説明

インクジェットヘッドおよびその製造方法

【課題】圧電基板の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定するインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】ヘッドチップ10は、複数の第1個別インク溝31、複数の第2個別インク溝32および分離溝14を設けた圧電基板1を含む。このため、圧電基板1上にダイシングマシンにより溝加工を行うだけで、第1個別インク溝31を含む第1ヘッド10aと、第2個別インク溝32を含む第2ヘッド10bとが、1枚の圧電基板1上に形成された構成を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばプリンタなどに用いられるインクジェットヘッド、および、このインクジェットヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プリンタにおいては、インパクト印字装置に代わって、カラー化、多階調化に対応しやすいインクジェット方式などのノンインパクト印字装置が急速に普及している。これに用いるインク噴射装置としてのインクジェットヘッドとしては、特に、印字に必要なインク滴のみを噴射するというドロップ・オン・デマンド型が、噴射効率の良さ、低コスト化の容易さなどから注目されている。ドロップ・オン・デマンド型としては、カイザー(Kyser)方式やサーマルジェット方式が主流となっている。
【0003】
しかし、カイザー方式は、小型化が困難で高密度化に不向きであるという欠点を有していた。また、サーマルジェット方式は、高密度化には適しているものの、ヒータでインクを加熱してインク内にバブル(泡)を生じさせて、そのバブルのエネルギーを利用して噴射させる方式であるため、インクの耐熱性が要求され、また、ヒータの長寿命化も困難であり、エネルギー効率が悪いため、消費電力も大きくなるという問題を有していた。
【0004】
このような各方式の欠点を解決するものとして、圧電材料のシェアモード変形を利用したインクジェット方式が提案されている。この方式は、圧電材料からなるインクチャンネルの壁(以下、「チャンネル壁」という。)の両側面に形成した電極を用いて、圧電材料の分極方向と直交する方向に電界を生じさせることで、シェアモードでチャンネル壁を変形させ、その際に生じる圧力波変動を利用してインク滴を吐出するものであり、ノズルの高密度化、低消費電力化、高駆動周波数化に適している。
【0005】
最近では、このシェアモード変形を利用したインクジェットヘッドで、以下のような構造も提案されている。
【0006】
これらのインクジェットヘッド構造としては、圧電基板の上面に後にインク室となる両端開口の複数の流路溝部を平行に設け、圧電基板の流路溝部形成面にノズル孔を形成したカバープレートをかぶせて固着し、これらの流路溝部を閉鎖してインク流路作製する。圧電基板の両側部には、複数の流路溝部の両開口端に連通する共通インク室部を備えたマニホールド部材がそれぞれ固着してありインク流路の両開口端に設けてある共通インク室から流路溝部の中央部に設けてあるノズルにインクを供給する。
【0007】
以上の構成にすることにより、吐出されたインクの補充を迅速化することができ、ノズルの高密度化を行うことができる。また、ノズル孔は流路溝部の中央部に設けており、流路溝部を構成しているチャンネル壁を変形させその際に生じる圧力波変動を利用してインク滴を吐出する構成となるため、従来のシェアモード型インクジェットヘッドの2倍のチャンネル壁によりインク滴を吐出させることが可能であり、このためチャンネル壁の変形が小さくても吐出可能となり、より低消費電力化が可能となる。
【0008】
このシェアモード変形を利用したインクジェットヘッドを産業用途に利用することが盛んに行われるようになり始めている。たとえば、インクとして導電材料を吐出させることによって配線を描画したり、R,G,Bの各色のインクを吐出させることによってカラーフィルタを作製したり、熱硬化性または紫外線(UV)硬化性のインクを吐出させることによって、マイクロレンズやスペーサなどのような3次元構造物を作製したり、といった応用が進められている。
【0009】
産業用途においては特に、指定されたアドレスに規定量の液滴を着弾させることが要求され、着弾精度、液滴量のコントロールを厳しく要求される。したがって、1つのインクジェットヘッドの中において、本来吐出可能であるべきインクチャンネルが何らかの障害によって吐出不可能となってしまうことは、それが民生用途では問題にならないレベルの発生率であっても、産業用途としてインクジェットヘッドを利用する際には重大な問題となる。
【0010】
着弾精度としては、装置のステージ精度を含めた装置上でのトータルの着弾精度を副走査方向で±10μm程度が要求され、インクジェットヘッド単体では半分の精度である副走査方向で±5μm程度が要求されている。なお、主走査方向については、吐出タイミングを調整することにより装置上で±10μmを達成することが可能である。
【0011】
また、産業用途においては、更なるノズルの高密度化が要求されている。これに対してインクジェットヘッドを2列に並べ、ノズル孔ピッチを半ピッチずらして高密度化を行うことも検討されているが、2列にならべた場合、相対位置誤差が必ず生じるため、2列ヘッドでの着弾精度、副走査方向で±5μmを満足することができない。
【0012】
更に、インクジェットヘッドを2列に並べる際に、圧電基板上で直近のインクジェットヘッドを2列に並べる場合と、圧電基板自体が異なる基板から選んだインクジェットヘッドを2列に並べた場合とでは、圧電特性が異なり、駆動電圧バラツキ、吐出速度バラツキを生じる恐れがある。
【0013】
そこで、2列のインクジェットヘッドの相対位置誤差を無くす手段としては、2列のインクジェットヘッドに対して1枚のノズルプレートを接着することで相対位置誤差をキャンセルすることができる。
【0014】
特表2000-512233号公報に記載のインクジェットヘッドは、基板の全長にわたって伸びている1つのノズル板内に形成された2列のノズルを持っており、対応する2列のボディを基板上に実装した後、ベースを取り付けた構造となっている。
【0015】
このインクジェットヘッドは、ノズル孔である開口部が形成された基板に2列のボディを実装することで2列ヘッド間の相対位置誤差をキャンセルしている。
【0016】
しかしながら、このインクジェットヘッドは、圧電ボディと駆動チップが基板上に実装された構成となっており、インクジェットヘッド幅が大きくなっている。
【0017】
このヘッドを使用して例えば、R,G,Bの各色のインクを吐出させる装置を作製した場合、ヘッド幅方向に上記2列ヘッドを3つ並べ、R,G,Bインクを吐出させるが、インクジェットヘッド幅が大きいと、ヘッド部、または着弾基板の走査距離が大きくなり、往復印刷では特にロスが大きい。
【0018】
インクジェットヘッドは、上記のように2列ヘッドを複数個使用した用途が多く、この場合、ヘッド幅方向をいかに小さくすることができるかが走査距離を小さくでき、産業用途におけるタクト短縮に貢献できる。
【0019】
特開2009−113501号公報に記載のインクジェットヘッドは、絶縁性の基板本体の一方向側に基準方向に延びる圧電セラミックを埋め込んだ基板を使用し、溝を基準方向と直交する方向から所定角度傾斜させた構造である。溝を傾斜させることによりノズル孔ピッチを半分のピッチにすることが可能となり、高密度印刷が可能となる。
【0020】
しかしながら、このインクジェットヘッドは基板に形成された溝の側壁の一部を圧電セラミクスで形成している構成となっているため、吐出性能および信頼性に課題がある。
【0021】
このインクジェットヘッドの側壁のインク吐出に寄与する領域は圧電セラミクスであるが、それ以外の側壁領域は絶縁性のセラミクス等で構成されている。したがって、側壁の一部である圧電セラミクスが、インクを吐出させるために変形する場合、側壁の圧電セラミクスの両端は絶縁性のセラミクス等に接着されているため、変形を阻害されるので、インクの吐出効率が劣化する。
