説明

インクカートリッジ

【課題】 未使用インクが残った状態での廃インク満タンによる未使用インク廃棄防止、カートリッジ設計時での未使用インク部と廃インクとの体積見積もり不要を実現可能とするインクカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】 インク供給口/吸収口カバー104と連動しているインク供給/吸収切り替え爪106をA−B間でスライドさせることで、切り替えを可能としている。インク供給/吸収切り替え爪106をA方向にスライドさせればインク供給モードになり、B方向にスライドさせればインク吸収モードとなる。また、インク供給口/吸収口カバー104は、インク供給時にはインク吸収口をカバーし、インク吸収時には、インク供給口をカバーすることでインク漏れを防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等の記録装置にインクを供給するインクカートリッジに関し、特に、廃インクの処理を容易にするインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクカートリッジは、インク供給の用途で使用されることが一般的であった。一方、リフレッシュ動作時に排出される廃インクを貯蔵する従来の廃インクタンクは、反射型センサなどの満タン検知センサにより満タン検知がされると記録装置を廃棄する。または、メンテナンス作業を要求することが一般的である。
また、要求されるメンテナンス作業とは、メーカ側で実施される廃インクタンク交換作業を示す。
【0003】
また、従来技術として開示されている特開平8−99415号公報(特許文献1)、特開平11−58784号公報(特許文献2)では、キャリッジ上に配するインクカートリッジと廃インクタンクが一体化した構造のカートリッジが提案されている。
【特許文献1】特開平8−99415号公報
【特許文献2】特開平11−58784号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のインクカートリッジには以下のような問題点がある。
従来のインクカートリッジは、メーカが一時引き取り、廃インクタンク交換メンテナンスは、迅速な対応ができず、また作業自体に人件費、配送費などの費用が発生する。
また、インクカートリッジ、廃インクタンク一体型カートリッジは、交換作業を消費者側で実施できるというメリットはあるが、キャリッジ上のインクカートリッジの体積、重量増加が懸念される。重量増加による影響として、キャリッジ動作させるモータ等の負荷が確実に増加する問題が発生する。
【0005】
さらに、インクカートリッジ、廃インクタンク一体型カートリッジは、未使用インク部分と廃インク貯蔵部分をカートリッジ内部で完全に分けて構成しているので、それぞれの体積比を設計時に見積もる必要がある。使用状況によっては見積もり以上にリフレッシュ動作を頻繁に行うことがあり、この場合、未使用インクがカートリッジ内に残っていても廃液タンクが満タンになりカートリッジ交換が必要となる可能性が出てくる。逆に廃インクタンクの貯蔵体積を見積もりより大きく設定した場合には、未使用インク部分の液量が少なくなる。またはカートリッジ自体の体積増加が懸念される。
【0006】
本発明は係る問題に鑑みてなされたものであり、未使用インクが残った状態での廃インク満タンによる未使用インク廃棄防止、カートリッジ設計時での未使用インク部と廃インクとの体積見積もり不要を実現可能とするインクカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1記載のインクカートリッジは、記録装置に未使用インクを貯蔵するインク貯蔵部に接続されたインクを供給するインク供給部と、廃インクを貯蔵する廃インク貯蔵部に接続された廃インクを吸収する廃インク吸収部とを備えたインクカートリッジであって、インク貯蔵部と廃インク貯蔵部が一体となって配設され、インク供給部と廃インク吸収部との使用をどちらか一方に切り替えるインク供給/吸収切り替え部を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のインクカートリッジであって、インク貯蔵部と廃インク貯蔵部とは、同一の吸収体を使用し、インク供給/吸収切り替え部によってインクの供給または吸収を切り替えることにより、吸収体にインクの供給もしくは吸収させることができることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1記載のインクカートリッジであって、インクカートリッジは、使用するインク色ごとに形状が異なり、決められた廃インク貯蔵位置にしか設置できないことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項3記載のインクカートリッジであって、インクカートリッジは、廃インク量を検知する廃インク検知部を有することを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2記載のインクカートリッジであって、インクカートリッジは、インク貯蔵部が空状態になった時に、インク供給/吸収切り替え部によってインクの供給から吸収に切り替え、該インク吸収に切り替えられたか否かを判断する判断部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から本発明のインクカートリッジは、インク供給時と廃インク吸収時の吸収体が同一であることから設計時に廃インク量を見積もる必要がなく、またインクカートリッジの体積/重量増加を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に添付図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。
