説明

インクジェットヘッドおよびインクジェット装置

【課題】解像度が高く、かつ各インク室のノズルから吐出されるインクの量が一定であるインクジェットヘッドを提供すること。
【解決手段】インク供給流路と;前記インク供給流路の両側部に交互に配置され、2以上のインク室を有するインク室群と;前記インク室のそれぞれに配置されたアクチュエータと;を有するインクジェットヘッドであって、それぞれの前記インク室群は、互いに平行な2以上のインク室列と、互いに平行な2以上のノズル列とを有し、それぞれの前記インク室群では、前記インク室群内の前記インク室は、隣接するインク室と連通し、前記インク供給流路に最も近いインク室列を第1インク室列とし、前記インク供給流路から最も遠いインク室列を第nインク室列としたとき、前記第1インク室列が有する前記インク室の数は、前記第nインク室列が有する前記インク室の数よりも多い、インクジェットヘッド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドおよびそれを備えるインクジェット装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットヘッドは、インク供給源からインクが供給されるインク供給流路と;インクを吐出するためのノズルを有し、かつインク供給流路に沿って配列された複数のインク室と;インク室のそれぞれに配置されたアクチュエーター(例えばピエゾ素子)とを有することがある。インク供給流路に沿って配列された1列のインク室をインク室列とも称することがある。また、ノズルを有するインク室がインク供給流路に沿って配列されることで、ノズルもインク供給流路に沿って配列される。インク供給流路に沿って配列された一列のノズルを、ノズル列と称することがある。
【0003】
このようなインクジェットヘッドでは、アクチュエータがインク室内のインクに圧力を与えることで、ノズルからインクが吐出される。このようなインクジェットヘッドの解像度は、ノズルの配置ピッチ(以下単に「ノズルピッチ」とも称する)によって決定される。
【0004】
また、複数のインク室列を有し、平面形状が台形のインク室群を、交互に設ける技術が知られている(例えば特許文献1参照)。図1は、特許文献1に開示されたインクジェットヘッド70の平面図である。
【0005】
図1に示されるように、インクジェットヘッド70は、マトリクス状に配置されたインク室を有するインク室群21が交互に配置されている。インク室群21とインク室群21との間にはインク供給流路5が形成されている。また、各インク室群21は、平面形状が台形状の圧電素子ユニットを1つ有する。
【0006】
また、インクジェットヘッドの内部のインクにエアーが混入したり、インクジェットヘッドのノズルが目詰まりしたりして、適切なインク吐出ができないことがある。そこで、インクジェットヘッドのインクを循環させる(外部からインクジェットヘッドにインクを供給し、インクジェットヘッドからインクを排出する)ことで、エアー混入やノズルつまりを低減させることが提案されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2004−136668号公報
【特許文献2】特開2008−254196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年プリンタの解像度を上げるため、ノズル間のピッチが小さいインクジェットヘッドの開発が求められている。上述のようにノズルはインク室ごとに配置されるので、ノズルピッチを縮めるには、インク室を小型化し、ノズル列(インク室列)におけるノズルピッチを小さくすればよい。しかし、アクチュエータやインク室に求められる容積の関係上、インク室の小型化には限界があるため、ノズル列におけるノズルピッチを縮めるには限界がある。
【0009】
インクジェットヘッドのノズルピッチをノズル列におけるノズルピッチの限界よりも小さくするために、インクジェットヘッドに複数のインク室列(ノズル列)を設け、ノズルの位置をずらすことが考えられる。図2Aは、複数のインク室列およびノズル列を有するインクジェットヘッド10の斜視図である。また、図2Bはインクジェットヘッド10のノズル形成面からの平面図である。
【0010】
図2Aおよび図2Bに示されるように、インクジェットヘッド10は、インク供給流路101と、第1インク室列111と、第2インク室列112と、第1ノズル列121と、第2ノズル列122とを有する。第1インク室列111のインク室113は、インク供給流路101と接続する。また、図2Aおよび図2Bに示されたインクジェットヘッド10では、第2インク室列112のインク室113にもインクを供給できるように、第1インク室列111のインク室113と第2インク室列112のインク室113とは連通している。このため、インクは、インク供給流路101から、第1インク室列111を通って第2インク室列112に供給されることができる。
