説明

インクジェットヘッドおよびその製造方法

【課題】容易に製造することができるインクジェットヘッドを提供する。
【解決手段】一つの実施形態に係るインクジェットヘッドは、複数のノズルを有したノズルプレートと、前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、前記枠状部の内側に設けられたインク室と、前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、を備える。前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第1の開口部と、前記複数の第1の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第1の開口部と前記排出流路とを接続した一つの第2の開口部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インクジェットヘッドおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタには、インクジェットヘッドを通して、インクを循環させる構成を有するものがある。この種のインクジェットヘッドは、基板と、この基板に取り付けられる枠状部と、この枠状部に取り付けられるノズルプレートとを備える。
【0003】
前記基板と、前記枠状部と、前記ノズルプレートによって、前記インクジェットヘッドの内部にインク室が形成される。複数の駆動素子が、前記インク室内に配置されるように前記基板に取り付けられる。この駆動素子は、前記インク室に供給されたインクを、前記ノズルプレートに設けられたノズルから吐出する。
【0004】
前記基板に、前記インク室にインクを供給するための複数の供給口と、前記インク室からインクを排出するための複数の排出口とが設けられる。前記駆動素子は、前記供給口と前記排出口との間に配置される。前記供給口から前記インク室に供給されたインクは、前記駆動素子によってインクジェットヘッドのノズルから吐出される。余ったインクは、前記排出口からインクタンクに回収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−160822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記基板に、前記駆動素子に電圧を印加する配線が設けられる。この配線は、前記複数の排出口や供給口を避けて設けられる。このため、前記基板上において前記配線が複雑に配置されることになり、インクジェットヘッドの製造が難しくなる。
【0007】
本発明の目的は、容易に製造することができるインクジェットヘッド、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの実施形態に係るインクジェットヘッドは、
複数のノズルを有したノズルプレートと、前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、前記枠状部の内側に設けられたインク室と、前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、を備える。前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第1の開口部と、前記複数の第1の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第1の開口部と前記排出流路とを接続した一つの第2の開口部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図2】第1の実施形態のインクジェットヘッドを一部切り欠いて示す平面図。
【図3】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図2のF3−F3線に沿って示す断面図。
【図4】第1の実施形態のインクジェットヘッドを図2のF4−F4線に沿って示す断面図。
【図5】第1の実施形態の基板を示す平面図。
【図6】第2の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図7】第2の実施形態のインクジェットヘッドを図6のF7−F7線に沿って示す断面図。
【図8】第2の実施形態のインクジェットヘッドを図6のF8−F8線に沿って示す断面図。
【図9】第2の実施形態のインクジェットヘッドの変形例を示す斜視図。
【図10】第3の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図11】第3の実施形態のインクジェットヘッドを図10のF11−F11線に沿って示す断面図。
【図12】第4の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図13】第4の実施形態のインクジェットヘッドを図12のF13−F13線に沿って示す断面図。
【図14】第5の実施の形態に係るインクジェットヘッドを分解して示す斜視図。
【図15】第5の実施形態のインクジェットヘッドを図14のF15−F15線に沿って示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、第1の実施の形態について、図1ないし図5を参照して説明する。図1は、インクジェットヘッド10を分解して示す斜視図である。図2は、インクジェットヘッド10を一部切り欠いて示す平面図である。図1に示すように、インクジェットヘッド10は、基板13と、枠状部15と、ノズルプレート18とを備えている。基板13は、基材の一例である。
