インクジェットプリントヘッド用の三次元的構造体及び関連する製造方法
【課題】
【解決手段】モノシリックインクジェットプリントヘッドにおいて、モノマー又はオリゴマー及び光開始剤の溶液を重合化することにより得られた、キャビティを備える構造層が形成される。光線による重合化の間、構造層の支持体の反射面における光線の反射のため、マスクによって保護された領域内にて酸性種が不当に発生する。これら酸性種は、キャビティの内側にて溶液を不当に重合化させ、また、これら酸性種の形成に対抗するため、重合化阻止剤の塩基性化合物が使用される。
【解決手段】モノシリックインクジェットプリントヘッドにおいて、モノマー又はオリゴマー及び光開始剤の溶液を重合化することにより得られた、キャビティを備える構造層が形成される。光線による重合化の間、構造層の支持体の反射面における光線の反射のため、マスクによって保護された領域内にて酸性種が不当に発生する。これら酸性種は、キャビティの内側にて溶液を不当に重合化させ、また、これら酸性種の形成に対抗するため、重合化阻止剤の塩基性化合物が使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリントヘッドにて使用される、三次元的構造体及び関連する製造方法に関する。
特に、本発明が関係するプリントヘッドは、その内部にて蒸気泡が発生される蒸発室と連通する噴射導管又はノズルを通してインク液滴が噴射される型式のものである。
【背景技術】
【0002】
蒸発室内に保持され、これらの室と連通するノズルを通じて排出される少量のインクを蒸発することによりインクの液滴を排出するエネルギが得られるインクジェットプリントヘッドが当該技術にて既知である。
【0003】
インクの蒸発は、室内に配置され且つ、電子マイクロ回路によって適宜にエネルギ化される抵抗器によって引き起こされる。インクは、室及びスロットの双方と連通し、また、ケイ素ダイの厚さにて形成された供給導管を通して供給される。
【0004】
「マイクロ液圧系」という語は、全体として、ノズルと、蒸発室と、蒸発室と接続されたインク供給導管とを意味するものと理解される。
同様に、「マイクロエレクトロニクス」という語は、全体として、ケイ素ダイ上にてフォトリソグラフィ法により製造されたアクティブ及びパッシブな電子構成要素を意味するものと理解される。
【0005】
モノリシックと称されるインクジェットヘッドは、そのマイクロ液圧系が構造層と称される、単一の材料層にて形成される。これは、犠牲層を有する液圧マイクロ回路のテンプレートを形成するステップと、その上に感光性材料の溶液を堆積させるステップと、その材料を重合化し且つ最終的に、犠牲層を除去するステップとにより行うことができる。
【0006】
モノリシックヘッドの構造体は、X−Z軸線に対して平行な断面とされた軸測投影によって図1に図示されている。この図面に示したものは次のものである。
その上にヘッド自体が形成されるケイ素ダイ4;
構造層25;
構造層25に形成された蒸発室又は簡単に、室26;図面には、室26の1つのみが断面図にて示されている。
【0007】
室26の頂部に形成された、その1個を断面図にて示したノズル24;
ダイ4に形成され且つ、図面に断面図にて示した、インクを室26に輸送するスロット27及び導管22;
電気接点又は「パッド」23;
構造層に形成された、パッド23に相応する開口12;
マイクロエレクトロニクスは、ケイ素ダイ4の上面に形成されるが、構造層25の影に隠れるため、図1にて見ることはできない。
【0008】
パッド23は、「指状体」と称される特殊な外部導体との接触を通じてヘッドの外側にてマイクロエレクトニクスを回路と電気的に接続する機能を有する。指状体及びマイクロエレクトニクスは、本発明を理解するのに必須ではないので何れの図面にても示されていない。
【0009】
例えば、インチ当たり600ドット(dpi)であり且つ、例えば、5plの容積の液滴を放出するのに適した、例えば、300のノズルを有するインクジェットヘッドは、1μmの程度の許容公差にて、数10μm程度の寸法の室(例えば、約20μmの側部及び約10μmの厚さを有する)を備えている。
【0010】
パッドを非被覆状態のままにする開口12は、これらのパッドが指状体と電気的に接触することを許容する。開口は、数10μm又は数100μm程度の寸法を有し(例えば、開口は、1μm程度の許容公差にて約100μmの側部を有する)、典型的に、室と同一の高さを有する。
【0011】
下方のマイクロエレクトロニクスは、他方にて、1μm程度の寸法を有する要素から出来ており、このため、これらは、典型的に、マイクロ液圧系の要素よりも2倍だけ小さいことを意味する。
【0012】
マイクロエレクトロニクスの色々な層を製造する間、その後に、除去しようと意図する、加工されるダイの特定の部分を選択的に保護する目的のため、重合化可能な材料の層が使用される。これらの層は、マイクロ液圧系を構成する構造層と実質的に相違しており、特に、これらの層は、典型的に、1μm以下程度の厚さを有し、これらは、後の加工段階にて除去することを意図するため、機械的性質及び隣接する層との接着性が低い材料にて出来ている。
【0013】
ヘッドの高信頼性を保証するため、構造層25は、例えば、そのインクを製造するのに使用した原材料の安定性に関連した理由のため、インクが高アルカリ価を示すときでさえ、インクに対し優れた化学的不活性さを示すものとすることが推奨される。構造層は、常時、インクとの接触状態を保つときでも、基層に対する十分な機械的抵抗性及び最適な接着性を有することも望ましい。
【0014】
米国特許明細書6,123,863号には、ケイ素基層上に堆積させた正レジストの犠牲層にて液圧マイクロ回路のテンプレートを製造するステップと、特に、光重合化可能なエポキシ樹脂脂環式(EHPE3150、ダイセル(Daicel))の処理剤にて出来た構造層にて犠牲層を被覆するステップと、乳酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチルから選ばれた乳酸の脂肪酸エステルの群に属する1つ又はより多くの溶媒にて犠牲層を除去するステップとを備える、インクジェットプリントヘッドを製造する方法が記載されている。
【0015】
半導体を製造するとき、超微細な構造体を形成する技術に関して、米国特許明細書6,753,128号には、非露光領域に移行し又は拡がった酸性種を中和化するのに適したフォトポリマー、光開始剤及び塩基性添加剤にて出来た感光性溶液が提案されている。
【0016】
塩基性添加剤は、共役酸の酸定数(the cofficient of acidity of the conjugate acid)(pKa)が12ないし16の範囲にあるため、高度の塩基性である、フルオレンジアミン及びナフタレンジアミン構造体を有する塩基性化合物にて出来ている。
【0017】
塩基性添加剤は、光開始剤の重量比にて0.5%ないし20%の範囲の量にて光重合化可能な溶液中に存在する。その結果、提案された添加剤が存在しないときに得られる10ないし20mmのLER値と比較して9ないし13nmのLER(ラインエッジの粗さ)値が得られる。
【0018】
米国特許明細書5,683,856号には、酸性種が光線にて露光されていない領域内に移行することに起因し、又はフォトポリマーの表面における酸性種の濃度を変化させる、雰囲気中に存在する塩基性不純物に起因する不良を解消することにより、重合化層に形成された超微細構造体の画成程度を向上させることを意図する方法が記載されている。該特許明細書は、光開始剤と、ポリマーの分解を阻止する成分と、窒素を含むポリマーにて出来た塩基性種とを備えるポジティブな作用の感光性組成物を提案している。その結果、このようにして形成された構造体にて、提案された添加剤無しにて実現することは困難である、260ないし480nmの範囲の分解能となるとして示されている。
【0019】
米国特許明細書5,981,139号は、感光性酸種発生器を保持する化学的増幅型の感光性化合物を備える、フォトポリマー内に構造体を製造することに関するものである。例えば、アンモニアのガスのような塩基性の環境汚染物質の存在下にて又はアンモニア又は水にて含浸させた窒化ケイ素の隔離層と接触して又は再度、リン酸系及びホウ素系ガラスの層と接触する状態にてこのフォトポリマーが使用されるとき、酸性種の一部が不動態化されることが観測される。その結果、例えば、丸味を付けた隅部又はポリマー残留物を有する不規則な形状の構造体が形成される。
【0020】
これらの不良を回避するため、上記に引用した特許は、特殊な型式の脂肪族アミン又はその塩の1つを重量比にて1%以下の量にてフォトポリマーと混合させることを提案している。
【0021】
欧州特許出願明細書1 253 138号は、上記に引用した特許明細書におけるものと同様に、フォトポリマーの酸性種を中和化する、空気中に塩基性汚染物質の成分が存在することに起因する、200nm以下の分解能を有する三次元的超微細構造体の幾何学的変形を解消するという課題に関するものである。この目的のため、上述した欧州特許出願明細書1 253 138号は、化学的増幅フォトポリマーへの添加剤として、エステル基を保持する第3アミンから成る塩基性化合物を使用することを提案している。
【0022】
当該出願人は、上述した特許は1ミクロン程度のパターンを有する集積回路の技術に関するものであり、典型的に、1ミクロン以下(例えば10ないし20nmの範囲のLER)の不規則性を解消するという課題に取り組むものであることが分かった。
【0023】
これと逆に、本発明に関係するマイクロ液圧系構造体は、μm程度の許容公差にて数10又は数100μmの典型的な寸法を有する。このため、許容公差はこれらの特許が解消することを提案する欠点よりも大きいため、これら寸法が上述した特許が取り組む問題点により影響を受けることはない。
【0024】
本発明に関連して、当該発明者達は、何れの場合でも、脂環式エポキシ樹脂に基づく調合を通じて、低体積収縮率のため、基層への優れた接着が得られることを許容し、また、インクに対する化学的不活性の優れた特徴を有するが、三次元的構造体を形成すべく採用したフォトリソグラフィック過程の間、特に、マスクし、従って重合化されない層の領域を選択的に除去することを意図する化学的エッチング過程の間、望ましくなく重合化した材料の顕著な残留物が依然として残ることが分かった。これらの残留物は、電子走査顕微鏡によって得られた、図2の写真にて参照番号40で示されている。
【0025】
以下に、実施例No.1の説明を参照しつつ、フォトリソグラフィック過程が実行される条件と共に、図2の写真の試料が得られた、重合化可能なインクの組成及び調合の詳細について説明する。
【0026】