【0011】
図2Bに示されるように、第1ノズル列121のノズル123と、第2ノズル列122のノズル123とは、重ならない。具体的には、第1ノズル列121のノズル123は、第2ノズル列122における隣接する2つのノズル123の間に位置する。このように、複数のノズル列を設け、互いのノズルの位置が重ならないようにすることで、インクジェットヘッドのノズルピッチP1を、ノズル列におけるノズルピッチP2の1/2にすることができ、解像度の高いインクジェットヘッドを提供することができる。
【0012】
次にインクジェットヘッド10内におけるインクの流れについて説明する。インクジェットヘッド10では、インクはまずインク供給流路101から第1インク室列111のインク室113に供給される。上述のように第1インク室列111のインク室113と、第2インク室列112のインク室113とは連通しているので、インクは、第1インク室列111のインク室113を通って、第2インク室列112のインク室113に供給される。
【0013】
一方、第1インク室列111のインク室113に供給されたインクの一部は、第1インク室列111のインク室113が有するノズル123(第1ノズル列121のノズル123)から吐出される。したがって、第2インク室列112のインク室113に供給されるインクの量は、第1インク室列111のインク室113に供給されるインクの量よりも少なくなる。
【0014】
このため、図2Aおよび図2Bに示されるインクジェットヘッド10では、第1インク室列111のインク室でインクの圧力が高くなり、第2インク室列112のインク室でインクの圧力が低くなる。
【0015】
このように、各インク室のインク圧力が一定でなくなると、各ノズルから吐出されるインクの量および速度も一定でなくなる。各ノズルから吐出されるインクの量および速度がばらつくと正確な印刷ができなくなる。
【0016】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、解像度が高く、かつ各インク室のノズルから吐出されるインクの量や、吐出速度が一定であるインクジェットヘッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1は、以下に示すインクジェットヘッドに関する。
[1]外部から供給されるインクが流れるインク供給流路と;前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って、前記インク供給流路の両側部に交互に配置され、インクを吐出するためのノズルを有する2以上のインク室を有するインク室群と;前記インク室のそれぞれに配置されたアクチュエータと;を有するインクジェットヘッドであって、それぞれの前記インク室群は、互いに平行で、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行な2以上のインク室列と、互いに平行で、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行な2以上のノズル列とを有し、前記インク室列は、前記インク室が一列に配列されることで構成され、前記ノズル列は、前記ノズルが一列に配列されることで構成され、それぞれの前記インク室群では、前記インク室群内の前記インク室は、隣接するインク室と連通し、前記インク供給流路に最も近いインク室列を第1インク室列とし、前記インク供給流路から最も遠いインク室列を第nインク室列としたとき、前記第1インク室列が有する前記インク室の数は、前記第nインク室列が有する前記インク室の数よりも多い、インクジェットヘッド。
[2]1の前記ノズル列が有するノズルの前記インク供給流路内をインクが流れる方向の位置は、他の前記ノズル列が有するノズルの前記インク供給流路内をインクが流れる方向の位置と重ならない、[1]に記載のインクジェットヘッド。
[3]前記インク供給流路の一方の側部に配置された前記インク室群と、前記インク供給流路の他方の側部に配置された前記インク室群とは、一部オーバーラップし、2以上の前記インク室群が、前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って、前記インク供給流路の両側部に交互に配置された領域のインクジェットヘッドを、前記インク供給流路内をインクが流れる方向に対して垂直かつ等間隔に複数のピースに分割したとき、全ての前記ピースが有する前記インク室および前記ノズルの数は同じである、[1]または[2]に記載のインクジェットヘッド。
