説明

インクカートリッジ

【課題】異物の侵入を防止しつつ、操作者によるインク量の視認性を確保する。
【解決手段】インクカートリッジ1は、長手方向、短手方向及び厚さ方向、を備え、その長手方向の一方側の側面に視認用開口部335を設けた筐体2と、厚さ方向の一方側の端部が筐体2に接するように筐体2内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部71と、貯留部71内を筐体2の外部から視認可能となるように、長手方向において当該開口部335内に配置されるように延設された仕切り板58と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを収容するインクカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なインクカートリッジとして、内部にインクを収容する略袋状の貯留部(インク袋)と、収容されたインクを貯留部から取り出すための口栓と、貯留部を収容する直方体形状の筐体(プラスチック製ケース)とを備えたインクカートリッジが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−751号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術のインクカートリッジにおいては、筐体に、口栓のゴム栓に突き刺されて貯留部内のインクを導出するニードルを通す開口が設けられている。この開口からは口栓が視認できるものの、貯留部内のインクの量を視認し確認することは難しい。
【0005】
そこで、貯留部は、例えば内部のインク量に応じて袋の弾性によって変形することから、筐体に、少なくとも貯留部の一部を視認できるような開口部を別途設けることが考えられる。しかしながら、貯留部を視認可能な開口部を設けた場合、販売前の搬送の途中や、販売後の操作者の取り扱いによっては、当該開口部から異物が筐体内部に侵入し、異物の形状や大きさや侵入速度によっては、袋状の貯留部の破損や損傷を招くおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、異物の侵入を防止しつつ、操作者による筐体内における貯留部の視認性を確保することができる、インクカートリッジを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備え、その前記長手方向の一方側の側面に開口部を設けた筐体と、前記厚さ方向の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、を有し、前記インクを供給するためのインクカートリッジであって、前記貯留部内を前記筐体の外部から視認可能となるように、前記長手方向において当該開口部内に配置されるように延設された仕切り板を有することを特徴とする。
【0008】
本願第1発明のインクカートリッジは、筐体の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる。筐体内には貯留部が備えられ、その貯留部にインクが貯留される。貯留部は袋状であり、厚さ方向の端部が筐体に接するようにして配置されている。この結果、貯留部は、内部のインクが多いほど液面が高くなり上記厚さ方向(言い換えれば略水平方向)に膨らんだ形状となる。逆に、貯留部は、内部のインクが少なくなるほど液面が低くなり、上記厚さ方向(言い換えれば略水平方向)に縮んだ形状となる。
【0009】
本願第1発明においては、上記のような液面の挙動や袋状の貯留部の挙動を操作者が筐体外部より視認できるように、筐体の長手方向一方側の側面に開口部が設けられている。これにより、操作者は、この開口部を通じて、筐体外部より貯留部内を視覚的に確認することができる。
【0010】
ここで、上記のように開口部を設けた場合、販売前の搬送の途中や、販売後の操作者の取り扱いによっては、当該開口部から異物が筐体内部に侵入し、異物の形状や大きさや侵入速度によっては、袋状の貯留部の破損や損傷を招くおそれがある。
【0011】
そこで本願第1発明においては、筐体の長手方向において開口部内に配置されるように延設された仕切り板を、当該開口部内に略水平方向に延設する。これにより、上記のような異物の侵入を防止しつつ、操作者による貯留部の視認性を確保することができる。
【0012】
