説明

インキ組成物およびそれを用いた凹版オフセット印刷法

【課題】凹版オフセット印刷法に使用して連続的に印刷をした際に、シリコーンブランケットの表面の濡れ性に影響を及ぼしにくく、溶剤除去を実施する回数を少なくしたり省略したりしてもシリコーンブランケットの使用寿命を延長でき、しかも印刷初期から使用寿命に至るまでの間、常に安定して良好な印刷をすることができるインキ組成物と、それを用いた凹版オフセット印刷法を提供する。
【解決手段】インキ組成物は、共に溶解度定数が8.5〜12.0であるバインダ樹脂と溶剤とを含み、両者の溶解度定数の差の絶対値を2.0以下、溶剤の沸点を50〜200℃、インキ組成物の粘度を5〜50Pa・s、インキ組成物を乾燥させた塗膜のボールタック値を10〜28とした。凹版オフセット印刷法は、前記インキ組成物とシリコーンブランケットと凹版とを用いて、基板の表面に印刷パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも表面がシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットを用いた凹版オフセット印刷方法に適したインキ組成物、およびそれを用いた凹版オフセット印刷法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えばプラズマディスプレイパネル(PDP)を構成する電磁波シールドのシールドパターンや前面板の電極等の、基板の面積と比較してごく微細な線幅を有する導電パターンを前記基板のほぼ全面に形成して前記電磁波シールド等を製造するために、従来はいわゆるフォトリソグラフ法を利用した導電パターンの形成方法が採用されてきた。しかし近時、前記フォトリソグラフ法に代えてできるだけ工程数を少なく、消費エネルギーを小さく、使用する材料の無駄を少なく、そして短時間で生産性良く導電パターンを形成するために印刷法、特に凹版オフセット印刷法や反転印刷法等を利用して導電パターンを形成することが普及しつつある(特許文献1、2等参照)。
【0003】
このうち凹版オフセット印刷法では、前記導電パターンに対応した凹部を有する凹版を用意し、前記凹部に、顔料として導電性粉末を用いたインキ組成物(以下「導電性ペースト」と記載することがある)を充填し、充填した前記導電性ペーストをブランケットの表面に転写した後、基板の表面に再転写して焼き付けることで、前記基板の表面に凹版の凹部のパターンに対応した導電パターンが形成されて電磁波シールド等が製造される。かかる凹版オフセット印刷法によれば、例えば凹版の凹部をフォトリソグラフ法によって形成することで、従来の、基板の表面に直接にフォトリソグラフ法によって形成する場合とほぼ同等の、高い精度を有する導電パターンを有する電磁波シールド等を製造できる。
【0004】
またフォトリソグラフ法では、導電パターンを形成するために多数の工程を要する上、マスクパターンを用いたエッチングやプレーティング等を組み合わせて導電パターンを形成しているため、そのもとになる導電材料を、実際に形成する導電パターンが必要とする量以上に多量に使用したり、あるいはマスクパターンのもとになり導電パターンの形成後は除去しなければならない感光性樹脂等を多量に使用したりする必要がある。しかもエッチングや除去等によって発生するこれら多量の廃材は、個別に回収して再利用することが困難である。
【0005】
これに対し凹版オフセット印刷法では、凹版およびブランケットを繰り返し使用できる上、導電性ペーストの使用量はほぼ導電パターンを形成するのに必要な分だけで済み、多量の廃材が発生するおそれもないため資源の節約に繋がる上、前記のように工程数も少なくて済む。そのため凹版オフセット印刷法によれば、フォトリソグラフ法に比べて消費エネルギーを小さく、使用する材料の無駄を少なく、そして工程数を少なくして、電磁波シールド等を短時間で生産性良く製造できる。
【0006】
ブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムによって形成されたシリコーンブランケットが広く用いられる。シリコーンブランケットは導電性ペーストと常に接触することから、印刷を繰り返すうちに、前記導電性ペースト中に含まれる溶剤が含浸されて徐々に膨潤し、それに伴って前記シリコーンブランケットの表面の、導電性ペーストに対する濡れ性が徐々に上昇する。
【0007】
そしてこの濡れ性の上昇に伴って、シリコーンブランケットが凹版表面の微小な汚れを転写するようになったり、導電性ペーストをシリコーンブランケットの表面から基板の表面に再転写させる工程において、前記導電性ペーストが基板の表面に完全に転写されずにシリコーンブランケットの表面に残る転写不良が発生しやすくなったりする結果、安定して高精度で良好な印刷を行えなくなるに至る。また、例えば前面板の電極の場合は、その中でも線幅ができるだけ小さいことが求められるデータ電極等の線幅が徐々に大きくなって、あらかじめ設定された線幅の許容範囲を超えるに至る。
【0008】
この時点でシリコーンブランケットが使用寿命に至ったとみなされるため、印刷を停止してシリコーンブランケットを交換する必要が生じる。電磁波シールド等の生産性を向上すること等を考慮すると、前記膨潤を抑制してシリコーンブランケットの使用寿命をできるだけ延長し、交換の回数を極力減らすことが重要であり、そのため従来は、導電性ペースト中に含有させる溶剤として、前記シリコーンブランケットに殆ど含浸されない溶剤を使用するのが一般的である。
【0009】
しかしその場合には、印刷初期の段階でシリコーンブランケットの表面が適度な膨潤状態に至らない状態が比較的長く続くことになるため、特に再転写の工程において転写不良を生じやすくなり、前記データ電極等において転写不良に基づく断線等を生じやすくなるという問題がある。そこで、シリコーンブランケットの膨潤がある程度進んで導電性ペーストの転写不調が生じにくくなるまでの間、およそ10回程度の予備印刷をすることも行われるが、電磁波シールド等の生産性を向上すること等を考慮すると、予備印刷の回数はできるだけ少ないことが望ましい。
【0010】
予備印刷の回数を極力少なくして、印刷初期の段階から良好な印刷を行うことを考慮すると、前記溶剤としては、シリコーンブランケットに含浸されやすい溶剤を使用するのが望ましいのであるが、その場合には、先に説明したようにシリコーンブランケットの過剰な膨潤によって高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数が少なくなり、シリコーンブランケットの使用寿命が短くなるという問題を生じ、結果的に、電磁波シールド等の生産性を向上したりすることには繋がらない。
【0011】
そこでシリコーンブランケットの使用寿命を延長するため、例えば連続印刷の合間等に、含浸された溶剤を除去することが考えられ、そのための方法が種々提案されている。最も簡単には、シリコーンブランケットの表面に熱風を吹き付けることで、含浸された溶剤を揮散させて除去する熱風乾燥法が考えられる。この方法は装置も簡単で効果も大きいが、熱風乾燥を繰り返すと、前記シリコーンブランケットを巻きつけているブランケット胴の温度が徐々に上昇して、その表面に巻きつけたシリコーンブランケットや前記シリコーンブランケットが繰り返し圧接される凹版等が熱膨張して印刷精度が低下したり、導電性ペーストが乾燥しやすくなって転写不良を生じたりしやすくなるといった問題を生じる。
【0012】
シリコーンブランケットの表面に、溶剤を吸収する機能を有する溶剤吸収体を当接させて、含浸された溶剤を、前記溶剤吸収体によって吸収して除去することが提案されている。この方法では加熱をしないため、前記印刷精度の問題や導電性ペーストの乾燥の問題等は生じないが、溶剤吸収体自体も溶剤を吸収するにつれてその吸収能力が低下するため、これを定期的に交換したり、あるいは吸収した溶剤を除去したりする必要がある。また溶剤吸収体がシリコーンブランケットの表面に接触しているため、前記溶剤吸収体を形成する繊維等が異物として導電パターン中に混入したりするおそれもある。
【0013】
シリコーンブランケットの表面近傍の空気を吸引して負圧にしたり、逆に空気を吹き付けて陽圧にしたりすることで、加熱することなく常温で、含浸された溶剤を揮散させて除去する常温乾燥法も提案されている。この方法は、前記加熱に伴う問題や、あるいは溶剤吸収体を接触させることによる問題等をいずれも生じない有効な方法である。
しかし高沸点溶剤を用いると、常温乾燥法では前記溶剤を十分に除去しきれない場合を生じやすく、シリコーンブランケット中に溶剤が残留することにより、先に説明した膨潤に伴う濡れ性の変化と、それに伴う種々の問題が発生してしまう。一方、低沸点溶剤を用いた場合には導電性ペーストが乾燥しやすくなりすぎるため、印刷を繰り返すうちに、特に凹版の凹部内で導電性ペースト中の溶剤が揮散して、前記導電性ペースト中の固形分が析出すると共に徐々に堆積し、それに伴って凹部内に充填される新たな導電性ペーストの量が少なくなると共に、凹部内の導電性ペーストの粘度が上昇するといった現象を生じやすくなる。その結果、凹版からシリコーンブランケットの表面に良好に転写される導電性ペーストの量が少なくなって、前記シリコーンブランケットの表面から基板の表面に再転写される導電パターンがかすれるといった問題を生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2006−111725号公報
