説明

インクジェットヘッドの洗浄方法とインクジェット印刷装置

【課題】インクジェット印刷装置でインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にするためのインクジェットヘッドの洗浄方法とその方法を用いる洗浄手段を有するインクジェット印刷装置とを提供することを課題としている。
【解決手段】インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出す工程と、押し出された該インクから成る液滴に液膜を形成するための液膜形成部材を接して液膜を形成する工程と、該インクを吸引して、該複数のノズルのインク面をそれぞれ個別に形成する工程を組み込んだ方法によりインク吐出量を一定にできる。また、その方法を用いる洗浄手段を有するインクジェット印刷装置が提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置のインクジェットヘッドの洗浄方法とその方法を用いる洗浄手段を有することを特徴とするインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面に、規則的なパターンを形成するための従来の工法として、フォトリソグラフィー法がある。フォトリソグラフィー法は、感光性の材料を基板などの表面に塗布して、塗膜面を形成し、パターン状に露光した後に、露光の有無による物性の変化を利用して、塗膜の不要な部分を現像して除去し、露光された部分と露光されていない部分から成るパターンを形成する技術で、半導体素子や、プリント配線板、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイなどのエレクトロニクス製品の製造工程に広く用いられる。
【0003】
たとえば、カラーフィルタの製造におけるフォトリソグラフィー法の適用事例を示すと、まず、基板全体に各色の感光性樹脂層の塗布膜を形成し、パターン状に露光した後に塗膜の不要な部分を取り除き、単色で複数の画素からなるフィルタセグメントのパターンを形成する。その後、加熱などにより、形成したフィルタセグメントを硬化させる。これを各色毎に繰り返して、複数の色のフィルタセグメントからなるカラーフィルタを形成する。また、それぞれの画素と画素の間にコントラストを向上させるため黒色のブラックマトリックスを配置するのが一般的である。
【0004】
しかしながら、この方法では塗膜の多くが現像により除去されるため、大量の材料が無駄になるとともに、色の単位であるフィルタセグメントごとに塗膜形成、露光、現像、硬化などの工程を行うため、工程数が多くなるという問題がある。
【0005】
フォトリソグラフィー方式の前記問題は、基板の大型化に伴い顕著となり、工程数が多くなることからコスト高になりやすく、また、各工程に必要な薬剤の処理などに伴う環境対策が必要になるなどの問題を露呈するようになってきた。
【0006】
この問題を克服するために、固体表面に、規則的なパターンを形成するための工法としてインクジェット方式が開発されている(特許文献1〜4)。
【0007】
例えば、インクジェット方式によってカラーフィルタの各色のフィルタセグメントを形成する場合、まず、透明基板にフォトリソグラフィー法などによって撥インク性を持った遮光部としてブラックマトリックスを形成し、その遮光部であるブラックマトリックスを隔壁として、遮光部と遮光部との間にインクジェット印刷装置のインクジェットヘッドのノズルから赤色(R)、緑色(G)、青色(B)などの各色のインクを吐出して着色層であるフィルタセグメントを形成する。
【0008】
このため、フォトリソグラフィー法で形成する場合と比べ、インクの無駄もほとんど発生せず、また、同時に複数の画素を形成することもできるため、製造工程が大幅に短縮される。このため環境負荷の低減と大幅なコストダウンが期待できる。
【0009】
しかしながら、インクジェット印刷装置により着色層を形成する場合、各インクジェットヘッドのノズルから吐出されるインクの吐出量にバラツキが生じることがあるため、ノズル毎の吐出量の調整が必要となる。このノズル毎のインクの吐出量の調整方法にはさまざまなものが提案されている(特許文献5)。
【0010】
しかし、前述した調整方法によりインクジェットヘッドのノズル毎のインクの吐出量を調整した後で、ヘッドのノズル詰まり等が発生した場合などに、インクジェットヘッドの洗浄を新たに実施すると、ノズル毎のインクの吐出量が変わり、再度、吐出量調整工程が必要になる現象が発生する等の問題があった。
【特許文献1】特開平6−347637号公報
【特許文献2】特開平7−35915号公報
【特許文献3】特開平7−35917号公報
【特許文献4】特開平7−248413号公報
【特許文献5】特開平10−278314号広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、以上の事情を鑑みてなされたものであり、インクジェット印刷装置でインクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にするためのインクジェットヘッドの洗浄方法とその方法を用いる洗浄手段を有するインクジェット印刷装置とを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、インクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの洗浄方法において、該インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出す工程と、押し出された該インクから成る液滴に液膜を形成するための液膜形成部材を接して液膜を形成する工程と、該インクを吸引して、複数の該ノズルのインク面をそれぞれ個別に形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0013】
請求項2に記載の発明は、前記インクの前記インクジェットヘッドの前記ノズル表面での接触角の値θ1と、前記インクの前記液膜形成部材での接触角の値θ2が、ともに90°以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0014】
請求項3に記載の発明は、前記θ1と前記θ2の値の関係が、θ1>θ2の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記インクジェットヘッドとの距離を一定に保つための機構を有する液膜形成部材を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0016】