【0022】
また、絶縁性のセラミクス等に圧電セラミクスを接着している場合、接着剤の厚みバラツキによっても圧電セラミクスの変形バラツキに影響を及ぼすことから、チャンネルごとに吐出特性がばらつく事が予想される。
【0023】
さらに、溝を加工する場合、接着剤部と圧電セラミクスと絶縁性のセラミクスとでは加工性が異なることにより、段差が生じる場合があり、この段差により電極形成時に導通が得られない場合があり、信頼性に課題を有している。
【0024】
このインクジェットヘッドのインク吐出に寄与する領域は、圧電セラミックで構成された領域であり、インク吐出に寄与しない絶縁性のセラミクス等で構成されている基板本体の幅が大きい。
【0025】
このヘッドを使用して例えば、R,G,Bの各色のインクを吐出させる装置を作製した場合、ヘッド幅方向に上記2列ヘッドを3つ並べ、R,G,Bインクを吐出させるが、インクジェットヘッド幅が大きいと、ヘッド部、または着弾基板の走査距離が大きくなり、往復印刷では特にロスが大きい。
【0026】
インクジェットヘッドを産業用途に使用する場合に重要視されるのは、コストであり、タクトタイムである。タクトタイムを短縮するためには、ステージ速度の向上、吐出周波数の向上、ヘッド部、または着弾基板の空走距離の短縮等が考えられ、ヘッドの搭載列が増加するほどインクジェットヘッド幅の影響が大きいためインクジェットヘッド幅を可能な限り小さくすることが望ましい。
【0027】
したがって、高密度化されたノズル配列であって、着弾精度が良く、インクジェット幅の小さいことが産業用途へは求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特表2000-512233号公報
【特許文献2】特開2009−113501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
そこで、この発明の課題は、圧電基板の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定するインクジェットヘッド、および、このインクジェットヘッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記課題を解決するため、この発明のインクジェットヘッドは、
複数の第1個別インク溝、複数の第2個別インク溝および分離溝を設けた圧電基板を含むヘッドチップと、
上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝および上記分離溝を覆うように上記ヘッドチップに配置されると共に、少なくとも一つの上記第1個別インク溝と少なくとも一つの上記第2個別インク溝とに連通するノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
上記複数の第1個別インク溝は、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にX方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列され、
上記複数の第2個別インク溝は、上記複数の第1個別インク溝のX方向一方側に位置し、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にY方向に互いに間隔をあけて配列され、
上記分離溝は、Y方向に延在すると共に、上記複数の第1個別インク溝と上記複数の第2個別インク溝との間に位置して、上記複数の第1個別インク溝のそれぞれのX方向一方側の開口部と上記複数の第2個別インク溝のそれぞれのX方向他方側の開口部とに連通し、
上記複数の第1個別インク溝のX方向他方側の開口部、上記複数の第2個別インク溝のX方向一方側の開口部、および、上記分離溝は、それぞれ、インク流路に連通していることを特徴としている。
【0031】
この発明のインクジェットヘッドによれば、上記ヘッドチップは、上記複数の第1個別インク溝、上記複数の第2個別インク溝および上記分離溝を設けた圧電基板を含むので、圧電基板上にダイシングマシンにより溝加工を行うだけで、第1個別インク溝を含む第1ヘッドと、第2個別インク溝を含む第2ヘッドとが、1枚の圧電基板上に形成された構成を得ることができる。
【0032】
このように、1枚の圧電基板上に第1ヘッドおよび第2ヘッドを形成しているため、圧電基板を他の基板に接着したりする必要がなく、圧電基板の変形を阻害する部分がない。このため、吐出特性が安定し、着弾精度、吐出量が安定する。
【0033】
したがって、圧電基板の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定する。
【0034】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、
上記ヘッドチップに取り付けられるマニホールド部材を備え、
上記マニホールド部材は、上記複数の第1個別インク溝のX方向他方側の開口部に連通する第1共通インク溝と、上記複数の第2個別インク溝のX方向一方側の開口部に連通する第2共通インク溝とを有する。
【0035】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記マニホールド部材は、上記複数の第1個別インク溝に連通する第1共通インク溝と、上記複数の第2個別インク溝に連通する第2共通インク溝とを有するので、圧電基板上に形成されているのは、第1ヘッドおよび第2ヘッドを構成する第1、第2個別インク溝および分離溝だけであり、いわばインクの吐出に寄与する領域のみで構成されており、この圧電基板の両端面に、第1、第2共通インク溝を形成したマニホールド部材を接着することにより、圧電基板に対して高密度にインクジェットヘッドを形成することができる。また、第1、第2共通インク溝を形成したマニホールド部材は、インクジェットヘッドの熱膨張率が近いほうが良く、フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック等を使用した成型により形成することが可能となり、コストダウンに貢献できる。
【0036】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、
上記分離溝は、Y方向の両端が開口し、
上記マニホールド部材は、上記分離溝のY方向一方側の開口部に連通する第3共通インク溝と、上記分離溝のY方向他方側の開口部に連通する第4共通インク溝とを有する。
【0037】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記分離溝は、Y方向の両端が開口し、上記マニホールド部材は、上記分離溝に連通する第3共通インク溝と、上記分離溝に連通する第4共通インク溝とを有するので、分離溝を、第1ヘッド(第1個別インク溝)および第2ヘッド(第2個別インク溝)に対してインクを供給または排出する共通インク室とできる。また、分離溝の幅も簡単に変更することができる。
【0038】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記ノズルプレートは、上記ヘッドチップと上記マニホールド部材とに跨るように配置され、上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝、上記第1共通インク溝および上記第2共通インク溝を覆って、上記第1個別インク溝と共に第1個別インク室を定義し、上記第2個別インク溝と共に第2個別インク室を定義し、上記第1共通インク溝と共に第1共通インク室を定義し、上記第2共通インク溝と共に第2共通インク室を定義する。
【0039】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記ノズルプレートは、上記ヘッドチップと上記マニホールド部材とに跨るように配置されているので、2列のヘッドに対して1枚のノズルプレートを接着することで、第1ヘッドと第2ヘッドとの間の相対位置誤差をキャンセルすることができる。すなわち、第1ヘッドおよび第2ヘッド間の相対位置は、1枚のノズルプレートのノズル孔の位置精度に依存することになるが、ノズル孔はレーザ加工により形成するため、ノズル孔の位置精度は、サブミクロンレベルの位置精度とできて、相対位置の誤差が問題にはならない。