写真には、例えば、開口12を構成するのに適しており、また、写真に含めた寸法スケールから分かるように、数100μmの寸法を有するキャビティ20が示されている。キャビティの底部壁15にて、同様に、例えば、パッド又は導電体を構成するのに適した、数100μm程度の寸法を有する金属部分36がある。残留物40は、例えば、数10μmないし数100μmの範囲の寸法を有し、このため、これらは、キャビティ20及び金属部分36の領域の大きい部分となり、また、後続のヘッドの組み立て過程にて欠点を生じさせ、収率を劇的に低下させ且つ製造コストを増大させることになる。例えば、金属部分36がパッドであるならば、残留物40は、相対的な指状体に対して効果的な電気的接点が確立されるのを阻止する可能性があり、このことは、当該ヘッドは廃棄処分されるであろうことを意味する。
【0027】
1つの理論に縛られることを望むものではないが、当該発明者達は、光線にて露光されなかった領域にて観察される望ましくない重合化の現象は、マスクの下方の領域内にて三次元的構造体の底部壁の反射部分にて光線が反射することに起因して酸性種が発生されるためであり、露光する間に発生される酸性種が移行することによるものではないと考える。この望ましくない重合化は、既に図2の写真にて観察されるように、数10又は数100μmにさえ亙って伸びる。
【0028】
上記に引用した特許明細書において、超微細の集積回路構造体の技術にて酸性種の拡散という問題は、10nm程度、すなわちヘッドのマイクロ液圧系内にて望ましい許容公差以下の約2倍程度、また、当該発明者が観察した残留物の寸法の3倍ないし4倍程度以下の寸法に関係するものである。
【0029】
この説明において、「酸性種」という語は、カチオン系重合化モノマー又はオリゴマーの重合化を促進する可能性のある水素イオン又は基を意味するものとする。
これに鑑みて、本発明に従い、光線にて露光されなかった領域内に酸性種が発生するため、感光性マトリックスが望ましくなく重合化されることに対する効果的な対抗措置が提供されることを条件として、少なくとも部分反射性の基層が存在するときでさえ、光化学的手段によって重合化可能な材料内に残留物無しの三次元的構造体を得ることが可能であることが分かった。
【0030】
特に、当該発明者達は、この望ましくない重合という現象は任意の形状及び幅の表面を照射する光線の反射に起因するものであり、典型的に、表面が入射光線を50ないし95%、より特定的には、少なくとも70%に等しい程度反射するときに生じると考えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明に関して、このため、当該出願人は、インクジェットプリント用のヘッドにて構造層の壁内に欠点が存在するという問題点は上記構造層が形成される基層の反射率に起因するものであり、これは、また、マスキングによって保護されていない領域内の重合化を制御し、特に、直接的な放射線に曝される領域内にて重合化を阻止するのに不十分であるが、反射光にて露光された領域内にて重合化を防止するのに十分な量の制御された量にて重合化阻止剤を使用することにより解決することが可能であることが分かった。
【0032】
簡略化のため、以下の説明にて、反射する、反射及びその派生語は、拡散する、拡散及びその派生語の意味にても使用する。
特に、本発明に従ってインクジェットプリントヘッドに対する三次元的構造体を製造する方法は、少なくとも1つのモノマー又は1つのエポキシオリゴマー、紫外光線にて照射されたときルイス酸を発生させることのできる光開始剤と、支持面の反射部分にて光線が反射されるため、直接的な光線に曝されなかった領域内にて不当に発生された酸性種を中和化するのに少なくとも十分な量にて混合させた塩基性重合化阻止剤化合物とを保持する感光性マトリックスから得られた重合系構造層を使用するものである。
【0033】
これと同時に、阻止剤化合物は、直接的な光線に曝されない領域内にて完全に使用され、従って、これら領域内にて構造層を重合化するのを許容する十分に少ない量にて混合させなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
第一の形態において、本発明は、フォトポリマーの構造層にてインクジェットプリントヘッド用の三次元的構造体を形成するフォトリソグラフィック法に関する。三次元的構造体は、少なくとも部分反射性の底部壁を有する基層に形成され、また、上記底部壁に隣接する少なくとも1つの側壁を備えている。該方法は、
光開始剤によって発生された酸性種の完全な中和化に相応する化学量論値以下の量にてモノマー又はオリゴマー、光開始剤及び重合化阻止剤の塩基性化合物を備える光重合化可能な層を基層に堆積させるステップと、
マスキングによって保護された領域及び保護されない領域を画成し、三次元的構造体を製造することを意図する光重合化可能な層をマスキングするステップと、
光線の一部分がマスキングによって保護された領域の内部の反射部分によって反射され且つ、不要な酸性種を発生させる間、マスキングによって保護されない領域内にて溶液の重合化を促進するのに適した酸性種を発生させるべく紫外光線(UV)にて照射するステップと、
阻止剤の塩基性化合物によって不要な酸性種を中和化するステップと、
光重合化可能な溶液の重合化されなかった部分をマスキングにより保護された領域から除去するステップとを備えている。
【0035】
好ましくは、重合化阻止剤は、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ヒドロキシルアミナ、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、モルホリン、ヒドラジン、ピペリジン、トリイソプロパノールアミナ、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンから選ばれる。
【0036】
これと代替的に、重合化阻止剤は、トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナ、又はピペリジン、又は4−ジメチルアミノピリジンを備えるものとする。
好ましくは、重合化阻止剤は、5ないし11の範囲の共役酸の酸定数(pKa)を有し、また、溶媒を除いて、重合化可能な溶液の重量に関し、重量比にて0.05%ないし0.4%の範囲の濃度にて上記重合化可能な溶液中に存在するものとする。
【0037】
好ましくは、光開始剤に対する重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:10ないし9:10、より好ましくは1:8ないし3:8の範囲にあるものとする。
特に、基層の底部壁の反射部分は、アルミニウムのトラッキングにて出来ているものとする。
【0038】
好ましくは、三次元的構造体は、反射部分を備える底部壁を有する少なくとも20μmの側部の少なくとも1つのキャビティを備え、三次元的構造体は、少なくとも5μmの厚さを有するものとする。
【0039】
第二の形態において、本発明は、上述した方法により製造されたインクジェットプリントヘッドに関する。
本発明の上記及びその他の特徴は、添付図面を参照して、単に非限定的な例として掲げた、好ましい実施の形態の以下の説明からより明確になるであろう。
【0040】
当該発明者達は、重合化光線にて露光されなかった領域内にて特定量の酸性種が望ましくなく存在する現象はこれらの構造体を形成しなければならない基層が反射型であるとき、中空の三次元的構造体を製造する際に顕著に生ずることが分かった。反射面とは、入射光線の約50%ないし95%(又はそれ以上)、より特定的には、上記入射光線の少なくとも約70%を反射する材料で出来た表面を意味するものとする。
【0041】
当該発明者達は、三次元的構造体の底部壁の反射部分における光線の反射は、酸性種の移行の存在と無関係に又は採用した光重合化可能な溶液内の外部不純物質の存在に関係なく、マスクによって保護された領域を含んで、光重合化可能な溶液の重合化を生じさせることを知った。実際上、例えば、構造層が更なる金属層無しにて炭化ケイ素の基層の頂部に直接堆積される領域にて、底部壁が約50%以下の反射率を有するとき、望ましくない重合化は生じないことが分かった。
【0042】
低反射率のケイ素は、本明細書の目的に適した非金属であると考えられる。
本発明に従い、上述した望ましくない重合化を回避するため、重合化阻止剤の塩基性添加剤を構造層を製造するときに使用される光重合化可能な溶液と混合させる。
【0043】
本発明に従った三次元的構造体を製造する方法及び重合化阻止剤の塩基性添加剤を作用させる方法について、図3ないし図6を参照して説明する。
図3ないし図5には、少なくとも1つの反射部分5を備えるダイ4が概略図的に且つ正確な縮尺ではなく示されている。ダイ4の上には、重合化阻止剤の塩基性添加剤を保持する光重合化可能な溶液の層6が堆積されている。
【0044】
光線8に対し不透過性であるマスク7は、領域9を被覆し且つ、取り囲む領域10を非被覆状態のままにする。層6は、層6の重合化可能な溶液に添加された重合化阻止剤の塩基性添加剤から成るB−塩基性種を備えている。
【0045】
露光の第一の部分の間、光線8にて露光された領域10内にてH+酸性種が層6内に発生される。これらの酸性種は、塩基性阻止剤によって急速に中和化され、このため、重合化は開始しない。しかし、露光した領域10内に存在する阻止剤は、迅速に消尽され、また、特定の点(図4)にて、全ての阻止剤は消滅する一方、マスク7の下方にて露光されない領域9に、依然、阻止剤は存在し且つ作用可能である。
【0046】
照射を続けると、重合化は、露光された領域10内にて開始し、新たな酸性種が発生される。
チップ4(図5)の反射面5における反射の効果を通じて、露光されない領域9内にてマスク7の下方に酸性種が発生されるが、依然としてマスクの下方の領域内に存在する阻止剤によって直ちに中和化され、このため、領域9内にて何らの形態の重合化を開始することはできない。
【0047】
簡略化のため説明しない過程の後続の段階にて、層6は、適宜な溶媒にて現像され、マスク7の下方にあった層6の領域9は重合化されていないため、完全に除去される。
このようにして、本発明の場合、キャビティ20(図6)を備える構造層25が形成される。該キャビティは、実質的に平坦な(又は直線状の母線を有する任意の率にて)壁14により境界が画され、光線8の方向に対して平行に配置され且つ、鋭角な端縁16にてチップ4の底部壁15に対し直角に接続されている。
【0048】
本発明に従った光重合化可能な溶液は、例えば、(ダウケミカル(DOW CHEMICAL)Co.のシラキュアー(CYRACURE)UVR−6105、UV−6107及びUV−6110型式の)3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩、(ダウケミカルCo.のシラキュアー(Cyracure)UVR6128−のような)ビス−(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジピン酸塩及び1,2−エポキシ−4−(2−オシラニル(ossiranil))−シクロヘキサンをその商業的名称EHPE−3150(ダイセル化学工業(Daicel Chemical Industries)により一層良く知られた2,2´−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールにて凝縮することにより得られた製品;カチオン系光開始剤、すなわち適宜な光線にて照射するとき、酸性種を発生させることのできる光開始剤のようなエポキシモノマー又はオリゴノマー、好ましくは、脂環式の型から成るものとする。この目的のために使用することのできるカチオン系光開始剤の内、アリールソルホニウム(arylsolfonium)塩及びアリールヨードニウム塩のようなオニウム塩があり、この場合、対イオンは、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン又はヘキサフルオロリン酸アニオンとすることができる。