請求項5に記載の発明は、前記洗浄方法において、複数の前記ノズルをワイピング部材により一括で拭く工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法である。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段を有することを特徴とするインクジェット印刷装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の本発明により、インクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの洗浄方法において、該インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出す工程と、押し出された該インクから成る液滴に液膜を形成するための液膜形成部材を接して液膜を形成する工程と、該インクを吸引して、複数の該ノズルのインク面をそれぞれ個別に形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法により、インクの吐出の直前の各ノズルにおけるインク面とインクジェットヘッドのインク吐出面との距離を均一にすることができるため、インクの吐出量を同一にすることができる。
【0019】
請求項2に記載の本発明により、前記インクの前記インクジェットヘッドの前記ノズル表面での接触角の値θ1と、前記インクの前記液膜形成部材での接触角の値θ2が、ともに90°以下の範囲にあることで、インクジェットヘッドから吐出されるインクの着弾精度、吐出性、吐出スピードなどが良好となる。
【0020】
請求項3に記載の本発明により、前記θ1と前記θ2の値の関係が、θ1>θ2の関係にあることで、インクジェットヘッドと液膜形成部材との間にインクによる液膜を形成後、該インクを吸引して、複数の該ノズルのインク面をそれぞれ個別に形成する工程を実施する際に、インクジェットヘッドよりも、液膜形成部材にインクが付着しやすくなり、インクジェットヘッドの洗浄後のインクの吐出量を同一にしやすくなる。
【0021】
請求項4に記載の前記インクジェットヘッドとの距離を一定に保つための機構を有する液膜形成部材を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法により、インクジェットヘッドの洗浄後のインクの吐出量を一定にすることができるインクジェットの洗浄方法を提供できる。
【0022】
請求項5に記載の本発明により、前記洗浄方法において、複数の前記ノズルをワイピング部材により一括で拭く工程を実施することで、インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出す工程だけでは、取り除くことが困難なインクジェットノズル表面の乾燥インクや余分なインクを除去することができる。
【0023】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段を有することを特徴とするインクジェット印刷装置を用いることにより、インクジェットヘッドのノズルからインクを吐出する際のインクの吐出量を一定にすることのできるインクジェット印刷装置を提供できる。
【0024】
本発明によるインクジェット印刷装置は、半導体素子や、プリント配線板、液晶表示装置、プラズマ表示装置、EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイなどの製造工程や薄膜トランジスタの製造工程や、マイクロレンズの製造工程、またバイオチップの製造工程などに用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
前記のように、インクジェットヘッド洗浄を実施した後に、ノズル毎のインクの吐出量が変わる現象が生じることが知られているが、本件について、本発明者らが検討の結果、この原因は、インクジェットヘッドの複数のノズルのインク面が、吐出前にそれぞれ個別に形成される際に、各ノズルのインク面とヘッドのインクインク吐出面との距離が、それぞれ各ノズル毎に異なり、各ノズルに同じ量のインクが供給されたときに、結果的に各ノズルからのインクの吐出量が異なり、バラツキが発生するためと考えるに至った。
【0026】
以下、本発明の好適な実施形態について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0027】
次にインクジェット印刷装置の例を図1と図2に沿って説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0028】
インクジェット印刷装置の一例として、図1を用いて水頭差を用いたインクジェット印
刷装置の構成の一例について説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0029】
図1において、インク供給タンク11に入っているインク21は、インク供給用チューブ31を通じてサブタンク4に供給される。このとき、サブタンク4におけるインク22の高さが同じになるようにインク供給タンク11への加圧303によりインク供給タンク11からの供給量を調整する。また、サブタンク4の圧力は、サブタンク4の大気解放部41により大気に解放されており、大気圧となる。インクジェットヘッド5へのインク22の供給は、サブタンク4からインク供給用チューブ32により行われる。このサブタンク4のインク面の高さと、インクジェットヘッド5の先端との高さの差の水頭差による圧力301から、インク供給用チューブや、インクジェットヘッドなどの圧力損失を引いた差分が、インクジェットヘッド5からのインクの吐出圧力となる。
【0030】
また、サブタンク32のインク面の高さを、インクジェットヘッド5の先端の高さより相対的に低くすることで、インクジェットヘッド5に吸引圧力を印加し、インク2を吸引することもできる。
【0031】
この水頭差を利用した吐出方法では、メカニズムは比較的簡便ではあるが、大気に触れている液面が乾燥してサブタンク4の内周面に固形物として付着して蓄積しやすくなり、その付着物がインクジェットヘッド側に送り出されて、ノズル詰まり等の吐出不良を起こす等の問題が生じることがある。
【0032】
この問題を防ぐために、たとえば、全体を密閉系として、インクが乾燥しない手段を講じるとともに、インクジェットヘッドからのインクの吐出圧力をポンプにより得る方式を用いてもよい。
【0033】
次にインクジェット印刷装置の構成の一例として、ポンプを利用したインクジェット印刷装置の構成の一例を図2により説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0034】
図2において、インクジェット印刷装置で使用されるインク23は、供給タンク12に貯蔵されており、インク供給用チューブ33を通ってポンプ6のインク吸引側へ供給される。ポンプ6のインク送出側は、インク供給用チューブ34でインクジェットヘッド5に接続され、該ポンプ6から送出圧力を印加して、インク23をインクジェットヘッド5に送出する。この送出圧力から、インクジェットヘッド5や、インク供給チューブ34などでの圧力損失を引いた差分がインクジェットヘッド5からのインクの吐出圧力となる。
【0035】
図2において、インク送出手段であるポンプ6を駆動するために、モータ61を用いる。該モータ61としては、サーボモータを用いてもよい。差圧センサの差圧情報401は、データ変換により、インクの送出量となるが、差圧センサの情報信号パス411によって制御装置400に伝送される。従って、その差圧情報401を基に、制御装置400によって該サーボモータを駆動制御することで、インクの送出量の制御を行うことができる。