図1は、インクカートリッジの構成を示した図である。
本発明のインクカートリッジ10は、インク供給口100と供給管101、カートリッジ種別102、インクカートリッジ部/廃インクカートリッジ部103、インク供給口/吸収口カバー104、インク吸収口105、インク供給/吸収切り替え爪106、インク吸収体107から構成されている。
【0014】
本発明のインクカートリッジ10は、インク供給時にはインクカートリッジ部、廃インク吸収時には廃インクタンク部に装着することによりインク吸収体を完全にどちらかのモードで使用することが可能となり、従来のインクカートリッジで起こりうる未使用インクが残った状態での廃インク満タンによる未使用インク廃棄の防止、カートリッジ設計時での未使用インク部と廃インク部との体積見積もりの不要を実現することができる。また、使用用途をモード別に切り替えるので両モード一体型カートリッジと比較するとカートリッジ自体の体積/重量増加の低減が望める。
【0015】
次に、図2を参照して、インクの供給または吸収モードの説明をする。
インク供給/吸収モードの移行は、インク供給口/吸収口カバー104と連動しているインク供給/吸収切り替え爪106を図2に示すようなA−B間をスライドさせることで、切り替えを可能としている。インク供給/吸収切り替え爪106をA方向にスライドさせればインク供給モードになり、B方向にスライドさせればインク吸収モードとなる。また、インク供給口/吸収口カバー104は、インク供給時にはインク吸収口をカバーし、インク吸収時には、インク供給口をカバーすることでインク漏れを防ぐ。
【0016】
図2(b)に示すインク供給口/吸収口カバー104の概略図は、インク供給口100/吸収口105に接触する面であり、図2(b)のC部分はインク吸収口に、D部分はインク供給口に接触する。C、D部分は、カートリッジ外部側に貫通しない構造であり、カートリッジ外部からは見えないようになっている。インク供給口/吸収口カバー104の外側つまりカートリッジ外部側は、カートリッジと同素材例えばプラスチックなどがよく、図2(b)に示すC,D部分のようなインク供給口100/吸収口105に直接ふれる部分はインク吸収体と同素材でインクを吸収できる素材がよい。
【0017】
次に、図3に示すフローチャートを参照して、インクカートリッジの交換の処理動作を説明する。
まず、インクもしくはインクカートリッジの有りか否かの判断を行う(ステップS100)。ここでは、インクジェット記録装置を使用する際に、一般的に記録装置はインクカートリッジの有無およびインクの有無を検知する。ステップS100で、インクもしくはインクカートリッジが無しと判断された場合に(ステップS100/NO)、ユーザにインクカートリッジの交換を促す(ステップS101)。
【0018】
ここでは、図4に示す制御デバイスの一つであるインクなし検知センサ202がインクもしくはインクカートリッジの有無を検知し、プリンタ制御デバイス201を介してLED表示部200にインクカートリッジの交換を促すメッセージを表示する。
【0019】
この時、インクカートリッジのインク供給/吸収切り替え爪106が図2に示すようなA方向にスライドした状態で記録装置に装着する。また、装着する際に、インクカートリッジ装着部に、例えばインク供給口/吸収口カバー104がインク供給モード位置(切り替え爪A)になければ装着できないような突起した構成を取ることが有効である。
【0020】
ステップS101でインクカートリッジの交換が行われると、LED表示部200に廃インクカートリッジの交換を促すメッセージを表示し、廃インクカートリッジの交換を行う(ステップS102)。廃インクカートリッジの交換の際、インク供給/吸収切り替え爪106をインク吸収モード(B方向にスライドさせる)に変更し、廃インクタンク部300に図5に示すように色ごとに装着する。
【0021】
廃インク吸収で使用するカートリッジは未使用インク空状態のカートリッジとし、この時インク供給口/吸収口切り替え爪106がインク吸収モードに確実に設定されるために、廃インクタンク部103には図6に示すカートリッジ種別102の突起位置をインク色毎に変えることにより実現する(図6に示すようにカートリッジ種別は実線、点線のように色毎に突起位置を変化させる)。インク色毎に廃インクを吸収することにより、インクカートリッジ回収後のインク再利用を実現するために役立つ。
【0022】
次に、廃インクカートリッジの交換が終了したかを判断する(ステップS103)。ここでは、図6に示すように廃インク交換検知センサ203によって検知する。廃インク交換検知センサは、例えば光検知用センサを使用する。廃インクカートリッジの交換が終了していない場合(ステップS103/NO)、ステップS102の廃インクカートリッジ交換を繰り返す。ここでは、廃インクカートリッジなし(取り出し)で“L”となる信号をプリンタ制御デバイス201へ送信し、LED表示部200へ廃インクカートリッジの交換を促すメッセージを表示させる。