第2発明は、上記第1発明において、前記筐体は、前記長手方向一方側の側面における、前記開口部の下方に、インクを外部へ排出する排出部を備えることを特徴とする。
【0013】
本願第2発明においては、筐体が排出部を備えており、当該排出部からインクが筐体外へ排出される。貯留部内のインクが少なくなってくると、残っているわずかなインクは概ね排出部の近くに存在することが多い。そこで本願第2発明においては、当該排出部及び上記開口部を、ともに筐体の長手方向一方側に配置する。これにより、操作者は、排出部近くに残っているインクを容易に視認して確認することができる。
【0014】
またこのように貯留部内のインクが少なくなった場合には、通常、操作者は排出部側を自らの方(手前側)に向けるとともに、その反対側(筐体の長手方向他方側)を上昇させたり下降させたりしてカートリッジの姿勢を変化させながら、貯留部の内部に収納されたインクを攪拌しつつ、インク残量を視覚的に確認しようとする。この場合に、もし開口部の仕切り板が略鉛直上下方向に延設されていると、上記のように操作者がカートリッジの姿勢を変化させる時の微妙な左右方向への回転により、操作者が開口部越しに筐体内部の貯留部を見る際に仕切り板が視界を遮り、視認性が悪くなる可能性がある。本願第2発明では、仕切り板を略水平方向に延設することにより、上記の弊害を回避し、操作者が筐体内部の貯留部を見る際の視認性の低下を抑制することができる。
【0015】
第3発明は、上記第2発明において、前記貯留部が、可撓性の材料で構成されていることを特徴とする。
【0016】
貯留部が剛性材料で構成されている場合には、インクが減っても貯留部が変形しにくいので、貯留部が透明パックでなければ、インク残量を確認しづらいが、貯留部が可撓性材料で構成されていれば、インクが減ったきに貯留部が変形するので、貯留部が透明パックでも銀色等の不透明パックでも、インク残量の確認を行うことができる。
【0017】
第4発明は、上記第3発明において、前記貯留部が、透明の樹脂材料から構成されていることを特徴とする。
【0018】
このような樹脂材料で構成された貯留部は、透明であるので、容易にインク残量の確認を行うことができる。
【0019】
第5発明は、上記第1乃至第4発明において、前記仕切り板は、前記筐体のうち、前記貯留部が接している面とは反対側の面に設けられていることを特徴とする。
【0020】
これにより、貯留部を、その厚さ方向の端部が筐体に接するように当該筐体内部に設置するとき、仕切り板が邪魔にならないにすることができる。
【0021】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記仕切り板は、前記筐体のうち、前記貯留部が接している面、若しくは、前記貯留部が接している面と反対側の面、に一体成形で設けられていることを特徴とする。
【0022】
これにより、仕切り板を付け忘れるのを防止することができる。
【0023】
第7発明は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記仕切り板の表面には、鏡面が設けられていることを特徴とする。
【0024】
これにより、鏡面の光沢によって筐体の中に光が入りやすくなり、筐体の内部の視認性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、異物の侵入を防止しつつ、操作者による貯留部の視認性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態のインクカートリッジが適用されるプリンタの概略構成を示す正面側からの斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態のインクカートリッジの外観を示す後側からの斜視図である。
【図3】インクカートリッジの筺体の分解斜視図である。
【図4】インクカートリッジの背面図である。
【図5】インクカートリッジの正面図である。
【図6】インクカートリッジの後側からの斜視図である。
【図7】インクパック及び筐体本体を示す側面図である。
【図8】インクカートリッジの水平断面図である。
【図9】プリンタの筺体におけるカートリッジ装着部の後部を示す要部縦断面図である。
【図10】図8中のX−X′断面における断面構造を、インクパックを除いた状態で表す横断面図である。
【図11】仕切り板を鉛直方向に配置する比較例において、仕切り板が貯留部の確認の際の視認性低下を招くことを説明するための説明図である。