【0036】
前記インク23の送出量を制御するための前記駆動制御方法としては、前記差圧センサの差圧情報401を基にフィードバック制御を行ってもよい。また、事前のデータ群を基にフィードフォワード制御などの制御を行ってもよい。制御アルゴリズムとしては、通常のPID制御方式や、ディジタル制御方式などをもちいることができる。
【0037】
ポンプ6として、たとえば、ダイヤフラムポンプを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
前記ポンプ6がダイヤフラムポンプのような流路が一方向に規定されているポンプの場合には、送出側と吸引側とに切り替えバルブを設定し、制御装置400で必要に応じて送出側と吸引側を切り替えて用いてもよい。
【0039】
次にカラーフィルタ用インクジェット印刷装置の構成の一例を図3に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
図3において、インクジェットヘッド5とテーブル73とは相対的に位置が固定されており、また、基板71は、可動ステージ72に固定され、該可動ステージ72は、該テーブル73の上を移動することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
図3において、前記インクジェットヘッド5のノズルから吐出されるインクは、可動ステージ72に設置された被対象物に吐出される。
【0042】
たとえば、ディスプレイ用のカラーフィルタを製造する場合では、前記被対象物である基板71上に、前記インクが吐出される。該基板71上には、事前に、遮光層の機能を果たすブラックマトリックスが形成されている。
【0043】
前記ブラックマトリックスは、前記インクが吐出される際に、カラーフィルタの着色層となる各色のフィルタセグメント同士の隔壁としての機能もはたし、該フィルタセグメントの形成される位置の間に配置される。
【0044】
この前記ブラックマトリックスは、基板上にライン状や、マトリクス状等のパターンに設けられ、基板の表面を多数の領域に区分けすると共に、この多数の領域のそれぞれに吐出されたインクの混色を防止する機能を有する。
【0045】
また、前記ブラックマトリックスは、樹脂組成物、樹脂バインダーを含有する隔壁形成用の材料を含む。さらに、該隔壁形成用の材料に黒色の顔料を加えると、ブラックマトリックスの遮光性を増すことができ、表示画面のコントラストを向上することができる。
【0046】
例えば、前記ブラックマトリックスを、フォトリソグラフィー法によって形成する場合には、前記樹脂組成物として感光性を付与した感光性樹脂組成物を用いることができる。また、印刷法で形成する場合には熱硬化性樹脂組成物を用いることができる。必要によって、さらに該ブラックマトリックスの材料に、レベリング剤、連鎖移動剤、安定剤、界面活性剤、カップリング剤等を加えることができる。
【0047】
前記樹脂バインダーは、前記ブラックマトリックスを基板に固着させて固定すると共に、該ブラックマトリックスに耐インク性を付与するものである。該樹脂バインダーの材料としては、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等を含有しているものがあり、これらの該樹脂バインダーは単独で用いても、2種類以上混合してもよい。
【0048】
また、前記ブラックマトリックス用の材料に含フッ素化合物や含ケイ素化合物等の撥インク剤を適量添加することで、適度な撥インク性を持たせてもよい。
【0049】
前記基板71をのせた前記可動ステージ72は、前記テーブル73の上に設置され、該テーブル73上で縦方向のYまたはY‘の方向に動くことができる。また、横方向のXまたはX’の方向に動くこともできる。その動きは、前記制御装置400によって制御される。また、該テーブル73における該可動ステージ72の位置情報402は、該可動ステージ72の位置情報信号パス412により、該制御装置400に伝達されて演算の結果、制御信号が、該制御装置400からモータの制御信号パス421によって伝達されて、ポンプ6のモータ61が制御される。
【0050】
図3において、インクジェットヘッド5からのインクの吐出は、前記制御装置400によって前記ポンプ6のモータ61の制御によって行われる。また、前記可動ステージ72の位置情報402などの情報により該可動ステージ72の移動と該インクの吐出とが同期して制御される。これらの制御により、基板上の前記ブラックマトリックスの間に該インクが精度良く吐出され、着色層であるフィルタセグメントが形成される。
【0051】
前記カラーフィルタの着色層である前記フィルタセグメントを形成するためのインクには溶剤と着色剤を含有する着色組成物との混合物を用いる。
【0052】
前記着色剤としては従来のカラーフィルタの製造に使用されている公知の顔料や染料のいずれも用いることができる。また、該カラーフィルタの分光調整のために、複数の着色剤を組み合わせて用いることもできるが、前記溶剤を除く該インクの全固形分の合計質量に締める割合が、3から70質量%であることが好ましい。該インクに含まれる前記溶剤の含有量は、該インクに占める全固形分濃度が、5から40質量%となるように調整するのが望ましい。また、該インクに銀、銅等の金属粒子や、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基を有する樹脂を組成物として含んでもよい。
【0053】
前記顔料としては、有機または無機の顔料を単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。該顔料としては、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。
【0054】
次に、着色組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。赤色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Red 7、14、41、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、81:4、146、168、177、178、179、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272、279等の赤色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用することもできる。黄色顔料としては、C.I. Pigment
Yellow1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、198、213、214等が挙げられる。
【0055】
また緑色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37等の緑色顔料を用いることができ、黄色顔料を併用できる。黄色顔料としては、赤色着色組成物のところで挙げた顔料と同様のものが使用可能である。