【0023】
また、廃インクカートリッジの交換が終了した場合(ステップS103/YES)、ここでは、廃インクカートリッジなし(取り出し)で“L”、あり(取り付け)でHとなる信号をプリンタ制御デバイス201へ送信し、プリンタ制御デバイスは、L→H情報を内部レジスタ(図示せず)に順次格納する。L→H情報が取り込まれるとプリンタ制御デバイスは、廃インクカートリッジ交換作業が終了したと判断し、次に廃インクカートリッジが満タンか否かを判断する(ステップS104)。
【0024】
ステップS104では、インク吸収口105付近に設置された廃インク満タン検知センサ204によって廃インク量の検知を行い、満タンか否かを検知する。廃インクカートリッジ103が満タンと検知された場合は(ステップS104/YES)、廃インクカートリッジ交換(ステップS102)を繰り返す。
【0025】
また、廃インクカートリッジが満タンではないと検知された場合には(ステップS104/NO)は、印字動作実行(ステップS105)する。本発明では、インクカートリッジ交換ごとに未使用インク空状態のカートリッジを廃インク吸収用に使用することとしているが、廃インクカートリッジ交換検知で交換終了と検知した後、再び同じ廃インクカートリッジが装着されてしまった場合、またはインク満タンカートリッジが装着されてしまった場合でも廃インク量を検知することによって廃インク漏れを防ぐことができる。
【0026】
次に、印字動作が完了したかを判断し(ステップS106)、完了していない場合は(ステップS106/NO)、印字動作を継続し(ステップS105)、印字動作が完了した場合は(ステップS106/YES)、そのまま終了となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態におけるインクカートリッジの構成を説明する。
【図2】本発明の実施形態におけるインク供給口の拡大図である。
【図3】本発明の実施形態におけるインクカートリッジの交換の処理動作を示したフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態における各センサとプリンタ制御デバイスの構成を示した図である。
【図5】本発明の実施形態における廃インクタンクの上面図である。
【図6】本発明の実施形態におけるインクカートリッジを廃インクタンクに装着した図である。
【符号の説明】
【0028】
10 インクカートリッジ
100 インク供給口
101 供給管
102 カートリッジ種別
103 インクカートリッジ部/廃インクカートリッジ部
104 インク供給口/吸収口カバー
105 インク吸収口
106 インク供給/吸収切り替え爪
107 インク吸収体
200 LED表示部
201 プリンタ制御デバイス
202 インクなし検知センサ
203 廃インク交換センサ
204 廃インク満タンセンサ
300 廃インクタンク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録装置に未使用インクを貯蔵するインク貯蔵部に接続されたインクを供給するインク供給部と、廃インクを貯蔵する廃インク貯蔵部に接続された廃インクを吸収する廃インク吸収部とを備えたインクカートリッジであって、
前記インク貯蔵部と前記廃インク貯蔵部が一体となって配設され、
前記インク供給部と前記廃インク吸収部との使用をどちらか一方に切り替えるインク供給/吸収切り替え部を有することを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
前記インク貯蔵部と前記廃インク貯蔵部とは、同一の吸収体を使用し、前記インク供給/吸収切り替え部によって前記インクの供給または吸収を切り替えることにより、前記吸収体にインクの供給もしくは吸収させることができることを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項3】
前記インクカートリッジは、使用するインク色ごとに形状が異なり、決められた廃インク貯蔵位置にしか設置できないことを特徴とする請求項1記載のインクカートリッジ。
【請求項4】
前記インクカートリッジは、廃インク量を検知する廃インク検知部を有することを特徴とする請求項3記載のインクカートリッジ。
【請求項5】
前記インクカートリッジは、前記インク貯蔵部が空状態になった時に、前記インク供給/吸収切り替え部によって前記インクの供給から吸収に切り替え、該インク吸収に切り替えられたか否かを判断する判断部を有することを特徴とする請求項2記載のインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−15701(P2006−15701A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198201(P2004−198201)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】