説明

インキ組成物および包装材料

【課題】耐光性包材用インキ組成物であって、ラミネート強度の低下などの塗膜劣化がなく、インキの経時安定性が良好なインキ組成物の提供
【解決手段】顔料、ポリウレタン樹脂および溶剤を含有する耐光性包材用インキ組成物において、顔料が特定の有機顔料、無機顔料から選択される1種以上であり、ポリウレタン樹脂が重量平均分子量15,000〜100,000であり、かつポリエステルポリオール/ポリエーテルポリオール=50/50〜100/0で合成させてなることを特徴とする耐光性包材用インキ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
インキ組成物およびインキ組成物をフィルムに塗布した印刷物と、この印刷物をラミネート接着剤を介しラミネートを行なった積層体と、この積層体を使用して加工された耐光性に優れた包装物および包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の包装物および包装材料は、長期にわたり光照射下で保存されるケースもみられる。こうした条件下において発生するラジカルの影響で印刷インキ塗膜の凝集力低下、あるいは密着力低下が発生しラミネート強度の低下を招き、光照射下で長期保存された包装物および包装材料を開封する際に、積層の相間剥離が発生するという問題があった。
【0003】
インキで耐光性を付与する方法としては、紫外線吸収剤や光安定化剤を一定量添加することで、光照射による塗膜の劣化を防ぐ方法が知られている。紫外線吸収剤は、その照射される紫外線を吸収することで塗膜の劣化を防ぎ、また光安定化剤は、紫外線などのエネルギー線が照射されることにより塗膜内で発生するラジカルを吸収することで、ラジカル発生が起因となる塗膜の劣化を防ぐものである(特開2006−70190号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−70190号公報
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、使用する紫外線吸収剤や光安定化剤が高価なため、インキの製造コストが高くなってしまう。また、インキ中に紫外線吸収剤や光安定化剤を添加した場合、インキの経時安定性が低下して、場合によってはインキのゲル化を引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、耐光性包材用インキ組成物であって、ラミネート強度の低下などの塗膜劣化がなく、インキの経時安定性が良好なインキ組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記した課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の顔料、ポリウレタン樹脂を用いることで、該樹脂を主たるバインダーとしたインキ組成物は、低コストで製造でき、耐ブロッキング性、経時安定性が良好であり、かつ紫外線によるラミネート強度の低下を防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、顔料、ポリウレタン樹脂および溶剤を含有する耐光性包材用インキ組成物において、
顔料が、
C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメント レッド101、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、 C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメント レッド221、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド242、 C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメ ントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ37、 C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7およびC.I.ピグメントホ ワイト6
から選択される1種以上であり、
ポリウレタン樹脂が、
ポリオールとジイソシアネート化合物と
から合成されてなり、かつ
重量平均分子量15,000〜100,000
であり、さらに、
下記計算式(1)で示されるポリオールの重量比率W1/W2=50/50
〜100/0
で合成させてなることを特徴とする耐光性包材用インキ組成物に関するものである。
計算式(1)
【数1】

【0009】
また、本発明は、前記ポリウレタン樹脂が、
合成時に、カルボジイミド基を有する化合物
を含んで合成させてなり、
カルボジイミド基を1.0×10−6〜5.0×10−4モル/ポリウレタン樹脂1g
含むことを特徴とする上記の耐光性包材用インキ組成物
に関するものである。
【0010】
さらに本発明は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を、該インキ組成物全量に対して、1〜5重量%含むことを特徴とする上記の耐光性包材用インキ組成物に関するものである。
【0011】
さらに本発明は、上記の耐光性包材用インキ組成物をフィルムに印刷し、印刷面上に接着剤を塗布してシーラントフィルムと貼り合わせてなることを特徴とするドライラミネート積層物に関するものである。
【0012】
さらに本発明は、上記の積層物を使用した包装物もしくは包装材料に関するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、優れた耐光性を有するインキ組成物、包装物、包装材料が得られた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の耐光性を有するインキ組成物における各成分について以下に説明する。
【0015】
