説明

インクジェットプリンタ

【課題】 本発明の目的は、印字環境にかかわらずインクジェット記録用紙の裏面汚れ耐性、搬送性が改良されたインクジェットプリンタを提供する。
【解決手段】 インクジェット記録用紙上に、インクジェット記録ヘッドよりインクジェットインクを吐出して画像形成するのに用いるインクジェットプリンタにおいて、画像形成部にある印字時に該インクジェット記録用紙の裏面を保持する複数のプラテン部を有し、該プラテン部の少なくとも1つが、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内に存在することを特徴とするインクジェットプリンタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録用紙の裏面汚れ、搬送性が改良されたインクジェットプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェットプリンタ及びインクジェット記録用紙の性能向上はめざましく、インクジェット画像記録方法を用いたプリントの画質は、銀塩印画紙を用いたプリント画質に匹敵するようになってきた。また、インクジェットプリンタの性能向上は、高画質化のみにとどまらず、プリントスピードの観点においても大幅な性能向上が達成されている。プリントスピードの高速化を達成した技術の一つとして、プリントヘッドのノズル数増加がある。ノズル数の増加に伴い、プリントヘッドも大型化する傾向にある。プリントヘッドの大型化は、プリントスピードの観点では有利であるが、その一方ではインクジェット記録用紙(インクジェット用紙ともいう)の搬送トラブルを生じやすくする原因にもなった。なぜなら、プリントヘッドの大型化により、プリントヘッド前後に配置されているインクジェット用紙ガイド板の間隔も広がってきたからである。インクジェットガイド板は、インクジェット用紙がカール現象などによりプリンタ本体から浮き上がることを抑制するために設けられており、これによりプリントヘッドとインクジェット用紙の間隔を適正に保ち、正確な印字が行われるだけでなく、インクジェット用紙とプリントヘッドとの衝突などによるプリント故障発生を防止している。このガイド板間隔が広くなった場合、インクジェット用紙の端部がガイド板で押さえられない状態でプリンタ内部を移動する距離が長くなり、それだけ搬送トラブルが発生する危険度が増加する。さらに、近年のインクジェットプリンタでは、プリントに余白部分をつくらない「ふちなしプリント」が主流となったため、搬送ローラーとインクジェット用紙の接触面積が小さくなり、僅かなきっかけで裏面汚れや搬送トラブルを引き起こしやすくなっていた。
【0003】
更に、近年では、デジタルカメラの普及に伴い、各家庭でのホームプリント、主にL判サイズのインクジェット記録用紙を用いる機会が増大してきており、L判サイズプリントの普及が、裏面汚れや搬送トラブルの発生頻度の増加を招く一因になっている。
【0004】
上記の裏面汚れに関しては、高品位の画質を得る目的でノズル数が増加されたことによるインクジェット記録ヘッドの大型化とインクジェット記録用紙全面に印字を行うふちなしプリントの普及により、インクジェット記録用紙の両端部や裏面側に不要なインクが付着しやすい状況になっている。ふちなしプリントを作成する際には、インクジェット記録用紙の両端部を超えた領域までインク出射を行い、インクジェット記録用紙に保持されなかったインクは、その下部に配置したインク吸収スポンジ部に吐出、吸収される。また、最近では、シリアルヘッド型のインクジェット記録ヘッドは、インク乾燥に伴う出射不良を改良する目的で、インクジェット記録用紙の両端部で、非印字時にインクを吐出廃棄させて乾燥を防止する方法も取られており、この場合でも、吐出されるインクはインク吸収スポンジ部に吸収される。この様にして、廃インクを保持したインク吸収スポンジ部にインクジェット記録用紙の裏面が接触したり、あるいはインク吸収スポンジ部に蓄えられたインクが毛細管現象等で保持部材等に移行することにより、裏面汚れを引き起こす結果となる。
【0005】
この裏面汚れの防止方法としては、例えば、インクジェット記録用紙に対し、印字前に除電処置を施す方法(例えば、特許文献1参照。)や、インクジェット記録用紙の両端部外領域で吐出廃棄されるインクを、インク受け部あるいはインクガイド部材を用いて、系外に排出させる方法が提案されている(例えば、特許文献2、3参照。)。これら提案されている方法に従えば、常温常湿環境下で印字を行う場合には、ある程度の効果は認められるものの、印字環境が変化した際、例えば、高湿環境下あるいは高温環境下でインクジェット記録用紙のカール特性がマイナスカール方向に大きく変動した場合には、インクジェット記録用紙裏面の両端部が、廃インク蓄積部に接触し、裏面汚れを引き起こすことが判明した。
【0006】
インクジェット記録用紙は、インクジェット用紙とプリントヘッドの衝突を避けるために、全くカールのないフラットな状態からプリント裏面側を凹となるややマイナスカールに設定されている場合が多く、プリント端部が汚れたインク吸収媒体に接触することにより、プリント裏面の端部に汚れが付着しやすいという傾向にあった。
【0007】
更に、インクジェット用紙は、保存環境の湿度変化などによる変化を防ぐために、透湿性の低い袋などにいれて保管する形態が一般に推奨されているが、プリンタ本体にセットされた状態で保管されると、外気の湿度変化の影響を受けやすく、カールなどの物性変化を引き起こしやすい傾向にあった。