【0011】
図3は、図2のF3−F3線に沿って示すインクジェットヘッド10の断面図である。図4は、図2のF4−F4線に沿って示すインクジェットヘッド10の断面図である。基板13は、例えばアルミナなどのセラミックスによって、矩形状に形成されている。図3に示すように、基板13は、第1の面21と、第1の面21の反対方向に位置する第2の面22とを有している。第2の面22には、マニホールド100が取り付けられる。マニホールド100は、インク供給部100Aとインク排出部100Bを備え、インクジェットヘッド10にインクを供給し残ったインクを排出している。
【0012】
図1に示すように、基板13は、第1の排出口24と、第2の排出口25と、複数の供給口26とを有している。第1の排出口24および第2の排出口25は、基材に設けられた排出流路の一例である。供給口26は、基材に設けられた供給流路の一例である。第1の排出口24および第2の排出口25は、供給口26よりも大きく形成されている。
【0013】
複数の供給口26は、基板13の幅方向の中央部において、基板13の長手方向に並んで設けられている。供給口26は、インクジェットヘッド10がマニホールド100に取り付けられると、インク供給部100Aを介してインクジェットプリンタに設けられるインクタンクに接続される。
【0014】
第1の排出口24は、供給口26と基板13の一方の側縁13aとの間に配置されている。第2の排出口25は、供給口26と基板13の他方の側縁13bとの間に配置されている。第1の排出口24と第2の排出口25とは、供給口26を間に挟んでいる。第1の排出口24と、第2の排出口25とは、インクジェットヘッド10がマニホールド100に取り付けられると、インク排出部100Bを介してインクタンクにそれぞれ接続される。
【0015】
基板13は、第1の圧電部材28と、第2の圧電部材29とを有している。第1および第2の圧電部材28,29は、基板13の第1の面21に接着によって取り付けられている。第1の圧電部材28は、第1の排出口24と供給口26との間に配置されている。第2の圧電部材29は、第2の排出口25と供給口26との間とに配置されている。第1の圧電部材28と第2の圧電部材29とは、互いに平行に配置されている。
【0016】
第1および第2の圧電部材28,29は、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)製の2枚の圧電板を互いの分極方向を対向させるように貼り合わせてそれぞれ形成されている。図3に示すように、第1および第2の圧電部材28,29は、台形状の断面を有する棒状にそれぞれ形成されている。
【0017】
第1および第2の圧電部材28,29は、インク吐出用の複数の溝部31をそれぞれ有している。溝部31は、駆動素子の一例である。図2に示すように、溝部31は、第1および第2の圧電部材28,29がそれぞれ延びる方向に並んで配置されている。溝部31は、第1および第2の圧電部材28,29がそれぞれ延びる方向と交差する方向に向かって、それぞれ延びている。図3に示すように、複数の溝部31の底部および側部に、電極32がそれぞれ形成されている。
【0018】
図5は、基板13を示す平面図である。図5に示すように、基板13の第1の面21に、複数の第1の配線33と、複数の第2の配線34とが形成されている。複数の第1の配線33は、基板13の一方の側縁13aから、第1の圧電部材28に亘って形成されている。幾つかの第1の配線33は、第1の排出口24を避けて設けられている。複数の第2の配線34は、基板13の他方の側縁13bから、第2の圧電部材29に亘って形成されている。幾つかの第2の配線34は、第2の排出口25を避けて設けられている。
【0019】
第1および第2の配線33,34一端は、複数の電極32にそれぞれ接続されている。第1および第2の配線33,34の他端は、例えばヘッド駆動用のICにそれぞれ接続されている。
【0020】
図1に示すように、枠状部15は、基板13とノズルプレート18との間に介在している。枠状部15は、基板13に隙間無く接着されている。枠状部15は、第1および第2の圧電部材28,29と、供給口26とを囲んでいる。
【0021】
ノズルプレート18は、基板13に対向している。ノズルプレート18は、枠状部15のスペーサ47上部に隙間無く接着されている。ノズルプレート18は、矩形のポリイミド製のフィルムで形成されている。図3に示すように、基板13と、枠状部15と、ノズルプレート18との内側に、インク室36が設けられている。
【0022】
図1に示すように、ノズルプレート18は、一対のノズル列41を有している。一対のノズル列41は、複数のノズル42をそれぞれ含んでいる。図3に示すように、複数のノズル42は、複数の溝部31にそれぞれ対応している。
【0023】
図1に示すように、枠状部15は、第1のプレート45と、第2のプレート46と、スペーサ47とを有している。第1のプレート45と、第2のプレート46と、スペーサ47とは、それぞれ枠状に形成されている。
【0024】
第1のプレート45は、第2のプレート46と、スペーサ47とに接合され、枠状部15を形成する。第2のプレート46は、基板13に接着される。スペーサ47は、ノズルプレート18に接着される。
【0025】