本発明に用いる顔料は、有機顔料と無機顔料から選択される。具体的には、有機顔料としては、不溶性アゾ顔料のC.I.ピグメントイエロー83、ベンズイミダゾロン系顔料のC.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントレッド185、酸化鉄のC.I.ピグメントレッド101、縮合系アソ゛顔料のC.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド242、ナフトールAS系のC.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド238、ジオキサジン系顔料のC.I.ピグメントバイオレット23、フタロシアニン顔料のC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントグリーン7、ピラゾロンジスアゾ型顔料のC.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ37が使用できる。その中でもC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ37、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントレッド101を用いることで、より耐光性に優れた包材が得られる。また、単独では用いることは出来ないが、その他C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド221を必要に応じて併用することもできる。
【0016】
無機顔料としては、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7およびC.I.ピグメントホワイト6を用いることができる。その他、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、アルミニウム、マイカ(雲母)を必要に応じて併用することもできる。
【0017】
顔料はインキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、顔料は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0018】
本発明におけるポリウレタン樹脂は、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されているポリウレタン樹脂を用いることができる。
【0019】
本発明に使用するポリウレタン樹脂は、従来公知の方法、例えば、特開昭62−153366号公報、特開昭62−153367号公報、特開平1−236289号公報、特開平2−64173号公報、特開平2−64174号公報、特開平2−64175号公報などに開示されている方法により得ることができる。具体的には、ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、末端イソシアネート基のプレポリマーを得、得られるプレポリマーを、適当な溶剤中、すなわち、インキ用の溶剤として通常用いられる、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノールなどのアルコール系溶剤;トルエン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤の中で、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤と反応させる二段法、あるいはポリオール、ジイソシアネート化合物、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤を上記のうち適切な溶剤中で一度に反応させる一段法により製造される。これらの方法のなかでも、均一なポリウレタン樹脂を得るには、二段法によることが好ましい。また、ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤のアミノ基の合計(当量比)が1/0.9〜1.3の割合になるように反応させることが好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3より小さいときは、鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤が未反応のまま残存し、ポリウレタン樹脂が黄変したり、印刷後臭気が発生したりする場合がある。
【0020】
本発明に使用するポリウレタン樹脂は、重量平均分子量15,000〜100,000のものを使用する。重量平均分子量が15,000未満の場合には、得られるインキ組成物の耐光性、耐ブロッキング性、および印刷被膜の強度や耐油性などが低くなる傾向があり、100,000を超える場合には、得られるインキ組成物の粘度が高くなり、印刷被膜の光沢が低くなる傾向が有り、インキの経時安定性も低下してしまう。
【0021】
また、本発明のポリウレタン樹脂は、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールを使用し、ポリエステルポリオールの重量W1とポリエーテルポリオールの重量W2の比率は、W1/W2=50/50〜100/0が好ましく、更に好ましくはW1/W2=70/30〜100/0である。ポリエステルポリオールの比率が50%以下の場合には、耐光性が劣るほか、得られるポリウレタン樹脂の皮膜が脆弱になる傾向にあり、インキ皮膜の耐ブロッキング性が劣る。なお、W1、W2はポリウレタン樹脂合成時の重量を示す。なお、耐光性の他にインキ化適性、印刷適性、印刷効果、耐ブロッキング性、およびラミネート適性を最適化するためには、それぞれの顔料にあったポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの比率を適性化することが重要である。例えば藍、白顔料に関しては、ポリエステルポリオールの重量W1とポリエーテルポリオールの重量W2の比率は、W1/W2=70/30〜90/10が、それぞれの物性を満たすために最適な条件である。