【0008】
搬送性向上の観点からは、インクジェット用紙のカール特性を改良することは有効であり、これまでにもいくつかの技術が公開されている。しかし、従来のカール特性改良は上述の理由から、印字前にプリント面側に凹となるカール(プラスカール)の軽減に主眼をおいて行われてきた。しかし、近年のインクジェットプリンタにおいては、印字前のプラスカールを抑制・制御するだけでは不十分であることがわかった。
【0009】
また、もう一つの課題は、インクジェット用紙の斜行という課題の発生である。インクジェット用紙は一般に、印字前のカール特性と印字後のカール特性が異なっている。これは、支持体上に設けられたインク受容層がインクを吸収することにより、その物理的特性(柔軟性、伸縮率など)を変化させることに起因するためと考えられる。従って、印字中のインクジェット用紙の物性は、刻々と変化しながらプリンタ内で搬送されることになるが、前述のように、近年のインクジェットプリンタは、搬送ローラーとインクジェット用紙の接触面積が小さくなったことにより、搬送途中の物性変化が搬送性に大きな影響を与えると考えられ、プリンタの種類によっては用紙がまっすぐ搬送されない現象(斜行)が発生しやすい傾向にあった。
【0010】
搬送性向上のために、インクジェット用紙のカールを制御する技術はこれまでにもいくつか検討されている。例えば、加熱処理でマイナスカールをつけた支持体を用いることでカールを制御する技術が開示されている(例えば、特許文献4参照。)。しかし、ここでは印字後のプリント見栄えに主眼がおかれ、搬送性に関係するカール改善についてはあまり触れられていない。また、ポリカーボネート支持体を用いたカール改善方法が開示されている(例えば、特許文献5参照。)が、紙基体の両面をポリオレフィン樹脂等で被覆した非吸水性支持体に比べてコスト高となる。また、インクジェット記録用媒体を予めマイナスカールとしておく技術(例えば、特許文献6参照。)や、予めマイナスカールを有する支持体に対するインク受容層の塗工量を調整してカールと搬送性を改良する技術(例えば、特許文献7参照。)が開示されている。しかし、これらは、インクジェット用紙をプラスカールにすることによるプリントヘッドとの接触に起因する搬送トラブルを回避することに主眼がおかれ、マイナスカールによる裏面汚れの回避については、何ら技術開示されていない。さらに、プラットホームに突き当たったときの耳折れ回避のために、特定のガーレー剛度を有し、カールが1〜10mmとなるように設計する技術が開示されている(例えば、特許文献8参照。)。しかし、これについても、マイナスカールによる裏面汚れの回避については、何ら技術開示されていない。
【特許文献1】特開2003−54069号公報
【特許文献2】特開2003−103849号公報
【特許文献3】特開2004−42442号公報
【特許文献4】特開2004−25855号公報
【特許文献5】特開2003−312125号公報
【特許文献6】特開2002−86896号公報
【特許文献7】特開2001−10203号公報
【特許文献8】特開平10−175369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、印字環境にかかわらずインクジェット記録用紙の裏面汚れ耐性、搬送性が改良されたインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0013】
(請求項1)
インクジェット記録用紙上に、インクジェット記録ヘッドよりインクジェットインクを吐出して画像形成するのに用いるインクジェットプリンタにおいて、画像形成部にある印字時に該インクジェット記録用紙の裏面を保持する複数のプラテン部を有し、該プラテン部の少なくとも1つが、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内に存在することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【0014】
(請求項2)
前記インクジェット記録ヘッドを挟んで、インクジェット記録用紙の搬送方向前後に複数のガイドローラが配置され、該ガイドローラ間の間隙が35mm以上であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【0015】
(請求項3)
印字部下部にインク吸収スポンジ部を備え、該インク吸収スポンジ部表面から前記プラテン部の最頂部までの高さが、4mm以上、6mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【0016】
(請求項4)
印字領域の上流側に最終ガイド板を備え、該最終ガイド板のインクジェット記録用紙搬送方向での端部と前記プラテン部の最先端部との間隔が5mm以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0017】
(請求項5)
前記定型インクジェット記録用紙が、はがきサイズ、Lサイズ、2LサイズまたはA4サイズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【0018】
(請求項6)