【0049】
その高レベルの反応性のため、特に、好ましいものは、ビス−(4−(ジフェニルソルホニウム)フェニル)硫化物 ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸塩)と、その商業的名称であるシラキュアーUVI−6976として一層良く知られたジフェニル((フェニルチオ)フェニル)ソルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩との混合体である。エポキシ化合物及びカチオン系光開始剤に加えて、次のものもまた混合体中に存在することができる。エポキシ環の変換比率を増大させ且つトリメチルオルプロパン型の脂肪族、脂環式及び芳香族ジオール及びトリオール、ε−カプロラクトンン−トリオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロプロピル)ベンゼンのようなその後に得られたものをより化学的に不活性にする網状添加剤、ダウコーニング57(Dow Corning57)(ダウ コーニング(Dow Corning)Co.)型のケイ素添加剤のような、基層への感光性混合体への付与の均一性を向上させる湿潤剤;使用される無機質系基層の型式を基準として選ばれた、無機質基層への構造層の接着性を向上させる接着促進剤である。
【0050】
特に、ケイ素基層、又は例えば、窒化ケイ素、酸化物又は窒化物のようなケイ素化合物又は酸素と容易に反応する金属の化合物の場合、一群のシランに属する接着促進剤が特に推奨され、また、本発明の目的のため、より特定的に、(3−グリシドッシ(glicidossi)−トリメトキシシラン(trimetoxyisilane)のような官能基エポキシシランの群に属する化合物が推奨される。
【0051】
光重合化可能な混合体は、粘度を調節し且つ噴霧施工、金属ブレード施工、スピナー施工(フォトレジスト技術にて好まれる)のような施工過程を通じて基層への堆積を促進させるため、有機系溶媒を保持することができる。
【0052】
溶媒は、選ばれた施工方法の成分、混合体及び機能と適合可能なものから選ばれる。特に、スピナー施工のため、溶媒は雰囲気温度にて過度に迅速に蒸発するのを回避し得るような蒸気圧力を有することが好ましい。この目的のため、特に推奨されるのは、20℃にて20kPa以下、好ましくは5kPa以下の圧力を有する溶媒である。
【0053】
本発明に従い、反射性基層に存在する非照射領域の望ましくない重合化を回避する目的のため、上述した光重合化可能な混合体に対し、塩基性添加剤、光重合化阻止剤が添加される。この光重合化阻止剤は、好ましくは、N,N−ジメチルアニリン;ピリジン;ヒドロキシルアミナ;2,6−ジメチルピイジン;イミダゾール;トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン;ヒドラジン;4−ジメチルアミノピリジン;モルホリン;メチルアミン;エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;ピペリジンから選ばれる。
【0054】
望ましくは、塩基性添加剤は、三次元的構造体を形成するとき、幾何学的不規則性が存在しない最良の結果を得るため、多数の条件を考慮しなければならない。特に、
a)塩基性添加剤は、上述した組成中にて、また、全体として、存在するならば有機系溶媒中にて実質的に可溶性でなければならない。
【0055】
b)塩基性添加剤の共役酸の酸定数(pKa)は、5ないし11の範囲にあることが好ましい。
c)重合化過程の進行時、塩基性添加剤は、光線にて露光されなかった領域から露光された領域まで移行するのを回避するため、重合化可能な溶液中にて低可動性を備えなければならない。
【0056】
d)光重合化可能な溶液中に含まれた塩基性添加剤の量は、光開始剤の量よりも化学量論値的に少なく、添加剤は露光されなかった領域内にて反射した光線により発生された酸性種を中和させるのに十分であるが、何れの場合でも、重合化を促進するのに十分露光された領域内に酸性種が残留するのを許容するような態様にて行われるものとする。
【0057】
特に、光開始剤に対する添加剤の化学量論値の比は、好ましくは1:20ないし19:20の範囲、より好ましくは1:10ないし9:10の範囲とする。
更に、溶媒を除いて、溶液の重量に対する添加剤の重量比の濃度は0.05%ないし0.4%の範囲にあることが好ましい。
【0058】
より全体的には、金属水酸化物及びアンモニアのような無機質塩基物と相違して、第1アミン、第2アミン、又は好ましくは、第3アミンのような有機系塩基物は、本発明に従って、重合化阻止剤添加剤として使用するのに適していることが判明した。
【実施例1】
【0059】
この実施例は、塩基系添加剤を添加せずに製造したものであり、この場合、塩基系添加物が添加された3ないし6の実施例と比較するため掲げたものである。
ガラス容器内にて、1,2−エポキシ−4−(2−オシラニル(ossiranil))−シクロヘキサン及び2,2´−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの凝縮物から製造されたオリゴマー脂環式エポキシ化合物の81p/p、ビス(4−(ジフェニルソルフォニウム)フェニル)硫化物とビス(ヘキサフルオロアンチモン酸塩)と、ジフェニル((フェニルチオ)フェニル)ソルフォニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩との等モル混合体であるカチオン系光開始剤の3.5p/p、1,4−ビス(2−ヒドロキシエサフルオロプロピル(hydroxyesafluoropropyl))ベンゼンである鎖移動剤の15.5p/pをビス(2−メトキシエチル)エーテル中にて混合させた。
【0060】
また、混合体に対して、3−グリシドキシ−トリメトキシシランの8p/p及びダウコーニング(Dow Corning)ケイ素系添加剤No.57(ダウコーニングカンパニー)の0.002p/pを添加した。
【0061】
成分の混合は、24時間、トランドラ(trundler)内にて回転させて行った。
上述した混合体は、アルミニウム層から成る金属被覆が付与された領域を有する炭化ケイ素の基層に対し20秒間、2000回転数/分にてスピン被覆により施し、厚さ25μmの層が得られるようにした。
【0062】
混合体が堆積された基層は、水銀蒸気ランプから発生された紫外光線にて照射し、適宜なマスクをキャビティを含むパターンを画成し得るようその間に配置した。試料にて2.5J/cm2の全エネルギを照射した。
【0063】
金属被覆領域における基層の反射率は、約70ないし80%であると推定する一方、金属被覆無しの領域内の基層の反射率は40%以下であると評価した。
露光の終了時、キシレン及びメチルイソブチルシェトン(chetone)の混合体の1/1p/p内に3分間浸漬することにより、重合化されていない部分を除去した。
【0064】
得られたパターンの画成状態及び望ましくない残留物の存在又はその他を電子走査型顕微鏡(SEM)を使用して観察することにより評価した。
上述した手順によって混合体から得られた製品は、図2の顕微鏡写真にて示すように、露光する間、マスクによって被覆された領域内にて許容し得ない画成の特徴を実証し且つ、多量の重合系残留物が残った。
【0065】
図面を観察すると、反射金属部分36の局部側にて側壁14は望ましくない堆積物40を有することが分かり、光線の反射によって不当に発生された酸性種に起因する過剰な重合化は、特定の添加剤が欠如するため、阻止されなかったことが分かる。
【実施例2】
【0066】
この実施例も、塩基系添加剤を添加せずに具体化した。
混合体の組成及び調合程度は、実施例1に記載したものと同一であるが、この場合、その上に混合体が堆積された基層は、実施例1よりも少ないエネルギにて照射した。
【0067】
水銀蒸気ランプから発生された紫外光線を同様に使用し、2つのキャビティを含むパターンを画成する適宜なマスクをその間に配置したが、この場合、試料を0.8J/cm2の全エネルギにて照射した。
【0068】
露光の終了時、キシレン及びメチルイソブチルシェトンの混合体の1/1p/p内に3分間、浸漬することにより、重合化しなかった部分を除去した。
得られたパターンの画成状態及び望ましくない残留物の存在又はその他を電子走査型顕微鏡(SEM)を使用して観察することにより評価した。
【0069】
上述した手順によって混合体から得られた製品は、図7の顕微鏡写真にて示すように、露光する間、マスクによって被覆された領域内にて許容し得ない画成の特徴を実証し且つ依然として、多量の重合系残留物が残った。
【0070】
図7には、側壁14によって境が画成された構造層25に隣接して、2つの別個の金属被覆5a、5b(アルミニウムから成る)を有するキャビティ20−1が示されている。図面に示すように、金属被覆5bは、構造層25の下方を伸びる一方、金属被覆5aは、構造層25の境を画成する壁14から数10ミクロンにて停止する。
【0071】
図面を観察すると、重合系層25の下側に連続する金属被覆5bの局所にて、側壁14は、望ましくない堆積物40を有し、過剰な重合化であったことを示すことが分かる。他方、図7の左側にて、壁14は、金属被覆5aに相応して直線状のままであることが理解される。
【0072】
観察された過剰な重合化は、金属被覆5bの反射面の光線の反射により不当に発生された酸性種によって引き起こされ、特定の添加剤の欠如のため阻止されなかった一方、この現象は、金属被覆5a付近の重合層の隣接する部分にては生じなかったと考えられる。その理由は、この後者の金属被覆は、露光した領域の下方にて連続しないため、反射することができなかったからである。このことは、上述した実験状態下にて、光線の反射と関係した領域内にて数10μmに亙って伸びた過剰な重合化が生じた一方、反射が生じなかった領域では、重合化した残留材料で視覚可能な程度に除去されずに残ったものは何ら観察されなかったことを明確に実証した。
【0073】
このことから、我々は、観察された過剰な重合化は、例えば、光線にて露光されなかった領域内に酸性種が移行し又は拡散すること、又は精々、数10nmの程度の厚さ、すなわち、当該要素のスケールにて観察できない寸法の汚染物質が環境中に存在することといったことが原因ではないと確信する。
【実施例3】
【0074】