【特許文献2】特開2003−308973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、特にシリコーンブランケットを用いた凹版オフセット印刷法に使用して連続的に印刷を繰り返した際に、前記シリコーンブランケットの表面の濡れ性等に影響を及ぼしにくいため、先に説明した溶剤除去の工程を実施する回数を少なくしたり、省略したりしてもシリコーンブランケットの使用寿命を延長でき、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、常に安定して良好な印刷をすることができるインキ組成物を提供することにある。また本発明の目的は、前記インキ組成物を用いた凹版オフセット印刷法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するため、発明者は、バインダ樹脂、顔料、および溶剤を含む一般的なインキ組成物を凹版オフセット印刷法に使用して連続的に印刷を繰り返した際に、前記インキ組成物に含まれる各成分、特にバインダ樹脂と溶剤とがどのような挙動をし、それが印刷特性等にどのように影響するかを総合的に検討した。その結果、下記の事実を見出した。
【0017】
すなわち、バインダ樹脂と溶剤とを含む前記インキ組成物においては、前記溶剤だけでなくバインダ樹脂もシリコーンブランケットに含浸されることがあり、しかも含浸されたバインダ樹脂は、溶剤のように揮散せずにシリコーンブランケット中に残留するため、その残留量が増加するほど、シリコーンブランケットの特性、特に濡れ性等に影響を及ぼすおそれがある。
【0018】
したがってバインダ樹脂としては、できるだけシリコーンブランケットに含浸されにくいものを選択して用いる必要があり、そのためにはシリコーンブランケットの少なくとも表面を形成するシリコーンゴムとの相溶性が低いバインダ樹脂、具体的には、樹脂やゴム、あるいは溶剤の相互の相溶性を評価する基準である溶解度定数(SP値)の差が大きいバインダ樹脂を用いる必要がある。
【0019】
シリコーンゴムの溶解度定数は7.3〜7.6であり、発明者が検討を重ねたところ、バインダ樹脂としては溶解度定数が8.5以上であるバインダ樹脂を用いるのが、シリコーンブランケットへの含浸を抑制するために有効である。しかし一方で、バインダ樹脂とシリコーンゴムとの溶解度定数の差が大きすぎる場合には、インキ組成物の、シリコーンブランケットの表面に対する親和性が低下して、前記インキ組成物が、凹版からシリコーンブランケットの表面に良好に転写されない転写不良を生じやすくなり、それを防止するためにはバインダ樹脂として、溶解度定数が12.0以下であるバインダ樹脂を用いる必要がある。
【0020】
また溶剤としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解して均一なインキ組成物を形成し、特に凹版の凹部内で、溶剤の揮散によってバインダ樹脂の濃度が上昇した際に、前記バインダ樹脂が析出するのを抑制することを考慮すると、前記溶解度定数がバインダ樹脂とできるだけ近い溶剤、具体的にはバインダ樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0以下である溶剤を用いる必要がある。
【0021】
また、印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、安定して良好な印刷をするためには、先に説明したように溶剤がシリコーンブランケットに適度に含浸される必要があり、そのためには溶剤として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内であるものを用いる必要がある。
すなわち、印刷初期の段階から溶剤をシリコーンブランケットに比較的速やかに含浸させ、それによってシリコーンブランケットの表面を適度な膨潤状態として、特に再転写の工程において転写不良を生じたりするのを防止し、予備印刷の回数をできるだけ少なくすることを考慮すると、溶剤としては、溶解度定数が12.0以下である溶剤を用いる必要がある。
【0022】
一方、溶剤がシリコーンブランケットに必要以上に急速に含浸されるのを防止して、前記シリコーンブランケットの過剰な膨潤によって高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数を多くして、シリコーンブランケットの使用寿命を延長することを考慮すると、溶剤としては、溶解度定数が8.5以上である溶剤を用いる必要がある。
また溶剤としては、その沸点が50〜200℃の範囲内であるものを用いる必要がある。すなわち溶剤の急速な揮散を抑制して、特に凹版の凹部内で、前記揮散によりバインダ樹脂の濃度が上昇した際に、前記バインダ樹脂が析出するのを抑制することを考慮すると、溶剤としては、沸点が50℃以上である溶剤を用いる必要がある。一方、シリコーンブランケットに含浸された溶剤をできるだけ速やかに揮散させて、先に説明した溶剤除去の工程を実施する回数を少なくしたり、省略したりすることを考慮すると、前記溶剤としては、沸点が200℃以下の溶剤を用いる必要がある。
【0023】
またインキ組成物は、その粘度が5〜50Pa・sの範囲内である必要がある。すなわち、凹版の凹部内に充填されることでパターン形成されたインキ組成物をシリコーンブランケットの表面に転写する際や、前記表面から基板等の被印刷体の表面に再転写する際に、前記パターン形成された形状を良好に保持して、前記基板等の表面に凹版に忠実な形状を有する印刷パターンを形成することを考慮すると、前記インキ組成物は過剰に流れやすくないことが肝要であり、そのためにインキ組成物の粘度は5Pa・s以上である必要がある。
【0024】
一方、インキ組成物を、ドクターブレード等を用いて凹版の凹部の隅々まで十分に充填して、基板等の表面に凹版に忠実な形状を有する印刷パターンを形成することを考慮すると、前記インキ組成物は過剰に流れにくくないことも必要であり、そのためにインキ組成物の粘度は50Pa・s以下である必要がある。
また、凹版の凹部中で溶剤の揮散が進行すると、先に説明したようにインキ組成物の粘度が上昇するだけでなく、表面の粘着性が低下する傾向もある。このことも、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写されるインキ組成物の量が少なくなる原因の一つである。そこで発明者は、インキ組成物中の固形分、特にバインダ樹脂に粘着性を付与することにより、たとえ溶剤の揮散が進行しても良好な粘着性を維持して、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写されるインキ組成物の量が少なくなって転写不良が生じるのを防止することを検討した。
【0025】
その結果、インキ組成物を任意の基板上に塗布し、乾燥させて形成した厚み1μmの塗膜の、日本工業規格JIS Z0237:2000「粘着テープ・粘着シート試験方法」に規定された測定方法で測定されるボールタック値が10以上となるように、インキ組成物中の固形分に粘着性を付与すればよいことを見出した。ただし固形分の粘着性が強すぎると、凹版の凹部内に充填されたインキ組成物が、シリコーンブランケットの表面に転写されにくくなって、却って、転写不良が生じやすくなるため、前記ボールタック値は28以下である必要があることも明らかとなった。
【0026】
したがって本発明は、バインダ樹脂、顔料、および溶剤を含むインキ組成物であって、
(1) 前記バインダ樹脂の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内、溶剤の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0以下、
(2) 溶剤の沸点が50〜200℃の範囲内、
(3) インキ組成物の粘度が5〜50Pa・sの範囲内、
(4) インキ組成物を乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値が10〜28の範囲内、
であることを特徴とするものである。
【0027】
なお本発明において、バインダ樹脂および溶剤の溶解度定数と両者の差の絶対値、インキ組成物の粘度、ならびに塗膜のボールタック値は、いずれも温度23±1℃、相対湿度55±5%の環境下で測定した値でもって表すこととする。また溶剤の沸点は、気圧1013hPaで測定した値でもって表すこととする。
前記本発明のインキ組成物において、バインダ樹脂は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。前記3種のバインダ樹脂は、いずれも分子量分布や分子構造(分岐の大きさ)等の変更が容易であり、これらの変更を施すことにより、溶解度定数を変化させることなく粘着性のみを調整して、塗膜のボールタック値を、前記範囲内の任意の値に調整するのが容易である。
【0028】
本発明のインキ組成物は、種々の用途に使用可能であるが、特に、先に説明したPDPを構成する電磁波シールドのシールドパターンや前面板の電極等の、基板の面積と比較してごく微細な線幅を有する導電パターンを凹版オフセット印刷法によって形成するための導電性ペーストとして好適に使用できる。前記用途に用いるインキ組成物としては、顔料が導電性粉末であるものが用いられる。
【0029】
また、本発明のインキ組成物を用いて前記導電パターン等を印刷するための印刷方法としては、以上で説明したように、前記インキ組成物を、印刷パターンに対応した凹部を有する凹版の前記凹部に充填し、次いで少なくとも表面がシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットの前記表面に転写したのち、被印刷体の表面に再転写する凹版オフセット法が好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、特にシリコーンブランケットを用いた凹版オフセット印刷法に使用して連続的に印刷を繰り返した際に、前記シリコーンブランケットの表面の濡れ性等に影響を及ぼしにくいため、先に説明した溶剤除去の工程を実施する回数を少なくしたり、省略したりしてもシリコーンブランケットの使用寿命を延長でき、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、常に安定して良好な印刷をすることができるインキ組成物と、それを用いた凹版オフセット印刷法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〈インキ組成物〉