前記インクジェット記録用紙が、23℃、20%RHで3時間放置時の印字前の四隅の平均カール高さが−2.0〜4.0mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、印字環境にかかわらずインクジェット記録用紙の裏面汚れ耐性、搬送性が改良されたインクジェットプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、インクジェット記録用紙上に、インクジェット記録ヘッドよりインクジェットインクを吐出して画像形成するのに用いるインクジェットプリンタにおいて、画像形成部にある印字時に該インクジェット記録用紙の裏面を保持する複数のプラテン部を有し、該プラテン部の少なくとも1つが、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内に存在することを特徴とするインクジェットプリンタとすることにより、印字環境にかかわらずインクジェット記録用紙の裏面汚れ耐性、搬送性が改良されたインクジェットプリンタを実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0022】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0023】
はじめに、本発明のインクジェットプリンタについて説明する。
【0024】
本発明のインクジェットプリンタで使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わない。また吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット(登録商標)型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができるが、いずれの吐出方式を用いても構わない。また、印字方式としては、シリアルヘッド方式、ラインヘッド方式等で制限無く用いることができるが、本発明の目的とするインクジェット記録用紙両端部で起因する裏面汚れや搬送不良を効果的に解決できる観点からは、特に、シリアルヘッド方式を有するインクジェットヘッドに適用することが好ましい。
【0025】
はじめに、本発明のインクジェットプリンタの全体概要について、図を用いて説明する。
【0026】
はじめに、本発明のインクジェット記録方法を適用できるインクジェットプリンタについて、図1を参照にして説明する。
【0027】
図1は、インクジェットプリンタの主要構成部を表す斜視図である。
【0028】
インクジェットプリンタ1には、図示するように、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)にインクを吐出し画像を形成する画像形成部2が設けられている。この画像形成部2には、上面で所定範囲の記録用紙Pの裏面(記録面の側と反対側となる面)を支持するプラテン部21A、21Bが略水平に、記録ヘッド2の移動領域の前後に複数個配設されている。また、プラテン部21A、21B間の記録ヘッド2の移動領域下部には、記録用紙の両端外で吐出された廃インクを保持するためにインク吸収スポンジ部21Cが配置されている。また、各プラテン部21A、21Bの外側には、記録用紙Pの搬送を安定に行うため、それぞれガイドローラ群21D、21Eが配置され、また、記録用紙のインクジェットプリンタへの挿入を安定にするため、上流部には最終ガイド板20が設けられている。
【0029】
画像形成部2には、プラテン21の上方で、走査方向Xに沿って延在し、走査方向Xに走査するキャリッジ23を移動させるための案内部材25が設けられている。
【0030】
キャリッジ23には、記録用紙にインクを吐出する記録ヘッド22と、走査方向Xに沿って延在し、その長手方向に一定の周期で光学パターンが配設されたリニアスケール26の光学パターンを読み取ってクロック信号として出力するリニアエンコーダセンサ27とが搭載されている。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。印字動作は、このエンコーダー信号を分周することにより、例えば、1200dpiの印字密度で行う。キャリッジ23の移動方向は、キャリッジ用駆動モータ231の回転方向にしたがって変更され、これによりキャリッジ23は走査方向Xに往復移動する。また、画像形成時において、キャリッジ23は、記録用紙が停止している際に走査方向Xに往動、復動又は往復移動し、印字信号に従って、各記録ヘッド22より記録用紙P上に印字を行う。この記録ヘッド22は、画像記録時において、プラテン21上を搬送される記録用紙Pの記録面と、記録ヘッド22のノズルが形成されたノズル面とが対向するように配設されている。
【0031】
記録ヘッド22のノズル面は、ノズルが記録用紙搬送方向に配置されており、各記録ヘッド22には、図示しない記録インク用カートリッジから、配管用のチューブを通ってインクが供給される。図1では、記録ヘッド22は走査方向に沿って8個の記録ヘッド22が並んで配置されており、それぞれシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色のインクの他に、濃淡C、M、Y、Kの8色で記録する仕様を示してある。
【0032】
