説明

インクジェットプリンタ

【課題】 インク吐出のためのヒート抵抗が断線、ショートした場合などのヘッド故障を放置しておくと、システムの電源のON/OFFの繰り返しサイクルごとに特定のヒート部に電気的ストレスがかかり、記録ヘッドの劣化・損傷してしまう、あるいは記録される画像の品位が低下する。
【解決手段】 画像データのプリントに先立ち、ヘッド駆動手段により消費電流予測可能なヘッド駆動(非プリント駆動)を行い、そのときのヘッド消費電流をヘッド電流検出手段により検出し、制御・予測手段により予測電流値と検出電流値を比較してヘッド故障を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録ヘッドを用いて記録を行うプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタのような画像形成装置においては、インクを吐出するためのヘッドをもつ。ヘッド部は、通常外部からの電気制御信号によって、ヘッドからのインクを吐出、非吐出を決定する。一般的なヘッドの構造として、ヒート抵抗部と外部電気制御信号を受信するためのトランジスタスイッチとの直列接続の電気回路に、所定の駆動電圧をヒート部にバイアス電圧として印加させた状態で、スイッチをON(通電モード)することでヒート抵抗に電流を流し、ヒート抵抗部近傍のインクを熱によって気泡を発生させ、インク吐出穴(ノズル)から画像記録用のメディアに向けてインクを吐出し画像形成を行う仕組みとなっている。このため、何らかの要因でヘッドの断線、ショートといった回路の故障が発生すると、メディアへの画像記録が良好に行われなくなる、あるいは、ヒート抵抗のショートなどによる装置給電系からみたヘッド負荷ショート状況では、給電システムの故障を検出し、保護回路作動により速やかな給電停止あるいはヘッド損傷の加速といった問題がある。
【0003】
このような検出方法として、例えば、サーマルヘッドプリンタの発熱体の電気的ショートにより過剰電流が通電され、結果として発熱体温度が著しく上昇するため、発熱体内部に温度センサを設け、ヘッド温度を常時検出することで、安定した画像記録と故障状態の早期発見を行う方法がある。(例えば、特許文献1参照。)
また、サーマルヘッドプリンタにおいては、ヘッド断線検出モードでは、通常のヘッド駆動電圧よりも低い電圧をサーマルヘッドに印加する。発熱体への同時駆動を行い、正常な電圧低下量と故障時の電圧低下量の差分を電気的に検出することにより、ヘッドの故障を発見する方法がある。(例えば、特許文献2参照。)
【特許文献1】特開平8−150765号公報(請求項1、第5項 図1)
【特許文献2】特開平8−310030号公報(請求項1,2、第5項 図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
[課題]
インクジェットプリンタ装置において、画像形成のための記録ヘッドの構造として、ヒート抵抗に電流を流し、ヘッドインク流路のヒート抵抗部近傍にあるインクを熱的に気泡を発生させることによって記録メディアに向けてインク吐出する仕組みとなっている。
【0005】
このため、インク吐出のためのヒート抵抗が断線、ショートした場合、インク不吐が発生する。特にショートの場合、ヒート抵抗に電流を流すためのバイアス電圧としてのヘッド駆動電圧がショートによって、給電電圧が低下し保護回路が作動し、システム全体の給電がストップすることが懸念される。また、ヘッドが故障状態のまま放置しておくと、システムの電源のON/OFFの繰り返しサイクルごとに特定のヒート部に電気的ストレスがかかり、ヘッドの劣化・損傷を引き起こす懸念もある。
【0006】
記録メディアへの画像形成の観点で考えると、特定ヒート部からのインク吐出が正常に行われないことから画像抜け(ラスタスキャン方向に画像抜け)が発生するため、ミス印刷となりヘッド損傷だけでなくメディアの無駄使いが起こる。
【0007】
[課題解決のための本発明の目的]
本発明の目的は、インクジェットプリンタのヘッド故障検出に関するものである。プリント開始に先だって、ヘッド部消費電流の予測可能な非プリント駆動を実施した場合のヘッド電流を検出し、予測電流値と検出電流値の相違を比較処理することによってヘッド故障を効率的にかつ高精度、低消費電力で検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