本発明のインキ組成物は、先に説明したようにバインダ樹脂、顔料、および溶剤を含み、
(1) 前記バインダ樹脂の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内、溶剤の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0以下、
(2) 溶剤の沸点が50〜200℃の範囲内、
(3) インキ組成物の粘度が5〜50Pa・sの範囲内、
(4) インキ組成物を乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値が10〜28の範囲内、
であることを特徴とするものである。
【0032】
本発明のインキ組成物において、バインダ樹脂の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内に限定されるのは下記の理由による。
すなわち、溶解度定数が8.5未満であるバインダ樹脂は、シリコーンブランケットの表面を形成するシリコーンゴム(溶解度定数7.3〜7.6)との溶解度定数の差が小さすぎるためシリコーンブランケット中に含浸されやすく、印刷を繰り返すうちに、バインダ樹脂がシリコーンブランケット中に蓄積されて、前記シリコーンブランケットの特性、特に濡れ性等に影響を及ぼす。そのため高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数が少なくなり、シリコーンブランケットの使用寿命が短くなってしまう。
【0033】
これに対し、溶解度定数が8.5以上であるバインダ樹脂はシリコーンブランケット中に含浸されにくく、印刷を繰り返してもシリコーンブランケット中に蓄積されにくいため、前記シリコーンブランケットの特性、特に濡れ性等に影響を及ぼすことがない。そのため、高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数を多くして、シリコーンブランケットの使用寿命を延長することができる。
【0034】
一方、溶解度定数が12.0を超えるバインダ樹脂は、前記シリコーンゴムとの溶解度定数の差が大きすぎる。そのため、前記バインダ樹脂を含むインキ組成物の、シリコーンブランケットの表面に対する親和性が低くなり、前記インキ組成物が、凹版からシリコーンブランケットの表面に良好に転写されない転写不良を生じやすくなる。これに対し、溶解度定数が12.0以下であるバインダ樹脂を含むインキ組成物は、シリコーンブランケットの表面に対する親和性に優れるため、前記転写不良を生じることがない。
【0035】
なお、これらの特性をさらに良好に発揮させて、シリコーンブランケットの使用寿命をさらに延長し、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、より一層安定して良好な印刷をすることを考慮すると、バインダ樹脂の溶解度定数は、前記範囲内でも9.0〜11.0であるのが好ましい。バインダ樹脂の溶解度定数を前記範囲内に調整するためには、前記バインダ樹脂の種類を選択したり、あるいは先に説明したようにバインダ樹脂の分子量分布や分子構造(主鎖の鎖長、分岐鎖の数や鎖長)等を調整したりすればよい。
【0036】
また本発明のインキ組成物において、溶剤の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内に限定されるのは下記の理由による。
すなわち、溶解度定数が8.5未満である溶剤は、シリコーンブランケットの表面を形成するシリコーンゴムとの溶解度定数の差が小さすぎて、前記シリコーンブランケットに、必要以上に急速に含浸されやすい。そのため、前記溶剤の過剰な膨潤によって高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数が少なくなり、シリコーンブランケットの使用寿命が短くなってしまう。
【0037】
一方、溶解度定数が12.0を超える溶剤はシリコーンブランケットに速やかに含浸されないため、印刷初期の段階で、シリコーンブランケットの膨潤がある程度進んでインキ組成物の転写不調が生じにくくなるまでの間、繰り返し予備印刷をする必要を生じる。
これに対し、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内である溶剤は、シリコーンブランケットに適度な速度で含浸されるため、例えば印刷初期の段階で、前記シリコーンブランケットの表面を適度な膨潤状態として、特に再転写の工程において転写不良を生じたりするのを防止して、予備印刷の回数をできるだけ少なくできる上、印刷を繰り返した際に、前記シリコーンブランケットの過剰な膨潤によって高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数を多くして、シリコーンブランケットの使用寿命を延長することもできる。
【0038】
なお、これらの特性をさらに良好に発揮させて、シリコーンブランケットの使用寿命をさらに延長し、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、より一層安定して良好な印刷をすることを考慮すると、溶剤としては、溶解度定数が、前記範囲内でも9.0〜11.0であるものを選択して使用するのが好ましい。
本発明のインキ組成物において、前記バインダ樹脂の溶解度定数と溶剤の溶解度定数との差の絶対値が2.0以下に限定されるのは下記の理由による。
【0039】
すなわち、前記溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えるバインダ樹脂と溶剤とを組み合わせた場合には、特に凹版の凹部内で、溶剤の揮散によりバインダ樹脂の濃度が上昇した際に前記バインダ樹脂が析出すると共に徐々に堆積し、それに伴って凹部内に充填される新たなインキ組成物の量が少なくなると共に、凹部内のインキ組成物の粘度が上昇するといった現象を生じやすくなる。その結果、凹版からシリコーンブランケットの表面に良好に転写されるインキ組成物の量が少なくなって、前記シリコーンブランケットの表面から基板の表面に再転写される導電パターンがかすれるといった問題を生じる。
【0040】
これに対し、前記差の絶対値が2.0以下となるようにバインダ樹脂と溶剤とを組み合わせることによって、かかるバインダ樹脂の析出と、それに伴う前記の問題が発生するのを抑制することができる。なお、バインダ樹脂の析出をできるだけ抑制することを考慮すると、バインダ樹脂と溶剤としては、溶解度定数が等しいもの、すなわち溶解度定数の差の絶対値が0であるものを組み合わせるのが最も好ましい。したがって溶解度定数の差の絶対値の下限は0である。そして前記差の絶対値は、前記2.0以下の範囲内でも小さいほど好ましい。具体的には1.0以下であるのがさらに好ましい。
【0041】
本発明のインキ組成物において、溶剤の沸点が50〜200℃の範囲内に限定されるのは下記の理由による。
すなわち沸点が50℃未満である溶剤は急速に揮散しやすく、例えば凹版の凹部内で、前記揮散によりバインダ樹脂の濃度を上昇させて、前記バインダ樹脂を析出させたり、インキ組成物の粘度を急速に上昇させたりしやすい。そのため、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写されるインキ組成物の量が少なくなって、前記シリコーンブランケットの表面から基板等の表面に再転写されるパターンがかすれるといった問題を生じるのに対し、沸点が50℃以上である溶剤は、かかる問題を生じることがない。
【0042】
また沸点が200℃を超える溶剤は、シリコーンブランケットに含浸されると速やかに揮散されないため、印刷を繰り返した際に、前記シリコーンブランケットの過剰な膨潤によって高精度でかつ良好な印刷を行えなくなるまでの印刷回数を多くして、シリコーンブランケットの使用寿命を延長するためには、溶剤除去の工程を頻繁に繰り返す必要を生じる。これに対し、沸点が200℃以下である溶剤は、前記工程を繰り返さなくてもブランケット中から比較的スムースに揮散させることができるため、前記工程を実施する回数を少なくしたり、省略したりできる。
【0043】
なお、これらの特性をさらに良好に発揮させて、シリコーンブランケットの使用寿命をさらに延長し、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、より一層安定して良好な印刷をすることを考慮すると、溶剤としては、沸点が50〜160℃であるもの選択して用いるのが好ましい。
本発明のインキ組成物の粘度が5〜50Pa・sの範囲内に限定されるのは、下記の理由による。
【0044】
すなわちインキ組成物の粘度が5Pa・s(=50P)未満では、前記インキ組成物が過剰に流れやすくなって、凹版の凹部からシリコーンブランケットの表面に転写する際や、前記表面から基板等の被印刷体の表面に転写する際に、パターン形成された形状を良好に保持できない場合を生じ、前記基板等の表面に、凹版の凹部に忠実な形状を有する印刷パターンを形成できないおそれがある。
【0045】
またインキ組成物の粘度が50Pa・s(=500P)を超える場合には、前記インキ組成物が過剰に流れにくくなって、例えばドクターブレード等を用いて凹版の凹部の隅々まで十分に充填できない場合を生じ、基板等の被印刷体の表面に、凹版の凹部に忠実な形状を有する印刷パターンを形成できないおそれがある。これに対し、インキ組成物の粘度を5〜50Pa・sとして、その流動性を適度に調整すれば、前記被印刷体の表面に、凹版の凹部に忠実な形状を有する印刷パターンを形成することができる。
【0046】