[4]前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行であり、かつ前記インク室から排出されたインクが流れるインク排出流路をさらに有し、前記インク排出流路は、前記第nインク室列のインク室と接続する、[1]〜[3]のいずれか一つに記載のインクジェットヘッド。
【0018】
本発明の第2は以下に示すインクジェット装置に関する。
[5][1]〜[4]のいずれか一つに記載のインクジェットヘッドを具備するインクジェット装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明のインクジェットヘッドは、複数のインク室列が有するインク室内のインク圧力を一定にすることができ、各インク室のノズルから吐出される液滴の量、および吐出速度を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】従来のインクジェットヘッドの平面図
【図2】2列のインク室列およびノズル列を有するインクジェットヘッドの平面図
【図3】実施の形態1のインクジェットヘッドの斜視図
【図4】実施の形態1のインクジェットヘッドの平面図
【図5】実施の形態1のインクジェットヘッドにおけるピエゾ素子を示す図
【図6】実施の形態1のインクジェットヘッドにおけるインクの流れを示す図
【図7】実施の形態2のインクジェットヘッドの平面図
【図8】インク室群がオーバーラップしないインクジェットヘッドの平面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.本発明のインクジェットヘッドについて
本発明のインクジェットヘッドは、1)インク供給流路と、2)インク室群と、3)アクチュエータとを有する。
【0022】
本発明は、複数のインク室を含むインク室群の構造を工夫することで、各インク室のノズルから吐出されるインクの量および速度を一定にしたことを特徴とする。以下、本発明の構成要素について説明する。
【0023】
1)インク供給流路
インク供給流路は、外部から供給されるインクが流れる流路である。インク供給流路を流れるインクは、後述するインク室群のインク室に供給される。インク供給流路は、外部からインクが供給される導入口を有する。インク供給流路に供給されるインク供給量は、特に限定されず、数ml/minであっても、それ以上であってもよい。
【0024】
2)インク室群
インク室群は、インクを吐出するためのノズルを有する複数のインク室を含む領域である。インク室群は、インク供給流路内をインクが流れる方向(以下単に「インクの流れ方向」とも称する)に沿って、インク供給流路の両側部に交互に配置される(図4A、図7参照)。
【0025】
インク室は、ノズルから吐出させるインクを収容するための空間である。本発明のインクジェットヘッドが有するインク室の寸法は、通常全て同じである。インク室に収容されるインクの種類は、特に限定されず、印刷対象物の種類によって適宜選択される。
【0026】
ノズルとはインク室からインクを吐出するための吐出孔である。通常インクジェットヘッドは、1つのインク室に対して、1つのノズルを有する。インク室内のインクは、ノズルから外部に吐出される。ノズルの径は、特に限定されず、例えば10〜100μm程度であればよい。
【0027】
本発明では、インク室群は、互いに平行な複数のインク室列と、互いに平行な複数のノズル列とを有する。
【0028】
インク室列は、インク室が一列に配列されることで構成される。1つのインク室列が有するインク室の数は、例えば、2〜10である。またインク室列はインクの流れ方向に平行である。以下、インク室列のうちインク供給流路に最も近いインク室列を「第1インク室列」と称し、インク室列のうち、インク供給流路から最も遠いインク室列を「第n(nは2以上の整数)インク室列」とも称する。インク供給流路は、第1インク室列のインク室に接続している。一方、第nインク室列のインク室は、インク供給流路とは接続していない。
【0029】
ノズル列はインク室が有するノズルが一列に配列されることで構成される。またノズル列はインクの流れ方向に平行である。以下、ノズル列のうちインク供給流路に最も近いノズル列を「第1ノズル列」と称し、ノズル列のうち、インク供給流路から最も遠いノズル列を「第nノズル列」とも称する。
【0030】
上述のようにインク室は、通常1つのノズルを有するので、インク室列とノズル列との数は、通常同じである。インク室群が有するインク室列およびノズル列の数は特に限定されないが、例えば2〜10である。また、各インク室群が有するインク室列、インク室およびノズル列の数は通常同じである。
