説明

イメージファイバ装置

【課題】光源からの励起光を光ファイバ端部に入射させ、光フィイバから戻ってくる光を入射端部から出射させ、出射光を入射経路より他の経路に導いて出射光を検出するイメージファイバ装置であって、光ファイバをファイバ素材束で構成し、該ファイバ素材束端部にそれぞれ対応させてマイクロレンズを配置することによりイメージファイバの多数本のファイバ素材のクラッド層部分の影響を少なくして明るく鮮明な画像を得ることができるイメージファイバ装置を提供する。
【解決手段】光源13からの光は励起フィルタ15によって励起され、ニプコウ板19,18を通って集光レンズ2で集光されてイメージファイバ1端に配置された凸レンズ集合体4に入射する。凸レンズ集合体4は多数のマイクロレンズを配列して構成され、励起光は各マイクロレンズによってイメージファイバ1の各ファイバ素材に導かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば集中医療、救急医療でのモニタ,体内水分量関連測定,肝機能検査において使用されるカテーテルシステムなどに適用可能なイメージファイバ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカテーテルシステムに使用されるイメージファイバ装置として、本件出願人は特許文献1,2を提案している。特許文献1はエバネッセントカテーテルシステムに関するもので、光ファイバに接続された測定装置は、励起光を発生し光ファイバに入射させるための光学系と、光ファイバの先端に入射する蛍光物質からの蛍光を検出するための光学系を持ち、検出信号を演算部で処理してモニタや記録系に記録するものである。特許文献2はインドシアニンを定量するためカテーテルシステムであって、測定装置の構造は特許文献1と略類似の構成となっている。
これら提案の測定装置は光コネクタの端部に光出力光学系として集光レンズ,フィルタおよび検出器が配置されたものである。
【0003】
また、光ファイバの端面に各ファイバ素材に対応したレンズを設けるものは、例えば特許文献3〜6が提案されている。
特許文献3は、光ファイバ束の先端に形成する微小レンズの作り方を示すもので、クラッド部,コア部からなる多数のファイバ素線の先端に感光性樹脂を用いてレンズアレイを形成する光ファイバの端面処理方法を開示している。
特許文献4は、特許文献3と同様、光ファイバ束の先端に微小レンズを形成する方法を示すもので、光ファイバ先端にポジ型フォトレジストを塗布し、イメージファイバの他端面側から、このイメージファイバを介してフォトレジストを露光せしめた後、フォトレジストをエッチングしてレジストパターンを形成することにより、各コア端面上にそれぞれレンズを設けるものである。
【0004】
特許文献5は、光ファイバーと光源との結合効率を高めることが可能なライトガイドを提供することを目的とし、光源から放射された光をミラーで反射し、レンズ基板に形成されている多数の凸部に通すことによりクラッド部,コア部からなる多数のファイバ素線にそれぞれ光を入射させるようにしたものである。
特許文献6は、光ファイバのコア端面または光ファイババンドルの各コア端面に、位置合わせ精度良く、かつ低いコストでマイクロレンズを形成する方法を示しており、光ファイバの一端にフォトレジストを塗布することにより特許文献4と同じ処理工程で凸レンズ状のマイクロレンズを得るものである。
【特許文献1】特願2004−348482号
【特許文献2】特願2004−353711号
【特許文献3】特開平5−203822号公報
【特許文献4】特開平5−297232号公報
【特許文献5】特開2002−243988号公報
【特許文献6】特開2003−149470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のイメージファイバの場合、多数本(例えば1万本から2万本)のコア層とクラッド層からなるファイバ素材の束に対して、一つの凸レンズが配置されている構成が一般的であり、そのため、各ファイバ素材のクラッド層に対応する部分により、イメージファイバ全体として伝送される映像信号が暗くなり易い。そのため、イメージファイバとして明るいレンズを得ることが難しく、例えば鮮明な画像をフィルムやモニタに記録することが困難となるという問題があった。特許文献1,2は検出器の前に一つのレンズが配置されたものであり、上記と同様の構成であり、明るいレンズとは言えない。