【図12】本実施形態の仕切り板が貯留部の確認の際の視認性低下を招かないことを説明するための説明図である。
【図13】仕切り板を蓋に設ける変形例を示す側面図である。
【図14】下端部が回動可能に支持される仕切り板の変形例が取り付けられた筺体本体を示す側面図である。
【図15】図14に示した仕切り板の変形例を示す斜視図である。
【図16】図14に示した仕切り板の回動挙動を表す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0028】
<プリンタの概要>
本実施形態で用いられるプリンタを図1により説明する。なお、以下の説明において、上下方向、前後方向、左右方向は、各図中に適宜示す矢印方向に対応している。図1に示すように、本実施形態に用いられるプリンタ100は、インクカートリッジ1から供給されるインクを用いて、印刷ヘッド114により例えばTシャツ等の布帛(被記録媒体)に印刷を行うインクジェットプリンタである。
【0029】
このプリンタ100は、箱状の筐体101内に、布帛(図示せず)をセットして水平方向に支持するプラテン104と、インクカートリッジ1から供給されるインクを、プラテン104に支持された布帛に対し吐出し、布帛に文字、画像等を印刷する上記印刷ヘッド114と、印刷ヘッド114を搭載して、印刷ヘッド114を、図1中の左側(走査方向一方側)及び図1中の右側(走査方向他方側)に往復移動させるキャリッジ113と、キャリッジ113を左右方向にガイドする1対のガイドバー112と、キャリッジ113をガイドバー112に沿って駆動する図示しないキャリッジ駆動モータを含むキャリッジ駆動機構と、プラテン104を支持して図1中の左手前側(上記左右方向と直交する直交方向一方側)と図1中の右奥側(上記直交方向他方側)の前後方向に往復移動させるプラテン支持台103と、プラテン支持台103を前後方向にガイドする1対のガイドバー102と、プラテン支持台103をガイドバー102に沿って駆動する図示しないプラテン駆動モータを含むプラテン駆動機構等とを備えている。
【0030】
筐体101の正面側右寄りの下部位置には、前後方向に延びる8つのカートリッジ装着部108が設けられており、各カートリッジ装着部108のカートリッジ挿入口120が筐体101の正面に開口している(図1では、図示の煩雑を避けるために1つのカートリッジ装着部108及び1つのカートリッジ挿入口120のみを示す)。カートリッジ装着部108の長さは、インクカートリッジ1の長さの例えば3分の1程度である。インクカートリッジ1は、カートリッジ装着部108に装着されることで、プリンタ100内でインク供給が可能な状態にセットされ、インクカートリッジ1からプリンタ100内のチューブを介して印刷ヘッド114にインクが供給される。8個のインクカートリッジ1は、例えば白インクのインクカートリッジが4個、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックの各色インクのインクカートリッジが各1個である。
【0031】
<インクカートリッジ>
図2〜図6を用いてインクカートリッジ1の全体構成について説明する。図2〜図4に示すように、本実施形態において、インクカートリッジ1は、筐体2と、この筐体2内に収容されたインクパック7(後述の図7参照)とを備えている。筐体2は、長手方向(前後方向)と、その長手方向と直交する短手方向(上下方向)と、これら長手方向及び短手方向と直交する厚さ方向(左右方向、幅方向)とを備え、幅が狭く、前後方向に長い立型薄幅の細長い略直方体形状に設けられている。インクカートリッジ1は、この例では、筐体2の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる(図1参照)。
【0032】
上記筺体2は、図3に示すように、右側の側面の全面が開口した薄幅の細長い略直方体状の筐体本体3と、その開口部を塞ぐ細長い板状の蓋4とを備えている。筺体2は、筐体本体3と蓋4とに係合フックと係合孔とを設け、若しくは係合ピンと係合孔とを設けて、これらを互いに挿入して筐体本体3と蓋4とを接合したり、筐体本体3と蓋部4とを溶着により接合することで組み立てられる。
【0033】