【0031】
1のノズル列が有するノズルのインクの流れ方向の位置(以下単に「ノズルの位置」とも称する)と、他のノズル列が有するノズルの位置とは重ならないことが好ましい(図4A、図7参照)。このように、ノズルの位置を重ならせないことで、インク室群におけるノズルピッチを、ノズル列におけるノズルピッチよりも小さくすることができ、解像度を向上させることができる。
【0032】
上述のように、本発明のインクジェットヘッドは、インク室群の構造に特徴を有する。本発明の特徴であるインク室群の特徴については、後述する「2.インク室群の構造について」で詳細に説明する。
【0033】
3)アクチュエータ
本発明のインクジェットヘッドは、各インク室に配置されたアクチュエータを有する。本発明では各インク室に1つまたは複数のアクチュエータが配置される。アクチュエータとは、制御信号を物理的な力に変換する作動装置であって、ヒータ(発熱体)であったり、ピエゾ素子(圧電素子)であったりするが、ピエゾ素子であることが好ましい。アクチュエータがヒータの場合は、サーマル方式と称され、ヒータが発熱することでインク室内のインク中に気泡を発生させて圧力を加え、インクを吐出させる。そのため、インクの種類によっては、熱によって劣化する恐れがある。一方、アクチュエータがピエゾ素子の場合は、圧電方式と称され、ピエゾ素子が歪むことでインク室の容量を変化させてインクに圧力を加え、インクを吐出させる。
【0034】
また、アクチュエータであるピエゾ素子は、出力形態(歪み方)によって、シェアモードと、プッシュモードと、ベンドモードとに大別されうる。本発明のインクジェットヘッドは、いずれのモードのピエゾ素子を採用してもよい。
【0035】
アクチュエータであるピエゾ素子は、薄膜ピエゾ素子と積層ピエゾ素子とに分類されうる。薄膜ピエゾ素子は、入力に対する出力応答が速いが、出力が低くなりがちである。そのため薄膜ピエゾ素子は、吐出するべきインク室内のインク圧力や粘度によって吐出がばらつきやすい。そのため、インクの種類によっては適切な吐出ができない場合がある。一方、積層ピエゾ素子は、入力に対する出力応答が遅いが、出力を高めやすい。そのため積層ピエゾ素子は、吐出するべきインク室内のインク圧力に影響を受けにくく、安定した吐出を実現しうる。よって、本発明のインクジェットヘッドのアクチュエータは、積層ピエゾ素子が好ましい場合がある。
【0036】
アクチュエータとして、積層ピエゾ素子を用いる場合、積層ピエゾ素子の平面形状は、6角形であることが好ましい(図5Aおよび図5B参照)。積層ピエゾ素子の平面形状を6角形とすれば、積層ピエゾ素子の駆動面(インクを押す面)の面積が増加し、より強い圧力をインクに加えることが可能になるからである。
【0037】
また、本発明のインクジェットヘッドは、インク排出流路を有していてもよい(図3参照)。インク排出流路は、インク室群のインク室から排出されたインクが流れる流路であり、インクの流れ方向に平行な流路である。インク排出流路は、外部にインクを排出するための排出口を有する。インク排出流路には、第nインク室列のインク室が接続する。インク排出流路を設けることで、インク室内に常に新しいインクを供給することができ、エアーの混入やインクよどみによる吐出不良を防止することができる。
【0038】
インクジェットヘッドがインク排出流路を有する場合、インクジェットヘッドは、1つのインク供給流路に対して2つのインク排出流路を有する(図3参照)。
【0039】
2.インク室群の構造について
本発明では、インク室群内のインク室が隣接するインク室と連通していることを特徴とする(図4B参照)。より具体的には、インク室列内で隣接する2つのインク室は連通し、かつ隣接する2つのインク室列のインク室同士も連通する(図4B参照)。このため、インク室群内に別途インク流路を設けなくても、インク供給流路から、全てのインク室列のインク室にインクを供給することができる。
【0040】
また、本発明では、インク室列の位置に応じて、インク室列が有するインク室の数が異なることを特徴とする。具体的には、第1インク室列が有するインク室の数が最も多く、第nインク室列が有するインク室が最も少ない。このため、第1インク室列が有するインク室の数は、第nインク室列が有するインク室の数よりも多い。また、インク室列が有するインク室の数は、第1インク室列から第nインク室列にかけて徐々に減少することが好ましい。このように、インク室の列に応じて、インク室列が有するインク室の数を調節することで、インク室群が有する全てのノズルから吐出されるインクの量を均一にすることができる。
【0041】