第1のプレート45は、複数の第1の開口部51を有している。複数の第1の開口部51は二列に並んで配置され、第1の開口列52と、第2の開口列53とを形成している。第1の開口列52は、第1のプレート45の一方の側縁45aに沿って設けられている。第2の開口列53は、第1のプレート45の他方の側縁45bに沿って設けられている。図3に示すように、第1の開口部51は、インク室36とそれぞれ連通している。
【0026】
第1の開口列52において、一つの第1の開口部51は、例えば第1の圧電部材28の二十個の溝部31に対応するように設けられている。第2の開口列53において、一つの第1の開口部51は、例えば第2の圧電部材29の二十個の溝部31に対応するように設けられている。このような複数の第1の開口部51を有する第1のプレート45は、例えばニッケル合金製の板にエッチングを施すことによって形成されている。
【0027】
図1に示すように、第2のプレート46は、一対の第2の開口部55を有している。一方の第2の開口部55は、第1の開口列52に含まれる全ての第1の開口部51に亘るように長尺に形成されている。他方の第2の開口部55は、第2の開口列53に含まれる全ての第1の開口部51に亘るように長尺に形成されている。
【0028】
図4に示すように、一方の第2の開口部55は、第1の開口列52に含まれる全ての第1の開口部51と、第1の排出口24とを接続している。他方の第2の開口部55は、第2の開口列53に含まれる全ての第1の開口部51と、第2の排出口25とを接続している。このような一対の第2の開口部55を有する第2のプレート46は、例えばニッケル合金製の板にエッチングを施すことによって形成されている。
【0029】
複数の第1の開口部51と、一対の第2の開口部55とによって、枠状部15の内部あるいは厚みの範囲内に一対の第1の分岐流路57が形成される。言い換えると、第1の分岐流路57は、枠状部15に設けられ、複数の第1の開口部51と、第2の開口部55とを含んでいる。一方の第1の分岐流路57は、第1の排出口24と、インク室36との間を繋いでいる。他方の第1の分岐流路57は、第2の排出口25と、インク室36との間を繋いでいる。
【0030】
図2に示すように、スペーサ47は、複数の第1の開口部51を囲んでいる。図3に示すように、スペーサ47の厚みT1は、第1のプレート45の厚みT2よりも厚い。スペーサ47の厚みT1は、第2のプレート46の厚みT3よりも厚い。このようなスペーサ47は、例えばニッケル合金製の板にエッチングを施すことによって形成されている。
【0031】
第1プレート45、第2プレート46、スペーサ47は、ニッケル合金以外の金属、例えばステンレス、またはセラミックスや樹脂で形成することもできる。また、第1プレート45、第2プレート46、スペーサ47の加工は、エッチング以外に、切削、打ち抜き、レーザ加工などで形成することも可能である。
【0032】
前記構成のインクジェットヘッド10は、インクジェットプリンタのマニホールド100に取り付けられて印刷に使用される。印刷処理時に、インクタンクからインクジェットヘッド10にインクが供給される。図3の矢印Aで示すように、インクタンクのインクは、インク室内に連通した供給口26を介してインク室36内に供給される。このインクは、第1および第2の圧電部材28,29のそれぞれの溝部31内に満たされる。
【0033】
ユーザがプリンタに対して印刷を支持すると、プリンタの制御部は印刷信号をヘッド駆動用のICに出力する。印刷信号を受けたヘッド駆動用のICは、第1および第2の配線33,34を介して、駆動パルス電圧を電極32に印加する。溝部31は、印加された電圧に応じてシェアモード変形を行なって広がる。その後、溝部31が初期位置に復帰して、溝部31内の圧力が高くなる。これにより、溝部31が、ノズル42から図3の矢印Bで示す方向にインクを吐出させる。
【0034】
インク室36内で余ったインクは、図3の矢印Cで示すように、一方の第1の分岐流路57を通って第1の排出口24から排出されるとともに、他方の第1の分岐流路57を通って第2の排出口25から排出される。第1の排出口24と、第2の排出口25とは、それぞれインク室36内に連通している。以下、第1の排出口24の側のインクの流れについて説明する。第2の排出口25の側のインクの流れは、第1の排出口24の側のインクの流れと同じである。
【0035】
インクは、第1の圧電部材28の複数の溝部31から、対応する第1の開口列52の第1の開口部51にそれぞれ流れ込む。スペーサ47が第1および第2のプレート45,46よりも厚く形成されているため、インクはスムーズに第1の開口部51に流れ込む。図4に示すように、複数の第1の開口部51にそれぞれ流れ込んだインクは、第2の開口部55を通って合流する。合流したインクは、第1の排出口24から流出する。第1の排出口24から流出したインクは、インクタンクに回収される。
【0036】
次に、前記構成のインクジェットヘッド10の製造工程について説明する。まず、焼成前のセラミックスシート(セラミックスグリーンシート)で構成される基板13に、プレス成形によって第1の排出口24と第2の排出口25と供給口26とを形成する。続いて、この基板13を焼成する。
【0037】
続いて、基板13に対して第1の圧電部材28および第2の圧電部材29を接着する。このとき、第1および第2の圧電部材28,29は、図示しない治具によって互いの距離が一定に維持されている。また、第1および第2の圧電部材28,29は、当該治具を介して基板13に位置決めされ、基板13に接着される。