【0056】
青色着色組成物には、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64等の青色顔料を用いることができ、紫色顔料を併用できる。紫色顔料としては、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等が挙げられる。
【0057】
また、前記顔料として無機顔料を用いることも可能であり、具体的には黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、金属粉等が挙げられる。無機顔料は、彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、現像性等を確保するために、有機顔料と組み合わせて用いるのが望ましい。
【0058】
前記溶剤としては、例えばシクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いることができる。
【0059】
図3において、前記可動ステージ72を移動させるための制御信号は、該可動ステージ72の制御信号パス422により前記テーブル73に接続されて、該テーブル73の内部で該可動ステージ72に接続され、伝達されているが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0060】
前記基板71としては、硝子基板、石英基板、プラスチック基板等、公知の透明基板材料を使用することができるが、透明性、強度、耐熱性、対候性において優れた硝子基板を使うのが望ましい。
【0061】
次にインクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの例を図4により説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
インクジェット印刷装置用のインクジェットヘッド部の一例を図4(a)に示す。ここで、底面のBの方向からみたインクジェットヘッドのインク吐出面51の拡大図を図4(b)に示す。また、この図において、インクジェットヘッド5のインク吐出面51の短軸方向の長さの1/2の位置のA−A’での断面図のインク吐出側の一部を、(c)に示す。A−A’断面の方向を図4(b)に矢印で示した。インクジェットヘッド5のインク吐出面51の表面には複数のノズル52があり、ここからインクが吐出される。
【0063】
インクジェットヘッドから吐出されるインク24に吐出圧力を印加しない状態でのノズル表面54でのインク24の表面形状を、図4(d)、(e)に示す。ここで示すように、吐出圧力が印加されない状態では、インク24とインクジェットヘッドのノズル表面54との表面張力の差によって、インク吐出面51近傍及びノズル52内部でのインク面の表面はメニスカスの形状となる。
【0064】
このとき、インク24のインクジェットヘッドのノズル表面54での接触角の値θ1の値が、90°より小さい場合のメニスカス面201は、図4(d)のように、ノズル52の内部に向かってへこむ凹型の形状となり、90°より大きな場合のメニスカス面202は、図4(e)のようにノズルの外部に向かって凸型の形状となる。
【0065】
ここで、インクジェット印刷装置用としては、メニスカス面の形状が、インクの接触角が90°より小さい場合である図4(d)の方が、インク24を吐出する際の着弾精度、吐出性、吐出スピードなどが、良好であり、望ましい。
【0066】
次にインクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの従来の洗浄方法の一例を図5
と図6に基づいて説明する。
【0067】
図5の(a)、(b)、(c)、(d)の斜線部は、それぞれ前記図4の(c)に示すのと同様のインクジェットヘッドの断面を示す。
【0068】
図5の(a)の状態から、次に、図5の(b)に示す、矢印のZの方向にインク24に吐出圧力を印加する。すると、図5の(c)に示すように、インク液滴25が、インクジェットヘッド5のノズル52から矢印の下方向であるZの方向に押し出される。このとき、ノズル52内部の乾燥インクが除去され、ノズル52が洗浄される。
【0069】
次に、図5の(d)に示すように、インクジェットヘッド5からインク24を矢印のZ'の方向に吸引させインクジェットヘッド5のインク吐出面51のインクをノズル52の内部に引く。この時、インクジェットヘッドのインク吐出面51に残留していたインク2が図5(c)のように、均一に分散して、また、ノズル52内部で、均一にインク24が吸引されれば、図5(d)に示すように、複数の各ノズル52におけるインクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面の高さ200を同一に保つことができる。この場合は、次に、インクを吐出する際、各ノズルからの吐出量が一定となる。
【0070】
しかしながら、図6(b)に示すように矢印のZの方向にインク24を加圧後、部分的にインク液滴25が滴下するなどの理由で、インク吐出面51のインク24が不均一に分散していると、図6(c)で示すように、矢印のZ’の方向にインク24を吸引したときに、それぞれのノズル52近傍の該インク24の量が不均一にも関わらず、吸引されるインク24の量が同じなため、図6(d)のような状態となる。このとき、図6(d)に示すように、各ノズル52のインクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面の高さ200のインク吐出面51からの高さにバラツキが発生し、その結果、ノズル洗浄後に、各ノズルからのインクの吐出量が異なることになり、塗布のむらによる不良が発生する。また、場合によっては、エアを巻き込んで不吐出が発生することもある。
【0071】
本発明は、そのような状況に対応するために、インクジェットヘッドの洗浄方法に液膜形成部材を用いることを特徴とする。
【0072】
次に、図7を用いて、本発明に基づく液膜形成部材を用いたインクジェットヘッド洗浄方法と該洗浄方法を用いる洗浄手段の一例について説明をするが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0073】
前記液膜形成部材81は、図7(a)に示すように、長軸方向の重心で、液膜形成部材固定軸接合部82によって、液膜形成部材固定軸83と接続されている。液膜形成部材固定軸接合部82は、球状で、その半分以上が、液膜形成部材81の球形の一部の形状をなす中空の部分に覆われており、ベアリングのような機能を果たし、液膜形成部材81が、液膜形成部材固定軸接合部82の中心を回転の中心点として、液膜形成部材固定軸83に規定される範囲の回転方向に自由に動くことが可能となっている。また、液膜形成部材固定軸接合部82の可動できる自由度を、図7(a)の紙面の面内の回転方向のみに制限して、紙面と垂直な方向には動かないようにしてもよい。
【0074】