【0022】
前記ポリエステルポリオールの具体例としては、例えば、ジカルボン酸とジオールの縮合反応により得られるポリエステルポリオールが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、セバシン酸、こはく酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸の如き脂肪族系ジカルボン酸、またはその無水物;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族系カルボン酸、またはその無水物等が挙げられる。また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブチレングリコール、イソブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−メチル−2,5−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブチンジオール、1,4−ブテンジオール、2,5−ジメチル−3−ヘキシン−2,5−ジオール;ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールペンタン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基を有するジオール等が挙げられる。
【0023】
また、ポリエステルポリオールは、ε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等のラクトン化合物と、ジオールモノマー、ポリエステルポリオール、ポリエーテル等のジオール化合物とを150〜250℃で反応して得ることもできる。
【0024】
前記ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えば、酸化メチレン、酸化エチレン、テトラヒドロフランなどの重合体または共重合体等が挙げられる。
【0025】
本発明に使用するポリウレタン樹脂に用いられるジイソシアネート化合物としては、ポリウレタン樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5―ナフチレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメリールジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライドやダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等があげられる。これらのジイソシアネート化合物は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0026】
ポリウレタン樹脂に使用される鎖伸長剤としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジアミンなどの他、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミンなど分子内に水酸基を有するアミン類も用いることが出来る。これらの鎖伸長剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
また、反応停止を目的とした末端封鎖剤として、一価の活性水素化合物を用いることもできる。かかる化合物としてはたとえば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン類やエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類があげられる。更に、特にポリウレタン樹脂中にカルボキシル基を導入したいときには、グリシン、L−アラニン等のアミノ酸を反応停止剤として用いることができる。これらの末端封鎖剤は単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
本発明にはカルボジイミド基を分子内に含有するポリウレタン樹脂を使用することで更に耐光性を向上させることができ、その含有量は1.0×10−6〜5.0×10−4モル/樹脂1gの範囲が好ましい。カルボジイミド基の含有量が、1.0×10−6モル/樹脂1gより少ない場合は、耐光性の向上効果が得られ難く、5.0×10−4モル/樹脂1gより多い場合は、ポリウレタン樹脂の粘度安定性が低下し、それに伴うインキの経時安定性も低下し易い。
【0029】
本発明に使用するカルボジイミド基を分子内に含有するポリウレタン樹脂は、一般に高分子ジオール、ジイソシアネート化合物からなるウレタンプレポリマーおよびジアミン等の鎖伸長剤などを反応させて得られるものである。また、カルボジイミド基の導入方法については何ら限定されるものではないが、例えば、カルボジイミド基をポリウレタンウレア樹脂に導入する方法として以下を挙げることができる。すなわち、カルボジイミド基およびイソシアネート基をそれぞれ1個以上有する化合物をジイソシアネート化合物成分の一部または全部として用いることにより、カルボジイミド基をポリウレタンウレア樹脂に導入することができるが、均一なポリウレタン 樹脂溶液が得られやすいという点では、下記一般式(1)で表されるイソシアネート基を2個有する化合物を用いることが好ましい。
【0030】
一般式(1)
【化1】


(式中、Rは置換基を有してもよいアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、複素環式を、nは1以上の整数を表し、Rは同一または異なってもよい。)
【0031】