上記の実施例に従って得られた混合体に対し、光開始剤に対する化学量論値比が1:3.8にてトリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナから成る重合化阻止剤の塩基性添加剤を添加した。
【0075】
このようにして調合した混合体を実施例1に記載した過程と同一の条件下にて使用し、この場合、光重合化可能な層の反応性が小さいことを考慮して照射したエネルギを適宜に増加させた。得られた値は3.5J/cm2であった。
【0076】
この場合、図8に再現した、SEMにて観察された結果は優れたものであった。マスキングした領域内にて残留物は何ら観察されず、キャビティの側壁は、実質的に垂直であり且つ、底部壁が極めて反射性である場合でさえ、該底部壁に鋭角な端縁にて接続した。
【0077】
図8の顕微鏡写真には、2つの底部の金属被覆5a、5bにそれぞれ支承され、アルミニウム層から成る2つの矩形の形状のキャビティ20−2a、20−2bが平面図にて示されている。右側キャビティ20−20aにて、金属系被覆5aは数10ミクロンの距離だけ側壁14から分離している一方、左側キャビティ20−2bにて、金属被覆5bは側壁14の下方にて連続している。この顕微鏡写真において、金属被覆5bに相応する感得可能な相違点無しにて双方のキャビティにおける側壁14の幾何学的規則性を見ることができる。
【実施例4】
【0078】
実施例2に従って得られた混合体に対し、トリス−(2−ヒドロキシル−1−プロピル)アミナから成る重合化阻止剤の塩基性添加剤を光開始剤に対する化学量論値比が1:7.5にて添加した。
【0079】
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、1.2J/cm2であった。
【0080】
この場合にも、図9に示した、SEMに基づいて観察された結果は優れたものであった。マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの垂直壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されていた。
【0081】
図9の顕微鏡写真は、実施例4にて形成したキャビティ20−3のほぼ4分の3の斜視図を示す、先の図7及び図8よりも拡大した図である。この場合、鋭角な端縁で且つ直角にて底部壁15に接続された、2つの隣接する壁14a、14bを形成する状態をより明確に見ることができる。更に、壁14a、14bは、底部壁15と同様に、何ら顕著な不良が存在しない実質的に平坦な面を示す。
【実施例5】
【0082】
実施例2に従って得られた混合体に対し、ピペリジンから成る、重合化阻止剤の塩基性添加剤を1:5の化学量論値比にて添加した。
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、1.8J/cm2であった。
【0083】
SEMによる観察(図10)の結果、マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの側壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されることが判明した。
【0084】
図10の顕微鏡写真は、実施例5にて形成したキャビティ20−4の斜視図を示すものであり、この場合、金属被覆5が壁14bの下方を伸びる領域内にて側壁の幾何学的規則性は明らかであり、特に、欠点は実質的に存在しないことを示す。
【実施例6】
【0085】
実施例2に従って得られた混合体に対し、4−ジメチルアミノピリジンから成る、重合化阻止剤の塩基性添加剤を1:4の化学量論値比にて添加した。
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、2.5J/cm2であった。
【0086】
SEMによる観察(図11)の結果、マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの側壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されることが判明した。
【0087】
図11の顕微鏡写真は、キャビティ20−5の斜視図を示すものであり、この場合、鋭角な端縁にて及び直角に底部壁15に接続された2つの隣接する壁14a、14bを形成する状態を明確に見ることができる。更に、壁14a、14bは、底部壁15と同様に、何ら顕著な不良が存在しない実質的に平坦な面を示す。
【0088】
上記の説明は、ネガティブフォトポリマーの光重合化によって得られる三次元的構造体を構造層内に形成し、この構造体は、光線にて照射された領域内にて重合化され、従って影になった領域内にて可溶性のままであり、溶媒によって除去することが可能である方法に関する。
【0089】
しかし、本発明に従った方法は、ポジティブフォトポリマーにも適用可能であり、この場合、光ポリマーは、最初に重合化されて、光線によって照射された領域内にて可溶性となり、従って、照射した領域内にて溶媒によって除去することができる。上述した型式の基層にて使用されるならば、これらのフォトポリマーにて反射現象に起因する欠陥が生じる可能性がある。ポジティブフォトポリマーにおいて、塩基性阻止剤の化合物が存在しないとき、マスクの下方にて反射された光線は、得られた構造体層内にて望ましくない空隙の形態をとる不必要な溶解物を生じさせるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】軸測投影図にて見た、x−z面に対し平行な断面としたモノシリックインクジェットプリントヘッドの概略図である。
【図2】先行技術にて既知の方法に従って形成された、三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図3】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図4】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図5】阻止作用が本発明に従って実行される要素を示す概略図である。
【図6】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図7】先行技術にて既知の方法に従って形成された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図8】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図9】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図10】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリントヘッドにて使用される、三次元的構造体及び関連する製造方法に関する。
特に、本発明が関係するプリントヘッドは、その内部にて蒸気泡が発生される蒸発室と連通する噴射導管又はノズルを通してインク液滴が噴射される型式のものである。
【背景技術】
【0002】
蒸発室内に保持され、これらの室と連通するノズルを通じて排出される少量のインクを蒸発することによりインクの液滴を排出するエネルギが得られるインクジェットプリントヘッドが当該技術にて既知である。
【0003】
インクの蒸発は、室内に配置され且つ、電子マイクロ回路によって適宜にエネルギ化される抵抗器によって引き起こされる。インクは、室及びスロットの双方と連通し、また、ケイ素ダイの厚さにて形成された供給導管を通して供給される。
【0004】
「マイクロ液圧系」という語は、全体として、ノズルと、蒸発室と、蒸発室と接続されたインク供給導管とを意味するものと理解される。
同様に、「マイクロエレクトロニクス」という語は、全体として、ケイ素ダイ上にてフォトリソグラフィ法により製造されたアクティブ及びパッシブな電子構成要素を意味するものと理解される。
【0005】
モノリシックと称されるインクジェットヘッドは、そのマイクロ液圧系が構造層と称される、単一の材料層にて形成される。これは、犠牲層を有する液圧マイクロ回路のテンプレートを形成するステップと、その上に感光性材料の溶液を堆積させるステップと、その材料を重合化し且つ最終的に、犠牲層を除去するステップとにより行うことができる。
【0006】
モノリシックヘッドの構造体は、X−Z軸線に対して平行な断面とされた軸測投影によって図1に図示されている。この図面に示したものは次のものである。
その上にヘッド自体が形成されるケイ素ダイ4;
構造層25;
構造層25に形成された蒸発室又は簡単に、室26;図面には、室26の1つのみが断面図にて示されている。
【0007】
室26の頂部に形成された、その1個を断面図にて示したノズル24;
ダイ4に形成され且つ、図面に断面図にて示した、インクを室26に輸送するスロット27及び導管22;
電気接点又は「パッド」23;
構造層に形成された、パッド23に相応する開口12;
マイクロエレクトロニクスは、ケイ素ダイ4の上面に形成されるが、構造層25の影に隠れるため、図1にて見ることはできない。
【0008】
パッド23は、「指状体」と称される特殊な外部導体との接触を通じてヘッドの外側にてマイクロエレクトニクスを回路と電気的に接続する機能を有する。指状体及びマイクロエレクトニクスは、本発明を理解するのに必須ではないので何れの図面にても示されていない。
【0009】
例えば、インチ当たり600ドット(dpi)であり且つ、例えば、5plの容積の液滴を放出するのに適した、例えば、300のノズルを有するインクジェットヘッドは、1μmの程度の許容公差にて、数10μm程度の寸法の室(例えば、約20μmの側部及び約10μmの厚さを有する)を備えている。
【0010】
パッドを非被覆状態のままにする開口12は、これらのパッドが指状体と電気的に接触することを許容する。開口は、数10μm又は数100μm程度の寸法を有し(例えば、開口は、1μm程度の許容公差にて約100μmの側部を有する)、典型的に、室と同一の高さを有する。
【0011】
下方のマイクロエレクトロニクスは、他方にて、1μm程度の寸法を有する要素から出来ており、このため、これらは、典型的に、マイクロ液圧系の要素よりも2倍だけ小さいことを意味する。
【0012】
マイクロエレクトロニクスの色々な層を製造する間、その後に、除去しようと意図する、加工されるダイの特定の部分を選択的に保護する目的のため、重合化可能な材料の層が使用される。これらの層は、マイクロ液圧系を構成する構造層と実質的に相違しており、特に、これらの層は、典型的に、1μm以下程度の厚さを有し、これらは、後の加工段階にて除去することを意図するため、機械的性質及び隣接する層との接着性が低い材料にて出来ている。
【0013】
ヘッドの高信頼性を保証するため、構造層25は、例えば、そのインクを製造するのに使用した原材料の安定性に関連した理由のため、インクが高アルカリ価を示すときでさえ、インクに対し優れた化学的不活性さを示すものとすることが推奨される。構造層は、常時、インクとの接触状態を保つときでも、基層に対する十分な機械的抵抗性及び最適な接着性を有することも望ましい。