【0038】
続いて、基板13に接着された第1および第2の圧電部材28,29に対して、角部に研削加工または切削加工を行ういわゆるテーパ加工を行う。この第1および第2の圧電部材28,29に、複数の溝部31をそれぞれ形成する。この加工は、例えば、ICウェハーの切断等に用いられているダイシングソーのダイヤモンドホイールを用いる。
【0039】
続いて、複数の溝部31の内面に電極32をそれぞれ形成するとともに、基板13上に複数の第1の配線33と複数の第2の配線34とを形成する。電極32および第1および第2の配線33,34は、無電解メッキによって形成された例えばニッケル薄膜で構成される。続いて、レーザ照射によるパターニングを行って、電極32、第1の配線33、および第2の配線34以外の部位からニッケル薄膜を除去する。
【0040】
続いて、枠状部15を形成する。まず、第1のプレート45と第2のプレート46を重ねる。この際、一方の第2の開口部55が、第1の開口列52の全ての第1の開口部51に亘るように配置される。さらに、他方の第2の開口部55が、第2の開口列53の全ての第1の開口部51に亘るように配置される。これらの第1の開口部51を囲むように、スペーサ47を第1のプレート45に重ねる。次に、重ねられた第1のプレート45と第2のプレート46とスペーサ47とを接合させる。
【0041】
接合は、例えば拡散接合によって行なわれる。具体的には、重ねられた第1のプレート45と第2のプレート46とスペーサ47とを、高真空中で溶融させることなく加熱・加圧して保持する。これにより、第1のプレート45と第2のプレート46との接合界面、および第1のプレート45とスペーサ47とのそれぞれの接合界面のそれぞれの原子を拡散させることで、第1のプレート45と第2のプレート46とスペーサ47とを接合する。なお、接合には、拡散接合に限らず、陽極接合や他の真空接合のような他の接合方法を用いても良い。
【0042】
続いて、形成された枠状部15を基板13に接着する。枠状部15にノズルプレート18を接着する。このノズルプレート18にレーザを照射して複数のノズル42をそれぞれ形成して、インクジェットヘッド10の製造工程が終了する。
【0043】
前記構成のインクジェットヘッド10によれば、基板13は一つの第1の排出口24と、一つの第2の排出口25とを有する。第1の排出口24は、第1の分岐流路57によって分岐され、インク室36に繋がれる。第2の排出口25も、第1の分岐流路57によって分岐され、インク室36に繋がれる。このように、インク室36内にインク排出用の複数の開口を設ける場合であっても、基板13に一つの第1の排出口24と、一つの第2の排出口25とを設ければ足りる。
【0044】
これにより、基板13に設ける孔を少なくすることができる。基板13の孔が少なくなることで、基板13の割れを防止するとともに、基板13に第1の配線33および第2の配線34のような他の構造物を配置しやすくなる。このように、インクジェットヘッド10を容易に製造することができる。このため、インクジェットヘッド10の加工費が低減する。
【0045】
さらに、複数の溝部31にそれぞれ対応した複数の第1の開口部51が、インク室36内に開口している。これにより、余ったインクが均等に第1の開口部51にそれぞれ流れ込み、インクの滞留を防止して印刷時の濃度ムラを防止できる。
【0046】
さらに、枠状部15は、第1のプレート45と、第2のプレート46と、スペーサ47とを接合することで形成することができる。これにより、第1の分岐流路57を有する枠状部15を、容易に製造することができる。
【0047】
次に、第2の実施の形態について、図6ないし図9を参照して説明する。なお、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0048】
図6は、第2の実施形態のインクジェットヘッド10Aを分解して示す斜視図である。図7は、図6のF7−F7線に沿って示すインクジェットヘッド10Aの断面図である。図8は、図6のF8−F8線に沿って示すインクジェットヘッド10Aの断面図である。図6に示すように、インクジェットヘッド10Aの基板13は、複数の供給口26の代わりに一つの供給口61を有している。供給口61は、基材に設けられた供給流路の一例である。
【0049】
供給口61は、基板13の中央部に設けられている。供給口61は、インクジェットヘッド10Aがマニホールド100に取り付けられると、インク供給部100Aを介してインクタンクに接続される。
【0050】
第1のプレート45は、第1の中枠63を有している。第1の中枠63は、第1のプレート45の幅方向の中央において、第1のプレート45の長手方向に延びている。図7に示すように、第1の中枠63は、枠状部15が基板13に取り付けられた状態において、第1の圧電部材28と第2の圧電部材29との間に配置される。
【0051】
図6に示すように、第1のプレート45は、第1の中枠63にそれぞれ設けられた複数の第3の開口部64を有している。複数の第3の開口部64は、第1の中枠63が延びる方向に並んで配置され、第3の開口列65を形成している。図7に示すように、第3の開口部64は、インク室36とそれぞれ連通している。第3の開口列65において、一つの第3の開口部64は、例えば第1の圧電部材28の二十個の溝部31に対応するように設けられている。第3の開口部64は、供給口61よりも小さくそれぞれ形成されている。
【0052】