【0040】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記分離溝の深さは、上記第1個別インク溝の深さおよび上記第2個別インク溝の深さよりも、深い。
【0041】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記分離溝の深さは、上記第1個別インク溝の深さおよび上記第2個別インク溝の深さよりも、深いので、分離溝をダイシングマシンで加工する場合、第1個別インク溝および第2個別インク溝の内面に設けた電極を確実に分離することができる。
【0042】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記第1個別インク溝および上記第2個別インク溝の内面に電極が設けられ、この電極は、上記圧電基板のX方向の両端面に導出している。
【0043】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、個別インク溝の内面に設けられた電極は、上記圧電基板のX方向の両端面に導出しているので、圧電基板を3次元的に利用して電極を設けた構成となる。電極のために圧電基板の表面部分を利用した2次元的な電極導出を行う必要がなく、圧電基板に対して高密度に個別インク溝を形成できる。
【0044】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、上記電極における上記圧電基板の両端面に導出している部分に接続される配線基板を有する。
【0045】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記配線基板は、上記電極における上記圧電基板の両端面に導出している部分に接続されるので、配線基板を、圧電基板の厚さ方向に配置することが可能となる。このため、ヘッド幅を小さくすることが可能となりヘッド、または、着弾基板の走査距離を小さくすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0046】
また、一実施形態のインクジェットヘッドでは、X方向およびY方向を含む平面において、上記第1個別インク溝および上記第2個別インク溝が延在するX方向は、上記分離溝が延在するY方向に直交する方向に対して、一定角度傾いている。
【0047】
この実施形態のインクジェットヘッドによれば、上記第1個別インク溝および上記第2個別インク溝が延在するX方向は、上記分離溝が延在するY方向に直交する方向に対して、一定角度傾いているので、インクジェットヘッドを回転させずに、吐出ピッチを高密度化できる。また、ヘッド幅は小さいままであるため、ヘッド、または、着弾基板の走査距離を小さくすることができ、タクトタイムを短縮することができる。また、メンテナンス領域についてもインクジェットヘッド自体を回転させる必要がないため、コンパクトに配置可能であり、装置の小型化へ貢献することが可能である。
【0048】
これに対して、通常のインクジェットヘッドでは、吐出ピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッドを一定角度回転させて、対応する必要がある。そして、インクジェットヘッドを一定角度回転させることは、実質上ヘッド幅が増加したのと同じとなり、ヘッド、または、着弾基板の走査距離が大きくなる。
【0049】
また、この発明のインクジェットヘッドの製造方法は、
圧電基板に、X方向に延在しX方向の両端が開口する初期溝を、X方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて複数形成する工程と、
上記初期溝の内面に電極としての導電体膜を形成する工程と、
上記圧電基板に、Y方向に延在しY方向の両端が開口する分離溝を、上記初期溝に交差するように上記初期溝よりも深く形成して、上記初期溝を、上記分離溝を中心として、第1個別インク溝と第2個別インク溝とに分離する工程と、
上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝および上記分離溝を覆うように上記圧電基板にノズルプレートを配置して、このノズルプレートのノズル孔を少なくとも一つの上記第1個別インク溝と少なくとも一つの上記第2個別インク溝とに連通する工程と
を備えることを特徴としている。
【0050】
この発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記圧電基板に上記分離溝を上記初期溝よりも深く形成して、上記初期溝を上記分離溝を中心として第1個別インク溝と第2個別インク溝とに分離するので、従来通りのプロセスである圧電基板への溝加工工程に、溝より深い分離溝の加工工程を加えることで、第1個別インク溝を含む第1ヘッドおよび第2個別インク溝を含む第2ヘッドを形成できる。
【0051】
また、分離溝もダイシングマシンで加工でき、分離溝の深さを初期溝の深さよりも深くしているため、第1個別インク溝の電極と第2個別インク溝の電極とを、確実に分離できる。
【0052】
さらに、ノズルプレートのノズル孔の形成において、ノズル孔形成用のマスクを変更するだけでよく、レーザ加工自体は、従来通りのプロセスで対応可能である。したがって、今までの加工プロセスを利用しながら、1枚の圧電基板に対して第1ヘッドおよび第2ヘッドをノズル孔の加工精度で形成することが可能であり、吐出特性が安定し、着弾精度、吐出量が安定するインクジェットヘッドを作製することが可能である。
【発明の効果】
【0053】
この発明のインクジェットヘッドによれば、上記ヘッドチップは、上記複数の第1個別インク溝、上記複数の第2個別インク溝および上記分離溝を設けた圧電基板を含むので、第1個別インク溝を含む第1ヘッドと、第2個別インク溝を含む第2ヘッドとが、1枚の圧電基板上に形成された構成を得ることができて、圧電基板の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定する。
【0054】
この発明のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記圧電基板に上記分離溝を上記初期溝よりも深く形成して、上記初期溝を上記分離溝を中心として第1個別インク溝と第2個別インク溝とに分離するので、第1個別インク溝を含む第1ヘッドと、第2個別インク溝を含む第2ヘッドとが、1枚の圧電基板上に形成された構成を得ることができて、圧電基板の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のインクジェットヘッドの第1実施形態を示す斜視図である。
【図2】インクジェットヘッドのノズルプレートを外した状態の斜視図である。
【図3】ウエハ状の圧電基板を示す斜視図である。
【図4】第1ヘッドと第2ヘッドとを圧電基板上に形成した状態を示す斜視図である。
【図5A】第1ヘッドと第2ヘッドとの間に分離溝を形成したヘッドチップの斜視図である。
【図5B】ヘッドチップの端面の拡大図である。
【図6】ヘッドチップに配線基板を接続した状態を示す斜視図である。
【図7】ヘッド保持部材にヘッドチップを搭載した状態の斜視図である。
【図8】ヘッド保持部材の斜視図である。
【図9】マニホールド部材の第2部分の斜視図である。
【図10】ノズルプレートの斜視図である。
【図11】本発明のインクジェットヘッドの第2実施形態を示すとともにヘッドチップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0057】
(第1の実施形態)
図1は、この発明のインクジェットヘッドの第1実施形態である斜視図を示す。図2は、インクジェットヘッドのノズルプレートを外した状態の斜視図を示す。このインクジェットヘッドは、例えばプリンタなどに用いられ、例えば液晶生産装置や太陽電池生産装置等の生産装置に利用される。
