一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0081】
(実施例11.muFc−muAngio内側K1の発現)
Kringleドメインは、複数のループ(外側のループおよび内側のループを含む)からなる。マウスアンギオスタチンの第1のKringleでは、この内側のループはCys55およびCys79によって規定され、これは一緒になって、このループの基部でジスルフィド結合を形成する。内側のループのCys−67は、外側のループのCys残基と別のジスルフィド結合を形成し、Kringle構造を生じる。この内側のループが任意の抗脈管形成活性を有するか否かを試験するために、これを、以下の通りにmuFc−内側K1(Kringle1)として発現させた。テンプレートとして第1のKringleをコードするDNAフラグメントとともに、配列5’GGG CCT TGG AGC TAC ACT ACA(配列番号42;配列番号43に開示されるアミノ酸をコードした)を有する変異原性プライマーを使用して、PCRによって、TGC(Cys−67)からAGC(Ser)に変異誘発した。このことは、Kringle1の内側のループが外側のループなしに発現される場合に、Cys−67がジスルフィド結合を形成しないことを保証する。配列5’GCGGATCCAAGCTT AGT ACA CAT CCC AAT GAG GG(配列番号44;配列番号45に開示されるアミノ酸をコードした)を有する上流プライマーを使用して、Ser−43(AGT)に対するコドンのすぐ5’にインフレームでHindIII部位を導入した。BamHI部位もまた、このHindIII部位のすぐ上流に導入した。このBamHI部位は、以下の実施例12に示される可撓性Gly−Serリンカーの末端に、BamHI部位を連結するために有用である。従って、マウスアンギオスタチンのSer−43からGlu−87をコードするHindIII−XhoI DNAフラグメントを、発現のためにpdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。muFc−内側K1の高レベルの発現は、抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEによって分析したとき、一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0082】
(実施例12.muFc−muEndo−GlySerリンカー−muAngio 内側K1の発現)
ハイブリッド分子muFc−muEndo−内側K1は、グリシン残基およびセリン残基を含むポリペプチドリンカーにより、マウスアンギオスタチンの第1のKringleの内側のループに対して連結されたmuFc−muEndoを含む。このDNA構築物を以下の通りに構築した。
【0083】
マウスエンドスタチンcDNAの3’末端にBspHI部位が存在する。マウスエンドスタチンのC末端にグリシン残基およびセリン残基の可撓性リンカーを導入するために、エンドスタチンをコードする540bpのHindIII−BspHIフラグメントを、配列番号46および配列番号48に開示されるオリゴヌクレオチドにより形成される重複するオリゴヌクレオチド二重鎖に連結した。配列番号46によってコードされるアミノ酸リンカーを、配列番号47に開示する。
【0084】
マウスエンドスタチンおよびGly−SerリンカーをコードするHindIII−BamHIフラグメントを、標準的なクローニングベクター中にサブクローニングした。次いで、BamHI部位を使用して、実施例11における内側K1をコードするBamHI−XhoIフラグメントを導入した。muEndo−GlySerリンカー−内側K1をコードする得られたHindIII−XhoIフラグメントを、発現のためにpdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。muFc−muEndo−GlySerリンカー−内側K1の高レベルの発現は、抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEにより分析したとき、一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0085】
(実施例13.muFc−muEndo−GlySerリンカー−muAngio K1の発現)
ハイブリッド分子muFc−muEndo−K1は、グリシン残基およびセリン残基を含むポリペプチドリンカーにより、マウスアンギオスタチンの第1のKringleに対して連結されたmuFc−muEndoを含む。このDNA構築物を以下の通りに構築した。
【0086】
muEndo−GlySerリンカーをコードするHindIII−BamHIフラグメント(実施例12)のBamHI末端を、以下のアダプターを通じて、マウスアンギオスタチンのKringle1をコードするHindIII−XhoIフラグメント(実施例10)に連結した:
【0087】
【化2】