また、本発明では、インクジェットヘッドのノズルピッチが一定になるよう、インク供給流路の一方の側部に配置されたインク室群と、インク供給流路の他方の側部に配置されたインク室群とを、一部オーバーラップさせることが好ましい(図7参照)。このように、ノズルピッチが一定になるよう、インク室群同士を一部オーバーラップさせた結果、ノズル形成領域(複数のインク室群が、インクの流れ方向に沿って、インク供給流路の両側部に交互に配置された領域)のインクジェットヘッドをインクの流れ方向に対して垂直方向に等間隔に複数のピースに分割したとき、全てのピースが有するインク室およびノズルの数が同じになる(図7参照)。
【0042】
3.本発明のインクジェット装置について
本発明のインクジェット装置は、前述のインクジェットヘッドを具備することを特徴とするが、それ以外は公知のインクジェット装置の部材を適宜有する。例えば、インクジェットヘッドを固定する部材や、インクを塗布する対象物を載置して移動するための移動ステージなどを有する。
【0043】
インクジェット装置は、インク循環装置を具備してもよい。インク循環装置は、インクに駆動圧力を供給することでインクを循環させる。インクに駆動圧力を供給するには、ポンプを用いてもよいが、圧縮空気を利用して圧力を供給するレギュレータを用いることが好ましい。レギュレータを用いることで駆動圧力が一定になり、インクの循環速度が安定するからである。
【0044】
インクジェット装置は、インクジェットヘッドのインクを、装置作動中に絶えず循環させてもよいし、断続的に循環させてもよい。
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施の形態により限定されない。
【0046】
(実施の形態1)
実施の形態1では各インク室群が2列のインク室列とノズル列とを有する形態について説明する。
【0047】
図3は、本発明の実施の形態1のインクジェットヘッド100の斜視図である。図3に示されるようにインクジェットヘッド100は、インク供給流路101と、2つのインク排出流路102と、インク室群110と、アクチュエータ(不図示)とを有する。
【0048】
インク供給流路101は、インクタンク105と連結したインク導入口103を有する。また、インク排出流路102は、インク排出口104を有する。またインクジェットヘッド100は、底面プレート150と、スペーサ160と、上面プレート170とを積層することで構成される。
【0049】
図4Aは、図3に示されたインクジェットヘッド100の底面プレート150側からの平面図である。図4Aに示されるように、インクジェットヘッド100は、インクの流れ方向Xに沿って、インク供給流路101の両側部に交互に配置された複数のインク室群110を有する。
【0050】
それぞれのインク室群110は、第1インク室列111および第2インク室列112ならびに第1ノズル列121および第2ノズル列122を有する。
【0051】
図4Aに示されるように第1ノズル列121のノズル123のX方向の位置と、第2ノズル列122のノズル123のX方向の位置とは、重ならない。具体的には、第2ノズル列122のノズル123は、第1ノズル列121において隣接する2つのノズル123間に位置する。このため、インク室群におけるノズルピッチP1は、ノズル列におけるノズルピッチP2の1/2となり、解像度を向上させることができる。
【0052】
また、図4Aに示されるように、第1インク室列111が有するインク室113の数は、第2インク室列112が有するインク室113の数よりも多い。具体的には、第1インク室列111が5個のインク室113を有するのに対し、第2インク室列112は、4個のインク室113しか有さない。このように、第1インク室列111が有するインク室113の数を、第2インク室列112が有するインク室113の数よりも多くすることで、インク室列が有するインク室113内のインク圧力を一定にすることができ、各インク室113のノズルから吐出されるインクの量、および吐出速度を一定にすることができる。
【0053】
図4Bは、上面プレート170を省略したインクジェットヘッド100におけるインク室群110の斜視図である。図4Bに示されるように、インク室群110内では、各インク室113は柱115によって区画されているだけであり、壁によって区切られていない。このため、インク室群110内では、各インク室113は、隣接するインク室113と連通する。柱115は円柱であっても角柱であってもよいが、円柱であることが好ましい。インク室を区画する柱が円柱であるとインク室間をインクがスムーズに流れることができるからである。
【0054】