上記のような基本構成からなるインクジェットプリンタにおいて、本発明では、画像形成部にある印字時に該インクジェット記録用紙の裏面を保持する複数のプラテン部を有し、該プラテン部の少なくとも1つが、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内に存在することを特徴とする。
【0033】
図2は、本発明で規定するプラテン部の配置位置の一例を示す上面図である。
【0034】
図2において、記録ヘッドが移動する領域の下部には、インク吸収スポンジ部21Cが設けられ、記録用紙Pを図の上部方向に搬送しながら印字を行う。図2では、記録用紙Pとしては記録ヘッドの全移動距離に対応するフルサイズ、例えば、Aサイズの記録用紙Pを用いた場合を例示してある。
【0035】
本発明に係るプラテン部21Aはインク吸収スポンジ部21Cの上部に複数個位置され、プラテン部21Bは下部に複数数個は位置されている。また、プラテン部21A及びプラテン部21Bの外側には、それぞれガイドロール21D、21Eが配置されて印字が行われる。
【0036】
本発明においては、記録用紙Pの搬送方向に対し水平位置にある両端部から最も内側に位置するプラテン部21A、プラテン部21Bと記録用紙Pの両端部までの距離L1が、1mm以上、5mm以内になるように、各プラテン部21A、21Bを配置することを特徴とし、好ましくは1mm以上、3mm以内になるように、各プラテン部21A、21Bを配置することである。
【0037】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、高温条件、あるいは提出条件等の記録用紙Pがマイナスカール、すなわちプラテン部に接する面側が凹形状となって、両端部がインク吸収スポンジ部21C側に大きく撓み、接触を起こしやすい状況であっても、本発明で規定する条件でプラテン部を配置することにより、記録用紙Pの両端部が、廃インクを含むインク吸収スポンジ部21Cと接触することを抑制し、裏面汚れの発生を防止することができる。
【0038】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の適用を可能とし、印字可能な定型インクジェット記録用紙として、はがきサイズ、Lサイズ、2LサイズまたはA4サイズであることが好ましい。
【0039】
すなわち、印字幅の異なる各サイズのインクジェット記録用紙を用いたインクジェット記録においても、全てのインクジェット記録用紙で、記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内にプラテン部が配置されていることが好ましい。
【0040】
図3は、図2に対し小サイズの記録用紙を印字するときのプラテン部の配置の一例を示した上面図である。
【0041】
通常、異なるサイズの記録用紙を用いて印字を行う場合には、それぞれ記録用紙のいずれか一方で装填位置を揃えて印字がなされる。図3においては、サイズの異なる記録用紙Pを用いた場合では、図2と同様に図の左側の位置に記録用紙Pの一方の端部をセットした状態で印字がなされる。この時、記録用紙Pの他方の端部から最も内側に位置するプラテン部21B1を端部から1mm以上、5mm以内に配置する。
【0042】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、インクジェット記録ヘッドを挟んで、インクジェット記録用紙Pの搬送方向前後に複数のガイドローラ21D、21Eが配置され、ガイドローラ21D、21E間の距離が35mm以上であることが好ましく、更に好ましくは40mm以上、100mm以下である。
【0043】
上記で規定する条件で各ガイドローラを配置することにより、本発明の目的効果である様々な環境下で印字を行った際に、よりいっそうインクジェット記録用紙の裏面汚れや搬送不良を防止し、安定した搬送性を得ることができる。
【0044】
また、本発明のインクジェットプリンタにおいては、印字部下部にインク吸収スポンジ部を備え、該インク吸収スポンジ部表面から前記プラテン部の最頂部までの高さが、4mm以上、6mm以下であることが好ましい。
【0045】
図4は、プラテン部が配置された印字部の断面図である。
【0046】
図4において、記録ヘッド22の下部にインク吸収スポンジ部21Cは配置され、その左右の位置には、それぞれプラテン部21A、21Bが設けられる。記録用紙Pは、搬送ローラHにより図面の右方向に搬送される。
【0047】
本発明では、インク吸収スポンジ部表面からプラテン部の最頂部までの距離L3を4mm以上、6mm以下の範囲とすることが好ましく、この要件を満たす配置とすることにより、記録用紙Pの端部とインク吸収スポンジ部21Cとの接触を更に確実に防止することができる。
【0048】
また、本発明のインクジェットプリンタにおいては、印字領域の上流側に最終ガイド板20を備え、最終ガイド板20のインクジェット記録用紙搬送方向での端部とプラテン部21Bの最先端部との間隔が1mm以上、5mm以内であることが好ましい。上記で規定する条件とすることにより、本発明の目的効果である様々な環境下で印字を行った際に、よりいっそうインクジェット記録用紙の裏面汚れや搬送不良を防止し、安定した搬送性を得ることができる。
【0049】
次いで、本発明のインクジェットプリンタで用いるインクジェット記録用紙について説明する。
【0050】