液膜形成部材固定軸83は、図7(a)の上方向である矢印のZ’の方向、または、下方向であるZの方向に動くことができる。このとき、液膜形成部材固定軸83と液膜形成部材固定軸接合部82で接続された液膜形成部材81が同時に上下に動くことができる。また、このようにして、液膜形成部材81が上下に動く際は、水平に保たれていることが望ましい。
【0075】
次に、液膜形成部材81を用いたインクジェットヘッドの洗浄方法について説明する。まず、図7(a)に示すように、矢印のZの方向への加圧により押し出したインク液滴24に、前記液膜形成部材固定軸83を矢印のZ’の方向に動かして近づけていくことにより液膜形成部材81を距離L1の位置からインクジェットヘッド5に近づけていく。
【0076】
さらに近づけていくと、前記液膜形成部材81がインク24と接し、さらに図7(b)に示すように、インクジェットヘッドのインク吐出面51と液膜形成部材81との間に、高さL2の位置で水平方向に連続的にインクが充填された状態になり、インク液膜26が形成される。
【0077】
前記インクジェットヘッドのインク吐出面51でのインクの接触角の値と、該インクの前記液膜形成部材81での接触角の値θ2が、ともに90°以下の範囲にあるとき、該インクジェットヘッドのインク吐出面51と液膜整形部材81との間には、インク液膜26の表面張力により張力が生じ、また、前記液膜形成部材81は、前記液膜形成部材固定軸接合部82にて前記液膜形成部材固定軸83と自由に動くように接続されているため、前記インクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材81との距離は横方向で同一の高さに自動的に保たれる。
【0078】
このようにして、前記液膜形成部材81の回転方向の動作を可能とする液膜形成部材固定軸接合部82と上下動を可能とする液膜形成部材固定軸83の機構とを用いることによって、インク液膜26の表面張力により、該液膜形成部材81を、前記インクジェットヘッドとの距離を一定に保つための機構を有する液膜形成部材、とすることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0079】
次に、図7(b)に示すように、インク液膜26を形成するインクを矢印Z’の方向に吸引しながら、液膜形成部材81を矢印のZ’の方向にインクジェットヘッド5を近づけ、図7(c)に示すダンパー101,102で規定される距離L3の位置まで近づける。このインクジェットヘッドの横の両側に同じ高さで配置されたダンパー101、102がともに接触した位置L3で、液膜形成部材81のインクジェットヘッド5へ近づける動きを止め、同時にインクの吸引を止める。
【0080】
次に、図7(d)に示すように、液膜形成部材81をインクジェットヘッド5から遠ざける方向である矢印のZの方向に動かし、インクジェットヘッド5と液膜形成部材81との間に連続的に形成されたインク液膜が無くなり、それぞれインク液膜27とインク液膜28とに分離された状態とする。
【0081】
また、前記インクジェットヘッドのインク吐出面51の表面でのインクの接触角の値θ1と、前記液膜形成部材81でのインクの接触角の値θ2との関係が、θ1>θ2であるほうが、液膜形成部材81がインク28をより吸着しやすくなるため望ましいが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0082】
次に、図7(e)に示すように、インク27を矢印のZの方向に吸引し、インクジェットヘッド5のノズル52にインクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面200が現れるようにする。
【0083】
前記液膜形成部材81の材質としては、ステンレスなどの金属やセラミクス、多孔性セラミクス、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネートやポリイミドなどのプラスチックフィルムを用いることができる。また、表面に無機質の薄膜をコーティングしたプラスチックフィルムなどのコンポジット材料をもちいてもよい。これらの表面におけるインクの接触角θ2の値が90°以下となるような加工や表面処理を施すことが望ましいが、これに限定される訳ではない。
【0084】
前記液膜形成部材81の形状は、前記インクジェットヘッドのインク吐出面51と垂直の短軸方向の断面が、図8(a)に示すように円形や、(b)に示すような長方形を含む多角形などでもよいが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0085】
また、カラーフィルタの生産工程においては、ガラス基板上へのインクジェット法による塗工後、次のガラス基板の投入までには、時間があるため、インクジェットヘッドのインク吐出面の乾燥インクの除去とプロセスの安定化等の前準備を目的として極短時間のインク吐出である予備吐出を行い、その後、次のガラス基板上にインクを塗工することがある。この予備吐出において、吐出の被対象物として金属ロールを用いることがあるが、この金属ロールを液膜形成部材81として使用してもよい。
【0086】
前記液膜形成部材81の長軸方向の長さは、対応するインクジェットヘッド5のインク吐出面51の長軸方向よりも長いことが望ましい。
【0087】
ダンパー101、102がともに接触する位置L3の値は、インク粘度や接触角によってその最適範囲が異なるが、その範囲の中でよりインクジェットヘッド面との距離が狭い方がインクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面の高さを均一にそろえやすいため望ましい。
【0088】
また、インクジェットヘッド5のノズル52の洗浄の後に、さらなるインクジェットヘッドの洗浄方法としてワイピング部材でインクジェットヘッドのインク吐出面51を拭く方法であるワイピングを行ってもよい。該ワイピングにより、インクジェットヘッドのインク吐出面51の乾燥インクや余分なインクを除去することができる。
【0089】
次にインクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの洗浄方法においてワイピング部材により一括で拭く方法を、図9により説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0090】
図9の(a)にインクジェット印刷機用のインクジェットヘッド5の平面図を示す。この図において、Cの方向からの側面図を、図9の(c)、(d)、(e)、(f)に示す。
【0091】
図9の(b)に、インクジェットヘッド5とワイピング部材91を示す。ワイピング部材91により、インクジェットヘッドのインク吐出面51を拭くことができる。
【0092】
図9の(c)に示すように、ワイピング部材91をEの方向に移動させる。
【0093】
図9の(d)に示すように、ワイピング部材91がEの方向に移動して、インクジェットヘッドのインク吐出面51と接触するようにする。
【0094】
図9の(e)に示すように、ワイピング部材91をインクジェットヘッドのインク吐出面51と接触したままEの方向に移動させる。これにより、インクジェットヘッドのインク吐出面51全体を拭くことができる。