【0058】
図1と図2に示すように、このインクジェットヘッド25は、ヘッドチップ10と、ヘッドチップ10に配置されるノズルプレート21と、ヘッドチップ10に取り付けられるマニホールド部材11とを有する。
【0059】
上記ヘッドチップ10は、複数の第1個別インク溝31、複数の第2個別インク溝32および分離溝14を設けた圧電基板1を含む。
【0060】
上記複数の第1個別インク溝31は、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にX方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列される。上記複数の第2個別インク溝32は、複数の第1個別インク溝31のX方向一方側に位置し、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にY方向に互いに間隔をあけて配列される。ここで、X方向とY方向とは、互いに直交する。X方向およびY方向に直交する方向を、Z方向とする。
【0061】
上記第1個別インク溝31のX方向他方側の開口部は、圧電基板1のX方向他方側の端面8bに開口する。上記第2個別インク溝32のX方向一方側の開口部は、圧電基板1のX方向一方側の端面8aに開口する。
【0062】
上記分離溝14は、Y方向に延在すると共に、Y方向の両端が圧電基板1のY方向の両端面9a,9bに開口する。分離溝14は、複数の第1個別インク溝31と複数の第2個別インク溝32との間に位置して、複数の第1個別インク溝31のそれぞれのX方向一方側の開口部と複数の第2個別インク溝32のそれぞれのX方向他方側の開口部とに連通する。
【0063】
上記マニホールド部材11は、ヘッドチップ10に取り付けられる。マニホールド部材11は、複数の第1個別インク溝31のX方向他方側の開口部に連通する第1共通インク溝41と、複数の第2個別インク溝32のX方向一方側の開口部に連通する第2共通インク溝42と、分離溝14のY方向一方側の開口部に連通する第3共通インク溝43と、分離溝14のY方向他方側の開口部に連通する第4共通インク溝44とを有する。
【0064】
上記ノズルプレート21は、第1個別インク溝31、第2個別インク溝32および分離溝14を覆うようにヘッドチップ10に配置されると共に、各第1個別インク溝31と各第2個別インク溝32とに連通するノズル孔20を有する。
【0065】
上記ノズルプレート21は、ヘッドチップ10とマニホールド部材11とに跨るように配置され、第1個別インク溝31、第2個別インク溝32、第1共通インク溝41、第2共通インク溝42、第3共通インク溝43および第4共通インク溝44を覆って、第1個別インク溝31と共に第1個別インク室を定義し、第2個別インク溝32と共に第2個別インク室を定義し、第1共通インク溝41と共に第1共通インク室を定義し、第2共通インク溝42と共に第2共通インク室を定義し、第3共通インク溝43と共に第3共通インク室を定義し、第4共通インク溝44と共に第4共通インク室を定義する。
【0066】
上記第1共通インク溝41(第1共通インク室)および上記第2共通インク溝42(第2共通インク室)は、インクが供給されるインク流路を構成する。上記第3共通インク溝43(第3共通インク室)および上記第4共通インク溝44(第4共通インク室)は、インクが排出されるインク流路を構成する。そして、上記複数の第1個別インク溝31のX方向他方側の開口部、上記複数の第2個別インク溝32のX方向一方側の開口部、および、上記分離溝14は、それぞれ、インク流路に連通する。
【0067】
上記ヘッドチップ10は、第1個別インク溝31を含む第1ヘッド10aと、第2個別インク溝32を含む第2ヘッド10bとを、1枚の圧電基板1上に形成した構成である。ヘッドチップ10の裏面は、ヘッド保持部材4上に接着されている。
【0068】
上記複数の第1個別インク溝31および上記複数の第2個別インク溝32は、それぞれ、隔壁3によって互いに隔てられている。第1個別インク溝31および第2個別インク溝32の内面には、電極が設けられている。
【0069】
上記分離溝14の深さは、上記第1個別インク溝31の深さおよび上記第2個別インク溝32の深さよりも、深い。したがって、分離溝14をダイシングマシンで加工する場合、第1個別インク溝31および第2個別インク溝32の内面に設けた電極を確実に分離することができる。
【0070】
上記マニホールド部材11は、第1部分11aと第2部分11bとを有する。第1部分11aおよび第2部分11bは、それぞれ、略L字状に形成され、ヘッドチップ10の外周を覆うように配置されている。
【0071】
上記第1部分11aには、第1共通インク溝41および第3共通インク溝43が設けられ、第1共通インク溝41の底面には、インクを供給するための供給孔5cを形成し、第3共通インク溝43の底面には、インクを排出するための排出孔(図示せず)を形成している。
【0072】
上記第2部分11bには、第2共通インク溝42および第4共通インク溝44が設けられ、第2共通インク溝42の底面には、インクを供給するための供給孔6cを形成し、第4共通インク溝44の底面には、インクを排出するための排出孔(図示せず)を形成している。
【0073】
上記第3共通インク溝43および上記第4共通インク溝44の排出孔には、ニップル(図示せず)を介して、インクチューブ(図示せず)に接続されている。
【0074】
上記第1個別インク溝31および上記第2個別インク溝32の内面に設けられた電極8(図5B参照)は、圧電基板1のX方向の両端面8a,8bに導出している。つまり、圧電基板1を3次元的に利用して電極8を設けた構成となる。したがって、電極8のために圧電基板1の表面部分を利用した2次元的な電極導出を行う必要がなく、圧電基板1に対して高密度に個別インク溝を形成できる。
【0075】
上記電極8における圧電基板1の両端面8a,8bに導出している導出部分8a(図5B参照)には、異方性導電フィルム(以下「ACF」という。)を介して、配線基板(外部引き出し用回路基板)24a,24bが接続されている。つまり、配線基板24a,24bを、圧電基板1の厚さ方向に配置することが可能となる。このため、ヘッド幅を小さくすることが可能となりヘッド、または、着弾基板の走査距離を小さくすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0076】
次に、インクの流れについて説明する。
【0077】
図2に示すように、(図示しない)第1のインクタンクからインクジェットヘッド25に供給されたインクは、インクチューブ(図示せず)を通り、ニップル(図示せず)から供給孔5c、6cを通過して、第1共通インク溝41および第2共通インク溝42へと流入する。
【0078】
上記第1共通インク溝41に至ったインクは、引き続き、ヘッドチップ10の第1ヘッド10aの複数の第1個別インク溝31のいずれかを通過し、分離溝14を通過して、第3共通インク溝43または第4共通インク溝44へと流れ込む。
【0079】
上記第2共通インク溝42に至ったインクは、ヘッドチップ10の第2ヘッド10bの複数の第2個別インク溝32のいずれかを通過し、分離溝14を通過して、第3共通インク溝43または第4共通インク溝44へと流れ込む。
【0080】
インクが第1、第2個別インク溝31,32を通過する際には、ノズル孔20に連通している第1、第2個別インク溝31,32のすべてが、インク流路として用いられる。さらに、第3共通インク溝43および第4共通インク溝44に至ったインクは、排出孔(図示せず)を通過してニップル(図示せず)からインクチューブ(図示せず)を通過して、図示しない第2のインクタンクへと排出される。
【0081】
上記インクジェットヘッド25の構成によれば、インクは、第1共通インク溝41および第2共通インク溝42から第3共通インク溝43および第4共通インク溝44へと移動する際に、第1個別インク溝31または第2個別インク溝32に分かれて流れる。
【0082】