筐体本体3は、左側壁部30と、底壁部31と、上壁部32と、後部壁33と、前壁部34と、を備えている。後部壁33(筺体2の長手方向の一方側の側面)は、図2に示すように、上壁部32及び左側壁部30(筺体2の厚さ方向の一方側の側面)と接続する上下方向の上後壁部331と、筐体本体3の底壁部31及び左側壁部30と接続する傾斜方向の下後壁部332とからなっている。底壁部31は上壁部32よりもやや短く、底壁部31の後端は筐体本体3の前方側へ後退して位置しており、下後壁部332は上後壁部331から底壁部31に向けて内側に傾斜している。上後壁部331には、インクパック7の貯留部71内を筺体2の外部から見ることが可能な視認用開口部336(開口部)が設けられ、下後壁部332には、インクパック7のインクを排出するためのインク排出用開口部335(排出部)が設けられている。
【0034】
視認用開口部336内には、筺体2内に外部から異物が入るのを防止するために、筺体本体3の左側壁部30に立設された仕切り板58が配置されている。仕切り板58は、図4に示すように、視認用開口部336内に筺体2の左側から右側に亘るように略水平姿勢に形成され、筺体2の長手方向に沿って視認用開口部336の出口直近まで延設されている。この仕切り板58の表面には、鏡面(例えば、金型の表面にサンドブラスト処理を施して作られるシボ加工を施さない面)が設けられている。これにより、鏡面の光沢によって筐体の中に光が入りやすくなり、筐体の内部の視認性が向上する。また、仕切り板58は、筐体本体3とは別部材のものを取り付けてもよいし、筐体本体3と一体成形してもよい。一体成形した場合には、仕切り板58の取り付け忘れを防止することができる。なお、仕切り板58の機能の詳細については、後述する。インク排出用開口部335には、インクパック7の後端に設けられた口栓72が臨んでいる。
【0035】
図3に示すように、左側壁部30には、その内面を外面側に向けて凹ませることによって、第1後突起部301、第2後突起部302、第1中間突起部303、第2中間突起部304、前突起部305の5つの突出部が設けられている。
【0036】
第1後突起部301は、左側壁部30と平行な凸状平面部316を有する、下後壁部332と連設した突出部として形成されている。上記下後壁部332のインク排出用開口部335は、U字の突出方向先端部が第1後突起部301の下後壁部332との連設部に掛かるように、下後壁部332に横方向のU字状に形成されている。なお、口栓用開口335の左壁30側の端部の近傍は、連結壁部337となっている。また、第1後突起部301は、矩形状の係合孔307を備えている。
【0037】
第2後突起部302は、左側壁部30と平行な凸状平面部317を有し、上後壁部331と連設した突出部として形成されている。上記上後壁部331のインク量検出用開口部336は、上後壁部331から第2突起部302に掛かるように横方向の矩形状に形成されている。第1中間突起部303、第2中間突起部304は、左側壁部30の後部寄りの位置に上下方向に離間して設けられ、前突起部305は、左側壁部30の前部に近接した位置に設けられている。これら第1及び第2中間突起部303,304及び前突起部305は、それぞれ、左側壁部30と平行な凸状平面部342,347,352を有し、それらの後部側には、後部方向への緩い傾斜部341,346,351が形成されている。
【0038】
これら突起部301,302,303,304,305の凸状平面部316,317,342,347,352は同一高さを有している。これにより、筐体本体3内へのインクパック7の収容や蓋4の取り付けなどの作業を行う際に、図3に示すように、作業台等の水平な平面上に筐体本体3を寝かせた状態に載置し、突起部301〜305により筐体本体3を平面上に安定に支持して、効率的に作業を行わせることができる。
【0039】
なお、第1及び第2の中間突起部303,304は、第2中間突起部304が短く(第1中間突起部303は長い)、第2中間突起部304が、上下の後部壁331と332との境界位置と第2後突起部302の下端位置とで挟まれる幅の筺体2の前後方向の帯状領域と交差していなければ、筺体2内に収容されたインクパック7のインク色は白であり、第2中間突起部304が長く(第1中間突起部303は短い)、第2中間突起部304が、上記帯状領域と交差していれば、筺体2内に収容されたインクパック7のインク色はイエロー、マゼンタ、シアンであると、ユーザに色判別をさせる標識機能を有している。
【0040】