インクジェットプリンタにおいて、画像データのプリントに先立ち記録ヘッド駆動するヘッド駆動手段を有し、前記ヘッド駆動手段によるヘッド駆動により、ヘッド故障を予測するための制御・予測手段を備えたことを特徴とするプリンタとして、ヘッド駆動の非プリント駆動(インク吐出しない駆動方法)を行い、ヘッド故障検出のためのヘッド消費電流を検出し、その結果を制御・予測手段へデータ転送し、予め制御・予測手段に登録されている予測電流値と検出電流値との相違差を比較処理し、検出電流値が予測電流値よりも、あるバラツキ範囲内の電流値以上の、例えば、1ヒート抵抗の消費電流値を超えた/下回った電流差が発生していれば、ヘッド故障であることをユーザーに警告し、プリント動作を行わず、スタンバイ状態で待機する。
【発明の効果】
【0009】
第一の効果として、プリントに先立ち、実際のヘッド駆動シーケンスの中でヘッドが故障したことを検出することで、検出のための電力消費、メディアやインクの消耗、ヘッド損傷度を抑制できる。
【0010】
第二の効果として、非プリント駆動方法として、「極短パルス及び短周期駆動」を行うことで、ヘッド昇温を極端に抑制し、ヘッド電流のプロセス変動を小さくでき高精度検出を可能にする。また、数10usec程度の短時間で全ノズルのヘッド故障検出を行うことができる。
【0011】
第三の効果として、インク吐出しない非プリント駆動方法でヘッド故障検出を行うことによって、インク無駄消費を排除し、プリンタ静止ポジション(プリンタ待機中)でのヘッド故障検出を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0013】
「プリント」(「記録」、「画像形成」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くプリント媒体上に画像、模様、パターン等を形成する場合、またはプリント媒体の加工を行うものをいうものとする。
【0014】
「電池」とは、本装置を動かすための動力・エネルギー源のことをいい、広くは燃料電池、化学電池、物理電池、発電設備、蓄電設備などのエネルギーを発生し得る媒体の総称をいうものとする。
【0015】
「メディア」とは、一般的なプリント装置で用いられている紙のみならず、広く布、プラスティック、フィルム、金属板等、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能な物をいうものとする。
【0016】
「インク」(「液体」という場合もある)とは、上記「プリント」の定義と同様広く解釈されるべきものであり、メディア上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成、メディアの加工、あるいはインク処理(例えば、メディアに付与されるインク中の色材の凝固または不溶化)に供される液体をいうものとする。
【0017】
「ヘッド」(「記録ヘッド」、「画像形成手段」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広くプリント媒体上に画像、模様、パターン等を形成するための機構をいう。特に、前記「インク」を前記「メディア」に記録させるためのしくみを内蔵した機構をいう。
【0018】
機構構造としては、インクを吐出させるためのインク流路とインク吐出口をもち、インク吐出のためにヒート抵抗に電流をある一定時間通電することによってインク内に発泡し、その体積膨張によりインクが吐出し、それによりメディア上への画像形成を行う構造をもつ。
【0019】
電気構造としては、上記ヒート抵抗と直列に接続された電流スイッチ用のMOS FETを外部電気制御信号にてON(通電)/OFF(非通電)する電気回路となっている。ヒート抵抗部を一定電圧のヘッド駆動電圧でバイアスをしているため、ヒート抵抗に流れる電流は、ヒート抵抗値とMOS FET、ヒート抵抗値、ヘッド駆動電圧で一意に求めることができる。所定のヒート抵抗部の数だけ駆動した場合、1ヒート抵抗の消費電流と同時駆動数の積で、駆動したトータルの消費電流を簡単に求めることができる。
【0020】
ヒート部へ流れる電流値は、1ヒート抵抗あたりの消費電流値のステップ幅で同時駆動数ごとにデジタル的にステップアップ/ダウンすることになる。
【0021】
「非プリント駆動」(「インク非吐出駆動」ともいう場合もある)とは、プリントに先立ち、プリンタ待機状態にて、インク吐出しないヘッド駆動方法である。特に、インク吐出面の固着、乾燥防止のためヘッドにキャップした状態のホームポジションでのプリンタ待機状態で行うことのできるヘッド駆動方法である。
【0022】