【0014】
米国特許明細書6,123,863号には、ケイ素基層上に堆積させた正レジストの犠牲層にて液圧マイクロ回路のテンプレートを製造するステップと、特に、光重合化可能なエポキシ樹脂脂環式(EHPE3150、ダイセル(Daicel))の処理剤にて出来た構造層にて犠牲層を被覆するステップと、乳酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチルから選ばれた乳酸の脂肪酸エステルの群に属する1つ又はより多くの溶媒にて犠牲層を除去するステップとを備える、インクジェットプリントヘッドを製造する方法が記載されている。
【0015】
半導体を製造するとき、超微細な構造体を形成する技術に関して、米国特許明細書6,753,128号には、非露光領域に移行し又は拡がった酸性種を中和化するのに適したフォトポリマー、光開始剤及び塩基性添加剤にて出来た感光性溶液が提案されている。
【0016】
塩基性添加剤は、共役酸の酸定数(the cofficient of acidity of the conjugate acid)(pKa)が12ないし16の範囲にあるため、高度の塩基性である、フルオレンジアミン及びナフタレンジアミン構造体を有する塩基性化合物にて出来ている。
【0017】
塩基性添加剤は、光開始剤の重量比にて0.5%ないし20%の範囲の量にて光重合化可能な溶液中に存在する。その結果、提案された添加剤が存在しないときに得られる10ないし20mmのLER値と比較して9ないし13nmのLER(ラインエッジの粗さ)値が得られる。
【0018】
米国特許明細書5,683,856号には、酸性種が光線にて露光されていない領域内に移行することに起因し、又はフォトポリマーの表面における酸性種の濃度を変化させる、雰囲気中に存在する塩基性不純物に起因する不良を解消することにより、重合化層に形成された超微細構造体の画成程度を向上させることを意図する方法が記載されている。該特許明細書は、光開始剤と、ポリマーの分解を阻止する成分と、窒素を含むポリマーにて出来た塩基性種とを備えるポジティブな作用の感光性組成物を提案している。その結果、このようにして形成された構造体にて、提案された添加剤無しにて実現することは困難である、260ないし480nmの範囲の分解能となるとして示されている。
【0019】
米国特許明細書5,981,139号は、感光性酸種発生器を保持する化学的増幅型の感光性化合物を備える、フォトポリマー内に構造体を製造することに関するものである。例えば、アンモニアのガスのような塩基性の環境汚染物質の存在下にて又はアンモニア又は水にて含浸させた窒化ケイ素の隔離層と接触して又は再度、リン酸系及びホウ素系ガラスの層と接触する状態にてこのフォトポリマーが使用されるとき、酸性種の一部が不動態化されることが観測される。その結果、例えば、丸味を付けた隅部又はポリマー残留物を有する不規則な形状の構造体が形成される。
【0020】
これらの不良を回避するため、上記に引用した特許は、特殊な型式の脂肪族アミン又はその塩の1つを重量比にて1%以下の量にてフォトポリマーと混合させることを提案している。
【0021】
欧州特許出願明細書1 253 138号は、上記に引用した特許明細書におけるものと同様に、フォトポリマーの酸性種を中和化する、空気中に塩基性汚染物質の成分が存在することに起因する、200nm以下の分解能を有する三次元的超微細構造体の幾何学的変形を解消するという課題に関するものである。この目的のため、上述した欧州特許出願明細書1 253 138号は、化学的増幅フォトポリマーへの添加剤として、エステル基を保持する第3アミンから成る塩基性化合物を使用することを提案している。
【0022】
当該出願人は、上述した特許は1ミクロン程度のパターンを有する集積回路の技術に関するものであり、典型的に、1ミクロン以下(例えば10ないし20nmの範囲のLER)の不規則性を解消するという課題に取り組むものであることが分かった。
【0023】
これと逆に、本発明に関係するマイクロ液圧系構造体は、μm程度の許容公差にて数10又は数100μmの典型的な寸法を有する。このため、許容公差はこれらの特許が解消することを提案する欠点よりも大きいため、これら寸法が上述した特許が取り組む問題点により影響を受けることはない。
【0024】
本発明に関連して、当該発明者達は、何れの場合でも、脂環式エポキシ樹脂に基づく調合を通じて、低体積収縮率のため、基層への優れた接着が得られることを許容し、また、インクに対する化学的不活性の優れた特徴を有するが、三次元的構造体を形成すべく採用したフォトリソグラフィック過程の間、特に、マスクし、従って重合化されない層の領域を選択的に除去することを意図する化学的エッチング過程の間、望ましくなく重合化した材料の顕著な残留物が依然として残ることが分かった。これらの残留物は、電子走査顕微鏡によって得られた、図2の写真にて参照番号40で示されている。
【0025】
以下に、実施例No.1の説明を参照しつつ、フォトリソグラフィック過程が実行される条件と共に、図2の写真の試料が得られた、重合化可能なインクの組成及び調合の詳細について説明する。
【0026】
写真には、例えば、開口12を構成するのに適しており、また、写真に含めた寸法スケールから分かるように、数100μmの寸法を有するキャビティ20が示されている。キャビティの底部壁15にて、同様に、例えば、パッド又は導電体を構成するのに適した、数100μm程度の寸法を有する金属部分36がある。残留物40は、例えば、数10μmないし数100μmの範囲の寸法を有し、このため、これらは、キャビティ20及び金属部分36の領域の大きい部分となり、また、後続のヘッドの組み立て過程にて欠点を生じさせ、収率を劇的に低下させ且つ製造コストを増大させることになる。例えば、金属部分36がパッドであるならば、残留物40は、相対的な指状体に対して効果的な電気的接点が確立されるのを阻止する可能性があり、このことは、当該ヘッドは廃棄処分されるであろうことを意味する。
【0027】
1つの理論に縛られることを望むものではないが、当該発明者達は、光線にて露光されなかった領域にて観察される望ましくない重合化の現象は、マスクの下方の領域内にて三次元的構造体の底部壁の反射部分にて光線が反射することに起因して酸性種が発生されるためであり、露光する間に発生される酸性種が移行することによるものではないと考える。この望ましくない重合化は、既に図2の写真にて観察されるように、数10又は数100μmにさえ亙って伸びる。
【0028】
上記に引用した特許明細書において、超微細の集積回路構造体の技術にて酸性種の拡散という問題は、10nm程度、すなわちヘッドのマイクロ液圧系内にて望ましい許容公差以下の約2倍程度、また、当該発明者が観察した残留物の寸法の3倍ないし4倍程度以下の寸法に関係するものである。
【0029】
この説明において、「酸性種」という語は、カチオン系重合化モノマー又はオリゴマーの重合化を促進する可能性のある水素イオン又は基を意味するものとする。
これに鑑みて、本発明に従い、光線にて露光されなかった領域内に酸性種が発生するため、感光性マトリックスが望ましくなく重合化されることに対する効果的な対抗措置が提供されることを条件として、少なくとも部分反射性の基層が存在するときでさえ、光化学的手段によって重合化可能な材料内に残留物無しの三次元的構造体を得ることが可能であることが分かった。
【0030】
特に、当該発明者達は、この望ましくない重合という現象は任意の形状及び幅の表面を照射する光線の反射に起因するものであり、典型的に、表面が入射光線を50ないし95%、より特定的には、少なくとも70%に等しい程度反射するときに生じると考えた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明に関して、このため、当該出願人は、インクジェットプリント用のヘッドにて構造層の壁内に欠点が存在するという問題点は上記構造層が形成される基層の反射率に起因するものであり、これは、また、マスキングによって保護されていない領域内の重合化を制御し、特に、直接的な放射線に曝される領域内にて重合化を阻止するのに不十分であるが、反射光にて露光された領域内にて重合化を防止するのに十分な量の制御された量にて重合化阻止剤を使用することにより解決することが可能であることが分かった。
【0032】
簡略化のため、以下の説明にて、反射する、反射及びその派生語は、拡散する、拡散及びその派生語の意味にても使用する。
特に、本発明に従ってインクジェットプリントヘッドに対する三次元的構造体を製造する方法は、少なくとも1つのモノマー又は1つのエポキシオリゴマー、紫外光線にて照射されたときルイス酸を発生させることのできる光開始剤と、支持面の反射部分にて光線が反射されるため、直接的な光線に曝されなかった領域内にて不当に発生された酸性種を中和化するのに少なくとも十分な量にて混合させた塩基性重合化阻止剤化合物とを保持する感光性マトリックスから得られた重合系構造層を使用するものである。
【0033】
これと同時に、阻止剤化合物は、直接的な光線に曝されない領域内にて完全に使用され、従って、これら領域内にて構造層を重合化するのを許容する十分に少ない量にて混合させなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0034】
第一の形態において、本発明は、フォトポリマーの構造層にてインクジェットプリントヘッド用の三次元的構造体を形成するフォトリソグラフィック法に関する。三次元的構造体は、少なくとも部分反射性の底部壁を有する基層に形成され、また、上記底部壁に隣接する少なくとも1つの側壁を備えている。該方法は、
光開始剤によって発生された酸性種の完全な中和化に相応する化学量論値以下の量にてモノマー又はオリゴマー、光開始剤及び重合化阻止剤の塩基性化合物を備える光重合化可能な層を基層に堆積させるステップと、
マスキングによって保護された領域及び保護されない領域を画成し、三次元的構造体を製造することを意図する光重合化可能な層をマスキングするステップと、
光線の一部分がマスキングによって保護された領域の内部の反射部分によって反射され且つ、不要な酸性種を発生させる間、マスキングによって保護されない領域内にて溶液の重合化を促進するのに適した酸性種を発生させるべく紫外光線(UV)にて照射するステップと、
阻止剤の塩基性化合物によって不要な酸性種を中和化するステップと、
光重合化可能な溶液の重合化されなかった部分をマスキングにより保護された領域から除去するステップとを備えている。
【0035】
好ましくは、重合化阻止剤は、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ヒドロキシルアミナ、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、モルホリン、ヒドラジン、ピペリジン、トリイソプロパノールアミナ、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンから選ばれる。