このアダプターは、HindIII’粘着末端を有し、これは、連結の際にHindIII部位を再生しない。従って、muEndo−GlySerリンカー−Kringle1をコードする得られたHindIII−XhoIフラグメントを、発現のためにpdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。muFc−muEndo−GlySerリンカー−K1の高レベルの発現は、抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEにより分析したとき、一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0088】
(実施例14 muFc−muEndo−GlySerリンカー−muAngioの発現)
ハイブリッド分子muFc−muEndo−GlySerリンカー−muAngioは、グリシン残基およびセリン残基を含むポリペプチドリンカーにより、マウスアンギオスタチンに対して連結されたmuFc−muEndoを含む。このDNA構築物を、本質的に以下の通りに構築した。muEndo−GlySerリンカーをコードするHindIII−BamHIフラグメント(実施例12)のBamHI末端を、実施例13に記載されるアダプターを通して、マウスアンギオスタチンをコードするHindIII−XhoIフラグメントに連結した。muEndo−GlySerリンカー−muAngioをコードする得られたHindIII−XhoIフラグメントを、発現のためにpdCs−muFc(D4K)ベクターに連結した。muFc−muEndo−GlySerリンカー−muAngioの高レベルの発現は、抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEにより分析したとき、一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0089】
(実施例15.huAngio−huFc−huEndoの発現)
ハイブリッド分子huAngio−huFc−huEndoは、huFc−huEndoにペプチド結合により連結されたヒトアンギオスタチンを含む。このDNA構築物を、以下の通りに構築した。終止コドンを有さないヒトアンギオスタチンをコードするHindIII−XhoIフラグメントを、PCRによって初めに作製し、その結果、アンギオスタチンの最後のアミノ酸残基についてのコドンには、XhoI部位のCTCGAGがすぐ続いた。5’末端のHindIIIを、AfIII−HindIII’アダプターを通して、軽鎖シグナルペプチド(Loら、Protein Engineering(1998)11:495)のXbaI−AfIIIフラグメントに連結した:
【0090】
【化3】

アダプターのHindIII’粘着末端は、連結の際にHindIII部位を再生しなかった。3’末端にて、XhoI部位を、以下のXhoI’−AfIIIアダプターを通じて、huFc−hu−EndoをコードするAfIII−XhoIフラグメントのAfIII部位に連結した:
【0091】
【化4】

このアダプターのXhoI粘着末端は、連結の際にXhoI部位を再生しない。シグナルペプチド−ヒトアンギオスタチン−huFc−ヒトエンドスタチンをコードする得られたXbaI−XhoIフラグメントを、発現のためにpdCsベクター中にクローニングした。高レベルの発現は、抗muFc ELISAおよびSDS−PAGEによって分析したとき一過性発現および安定な発現の両方において得られた。
【0092】
(実施例16 薬物動態学)
薬物動態学研究の1つのセットでは、100〜200mm3のLewis肺腫瘍を移植されたC57/BL6マウスに尾静脈において、1匹のマウス当たり720μgのhuFu−huAngioを注射した。本研究で使用された腫瘍のサイズおよびhuFc−huAngioの用量を選択して、O’Reilly(O’Reillyら、(1996)Nature Medicine 2:689)により記載される実際の処置プロトコルをシミュレートした。血液を眼窩後方の採血により、注射後1/2、1、2、4、8、24、および48hrに回収した。この血液サンプルを、抗huFc ELISA、続いてウエスタン分析によって分析した。huFc−huAngioは、マウスにおいて約32時間の循環半減期を有することが見出され、そしてウエスタン分析は、90%を超えるhu−Fc−huAngioが循環中にインタクトな分子として残っていたことを示した。
【0093】
薬物動態学研究をまた、腫瘍を有さないSwissマウスにおいて、200μg/マウスの用量で繰り返した。この場合では、huFc−huAngioは、約33時間の循環半減期を有することが見出された。
【0094】
(均等物)
本発明は、それらの精神または必須の特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化され得る。従って、前述の実施態様は、本明細書中に記載される本発明を限定するのでなく、例示的であると全ての点において考慮されるべきである。従って、本発明の範囲は、前述の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、従って、特許請求の範囲の均等の意味および範囲内となる全ての変化は、特許請求の範囲に包含されることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2009−273478(P2009−273478A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196091(P2009−196091)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【分割の表示】特願2000−566305(P2000−566305)の分割
【原出願日】平成11年8月25日(1999.8.25)
【出願人】(308014846)メルク パテント ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】