具体的な駆動方法としては、インク吐出しないエネルギーで、通常のプリント動作のヒート抵抗部に与える電気エネルギーよりも極めて小さく駆動時間を設定する。つまり、ヒート抵抗部に通電しインクに熱を与えるパルス幅時間を、例えば、通常の1usec程度の約1/10程度とした約100nsec程度の時間に設定した駆動方式をとる。そして、この駆動方式で、ヘッドを形成するノズルを各ブロックに分割して、各ブロックの所定のノズル部のみ同時に駆動させて、その電流のトータル値をヘッド電流検出手段で検出を行い、どのブロックに「ヘッド故障」があったのか制御・予測手段で比較処理できる特徴をもつ。
【0023】
また、あるいは、ヘッドを形成する全ノズルに対して1つずつ、上記「非プリント駆動」を実施し、ブロック単位のヘッド故障検出から特定ノズルの検出も行うことができる特徴をもつ。
【0024】
このような、「非プリント駆動」でヘッド故障を検出するメリットとして、1つ目は、極単パルスを用いることで、仮に全ノズル検出であっても、非常に短い時間で検出を容易にし、プリント動作スタートタイムの短縮につながる。2つ目は、極短パルスであるためインク消費が発生しないこと、あるいは、インク非吐出によって、インク流路を実ヒートによって清掃し、実際のプリント動作時でのインク吐出特性を安定化させること、3つ目は、極短パルスであるため、ヘッド検出に要する消費電力も極めて抑制でき、例えば電池駆動式インクジェットプリンタ製品において、電池寿命を長期化できるメリットもある。
【0025】
「ヘッド故障」とは、ヘッドのヒート抵抗あるいはMOS FETの断線、ショートなどにより外部からヘッド駆動のための電気制御信号を与えてもインク吐出が行われなくなったり、ショートによってヘッド駆動のための給電システムの保護回路が作動し、給電停止になったりする状況とする。
【0026】
「基本構成」
図1に基づいて本発明に関わるプリント装置の基本構成について説明する。
【0027】
装置本体A100には、プリント記録するためのインクとメディアを装置に装着/離脱する方式をとっている。インクはインク収納容器A101に、プリント記録用メディアA103はメディア収納容器A102に内蔵される。
【0028】
本装置の給電方式として、電池駆動とACアダプタ駆動の二方式を排他選択できる。電池駆動方式は、電池パック本体A104を装置本体A100の専用接続箇所に接続し、直流電圧給電を電池端子A105を介して行うことができる。一方、ACアダプタ駆動方式は、商用電源ACコンセントA107を商用電源に接続し、ACアダプタ本体(AC/DC)A106から装置本体A100の専用接続箇所に接続し、直流電圧給電を行うことができる。これら二方式による装置駆動形態(電池駆動、ACアダプタ駆動)において、様々な負荷電圧要求に答えるため装置本体A100の内部に直流電圧変換部(DC/DCコンバータ)を設けて、所望の負荷電圧値に変換を行っている。
【0029】
本装置のプリントデータ取得方式として、メモリカードA108、デジカメ109、パソコンA110、携帯電話A112といったデジタル情報機器デバイスからのプリントデータを装置本体A100で受信プリントできる。いずれも、装置本体側の操作キーA116により、印刷モード(デバイスの選定)を排他決定しプリントさせる。
【0030】
メモリカードA108は、装置本体A100の専用カードスロットに接続可能であり、ユーザーは様々なカード媒体からプリントできる。メモリカードA108については、CF(通常コンパクトフラッシュ(登録商標)、SM(スマートメディア)カード、MS(メモリスティック)カード、SD(Secure Digital)カードといった、標準的なメモリカードを4 in One排他接続可能である。
【0031】
デジカメA109、パソコンA110は、ここでは専用の接続コネクタのUSBコネクタA111に通信ケーブルを接続し、装置本体A100へデータ転送し、プリントできる。
【0032】
また、携帯電話A112は、ここでは無線通信の赤外線通信(irDA)により、赤外線(irDA)通信部A113で受信し、装置本体A100でプリントできる。
【0033】
画像形成部については、キャリッジA114にインク収納容器から取得したインク、画像形成のためのヘッド、ヘッド駆動のための制御線をもつ。装置本体A100の制御・予測手段からのプリントデータに基づいた制御信号を受けてヘッド駆動を行い、プリントメディアA103へプリントを行う。キャリッジA114は、プリントメディアA103に対して副走査方向にモータ駆動にてスキャン動作させ、主走査方向へは装置本体A100の紙搬送モータにより紙送りを行い、プリントメディアA103の全面にヘッドからインクを吐出させて画像形成を行うものとする。