カルボジイミド基およびイソシアネート基をそれぞれ1個以上有する化合物は、公知の方法、例えばジおよびまたはトリイソシアネート化合物を非反応性の有機溶剤中で適当な触媒、より具体的には3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレート−1−オキシドの存在下で加熱し、脱二酸化炭素を伴う縮合反応によりイソシアネートをカルボジイミド化する方法により得られる。
【0032】
カルボジイミド基およびイソシアネート基をそれぞれ1個以上有する化合物の原料であるジイソシアネート化合物は、前記のジイソシアネート化合物を使用することが出来る。
【0033】
また、カルボジイミド化合物の市販品としては、日清紡社製カルボジライト(商品名)や、東洋化成工業社製のカルボジイミド化合物が販売されている。
【0034】
本発明に使用するポリウレタン樹脂は、架橋可能な官能基、例えばアミノ基、水酸基を有していることが好ましい。アミノ基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂合成時にアミン類の鎖伸長剤および(または)末端封鎖剤の量を調整し、ポリウレタン樹脂の末端をアミノ基とすることにより得ることができる。水酸基含有ポリウレタン樹脂は、例えば、鎖伸長剤として上記の分子内に水酸基を有するアミン類を用いることにより得ることができる。ポリウレタン樹脂のアミン価は1〜10mgKOH/樹脂1g、水酸基価は0.05〜5.0mgKOH/樹脂1gの範囲内とすることが好ましい。
【0035】
本発明は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を該インキ組成物全量に対して、1〜5重量%含むことが好ましい。含有量が1重量%より少ない場合には、耐光性の向上効果が得られ難く、5重量%より多い場合には、インキ皮膜が固くなり、溶剤成分が皮膜中から抜けにくくなるため、残留溶剤量が増えてしまう。
【0036】
本発明に使用する塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、塩化ビニルモノマーまたは塩化ビニルモノマーおよび酢酸ビニルモノマーとヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとの共重合によるものを使用することができ、該共重合体は、さらに、マレイン酸等の二塩基酸、グリシジルアルキル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、アクリルアマイド、ジメチルアミノエチルアルキル(メタ)アクリレート等の他の不飽和モノマーを含んでもよい。また、上記共重合モノマーを含んでもよい塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を部分鹸化したものを使用することもできる。
【0037】
本発明は、顔料、ポリウレタン樹脂、有機溶剤を必須成分として含むが、更にインキとして必要とされる機能を有するため、併用樹脂を含むことが出来る。その他、必要に応じて体質顔料、顔料分散剤、レベリング剤、消泡剤、ワックス、可塑剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤なども含むこともできる。
【0038】
本発明のインキに必要に応じて併用される樹脂の例としては、本発明以外のポリウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、ブチラール、石油樹脂などを挙げることができる。併用樹脂は、単独で、または2種以上を混合して用いることができる。併用樹脂の含有量は、インキの総重量に対して1〜25重量%が好ましく、更に好ましくは2〜15重量%である。
【0039】
本発明のインキは、顔料、樹脂などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料をポリウレタン樹脂により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキを製造することができる。
【0040】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては、一般に使用される、例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミルなどを用いることができる。
【0041】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0042】
前記方法で製造されたインキ粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。尚、上記粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0043】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えばポリウレタン樹脂、顔料、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0044】
本発明のインキの色相としては、使用する顔料の種類に応じて、プロセス基本色として黄、紅、藍、墨、白の5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。各色相のベースインキは、印刷に適した粘度および濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合されて各印刷ユニットに供給される。
【0045】
本発明の印刷インキは、ポリオレフィン、ポリエステル、ナイロンフィルムに、用途に応じた印刷方法により印刷することが出来る。
【0046】
本発明の印刷インキを塗布した印刷物は、一般的なラミネート用接着剤を介し、ドライラミネート(法)により、ポリオレフィン、ポリエステルなどのシーラントフィルム、あるいはアルミニウムなどを積層させラミネート積層物とすることが出来る。これらラミネート積層物は、食品、 医薬品などを包装する包装物、包装材料として幅広く利用する事ができる。