複数の第1、第2個別インク溝31,32のうちノズル孔20に連通している第1、第2個別インク溝31,32を通ったインクの一部は、ノズル孔20から吐出されることによって消費されるが、第1、第2個別インク溝31,32を通ったインクのうちノズル孔20から吐出されなかったインクは、全て第3共通インク溝43または第4共通インク溝44へと円滑に流れる。
【0083】
したがって、インクを円滑に循環させることが可能となり、ノズル孔20の直近の空間である第1、第2個別インク溝31,32の内部においても通過するインク流れを積極的に形成することが可能となる。このことにより、インク中に微粒子が含まれている場合であってもその微粒子が沈殿または浮遊することが抑制され、吐出時の液滴中に含まれる微粒子数を安定させることができる。なお、インクの流れは上述の向きに限定されるものではなく、逆向きであってもよい。
【0084】
次に、インクジェットヘッドの製造方法について説明する。
【0085】
まず、図3に示すように、分極方向の異なる2枚のウエハ状の基板1a,1bを貼り合わせて、ウエハ状の圧電基板1を作成する。
【0086】
その後、圧電基板1に、X方向に延在しX方向の両端が開口する初期溝30を、X方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて複数形成する。一般的なダイシングマシンに使用されるダイシングを繰返し走行させて溝加工することによって、初期溝30を形成することができる。この1枚の圧電基板1は、後に分割されて、多数の圧電基板1となる。
【0087】
隣り合う初期溝30,30は、互いに平行に並ぶ複数の細長い隔壁3によって隔てられている。初期溝30は、所定の幅と深さを有する細長い溝であればよく、溝加工は一直線状に行われる。
【0088】
その後、溝加工を行ったウエハ状圧電基板1をダイシングブレード40で分割し、図4に示すように、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとが繋がったサイズの圧電基板1とする。続いて、初期溝30の内面に電極としての導電体膜を形成する。ここで、形成される電極は、インクジェットヘッド完成後に隔壁3をシェアモードで駆動させるための電極である。電極は、銅の膜であり、RF(Radio Frequency)マグネトロンスパッタ装置を用いて、スパッタリング法により成膜される。成膜により、電極は、隔壁3の両端面のみならず、隔壁3の上面、圧電基板1の端面および上面も覆うように形成される。したがって、第1ヘッド10aの端面8bおよび第2ヘッド10bの端面8aにも、導電体膜が形成される。
【0089】
そして、圧電基板1の上面に対してダイシングブレード40によって除去量が10μmになるように研削して、圧電基板1の上面を覆う不要な電極を除去する。このとき、各隔壁3の上面を覆っていた電極も同時に除去されるので、上から見た状態としては初期溝30ごとに電極が分離される。
【0090】
その後、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとの間の仮想線Dに沿ってダイシングブレード40を走行させ、図5Aに示すように、圧電基板1に、Y方向に延在しY方向の両端が開口する分離溝14を、初期溝30に交差するように初期溝30よりも深く形成して、初期溝30を、分離溝14を中心として、第1個別インク溝31と第2個別インク溝32とに分離する。
【0091】
分離溝14は、第1個別インク溝31および第2個別インク溝32の内面に成膜した電極としての導電体膜を分離するための役割と、第1個別インク溝31および第2個別インク溝32に供給されたインクを排出するための共通インク室の役割を担っている。このため、分離溝14は、少なくとも個別インク溝31,32よりも深く、かつ、インク循環させるために流路抵抗は、できるだけ小さいほうが望ましい。例えば、分離溝14の深さを0.8mmとし、分離溝14の幅を1mmとする。なお、分離溝14の深さ、幅は、これに限定されるものではなく、少なくとも個別インク溝31,32よりも深ければよく、幅に関しては、インクの流れを阻害しない範囲で自由である。
【0092】
続いて、第2ヘッド10bの端面8aが上向きになるように圧電基板1を固定し、図5Bに示すように、この端面8aの電極8における、隔壁3の中心線に対応する部分を、ダイシングブレード40によって、線状に研削除去する。このため、第2個別インク溝32の電極8に接続される導出部81は、隣り合う第2個別インク溝32,32において、除去部82によって分離される。なお、図5Bでは、分かりやすくするために、電極8(導出部81を含む)をハッチングにて示している。
【0093】
同様に、第1ヘッド10aの端面8bが上向きになるように圧電基板1を固定し、ダイシングブレード40によって、端面8bの隔壁3の中心線に対応する部分の電極8をそれぞれ線状に研削除去する。このため、第1個別インク溝31の電極8に接続される導出部81は、隣り合う第1個別インク溝31,31において、除去部82によって分離される。
【0094】
この時点で、第1、第2個別インク溝31,32内の電極は、それぞれ、完全に個別に電気的に分離された状態となる。端面8a、8bの第1、第2個別インク溝31,32に対応する部分では電極8が研削除去されておらず、残っている。この残った電極8が導出部81となる。このような除去方法以外に、レーザで端面8a、8bの隔壁3の中心線に対応する部分をそれぞれ線状にスキャンさせることで、電極8の除去加工を行うことも可能である。それ以外の方法として、フォトリソにより、エッチングを行う方法等が挙げられる。
【0095】
その後、図6に示すように、ヘッドチップ10の端面8a、8bの電極8(導出部81)に、ACF(図示せず)を介して、配線基板24a、24bを接続する。これにより、配線基板24a、24bを通じて、第1ヘッド10aの第1個別インク溝31の両側の隔壁3、および、第2ヘッド10bの第2個別インク溝32の両側の隔壁3に、画像データに基づいた電圧を印加することが可能となり、外部から第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10bのインクチャンネルを独立して駆動することが可能となる。
【0096】
ヘッドチップ10の端面、すなわち第1ヘッド10aの端面8bおよび第2ヘッド10bの端面8aには、後述するマニホールド部材11も接着固定されるため、電極8の導出部81に対して、配線基板24a、24bは、約1mm程度の接続幅で接続する必要がある。そして、配線基板24a、24bとヘッドチップ10の端面8a、8bとを接着剤で補強する。
【0097】
本発明では、電極8の導出部81がヘッドチップ10の端面8a、8bに形成されており、ヘッドチップ10の投影面積を増加させないため、インクジェットヘッド25は、インクを吐出させるために必要な駆動部分のみで構成することが可能となり、ヘッドチップ10の取れ数を最大にすることが可能となり、コストダウンに貢献できる。
【0098】
なお、配線基板24a、24bとの接続方法としては、上述のACF(図示せず)を用いた接続方法以外にも、配線基板24a、24bのリードを圧電基板1の端面8a、8bに直接接続する方法や、配線基板24a、24bのリードを圧電基板1の電極8の導出部81にワイヤボンディングする方法などがある。
【0099】
その後、圧電基板1の第1、第2個別インク溝31,32の内面に形成された電極8を保護するために、電極保護膜(図示せず)を約10μmの厚さで形成する。この電極保護膜は、その形成工程においては圧電基板1および配線基板24a、24bの露出するあらゆる表面に付着するため、付着させる必要のない配線基板24には予めマスキングテープなどでマスクすることによって、電極保護膜が付着しないようにしておく。
【0100】
配線基板24a、24bとヘッドチップ10の端面8a、8bを接着剤で補強しており、有機保護膜の成膜に伴う洗浄工程、成膜工程等では被成膜面を保持したりすると、ダストの付着や、汚染の問題があるため、被成膜面以外を保持して作業を行う必要があり、配線基板24a、24bを保持して作業を行う。しかし、配線基板24a、24bとヘッドチップ10の端面8a、8bとの接続幅が狭く、付着強度が弱いため、接続部分が剥離し、電気的な導通が得られなくなったり、接続抵抗のバラツキが生じたりする問題がある。そこで、接着剤による補強を行うことで、有機保護膜の成膜に伴う洗浄工程、成膜工程等に耐え得る付着強度を得ることができる。