【0095】
図9の(f)に示すように、ワイピング部材91がインクジェットヘッドのインク吐出面51と接触したままEの方向に移動して、インクジェットヘッドのインク吐出面から離れた位置で移動を止める。このようにして、ワイピング部材でインクジェットヘッドのインク吐出面を拭くことをワイピングと呼ぶ。次に、ワイピング部材91を、図9の(c)
の位置に移動させて、次のワイピングに備えて、この位置で待機させる。
【0096】
前記ワイピング部材としては、有機高分子材料または無機高分子材料の織布または多孔性のシートなどを用いることができるが、その限りではない。
【0097】
次に、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段を有するインクジェット印刷装置の構成の一例を図10により説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0098】
図10において、インク23が、インク供給タンク12からポンプ6により、インクジェットヘッド5に供給され、インクが吐出される。このとき、インクは、切り替えバルブ62により、ポンプからの送出側とポンプへの吸引側とを切り替えることができる。このため、インクジェットヘッド5からインクを吐出することと、インクジェットヘッド5からインクを吸引することが該切り替えバルブ62の切り替えにより可能である。
【0099】
図10において、前記インクジェットヘッド5は、印刷ゾーン7とインクジェットヘッド洗浄ゾーン8とワイピングゾーン9のそれぞれのゾーンに移動することが可能である。
【0100】
前記印刷ゾーン7では、インク吐出の被対象物である基板71に印刷を行うことができる。基板71は、可動ステージ72に固定されており、可動ステージ72は、テーブル73の上をX−X’の方向及び、Y−Y’の方向の方向で移動できる。
【0101】
前記インクジェットヘッド洗浄ゾーン8では、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いた洗浄手段により、前記インクジェットヘッド5の洗浄を行うことができる。
【0102】
前記ワイピングゾーン9では、前記インクジェットヘッド5のインク吐出面のワイピングを行うことができる。
【0103】
図10において示すように、印刷ゾーンにおいては、可動ステージ72の位置情報402が、印刷ゾーン関連情報信号パス412により、制御装置400に入力される。また、差圧センサの差圧情報401が差圧センサの情報信号パス411により、制御装置400に入力される。これらの情報に基づき、モータの制御信号パス421と可動ステージの制御信号パス422により、制御装置400からの制御信号が伝達され、モータ61と可動ステージ72の制御が行われる。このとき、切り替えバルブ62により、ポンプ6からのインク供給側が、インクジェットヘッド5に接続され、また、ポンプ6へのインクの吸引側がインク供給タンク12に接続されている。
【0104】
図10において示すように、インクジェットヘッド洗浄ゾーン8においては、ダンパー101の接触情報4031とダンパー102の接触情報4032と液膜形成部材の位置情報4033とが、インクジェットヘッド洗浄ゾーン関連信号パス413により、制御装置400に入力される。また、差圧センサの差圧情報401が差圧センサの情報信号パス411により、制御装置400に入力される。これらの情報に基づき、モータの制御信号パス421と液膜形成部材固定軸の制御信号パス423により、制御装置400からの制御信号が伝達され、モータ61と液膜形成部材用ダンパー101の可動機構103と液膜形成部材用ダンパー102の可動機構104と液膜形成部材可動機構84の制御が行われる。このとき、切り替えバルブ62により、ポンプ6からのインク供給側とインク吸引側とが状況に応じて制御装置400によって切り替えられ、インクジェットヘッドからのインクの吐出と吸引を切り替えることができる。
【0105】
図10において示すように、ワイピングゾーン9においては、ワイピング部材91の位置情報404が、ワイピングゾーン関連情報信号パス414から制御装置に入力される。また、差圧センサの差圧情報401が差圧センサの情報信号パス411により、制御装置400に入力される。これらの情報に基づき、モータの制御信号パス421とワイピング部材91の制御信号パス424により、制御装置400からの制御信号が伝達され、モータ61とワイピング部材可動機構92が制御される。このとき、インクはインクジェットヘッドに供給されない状態となる。
【実施例】
【0106】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0107】
本発明の実施例として、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いたインクジェットヘッドの洗浄手段を組み込んだインクジェット印刷装置によりカラーフィルタを作製した。また、比較例として、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いたインクジェットヘッドの洗浄手段を組み込まないインクジェット印刷装置でカラーフィルタを作製して、それぞれの色むらの発生の状態で本発明の効果を評価した。ただし、本発明の評価方法はこれに限定されるわけではない。
【0108】
次に、図10を用いて、本発明によるインクジェット印刷機によりカラーフィルタを作製する手順について説明するが、本発明はこれに限定されるわけではない。
【0109】
最初に、本実施例のカラーフィルタを作製するための基板の準備として、カラーフィルタ用のブラックマトリックスをフォトリソグラフィー法により基板上に形成した。該基板として無アルカリガラスを用いた。
【0110】
まず、前記基板の全面に、フッ素樹脂を含む感光性樹脂組成物を膜厚2μmの薄膜状に塗布した。その後、格子状のパターンを有するフォトマスクによりパターンを露光して、アルカリ現像溶液にて現像を行った。該基板をオーブンに入れ、熱硬化処理を行って、ブラックマトリックスを形成した基板とした。
【0111】
このブラックマトリックスの光透過性を示すOD値(Optical Density;光学濃度)を測定したところ、充分な遮光性を有することから、いずれも光遮光層として使用できることを確認した。これにより、以下の評価における色むらの発生にブラックマトリックスは関与しない状態であることを確認して、以下、ブラックマトリックスを形成した基板として用いた。
【0112】
次に、インクの調製を行った。まず、溶剤を除くインクの全固形分の合計質量に締める顔料の割合が50質量%で必要な分光特性となるように調整し、該溶剤を該インクに占める全固形分濃度が30質量%となるようにしてインクを調製した。
【0113】
インクジェット印刷装置で使用される前記インク23は、インク供給タンク12に貯蔵されている。インクジェットヘッド5からのインクの吐出の際には、該インク供給タンク12側のインク供給用チューブ33をダイヤフラムポンプ6のインク吸引側へと接続した。また、インクジェットヘッド5側のインク供給チューブ34を該インク23を送出するダイヤフラムポンプ6のインク送出側と接続した。