また、図4Bに示されるように、第1インク室列111のインク室113は、インク供給流路101に接続し、第2インク室列112のインク室113は、インク排出流路102に接続する。
【0055】
図5Aは、本実施の形態のアクチュエータである積層ピエゾ素子107の平面図を示し;図5Bは、図5Aに示された積層ピエゾ素子107の斜視図を示す。図5Aおよび図5Bに示されるように、積層ピエゾ素子107の平面形状は6角形であることが好ましい。積層ピエゾ素子107の平面形状を6角形とすれば、積層ピエゾ素子107の駆動面(インクを押す面)107aの面積が増加し、より強い圧力をインクに加えることが可能になるからである。
【0056】
次にインクジェットヘッド100内におけるインクの流れについて、図6を参照しながら説明する。図6は、図4Aに示されたインクジェットヘッド100の平面図に矢印でインクの流れを追加した図である。
【0057】
図6に示されるように、インクはまずインク供給流路101から第1インク室列111のインク室113に供給される。また、上述のように第1インク室列111のインク室113と、第2インク室列112のインク室113とは連通しているので、インクは、第1インク室列111のインク室113を通って、第2インク室列112のインク室113に供給され、最終的にインク排出流路102に流入する。
【0058】
一方、第1インク室列111のインク室113に供給されたインクの一部は、第1インク室列111のインク室113が有するノズル123(第1ノズル列121のノズル123)から吐出される。したがって、第2インク室列112のインク室113に供給されるインクの量は、第1インク室列111のインク室113に供給されるインクの量よりも少なくなる。このため、仮に第1インク室列111と、第2インク室列112とが、同じ数のインク室113を有すると、第1インク室列111で、インクの圧力が高くなり、第2インク室列112でインクの圧力が低くなる。
【0059】
このように、第1インク室列111と、第2インク室列112とでインク圧力がばらつくと、各ノズルから液滴として吐出されるインクの量および速度も一定でなくなる。つまり、第1ノズル列121のノズル123からは、相対的に、多量のインクが高速で吐出され;第2ノズル列122のノズル123からは、相対的に、少量のインクが低速で吐出される。
【0060】
これに対して本発明では、第2インク室列112が有するインク室113の数は、第1インク室列111が有するインク室113の数よりも少ない。このため、第2インク室列112のインク室113に供給されるインクの量が、第1インク室列111のインク室113に供給されるインクの量よりも少なくなったとしても、第2インク室列112のインク室113でインク圧力が低下することが防止される。その結果、各インク室のノズルから吐出されるインクの量および速度も一定となる。
【0061】
(実施の形態2)
実施の形態2では、1つのインク室群が2列のインク室群およびノズル列を有する形態について説明した。実施の形態2では、1つのインク室群が4列のノズル列を有する形態について説明する。
【0062】
図7は、実施の形態2のインクジェットヘッド200の、底面プレートからの平面図である。実施の形態2のインクジェットヘッド200は、インク室群210が4列のノズル列およびインク室列を有する以外は、実施の形態1のインクジェットヘッド100と基本構造が同じである。したがって、実施の形態1のインクジェットヘッド100と同一の構成要素については、同一の符号を付し説明を省略する。
【0063】
図7に示されるようにインクジェットヘッド200におけるインク室群210は、4列のインク室列(第1インク室列211、第2インク室列212、第3インク室列213および第4インク室列214)と、4列のノズル列(第1ノズル列221、第2ノズル列222、第3ノズル列223および第4ノズル列224)とを有する。
【0064】
また図7に示されるように、4列のノズル列が有するノズル123の位置は、重ならない。このため、インク室群におけるノズルピッチは、ノズル列におけるノズルピッチの、1/4になる。このため、本実施の形態のインクジェットヘッド200は、実施の形態1のインクジェットヘッド100よりもさらに高い解像度を有する。
【0065】
また、本実施の形態では、インクジェットヘッド200のノズルピッチPが一定になるよう、インク供給流路101の一方の側部に配置されたインク室群210Aと、インク供給流路101の他方の側部に配置されたインク室群210Bとを一部オーバーラップさせる。このように、ノズルピッチPが一定になるよう、インク室群210Aと、インク室群210Bとを一部オーバーラップさせた結果、ノズル形成領域のインクジェットヘッドをインクの流れ方向Xに対して垂直方向かつ等間隔Dに複数のピースに分割したとき、全てのピースが有するインク室およびノズルの数が同じになる。