蓋4の上部前方角部には、図3に示すように、筐体2の把持部40が設けられている。把持部40は、蓋4の上部前方角部を外面側から内面側に向けて凹ませた挟角90°の扇形の面部411及びその周壁412を有する扇状の凹部41と、凹部41の扇の要の位置近傍に凹み方向とは逆方向に突出させた凹部41の深さより短い長さの突起42とからなっている。筐体本体3の上部前方角部は、図3及び図5に示すように、凹部41の底面の扇形の両側2辺を受けるように、上壁部32及び前壁部34を切り欠いて凹部41を受容している。このような把手部40が筐体2に設けてあれば、プリンタ100のカートリッジ装着部108に複数のカートリッジ1が僅かな隙間を空けて装着してあっても、筐体2の両側をつまむ指の一方を把手部40に掛けることによって、カートリッジ1をしっかりと掴んで容易に抜き出すことができる。
【0041】
また、蓋4の後部寄りの位置には、蓋4を貫通した前後方向に長い目視穴45が設けられており、図6に示すように、目視穴45を通して筺体2内のインクパック7の一部が目視可能である。
【0042】
<インクパック>
次に、図7〜図9を用いてインクパック7及びその周囲部の構造について説明する。図7に示すように、インクパック7は、インクを貯留する細長い袋状の貯留部71と、この貯留部71の後端部に取り付けられた上記口栓72とを備えている。インクパック7は、貯留部71の左側を筺体本体3の左側壁部30に接するようにして筺体2内に配置されている。左側壁部30には、貯留部71が接触する長手方向に沿った領域に例えば両面テープからなる粘着部65(図8参照)を設けて、粘着部65により貯留部71を筺体本体3に対し固定することが好ましい。
【0043】
上記貯留部71は、可撓性を有する透明樹脂から構成されている。具体的には、可撓性を有する透明樹脂製の細長い矩形状のシートを2枚用意し、蓋4の把持部40に対応させてシートの前方角部を扇形に切り欠き、切り欠いた2枚のシートを重ね合わせて、その4辺の周囲部716(図9参照)を熱溶着して、貯留部71を形成している。本実施形態では、可撓性を有する透明樹脂として、外側からPET(ポリエチレンテレフタレート)、ナイロン、ポリエチレンの層を積層した3層構造の樹脂を用いている。
【0044】
口栓72は、後部側が比較的大きい矩形のブロック状に形成された樹脂製の円筒状本体部721と、この本体部721の前部に一体に設けられ、上下方向に長い細幅の角筒状の連結部722とを備えている。
【0045】
本体部721は、図8に示すように、内側に中空部700を有し、この中空部700は連結部722を貫通する細孔に連通している。本体部721の後部には中空部700の後端部を塞ぐゴム栓723が嵌め込まれている。口栓72の連結部722は、貯留部71の後端部において貯留部71を構成する2枚のシートの間に差し挟んでシートごと熱溶着され、これにより、口栓72は、その軸方向X(図7参照)を貯留部71の長手方向(前後方向)に一致させた姿勢で、貯留部71の後端部に液密に固定されている。本体部721の矩形ブロック状の部分の外周面には、口栓72を筺体2(具体的には筐体本体3の側壁部30)に対し位置決めする角柱状の係合突起725が設けられている。
【0046】
一方、図9に示すように、プリンタ100の筐体101のカートリッジ装着部108には、インクカートリッジ1が載置される水平な載置台130と、カートリッジ装着部108の後部において上記載置台130から上方に略垂直に立ち上がる当接板109とが設けられている。また、カートリッジ装着部108の後端部には、当接板109の前方に口栓72と同心となるようにカートリッジ装着部108内に固定設置された接続部180が設けられている。接続部180は、後端にインクチューブ182が接続された筒状の固定部181と、固定部181の前部中央から前方に突出した先端側に孔を有する中空状の導出針183とを備えている。
【0047】
インクカートリッジ1は、後部を先頭にしてカートリッジ装着部108に差し込まれ、筐体2の後部が当接板109に当接した状態で、カートリッジ装着部108にセットされるようになっている。接続部180は、カートリッジ1が差し込まれるのに伴い、固定部181の一部がインク排出用開口部335から筐体2内に進入し、固定部181の前部の導出針183が口栓72の本体部721のゴム栓723の先端部724からさらにゴム栓723の中心部を貫通して、導出針183の先端部が本体部721の中空部700内に位置した状態となる。これにより、インクパック7の貯留部71とプリンタ100側のインクチューブ182とが口栓72及び接続部108を介して接続し、貯留部71内のインクが口栓72の中空部700、接続部108の導出針183及び固定部181を通ってインクチューブ182に吐出され、インクチューブ182から印刷ヘッド114に供給される。