【0114】
また、インクの吸引の際には、切り替えバルブ62により接続を切り替えて、該インクジェットヘッド5側を該ダイヤフラムポンプ6の前記インク吸引側に接続し、前記インク供給タンク側を前記ダイヤフラムポンプ6のインク送出側と接続した。
【0115】
図10において、インクジェットヘッド5を印刷ゾーン7に移動させ、次に説明する工程を実施した。
【0116】
実施例として評価するカラーフィルタの作製の前に、インクの吐出条件の条件出しを行った。その手順を次に説明する。
前記にて作製したブラックマトリックスを形成した基板71を可動ステージ72に固定した。該基板71にインクジェット印刷装置を用いて赤、青、緑からなるインクの吐出を、吐出条件を変えてそれぞれ基板上の異なる場所に行い、それぞれカラーフィルタパタンを形成した。カラーフィルタパタンを形成した該基板を240℃、20分の条件にてオーブンで熱処理することにより、それぞれの条件のカラーフィルタを得た。
【0117】
得られたカラーフィルタを蛍光灯の光源を用いて、着色層形成領域をCCDカメラで撮影し画像として記録した。その後、この画像の濃淡分布を解析し、輝度分布として算出し、色むらのない吐出条件の検討を行って、各色のインクの吐出条件を決定した。
【0118】
次に、このようにして決定した各色のインクの吐出条件に従って、以下の評価の基準となる参照用カラーフィルタを作製した。次にその手順を説明する。
【0119】
まず、図10において、前記ブラックマトリックスを形成した基板71を可動ステージ72に固定し、インクジェットヘッド5を印刷ゾーンに移動させた。次に、インクジェットヘッドにより、赤、青、緑からなる各色のインクの吐出を行って、該基板71上に、カラーフィルタパタンを形成した。
【0120】
前記カラーフィルタパタンを形成した基板を240℃、20分の条件にてオーブンで熱処理することにより、カラーフィルタを作製した。評価の結果、色むらの無いカラーフィルタを得ることができた。このようにして参照用カラーフィルタを作製した。
【0121】
次に、本発明によるインクジェット印刷機用のインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段をインクジェットヘッドに実施した後に、前記と同様にしてカラーフィルタを作製して、前記参照用カラーフィルタと色むらについて比較した。
【0122】
まず、インクジェットヘッドの洗浄を行うために、インクジェットヘッド5をインクジェットヘッド洗浄ゾーン8に移動させた。
【0123】
図10において、インク供給タンク12を加圧し、インクジェットヘッド5のノズルからインクを押し出すことで、ノズル内部の乾燥インクを除去した。
【0124】
次に、前記にて図7により説明した手順で、ステンレス製のシリンダー状の液膜形成部材81を用いて、インクジェットヘッドの洗浄を行った。なお、この時、図7(c)においてインクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材81との距離L3を500μmとした。このようにして、インクジェットヘッドの各ノズルのインクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面200の高さが均一となるようにした。
【0125】
次に、インクジェットヘッド5をワイピングゾーン9に移動させた。前記にて図8により説明した手順で、インクジェットヘッドのインク吐出面のワイピングを行った。
【0126】
このようにして、インクジェットヘッド5の洗浄を行った後、インクジェットヘッド5を印刷ゾーン7に移動させた。
【0127】
図10の可動ステージ72上に、前記ブラックマトリックスを形成した基板71を固定し、インクジェットヘッドにより、前記の色むらのない吐出条件に基づいて赤、青、緑からなる着色インクの吐出を行い、カラーフィルタパタンを形成した後、240℃、20分の条件にてオーブンで熱処理することにより、カラーフィルタを作製した。
【0128】
前記カラーフィルタを前記参照用カラーフィルタと比較したところ、色むらについては同等の品質の、色むらの無いカラーフィルタを得ることができた。
【0129】
<比較例>
次に、比較例として、本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法を用いたインクジェットヘッドの洗浄手段を組み込まないインクジェット印刷装置でカラーフィルタを作製して、色むらの発生の状態を評価した。
【0130】
図10においてインクジェットヘッド5をインクジェットヘッド洗浄ゾーン8に移動させた。ただし、以下では、液膜形成部材81を用いない前記の従来の洗浄方法によりインクジェットヘッド5を洗浄した。
【0131】
まず、図10において、インク供給タンク12を加圧し、インクジェットヘッド5のノズルからインクを押し出すことで、ノズル内部の乾燥インクを除去した。
【0132】
次に、図6(c)のように、Z’の方向に、インクを吸引し、図6(d)に示すように、インクジェットヘッドのインク吐出面で、すべてのノズルからインクがはみでていないように、インクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面200の高さを調整した。このとき、インクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面200の高さは、ノズル毎に異なる高さとなった。
【0133】
次に、インクジェットヘッド5をワイピングゾーン9に移動させた。前記にて図8により説明した手順で、インクジェットヘッドのインク吐出面のワイピングを行った。
【0134】
このようにして、インクジェットヘッド5の洗浄を行った後、インクジェットヘッド5を印刷ゾーン7に移動させた。
【0135】
図10の可動ステージ72上に、前記ブラックマトリックスを形成した基板71を固定し、インクジェットヘッドにより、前記の色むらのない吐出条件に基づいて赤、青、緑からなる着色インクの吐出を行い、カラーフィルタパタンを形成した後、240℃、20分の条件にてオーブンで熱処理することにより、カラーフィルタを作製した。
【0136】
前記参照用カラーフィルタと色むらについて比較して評価した。その結果、比較例のカラーフィルタにおいては、色むらの不良が発生しており、色むらについて同等の品質のカラーフィルタを得ることができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】水頭差を利用したインクジェット印刷装置の一例を示す説明図である。
【図2】ポンプを利用したインクジェット印刷装置の一例を示す説明図である。
【図3】カラーフィルタ用インクジェット印刷装置の一例を示す説明図である。
【図4】インクジェット印刷装置用インクジェットヘッドとインクジェットヘッドのノズルのメニスカスを説明する図である。
【図5】インクジェットヘッドの従来の洗浄方法を説明する図である。