図6に示すように、第2のプレート46は、第2の中枠66を有している。第2の中枠66は、第2のプレート46の幅方向の中央において、第2のプレート46の長手方向に延びている。図7に示すように、第2の中枠66は、枠状部15が基板13に取り付けられた状態において、第1の圧電部材28と第2の圧電部材29との間に配置される。
【0053】
図6に示すように、第2のプレート46は、第2の中枠66に設けられた第4の開口部67を有している。第4の開口部67は、第3の開口列65に含まれる全ての第3の開口部64に亘るように長尺に形成されている。図8に示すように、第4の開口部67は、第3の開口列65に含まれる全ての第3の開口部64と、供給口61とを接続している。
【0054】
複数の第3の開口部64と、第4の開口部67とによって、枠状部15の内部あるいは厚みの範囲内に第2の分岐流路69が形成される。言い換えると、第2の分岐流路69は、枠状部15に設けられ、複数の第3の開口部64と、第4の開口部67とを含んでいる。第2の分岐流路69は、供給口61と、インク室36との間を繋いでいる。
【0055】
前記構成のインクジェットヘッド10Aにおいて、インクは次のようにインク室に供給される。図7の矢印Aで示すように、インクタンクのインクは、供給口61から第2の分岐流路69を通って、インク室36内に供給される。
【0056】
図8に示すように、インクは、供給口61から第4の開口部67に流れ込む。第4の開口部67に流れ込んだインクは分岐され、複数の第3の開口部64を通ってインク室36内に供給される。
【0057】
前記構成のインクジェットヘッド10Aによれば、基板13は一つの供給口61を有する。この供給口61は、第2の分岐流路69によって分岐され、インク室36に繋がれる。このように、インク室36内にインク供給用の複数の開口を設ける場合であっても、基板13に一つの供給口61を設ければ足りる。これにより、基板13に設ける孔をさらに少なくすることができ、インクジェットヘッド10を容易に製造することができる。
【0058】
さらに、複数の溝部31にそれぞれ対応した複数の第3の開口部64が、インク室36内に開口している。これにより、インクが均等に溝部31に流れ込み、印刷時の濃度ムラを防止できる。
【0059】
図9は、インクジェットヘッド10Aの変形例であるインクジェットヘッド10Bを示す斜視図である。図9に示すように、基板13に数個の第1の排出口24と、数個の第2の排出口25と、数個の供給口61とをそれぞれ有していても良い。この場合、第1の排出口24の個数は、第1の開口列52に含まれる第1の開口部51の個数より少ない。第2の排出口25の個数は、第2の開口列53に含まれる第1の開口部51の個数より少ない。供給口61の個数は、第3の開口部64の個数より少ない。
【0060】
次に、第3の実施の形態について、図10および図11を参照して説明する。なお、第2の実施形態のインクジェットヘッド10Aと同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図10は、第3の実施の形態のインクジェットヘッド10Cを分解して示す斜視図である。図11は、図10のF11−F11線に沿ってインクジェットヘッド10Cを示す断面図である。図10に示すように、基板13は、第1の排出口24の代わりに複数の第1の排出口71を有している。さらに、基板13は、第2の排出口25の代わりに複数の第2の排出口72を有している。第1の排出口71および第2の排出口72は、基材に設けられた排出流路の一例である。
【0062】
複数の第1の排出口71は、供給口61と基板13の一方の側縁13aとの間に挟まれてそれぞれ配置されている。複数の第1の排出口71は、基板13の長手方向に並んで配置されている。複数の第2の排出口72は、供給口61と基板13の他方の側縁13bとの間に挟まれてそれぞれ配置されている。複数の第2の排出口72は、基板13の長手方向に並んで配置されている。第1の排出口71と第2の排出口72とは、供給口61を間に挟んでいる。
【0063】
複数の第1の排出口71と、複数の第2の排出口72とは、インクジェットヘッド10がマニホールド100に取り付けられると、インク排出部100Bを介してインクタンクにそれぞれ接続される。図11に示すように、第1の排出口71と、第2の排出口72とは、それぞれインク室36内に開口している。このため、第1の排出口71と、第2の排出口72とは、インクタンクとインク室36とを繋いでいる。
【0064】
第1のプレート45は、複数の第3の開口部64のみを有している。第1のプレート45は、複数の第1の排出口71と複数の第2の排出口72とを囲んでいる。第2のプレート46は、第4の開口部67のみを有している。
【0065】
前記構成のインクジェットヘッド10Cによれば、基板13に設ける孔を少なくすることができ、インクジェットヘッド10Cを容易に製造することができる。
【0066】
次に、第4の実施の形態について、図12および図13を参照して説明する。なお、第3の実施形態のインクジェットヘッド10Cと同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0067】
図12は、第4の実施の形態のインクジェットヘッド10Dを分解して示す斜視図である。図13は、図12のF13−F13線に沿ってインクジェットヘッド10Dを示す断面図である。インクジェットヘッド10Dは、供給されたインクを使い切る形式のインクジェットヘッドである。
【0068】