【0006】
特許文献3〜6は、光ファイバ端に対し、多数のレンズアレイを配置することにより入射効率を上げるものであるが、特許文献3は光ファイバ端にレンズアレイを密着して形成するものであり、特許文献4,6は形成される各レンズがコア面に一致して形成されるものである。また、特許文献5は、凸部を有するレンズ基板は光ファイバの入射部から離れた構造を有するものである。しかしながら、特許文献3〜6はいずれも、集光レンズで集光された光をフィルタを通過させた後、光を多数のレンズに入射する構成を含めて、その前後の構成について開示されていない。
【0007】
本発明の目的は、光源からの励起光をフィルタ,集光レンズを介してエバネッセントカテーテルなどの光ファイバ端部に入射させ、光フィイバから戻ってくる光を入射端部から出射させ、出射光を入射経路より他の経路に導いて出射光を検出するイメージファイバ装置であって、光ファイバをファイバ素材束で構成し、該ファイバ素材束端部にそれぞれ対応させてマイクロレンズを配置することによりイメージファイバの多数本のファイバ素材のクラッド層部分の影響を少なくして明るく鮮明な画像を得ることができるイメージファイバ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、光源部からの励起光をフィルタを通して集光レンズに導き、集光レンズで集光された光をイメージファイバ端部に入射させ、イメージファイバから戻ってくる光をイメージファイバ端部から出射させ、該出射光を前記集光レンズ,フィルタを介して入射光路とは分離して他の光路に導き検出器で検出するイメージファイバ装置であって、前記イメージファイバはコア層の周囲がクラッド層で覆われた多数本のファイバ素材の束により形成され、前記イメージファイバ端部に前記各ファイバ素材のコア層に対応した凸レンズの集合体を配置し、イメージファイバに入射する光の入射効率を向上させたことを特徴とする。
本発明の請求項2は、請求項1記載の発明において前記各ファイバ素材対応に形成される凸レンズは、各ファイバ素材のコア層の外径より大きく、かつクラッド層の外径より小さいか略等しい外径であることを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1または2記載の発明において前記出射光を入射光路とは分離して他の光路に導く手段は、ダイクロイックミラーであり、前記フィルタは多数のマイクロレンズを有する第1ニプコウ板と前記マイクロレンズに対応した多数のピンホール孔を有する第2ニプコウ板であり、共焦点光学系のイメージファイバ装置を構成することを特徴とする。
本発明の請求項4は、請求項1,2または3記載の発明において入射光路と分離された他の光路には、蛍光を通過させるフィルタを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記請求項1の構成によれば、各凸レンズをファイバ素材のコア層に確実に対応させることができ、伝送ロスの少ない一層明るいレンズを有するイメージファイバ装置を得ることができる。
上記請求項2の構成によれば、各イメージファイバ素材に入射させるレンズが、各ファイバ素材のコア層の外径より、例えば大きい凸レンズの集合体であるため、各ファイバ素材のクラッド層部分の影響を受けることが少なくなり、より励起光の入射効率が向上する。上記請求項3の構成によれば、励起光の入射効率が良好な明るいレンズの共焦点顕微鏡を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1は、本発明によるイメージファイバ装置の実施の形態を示す概略図である。この実施の形態は、エバネッセントカテーテルシステムに適用したもので、共焦点顕微鏡を構成できるものである。
エバネッセントカテーテル1は多数の光ファイバ素材を束ねたイメージファイバで構成され、各光ファイバ素材対応の入出端にそれぞれマイクロレンズを固着してなる凸レンズ集合体4が配置されている。
このカテーテルシステムの測定部は、測定ターゲットに照射するため生体内に留置したイメージファイバ1の入出力端1bに励起光を入射するための照明光学系と、イメージファイバ先端部で受光した測定ターゲットが発生する蛍光をイメージファイバ1の入出力端1bから出射させて検出するための検出光学系と、光源制御部11と、光検出器6で検出した信号を演算する制御部8などを含んでいる。
【0011】