本発明のインクジェットプリンタで使用するインクジェット記録用紙として、23℃、20%RHで3時間放置時の印字前の四隅の平均カール高さが−2.0〜4.0mmであることが好ましい。本発明のインクジェットプリンタで、上記で規定するカール特性を有するインクジェット記録用紙を用いることにより、裏面汚れが顕著に改良され、またインクジェット記録用紙搬送中に斜行が発生しにくい。
【0051】
本発明に係る印字前の平均カール高さは、以下のようにして求めることができる。
【0052】
例えば、2L判サイズのインクジェット記録用紙を、予め23℃、55%RHの環境下で24時間調湿した後、23℃、20%RHの環境下に移動し、平坦な台の上にインク受容層を上にして置き、3時間放置する。3時間放置後に四隅が持ち上がり、インク受容層側が凹となるようなカール状態(プラスカール)の場合には、記録用紙の四隅について、台から記録用紙の角までの高さを測定し、四点の平均値を平均カール高さH1とする。また、インク受容層側が凸となるようなカール状態(マイナスカール)の場合には、インク受容層塗設面側を下にして台の上に置き直し、台から記録用紙の角までの高さを測定し、四点の平均値にマイナスをつけた値を平均カール高さH1とする。外見からプラスカール、マイナスカールの区別が明確につかない場合には、両方を測定し、その絶対値が大きい方をカール高さとする。
【0053】
本発明に係るインクジェット記録用紙において、本発明で規定する印字前の平均カール高さに調整する手段として制限はないが、本発明においては、下記に列挙する方法を適宜選択、あるいは組み合わせることが好ましい。
【0054】
本発明に適用可能なカールの調整方法としては、例えば、支持体として紙基体の両面をオレフィン樹脂で被覆した非吸水性支持体を用い、表面と裏面の被覆樹脂の調整(例えば、塗設量、種類(HDPE、LDPE)など)は特に有用である。特に、本発明のインクジェット記録用紙においては、非吸水性支持体の裏面側のオレフィン樹脂の付量1と、前記インク受容層を設ける表面側のオレフィン樹脂の付量との差(付量1−付き量2)が、5.0g/m2以上、20.0g/m2以下であることが、印字前の状態がプラスカールであっても裏面側への張力が高く、印字後にマイナスカールへ移行しやすく、本発明の好ましい態様の1つである。
【0055】
また、カール高さの他の調整方法として、無機微粒子の物性を制御する方法も挙げられる。例えば、無機微粒子としてシリカ粒子を用いる場合には、シリカ粒子の平均粒径と表面の活性シラノール基比率を調整する、例えば、プラスカールにしたい場合には平均粒径を小さくする、あるいは活性シラノール基比率を高める方法が有用である。これらの方法は、特に、印字前の平均カール高さH2を制御するのに有用な方法である。
【0056】
また、他の方法として、ポリマーラテックスや高沸点有機溶媒などの有機物成分をインク受容層に添加する方法などがあるが、これは特にプリント後のカール変動の調整に効果が大きい。
【0057】
また、本発明に係るインクジェット記録用紙においては、プラテン部と接する面(裏面側)が凹凸構造を有していることが好ましく、この様な形状とすることにより安定した搬送が可能となる。裏面側に凹凸構造を設ける方法としては特に制限はないが、例えば、支持体作製時、例えば、紙基体の両面をオレフィン樹脂で被覆した非吸水性支持体である場合では、裏面にオレフィン樹脂で被覆した後、型付けローラ等を用いて型付け処理施す方法等を挙げることができる。
【0058】
次いで、本発明に係るインクジェット記録用紙の詳細について説明する。
【0059】
本発明のインクジェット記録用紙においては、支持体が紙基体の両面をオレフィン樹脂で被覆した非吸水性支持体であることが好ましい。
【0060】
本発明に係る支持体に用いられる紙基体としては、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることができるが、短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%以上、70質量%以下が好ましい。上記パルプとしては、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0061】
紙基体中には、例えば、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
【0062】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分質量%と42メッシュ残分の質量%との和が30〜70質量%であることが好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%としては、20質量%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明に係る支持体においては、紙基体の坪量が150〜250g/m2であることが好ましい。坪量が250g/m2を越えるとカールの点ではより好ましいが、記録用紙全体の厚みの増加に伴い、剛性が上昇し、製造時の巻癖カールが強くつきすぎたり、プリンターで連続給送しにくくなる。また、坪量が150g/m2未満である場合には、インク受容層の収縮の影響が大きくなり、特に低湿環境下でのカールの調整が困難となる。用いる紙は、抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理を施して高平滑性を付与することもできる。紙密度は0.7〜1.2g/cm3(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で30〜150gが好ましい。