【0048】
<仕切り板の機能>
次に、図10等を用いて上記仕切り板58の機能に基づく本実施形態の効果について、詳細に説明する。図10に示すように、筺体2の後部の視認用開口部336内に、上述の仕切り板58が略水平姿勢に配置され、その下のインク排出用開口部335内には、上述の口栓72が位置している。ここで、本実施形態のインクカートリッジ1は、上述したように、筐体2の長手方向及び厚さ方向を略水平方向としつつ、短手方向を略上下方向として用いられる。筐体2内にはインクパック7が備えられ、そのインクパック7の貯留部71にインクが貯留される。貯留部71は袋状であり、厚さ方向の端部が筐体2に接するようにして配置されている。この結果、貯留部71は、内部のインクが多いほど液面が高くなり上記厚さ方向(=左右方向。言い換えれば略水平方向)に膨らんだ形状となる。逆に、貯留部71は、内部のインクが少なくなるほど液面が低くなり、上記厚さ方向に縮んだ形状となる。
【0049】
本実施形態においては、上記のような液面の挙動や袋状の貯留部71の挙動を操作者が筐体2の外部より視認できるように、筐体2の長手方向一方側の側面の後部に視認用開口部336が設けられている。すなわち、例えば、印刷ヘッド114でのインクの使用により、インクパック7の貯留部71内のインクが少なくなってくると、残っているわずかなインクは概ねインク排出用開口部335の近くに存在することが多い。視認用開口部336及びインク排出用開口部335をともに筐体2の後部に配置しているので、操作者は、視認用開口部336を通して、インク排出用開口部335の近くに残っている貯留部71内のインク量を視覚的に容易に確認することができる。
【0050】
ここで、上記のように視認用開口部336を設けた場合、販売前の搬送の途中や、販売後の操作者の取り扱いによっては、当該開口部336から異物が筐体2の内部に侵入し、異物の形状や大きさや侵入速度によっては、袋状の貯留部71の破損や損傷を招くおそれがある。そこで、本実施形態においては、視認用開口部336の開口領域を複数個に区分するような仕切り板58を、当該開口部336内に略水平方向に延設している。なお、仕切り板58は開口部336から離間して設けられていてもよく、図10のように、筐体2の後部から長手方向に視認した場合に、筐体2の長手方向において、開口部336内に配置されるように延設されていればよい。また、この仕切り板58はゴムなどの弾性部材で形成しても良い。これにより、上記のような異物の侵入を防止しつつ、操作者による貯留部71の視認性を確保することができる。
【0051】
ところで、上記のように貯留部71内のインクが少なくなった場合には、通常、操作者はインク排出用開口部335側を自らの方(手前側)に向けるとともに、その反対側の前側(筐体3の長手方向他方側)を上昇させたり下降させたりして(後述の図11(a)、図12(a)の白矢印参照)カートリッジ1の姿勢を変化させながら、貯留部71の内部に収納されたインクを攪拌しつつ、インク残量を視覚的に確認しようとする。ここで、例えば、図11(a)に示すように、筺体2の後部の視認用開口部336内に、仕切り板58′が略鉛直上下方向に延設されていたとする。このような比較例において、操作者が上記のようにカートリッジ1の姿勢を変化させるときに、例えば、図11(b)に示すように、誤って軸線kのまわりに微妙に左右方向へ回転させてしまったとすると、図11(c)に示すように、操作者が視認用開口部336越しに貯留部71を見る際に、仕切り板58′が大きく視界を遮って視認性が悪くなる可能性がある。
【0052】
これに対し、本実施形態では、図12(a)に示すように、筺体2の後部の視認用開口部336内に仕切り板58を略水平方向に延設している。したがって、上記カートリッジ1の姿勢を変化させる時に図12(b)に示すような軸線kまわりの左右方向への回転があったとしても、図12(c)に示すように、操作者が視認用開口部336越しに貯留部71を見る際にも、仕切り板58が視界を遮るのが回避され、筐体2の内部の貯留部71を見る際の視認性の低下を抑制することができる。
【0053】