なお、かかる特性をさらに良好に発揮させて、被印刷体の表面に、凹版の凹部により一層忠実な形状を有する印刷パターンを形成することを考慮すると、インキ組成物の粘度は、前記範囲内でも5〜20Pa・sであるのが好ましい。インキ組成物の粘度を前記範囲内に調整するためには、例えば溶剤の量を調整したり、バインダ樹脂の分子量分布を調整したりすればよい。すなわち溶剤の量を多くしたり、低分子量成分を増加させたりするほど、インキ組成物の粘度を低下させることができる。
【0047】
さらに、本発明のインキ組成物を乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値が10〜28の範囲内に限定されるのは、下記の理由による。
すなわちボールタック値が10未満では、インキ組成物の粘着性が不足するため、特に凹版からシリコーンブランケットの表面に転写されるインキ組成物の量が少なくなって転写不良を生じる。一方、ボールタック値が28を超える場合には、逆に粘着性が強くなりすぎるため、却って、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写されるインキ組成物の量が少なくなって転写不良を生じる。これに対し、ボールタック値が10〜28の範囲内であれば、インキ組成物に適度な粘着性を付与して転写不良が生じるのを防止できる。
【0048】
なお、かかる特性をさらに良好に発揮させて、シリコーンブランケットの使用寿命をさらに延長し、しかも印刷初期の段階からシリコーンブランケットの使用寿命に至るまでの間、より一層安定して良好な印刷をすることを考慮すると、本発明のインキ組成物を乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は、前記範囲内でも15〜25であるのがさらに好ましい。
【0049】
前記ボールタック値を、本発明では日本工業規格JIS Z0237:2000「粘着テープ・粘着シート試験方法」に規定された測定方法に則って測定した値でもって表すこととする。すなわち前記測定方法において規定される、角度30±10°の斜面のうち100mmの助走面に続く100mmの粘着面を、測定するインキ組成物を乾燥させた厚み1μmの塗膜によって形成すること以外は前記測定方法に準拠して、直径が異なる31種類のステンレス製の鋼球(直径は31/31インチないし1/31インチまで1/31インチ刻みであり、例えば直径10/31インチの鋼球をボールNo.10と表記する)を転がして粘着面に5秒間静止した最も径の大きい鋼球のボールNo.を、ボールタック値として記録することとする。
【0050】
前記本発明のインキ組成物を構成するバインダ樹脂としては、溶剤に可溶で、かつ前記範囲内の溶解度定数を有すると共に、インキ組成物を乾燥させた塗膜に前記範囲内のボールタック値を付与することができる種々のバインダ樹脂が使用可能である。かかるバインダ樹脂としては、例えば下記の各種樹脂およびゴムの中から、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内であるものが選択して用いられる。
【0051】
すなわちバインダ樹脂としてはクロロスルホン化ポリエチレン樹脂(8.1〜9.8)、ブタジエンゴム(8.1〜8.6)、スチレンブタジエンゴム(8.1〜8.7)、ポリスチレン樹脂(8.5〜10.3)、クロロプレンゴム(8.1〜9.4)、アクリロニトリルブタジエンゴム(8.7〜10.5)、アクリル樹脂〔例えばポリメタクリル酸メチル(9.1〜9.5)、アクリルゴム(9.5)等〕、多硫化ゴム(9.0〜9.4)、塩化ゴム(9.4)、ポリ酢酸ビニル樹脂(9.4〜9.6)、ポリ塩化ビニル樹脂(9.4〜10.8)、ポリエステル樹脂〔例えばポリエチレンテレフタレート(PET、10.0)等〕、エポキシ樹脂(10.9)、フェノール樹脂(11.3)等の1種または2種以上が挙げられる。特にポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種が好ましい。なおカッコ内の数値は、該当するバインダ樹脂の溶解度定数を示す。
【0052】
インキ組成物の転写性を向上するためにその粘着性を高める、すなわち塗膜のボールタック値を先に説明した範囲内でも高めにシフトさせるためには、前記バインダ樹脂の分子量分布や分子構造を調整すればよい。例えばバインダ樹脂として分子量の分布が広く低分子量成分の割合が多いものや、あるいは分岐が大きいものを選択して使用すれば、バインダ樹脂の溶解度定数を変化させることなしに粘着性のみを高めて、塗膜のボールタック値を高めにシフトさせることができる。前記ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂は、いずれもこれらの変更が容易であるという利点がある。
【0053】
バインダ樹脂の分子量分布や分子構造は、ゲルパーミェーションクロマトグラフ(GPC)法によって測定した結果から求められるバインダ樹脂の重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mnと、前記両平均分子量の比Mw/Mnとによって特定できる。すなわち重量平均分子量Mwが小さいほど分子量の分布が広く低分子量成分の割合が大きいことを意味し、比Mw/Mnが大きいほど分岐が大きいことを意味する。
【0054】
塗膜のボールタック値を先に説明した10〜28の範囲内とするためには、一般的に、重量平均分子量Mwが2000〜30000、特に2000〜20000程度で、かつ比Mw/Mnが1.50〜3.00、特に2.00〜2.50程度であるバインダ樹脂を用いればよい。また前記ボールタック値を前記範囲内でも高めにシフトさせるためには、バインダ樹脂として、重量平均分子量Mwが前記範囲内でも小さく、かつ比Mw/Mnが前記範囲内でも大きいバインダ樹脂を選択して使用すればよい。
【0055】
顔料としては、塗膜を着色したり、前記塗膜に導電性等の任意の特性を付与したりすることができる種々の微粒子が挙げられる。例えば本発明のインキ組成物を先に説明した導電性ペーストとして用いる場合、顔料としては導電性粉末が用いられる。
導電性粉末としては、例えば銀、銅、金、白金、ニッケル、アルミニウム、鉄、パラジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、コバルト等の金属の粉末や前記金属の2種以上の合金の粉末、銀メッキ銅等のメッキ複合体の粉末、酸化銀、酸化コバルト、酸化鉄、酸化ルテニウム等の金属酸化物の粉末などの1種または2種以上が挙げられる。中でも高い導電性を有する上、高絶縁性の酸化物を生成しにくい耐酸化性に優れるため導電性に優れた導電パターンを形成できる銀が好ましい。
【0056】
導電性粉末は、凹版オフセット印刷に対する印刷適性に優れる上、微細な導電パターンを細部まで良好に再現できるインキ組成物(導電性ペースト)を調製することを考慮すると、粒度分布の50%累積径D50が0.05μm以上、10μm以下、特に0.1μm以上、2μm以下であるのが好ましい。また導電性粉末の形状は、前記導電性粉末同士の接触面積を大きくして導電パターンの導電性を高めることを考慮すると、球状よりも鱗片状であるのが好ましい。また、導電性粉末を細密充填して導電パターンの導電性をさらに高めることを考慮すると、前記鱗片状の導電性粉末と球状の導電性粉末とを併用するのがさらに好ましい。
【0057】
溶剤としては、前記バインダ樹脂を良好に溶解すると共に、導電性粉末等の顔料を良好に分散しうる種々の溶剤の中から、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内、沸点が50〜200℃の範囲内で、かつ組み合わせるバインダ樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であるものが選択して使用される。
溶解度定数および沸点が共に前記範囲内である溶剤としては、例えば酢酸エチル(溶解度定数9.1、沸点77℃)、メチルエチルケトン(溶解度定数9.3、沸点80℃)アセトン(溶解度定数9.9、沸点57℃)、n−ヘキサノール(溶解度定数10.7、沸点157℃)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0058】
本発明のインキ組成物を、先に説明したPDPを構成する電磁波シールドのシールドパターンや前面板の電極等の、基板の面積と比較してごく微細な線幅を有する導電パターンの形成のための導電性ペーストとして用いる場合、前記インキ組成物には、前記各成分に加えてガラスフリットを含有させてもよい。ガラスフリットとしては、インキ組成物を基板の表面に印刷した後の焼き付けによってバインダ樹脂が分解または揮散するのと前後して軟化もしくは溶融し、バインダ樹脂に代わって導電性粉末同士、および導電性粉末と基板との間を結着する結着剤として機能する種々のガラス材料からなる粉末が使用可能である。前記ガラスフリットとしては例えばホウケイ酸ガラスの粉末や、あるいは酸化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化亜鉛、酸化鉛、酸化ビスマス等の金属酸化物を含有するガラスの粉末等の1種または2種以上が挙げられる。
【0059】
ただしガラスフリットとしては、バインダ樹脂が軟化し、溶融し、さらに分解または揮散する温度以上で、かつ導電性粉末の融点以下の温度範囲、特に400℃以上、550℃以下で軟化または溶融するものを用いるのが好ましい。かかるガラスフリットは、焼成時にバインダ樹脂が分解または揮散した後に軟化または溶融を開始して導電性粉末同士、および導電性粉末と基板との間を結着する結着剤としての機能を発揮するので、焼成によって形成される導電パターン中にバインダ樹脂が分解または揮散した後が空隙となって残って導電性が低下するのを抑制することができる。
【0060】