【実施例】
【0047】
本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。以下、「部」および「%」は、いずれも重量基準によるものとする。
【0048】
なお、水酸基は、樹脂1g中に含有する水酸基を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数で、JIS K0070に従って行った値である。アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸に当量の水酸化カリウムのmg数である。アミン価の測定方法については、後述のとおり行なった。分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算分子量として求めた。粘度はトキメック社製B型粘度計で25℃において測定した。
【0049】
(合成例1)
攪拌機、温度計、還流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、アジピン酸と3−メチル−1,5−ペンタジオールから得られる数平均分子量(以下Mnという)2,000のポリエステルジオール(PMPA2000)16.9部、Mn2000のポリプロピレングリコール(PPG2000)5.7部、イソホロンジイソシアネート5.31部および酢酸エチル4.5部を窒素気流下に90℃で6時間反応させ、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液32.41部を得た。次いでイソホロンジアミン1.97部、2―ヒドロキシエチルエチレンジアミン0.12部、ジ−n−ブチルアミン0.002部、酢酸エチル44.5部およびイソプロピルアルコール21.0部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液32.41部を室温で徐々に添加し、次に50℃で3時間反応させ、固形分30%、アミン価 1.5mgKOH/樹脂1g、重量平均分子量97,000のポリウレタン樹脂溶液(A)を得た。
【0050】
(合成例2〜18)
表1に示す原料を用い、合成例1と同様にして、ポリウレタン樹脂溶液B〜Rを得た。
使用したポリオールを下記に記す。
PMPA4000:ポリエステルポリオール 分子量4,000
PMPA1000:ポリエステルポリオール 分子量1,000
PPG1000:ポリエーテルポリオール 分子量1,000
なお、合成例6、7、13、14、15においては両末端イソシアネートのカルボジイミド化合物をジイソシアネート化合物成分の一部として加え、カルボジイミド基含有ポリウレタン樹脂を得た。
【0051】
[インキの調整]以下のインキ組成物について、サンドミルを用いて製造した。
[実施例1]
得られたポリウレタン樹脂溶液A 45部、C.I.ピグメントイエロー83 10部、MEK45部の混合物を錬肉し、黄のグラビアインキ(ベースインキ)を得た。また、同様にポリウレタン樹脂溶液A 40部、C.I.ピグメントホワイト6 30部、MEK30部の混合物を錬肉し、白のグラビアインキ(ベースインキ)を得た。
【0052】
黄、白インキそれぞれ100部に対し、印刷時の粘度に調整するため、メチルエチルケトン40%、イソプロピルアルコール30%、酢酸プロピル20%、酢酸エチル10%からなる混合溶剤を用いて、25℃においてザーンカップNo.3で測定した粘度が16秒になるように調整し、版深35μmグラビア版を備えたグラビア校正機によりコロナ処理ポリエチレンテレフタレートフィルム「E5100」(東洋紡績(株)製、商品名)のコロナ処理面に黄インキ、白インキの順で印刷して、40〜50℃で乾燥し、得られた印刷物について、耐ブロッキング性試験、残留溶剤量の評価を行った。
【0053】
次に、エクストルージョンラミネート法によりポリエチレンを溶融樹脂として用いポリエチレンフィルムとラミネートを行い、ラミネート物を作成した。また、同様にドライラミネート法により、ウレタン系接着剤を使用し、ドライラミネート機によってCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルムとラミネートを行い、ラミネート物を作成した。
次に、前記ラミネート物を用い、ラミネート強度測定、およびフェドメーターにより40時間紫外線を照射したラミネート物のラミネート強度測定を行い、結果を表2に示した。なお、評価方法は、後述のとおり行った。
【0054】
[実施例2〜38および比較例1〜4]
表1に示す組成配合により合成したポリウレタン樹脂を用いて実施例1と同様にインキ(ベースインキ)を作成し、実施例1と同様の混合溶剤で希釈し、グラビアインキ(希釈インキ)を得た。該希釈インキを用いて実施例1と同様に印刷、ラミネートを行いラミネート積層物を得た。それぞれについて同様の評価を行なった。結果を表2に記す。
なお、実施例1〜38、比較例1〜4においては色インキを印刷した後、白インキを重ね刷りした。
【0055】
アミン価の測定方法は、下記の通りである。
[アミン価の測定方法]
試料を0.5〜2g精秤する。(試料量:Sg)精秤した試料に中性エタノール(BDG中性)30mLを加え溶解させる。得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なう。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い次の計算式(2)によりアミン価を求めた。
【0056】
計算式(2)
【数2】



【0057】
各性能評価の条件は下記の通りである。結果を表2に記す。
[経時安定性]
得られたインキ組成物を200mLのガラス製サンプル瓶に入れ、40℃、1週間後の貯蔵安定性を評価した。評価結果の判定値は次の通りである。
(評価基準)
○・・・製造直後に比べて粘度上昇が10%未満、ゲル化が認められない。
○△・・製造直後に比べて粘度上昇が10%以上20%未満、ゲル化が認められ ない。