【0064】
紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加できる高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤を使用できる。また、紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0065】
次いで、上記説明した紙基体の両面を被覆するポリオレフィン樹脂について説明する。
【0066】
紙基体の両面を被覆するのに用いられるポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、エチレン、プロピレンを主体とする共重合体などのポリオレフィン類が好ましいが、ポリエチレンが特に好ましい。
【0067】
以下、特に好ましいポリエチレンについて説明する。
【0068】
紙表面および裏面を被覆するポリエチレン樹脂は、主として低密度ポリエチレン(LDPE)または高密度ポリエチレン(HDPE)であるが、その他に線状低密度ポリエチレン(LLDPE)やポリプロピレン等も一部使用することができる。
【0069】
特に、インク受容層塗設面側のポリエチレン樹脂層には、写真用印画紙で広く行われているように、ルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン樹脂層中に添加し、不透明度および白色度を改良する方法も好ましく用いることができる。上記酸化チタンの含有量は、ポリエチレンに対して概ね3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0070】
ポリプロピレン樹脂層中には、白地の調整を行うため、高い耐熱性を有する顔料や蛍光増白剤を添加することができる。
【0071】
着色顔料としては、例えば、群青、紺青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、マンガンブルー、セルリアン、タングステンブルー、モリブデンブルー、アンスラキノンブルー等が挙げられる。また、蛍光増白剤としては、例えば、ジアルキルアミノクマリン、ビスジメチルアミノスチルベン、ビスメチルアミノスチルベン、4−アルコキシ−1、8−ナフタレンジカルボン酸−N−アルキルイミド、ビスベンズオキサゾリルエチレン、ジアルキルスチルベンなどが挙げられる。
【0072】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレン樹脂を紙表面上に溶融押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した支持体も本発明で使用することができる。
【0073】
本発明に係る紙基体の両面にポリオレフィン樹脂で被覆した支持体においては、ポリオレフィン樹脂量は、15〜50g/m2の範囲で以下のように選択される。
【0074】
本発明に係るポリオレフィン樹脂で被覆した紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0075】
(1)引っ張り強さは、JIS P 8113で規定される強度で縦方向が19.6〜294N、横方向が9.8〜196Nであることが好ましい
(2)引き裂き強度は、JIS P 8116で規定される強度で縦方向が0.20〜2.94N、横方向が0.098〜2.45Nが好ましい
(3)圧縮弾性率は、9.8kN/cm2が好ましい
(4)不透明度は、JIS P 8138に規定された方法で測定したときに80%以上、特に85〜98%が好ましい
(5)白さは、JIS Z 8727で規定されるL*、a*、b*が、L*=80〜96、a*=−3〜+5、b*=−7〜+2であることが好ましい
(6)表面光沢度は、JIS−Z−8741に規定される60度鏡面光沢度が10〜95%であることが好ましい
(7)クラーク剛直度は、記録用紙の搬送方向のクラーク剛直度が50〜300cm3/100である支持体が好ましい
本発明のインクジェト記録用紙においては、インク受容層を有する面側とは反対側の面に、カール調整や帯電防止を目的としてバック層を設けることもできる。
【0076】
次に、支持体上に設けられるインク受容層について説明する。
【0077】
本発明に係るインク受容層は、微粒子と少量の親水性バインダーから形成される多孔質層である。
【0078】
本発明で用いることのできる微粒子としては、特に制限はないが、無機微粒子であることが好ましく、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。その様な無機微粒子は、一次粒子のまま用いても、また二次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。
【0079】
本発明においては、特に微細な空隙が形成できる観点より、無機微粒子としてはシリカ、コロイダルシリカまたは擬ベーマイトが好ましい。
【0080】
本発明に係る無機微粒子の平均一次粒径としては200nm以下であることが好ましいが、本発明の目的効果をいかんなく発揮できる観点からは25nm以下であることがより好ましく、製造適性の観点からは5nm以上、25nm以下であることが特に好ましい。