また前記ガラスフリットは、導電性粉末の融点以下の温度で軟化または溶融を開始して結着剤としての機能を発揮するので、焼成の温度を引き下げることができ、焼成に要する時間やエネルギー等を削減して導電機能部材の生産性を向上することもできる。ガラスフリットは、凹版オフセット印刷に対する印刷適性に優れる上、微細な導電パターンを細部まで良好に再現できるインキ組成物を調製することや、導電性粉末同士、および導電性粉末と基板との間を良好に結着させて導電性に優れた導電パターンを形成すること等を考慮すると、粒度分布の50%累積径D50が0.1μm以上、5μm以下、特に0.2μm以上、3μm以下であるのが好ましい。
【0061】
インキ組成物中における前記各成分の割合は特に限定されないが、先に説明したそれぞれの成分の機能を、いずれも良好に発揮させることを考慮すると、バインダ樹脂100質量部に対する導電性粉末の割合は500質量部以上、2000質量部以下、特に800質量部以上、1600質量部以下であるのが好ましい。また、バインダ樹脂100質量部に対するガラスフリットの割合は5質量部以上、50質量部以下、特に10質量部以上、40質量部以下であるのが好ましい。
【0062】
インキ組成物には、前記各成分に加えてさらにレベリング剤、分散剤、チキソトロピック粘性付与剤、消泡剤、充填剤等の、特に印刷特性や加工性を改良するための配合剤を任意の割合で含有させてもよい。インキ組成物は、従来同様に前記各成分を所定の割合で配合した後、3本ロール、ボールミル、アトライタ、サンドミル等を用いて混練あるいはかく拌して調製することができる。
【0063】
溶剤は、前記各成分を含むインキ組成物の粘度を、先に説明した範囲内に調整するのに適した割合で配合すればよい。
本発明のインキ組成物は、凹版の、所定の印刷パターンに対応した凹部に充填し、シリコーンブランケットの表面に転写した後、基板等の被印刷体の表面に再転写して乾燥させ、さらに必要に応じて焼き付けて、前記被印刷体の表面に前記印刷パターンを形成する本発明の凹版オフセット印刷法に好適に用いることができる。かかる凹版オフセット印刷法により、先に説明したPDPの前面板や、あるいはPDP、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)、電界放出型ディスプレイ(FED)等の薄型ディスプレイの画素電極基板などを、これまでよりも高い生産性でもって効率よく製造することができる。
【0064】
シリコーンブランケットとしては、少なくともその表面がシリコーンゴムからなるブランケットが使用可能である。かかるシリコーンブランケットとしては、その全体が単層のシリコーンゴムからなるものや、ポリエチレンテレフタレートフィルム、金属箔等からなる基材の片面にシリコーンゴムの層が積層された積層構造を有するもの等が挙げられる。
このうち全体が単層のシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットは、例えば平盤上に液状のシリコーンゴムをコーティングし、架橋反応させたのち前記平盤上からはく離する等して形成することができる。また積層構造を有するシリコーンブランケットは、例えば金型内に基材を装着した状態で、前記金型内に液状のシリコーンゴムを注入して架橋反応させたり(特開平8−112981号公報等参照)、基材の表面に液状のシリコーンゴムをコーティングした後、架橋反応させたり(特開2003−136856号公報等参照)して形成することができる。
【0065】
凹版としては鉄−ニッケル合金(42アロイ等)、ステンレス鋼等の金属や、ソーダライムガラス、無アルカリガラス等からなり、その片面に、先に説明したようにフォトリソグラフ法等によって導電パターンの形状に対応した凹部が形成されたものを用いることができる。また凹版の耐久性を向上するため、前記凹版の、凹部の内面を含む表面には例えば硬質クロムめっき層等を被覆してもよい。前記凹部にインキ組成物を充填するためには、従来同様にドクターブレード等を用いればよい。
【0066】
基板の表面に印刷したインキ組成物を乾燥させたのち焼き付けると、前記基材の表面に、例えばPDPの前面板の電極や電磁波シールド線、あるいはPDP、LCD、EL、FED等の画素電極等の導電パターンが形成される。具体的には、インキ組成物がガラスフリットを含む場合は450℃以上、650℃以下、特に500℃以上、600℃以下程度で焼成すると、まず乾燥と焼成の初期に溶剤が揮発され、次いで焼成工程においてバインダ樹脂が分解または揮散されると共に、導電性粉末が、ガラスフリットの助けによって溶着ないし焼結されて、導電性に優れた導電パターンが形成される。
【0067】
導電パターンの厚みは、その用途等に応じて適宜設定すればよい。例えば、PDPの前面板の電極等の場合は3μm以上、15μm以下、特に5μm以上、10μm以下であるのが好ましい。導電パターンの厚みを調整するには凹版の凹部の深さを変更すればよい。
なお本発明のインキ組成物およびオフセット印刷法の用途は前記導電パターンの形成には限定されない。例えばLCDのブラックマトリクスやカラーフィルタ等を形成するために、本発明のインキ組成物を用いると共に、その形成方法として本発明の凹版オフセット印刷法を適用することもできる。その場合インキ組成物には、導電性粉末に代えて、ブラックマトリクスやカラーフィルタを所定の色に着色するための顔料を含有させればよい。形成される印刷パターンの厚み等も、用途に応じて適宜変更できる。
【実施例】
【0068】
〈実施例1〉
バインダ樹脂としては、ゲルパーミェーションクロマトグラフ法(GPC)による測定結果から求められた重量平均分子量Mwが12000、数平均分子量Mnが5000、両者の比Mw/Mnが2.40で、かつ溶解度定数が10.0であるポリエステル樹脂(PET)を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が9.1、沸点が77℃である酢酸エチルを用いた。前記ポリエステル樹脂と酢酸エチルとの溶解度定数の差の絶対値は0.9であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0069】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記ポリエステル樹脂100質量部と、酢酸エチル100質量部と、導電性粉末としての銀粉末(D50=0.8μm)900質量部と、ガラスフリット(軟化点:450℃、D50=1.0μm)30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0070】
前記導電性ペーストの粘度をコーンプレート法により測定したところ10Pa・sであった。また、先に説明した測定方法により、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値を測定したところ20であった。
〈実施例2〉
溶剤として、溶解度定数が9.9、沸点が57℃であるアセトンを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり70質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とアセトンとの溶解度定数の差の絶対値は0.1であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は20であった。
【0071】
〈実施例3〉
溶剤として、溶解度定数が10.7、沸点が157℃であるn−ヘキサノールを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり80質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とn−ヘキサノールとの溶解度定数の差の絶対値は0.7であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は20であった。
【0072】
〈比較例1〉
溶剤として、溶解度定数が7.3、沸点が69℃であるn−ヘキサンを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり150質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とn−ヘキサンとの溶解度定数の差の絶対値は2.7であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は21であった。
【0073】
〈比較例2〉
溶剤として、溶解度定数が14.6、沸点が198℃であるエチレングリコールを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり120質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とエチレングリコールとの溶解度定数の差の絶対値は4.6であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は22であった。
【0074】
〈シリコーンブランケット〉
凹版オフセット印刷に用いるシリコーンブランケットとして、ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる基材の片面に、常温硬化型の付加型シリコーンゴムからなるシリコーンゴムの層が積層された積層構造を有するものを用意した。前記シリコーンゴムの層の厚みは300μm、ゴム硬さ(JIS A)は40度、表面の十点平均粗さRZ JIS94は0.1μmであった。
【0075】
〈印刷試験〉
精密印刷用の凹版オフセット印刷機のブランケット胴に前記シリコーンブランケットをセットし、実施例1〜3、比較例1、2で調製した導電性ペーストを用いた凹版オフセット印刷法を実施してガラス基板上に印刷をする操作を、10000枚のガラス基板に対して連続して行った。ガラス基板としてはPDPの前面板(対角42インチ)を用い、印刷パターンは線幅80μm、ピッチ幅360μmのストライプパターンとした。そして下記の測定を行って導電性ペーストの特性を評価した。