△・・・製造直後に比べて粘度上昇が20%以上30%未満、ゲル化が認められな い。
×・・・製造直後に比べてゲル化している。
実用レベルは、○△以上である。
【0058】
[耐ブロッキング性試験]
上記印刷物の印刷面と非印刷面が接触するようにフィルムを重ね合わせ、10kgf/cmの加重をかけ、40℃、80%RHの環境下に12時間経時させ、取り出し後、非印刷面へのインキの転移の状態を、5段階評価した。
(評価基準)
◎ ・・・ 非印刷面へのインキの転移量0%
○・・・ 転移量10%未満
○△・・ 転移量10%以上20未満%
△・・・ 転移量20%以上30%未満
× ・・・ 転移量30%以上
実用レベルは、○△以上である。
【0059】
[残留溶剤]
上記印刷物を巻き取った後に、1m切り出して、短冊状に断裁し、三角フラスコに入れ密栓した状態で80℃、30分加熱した後、マイクロシリンジで一定量の溶剤蒸気を取り出し、ガスクロマトグラフィーで残留溶剤量を定量する。残留溶剤量の単位は、mg/mで表示する。評価結果の判定値は次の通りである。
(評価基準)
○・・・2.0mg/m未満
○△・・2.0m/m以上3.0mg/m未満
△・・・3.0mg/m以上4.0mg/m未満
×・・・4.0mg/m以上
実用レベルは、○△以上である。
【0060】
[エクストルージョンラミネート]
作成した印刷物をエクストルージョンラミネーターにて下記の条件でラミネートを行なった。印刷面にアンカー剤としてEL451(東洋モートン製ブタジエン系アンカー剤)、10%溶液を塗布し、溶融樹脂にLC500(日本ポリケム製)、シーラントにTUX−FCD 膜厚40μm(東セロ製)を使用した。溶融樹脂温度315℃、樹脂膜厚20μmとした。
【0061】
[ドライラミネート]
作成した印刷物をドライラミネーターにて下記の条件でラミネートを行った。印刷面にアンカー剤としてTM550(東洋モートン製ウレタン系アンカー剤)、30%溶液を塗布し、シーラントにZK−93K膜厚70μm(東レ合成)を使用した。
【0062】
[ラミネート強度測定]
前記ラミネート物を、巾15mmで裁断し、インキ面と溶融樹脂層の層間で剥離させた後、剥離強度をインテスコ製201万能引張り試験機にて剥離強度の測定を行った。
評価結果の判定値は以下の通りである。
(評価基準)
◎・・・2.0N/15mm以上
○・・・1.0N/15mm以上2.0N/15mm未満
△・・・0.5N/15mm以上1.0N/15mm未満
×・・・0.5N/15mm未満
実用レベルは、○以上である。
【0063】
[フェドメーターによる紫外線照射後のラミネート強度測定]
前記ラミネート物にフェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を40時間照射し照射後のラミネート強度を前記ラミネート強度測定と同様の方法で測定を行った。また、紫外線照射の条件は、JIS L0842−7.2、JIS B7751 に従った。
【0064】
【表1】




【0065】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、ポリウレタン樹脂および溶剤を含有する耐光性包材用インキ組成物において、
顔料が、
C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメント レッド101、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、 C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメント レッド221、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド242、 C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメ ントグリーン7、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ37、 C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7およびC.I.ピグメントホ ワイト6
から選択される1種以上であり、
ポリウレタン樹脂が、
ポリオールとジイソシアネート化合物と
から合成されてなり、かつ
重量平均分子量15,000〜100,000
であり、さらに、
下記計算式(1)で示されるポリオールの重量比率W1/W2=50/50
〜100/0
で合成させてなることを特徴とする耐光性包材用インキ組成物。
計算式(1)
【数1】

【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、
合成時に、カルボジイミド基を有する化合物
を含んで合成させてなり、
カルボジイミド基を1.0×10−6〜5.0×10−4モル/ポリウレタン樹脂1g
含むことを特徴とする請求項1記載の耐光性包材用インキ組成物。
【請求項3】
さらに、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を、該インキ組成物全量に対して、1〜5重量%含むことを特徴とする請求項1または2記載の耐光性包材用インキ組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか記載の耐光性包材用インキ組成物をフィルムに印刷し、印刷面上に接着剤を塗布してシーラントフィルムと貼り合わせてなることを特徴とするドライラミネート積層物。
【請求項5】
請求項4記載の積層物を使用した包装物または包装材料。



【公開番号】特開2012−136582(P2012−136582A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288545(P2010−288545)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】