【0101】
また、配線基板24a、24bを保持して作業を行うことで、ダストの付着や、汚染の問題を排除することができる。端面8a、8bと配線基板24a、24bとの接続部分も有機保護膜が付着するため、仮にこの接続部分にインクが付着しても、有機保護膜により、接続部分のショートが発生せず、安全面でも有利である。有機保護膜は、ヘッドチップ10表面や、配線基板24a、24b表面に付着するため、配線基板24a、24bの制御回路との接続電極部にマスキングを行うことで、有機保護膜の付着を防止する。
【0102】
その後、図7に示すように、ヘッドチップ10をヘッド保持部材4に接着する。このヘッド保持部材4は、図8に示すように、インクジェットヘッド25をプリンタや描画装置に搭載するための取り付け部26を有しており、この取り付け部26には、基準である(孔やピンなどの)位置決め部7を形成する。この位置決め部7により、インクジェットヘッド25のXY方向の位置決めを行っている。また、取り付け部26には、取り付け用ネジが通る貫通穴28を形成しており、プリンタや描画装置にネジ止めし、搭載する。
【0103】
ヘッドチップ10をヘッド保持部材4に接着する際に位置決め部7を基準にヘッドチップ10を位置決めすることで、インクジェットヘッド25をプリンタや描画装置に搭載後の位置決め部7に対するノズル孔20の位置を高精度に管理することができる。
【0104】
これにより、インク吐出後の着弾位置を予想することができ、指定アドレスに着弾できるように着弾位置補正をスムーズに行うことができる。また、インクジェットヘッド25の交換においても同様に位置決め部7に対するノズル孔20の位置を高精度に管理することができるため、インクジェットヘッド25の交換、着弾補正に時間がかからず、生産装置への応用においても生産ロスを最小限に抑えることができる。
【0105】
ヘッド保持部材4は、上述のように研削加工を行い精度向上を図るため、金属、セラミックス等で作製するのが望ましく、熱膨張率が圧電基板1に近い方がよい。また、価格的に安価なほうが望ましいことから、SUS410を選択している。
【0106】
ヘッド保持部材4の接着面4aに接着剤を塗布し、ヘッドチップ10の裏面と接着する。この際、位置決め部7を利用してヘッド保持部材4に対してヘッドチップ10を高精度に位置決めを行い接着することが可能である。
【0107】
その後、図2に示すように、ヘッドチップ10にマニホールド部材11を取り付ける。マニホールド部材11は、第1部分11aと第2部分11bとからなる2ピース構造となっている。第1部分11aと第2部分11bとは、同一形状である。
【0108】
ヘッドチップ10に対してマニホールド部材11を接着する場合、部品点数は少ないほど作業効率は良いが、本発明では、ヘッドチップ10を介して相対するように第1共通インク溝41および第2共通インク溝42を配置している。また、ヘッドチップ10の投影面積を増加させないため、電極8の導出部81をヘッドチップ10の端面8a,8bに形成しこの電極8の導出部81に対して配線基板24a,24bを接続している。この結果、マニホールド部材11を接着するときには配線基板24a、24bがヘッドチップ10の端面8a,8bに形成された状態となっており、配線基板24a、24bをかわすようにマニホールド部材11を取り付ける必要がある。このため、マニホールド部材11を第1部分11aおよび第2部分11bで構成し、第1部分11aに第1共通インク溝41および第3共通インク溝43を設け、第2部分11bに第2共通インク溝42および第4共通インク溝44を設けた構成にすることで、ヘッドチップ10の1端面ずつ、第1部分11aおよび第2部分11bをヘッドチップ10の裏面基準で位置合わせを行い、接着することにより、配線基板24a、24bをかわしながら接着を行うことができる。
【0109】
また、マニホールド部材11を2部品で構成したことで、第1部分11aの第1共通インク溝41および第2部分11bの第2共通インク溝42をヘッドチップ10の端面8a、8bに密着させて接着することができ、第1部分11aの第3共通インク溝43および第2部分11bの第4共通インク溝44をヘッドチップ10の端面9a、9bに密着させて接着することができる。このため、接着剤の厚さを可能な限り薄くして、接着することができるため、接着剤の伸縮に伴うヘッドチップ10への応力を抑え、安定した吐出特性を得ることができる。
【0110】
図2と図9に示すように、マニホールド部材11のノズルプレート接着面12に対して、圧電基板1の第1、第2個別インク溝31,32の深さよりも深い2mmの深さで、圧電基板1の第1、第2個別インク溝31,32の形成幅以上の段差部を設け、第1、第2共通インク溝41,42を形成する。この第1、第2共通インク溝41,42は、ヘッドチップ10の端面8a、8bと接着することで、ヘッドチップ10の両端に開口した複数の第1、第2個別インク溝31,32と連通する。
【0111】
また、圧電基板1の分離溝14の幅、分離溝14の深さ以上の段差部を設け、第3、第4共通インク溝43,44を形成する。この第3、第4共通インク溝43,44は、ヘッドチップ10の両端9a、9bに開口した分離溝14と連通している。
【0112】
マニホールド部材11とノズルプレート21との位置決めは、マニホールド部材11の位置調整部13を圧電基板1の裏面に当接させることで高さ方向の位置決めを行うことができる。
【0113】
接着剤は、エポキシ系の接着剤で、粘度が約1500cpのものを使用しており、ヘッドチップ10の端面8a、8b、9a、9bをマニホールド部材11で挟み込むように配置した部分に対して、ヘッドチップ10の裏面方向から接着剤を塗布すると、ヘッドチップ10の端面8a、8b、9a、9bとマニホールド部材11との間に毛細管力により接着剤が浸透していく。
【0114】
マニホールド部材11にはインクを供給するための供給孔5c、6cとインクを排出するための排出孔6dとを形成している。マニホールド部材11の裏面側において、供給孔5c、6cと排出孔6dとに、ニップル(図示せず)を介して、インクチューブ(図示せず)と接続されている。
【0115】
また、マニホールド部材11のヘッドチップ10の端面8a、8bに対向する部分には、側方から深さ0.25mmで、幅は配線基板24と同程度でザグリ加工を行なって、配線基板用凹部27を形成する。配線基板用凹部27により配線基板24a、24bの接続部分がインクと直接接触せず、インクによる配線基板24a、24bの溶解、溶出を防止する。
【0116】
マニホールド部材11は、厚さ5mmのPPS材料にチタン酸カリウムからなる繊維を混入させた材料で形成する。本材料を射出成型によりマニホールド部材11を形成することが可能である。
【0117】
チタン酸カリウムからなる繊維は、線径0.2〜0.6μm、長さ10〜20μmの微細な繊維であり、これをPPSに混入させることで熱膨張率を10×10−6/℃程度まで下げることが可能となり、熱膨張差による影響を抑えることが可能で、接着剤の剥離、部材のクラック等の問題を回避できる。また、フィラーサイズが小さく、成型時にフィラーが動きやすいため、フィラーがマニホールド部材11の形状から外側に突出することがなく、フィラーの脱落等の問題を生じないため、ヘッドチップ直近であるマニホールド部材11を作製してもインクに対して悪影響を及ぼさないことを確認している。
【0118】
その後、図1に示すように、ノズルプレート21を、ヘッドチップ10とマニホールド部材11とに跨るように配置する。ノズルプレート21により、第1個別インク溝31、第2個別インク溝32、第1共通インク溝41、第2共通インク溝42、第3共通インク溝43および第4共通インク溝44を覆って、第1個別インク溝31と共に第1個別インク室を定義し、第2個別インク溝32と共に第2個別インク室を定義し、第1共通インク溝41と共に第1共通インク室を定義し、第2共通インク溝42と共に第2共通インク室を定義し、第3共通インク溝43と共に第3共通インク室を定義し、第4共通インク溝44と共に第4共通インク室を定義する。ノズルプレート21のノズル孔20を、第1個別インク溝31と第2個別インク溝32とに連通させる。