【0081】
本発明に係るインク受容層に用いられる親水性バインダーとしては、ゼラチン(例えば、アルカリ処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、アミノ機をフェニルイソシアネートや無水フタル酸等で封鎖した誘導体ゼラチン等)、ポリビニルアルコール(特に、平均重合度が300〜4000、ケン化度が80〜99.5%が好ましい)、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシルエチルセルロース、寒天、プルラン、デキストラン、アクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸等が挙げられ、必要に応じて2種類以上を併用することもできる。
【0082】
上記の親水性ポリマーの中でも、湿度が変化した場合に吸湿性能の変化が相対的に小さいポリビニルアルコールが好ましい。
【0083】
本発明の記録用紙においては、上記説明した親水性バインダーに対して10〜100質量%のエマルジョン樹脂を含有することが好ましく、上記構成をとることにより、本発明の目的効果であるカール特性をより最適に調整することができる。
【0084】
また、本発明の記録用紙においては、上記説明した親水性バインダーに対して10〜100質量%のオイル分散物を含有することが好ましく、上記構成をとることにより、本発明の目的効果であるカール特性をより最適に調整することができる。
【0085】
本発明のインクジェット記録用紙のインク受容層には、上記説明した以外の各種の添加剤を、適宜添加することができ、中でもカチオン媒染剤は、印字後の耐水性や耐湿性を改良するために好ましい。
【0086】
カチオン媒染剤としては、第1級〜第3級アミノ基および第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が用いられるが、長期保存時の変色や耐光性の劣化が少ないこと、染料の媒染能が充分高いことなどから、第4級アンモニウム塩基を有するポリマー媒染剤が好ましい。
【0087】
本発明のインクジェット記録用紙は、インク受容層を形成する親水性バインダーの硬膜剤を添加することが好ましい。
【0088】
本発明の記録用紙においては、上記以外に、例えば、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号公報、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報、特公平2−35675号公報、特開平9−254529号公報、特開2000−263928号公報等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたは非イオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0089】
本発明のインクジェットプリンタにおいては、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。なお、本発明のインクジェット記録用紙は、特に、水溶性染料インクを用いたインクジェット記録において特に効果が大きく好ましいが、顔料インクを用いたインクジェット記録でも使用することができる。
【0090】
上記水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【実施例】
【0091】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0092】
《インクジェットプリンタ》
図1〜図4に記載の構成からなるインクジェットプリンタを用い、プラテン部の記録用紙の両端部までの距離L1(L1の位置は、はがきサイズ、Lサイズ、2Lサイズ、A4サイズの記録用紙を用いたとき、L1の条件を全て充足する様配置した)、ガイドローラ間の距離L2、インク吸収スポンジ部表面からプラテン部の最頂部までの高さL3、最終ガイド板とプラテン部先端との距離L4を、表1に記載のようにしたインクジェットプリンタ1〜13を準備した。
【0093】
《記録用紙の作製》
〔記録用紙101の作製〕
特開2003−231348号公報の実施例1に記載の記録用紙Aと同様にして、記録用紙101を作製した。記録用紙101は、23℃、55%RHの環境下でインク受容層を上にした状態で平坦な台上に並べて24時間調湿した後、試料を23℃、20%RHの環境に移動して平坦な台の上にインク受容層を上にして置き、3時間放置後の四隅のカール高さを測定し、その平均カール高さを算出した結果、−1.0mmであった。
【0094】
〔記録用紙102〜104の作製〕
上記記録用紙101の作製において、支持体の厚さ、インク受容層との塗設量等を適宜変更し、平均カール高さがそれぞれ−5.7mm、−3.8mm、−2.0mmである記録用紙102〜104を作製した。
【0095】
《インクジェット画像記録》
以上のようにして作製した記録媒体101〜104を、A4サイズに断裁した後、上記作製したインクジェットプリンタ1〜13とを、表1に記載の組み合わせで、セイコーエプソン(株)製のPM−G800用の純正水性インクを用いて、40℃、40%RHの環境下と、30℃、80%RHの環境下で連続100枚の印字を行った。
【0096】
《評価》
〔裏面汚れ耐性の評価〕