【0034】
通常、画像形成部のキャリッジ搭載のヘッドは、プリントメディアA103面に対して垂直方向に一定距離をおいて配置され、画像形成時はヘッドからインクが直接吐出される構成をとっている。このため、プリントが行われるとヘッドのインク流路及びインク吐出面にインクが毎度残り、インク固着や混色による画像への影響を回避するためにキャリッジA114を停止させた状態で予備吐(停止予備吐)を行う。
【0035】
また、前記停止予備吐とは別に、インクを吐出しない方法で非プリント駆動を行う。プリントに先立って、プリント待機中にヘッドがホームポジションにある状況において、ヘッドのインク吐出面及びインク流路におけるインク固着を回避するために通常、ヘッドのインク吐出面に保護キャップを行っている。この状態でインク吐出せずにヘッドを駆動(本発明におけるヘッド故障検出のための非プリント駆動)し、インク流路をきちんと形成してメディアへの画像記録の際に問題なく画像形成できる準備を行う。この他、非プリント駆動の役割として、消費電流の予測可能なヘッド駆動であるため、ヘッド故障検出のために、ヘッド駆動を行い、ヘッド駆動時の消費電流をヘッド電流検出手段より検出して、電流予測値と検出電流値の結果を装置本体A100内蔵の制御・予測手段にて比較し、「ヘッド故障」かどうかの判断を行う。その結果、「ヘッド故障」であれば、警告手段へ警告を行い、プリント動作を行わずに、スタンバイ状態で待機する。
【0036】
ユーザーインターフェースについては、特にメモリカードA108からダイレクトに印刷させたり、デジカメA109や携帯電話A112といったデバイスに、プリントデータの確認手段の無い場合を想定して、警告表示手段(Viewer)A115でデータを確認できる構成をもつ。また、電池寿命警告やプリント条件(メディア、画像形式、通信方式、故障告知など)告知の機能、ヘッド故障検出の警告も備えている。装置本体A100の制御・予測手段からの制御によって、これらの警告・表示は行われる。
【0037】
「プリント装置のヘッド故障検出システム」
図2に基づいて本発明に関わる部分のプリント装置としてのヘッド故障検出システムB100について説明する。
【0038】
プリント装置としてのヘッド故障検出システムB100は、主に画像形成部(以後、ヘッド、プリントヘッド)B101と制御・予測手段B104、及び各々の周辺手段で構成される。
【0039】
ヘッドB101は、シリコン基板上で、ヒート抵抗部(発熱体)B102と、ここに流れる電流を通電/非通電のスイッチ制御を行うための電流スイッチ制御用トランジスタ(MOS FET)B103の直列接続で構成される。この接続を画像形成に必要なインク各色(C,M,Y)ごとに、多段パラレルにnノズル分配置配線した構成となる。なお、ヘッドとインク両方を搭載したユーザーによる交換可能なカートリッジタイプのヘッドでは、予測電流記憶手段B110をヘッド内蔵としてもつ。
【0040】
後述する非プリント駆動の予測電流値を、本発明のプリント装置としては、工場出荷時にデフォルトとして制御・予測手段B104手段のヘッド電流記憶部としてもつが、前述のようにカートリッジタイプのヘッドにおいて、ヘッドのプロセスバラツキによる予測電流値のデフォルト値との差を是正することを主目的として、ヘッド内部の予測電流記憶手段B110にヘッドランク情報と予測電流値をもち、カートリッジ交換が発生した場合などでは、デフォルト値を再設定できる仕組みとなっている。
【0041】
ここで、インク吐出を行うには、直列接続された1ノズル分の回路を例にとると、インク吐出に必要なエネルギーを得るために、ヒート抵抗部B102を加熱し、そこにあるインクを熱的に気泡を発生させることによって、インク吐出穴(ノズル)からインクを記録メディアに向けて発泡できる構造である。このインク発泡のための電気エネルギーは、ヒート抵抗部B102を定電圧のヘッド駆動電圧VHで予めバイアスしておき、MOS FET B103のゲート部に制御・予測手段B104から所望のヘッド制御信号を与えることで、MOS FETのON(通電)/OFF(非通電)し、ヒート抵抗部B102に一定電流を流して、ヒート抵抗部B102を加熱してインク発泡/非発泡の制御を行う。これを1ノズルだけでなく、カラー画像を形成するのに必要なインク各色(C,M,Y)ごとのnノズル分に対して、特定ノズルブロックごとに時間分割駆動させてインク吐出制御を行い、最終的に記録メディアに画像を形成する。