また、本実施形態では特に、以下のような効果もある。すなわち、仮に貯留部71が剛性材料で構成されていた場合には、インクが減っても貯留部71が変形しにくいので、貯留部71が透明パックでなければ、インク残量を確認しづらい。これに対して、本実施形態では、貯留部71が可撓性材料で構成されているので、インクが減ったきに貯留部71が変形するので、貯留部71が透明パックであっても銀色等の不透明パックであっても、インク残量の確認を行うことができる。
【0054】
また、本実施形態では特に、貯留部71が、外側からPET、ナイロン、ポリエチレンの層を順に積層した3層構造の樹脂材料から構成されている。これにより、貯留部71に可撓性及び透明性を好適に付与することができ、容易にインク残量の確認を行うことができる。
【0055】
なお、以上においては、仕切り板58は、筐体1を構成する筺体本体3及び蓋4のうち、筐体本体3に設けられていたが、これに限られない。すなわち、図13に示すように、蓋4に仕切り板58を設けるようにしてもよい。これにより、貯留部71を、筐体1内部に設置するとき、仕切り板58が邪魔にならないにすることができる。また蓋4と一体成形してもよい。この場合は、上記同様、仕切り板58を付け忘れるのを防止することができる。
【0056】
また、以上においては、視認用開口部336内に筺体2の左側から右側に亘るように水平方向に固定的に仕切り板58を設けた場合を例にとって説明したが、これに限られない。例えば、図14、図15、図16等に示すように、下端部を筐体1の内部に回動可能に支持された仕切り板58を設けてもよい。この場合も上記同様の効果を得る。
【0057】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 インクカートリッジ
2 筺体
3 筺体本体
4 蓋
7 インクパック
58 仕切り板
71 貯留部
72 口栓
100 プリンタ
335 インク排出用開口部(排出部)
336 視認用開口部(開口部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、前記長手方向と直交する短手方向、及び、前記長手方向及び前記短手方向にそれぞれ直交する厚さ方向、を備え、その前記長手方向の一方側の側面に開口部を設けた筐体と、
前記厚さ方向の端部が前記筐体に接するように当該筐体内に配置され、内部にインクを貯留する略袋状の貯留部と、
を有し、
前記インクを供給するためのインクカートリッジであって、
前記貯留部内を前記筐体の外部から視認可能となるように、前記長手方向において当該開口部内に配置されるように延設された仕切り板を有する
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項2】
請求項1記載のインクカートリッジにおいて、
前記筐体は、
前記長手方向一方側の側面における、前記開口部の下方に、インクを外部へ排出する排出部を備える
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項3】
請求項2記載のインクカートリッジにおいて、
前記貯留部が、可撓性の材料で構成されている
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項3記載のインクカートリッジにおいて、
前記貯留部が、透明の樹脂材料から構成されている
ことを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載のインクカートリッジにおいて、
前記仕切り板は、
前記筐体のうち、前記貯留部が接している面とは反対側の面に設けられていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のインクカートリッジにおいて、
前記仕切り板は、
前記筐体のうち、前記貯留部が接している面、若しくは、前記貯留部が接している面と反対側の面、に一体成形で設けられていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載のインクカートリッジにおいて、前記仕切り板の表面には、鏡面が設けられていることを特徴とするインクカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−6350(P2013−6350A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140606(P2011−140606)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】