【0036】
これと代替的に、重合化阻止剤は、トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナ、又はピペリジン、又は4−ジメチルアミノピリジンを備えるものとする。
好ましくは、重合化阻止剤は、5ないし11の範囲の共役酸の酸定数(pKa)を有し、また、溶媒を除いて、重合化可能な溶液の重量に関し、重量比にて0.05%ないし0.4%の範囲の濃度にて上記重合化可能な溶液中に存在するものとする。
【0037】
好ましくは、光開始剤に対する重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:10ないし9:10、より好ましくは1:8ないし3:8の範囲にあるものとする。
特に、基層の底部壁の反射部分は、アルミニウムのトラッキングにて出来ているものとする。
【0038】
好ましくは、三次元的構造体は、反射部分を備える底部壁を有する少なくとも20μmの側部の少なくとも1つのキャビティを備え、三次元的構造体は、少なくとも5μmの厚さを有するものとする。
【0039】
第二の形態において、本発明は、上述した方法により製造されたインクジェットプリントヘッドに関する。
本発明の上記及びその他の特徴は、添付図面を参照して、単に非限定的な例として掲げた、好ましい実施の形態の以下の説明からより明確になるであろう。
【0040】
当該発明者達は、重合化光線にて露光されなかった領域内にて特定量の酸性種が望ましくなく存在する現象はこれらの構造体を形成しなければならない基層が反射型であるとき、中空の三次元的構造体を製造する際に顕著に生ずることが分かった。反射面とは、入射光線の約50%ないし95%(又はそれ以上)、より特定的には、上記入射光線の少なくとも約70%を反射する材料で出来た表面を意味するものとする。
【0041】
当該発明者達は、三次元的構造体の底部壁の反射部分における光線の反射は、酸性種の移行の存在と無関係に又は採用した光重合化可能な溶液内の外部不純物質の存在に関係なく、マスクによって保護された領域を含んで、光重合化可能な溶液の重合化を生じさせることを知った。実際上、例えば、構造層が更なる金属層無しにて炭化ケイ素の基層の頂部に直接堆積される領域にて、底部壁が約50%以下の反射率を有するとき、望ましくない重合化は生じないことが分かった。
【0042】
低反射率のケイ素は、本明細書の目的に適した非金属であると考えられる。
本発明に従い、上述した望ましくない重合化を回避するため、重合化阻止剤の塩基性添加剤を構造層を製造するときに使用される光重合化可能な溶液と混合させる。
【0043】
本発明に従った三次元的構造体を製造する方法及び重合化阻止剤の塩基性添加剤を作用させる方法について、図3ないし図6を参照して説明する。
図3ないし図5には、少なくとも1つの反射部分5を備えるダイ4が概略図的に且つ正確な縮尺ではなく示されている。ダイ4の上には、重合化阻止剤の塩基性添加剤を保持する光重合化可能な溶液の層6が堆積されている。
【0044】
光線8に対し不透過性であるマスク7は、領域9を被覆し且つ、取り囲む領域10を非被覆状態のままにする。層6は、層6の重合化可能な溶液に添加された重合化阻止剤の塩基性添加剤から成るB−塩基性種を備えている。
【0045】
露光の第一の部分の間、光線8にて露光された領域10内にてH+酸性種が層6内に発生される。これらの酸性種は、塩基性阻止剤によって急速に中和化され、このため、重合化は開始しない。しかし、露光した領域10内に存在する阻止剤は、迅速に消尽され、また、特定の点(図4)にて、全ての阻止剤は消滅する一方、マスク7の下方にて露光されない領域9に、依然、阻止剤は存在し且つ作用可能である。
【0046】
照射を続けると、重合化は、露光された領域10内にて開始し、新たな酸性種が発生される。
チップ4(図5)の反射面5における反射の効果を通じて、露光されない領域9内にてマスク7の下方に酸性種が発生されるが、依然としてマスクの下方の領域内に存在する阻止剤によって直ちに中和化され、このため、領域9内にて何らの形態の重合化を開始することはできない。
【0047】
簡略化のため説明しない過程の後続の段階にて、層6は、適宜な溶媒にて現像され、マスク7の下方にあった層6の領域9は重合化されていないため、完全に除去される。
このようにして、本発明の場合、キャビティ20(図6)を備える構造層25が形成される。該キャビティは、実質的に平坦な(又は直線状の母線を有する任意の率にて)壁14により境界が画され、光線8の方向に対して平行に配置され且つ、鋭角な端縁16にてチップ4の底部壁15に対し直角に接続されている。
【0048】
本発明に従った光重合化可能な溶液は、例えば、(ダウケミカル(DOW CHEMICAL)Co.のシラキュアー(CYRACURE)UVR−6105、UV−6107及びUV−6110型式の)3,4−エポキシシクロヘキシル−メチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩、(ダウケミカルCo.のシラキュアー(Cyracure)UVR6128−のような)ビス−(3,4−エポキシシクロへキシルメチル)アジピン酸塩及び1,2−エポキシ−4−(2−オシラニル(ossiranil))−シクロヘキサンをその商業的名称EHPE−3150(ダイセル化学工業(Daicel Chemical Industries)により一層良く知られた2,2´−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールにて凝縮することにより得られた製品;カチオン系光開始剤、すなわち適宜な光線にて照射するとき、酸性種を発生させることのできる光開始剤のようなエポキシモノマー又はオリゴノマー、好ましくは、脂環式の型から成るものとする。この目的のために使用することのできるカチオン系光開始剤の内、アリールソルホニウム(arylsolfonium)塩及びアリールヨードニウム塩のようなオニウム塩があり、この場合、対イオンは、ヘキサフルオロアンチモン酸アニオン又はヘキサフルオロリン酸アニオンとすることができる。
【0049】
その高レベルの反応性のため、特に、好ましいものは、ビス−(4−(ジフェニルソルホニウム)フェニル)硫化物 ビス(ヘキサフルオロアンチモン酸塩)と、その商業的名称であるシラキュアーUVI−6976として一層良く知られたジフェニル((フェニルチオ)フェニル)ソルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩との混合体である。エポキシ化合物及びカチオン系光開始剤に加えて、次のものもまた混合体中に存在することができる。エポキシ環の変換比率を増大させ且つトリメチルオルプロパン型の脂肪族、脂環式及び芳香族ジオール及びトリオール、ε−カプロラクトンン−トリオール、1,4−ビス(2−ヒドロキシヘキサフルオロプロピル)ベンゼンのようなその後に得られたものをより化学的に不活性にする網状添加剤、ダウコーニング57(Dow Corning57)(ダウ コーニング(Dow Corning)Co.)型のケイ素添加剤のような、基層への感光性混合体への付与の均一性を向上させる湿潤剤;使用される無機質系基層の型式を基準として選ばれた、無機質基層への構造層の接着性を向上させる接着促進剤である。
【0050】
特に、ケイ素基層、又は例えば、窒化ケイ素、酸化物又は窒化物のようなケイ素化合物又は酸素と容易に反応する金属の化合物の場合、一群のシランに属する接着促進剤が特に推奨され、また、本発明の目的のため、より特定的に、(3−グリシドッシ(glicidossi)−トリメトキシシラン(trimetoxyisilane)のような官能基エポキシシランの群に属する化合物が推奨される。
【0051】
光重合化可能な混合体は、粘度を調節し且つ噴霧施工、金属ブレード施工、スピナー施工(フォトレジスト技術にて好まれる)のような施工過程を通じて基層への堆積を促進させるため、有機系溶媒を保持することができる。
【0052】
溶媒は、選ばれた施工方法の成分、混合体及び機能と適合可能なものから選ばれる。特に、スピナー施工のため、溶媒は雰囲気温度にて過度に迅速に蒸発するのを回避し得るような蒸気圧力を有することが好ましい。この目的のため、特に推奨されるのは、20℃にて20kPa以下、好ましくは5kPa以下の圧力を有する溶媒である。
【0053】
本発明に従い、反射性基層に存在する非照射領域の望ましくない重合化を回避する目的のため、上述した光重合化可能な混合体に対し、塩基性添加剤、光重合化阻止剤が添加される。この光重合化阻止剤は、好ましくは、N,N−ジメチルアニリン;ピリジン;ヒドロキシルアミナ;2,6−ジメチルピイジン;イミダゾール;トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミン;ヒドラジン;4−ジメチルアミノピリジン;モルホリン;メチルアミン;エチルアミン;ジエチルアミン;トリエチルアミン;ピペリジンから選ばれる。
【0054】
望ましくは、塩基性添加剤は、三次元的構造体を形成するとき、幾何学的不規則性が存在しない最良の結果を得るため、多数の条件を考慮しなければならない。特に、
a)塩基性添加剤は、上述した組成中にて、また、全体として、存在するならば有機系溶媒中にて実質的に可溶性でなければならない。
【0055】
b)塩基性添加剤の共役酸の酸定数(pKa)は、5ないし11の範囲にあることが好ましい。
c)重合化過程の進行時、塩基性添加剤は、光線にて露光されなかった領域から露光された領域まで移行するのを回避するため、重合化可能な溶液中にて低可動性を備えなければならない。
【0056】
d)光重合化可能な溶液中に含まれた塩基性添加剤の量は、光開始剤の量よりも化学量論値的に少なく、添加剤は露光されなかった領域内にて反射した光線により発生された酸性種を中和させるのに十分であるが、何れの場合でも、重合化を促進するのに十分露光された領域内に酸性種が残留するのを許容するような態様にて行われるものとする。
【0057】
特に、光開始剤に対する添加剤の化学量論値の比は、好ましくは1:20ないし19:20の範囲、より好ましくは1:10ないし9:10の範囲とする。
更に、溶媒を除いて、溶液の重量に対する添加剤の重量比の濃度は0.05%ないし0.4%の範囲にあることが好ましい。
【0058】
より全体的には、金属水酸化物及びアンモニアのような無機質塩基物と相違して、第1アミン、第2アミン、又は好ましくは、第3アミンのような有機系塩基物は、本発明に従って、重合化阻止剤添加剤として使用するのに適していることが判明した。
【実施例1】
【0059】
この実施例は、塩基系添加剤を添加せずに製造したものであり、この場合、塩基系添加物が添加された3ないし6の実施例と比較するため掲げたものである。