【0042】
インク発泡に必要な電気エネルギー量の制御は、ヒート抵抗部B102に流れる電流が一定(ヒート抵抗値RとMOS FETのON抵抗の直列接続値をヘッド駆動電圧VHで割った値がヒート電流値)であることからヘッド制御信号のON/OFF時間制御で行う。実際には、ある一定時間、電流を流し続けるとインク発泡時間に達するため、インク発泡が確実に行われかつヒート部B102のインクが無いレベルの時間になれば、一旦、電流をOFFしてインク無しの空ヒートによるヘッド焦げ、損傷の防止と、次回インク発泡のためのインク充填(Refill)を行うようなパルス電流のパルス幅制御方式をとる。
【0043】
このようなインク吐出メカニズムにおいて、本発明では、ヘッド故障を検出するために、プリント動作に先だって、非プリント駆動を行う。制御・予測手段B104のヘッド駆動手段からヘッドB101の各々のノズルに対して、ヘッド駆動電流の予測が可能なヘッド駆動を行う。具体的には、プリンタホームポジション状態で、ヘッドインク吐出面のインク固着保護用キャップ装着状態でインク吐出しないレベルでのヒートを行う。そして、ヘッド電流をモニタして予測電流値と検出電流値の電流差からヘッド故障を検出する仕組みをとる。
【0044】
ヘッド故障検出時に、制御・予測手段B104によりヘッド電流検出スイッチB105をヘッド電流検出抵抗(Rs)B106が接続される側に設定を行う。その後、制御・予測手段B104内蔵のヘッド駆動手段より、予測可能なヘッド消費電流の非プリント駆動を行うと、ヘッドB101の各ノズルに電流が流れ、これらの電流の総合値を検出する。事前に設定した電流検出用スイッチB103がヘッド電流検出抵抗(Rs)B106側に設定されているため、Rsに電流が流れ、流れた電流とRs値との積が電圧降下となり、この電圧値をAD(アナログtoデジタル)変換器でデジタルデータに変換し、これを制御・予測手段に取り込む。その後、制御・予測手段に予測電流値が登録されているため、この登録値と先ほどのAD変換器B109からの検出電流値との電流差を比較し、1ノズル分電流を超えたあるいは下回った電流差であった場合は、駆動したヒート抵抗部B102あるいはMOS FET B103のいずれかの通電系統が故障であると識別される。
【0045】
「ヘッド故障」と識別された場合、制御・予測手段B104より警告・表示手段B107側に情報を転送し、ユーザーに「ヘッド故障」と告知する。そして、仮に操作手段B108手段からプリント動作を確定しても、ヘッド故障のためプリント動作は行わず、プリント待機状態とする。もし、プリント動作を行う必要があるならば、一旦、操作手段B108にて電源をOFFし、ヘッド交換を行った後で電源を新たに再投入して、ヘッド故障検出を行い、故障がなければ、プリント動作が行える状態となる。
【0046】
「本発明におけるプリント装置としてのヘッド故障検出のための非プリント駆動」
本発明におけるプリント装置としてのヘッド故障検出のための非プリント駆動を図3に示す。
【0047】
まず、比較のため通常のプリント動作時の波形を1段目のタイミングチャートのプリント駆動波形として示す。ヘッドに対してHigh/Lowの論理で画像形成部(ヘッド、プリントヘッド)B101の電流スイッチ制御用トランジスタ(MOS FET) B103のON(通電)/OFF(非通電)の制御を行う。つまり、タイミングチャートでいうと、Highの区間がMOS FETがON(通電)し、ヒート抵抗部B102に電流を流して、ヒート抵抗部B102周囲のインクを電流を流すことで熱的に気発させてインク発泡を行う。
【0048】
通常、MOS FETのON(通電)時間は、制御・予測手段B104よりパルス波形として与えられ、例えば、約1usec程度のON時間を有する。その後、約3usec程度のOFF(非通電)時間を設けて、周期4usec程度で1ノズルに対してのインク吐出/非吐出を決定する。
【0049】
ここで、ヒートパルス幅1の時間幅を例に、インク発泡について説明すると、ヘッドは定電圧駆動を行っている観点から、MOS FETがON(通電)した場合、ヒート抵抗は所定の抵抗値なので、一定電流が流れる。よって、時間幅が短いとインク発泡を促進する電気エネルギー(電力量)が発泡エネルギーより小さいとインク発泡が出来なくなり、インク不吐の状態となる。そのため、プリント時はインクをヘッドからきちんと発泡する必要があるため、最低駆動時間T0以上のパルス駆動に設定する。逆にパルス幅が長すぎると、発泡はできるが、ヘッドを熱的に破壊する必要があるため、この時間もT1時間以内に発泡時間を設定する。したがって、プリント時のヘッド駆動時間Tは、T0≦T≦T1に設定してインク発泡を行うものとする。