【0076】
(連続印刷性評価)
印刷1000回ごとの10枚の印刷済みのガラス基板をサンプルとして抽出し、各サンプルにおける前記ストライプパターンの線幅と膜厚みとを測定すると共に、前記測定値の、線幅の標準値(=80μm)に対する誤差、および膜厚みの標準値(=8.0μm)に対する誤差を求めた。そして下記の基準で連続印刷性を評価した。
【0077】
○:全てのサンプルにおける、線幅および膜厚みの誤差がいずれも5%以下であった。連続印刷性良好。
△:線幅または膜厚みの誤差が5%を超え、かつ10%以下の範囲内であるサンプルが少なくとも1つ見られた。連続印刷性やや不良。
×:線幅または膜厚みの誤差が10%を超えるサンプルが少なくとも1つ見られた。連続印刷性不良。
【0078】
(粘度の安定性評価)
印刷1000回ごとに、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写する前で、かつ凹版の凹部内に充填した直後の導電性ペーストをサンプリングし、粘度計を用いて粘度を測定すると共に、前記測定値の、粘度の初期値からの変化率を求めた。そして下記の基準で導電性ペーストの粘度の安定性を評価した。
【0079】
○:全てのサンプルにおける粘度の変化率がいずれも10%以下であった。粘度の安定性良好。
△:粘度の変化率が10%を超え、かつ20%以下の範囲内であるサンプルが少なくとも1つ見られた。粘度の安定性やや不良。
×:粘度の変化率が20%を超えるサンプルが少なくとも1つ見られた。粘度の安定性不良。
【0080】
(転写性評価)
印刷1000回ごとに、凹版からシリコーンブランケットの表面に転写された導電性ペーストの面積を測定し、前記面積の、凹版の凹部の面積に対する比率を転写面積率として求めた。そして下記の基準で、凹版からシリコーンブランケットの表面への導電性ペーストの転写性を評価した。
【0081】
○:全ての測定結果において、転写面積率は100%であった。転写性良好。
△:転写面積率が100%未満で、かつ95%以上である測定結果が少なくとも1つ見られた。転写性やや不良。
×:転写面積率が95%未満である測定結果が少なくとも1つ見られた。転写性不良。
以上の結果を表1に示す。
【0082】
【表1】

表より、溶剤として、溶解度定数が8.5未満であるn−ヘキサンを用いたことにより、バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例1の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも△(やや不良)と評価されることが判った。
【0083】
すなわち、前記溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えることから、凹版の凹部内で、溶剤の揮散による粘度上昇が発生して粘度の安定性が△(やや不良)と評価されると共に、バインダ樹脂の析出が発生して転写性が△(やや不良)と評価された。また溶剤の溶解度定数が8.5未満であったため、印刷を繰り返した際に前記溶剤がシリコーンブランケットに過剰に含浸されたことと、前記粘度の上昇、および転写性の低下とが相まって、連続印刷の後期に、線幅または膜厚みの誤差が大きくなって連続印刷性が△(やや不良)と評価された。
【0084】
また溶剤として、溶解度定数が12.0を超えるエチレングリコールを用いたことにより、バインダ樹脂としてのポリエステル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例2の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも×(不良)と評価されることが判った。
すなわち、前記溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えることから、凹版の凹部内で、溶剤の揮散による粘度上昇が発生して粘度の安定性が×(不良)と評価されると共に、バインダ樹脂の析出が発生して転写性が×(不良)と評価された。また溶剤の溶解度定数が12.0を超えており、印刷初期の段階で、前記溶剤がシリコーンブランケットに速やかに含浸されず、その表面が適度な膨潤状態に達しない期間が存在したため、前記期間中に、再転写の工程において転写不良を生じ、このことからも転写性は×(不良)と評価された。また前記粘度の上昇と転写性の低下とが相まって、連続印刷の後期には、線幅または膜厚みの誤差が大きくなった。その結果、全体としての連続印刷性が×(不良)と評価された。
【0085】
これに対し、バインダ樹脂として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内であるポリエステル樹脂を用いると共に、溶剤として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ前記ポリエステル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であるものを用いた実施例1〜3の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも○(良好)と評価されることが確認された。
【0086】
〈実施例4〉
バインダ樹脂としては、GPCによる測定結果から求められた重量平均分子量Mwが13000、数平均分子量Mnが6000、両者の比Mw/Mnが2.17で、かつ溶解度定数が9.5であるアクリル樹脂を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が9.1、沸点が77℃である酢酸エチルを用いた。前記アクリル樹脂と酢酸エチルとの溶解度定数の差の絶対値は0.4であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0087】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記アクリル樹脂100質量部と、酢酸エチル80質量部と、実施例1〜3、比較例1、2で使用したのと同じ銀粉末900質量部、およびガラスフリット30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0088】
前記導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は15であった。
〈実施例5〉
溶剤として、溶解度定数が9.9、沸点が57℃であるアセトンを用い、その配合量をアクリル樹脂100質量部あたり80質量部としたこと以外は実施例4と同様にして導電性ペーストを調製した。前記アクリル樹脂とアセトンとの溶解度定数の差の絶対値は0.4であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は15であった。
【0089】
〈実施例6〉
溶剤として、溶解度定数が10.7、沸点が157℃であるn−ヘキサノールを用い、その配合量をアクリル樹脂100質量部あたり100質量部としたこと以外は実施例4と同様にして導電性ペーストを調製した。前記アクリル樹脂とn−ヘキサノールとの溶解度定数の差の絶対値は1.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は17であった。
【0090】
〈比較例3〉
溶剤として、溶解度定数が7.3、沸点が69℃であるn−ヘキサンを用い、その配合量をアクリル樹脂100質量部あたり120質量部としたこと以外は実施例4と同様にして導電性ペーストを調製した。前記アクリル樹脂とn−ヘキサンとの溶解度定数の差の絶対値は2.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は20であった。
【0091】
〈比較例4〉
溶剤として、溶解度定数が14.6、沸点が198℃であるエチレングリコールを用い、その配合量をアクリル樹脂100質量部あたり150質量部としたこと以外は実施例4と同様にして導電性ペーストを調製した。前記アクリル樹脂とエチレングリコールとの溶解度定数の差の絶対値は5.1であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は22であった。
【0092】
前記実施例4〜6、比較例3、4の導電性ペーストと、先に作製したのと同じシリコーンブランケットとを用いて、前記印刷試験を行ない、各特性を評価した。結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

表より、バインダ樹脂としてポリエステル樹脂に代えてアクリル樹脂を用いた系でも、前記バインダ樹脂および溶剤の溶解度定数の違いに基づいて、前記実施例1〜3、比較例1、2と同様の結果が得られることが判った。すなわち溶剤として、溶解度定数が8.5未満であるn−ヘキサンを用いたことにより、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例3の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも△(やや不良)と評価されることが判った。
【0094】
また溶剤として、溶解度定数が12.0を超えるエチレングリコールを用いたことにより、バインダ樹脂としてのアクリル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例4の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも×(不良)と評価されることが判った。これらの理由は、先に説明したとおりである。