【0119】
図1と図10に示すように、ノズルプレート21は、ポリイミドにより形成されており、ノズルプレート21表面には、予めインクに対して撥液性の薄膜をコーティングした状態でヘッドチップ10の第1、第2個別インク溝31,32の形成ピッチと同一になるようにエキシマレーザによりノズル孔20を加工する。ノズルプレート21の外形サイズは、ヘッドチップ10の長さと同等でヘッドチップ10とマニホールド部材11を足し合わせた幅程度に加工を行う。
【0120】
ヘッド保持部材4に接着されたヘッドチップ10に対してノズルプレート21を接着する際、まず、ヘッドチップ10に対して接着剤を転写する。接着剤は、ガラス基板上に接着剤を滴下し、スピンコートにより均一な接着剤層を得る。スピンコートの回転数、時間により所望の接着剤厚を調整することが可能である。そして、ガラス基板にコーティングされた接着剤層に対してヘッドチップ10をスタンプすることで、ヘッドチップ10の表面およびマニホールド部材11の表面に接着剤を転写する。この際、ガラス基板にコーティングされた接着剤層の約半分がヘッドチップ10の表面に転写される。ヘッドチップ10に形成された第1、第2個別インク溝31,32とノズルプレート21との相対位置を合わせて、接着を行う。以上の工程は、ICチップを基板上に搭載するボンダーマシンを利用し、位置決め精度±5μm程度の精度でノズルプレート21を接着することができる。
【0121】
以上の製造方法により、図1に示すようなインクジェットヘッド25を作製することが可能である。
【0122】
上記構成のインクジェットヘッド25によれば、上記ヘッドチップ10は、上記複数の第1個別インク溝31、上記複数の第2個別インク溝32および上記分離溝14を設けた圧電基板1を含むので、圧電基板1上にダイシングマシンにより溝加工を行うだけで、第1個別インク溝31を含む第1ヘッド10aと、第2個別インク溝32を含む第2ヘッド10bとが、1枚の圧電基板1上に形成された構成を得ることができる。
【0123】
このように、1枚の圧電基板1上に第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10bを形成しているため、圧電基板1を他の基板に接着したりする必要がなく、圧電基板1の変形を阻害する部分がない。また、ヘッド10a,10b間の相対位置は、これらのヘッド10a,10bに対して接着される1枚のノズルプレート21のノズル孔20の加工精度によって決まり、相対位置誤差をキャンセルすることができる。このため、吐出特性が安定し、着弾精度、吐出量が安定する。
【0124】
したがって、圧電基板1の圧電特性のバラツキを最小限に抑えることができ、駆動電圧バラツキや吐出速度バラツキが小さく、吐出特性が安定する。
【0125】
そして、指定されたアドレスに規定量の液滴を着弾させることが要求され、着弾精度、液滴量のコントロールを厳しく要求される産業用途に適したインクジェットヘッド25を作製することが可能である。また、インクジェットヘッド25の幅を可能な限り小さくすることができるため、装置上でのインクジェット部、または着弾基板の空走距離の短縮が可能となり、産業用途で最も重要なタクトタイム短縮に大きく貢献することができる。
【0126】
また、上記構成のインクジェットヘッド25によれば、上記マニホールド部材11は、上記複数の第1個別インク溝31に連通する第1共通インク溝41と、上記複数の第2個別インク溝32に連通する第2共通インク溝42とを有するので、圧電基板1上に形成されているのは、第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10bを構成する第1、第2個別インク溝31,32および分離溝14だけであり、いわばインクの吐出に寄与する領域のみで構成されており、この圧電基板1の両端面に、第1、第2共通インク溝41,42を形成したマニホールド部材11を接着することにより、圧電基板1に対して高密度にインクジェットヘッドを形成することができる。また、第1、第2共通インク溝41,42を形成したマニホールド部材11は、インクジェットヘッドの熱膨張率が近いほうが良く、フィラーを添加したエンジニアリングプラスチック等を使用した成型により形成することが可能となり、コストダウンに貢献できる。
【0127】
また、上記構成のインクジェットヘッド25によれば、上記分離溝14は、Y方向の両端が開口し、上記マニホールド部材11は、上記分離溝14に連通する第3共通インク溝43と、上記分離溝14に連通する第4共通インク溝44とを有するので、分離溝14を、第1ヘッド10a(第1個別インク溝31)および第2ヘッド10b(第2個別インク溝32)に対してインクを供給または排出する共通インク室とできる。また、分離溝14の幅も簡単に変更することができる。
【0128】
また、上記構成のインクジェットヘッド25によれば、上記ノズルプレート21は、上記ヘッドチップ10と上記マニホールド部材11とに跨るように配置されているので、2列のヘッドに対して1枚のノズルプレート21を接着することで、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとの間の相対位置誤差をキャンセルすることができる。すなわち、第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10b間の相対位置は、1枚のノズルプレート21のノズル孔20の位置精度に依存することになるが、ノズル孔20はレーザ加工により形成するため、ノズル孔20の位置精度は、サブミクロンレベルの位置精度とできて、相対位置の誤差が問題にはならない。
【0129】
また、上記構成のインクジェットヘッドの製造方法によれば、上記圧電基板1に上記分離溝14を上記初期溝30よりも深く形成して、上記初期溝30を上記分離溝14を中心として第1個別インク溝31と第2個別インク溝32とに分離するので、従来通りのプロセスである圧電基板1への初期溝30の溝加工工程に、この初期溝30より深い分離溝14の加工工程を加えることで、第1個別インク溝31を含む第1ヘッド10aおよび第2個別インク溝32を含む第2ヘッド10bを形成できる。
【0130】
また、分離溝14もダイシングマシンで加工でき、分離溝14の深さを初期溝30の深さよりも深くしているため、第1個別インク溝31の電極8と第2個別インク溝32の電極8とを、確実に分離できる。
【0131】
さらに、ノズルプレート21のノズル孔20の形成において、ノズル孔20形成用のマスクを変更するだけでよく、レーザ加工自体は、従来通りのプロセスで対応可能である。したがって、今までの加工プロセスを利用しながら、1枚の圧電基板1に対して第1ヘッド10aおよび第2ヘッド10bをノズル孔20の加工精度で形成することが可能であり、吐出特性が安定し、着弾精度、吐出量が安定するインクジェットヘッドを作製することが可能である。
【0132】
(第2の実施形態)
図11は、この発明のインクジェットヘッドの第2の実施形態を示している。上記第1の実施形態(図5A)と相違する点を説明すると、この第2の実施形態では、第1、第2個別インク溝の分離溝に対する傾きが相違する。なお、この第2の実施形態において、上記第1の実施形態と同一の部分には、同一の参照番号を付して、詳細な説明を省略する。
【0133】
図11に示すヘッドチップ10Aでは、X方向およびY方向を含む平面において、第1個別インク溝31Aおよび第2個別インク溝32Aが延在するX方向は、分離溝14が延在するY方向に直交する方向に対して、一定角度θ傾いている。
【0134】
この第1、第2個別インク溝31A,32Aは、圧電基板1の端面8aに対し、角度θだけ斜め方向に溝加工を行なうことによって形成される。この角度θは、ノズルプレート21の接着を行ったときのノズル孔20のピッチが、第1ヘッド10aと第2ヘッド10bとの間で半ピッチずれるような角度に設定される。