【図6】インクジェットヘッドの従来の洗浄方法で不具合が発生する原因を説明する図である。
【図7】本発明によるインクジェットヘッドの洗浄方法とそれを用いた洗浄手段を説明する図である。
【図8】液膜形成部材の形状を説明する図である。
【図9】インクジェットヘッドをワイピング部材で拭き取るワイピング方法とワイピング手段を説明する図である。(a) インクジェットヘッドの平面図である。(b) インクジェットヘッドとワイピング部材との関係を示す平面図である、(c),(d),(e),(f) インクジェットヘッドのワイピングを示す側面図である。
【図10】本発明のインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段を有することを特徴とするインクジェット印刷装置の一例を説明する図である。
【符号の説明】
【0138】
1・・・・インク供給タンク
11・・・水頭差を用いたインクジェット印刷装置のインク供給タンク
12・・・ポンプを用いたインクジェット印刷装置のインク供給タンク
2・・・・インク
21・・・インク液滴
22・・・インク液滴
23・・・インク液膜
24・・・インク液膜
25・・・インク液膜
3・・・・インク供給用チューブ
31・・・インク供給用チューブ
32・・・インク供給用チューブ
33・・・インク供給用チューブ
34・・・インク供給用チューブ
4・・・サブタンク
41・・・サブタンクの大気開放部
5・・・インクジェットヘッド
51・・・インクジェットヘッドのインク吐出面
52・・・インクジェットヘッドのノズル
53・・・インクジェットヘッドのA-A'における断面
54・・・インクジェットヘッドのノズル表面
6・・・・ポンプ
61・・・モータ
62・・・切り替えバルブ
7・・・・印刷ゾーン
71・・・基板
72・・・可動ステージ
73・・・テーブル
8・・・・インクジェットヘッド洗浄ゾーン
81・・・液膜形成部材
82・・・液膜形成部材固定軸接合部
83・・・液膜形成部材固定軸
84・・・液膜形成部材可動機構
9・・・・ワイピングゾーン
91・・・ワイピング部材
92・・・ワイピング部材可動機構
10・・・液膜形成部材用ダンパー
101・・液膜形成部材用ダンパー
102・・液膜形成部材用ダンパー
103・・液膜形成部材用ダンパー101の可動機構
104・・液膜形成部材用ダンパー102の可動機構
200・・・インクジェットヘッドからインクを吐出する際のインク面
201・・・インクの接触角の値が90°より小さな場合のメニスカス面
202・・・インクの接触角の値が90°より大きな場合のメニスカス面
300・・・・インクジェットヘッドからのインクの吐出圧力
301・・・インクジェットヘッドとサブタンクとの水頭差による圧力
302・・・ポンプからのインクの送出圧力
303・・・インク供給タンクへの印加圧力
400・・・・制御装置
401・・・差圧センサの差圧情報
402・・・可動ステージの位置情報
4031・・・ダンパー101の接触情報
4032・・・ダンパー102の接触情報
4033・・・液膜形成部材の位置情報
404・・・ワイピング部材の位置情報
405・・・切り替えバルブの状態情報
411・・・差圧センサの情報信号パス
412・・・印刷ゾーン関連情報信号パス
413・・・インクジェットヘッド洗浄ゾーン関連信号パス
414・・・ワイピングゾーン関連情報信号パス
415・・・切り替えバルブの状態情報信号パス
421・・・モータの制御信号パス
422・・・可動ステージの制御信号パス
423・・・液膜形成部材固定軸の制御信号パス
424・・・ワイピング部材の制御信号パス
425・・・切り替えバルブの制御信号パス
A−A'・・インクジェットヘッドの断面図の切断位置
B・・・・インクジェットヘッドのインク吐出面を示す方向
C・・・・インクジェットヘッドの側面図の方向
D・・・・インクジェットヘッドの平面図の方向
E・・・・インクジェットヘッドのワイピング部材の移動方向
L・・・・インクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材との距離
L1・・・液膜形成部材とインクジェットヘッドのインク液滴が接する前のインクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材との距離
L2・・・液膜形成部材とインクジェットヘッドの間にインク液膜が形成された状態でのインクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材との距離
L3・・・ダンパーで規定されたインクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材との距離
L4・・・液膜形成部材とインクジェットヘッドの間のインク液膜がきれた状態の場合のインクジェットヘッドのインク吐出面と液膜形成部材との距離
W・・・・インクジェットヘッド洗浄部
X,X’・・可動ステージの横方向の移動方向を示す
Y、Y’・・可動ステージの縦方向の移動方向を示す
Z、Z’・・上下の移動方向を示す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷装置用のインクジェットヘッドの洗浄方法において、該インクジェットヘッドの複数のノズルからインクを押し出す工程と、押し出された該インクから成る液滴に液膜を形成するための液膜形成部材を接して液膜を形成する工程と、該インクを吸引して、複数の該ノズルのインク面をそれぞれ個別に形成する工程を有することを特徴とするインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項2】
前記インクの前記インクジェットヘッドの前記ノズル表面での接触角の値θ1と、前記インクの前記液膜形成部材での接触角の値θ2が、ともに90°以下の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項3】
前記θ1と前記θ2の値の関係が、θ1>θ2の関係にあることを特徴とする請求項1または2に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項4】
前記インクジェットヘッドとの距離を一定に保つための機構を有する液膜形成部材を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項5】
前記洗浄方法において、複数の前記ノズルをワイピング部材により一括で拭く工程を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットヘッドの洗浄方法を用いる洗浄手段を有することを特徴とするインクジェット印刷装置。

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2010−46582(P2010−46582A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211554(P2008−211554)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】