【0050】
これに対して、本発明のヘッド故障検出のためのヘッド駆動方法(「非プリント駆動」)を2段目のタイミングチャートとして示す。非プリント駆動のパルス幅は、通常のプリント駆動時のパルス幅1usec程度に比べると極端に短く、例えば約100nsec程度で、周期も約200nsec程度で、1/10程度のパルス駆動方法をとる。これは、一つ目は、プリンタ電源投入時のヘッド故障検出において、検出時間を短くしてユーザーがスムーズにプリント動作を正常に行える環境を提供することと、二つ目は、ヘッド通電時間を短くとることでインク吐出を行われないためインク無駄消費排除できること、三つ目は、実際のプリント駆動のパルス幅に比べて十分に短パルスではあるが、電流を流している故障、若干でもヘッドの温度上昇が懸念されるので、これによるヘッド電流のプロセス変動を抑制してきちんとヘッド故障を電流モニタによって検出できること、の観点から極短パルス駆動の非プリント駆動を実施する。
【0051】
そして、個々のノズルに対して非プリント駆動を行うと、ヘッド消費電流が発生し、個々の電流のトータル電流を電流センス抵抗Rsへ流して、この抵抗の電圧降下をAD変換器で電圧取得することによって、ヘッド電流の検出を行う。ヘッド電流の発生タイミングは3段目のタイミングチャートのようになり、ほぼ非プリント駆動のON(通電)タイミングと同期して発生する。このタイミングと同期して、4段目のタイミングチャートのようにAD取得を実施し、検出電流を電圧形式で制御・予測手段側へデータ転送を行い、予め制御・予測手段に登録された予測電流値と検出電流値を比較し、ヘッド故障を判断する。
【0052】
「本発明におけるプリント装置としてのヘッド故障検出時のプリント動作制御方法」
図4に記載のヘッド故障検出システムに基づいたプリント動作シーケンスS100を示す。
【0053】
動作シーケンスS100において、ユーザーにより本装置の操作手段の電源スイッチをON S101すると、プリントに先立ちヘッド故障を検出するために、制御・予測手段よりヘッド電流検出スイッチを電流検出モードのRs側に設定S102を行う。その後、制御・予測手段よりヘッド消費電流の予測可能な「非プリント駆動」S103を行う。このとき、制御・予測手段内部の記憶部に予測電流値を登録しておく。そして、非プリント駆動を行ったときに、ヘッド消費電流を電流検出抵抗Rsへ通電し、その電圧降下をAD変換器にて電圧検出S104を行う。
【0054】
このAD変換器検出電圧を制御・予測手段側へデータ転送し、再度、電流検出抵抗値Rsで割り算し、元の電流値に変換を行い、検出電流値と予測電流値(登録値、本実施例では、ヘッドノズルの分割駆動の場合、ある特定ブロックの特定ノズルの全消費電流値。単ノズル駆動の場合、1ノズル電流値。)との差がある範囲内(本実施例では、1ノズル電流分とする)かどうかを比較処理S105を行う。比較結果、ほぼ等しければ、「ヘッド正常」とみなし、正常のプリントできる準備が整ったので、ユーザーが操作手段よりプリント確定選択S106が可能となる。確定されれば、プリント動作モードへ移行し選択した画像をヘッドからインク吐出しメディアに画像形成する。確定されない場合は、そのままスタンバイ状態とし装置待機する。
【0055】
一方、比較結果、検出電流値と予測電流値に大小相違があれば、電気的にヘッド部の断線、ショート等が発生している可能性があるので、「ヘッド故障」とみなし、まずは、制御・予測手段より警告・表示手段へ「ヘッド故障」の警告S107を行う。その後、ユーザーより操作手段からプリント確定選択が行われても、ヘッド故障のまま、ヘッドを動作させるときちんとした画像形成ができないばかりか、ヘッド損傷を加速させるので、ヘッド駆動が常時行われないようにスタンバイ状態にて装置を待機する。この状態を回避しプリント動作させたい場合は、ユーザーが警告手段の「ヘッド故障」の指示に従い、装置電源を操作手段にてきちんとOFFし、ヘッドを交換して電源再投入後、再度、ヘッド故障検出シーケンスS100にて「ヘッド故障なし」であれば、プリント動作モード移行ができ、所望の画像をメディアに記録することができる。
【0056】