制御部8は操作卓12からの指示に基づき光源制御部11に対し光源起動の制御信号を送る。光源制御部11は半導体レーザやキセノンランプ等の光源13を起動させる。光源13の光は集光レンズ14で集光され励起フィルタ15によって励起され、ニプコウ板19,ダイクロイックミラー3,ニプコウ板18を通過し、集光レンズ2により集光されて凸レンズ集合体4に導かれる。凸レンズ集合体4の各マイクロレンズでそれぞれの光ファイバ素材に入射した励起光はイメージファイバ1の先端に伝達される。
【0012】
ニプコウ板18および19は、回転軸22で連結されており、フィルタ駆動部17によって回転制御される。フィルタ駆動部17は制御部8の指令に基づきニプコウ板18および19の回転速度やタイミングを制御する。
ニプコウ板18は、図2(b)に示すように透過孔18aが螺旋状に所定間隔で配置され、これら螺旋状の透過孔18aは円板全体に多数設けられている。ニプコウ板19はニプコウ板18の透過孔18a対応に多数のマイクロレンズ19aが配置されて構成されている。このニプコウ板18および19よりなるニプコウ組立をフィルタ駆動部17で回転駆動することにより、ターゲット像をモニタ9に表示することができる。螺旋状透過孔群の数とニプコウ板の回転速度(分速)を適宜制御することにより例えば、秒あたりの表示駒数を変更することができる。例えば、ニプコウ板を数千rpmで、螺旋状透過孔群の数を10個程度形成することにより、1駒を数msで表示することができる。
【0013】
イメージファイバ1の先端に送られた励起光は、ファイバ先端からエバネッセント光を発生させ、このエバネッセント光が照射されることによりターゲットから蛍光が発生する。ターゲットからの蛍光をイメージファイバ1の先端で受光すると、イメージファイバ1の入出力端1bから蛍光が出射され、凸レンズ集合体4を通り、集光レンズ2,ニプコウ板18の透過孔18aを介してダイクロイックミラー3に入射する。ダイクロイックミラー3では蛍光を含む波長帯は反射され、凸レンズ20を通ってフィルタ21に導かれる。フィルタ21は蛍光領域以外のノイズ部分を除去するもので、ノイズを除去された蛍光は反射鏡16,集光レンズ5を介して光検出器6に入射する。
【0014】
光検出器6は検出器制御部7bから起動信号およびタイミング信号を受けることにより蛍光が検出可能状態になる。光検出器6で検出した蛍光(所定の波長領域)は電気信号に変換され検出器用増幅器7aで増幅される。
制御部8は、制御プログラムに基づきCPUなどの演算素子によって光源制御や測定動作を行うとともに受信した増幅器7aの出力をA/D変換して所定の式に基づき蛍光強度を演算する。そして蛍光強度に基づき血中の蛍光物質の存在量を算出する。
モニタ9には測定動作のためのメニュー画面が表示されるとともに測定した蛍光強度および蛍光物質の存在量が表示される。
記録計10は時間とともに血中のリボフラビンなどの蛍光物質による蛍光強度の変化が刻まれる。
【0015】
図2は、ニプコウ板18,集光レンズ2およびイメージファイバ1の凸レンズ集合体4付近の詳細を説明するための図、図3は、凸レンズ集合体4の各マイクロレンズとイメージファイバ1のファイバ素材の詳細を示す図である。
ニプコウ板18は、上述したようにその中心から外側に略円弧形状で拡がるようにスパイラル状に透過孔18aが形成されている。凸レンズ集合体4は多数のマイクロレンズ4aを配列して構成され、イメージファイバ1はコア層の周囲にクラッド層が形成されたファイバ素材1aを多数本束にしたものである。
ニプコウ板18の透過孔18aは、図2(a)に示すように凸レンズ集合体4の各マイクロレンズ4a(イメージファイバ1の各ファイバ素材1a)に対応する状態に設定される。
【0016】
凸レンズ集合体4は、図3に示すように、イメージファイバ1の各ファイバ素材1aのコア層C部分の外径d2 より大きくクラッド層Kの外径d3 より小さいか、略等しい外径d1 (d2 <d1 ≦d3 )のマイクロレンズ4aの集合体で形成されている。この凸レンズ集合体4は、イメージファイバ1の各ファイバ素材1aを透過した光に基づいてレンズ加工することにより、各ファイバ素材1aとマイクロレンズ4aが一対一に対応した状態で加工(製造)される。
この構成により、各マイクロレンズ4aの大きさとイメージファイバ1の各ファイバ素材1aの大きさが対応していることから、各マイクロレンズ4aからの光が各ファイバ素材1aに伝送ロスすることなく確実に入射し、励起光がロスすることもなく効率良くイメージファイバに導かれる。