各環境下で連続100枚の印字を行った後、裏面汚れの有無を目視観察し、下記の基準に従って裏面汚れ耐性の評価を行った。
【0097】
◎:裏面に汚れの付着が全く認められない
○:1、2枚の試料において、弱い裏面汚れの発生が認められるが全く問題はない
△:3〜5枚の試料において、弱い裏面汚れの発生が認められるが実用上品位を損なうことはない
×:5〜10枚の試料において、やや強い裏面汚れの発生が認められるが商品価値を損なう品位である
××:11枚以上の試料で、強い裏面汚れの発生が認められ、実用に耐えない品位である
〔搬送性の評価〕
各環境下で連続100枚の印字を行い、印字時に発生する搬送不良(搬送停止、蛇行)を観察し、下記の基準に従って搬送性の評価を行った。
【0098】
◎:100枚とも全く問題なく印字、搬送した
○:1〜3枚で弱い蛇行はあったが、問題なく印字、搬送した
△:4〜8枚で弱い蛇行はあったが、印字、搬送はでき実用上は許容される
×:9〜15枚で蛇行が認められ、搬送停止も1、2枚発生し、実用上問題となる
×:15枚以上で蛇行が認められ、搬送停止も3枚以上発生し、実用に耐えない
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
表1に記載の結果より明らかなように、記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内にプラテン部を設けた本発明のインクジェットプリンタは、比較例に対し、印字時の環境条件が低湿方向になっても、裏面汚れの発生や搬送不良(蛇行、搬送停止)を起こすことなく、安定に印字を行うことができた。
【0101】
更に、本発明のインクジェットプリンタの中でも、ガイドローラ間の間隙を35mm以上とすること、インク吸収スポンジ部表面からプラテン部の最頂部までの高さを4mm以上、6mm以下とすること、最終ガイド板とプラテン部の最先端部との間隔を5mm以内とすること、あるいは記録用紙として23℃、20%RHでの平均カール高さが−2.0〜4.0mmである記録用紙を用いることにより、上記記載の効果がより発揮できることを確認することができた。
【0102】
また、記録用紙としてA4サイズに代えて、はがきサイズ、Lサイズ、2Lサイズの記録用紙を用いて同様の評価を行った結果、表1と同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】インクジェットプリンタの主要構成部を表す斜視図である。
【図2】本発明で規定するプラテン部の配置位置の一例を示す上面図である。
【図3】図2に対し小サイズの記録用紙を印字するときのプラテン部の配置の一例を示した上面図である。
【図4】プラテン部が配置された印字部の断面図である。
【符号の説明】
【0104】
1 インクジェットプリンタ
2 画像形成部
20 最終ガイド板
21A、21B プラテン部
21C インク吸収スポンジ部
21D、21E ガイドローラ
22 記録ヘッド
23 キャリッジ
H 搬送ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット記録用紙上に、インクジェット記録ヘッドよりインクジェットインクを吐出して画像形成するのに用いるインクジェットプリンタにおいて、画像形成部にある印字時に該インクジェット記録用紙の裏面を保持する複数のプラテン部を有し、該プラテン部の少なくとも1つが、印字可能な全ての定型インクジェット記録用紙の幅手方向の両端部から1mm以上、5mm以内に存在することを特徴とするインクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記インクジェット記録ヘッドを挟んで、インクジェット記録用紙の搬送方向前後に複数のガイドローラが配置され、該ガイドローラ間の間隙が35mm以上であることを特徴とする請求項1記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
印字部下部にインク吸収スポンジ部を備え、該インク吸収スポンジ部表面から前記プラテン部の最頂部までの高さが、4mm以上、6mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
印字領域の上流側に最終ガイド板を備え、該最終ガイド板のインクジェット記録用紙搬送方向での端部と前記プラテン部の最先端部との間隔が5mm以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
前記定型インクジェット記録用紙が、はがきサイズ、Lサイズ、2LサイズまたはA4サイズであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
前記インクジェット記録用紙が、23℃、20%RHで3時間放置時の印字前の四隅の平均カール高さが−2.0〜4.0mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−264025(P2006−264025A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−83362(P2005−83362)
【出願日】平成17年3月23日(2005.3.23)
【出願人】(303050159)コニカミノルタフォトイメージング株式会社 (1,066)
【Fターム(参考)】