ガラス容器内にて、1,2−エポキシ−4−(2−オシラニル(ossiranil))−シクロヘキサン及び2,2´−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの凝縮物から製造されたオリゴマー脂環式エポキシ化合物の81p/p、ビス(4−(ジフェニルソルフォニウム)フェニル)硫化物とビス(ヘキサフルオロアンチモン酸塩)と、ジフェニル((フェニルチオ)フェニル)ソルフォニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩との等モル混合体であるカチオン系光開始剤の3.5p/p、1,4−ビス(2−ヒドロキシエサフルオロプロピル(hydroxyesafluoropropyl))ベンゼンである鎖移動剤の15.5p/pをビス(2−メトキシエチル)エーテル中にて混合させた。
【0060】
また、混合体に対して、3−グリシドキシ−トリメトキシシランの8p/p及びダウコーニング(Dow Corning)ケイ素系添加剤No.57(ダウコーニングカンパニー)の0.002p/pを添加した。
【0061】
成分の混合は、24時間、トランドラ(trundler)内にて回転させて行った。
上述した混合体は、アルミニウム層から成る金属被覆が付与された領域を有する炭化ケイ素の基層に対し20秒間、2000回転数/分にてスピン被覆により施し、厚さ25μmの層が得られるようにした。
【0062】
混合体が堆積された基層は、水銀蒸気ランプから発生された紫外光線にて照射し、適宜なマスクをキャビティを含むパターンを画成し得るようその間に配置した。試料にて2.5J/cm2の全エネルギを照射した。
【0063】
金属被覆領域における基層の反射率は、約70ないし80%であると推定する一方、金属被覆無しの領域内の基層の反射率は40%以下であると評価した。
露光の終了時、キシレン及びメチルイソブチルシェトン(chetone)の混合体の1/1p/p内に3分間浸漬することにより、重合化されていない部分を除去した。
【0064】
得られたパターンの画成状態及び望ましくない残留物の存在又はその他を電子走査型顕微鏡(SEM)を使用して観察することにより評価した。
上述した手順によって混合体から得られた製品は、図2の顕微鏡写真にて示すように、露光する間、マスクによって被覆された領域内にて許容し得ない画成の特徴を実証し且つ、多量の重合系残留物が残った。
【0065】
図面を観察すると、反射金属部分36の局部側にて側壁14は望ましくない堆積物40を有することが分かり、光線の反射によって不当に発生された酸性種に起因する過剰な重合化は、特定の添加剤が欠如するため、阻止されなかったことが分かる。
【実施例2】
【0066】
この実施例も、塩基系添加剤を添加せずに具体化した。
混合体の組成及び調合程度は、実施例1に記載したものと同一であるが、この場合、その上に混合体が堆積された基層は、実施例1よりも少ないエネルギにて照射した。
【0067】
水銀蒸気ランプから発生された紫外光線を同様に使用し、2つのキャビティを含むパターンを画成する適宜なマスクをその間に配置したが、この場合、試料を0.8J/cm2の全エネルギにて照射した。
【0068】
露光の終了時、キシレン及びメチルイソブチルシェトンの混合体の1/1p/p内に3分間、浸漬することにより、重合化しなかった部分を除去した。
得られたパターンの画成状態及び望ましくない残留物の存在又はその他を電子走査型顕微鏡(SEM)を使用して観察することにより評価した。
【0069】
上述した手順によって混合体から得られた製品は、図7の顕微鏡写真にて示すように、露光する間、マスクによって被覆された領域内にて許容し得ない画成の特徴を実証し且つ依然として、多量の重合系残留物が残った。
【0070】
図7には、側壁14によって境が画成された構造層25に隣接して、2つの別個の金属被覆5a、5b(アルミニウムから成る)を有するキャビティ20−1が示されている。図面に示すように、金属被覆5bは、構造層25の下方を伸びる一方、金属被覆5aは、構造層25の境を画成する壁14から数10ミクロンにて停止する。
【0071】
図面を観察すると、重合系層25の下側に連続する金属被覆5bの局所にて、側壁14は、望ましくない堆積物40を有し、過剰な重合化であったことを示すことが分かる。他方、図7の左側にて、壁14は、金属被覆5aに相応して直線状のままであることが理解される。
【0072】
観察された過剰な重合化は、金属被覆5bの反射面の光線の反射により不当に発生された酸性種によって引き起こされ、特定の添加剤の欠如のため阻止されなかった一方、この現象は、金属被覆5a付近の重合層の隣接する部分にては生じなかったと考えられる。その理由は、この後者の金属被覆は、露光した領域の下方にて連続しないため、反射することができなかったからである。このことは、上述した実験状態下にて、光線の反射と関係した領域内にて数10μmに亙って伸びた過剰な重合化が生じた一方、反射が生じなかった領域では、重合化した残留材料で視覚可能な程度に除去されずに残ったものは何ら観察されなかったことを明確に実証した。
【0073】
このことから、我々は、観察された過剰な重合化は、例えば、光線にて露光されなかった領域内に酸性種が移行し又は拡散すること、又は精々、数10nmの程度の厚さ、すなわち、当該要素のスケールにて観察できない寸法の汚染物質が環境中に存在することといったことが原因ではないと確信する。
【実施例3】
【0074】
上記の実施例に従って得られた混合体に対し、光開始剤に対する化学量論値比が1:3.8にてトリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナから成る重合化阻止剤の塩基性添加剤を添加した。
【0075】
このようにして調合した混合体を実施例1に記載した過程と同一の条件下にて使用し、この場合、光重合化可能な層の反応性が小さいことを考慮して照射したエネルギを適宜に増加させた。得られた値は3.5J/cm2であった。
【0076】
この場合、図8に再現した、SEMにて観察された結果は優れたものであった。マスキングした領域内にて残留物は何ら観察されず、キャビティの側壁は、実質的に垂直であり且つ、底部壁が極めて反射性である場合でさえ、該底部壁に鋭角な端縁にて接続した。
【0077】
図8の顕微鏡写真には、2つの底部の金属被覆5a、5bにそれぞれ支承され、アルミニウム層から成る2つの矩形の形状のキャビティ20−2a、20−2bが平面図にて示されている。右側キャビティ20−20aにて、金属系被覆5aは数10ミクロンの距離だけ側壁14から分離している一方、左側キャビティ20−2bにて、金属被覆5bは側壁14の下方にて連続している。この顕微鏡写真において、金属被覆5bに相応する感得可能な相違点無しにて双方のキャビティにおける側壁14の幾何学的規則性を見ることができる。
【実施例4】
【0078】
実施例2に従って得られた混合体に対し、トリス−(2−ヒドロキシル−1−プロピル)アミナから成る重合化阻止剤の塩基性添加剤を光開始剤に対する化学量論値比が1:7.5にて添加した。
【0079】
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、1.2J/cm2であった。
【0080】
この場合にも、図9に示した、SEMに基づいて観察された結果は優れたものであった。マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの垂直壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されていた。
【0081】
図9の顕微鏡写真は、実施例4にて形成したキャビティ20−3のほぼ4分の3の斜視図を示す、先の図7及び図8よりも拡大した図である。この場合、鋭角な端縁で且つ直角にて底部壁15に接続された、2つの隣接する壁14a、14bを形成する状態をより明確に見ることができる。更に、壁14a、14bは、底部壁15と同様に、何ら顕著な不良が存在しない実質的に平坦な面を示す。
【実施例5】
【0082】
実施例2に従って得られた混合体に対し、ピペリジンから成る、重合化阻止剤の塩基性添加剤を1:5の化学量論値比にて添加した。
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、1.8J/cm2であった。
【0083】
SEMによる観察(図10)の結果、マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの側壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されることが判明した。
【0084】
図10の顕微鏡写真は、実施例5にて形成したキャビティ20−4の斜視図を示すものであり、この場合、金属被覆5が壁14bの下方を伸びる領域内にて側壁の幾何学的規則性は明らかであり、特に、欠点は実質的に存在しないことを示す。
【実施例6】
【0085】
実施例2に従って得られた混合体に対し、4−ジメチルアミノピリジンから成る、重合化阻止剤の塩基性添加剤を1:4の化学量論値比にて添加した。
この混合体に対し、光重合化可能な層の反応性の減少を考慮しつつ、照射されるエネルギを適宜に増大させ得るよう注意して、実施例2にて説明した過程を実行した。得られた値は、2.5J/cm2であった。
【0086】
SEMによる観察(図11)の結果、マスキングした領域内にて何らの残留物も観察されず、キャビティの側壁は、垂直であり、また、底部壁が極めて反射性である場合であっても、該底部壁に鋭角な端縁にて接続されることが判明した。
【0087】
図11の顕微鏡写真は、キャビティ20−5の斜視図を示すものであり、この場合、鋭角な端縁にて及び直角に底部壁15に接続された2つの隣接する壁14a、14bを形成する状態を明確に見ることができる。更に、壁14a、14bは、底部壁15と同様に、何ら顕著な不良が存在しない実質的に平坦な面を示す。
【0088】
上記の説明は、ネガティブフォトポリマーの光重合化によって得られる三次元的構造体を構造層内に形成し、この構造体は、光線にて照射された領域内にて重合化され、従って影になった領域内にて可溶性のままであり、溶媒によって除去することが可能である方法に関する。
【0089】
しかし、本発明に従った方法は、ポジティブフォトポリマーにも適用可能であり、この場合、光ポリマーは、最初に重合化されて、光線によって照射された領域内にて可溶性となり、従って、照射した領域内にて溶媒によって除去することができる。上述した型式の基層にて使用されるならば、これらのフォトポリマーにて反射現象に起因する欠陥が生じる可能性がある。ポジティブフォトポリマーにおいて、塩基性阻止剤の化合物が存在しないとき、マスクの下方にて反射された光線は、得られた構造体層内にて望ましくない空隙の形態をとる不必要な溶解物を生じさせるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】軸測投影図にて見た、x−z面に対し平行な断面としたモノシリックインクジェットプリントヘッドの概略図である。