【0017】
以上の実施の形態では、ニプコウ組立によって共焦点光学系を構成する例を示したが、この構成に限らず適宜のフィルタを使用することができる。
凸レンズ集合体4は、イメージファイバ1の各ファイバ素材1aそれぞれに対応したマイクロレンズ4aを有する構成が最も好ましいが、複数本(例えばピラミッド状の3本)のファイバ素材1aに対して1個のマイクロレンズ4aを有する構成にしても、従来の構成よりレンズは明るくなり、伝送効率の低下は抑制される。
また、本発明はエバネッセントカテーテルシステムに適用した例について説明したが、この例に限らず、全ての分野について本発明によるイメージファイバ装置を適用することができる。
また、凸レンズ集合体4の形状(大きさ)等は一例であり、他の構成の凸レンズ集合体であっても良い。例えば各マイクロレンズ4a間に連結部を設けて強度アップすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
集中医療、救急医療でのモニタ,体内水分量関連測定,肝機能検査において使用されるカテーテルシステムなどに適用されるイメージファイバ装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるイメージファイバ装置が適用されるカテーテルシステムの実施の形態を示す概略図である。
【図2】ニプコウ板18,集光レンズ2およびイメージファイバ1の凸レンズ集合体4付近の詳細を説明するための図である。
【図3】凸レンズ集合体4の各凸レンズとイメージファイバ1のファイバ素材の詳細を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
1 エバネッセンカテーテル(イメージファイバ)
2,5,14 集光レンズ
3 ダイクロイックミラー
4 凸レンズ集合体
4a マイクロレンズ(凸レンズ)
6 光検出器
7a 検出器用増幅器
7b 検出器制御部
8 制御部
9 モニタ
10 記録計
11 光源制御部
12 操作卓
13 光源
15 励起フィルタ
16 反射鏡
17 フィルタ(ニプコウ板)駆動部
18,19 ニプコウ板
20 凸レンズ
21 フィルタ
22 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からの励起光をフィルタを通して集光レンズに導き、集光レンズで集光された光をイメージファイバ端部に入射させ、イメージファイバから戻ってくる光をイメージファイバ端部から出射させ、該出射光を前記集光レンズ,フィルタを介して入射光路とは分離して他の光路に導き検出器で検出するイメージファイバ装置であって、
前記イメージファイバはコア層の周囲がクラッド層で覆われた多数本のファイバ素材の束により形成され、
前記イメージファイバ端部に前記各ファイバ素材のコア層に対応した凸レンズの集合体を配置し、
イメージファイバに入射する光の入射効率を向上させたことを特徴とするイメージファイバ装置。
【請求項2】
前記各ファイバ素材対応に形成される凸レンズは、各ファイバ素材のコア層の外径より大きく、かつクラッド層の外径より小さいか略等しい外径であることを特徴とする請求項1記載のイメージファイバ装置。
【請求項3】
前記出射光を入射光路とは分離して他の光路に導く手段は、ダイクロイックミラーであり、
前記フィルタは多数のマイクロレンズを有する第1ニプコウ板と前記マイクロレンズに対応した多数の透過孔を有する第2ニプコウ板であり、
共焦点光学系のイメージファイバ装置を構成することを特徴とする請求項1または2記載のイメージファイバ装置。
【請求項4】
入射光路と分離された他の光路には、蛍光を通過させるフィルタを配置したことを特徴とする請求項1,2または3記載のイメージファイバ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−328132(P2007−328132A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159244(P2006−159244)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(504300181)国立大学法人浜松医科大学 (96)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】