図12に示すように、基板13は、一つの供給口61のみを有している。図13の矢印Aで示すように、インクタンクのインクは、供給口61から第2の分岐流路69を通って、インク室36内に供給される。図13の矢印Bで示すように、インク室36に供給されたインクは、複数の溝部31によって、複数のノズル42からそれぞれ吐出される。
【0069】
前記構成のインクジェットヘッド10Dによれば、基板13に設ける孔を少なくすることができ、インクジェットヘッド10Dを容易に製造することができる。
【0070】
さらに、複数の溝部31にそれぞれ対応した複数の第3の開口部64が、インク室36内に開口している。これにより、インクが均等に溝部31に流れ込み、印刷時の濃度ムラを防止できる。
【0071】
次に、第5の実施の形態について、図14および図15を参照して説明する。なお、第1の実施形態のインクジェットヘッド10と同一の機能を有する構成部分には同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0072】
図14は、第5の実施の形態のインクジェットヘッド10Eを分解して示す斜視図である。図15は、図14のF15−F15線に沿ってインクジェットヘッド10Eを示す断面図である。図14に示すように、枠状部15は、第1のプレート45と、第2のプレート46のみを有している。
【0073】
第1のプレート45は、第2のプレート46に接合されて枠状部15を形成する。第1のプレート45は、ノズルプレート18に接着される。第2のプレート46は、基板13に接着される。
【0074】
第1のプレート45は、複数の第1の開口部74を有している。複数の第1の開口部74は二列に並んで配置され、第1の開口列75と、第2の開口列76とを形成している。第1の開口列75は、第1のプレート45の一方の側縁45aに沿って設けられている。第2の開口列76は、第1のプレート45の他方の側縁45bに沿って設けられている。
【0075】
第1の開口部74は、第1のプレート45の中縁45cから入り込んだ切欠状にそれぞれ形成されている。図15に示すように、第1の開口部74は、インク室36とそれぞれ連通している。
【0076】
第1の開口列75において、一つの第1の開口部74は、例えば第1の圧電部材28の二十個の溝部31に対応するように設けられている。第2の開口列76において、一つの第1の開口部74は、例えば第2の圧電部材29の二十個の溝部31に対応するように設けられている。
【0077】
複数の第1の開口部74と、一対の第2の開口部55とによって、枠状部15の内部あるいは厚みの範囲内に一対の第1の分岐流路57が形成される。言い換えると、第1の分岐流路57は、枠状部15に設けられ、複数の第1の開口部74と、第2の開口部55とを含んでいる。
【0078】
前記構成のインクジェットヘッド10Eによれば、枠状部15を2つの部材によって形成することができ、部品点数が低減する。これにより、インクジェットヘッド10Eを容易に製造することができる。
【0079】
このように、第1の開口部は、第1の実施形態における第1の開口部51のような貫通孔に限らず、様々な形状を取り得る。第5の実施形態における切欠状の第1の開口部74は、第1ないし第4の実施形態においても適用することができる。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0081】
例えば、枠状部は、鋳造やインサート成形のような射出成形によって、一体物として形成しても良い。さらに、駆動素子は、インク吐出駆動用の気泡を発生させる機構を有したものでも良い。
【符号の説明】
【0082】
10,10A,10B,10C,10D,10E…インクジェットヘッド,13…基板,15…枠状部,18…ノズルプレート,24,71…第1の排出口,25,72…第2の排出口,26…供給口,31…溝部,36…インク室,42…ノズル,45…第1のプレート,46…第2のプレート,51,74…第1の開口部,55…第2の開口部,57…第1の分岐流路,64…第3の開口部,67…第4の開口部,69…第2の分岐流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のノズルを有したノズルプレートと、
前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、
前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、
前記枠状部の内側に設けられたインク室と、
前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、
前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、
を備え、
前記枠状部は、前記インク室と連通した複数の第1の開口部と、前記複数の第1の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第1の開口部と前記排出流路とを接続した一つの第2の開口部と、を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項2】
前記枠状部は、
前記複数の第1の開口部が設けられた枠状の第1のプレートと、
前記一つの第2の開口部が設けられた枠状の第2のプレートと、
を接合して形成されたことを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