これに対し、バインダ樹脂として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内であるアクリル樹脂を用いると共に、溶剤として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ前記アクリル樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であるものを用いた実施例4〜6の導電性ペーストでは、連続印刷性、粘度の安定性、および転写性がいずれも○(良好)と評価されることが確認された。
【0095】
〈実施例7〉
バインダ樹脂としては、GPCによる測定結果から求められた重量平均分子量Mwが15000、数平均分子量Mnが7000、両者の比Mw/Mnが2.14で、かつ溶解度定数が10.9であるエポキシ樹脂を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が9.1、沸点が77℃である酢酸エチルを用いた。前記エポキシ樹脂と酢酸エチルとの溶解度定数の差の絶対値は1.8であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0096】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記エポキシ樹脂100質量部と、酢酸エチル120質量部と、実施例1〜3、比較例1、2で使用したのと同じ銀粉末700質量部、およびガラスフリット30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0097】
前記導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は25であった。
〈実施例8〉
溶剤として、溶解度定数が9.9、沸点が57℃であるアセトンを用い、その配合量をエポキシ樹脂100質量部あたり100質量部としたこと以外は実施例7と同様にして導電性ペーストを調製した。前記エポキシ樹脂とアセトンとの溶解度定数の差の絶対値は1.0であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は25であった。
【0098】
〈実施例9〉
溶剤として、溶解度定数が10.7、沸点が157℃であるn−ヘキサノールを用い、その配合量をエポキシ樹脂100質量部あたり60質量部としたこと以外は実施例7と同様にして導電性ペーストを調製した。前記エポキシ樹脂とn−ヘキサノールとの溶解度定数の差の絶対値は0.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は26であった。
【0099】
〈比較例5〉
溶剤として、溶解度定数が7.3、沸点が69℃であるn−ヘキサンを用い、その配合量をエポキシ樹脂100質量部あたり170質量部としたこと以外は実施例7と同様にして導電性ペーストを調製した。前記エポキシ樹脂とn−ヘキサンとの溶解度定数の差の絶対値は3.6であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は27であった。
【0100】
〈比較例6〉
溶剤として、溶解度定数が14.6、沸点が198℃であるエチレングリコールを用い、その配合量をエポキシ樹脂100質量部あたり100質量部としたこと以外は実施例7と同様にして導電性ペーストを調製した。前記エポキシ樹脂とエチレングリコールとの溶解度定数の差の絶対値は3.7であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は27であった。
【0101】
前記実施例7〜9、比較例5、6の導電性ペーストと、先に作製したのと同じシリコーンブランケットとを用いて、前記印刷試験を行ない、各特性を評価した。結果を表3に示す。
【0102】
【表3】

表より、バインダ樹脂としてポリエステル樹脂に代えてエポキシ樹脂を用いた系では、前記バインダ樹脂および溶剤の溶解度定数の違いに基づいて、基本的には実施例1〜3、比較例1、2と同様の結果が得られるものの、前記エポキシ樹脂の使用によってボールタック値が上昇したことにより、転写性が改善されることが判った。
【0103】
すなわち溶剤として、溶解度定数が8.5未満であるn−ヘキサンを用いたことにより、バインダ樹脂としてのエポキシ樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例5の導電性ペーストでは、前記ボールタック値の上昇により、転写性は比較例1の△(やや不良)から○(良好)まで改善された。
また同様に溶剤として、溶解度定数が12.0を超えるエチレングリコールを用いたことにより、バインダ樹脂としてのエポキシ樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0を超えた比較例6の導電性ペーストでは、前記ボールタック値の上昇により、転写性は比較例2の×(不良)から△(やや不良)まで改善された。しかし連続印刷性、および粘度の安定性は、比較例5がいずれも△(やや不良)、比較例6がいずれも×(不良)で比較例1、2と変化がなかった。これらの理由は、先に説明したとおりである。
【0104】
これに対し、バインダ樹脂として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内であるエポキシ樹脂を用いると共に、溶剤として、溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ前記エポキシ樹脂との溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であるものを用いた実施例7〜9の導電性ペーストでは、転写性が○(良好)であるだけでなく、連続印刷性、粘度の安定性も○(良好)と評価されることが確認された。
【0105】
〈比較例7〉
バインダ樹脂としては、GPCによる測定結果から求められた重量平均分子量Mwが13000、数平均分子量Mnが6000、両者の比Mw/Mnが2.17で、かつ溶解度定数が13.1であるポリイミド樹脂を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が14.6、沸点が198℃であるエチレングリコールを用いた。前記ポリイミド樹脂とエチレングリコールとの溶解度定数の差の絶対値は1.5であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0106】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記ポリイミド樹脂100質量部と、エチレングリコール80質量部と、実施例1〜3、比較例1、2で使用したのと同じ銀粉末900質量部、およびガラスフリット30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0107】
前記導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は15であった。
〈比較例8〉
溶剤として、溶解度定数が9.9、沸点が57℃であるアセトンを用い、その配合量をポリイミド樹脂100質量部あたり130質量部としたこと以外は比較例7と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリイミド樹脂とアセトンとの溶解度定数の差の絶対値は3.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は15であった。
【0108】
〈比較例9〉
バインダ樹脂としては、GPCによる測定結果から求められた重量平均分子量Mwが10000、数平均分子量Mnが5000、両者の比Mw/Mnが2.00で、かつ溶解度定数が7.7であるポリエチレン樹脂を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が7.3、沸点が69℃であるn−ヘキサンを用いた。前記ポリエチレン樹脂とn−ヘキサンとの溶解度定数の差の絶対値は0.4であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0109】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記ポリエチレン樹脂100質量部と、n−ヘキサン80質量部と、実施例1〜3、比較例1、2で使用したのと同じ銀粉末900質量部、およびガラスフリット30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0110】
前記導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は12であった。
〈比較例10〉
溶剤として、溶解度定数が9.9、沸点が57℃であるアセトンを用い、その配合量をポリエチレン樹脂100質量部あたり130質量部としたこと以外は比較例9と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエチレン樹脂とアセトンとの溶解度定数の差の絶対値は2.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は12であった。
【0111】
前記比較例7〜10の導電性ペーストと、先に作製したのと同じシリコーンブランケットとを用いて、前記印刷試験を行ない、各特性を評価した。結果を表4に示す。
【0112】
【表4】