予測電流値登録・記憶に関する別の実施例を図5に示す。図5は、本発明に関わる部分の交換可能なヘッド部分である。本発明のプリント装置のヘッド部が取り替え可能な形態である場合、例えば、ヘッドと画像形成に必要なインクがセットになったカートリッジタイプのヘッドを考える。「インク残量がない」、「ヘッド劣化による印刷不鮮明」状態において、ユーザーのカートリッジ交換が発生することでヘッドランク(詳細後述)も任意になる。このため、先の実施例で記述した予め制御・予測手段B104のヘッド電流記憶部に登録されたヘッド電流情報では対応できない可能性がある。つまり、検出電流値と予測電流値に検出差以外のヘッドのプロセスバラツキによる予測電流値のバラツキが入り、ヘッド電流検出による「ヘッド故障」を検出できない局面がある。
【0057】
よって、前記実施例の図2のヘッド構成に対して、新たにヘッド内部に予測電流記憶手段(ヘッド内蔵)D103をもち、ヘッドランク及び予測電流値データをもつことで、セットされたヘッドごとに予測電流値を制御・予測手段B104側からアクセスし、データ取得を行いデフォルトの工場出荷時の予測電流値設定値を新たに再設定し、ヘッドバラツキによる予測電流値の差を是正する仕組みをもつ。
【0058】
なお、予測電流検出手段(ヘッド内蔵)D103のヘッドランク情報は、工場出荷時に予めヘッド抵抗をヘッド製造工程にて測定し、この抵抗値に応じてランク値を決定し、ヘッドランク情報として記憶をしており、この記憶データを制御・予測手段B104からアクセスしデータ取得を行う仕組みをもつ。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明におけるプリント装置の基本構成。
【図2】本発明に関わる部分のプリント装置としてのヘッド故障検出システム。
【図3】本発におけるプリント装置としてのヘッド故障検出のための非プリント駆動。
【図4】本発明におけるプリント装置としてのプリント動作制御方法。
【図5】本発明に関わる部分の交換可能なヘッド。
【符号の説明】
【0060】
A100 装置本体
A101 インク収納容器
A102 メディア収納容器
A103 プリント記録用メディア
A104 電池パック本体
A105 電池端子
A106 商用電源ACコンセント
A107 ACアダプタ本体(AC/DC)
A108 メモリカード
A109 デジカメ(デジタルカメラ)
A110 パソコン
A111 USBコネクタ
A112 携帯電話
A113 赤外線(irDA)通信部
A114 キャリッジ
A115 警告・表示手段
A116 操作手段(操作キー)
B100 プリンタ装置としてのヘッド故障検出システム
B101 画像形成部(ヘッド、プリントヘッド)
B102 ヒート抵抗部
B103 電流スイッチ制御用トランジスタ(MOS FET)
B104 制御・予測手段
B105 ヘッド電流検出用スイッチ
B106 ヘッド電流検出抵抗(Rs)
B107 警告・表示手段
B108 操作手段(操作キー)
B109 AD(アナログtoデジタル)変換手段
C100 ヘッド故障検出のための非プリント駆動
S100 本発明におけるプリント装置としてのヘッド故障検出の動作シーケンス
D100 交換可能なヘッド(カートリッジ内蔵ヘッド)
D101 ヒート抵抗部
D102 電流スイッチ制御用トランジスタ(MOS FET)
D103 予測電流記憶手段(ヘッド内蔵)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリンタにおいて、画像データのプリントに先立ち記録ヘッドを駆動するヘッド駆動手段を有し、前記ヘッド駆動手段によるヘッド駆動時の消費電流を検出するヘッド電流検出手段を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
消費電流を検出する際、インク吐出しない駆動を行うことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記ヘッド電流検出手段からの電流値の検出結果と、予め制御・予測手段内部に登録された予測電流値と比較を行うことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項4】
工場出荷時、または、ヘッド交換時に、前記予測電流値の設定をする設定手段を備えることを特徴とする請求項1乃至4に記載のプリンタ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−218744(P2006−218744A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−34415(P2005−34415)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】