【0066】
一方、図8に示されるようにインク室群210Aと、インク室群210Bとをオーバーラップさせなかった場合、インクジェットヘッドのノズルピッチPが、ばらつく領域が発生してしまい、インクジェットヘッドの解像度がばらついてしまう。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明のインクジェットヘッドは、各ノズルから液滴として吐出されるインク量および吐出速度が、ノズルごとに一定にすることができる。よって、インクを塗布される被塗布物に、均一にインクを塗布することができる。
【符号の説明】
【0068】
100、200、インクジェットヘッド
101 インク供給流路
102 インク排出流路
103 インク導入口
104 インク排出口
105 インクタンク
107 積層ピエゾ素子
110、210 インク室群
111、211 第1インク室列
112、212 第2インク室列
213 第3インク室列
214 第4インク室列
113 インク室
115 柱
121、221 第1ノズル列
122、222 第2ノズル列
223 第3ノズル列
224 第4ノズル列
123 ノズル
107 積層ピエゾ素子
150 底面プレート
160 スペーサ
170 上面プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から供給されるインクが流れるインク供給流路と;
前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って、前記インク供給流路の両側部に交互に配置され、インクを吐出するためのノズルを有する2以上のインク室を有するインク室群と;
前記インク室のそれぞれに配置されたアクチュエータと;を有するインクジェットヘッドであって、
それぞれの前記インク室群は、互いに平行で、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行な2以上のインク室列と、互いに平行で、かつ前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行な2以上のノズル列とを有し、前記インク室列は、前記インク室が一列に配列されることで構成され、前記ノズル列は、前記ノズルが一列に配列されることで構成され、
それぞれの前記インク室群では、
前記インク室群内の前記インク室は、隣接するインク室と連通し、
前記インク供給流路に最も近いインク室列を第1インク室列とし、前記インク供給流路から最も遠いインク室列を第nインク室列としたとき、
前記第1インク室列が有する前記インク室の数は、前記第nインク室列が有する前記インク室の数よりも多い、インクジェットヘッド。
【請求項2】
1の前記ノズル列が有するノズルの前記インク供給流路内をインクが流れる方向の位置は、他の前記ノズル列が有するノズルの前記インク供給流路内をインクが流れる方向の位置と重ならない、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項3】
前記インク供給流路の一方の側部に配置された前記インク室群と、前記インク供給流路の他方の側部に配置された前記インク室群とは、一部オーバーラップし、
2以上の前記インク室群が、前記インク供給流路内をインクが流れる方向に沿って、前記インク供給流路の両側部に交互に配置された領域のインクジェットヘッドを、前記インク供給流路内をインクが流れる方向に対して垂直かつ等間隔に複数のピースに分割したとき、
全ての前記ピースが有する前記インク室および前記ノズルの数は同じである、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項4】
前記インク供給流路内をインクが流れる方向に平行であり、かつ前記インク室から排出されたインクが流れるインク排出流路をさらに有し、
前記インク排出流路は、前記第nインク室列のインク室と接続する、請求項1に記載のインクジェットヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェットヘッドを具備するインクジェット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−230411(P2011−230411A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103972(P2010−103972)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】