表より、バインダ樹脂として、ポリエステル樹脂に代えて、溶解度定数が12.0を超えるポリイミド樹脂を用いると共に、溶剤として、同じく溶解度定数が12.0を超えるエチレングリコールを用いた比較例7の導電性ペーストでは、前記両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であったため、溶剤の揮散による粘度上昇は生じず、粘度の安定性は○(良好)と評価された。しかしバインダ樹脂の溶解度定数が12.0を超えるため導電性ペーストの、シリコーンブランケットの表面に対する親和性が低くなったことと、溶剤の溶解度定数が12.0を超えることとが相まって、再転写の工程において転写不良を生じたことから転写性は×(不良)と評価された。また、溶剤の溶解度定数が12.0を超えることから、連続印刷性も×(不良)と評価された。
【0113】
また前記ポリイミド樹脂と、溶解度定数が8.5〜9.5の範囲内であるアセトンとを用いた比較例8の導電性ペーストでは、前記両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0を越えることから、溶剤の揮散による粘度上昇が発生して粘度の安定性は△(やや不良)と評価されると共に、連続印刷性は×(不良)と評価された。またバインダ樹脂の溶解度定数が12.0を超えるため導電性ペーストの、シリコーンブランケットの表面に対する親和性が低くなって転写性も×(不良)と評価された。
【0114】
またバインダ樹脂として、ポリエステル樹脂に代えて、溶解度定数が8.5未満であるポリエチレン樹脂を用いると共に、溶剤として、同じく溶解度定数が8.5未満であるn−ヘキサノンを用いた比較例9の導電性ペーストでは、前記両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0以下であったため、溶剤の揮散による粘度上昇は生じず、粘度の安定性は○(良好)と評価された。しかしバインダ樹脂と溶剤の溶解度定数がいずれも8.5未満であったため、シリコーンブランケット中に前記両者が過剰に蓄積されて濡れ性等が変動して、連続印刷の後期に、線幅または膜厚みの誤差が大きくなった。その結果連続印刷性は×(不良)、転写性は△(やや不良)と評価された。
【0115】
さらに前記ポリエチレン樹脂と、溶解度定数が8.5〜9.5の範囲内であるアセトンとを用いた比較例10の導電性ペーストでは、前記両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0を越えることから、溶剤の揮散による粘度上昇が発生して粘度の安定性は×(不良)と評価されると共に、連続印刷性は×(不良)、転写性は△(やや不良)と評価された。
〈比較例11〉
バインダ樹脂としては、ゲルパーミェーションクロマトグラフ法(GPC)による測定結果から求められた重量平均分子量Mwが55000、数平均分子量Mnが40000、両者の比Mw/Mnが1.38で、かつ溶解度定数が10.0であるポリエステル樹脂(PET)を用意した。また溶剤としては、溶解度定数が10.7、沸点が157℃であるn−ヘキサノールを用いた。前記ポリエステル樹脂とn−ヘキサノールとの溶解度定数の差の絶対値は0.7であった。なおGPCは下記の条件で実施した。
【0116】
カラムの種類:Mixed Gelカラム〔(株)島津製作所製〕
カラムの本数:1本
移動相流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:100μl
試料濃度:0.1%(w/w)
溶媒:テトラヒドロフラン
前記ポリエステル樹脂100質量部と、n−ヘキサノール100質量部と、実施例1〜3、比較例1、2で使用したのと同じ銀粉末900質量部、およびガラスフリット30質量部とを配合し、3本ロールを用いて混合して、インキ組成物としての導電性ペーストを調製した。
【0117】
前記導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は5であった。
〈比較例12〉
バインダ樹脂として、ゲルパーミェーションクロマトグラフ法(GPC)による測定結果から求められた重量平均分子量Mwが5000、数平均分子量Mnが1200、両者の比Mw/Mnが4.17で、かつ溶解度定数が10.0であるポリエステル樹脂(PET)を用いたこと以外は比較例11と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とn−ヘキサノールとの溶解度定数の差の絶対値は0.7であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は30であった。
【0118】
〈比較例13〉
溶剤としてのn−ヘキサノールの配合量をアクリル樹脂100質量部あたり130質量部としたこと以外は実施例6と同様にして導電性ペーストを調製した。導電性ペーストの粘度は4Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は15であった。
【0119】
〈比較例14〉
溶剤としてのn−ヘキサノールの配合量をアクリル樹脂100質量部あたり50質量部としたこと以外は実施例6と同様にして導電性ペーストを調製した。導電性ペーストの粘度は55Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は20であった。
【0120】
〈比較例15〉
溶剤として、溶解度定数が7.8、沸点が35℃であるジエチルエーテルを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり100質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とジエチルエーテルとの溶解度定数の差の絶対値は2.2であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は12であった。
【0121】
〈比較例16〉
溶剤として、溶解度定数が9.5、沸点が217℃であるテルピネオールを用い、その配合量をポリエステル樹脂100質量部あたり100質量部としたこと以外は実施例1と同様にして導電性ペーストを調製した。前記ポリエステル樹脂とテルピネオールとの溶解度定数の差の絶対値は0.5であった。また導電性ペーストの粘度は10Pa・s、導電性ペーストを乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値は25であった。
【0122】
前記比較例11〜16の導電性ペーストと、先に作製したのと同じシリコーンブランケットとを用いて、前記印刷試験を行ない、各特性を評価した。結果を表5に示す。
【0123】
【表5】

表より、塗膜のボールタック値が10未満となるようにポリエステル樹脂の分子量分布を調整した比較例11の導電性ペーストでは、前記塗膜の粘着性の不足により転写不良が発生したため、転写性が×(不良)と評価された。一方、塗膜のボールタック値が28を超えるようにポリエステル樹脂の分子量分布を調整した比較例12の導電性ペーストでは、逆に塗膜の粘着力が強くなりすぎて、凹版の凹部からシリコーンブランケットの表面への転写が阻害されることによる転写不良が発生したため、やはり転写性が×(不良)と評価されると共に、連続印刷性も△(やや不良)と評価された。
【0124】
また粘度が5Pa・s未満となるように調整した比較例13の導電性ペーストでは、転写および再転写の工程においてパターン形成された形状を良好に保持できずに型崩れを生じたため、連続印刷性が×(不良)、転写性が△(やや不良)と評価された。
一方、粘度が50Pa・sを超えるように調整した比較例14の導電性ペーストでは、凹版オフセット印刷機のドクターブレードを用いて凹版の凹部の隅々まで十分に充填できない場合を生じたため、連続印刷性および転写性が共に×(不良)と評価された。また最初から粘度が高く、わずかな溶剤の揮散によって粘度が大きく上昇したため、粘度の安定性も△(やや不良)と評価された。
【0125】
さらに沸点が50℃未満である溶剤を用いた比較例15の導電性ペーストでは、前記溶剤の急激な揮散によって粘度上昇が発生したため、粘度の安定性、および連続印刷性が共に×(不良)と評価された。一方、沸点が200℃を超える溶剤を用いた比較例16の導電性ペーストでは、シリコーンブランケットに含浸された前記溶剤が除去されずに蓄積されたため、連続印刷の後期に、線幅または膜厚みの誤差が大きくなって連続印刷性が×(不良)と評価された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダ樹脂、顔料、および溶剤を含むインキ組成物であって、
(1) 前記バインダ樹脂の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内、溶剤の溶解度定数が8.5〜12.0の範囲内で、かつ両者の溶解度定数の差の絶対値が2.0以下、
(2) 溶剤の沸点が50〜200℃の範囲内、
(3) インキ組成物の粘度が5〜50Pa・sの範囲内、
(4) インキ組成物を乾燥させた膜厚み1μmの塗膜のボールタック値が10〜28の範囲内、
であることを特徴とするインキ組成物。
【請求項2】
バインダ樹脂がポリエステル樹脂、アクリル樹脂、およびエポキシ樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載のインキ組成物。
【請求項3】
顔料が導電性粉末である請求項1または2に記載のインキ組成物。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のインキ組成物を、印刷パターンに対応した凹部を有する凹版の前記凹部に充填し、次いで少なくとも表面がシリコーンゴムからなるシリコーンブランケットの前記表面に転写したのち、被印刷体の表面に再転写することを特徴とする凹版オフセット印刷法。

【公開番号】特開2010−159350(P2010−159350A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−2570(P2009−2570)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】