【0135】
上記構成のインクジェットヘッドによれば、第1個別インク溝31Aおよび第2個別インク溝32Aが延在するX方向は、分離溝14が延在するY方向に直交する方向に対して、一定角度θ傾いているので、インクジェットヘッドを回転させずに、吐出ピッチを高密度化できる。また、ヘッド幅は小さいままであるため、ヘッド、または、着弾基板の走査距離を小さくすることができ、タクトタイムを短縮することができる。
【0136】
また、メンテナンス領域についてもインクジェットヘッド自体を回転させる必要がないため、コンパクトに配置可能であり、装置の小型化へ貢献することが可能である。
【0137】
これに対して、通常のインクジェットヘッドでは、吐出ピッチを高密度化するためには、インクジェットヘッドを一定角度回転させて、ノズル孔のピッチを半ピッチずらして対応する必要がある。そして、インクジェットヘッドを一定角度回転させることは、実質上ヘッド幅が増加したのと同じとなり、ヘッド、または、着弾基板の走査距離が大きくなる。
【0138】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記第1、上記第2の実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。ノズルプレートのノズル孔を、少なくとも一つの第1個別インク溝と少なくとも一つの第2個別インク溝とに連通するように、設けてもよい。
【0139】
また、分離溝は、少なくとも一端が開口し、この開口部にマニホールド部材の第3または第4共通インク溝が連通していればよい。また、分離溝の両端を開口せず、マニホールド部材に第3、第4共通インク溝を設けず、分離溝の底面にインク流路に連通する孔を設けてもよい。
【符号の説明】
【0140】
1 圧電基板
3 隔壁
4 ヘッド保持部材
5c,6c 供給孔
6d 排出孔
8 電極
81 導出部
8a,8b X方向の端面
9a,9b Y方向の端面
10,10A ヘッドチップ
10a 第1ヘッド
10b 第2ヘッド
11 マニホールド部材
11a 第1部分
11b 第2部分
14 分離溝
20 ノズル孔
21 ノズルプレート
24a,24b 配線基板
25 インクジェットヘッド
30 初期溝
31,31A 第1個別インク溝
32,32A 第2個別インク溝
41 第1共通インク溝
42 第2共通インク溝
43 第3共通インク溝
44 第4共通インク溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1個別インク溝、複数の第2個別インク溝および分離溝を設けた圧電基板を含むヘッドチップと、
上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝および上記分離溝を覆うように上記ヘッドチップに配置されると共に、少なくとも一つの上記第1個別インク溝と少なくとも一つの上記第2個別インク溝とに連通するノズル孔を有するノズルプレートと
を備え、
上記複数の第1個別インク溝は、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にX方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて配列され、
上記複数の第2個別インク溝は、上記複数の第1個別インク溝のX方向一方側に位置し、X方向に延在しX方向の両端が開口すると共にY方向に互いに間隔をあけて配列され、
上記分離溝は、Y方向に延在すると共に、上記複数の第1個別インク溝と上記複数の第2個別インク溝との間に位置して、上記複数の第1個別インク溝のそれぞれのX方向一方側の開口部と上記複数の第2個別インク溝のそれぞれのX方向他方側の開口部とに連通し、
上記複数の第1個別インク溝のX方向他方側の開口部、上記複数の第2個別インク溝のX方向一方側の開口部、および、上記分離溝は、それぞれ、インク流路に連通していることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記ヘッドチップに取り付けられるマニホールド部材を備え、
上記マニホールド部材は、上記複数の第1個別インク溝のX方向他方側の開口部に連通する第1共通インク溝と、上記複数の第2個別インク溝のX方向一方側の開口部に連通する第2共通インク溝とを有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記分離溝は、Y方向の両端が開口し、
上記マニホールド部材は、上記分離溝のY方向一方側の開口部に連通する第3共通インク溝と、上記分離溝のY方向他方側の開口部に連通する第4共通インク溝とを有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記ノズルプレートは、上記ヘッドチップと上記マニホールド部材とに跨るように配置され、上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝、上記第1共通インク溝および上記第2共通インク溝を覆って、上記第1個別インク溝と共に第1個別インク室を定義し、上記第2個別インク溝と共に第2個別インク室を定義し、上記第1共通インク溝と共に第1共通インク室を定義し、上記第2共通インク溝と共に第2共通インク室を定義することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一つに記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記分離溝の深さは、上記第1個別インク溝の深さおよび上記第2個別インク溝の深さよりも、深いことを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一つに記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記第1個別インク溝および上記第2個別インク溝の内面に電極が設けられ、この電極は、上記圧電基板のX方向の両端面に導出していることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェットヘッドにおいて、
上記電極における上記圧電基板の両端面に導出している部分に接続される配線基板を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一つに記載のインクジェットヘッドにおいて、
X方向およびY方向を含む平面において、上記第1個別インク溝および上記第2個別インク溝が延在するX方向は、上記分離溝が延在するY方向に直交する方向に対して、一定角度傾いていることを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項9】
圧電基板に、X方向に延在しX方向の両端が開口する初期溝を、X方向に交差するY方向に互いに間隔をあけて複数形成する工程と、
上記初期溝の内面に電極としての導電体膜を形成する工程と、
上記圧電基板に、Y方向に延在しY方向の両端が開口する分離溝を、上記初期溝に交差するように上記初期溝よりも深く形成して、上記初期溝を、上記分離溝を中心として、第1個別インク溝と第2個別インク溝とに分離する工程と、
上記第1個別インク溝、上記第2個別インク溝および上記分離溝を覆うように上記圧電基板にノズルプレートを配置して、このノズルプレートのノズル孔を少なくとも一つの上記第1個別インク溝と少なくとも一つの上記第2個別インク溝とに連通する工程と
を備えることを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−167846(P2011−167846A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30819(P2010−30819)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】