複数のノズルを有したノズルプレートと、
前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、
前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、
前記枠状部の内側に設けられたインク室と、
前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、
前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、
を備え、
前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第1の開口部と、前記複数の第1の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第1の開口部と前記排出流路とを接続した一つの第2の開口部と、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第3の開口部と、前記複数の第3の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第3の開口部と前記供給流路とを接続した一つの第4の開口部と、を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記枠状部は、
前記複数の第1の開口部と、前記複数の第3の開口部と、が設けられた枠状の第1のプレートと、
前記一つの第2の開口部と、前記一つの第4の開口部と、が設けられた枠状の第2のプレートと、
を接合して形成されたことを特徴とする請求項3に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
複数のノズルを有したノズルプレートと、
前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、
前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、
前記枠状部の内側に設けられたインク室と、
前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、
前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、
を備え、
前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第3の開口部と、前記複数の第3の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第3の開口部と前記供給流路とを接続した一つの第4の開口部と、を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項6】
複数のノズルを有したノズルプレートと、
前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、
前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、
前記枠状部の内側に設けられたインク室と、
前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、
を備え、
前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第3の開口部と、前記複数の第3の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第3の開口部と前記供給流路とを接続した一つの第4の開口部と、を有することを特徴とするインクジェットヘッド。
【請求項7】
前記枠状部は、
前記複数の第3の開口部が設けられた枠状の第1のプレートと、
前記一つの第4の開口部が設けられた枠状の第2のプレートと、
を接合して形成されたことを特徴とする請求項5または6に記載のインクジェットヘッド。
【請求項8】
複数のノズルを有したノズルプレートと、
前記複数のノズルからそれぞれインクを吐出させる複数の駆動素子を有するとともに、前記ノズルプレートに対向した基材と、
前記ノズルプレートと前記基材との間に介在された枠状部と、
前記枠状部の内側に設けられたインク室と、
前記インク室内に連通しインクを供給するように前記基材に設けられた供給流路と、
前記インク室内に連通しインクを排出するように前記基材に設けられた排出流路と、
を備え、
前記枠状部は、前記複数の駆動素子に対応するように前記インク室と連通した複数の第1の開口部と、前記複数の第1の開口部の全部に亘るとともに前記複数の第1の開口部と前記排出流路とを接続した一つの第2の開口部と、を有するインクジェットヘッドの製造方法であって、
前記複数の第1の開口部が設けられた枠状の第1のプレートと、前記一つの第2の開口部が設けられた枠状の第2のプレートと、を接合して前記枠状部を形成することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−35606(P2012−35606A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180596(P2010−180596)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】