【図2】先行技術にて既知の方法に従って形成された、三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図3】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図4】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図5】阻止作用が本発明に従って実行される要素を示す概略図である。
【図6】阻止作用が本発明に従って実行される様子を示す概略図である。
【図7】先行技術にて既知の方法に従って形成された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図8】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図9】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図10】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【図11】本発明の方法の異なる例に従って製造された三次元的構造体の顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットプリントヘッド用の三次元的構造体であって、少なくとも部分反射性の底部壁を有する基層に形成され、また、前記底部壁に隣接する少なくとも1つの側壁を備える、前記三次元的構造体をフォトポリマーの構造層にて形成するフォトリソグラフィック法において、
光開始剤によって発生された酸性種の完全な中和化に相応する化学量論値以下の量にてモノマー又はオリゴマー、光開始剤及び重合化阻止剤塩基性化合物を備える光重合化可能な層を前記基層に堆積させるステップと、
前記マスキングによって保護された領域及び前記マスキングによって保護されない領域を画成し、前記三次元的構造体を形成することを意図する前記層をマスキングするステップと、
前記マスキングによって保護されない前記領域内にて前記溶液の重合化を促進するのに適した酸性種を発生させるべく紫外(UV)光線にて照射するステップと、
前記光線の一部分は、マスキングによって保護された前記領域の内部にて前記反射部分によって反射され、不要な酸性種は、前記反射した光線のため、前記光線の部分に相応する量にて発生され、
前記阻止剤の塩基性化合物によって前記不要な酸性種を中和化するステップと、
前記重合化されなかった光重合化可能な溶液を前記マスキングにより保護された前記領域から除去するステップとを備える、フォトリソグラフィック法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ヒドロキシルアミナ、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、モルホリン、ヒドラジン、ピペリジン、トリイソプロパノールアミナ、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンから選ばれる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナを備える、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、ピペリジンを備える、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、4−ジメチルアミノピリジンを備える、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの項に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、5ないし11の範囲である共役酸の酸定数(pKa)を有する、方法。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つの項に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、前記溶媒を除いて、前記重合化可能な溶液の重量に関し、重量比にて0.05%ないし0.4%の範囲の濃度にて前記重合化可能な溶液中に存在する、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、前記光開始剤に対する前記重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:10ないし9:10の範囲にある、方法。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、前記光開始剤に対する前記重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:8ないし3:8の範囲にある、方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1つの項に記載の方法において、前記反射部分は、アルミニウムのトラッキングから成る、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記三次元的構造体は、反射部分を備える底部壁を有する少なくとも20μmの側部の少なくとも1つのキャビティを備える、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記三次元的構造体は、少なくとも5μmの厚さを有する、方法。
【請求項13】
請求項1ないし12の1つ又は1つ以上の項に記載の方法により製造されたインクジェットプリントヘッド。
【請求項1】
インクジェットプリントヘッド用の三次元的構造体であって、少なくとも部分反射性の底部壁を有する基層に形成され、また、前記底部壁に隣接する少なくとも1つの側壁を備える、前記三次元的構造体をフォトポリマーの構造層にて形成するフォトリソグラフィック法において、
光開始剤によって発生された酸性種の完全な中和化に相応する化学量論値以下の量にてモノマー又はオリゴマー、光開始剤及び重合化阻止剤塩基性化合物を備える光重合化可能な層を前記基層に堆積させるステップと、
前記マスキングによって保護された領域及び前記マスキングによって保護されない領域を画成し、前記三次元的構造体を形成することを意図する前記層をマスキングするステップと、
前記マスキングによって保護されない前記領域内にて前記溶液の重合化を促進するのに適した酸性種を発生させるべく紫外(UV)光線にて照射するステップと、
前記光線の一部分は、マスキングによって保護された前記領域の内部にて前記反射部分によって反射され、不要な酸性種は、前記反射した光線のため、前記光線の部分に相応する量にて発生され、
前記阻止剤の塩基性化合物によって前記不要な酸性種を中和化するステップと、
前記重合化されなかった光重合化可能な溶液を前記マスキングにより保護された前記領域から除去するステップとを備える、フォトリソグラフィック法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、ヒドロキシルアミナ、2,6−ジメチルピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、イミダゾール、モルホリン、ヒドラジン、ピペリジン、トリイソプロパノールアミナ、メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンから選ばれる、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、トリス−(2−ヒドロキシ−1−プロピル)アミナを備える、方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、ピペリジンを備える、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、4−ジメチルアミノピリジンを備える、方法。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか1つの項に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、5ないし11の範囲である共役酸の酸定数(pKa)を有する、方法。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか1つの項に記載の方法において、前記重合化阻止剤は、前記溶媒を除いて、前記重合化可能な溶液の重量に関し、重量比にて0.05%ないし0.4%の範囲の濃度にて前記重合化可能な溶液中に存在する、方法。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、前記光開始剤に対する前記重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:10ないし9:10の範囲にある、方法。
【請求項9】
請求項1ないし7の何れか1つの項に記載の方法において、前記光開始剤に対する前記重合化阻止剤の化学量論値の比は、1:8ないし3:8の範囲にある、方法。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか1つの項に記載の方法において、前記反射部分は、アルミニウムのトラッキングから成る、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記三次元的構造体は、反射部分を備える底部壁を有する少なくとも20μmの側部の少なくとも1つのキャビティを備える、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記三次元的構造体は、少なくとも5μmの厚さを有する、方法。
【請求項13】
請求項1ないし12の1つ又は1つ以上の項に記載の方法により製造されたインクジェットプリントヘッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−525220(P2008−525220A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547796(P2007−547796)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000718
【国際公開番号】WO2006/067814
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503148270)テレコム・イタリア・エッセ・ピー・アー (87)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【国際出願番号】PCT/IT2004/000718
【国際公開番号】WO2006/067814
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(503148270)テレコム・イタリア・エッセ・ピー・アー (87)
【Fターム(参考)】
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